【文献】
「電子線リソグラフィを用いたジブロック共重合体ミクロ相分離膜の選択的パターニング」,鈴木 裕之(外3名),2012年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集,日本,公益社団法人 精密工学会,2012年 9月 1日,第43−44ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0015】
図1は、一実施形態に係るパターンを形成する方法を示す流れ図である。また、
図2は、
図1に示す各工程において作成される生産物の断面を示す図である。
図1に示すように、一実施形態に係るパターンを形成する方法MT1は、工程ST1,工程ST2,工程ST3,工程ST4,及び工程ST5を含んでいる。方法MT1では、まず、工程ST1において、ブロック・コポリマーが被処理体(以下、「ウエハ」という)Wの表面に塗布される。ブロック・コポリマーは、例えば、スピンコート法といった種々の方法により塗布され得る。これにより、
図2の(a)に示すように、ウエハWの表面には、ブロック・コポリマー層BCLが形成される。なお、
図2の(a)に示すように、ウエハWは、一実施形態においては、シリコン製の基板Sb、及び、当該基板Sb上に設けられた下地層ULを有しており、当該下地層UL上にブロック・コポリマー層BCLが形成される。一実施形態においては、下地層ULは、有機膜から構成されている。
【0016】
上記ブロック・コポリマーは、自己組織化(Self−Assembled)ブロック・コポリマーであり、第1のポリマー及び第2のポリマーを含んでいる。一実施形態においては、ブロック・コポリマーは、ポリスチレン−ブロック−ポリメチルメタクリレート(PS−b−PMMA)である。PS−b−PMMAは、第1のポリマーとしてポリスチレン(PS)を含み、第2のポリマーとしてポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む。
【0017】
ここで、ブロック・コポリマー及びその自己組織化について、PS−b−PMMAを例にとって、
図3を参照しつつ説明する。PS及びPMMAは共に、一つの分子の直径が0.7nmの高分子である。互いに混和しないPS及びPMMAを含有したブロック・コポリマーを下地層UL上に塗布してブロック・コポリマー層BCLを形成した後、ウエハWを常温(25℃)から300℃以下の温度で熱処理(アニール)すると、ブロック・コポリマー層BCLにおいて相分離が生じる。一般的には、アニールは、200℃〜250℃の温度範囲内で行われる。一方、300℃より高温で熱処理が行われると、ブロック・コポリマー層BCLの相分離は発生せず、PS及びPMMAがランダムに配置される。また、相分離後に温度を常温に戻してもブロック・コポリマー層BCLは相分離状態を保つ。
【0018】
各ポリマーのポリマー長が短いと相互作用(斥力)は弱くなり、かつ親水性が強くなる。一方、ポリマー長が長いと相互作用(斥力)は強くなり、かつ疎水性が強くなる。このようなポリマーの性質を利用して、例えば、
図3の(a)及び
図3の(b)に示したように、PS及びPMMAの相分離構造を作成することができる。
図3の(a)は、ポリマーAとポリマーBが略同じポリマー長を有するときの相分離構造を示している。一例においては、ポリマーAは、PSであり、ポリマーBは、PMMAである。
図3の(a)に示す場合には、各ポリマーの相互作用は同じであるから、ブロック・コポリマー層BCLを250℃程度で熱処理すると、ポリマーAとポリマーBは自己組織化してライン状に相分離する。即ち、ポリマーAがライン状の第1の領域を形成し、第1の領域間においてポリマーBがライン状の第2の領域を形成する。この相分離構造を利用して、例えば、ポリマーBを含む第2の領域を除去すると、ラインアンドスペース(L/S)の周期パターンを形成することができる。この当該周期パターンは、半導体素子といったデバイス製造用のパターンとして適用され得る。
【0019】
また、
図3の(b)は、ポリマーAとポリマーBのポリマー長が大きく異なるとき、即ち、ポリマーAのポリマー長がポリマーBのポリマー長より長い場合の相分離構造を示している。
図3の(b)に示す場合には、ポリマーAの相互作用(斥力)が強く、ポリマーBの相互作用(斥力)が弱い。このようなブロック・コポリマー層BCLを250℃程度で熱処理すると、ポリマー間の相互作用の強弱に起因して、ポリマーAが外側、ポリマーBが内側に自己組織化する。即ち、ポリマーBが円柱状に自己組織化して第2の領域を形成し、当該円柱状の領域を囲むようにポリマーAが自己組織化して第1の領域を形成する。このような第1の領域及び第2の領域を含む相分離構造を利用して、例えば、第2の領域を除去すると、ホールの周期パターンを形成することができる。この周期パターンも半導体素子といったデバイス製造用のパターンとして適用され得る。
【0020】
再び
図1を参照すると、方法MT1の工程ST2では、ブロック・コポリマー層BCLの相分離のための処理が行われる。一実施形態の工程ST2では、ウエハWを200℃〜300℃の温度で加熱することにより、ブロック・コポリマー層BCLに相分離を生じさせる。この工程ST2により、
図2の(b)に示すように、ブロック・コポリマー層BCLにおいて、第1のポリマーを含む第1の領域R1及び第2のポリマーを含む第2の領域が形成される。上述したように、第1の領域R1及び第2の領域R2は、交互に設けられたラインパターンであってもよい。或いは、第2の領域R2は円柱状の領域であり、第1の領域R1が円柱状の第2の領域R2を囲んでいてもよい。
【0021】
続く工程ST3に先だって、ウエハWはプラズマ処理装置内に搬送される。
図4は、方法MT1の実施に用いることが可能なプラズマ処理装置の一実施形態を概略的に示す図である。
図4に示すプラズマ処理装置1、容量結合型の平行平板プラズマ処理装置であり、略円筒形のチャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は接地されている。チャンバ10の内面には、アルマイト処理(陽極酸化処理)が施されている。また、このチャンバ10は接地されている。
【0022】
チャンバ10の底部には、セラミックなどの絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置されている。サセプタ支持台14の上には、例えばアルミニウムから構成されたサセプタ16が設けられている。
【0023】
サセプタ16の上面には、ウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は、導電膜からなるチャック電極20を一対の絶縁層又は絶縁シートの間に挟み込んだものである。電極20には直流電源22がスイッチ24を介して電気的に接続されている。直流電源22からの直流電圧により、ウエハWを静電気力で静電チャック18に吸着保持できるようになっている。静電チャック18の周囲且つサセプタ16上には、エッチングの面内均一性を向上させるためのフォーカスリング26が配置されている。フォーカスリング26は、例えば、シリコン製である。サセプタ16及びサセプタ支持台14の側面には、例えば石英製の円筒状の内壁部材28が貼り付けられている。
【0024】
サセプタ支持台14の内部には、冷媒室30が設けられている。冷媒室30は、例えば、サセプタ支持台14内において環状に延在している。この冷媒室30には、外付けのチラーユニットから配管32a,32bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水cwが循環供給される。冷媒cwの温度を制御することにより、サセプタ16上のウエハWの処理温度は制御される。さらに、伝熱ガス供給機構(図示せず)からの伝熱ガス、例えばHeガスが、ガス供給ライン34を介して静電チャック18の上面とウエハWの裏面との間に供給される。
【0025】
また、サセプタ16には、プラズマ生成用の第1高周波電源36、イオン引き込み用の第2高周波電源38がそれぞれ整合器40,42及び給電棒44,46を介して電気的に接続されている。
【0026】
第1高周波電源36は、プラズマ生成に適した周波数、例えば40MHzの第1周波数の電力を発生する。なお、第1周波数は、60MHz或いは100MHzといった周波数であってもよい。一方、第2高周波電源38は、サセプタ16上のウエハWにプラズマのイオンを引き込むのに適した比較的低周波の周波数、例えば13MHzの第2周波数の電力を発生する。
【0027】
サセプタ16の上方には、当該サセプタと平行に対面するように上部電極48が設けられている。この上部電極48は、電極板50及び当該電極板50を着脱可能に支持する電極支持体52から構成されている。電極板50には、多数のガス孔50aが形成されている。電極板50は、例えば、Si、SiCといった半導体材料から構成され得る。また、電極支持体52は、例えば、アルミニウムから構成され、その表面にはアルマイト処理が施されている。これら電極板50及び電極支持体52は、チャンバ10の上部にリング状の絶縁体54を介して取り付けられている。リング状絶縁体54は、例えば、アルミナから構成され得る。かかる上部電極48とサセプタ16との間には、プラズマ生成空間、即ち、処理空間Sが設定される。
【0028】
電極支持体52には、ガスバッファ室56が形成されている。また、電極支持体52には、ガスバッファ室56と電極板50のガス孔50aとを連通させる多数のガス通気孔52aが形成されている。ガスバッファ室56には、ガス供給管58を介してガス供給源60が接続されている。ガス供給管58には、マスフローコントローラ(MFC)62および開閉バルブ64が設けられている。ガス供給源60から処理ガスがガスバッファ室56に導入されると、電極板50のガス孔50aからサセプタ16上のウエハWに向けて処理空間Sに処理ガスがシャワー状に噴出される。このように、上部電極48は処理空間Sに処理ガスを供給するためのシャワーヘッドを兼ねている。
【0029】
サセプタ16及びサセプタ支持台14とチャンバ10の側壁との間に形成される環状の間は排気空間となっている。この排気空間の底には、チャンバ10の排気口72が設けられている。この排気口72には、排気管74を介して排気装置76が接続されている。排気装置76は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10の室内、特に処理空間Sを所望の真空度まで減圧できるようになっている。また、チャンバ10の側壁にはウエハWの搬入出口78を開閉するゲートバルブ80が取り付けられている。
【0030】
チャンバ10の外部には、可変直流電源82が設けられている。この可変直流電源82の一方の端子、即ち出力端子は、スイッチ84及び直流給電ライン85を介して上部電極48に電気的に接続されている。可変直流電源82は、負の直流電圧を発生することができる。なお、負の直流電圧は、−900V〜0Vの範囲の電圧であり、例えば、−900Vの電圧である。可変直流電源82の他方の端子は接地されている。可変直流電源82の出力(電圧、電流)の絶対値及びスイッチ84のオン・オフ切換は、後述する制御部88からの指示の下でDCコントローラ83により制御されるようになっている。
【0031】
直流給電ライン85の途中には、フィルタ回路86が設けられている。フィルタ回路86は、可変直流電源82からの直流電圧VDCを上部電極48に印可する。また、フィルタ回路86は、サセプタ16から処理空間S及び上部電極48を通って直流給電ライン85に流入する高周波を接地ラインへ流して、当該高周波の可変直流電源82側への流入を防止する。
【0032】
制御部88は、CPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有し、CPUは、例えばRAMに記憶された各種レシピに従ってプロセスの実行を制御する。
【0033】
このプラズマ処理装置1においてウエハWをエッチングする際には、先ずゲートバルブ80が開口され、搬送アーム上に保持されたウエハWがチャンバ10内に搬入される。そして、ウエハWは、静電チャック18上に載置される。ウエハWの搬入後、ゲートバルブ80が閉じられ、ガス供給源60から処理ガスが所定の流量及び流量比でチャンバ10内に導入され、排気装置76によりチャンバ10内の圧力が設定値に減圧される。さらに、第1高周波電源36から高周波電力がサセプタ16に供給され、必要に応じて第2高周波電源38からも高周波バイアス電力がサセプタ16に供給される。これにより、シャワーヘッドからシャワー状に導入された処理ガスが励起されてプラズマが生成される。このプラズマ中のラジカル、イオンといった活性種によってウエハWがエッチングされる。
【0034】
再び
図1を参照する。
図1に示すように、工程ST2の後、工程ST3の前に、ウエハWは、プラズマ処理装置のチャンバ内に収容され、静電チャック上に載置される。そして、方法MT1では、工程ST3が行われる。
【0035】
工程ST3では、ブロック・コポリマー層BCLの第2の領域R2が、当該第2の領域R2の膜厚の途中までエッチングされる。工程ST3をプラズマ処理装置1で実施する場合には、ガス供給源60から処理ガスがチャンバ10内に供給され、排気装置76によりチャンバ10内の圧力が設定値に減圧される。また、第1高周波電源36から高周波電力がサセプタ16に供給される。なお、工程ST3では、必要に応じて、第2高周波電源38からの高周波バイアス電力がサセプタ16に供給されてもよい。工程ST3において用いられる処理ガスは、第2のポリマーを含む第2の領域R2をエッチングするための処理ガスであるので、酸素を含み得る。例えば、この処理ガスは、O
2ガスを含み得る。また、当該処理ガスは、Arガスといった希ガスを更に含んでいてもよい。
【0036】
上記工程ST3では、酸素の活性種によって有機材料から構成されたブロック・コポリマー層BCLがその表面からエッチングされる。ここで、第1のポリマーから構成された第1の領域R1よりも第2のポリマーから構成された第2の領域R2のエッチングレートが高い。したがって、工程ST3によって、第2の領域R2の膜厚が大きく減少する。その結果、
図2の(c)に示すように、第2の領域R2の表面の高さは、第1の領域R1の表面の高さよりも低くなる。即ち、第2の領域R2は、第1の領域R1よりも窪んだ状態となる。
【0037】
次いで、方法MT1では、工程ST4が行われる。工程ST4では、ウエハWに対して、二次電子が照射される。プラズマ処理装置1で工程ST4を行う場合には、プラズマ処理装置1のチャンバ10内にガス供給源60から、正イオンを発生させるための処理ガスが供給され、排気装置76によりチャンバ10内の圧力が設定値に減圧される。また、上部電極48に可変直流電源82から負の直流電圧が与えられる。工程ST4で用いられる処理ガスは、その励起時に正イオンを生じさせることが可能なものであり、例えば、H
2ガス、Arガスといった希ガス、及び、CF
4ガスといったフルオロカーボン系ガスの何れか、又は、これらガスのうち一種以上の混合ガスであり得る。さらに、工程ST4では、処理ガスを励起させるために、第1高周波電源36から高周波電力がサセプタ16に供給される。なお、工程ST4では、必要に応じて、第2高周波電源38からの高周波バイアス電力がサセプタ16に供給されてもよい。
【0038】
ここで、
図5を参照する。
図5は、工程ST4の原理を説明するための図である。同図において、円によって囲まれた「+」は正イオンを示しており、円によって囲まれた「−」が二次電子を示している。処理空間Sに処理ガス供給され、第1高周波電源36から高周波電力がサセプタ16に供給されると、処理ガスが励起され、処理空間S内において正イオンが発生する。処理空間Sに正イオンが生成されている状態において上部電極48に負の直流電圧が印加されると、
図5に示すように、正イオンは上部電極48に衝突する。これにより、上部電極48から二次電子が発生し、当該二次電子がウエハWに照射される。二次電子がウエハWの表面に照射されると、第1の領域R1を構成する第1のポリマーが硬化する。一方、第1の領域R1よりも窪んだ第2の領域R2には、照射される二次電子の量が少なくなるか、又は、二次電子が照射されない。これは、第2の領域R2が狭い幅を有して窪んでいるためであるか、窪んだ第2の領域R2上に滞在する正イオンの中和に二次電子が消費されるためであるか、又はその双方の影響によるものであると推測される。この工程ST4の結果、第1の領域R1の硬化が第2の領域R2の硬化よりも促進される。
【0039】
次いで、
図1に示すように、方法MT1では、工程ST5が行われる。工程ST5では、ブロック・コポリマー層BCLの第2の領域R2が、更にエッチングされる。一実施形態では、第2の領域R2は、下地層ULの表面までエッチングされる。工程ST5をプラズマ処理装置1で実施する場合には、当該工程ST5は、工程ST3のエッチングと同様に行われる。即ち、工程ST5では、ガス供給源60から処理ガスがチャンバ10内に供給され、排気装置76によりチャンバ10内の圧力が設定値に減圧される。また、第1高周波電源36から高周波電力がサセプタ16に供給される。なお、工程ST5では、必要に応じて、第2高周波電源38からの高周波バイアス電力がサセプタ16に供給されてもよい。工程S53において用いられる処理ガスは、第2のポリマーを含む第2の領域R2をエッチングするための処理ガスであるので、酸素を含み得る。例えば、この処理ガスは、O
2ガスを含み得る。また、当該処理ガスは、Arガスといった希ガスを更に含んでいてもよい。
【0040】
上述したように、工程ST4の処理の結果、第2の領域R2に比較して第1の領域R1の硬化が進んでいる。したがって、工程ST5では、工程ST3と比較して、第1の領域R1のエッチングレートよりも第2の領域R2のエッチングレートが高くなる。即ち、工程ST4の処理の結果、工程ST5では、第2の領域R2のエッチングが選択的に行われる。この工程ST5の結果、
図2の(d)に示すように、第1の領域R1が下地層UL上に残される。この第1の領域R1によって形成されるパターンは、下地層ULをエッチングするためのマスクとして用いられ得る。
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明について更に詳しく説明をするが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
まず、第1のポリマーとしてPSを含み第2のポリマーとしてPMMAを含むブロック・コポリマー層をウエハ上に形成した(工程ST1)。次いで、第2のポリマーが円柱状の第2の領域を形成し、第1のポリマーが当該第2の領域を囲んで第1の領域を形成するよう、ウエハを250℃の温度で、加熱した(工程ST2)。次いで、以下に示す処理条件の工程ST3〜ST5をプラズマ処理装置1を用いて行って、実施例1のウエハを得た。
【0044】
(工程ST3の条件)
チャンバ10内圧力:75mT(10Pa)
第1高周波電源36の高周波電力:40MHz、100W
第2高周波電源の高周波バイアス電力:13MHz、0W
可変直流電源82の直流電圧:0V
処理ガス:50sccmのO
2、850sccmのAr
ウエハ温度:30℃
処理時間:10秒
【0045】
(工程ST4の条件)
チャンバ10内圧力:50mT(6.666Pa)
第1高周波電源36の高周波電力:40MHz、300W
第2高周波電源の高周波バイアス電力:13MHz、0W
可変直流電源82の直流電圧:−900V
処理ガス:150sccmのH
2、1200sccmのAr、30sccmのCF
4
ウエハ温度:30℃
処理時間:20秒
【0046】
(工程ST5の条件)
チャンバ10内圧力:75mT(10Pa)
第1高周波電源36の高周波電力:40MHz、100W
第2高周波電源の高周波バイアス電力:13MHz、0W
可変直流電源82の直流電圧:0V
処理ガス:50sccmのO
2、850sccmのAr
ウエハ温度:30℃
処理時間:10秒
【0047】
また、比較例1の作成のため、実施例1の作成における工程ST1と工程ST2の処理条件と同様の処理条件の処理を行った後、以下に示す処理条件のエッチングをプラズマ処理装置1を用いて行い、比較例1のウエハを得た。
【0048】
(比較例1の作成におけるエッチング条件)
チャンバ10内圧力:75mT(10Pa)
第1高周波電源36の高周波電力:40MHz、100W
第2高周波電源の高周波バイアス電力:13MHz、0W
可変直流電源82の直流電圧:0V
処理ガス:50sccmのO
2、850sccmのAr
ウエハ温度:30℃
処理時間:20秒
【0050】
実施例1のウエハ及び比較例1のウエハの断面及び上面のSEM写真を撮影した。そして、
図6の(a)に示すように、断面SEM写真を利用して、領域R1の膜厚の処理前後の変化量、領域R2膜厚の処理前後の変化量を求め、これら変化量をそれぞれ、領域R1のエッチング量EA1、領域R2のエッチング量EA2とした。そして、実施例1のウエハ及び比較例1のウエハのそれぞれについて、EA2/EA1を算出した。なお、EA2/EA1の数値が大きいことは、領域R1に対して領域R2がより選択的にエッチングされていることを表わす。また、
図6の(b)に示すように、上面のSEM写真を利用して、領域R2がエッチングされることによって形成される開口の長径Maと短径Miを求め、Ma/Miを当該開口の真円度を表わすパラメータとして算出した。なお、Ma/Miが1に近い程、開口が真円に近いことを表わしている。かかる評価の結果、実施例1のEA2/EA1は13.8であり、実施例1のMa/Miは1.15であった。一方、比較例1のEA2/EA1は8.0であり、比較例1のMa/Miは1.21であった。以上の結果から、実施例1の作成に用いた方法MT1は、比較例1の作成に用いた方法、即ち、二次電子を照射する工程ST4の処理を行わずにブロック・コポリマー層をエッチングする方法に比して、第2の領域R2をより選択的にエッチングすることが可能となり、且つ、第2の領域R2のエッチング後に形成される開口がより真円に近くなるように当該第2の領域R2をエッチングすることが可能であることが確認された。
【0052】
実施例1の作成における処理条件と同条件で工程ST1〜工程ST5を行い、実施例2のウエハを得た。また、実施例2の作成における処理条件とは、工程ST3の処理時間が5秒、工程ST5の処理時間が15秒である点においてのみ異なる処理条件で工程ST1〜ST5を行い、実施例3のウエハを得た。また、実施例2の作成における工程ST1及び工程ST2の処理条件と同じ処理条件でブロック・コポリマー層を得た後、以下に示す処理条件の硬化処理及びエッチングを行って、比較例2のウエハを得た。
【0053】
(比較例2の作成における硬化処理の条件)
チャンバ10内圧力:50mT(6.666Pa)
第1高周波電源36の高周波電力:40MHz、300W
第2高周波電源の高周波バイアス電力:13MHz、0W
可変直流電源82の直流電圧:−900V
処理ガス:150sccmのH
2、1200sccmのAr、30sccmのCF
4
ウエハ温度:30℃
処理時間:20秒
【0054】
(比較例2の作成におけるエッチング条件)
チャンバ10内圧力:75mT(10Pa)
第1高周波電源36の高周波電力:40MHz、100W
第2高周波電源の高周波バイアス電力:13MHz、0W
可変直流電源82の直流電圧:0V
処理ガス:50sccmのO
2、850sccmのAr
ウエハ温度:30℃
処理時間:20秒
【0056】
実施例2〜3のウエハ及び比較例2のウエハの断面及び上面のSEM写真を撮影した。そして、実施例2〜3及び比較例2のウエハについても、EA2/EA1、及び、Ma/Miを求めた。かかる評価の結果、実施例2のEA2/EA1は13.8であり、実施例2のMa/Miは1.15であった。また、実施例3のEA2/EA1は10.9であり、実施例3のMa/Miは1.33であった。また、比較例2のEA2/EA1は7.0であり、比較例2のMa/Miは1.38であった。
【0057】
以上の評価結果から、第1の領域R1と第2の領域R2の表面の高さを異ならせるためのエッチング、即ち、第2の領域R2を第1の領域R1よりも窪ませるためのエッチングを行うことなく、二次電子の照射を行い、その後にブロック・コポリマー層のエッチングを行った比較例2では、第1の領域R1のエッチングに対する第2の領域R2のエッチングの選択比が実施例2及び実施例3と比較して相当に低く、エッチング後に形成される開口の真円度も、実施例2と比較して相当に低くなることが確認された。この原因は、第2の領域R2を第1の領域R1よりも窪ませずに二次電子の照射を行うと、第1の領域R1と同様に第2の領域R2も硬化し、その後のエッチングにおいて第1の領域R1に対して第2の領域R2を選択的にエッチングすることができなくなるからであるものと考えられる。一方、実施例2及び実施例3の作成に用いた方法MT1によれば、比較例2の作成に用いた方法と比較して、第2の領域R2をより選択的にエッチングすることが可能となり、且つ、第2の領域R2のエッチング後に形成される開口がより真円に近くなるように当該第2の領域R2をエッチングすることが可能であることが確認された。さらに、実施例2と実施例3の評価結果の対比から、二次電子を照射する前に、5秒のエッチングを行うよりも、10秒のエッチングを行った方が、第2の領域R2をより選択的にエッチングすることが可能となり、且つ、第2の領域R2の除去後に形成される穴の形状がより真円に近づくことが確認された。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、上記実施形態に限定されることなく、種々の変形態様を構成することが可能である。例えば、ブロック・コポリマーは、PS−b−PMMAに限定されるものではない。ブロック・コポリマーは、例えば、PS−b−PMMA以外のその他鎖状ブロック・コポリマーや、他の構造を有するブロック・コポリマー、例えば、星型コポリマ、分岐コポリマ、超分岐コポリマ、及びグラフト・コポリマであってもよい。
【0059】
ブロックは種々異なる重合可能なモノマから誘導することができ、ここでブロックは、それらに限定されないが、ポリジエンを含むポリオレフィン、ポリ(アルキレンオキシド)(例えば、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(ブチレンオキシド)、又は、これらのランダム又はブロック・コポリマーなど)を含むポリエーテル、ポリ((メタ)アクリレート)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノゲルマンなどを含むことができる。
【0060】
ブロック・コポリマーのブロックはモノマとして、C2−30オレフィンモノマ、C1−30アルコール由来の(メタ)アクリレートモノマ、Fe、Si、Ge、Sn、Al、Tiをベースとするものを含む無機含有モノマ、又は前述のモノマの少なくとも1つを含む組合せを含み得る。ブロック内に用いるモノマは、C2−30オレフィンモノマとして、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1、3−ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、ジヒドロピラン、ノルボルネン、無水マレイン酸、スチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−メチルスチレン、又はα−メチルスチレンを含み得る。モノマは、(メタ)アクリレートモノマとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、又はヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含み得る。これらのモノマの2つ又はそれ以上の組合せを用いることができる。ホモポリマであるブロックは、スチレン(例えば、ポリスチレンブロック)、又はポリ(メチルメタクリレート)のような(メタ)アクリレート・ホモポリマ・ブロックを用いて調製されるブロックを含むことができる。ランダム・ブロックは、例えば、ランダムに共重合されたスチレン及びメチルメタクリレート(例えば、ポリ(スチレン−co−メチルメタクリレート))のブロックを含むことができる。代替のコポリマ・ブロックはスチレン及びマレイン酸無水物のブロックを含むことができ、これはほとんどの条件下でマレイン酸無水物がホモポリマ化できないためにスチレン−マレイン酸無水物2分子繰返し構造を形成する(例えば、ポリ(スチレン−alt−マレイン酸無水物))ことが知られている。このようなブロックは例示的なものであって、限定するものと考えるべきではないことを理解されたい。
【0061】
さらに、ブロック・コポリマーは、例えば、ポリ(スチレン−b−ビニルピリジン)、ポリ(スチレン−b−ブタジエン)、ポリ(スチレン−b−イソプレン)、ポリ(スチレン−b−メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−b−アルケニル芳香族)、ポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−(エチレン−プロピレン))、ポリ(エチレンオキシド−b−カプロラクトン)、ポリ(ブタジエン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−t−ブチル(メタ)アクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−b−t−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド−b−プロピレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−テトラヒドロフラン)、ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(メチルメタクリレート−b−ジメチルシロキサン)、又は前述のブロック・コポリマーの少なくとも1つを含む組合せなどのジブロック又はトリブロック・コポリマーを含む。
【0062】
ブロック・コポリマーは、更なる処理を行うことができる全体的な分子量及び多分散性を有することが望ましい。例えば、ブロック・コポリマーは3,000乃至400,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有することができる。同様に、ブロック・コポリマーは、1,000乃至200,000の数平均分子量(Mn)を有することができる。ブロック・コポリマーはまた、1.01乃至6の多分散性(Mw/Mn)を有することができるが、それに特に限定されない。Mw及びMnの両方の分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフにより、ポリスチレン標準に対して較正されるユニバーサル較正法を用いて決定することができる。