(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光インプリント用硬化性組成物の23℃における粘度が、15mPa・s以下であり、かつ表面張力25〜35mN/mである、請求項1または2に記載の光インプリント用硬化性組成物。
請求項1〜12のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物を、基材上または微細パターンを有するモールド上に塗布し、前記光インプリント用硬化性組成物をモールドと基材とで挟んだ状態で光照射することを含むパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0020】
本願明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリルは、アクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本願明細書において、「単量体」と「モノマー」とは同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1000未満の化合物をいう。本願明細書において、「官能基」は、重合反応に関与する基をいう。また、本発明でいう「インプリント」は、好ましくは、1nm〜100μmのサイズのパターン転写をいい、より好ましくは、10nm〜1μmのサイズ(ナノインプリント)のパターン転写をいう。
【0021】
本願明細書中の基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0022】
[光インプリント用硬化性組成物]
本発明の光インプリント用硬化性組成物(以下、単に「本発明の組成物」と称する場合もある)は、重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、一般式(I)で表される化合物(C)を含有する。
一般式(I)
【化2】
(一般式(I)中、Aは、2〜6価の多価アルコール残基を表す。pは0〜2を表し、qは1〜6を表し、p+qは2〜6の整数を表し、mおよびnはそれぞれ独立に0〜20を表す。下式(1)で表されるrは6〜20である。Rは、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、またはアシル基を表す。)
r=(mの合計数)+(nの合計数) (1)
以下、これらの詳細について説明する。
【0023】
重合性化合物(A)
本発明の組成物に用いられる重合性化合物は、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に限定されるものではないが、例えば、エチレン性不飽和結合を含有する基を1〜6個有する重合性不飽和単量体;エポキシ化合物、オキセタン化合物;ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;プロペニルエーテル;ブテニルエーテル等を挙げることができる。重合性化合物(A)の具体例としては、特開2011−231308号公報の段落番号0020〜0098に記載のものが挙げられ、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。これらの化合物は、その1種を単独で使用することもできるし、また、その2種以上を混合して使用することもできる。
【0024】
前記エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体(1〜6官能の重合性不飽和単量体)について説明する。
【0025】
本発明で好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合を含有する基を1つ有する重合性不飽和単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシメチルジオキソラン、2−エチル−2−メチル−4−(メタ)アクリロイルオキシメチルジオキソラン、2−イソブチル−2−メチル−4−(メタ)アクリロイルオキシメチルジオキソラン、2−シクロヘキシル−2−メチル−4−(メタ)アクリロイルオキシメチルジオキソラン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、芳香環上に置換基を有するベンジル(メタ)アクリレート(好ましい置換基としては炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチルメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、クレゾール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェノール(メタ)アクリレート、2−(o−フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、エトキシ化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾールが例示される。
前記エチレン性不飽和結合を含有する単官能の重合性単量体の中でも、光硬化性の観点から、単官能(メタ)アクリレート化合物を用いることが好ましく、単官能アクリレート化合物がより好ましい。
また、前記単官能(メタ)アクリレート化合物の中でも、芳香族構造および/または脂環式炭化水素構造を有する単官能(メタ)アクリレートがドライエッチング耐性の観点で好ましく、芳香族構造を有する単官能(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
このような芳香族構造および/または脂環式炭化水素構造を有する単官能(メタ)アクリレートの中でも、ベンジル(メタ)アクリレート、芳香環上に置換基を有するベンジル(メタ)アクリレート(好ましい置換基としては炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチルメチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートがより好ましく、芳香環上に置換基を有するベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1−または2−ナフチルメチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0026】
本発明では、重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2つ以上有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。
本発明で好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2つ有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジアクリレート、o−,m−,p−ベンゼンジ(メタ)アクリレート、o−,m−,p−キシリレンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以後「EO変性」という。)1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド変性(以後「PO変性」という。)ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、が例示される。
【0027】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、o−,m−,p−キシリレンジ(メタ)アクリレート、等の2官能(メタ)アクリレートが本発明に好適に用いられる。
【0028】
エチレン性不飽和結合含有基を3つ以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0029】
これらの中で特に、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが本発明に好適に用いられる。
【0030】
前記エチレン性不飽和結合を2つ以上有する多官能の重合性不飽和単量体の中でも、本発明では多官能(メタ)アクリレートを用いることが、光硬化性の観点から好ましい。
【0031】
本発明で用いることができる重合性単量体として、素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性単量体化合物を含有することも好ましい。
本発明におけるフッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性単量体単量体は、フッ素原子、シリコン原子、または、フッ素原子とシリコン原子の両方を有する基を少なくとも1つと、重合性官能基を少なくとも1つ有する化合物である。重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基またはエポキシ基が好ましい。
前記フッ素原子を有する基としては、含フッ素アルキル基および含フッ素ポリエーテル基から選ばれる含フッ素基が好ましい。
前記含フッ素アルキル基は、炭素数が2〜10の含フッ素アルキル基が好ましく、炭素数が4〜8の含フッ素アルキル基より好ましい。好ましい含フッ素アルキル基の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチル基、1H,1H−ペンタフルオロプロピル基、2H−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、1H,1H−ヘプタフルオロブチル基、2−(ペルフルオロブチル)エチル基、3−(ペルフルオロブチル)プロピル基、3−(ペルフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピル基、6−(ペルフルオロブチル)ヘキシル基、1H,1H−ウンデカフルオロヘキシル基、2−(ペルフルオロヘキシル)エチル基、3−(ペルフルオロヘキシル)プロピル基、3−(ペルフルオロヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル基、6−(ペルフルオロヘキシル)ヘキシル基、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル基、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル基、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル基、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル基が挙げられる。
前記含フッ素アルキル基の末端は、トリフルオロメチル基構造を有することが好ましい。トリフロロメチル基構造を有することで、少ない添加量(例えば、5質量%以下)でも本発明の効果が発現するため、ドライエッチング後のラインエッジラフネスが向上する。
前記含フッ素ポリエーテル基としては、繰返し単位として、トリフルオロプロピレンオキシド単位、ペルフルオロエチレンオキシド単位、またはペルフルオロプロピレンオキシド単位を含む含フッ素ポリエーテル基が挙げられる。前記含フッ素アルキル基の場合と同様に、トリフロロメチル基を有しているものが好ましく、ペルフルオロプロピレンオキシド単位および/または末端がトリフロロメチル基を有する含フッ素ポリエーテル基が好ましい。
以下に、本発明の組成物で用いられる前記フッ素原子を有する重合性単量体の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前記フッ素原子を有する重合性単量体としては、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2H−ヘキサフルオロ−2−プロピル(メタ)アクリレート、1H,1H−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、2−(ペルフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(ペルフルオロブチル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(ペルフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−(ペルフルオロブチル)ヘキシル(メタ)アクリレート、1H,1H−ウンデカフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、2−(ペルフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3−(ペルフルオロヘキシル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(ペルフルオロヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−(ペルフルオロヘキシル)ヘキシル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタン−1,5−ジオールジ(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン−1,6−ジオールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートが好ましい。3−ペルフルオロブチル−1,2−エポキシプロパン、3−ペルフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルオキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルオキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルオキシ)−1,2−エポキシプロパン、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタン−1,5−ジオールジグリシジルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン−1,6−ジオールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物もまた好ましい。
これらの中でも、2−(ペルフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3−(ペルフルオロヘキシル)プロピル(メタ)アクリレート、6−(ペルフルオロヘキシル)ヘキシル(メタ)アクリレートが、離型性と組成物への相溶性の観点で特に好ましい。
本発明のインプリント用硬化性組成物中におけるフッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性単量体の含有量は、特に制限はないが、離型性と相溶性の観点から、全重合性単量体中、0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%がさらに好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
【0032】
シリコン原子を有する重合性化合物
本発明では、シリコン原子を有する重合性化合物を含有させてもよい。前記シリコン原子を有する重合性化合物が有するシリコン原子を有する官能基としては、トリアルキルシリル基、鎖状シロキサン構造、環状シロキサン構造、籠状シロキサン構造などが挙げられ、他の成分との相溶性、モールドの離型性の観点から、トリメチルシリル基またはジメチルシロキサン構造を有する官能基が好ましい。
【0033】
シリコン原子を有する重合性化合物としては、2−(トリメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート、3−[トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシメチルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(メタ)アクリロイル基を末端あるいは側鎖に有するポリシロキサン(例えば信越化学工業社製X−22−164シリーズ、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−2475)などが挙げられる。
【0034】
本発明の組成物に用いられる重合性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましく、特に、エッチング耐性の観点から、脂環炭化水素基および/または芳香族基を有する(メタ)アクリレート化合物がより好ましく、芳香族基を有する(メタ)アクリレート化合物がさらに好ましい。また、シリコン原子および/またはフッ素原子を有する重合性化合物を含有してもよい。しかしながら、本発明では、一般式(I)で表される化合物を配合することにより、シリコン原子および/またはフッ素原子を有する重合性化合物を実質的に含まない態様としても、低い離型力を達成することができる。実質的に含まないとは、例えば、一般式(I)で表される化合物の配合量の1質量%以下であることをいう。
【0035】
本発明の組成物に含まれる全重合性化合物の成分のうち、脂環炭化水素基および/または芳香族基を有する重合性化合物の合計が、全重合性化合物の、30〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは50〜100質量%、さらに好ましくは70〜100質量%である。
【0036】
重合性化合物として芳香族基を含有する(メタ)アクリレート重合性化合物が、全重合性成分の30〜100質量%であることが好ましく、50〜100質量%であることがより好ましく、70〜100質量%であることが特に好ましい。
【0037】
特に好ましい実施態様としては、下記重合性化合物(A1)が、全重合性成分の0〜80質量%、好ましくは、0〜50質量%であり、下記重合性化合物(A2)が、全重合性成分の20〜100質量%、好ましくは、50〜100質量%の場合である。
(A1)芳香族基(好ましくはフェニル基、ナフチル基、さらに好ましくはナフチル基)と(メタ)アクリレート基を1つ有する重合性化合物
(A2)芳香族基(好ましくはフェニル基、ナフチル基、さらに好ましくはフェニル基)を含有し、(メタ)アクリレート基を2つ有する重合性化合物
【0038】
光重合開始剤(B)
本発明の組成物には、光重合開始剤が含まれる。本発明に用いられる光重合開始剤は、光照射により上述の重合性化合物を重合する活性種を発生する化合物であれば、いずれのものでも用いることができる。光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤が好ましく、ラジカル重合開始剤がより好ましい。また、本発明において、光重合開始剤は複数種を併用してもよい。
【0039】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤としては、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開2008−105414号公報の段落番号0091に記載のものを好ましく採用することができる。特に、この中でもアセトフェノン系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。
【0040】
アセトフェノン系化合物として好ましくはヒドロキシアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、アミノアセトフェノン系化合物が挙げられる。ヒドロキシアセトフェノン系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なイルガキュア(登録商標)2959、イルガキュア184、イルガキュア500、ダロキュア(登録商標)1173が挙げられる。
ジアルコキシアセトフェノン系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なイルガキュア651が挙げられる。
アミノアセトフェノン系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なイルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア907が挙げられる。
フェニルグリオキシレート系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なイルガキュア754、ダロキュアMBFが挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なイルガキュア819、イルガキュア1800、ルシリン(登録商標)TPO、ルシリンTPO−Lが挙げられる。
オキシムエステル系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なイルガキュアOXE01、イルガキュアOXE02が挙げられる。
【0041】
本発明で使用されるカチオン光重合開始剤としては、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、オキシムスルホネート化合物などが好ましく、ローデア製PI2074、BASF社製イルガキュア250、イルガキュアPAG103、108、121、203(BASF社製)などが挙げられる。
【0042】
なお、光重合開始剤を2種類以上併用して使用することも好ましく、2種類以上併用する場合は、ラジカル重合開始剤を2種以上併用することがより好ましい。具体的には、ダロキュア1173とイルガキュア907、ダロキュア1173とルシリンTPO、ダロキュア1173とイルガキュア819、ダロキュア1173とイルガキュアOXE01、イルガキュア907とルシリンTPO、イルガキュア907とイルガキュア819との組み合わせが例示される。このような組み合わせとすることにより、露光マージンを拡げることができる。
光重合開始剤を併用する場合の好ましい比率(質量比)は、9:1〜1:9であることが好ましく、8:2〜2:8が好ましく、7:3〜3:7であることがさらに好ましい。
【0043】
なお、本発明において「光」には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。
【0044】
本発明に用いられる光重合開始剤の含有量は、溶剤を除く全組成物中、例えば、0.01〜15質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜7質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。光重合開始剤の含有量を0.01質量%以上にすると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。また、光重合開始剤の含有量を15質量%以下にすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
【0045】
一般式(I)で表される化合物
本発明の組成物には一般式(I)で表される化合物が含まれる。このような化合物を用いることにより、本発明の組成物のインクジェット適性および離型性を向上させることができる。
一般式(I)で表される化合物を有するとインクジェット適性および離型性が向上するメカニズムについては必ずしも明確ではないが、一般式(I)で表される化合物は、組成物に添加しても表面張力や粘度の変化が小さいため、インクジェット適性を悪化させることがない。また、組成物の光硬化物に対して可塑剤として働き、光硬化物の弾性率を低下させ、その結果、離型力が低下したものと考えられる。
【0046】
一般式(I)
【化3】
(一般式(I)中、Aは、2〜6価の多価アルコール残基を表す。pは0〜2を表し、qは1〜6を表し、p+qは2〜6の整数を表し、mおよびnはそれぞれ独立に0〜20を表す。下式(1)で表されるrは6〜20である。Rは、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、またはアシル基を表す。)
r=(mの合計数)+(nの合計数) (1)
【0047】
一般式(I)において、Aは2〜6価の多価アルコール残基を表し、2〜4価のアルコール残基が好ましく、3価のアルコール残基がより好ましい。N価のアルコール残基とは、N価のアルコールの分子構造中にあるN個のアルコール性水酸基から水素原子をN個除いた基を表す。本発明における多価アルコールは、多価アルコールの単量体のみならず多量体をも含む趣旨である。本発明における多価アルコールは、分子量が60〜260が好ましく、60〜140がより好ましい。本発明で用いる多価アルコールは、直鎖または分岐の飽和脂肪族炭化水素基と2〜6個のアルコール性水酸基からなる多価アルコール(単量体)、またはその多量体であることが好ましく、単量体、またはその2量体もしくは3量体であることがより好ましく、単量体またはその2量体であることが更に好ましく、単量体であることが特に好ましい。
本発明における多価アルコール残基を構成する炭素数は、2〜10個であることが好ましく、2〜6個がより好ましく、3〜5個が更に好ましい。
例えば、2価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオールなどが挙げられる、3価のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。4価のアルコールとしては、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパンなどが挙げられる。5価または6価のアルコールとしては、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらの中でも、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトールがより好ましく、グリセリンがさらに好ましい。
【0048】
一般式(I)において、pは0〜2を表し、qは1〜6を表し、p+qは2〜6の整数を表す。より好ましくは、pは0〜1を表し、qは2〜4である。さらに好ましくは、pは0、qは2または3である。最も好ましくは、pは0、qは3である。
【0049】
一般式(I)において、mおよびnは、それぞれ独立に0〜20を表し、下式(1)で表されるrは6〜20である。
r=(mの合計数)+(nの合計数) (1)
【0050】
mおよびnは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの平均付加数を表す。mおよびnは、それぞれ独立に0〜20を表し、0〜15が好ましく、0〜12がより好ましい。mおよびnがともに2以上の場合、それらの配置は、ランダムでもブロックでも良い。これらの中でもmまたはnが0であることがより好ましく、mが0、かつnが3〜7であることがさらに好ましい。
rは、6〜20であり、8〜15がより好ましい。rが6より小さいと、離型性が向上しない。一方、rが20より大きいと粘度が高くなるためインクジェット適性が悪化する。
【0051】
一般式(I)において、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、またはアシル基を表す。
【0052】
炭素数1〜10のアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、炭素数6〜8のアリール基がより好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
アシル基としては、炭素数2〜10のアシル基が好ましく、炭素数2〜7のアシル基がより好ましく、炭素数2〜4のアシル基がさらに好ましい。アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基が挙げられる。
これらの中でも、メチル基、ブチル基、アセチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。なお、分子構造中にq個有するRは、同一であっても異なっていても良い。
【0053】
一般式(I)で表される化合物の好ましい具体例として、以下の化合物C−1〜C−16が挙げられるがこれらの化合物に限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、単一の化合物ではなく、分子量やアルキレンオキシドの付加数に分布をもつ混合物であり、以下の具体例における繰り返し単位の数は、平均分子量からアルキレンオキシドの平均付加数を算出し、多価アルコールの各水酸基にアルキレンオキシドの付加数を任意に割り当て、代表的な構造を例示したものである。
【0056】
また、市販品としては、ユニオックスMM−550(日油株式会社製)なども好ましく用いることができる。
【0057】
一般式(I)で表される化合物(C)の分子量は、400〜1500であることが好ましく、500〜1200であることがより好ましく、600〜1000であることがさらに好ましい。
【0058】
本発明の組成物中の一般式(I)で表される化合物(C)の含有量は、溶剤を除く全組成物中3〜15質量%が好ましく、4〜12質量%がより好ましく、5〜10質量%がさらに好ましい。一般式(I)で表される化合物(C)の含有量を3質量%以上にすると、離型性が向上する。また、一般式(I)で表される化合物(C)の含有量を15質量%以下にすると、パターン形状が良化する。一般式(I)で表される化合物(C)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種類以上用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
【0059】
重合禁止剤
本発明の組成物には、重合禁止剤を含有することが好ましい。本発明の組成物が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量としては、全重合性単量体に対し、0.001〜1質量%であり、より好ましくは0.005〜0.5質量%、さらに好ましくは0.008〜0.05質量%である。重合禁止剤は、その1種を単独で使用することもできるし、また、その2種以上を混合して使用することもできる。2種類以上の重合禁止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。重合禁止剤を適切な配合量とすることで高い硬化感度を維持しつつ経時による粘度変化が抑制できる。重合禁止剤は重合性単量体の製造時に添加してもよいし、本発明の硬化組成物に後から添加してもよい。重合禁止剤の具体例としては、特開2012−169462号公報の段落番号0121に記載のものが挙げられ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
本発明に用いうる好ましい重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩、フェノチアジン、フェノキサジン、4−メトキシナフトール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル、ニトロベンゼン、ジメチルアニリン等が挙げられる。特に酸素が共存しなくても効果が高いフェノチアジン、4−メトキシナフトール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカルが好ましい。
【0060】
界面活性剤
本発明の組成物には、必要に応じて、界面活性剤を含有することができる。本発明に用いられる界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤、Si系界面活性剤およびフッ素・Si系界面活性剤の少なくとも一種を含むことが好ましく、フッ素系非イオン性界面活性剤が最も好ましい。ここで、「フッ素・Si系界面活性剤」とは、フッ素系界面活性剤およびSi系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
【0061】
本発明で用いることのできる、非イオン性のフッ素系界面活性剤の例としては、商品名 フロラード FC−430、FC−431(住友スリーエム(株)製)、商品名サーフロン S−382(旭硝子(株)製)、EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100((株)トーケムプロダクツ製)、商品名 PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA Solutions, Inc.)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18 (いずれも(株)ネオス製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451 (いずれもダイキン工業(株)製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、F780F(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
また、非イオン性の前記Si系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂(株)製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業(株)製)、KP−341(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
また、前記フッ素・Si系界面活性剤の例としては、商品名 X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも、信越化学工業(株)製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも、大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0062】
本発明の組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%であり、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。界面活性剤は、その1種を単独で使用することもできるし、また、その2種以上を混合して使用することもできる。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が本発明の組成物中0.001〜5質量%の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化を招きにくい。
【0063】
本発明では、一般式(I)で表される化合物を配合することにより、界面活性剤を実質的に含まない態様としても、低い離型力を達成することができる。実質的に含まないとは、例えば、一般式(I)で表される化合物の配合量の1質量%以下であることをいう。
【0064】
その他の成分
本発明の組成物には上述した成分の他に、必要に応じて、光増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、光塩基発生剤、着色剤、無機粒子、エラストマー粒子、塩基性化合物、光酸発生剤、光酸増殖剤、連鎖移動剤、帯電防止剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。このような成分の具体例としては、特開2008−105414号公報の段落番号0092〜0093、および段落番号0113〜0137に記載のものが挙げられ、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。これらの化合物は、その1種を単独で使用することもできるし、また、その2種以上を混合して使用することもできる。
【0065】
本発明では、一般式(I)で表される化合物を配合することにより、パーフルオロ基を有するシランカップリング剤や、2以上のフッ素原子を含むアルキル基を有する重合性化合物を実質的に含まない態様としても、低い離型力を達成することができる。また、本発明では、パーフルオロ基を有するシランカップリング剤を実質的に含まないことにより、硬化性組成物の保存安定性の悪化を防止することができ、また、インプリントパターンの欠陥を抑制することができる。実質的に含まないとは、例えば、一般式(I)で表される化合物の配合量の1質量%以下であることをいう。
【0066】
溶剤
また、本発明の組成物には、溶剤を用いることもできるが、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、実質的に溶剤を含有しないことが特に好ましい。本発明の組成物をインクジェット法で基板上に塗布する場合、溶剤の配合量が少ないと、溶剤の揮発による組成物の粘度変化を抑制できるため、好ましい。
このように、本発明の組成物は、必ずしも、溶剤を含むものではないが、組成物の粘度を微調整する際などに、任意に添加してもよい。本発明の組成物に好ましく使用できる溶剤の種類としては、光インプリント用硬化性組成物やフォトレジストで一般的に用いられている溶剤であり、本発明で用いる化合物を溶解および均一分散させるものであればよく、かつ、これらの成分と反応しないものであれば特に限定されない。本発明で用いることができる溶剤の例としては、特開2008−105414号公報の段落番号0088に記載のものが挙げられ、この内容は本願明細書に組み込まれる。溶剤を用いる場合、その1種を単独で使用することもできるし、また、その2種以上を混合して使用することもできる。
【0067】
本発明の組成物は、上述の各成分を混合して調整することができる。本発明の組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。また、前記各成分を混合した後、例えば、孔径0.003μm〜5.0μmのフィルターで濾過することが好ましい。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
【0068】
本発明の組成物は、23℃における粘度が15mPa・s以下であることが好ましく、12mPa・s以下であることがより好ましく、11mPa・s以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、IJ(インクジェット)吐出性やパターン形成性を向上させることができる。本発明の組成物では、溶剤の配合量を少なくしつつ、このように粘度を下げるために、重合性化合物(A)として反応希釈剤として働くものを配合することが好ましい。反応希釈剤として働く重合性化合物としては、例えば、単官能(メタ)アクリレートが例示される。なお、粘度は、例えばE型粘度計により測定することが可能である。
また、本発明の組成物は、表面張力が、25〜35mN/mの範囲にあることが好ましく、27〜34mN/mの範囲にあることがより好ましく、28〜32mN/mの範囲にあることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、IJ吐出性や表面平滑性を向上させることができる。特に、本発明の組成物は、23℃において粘度15mPa・s以下かつ表面張力25〜35mN/mであることが好ましい。なお、表面張力は、例えばプレート法(Wilhelmy法)により測定することが可能である。
【0069】
パターン形成方法
以下において、本発明の組成物を用いたパターン形成方法(パターン転写方法)について具体的に述べる。本発明のパターン形成方法においては、まず、本発明の組成物を基材上または微細パターンを有するモールド上に塗布し、本発明の組成物をモールドと基材とで挟んだ状態で光照射する。
【0070】
本発明の組成物を基材上に塗布する方法としては、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法、あるいはインクジェット法などを用いることで基材上に塗膜あるいは液滴を配置することができる。特に、本発明の組成物は、上述した一般式(I)で表される化合物を含有しているため、インクジェット法を用いた場合でも、インクジェット吐出性を良好にすることができる。
本発明の組成物は特にインクジェット法に適している。また、本発明の組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.03μm〜30μm程度である。また、本発明の組成物を、多重塗布により塗布してもよい。インクジェット法などにより基材上に液滴を設置する方法において、液滴の量は1pl〜20pl程度が好ましく、液滴を間隔をあけて基材上に配置することが好ましい。さらに、基材と本発明の組成物からなるパターン形成層との間には、例えば平坦化層等の他の有機層などを形成してもよい。これにより、パターン形成層と基板とが直接接しないことから、基板に対するごみの付着や基板の損傷等を防止することができる。尚、本発明の組成物によって形成されるパターンは、基材上に有機層を設けた場合であっても、有機層との密着性に優れる。
【0071】
本発明のインプリント用硬化性組成物を塗布するための基材(基板または支持体)は、種々の用途によって選択可能であり、例えば、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni,Cu,Cr,Feなどの金属基板、紙、SOG(Spin On Glass)、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基板など特に制約されない。また、基材の形状も特に限定されるものではなく、板状でもよいし、ロール状でもよい。また、後述のように前記基材としては、モールドとの組み合わせ等に応じて、光透過性、または、非光透過性のものを選択することができる。
【0072】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。前記モールド上のパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明の組成物は、モールドの最小パターンサイズが50nm以下のモールドを用いてパターン転写を行う際にも良好なパターン形成性が得られる。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0073】
本発明において光透過性の基材を用いた場合に使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの基板などが例示され、特に制約されない。また、モールドの形状も特に制約されるものではなく、板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0074】
本発明のパターン形成方法で用いられるモールドは、硬化性組成物とモールド表面との離型性を向上させるために離型処理を行ったものを用いてもよい。このようなモールドとしては、シリコン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSXや、住友スリーエム(株)製のNovec EGC−1720等、市販の離型剤も好適に用いることができる。本発明の組成物は離型処理を行っていないモールドを用いても優れたパターン形成性を発現する。
【0075】
本発明の組成物を用いて光インプリントリソグラフィを行う場合、本発明のパターン形成方法では、通常、モールド圧力を10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部の硬化性組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0076】
本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、本発明のパターン形成方法中、光照射時における好ましい真空度は、10
-1Paから常圧の範囲である。
【0077】
本発明の組成物を硬化させるために用いられる光は特に限定されず、例えば、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でもよい。
【0078】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm
2〜200mW/cm
2の範囲にすることが望ましい。1mW/cm
2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、200mW/cm
2以下とすることにより、副反応が生じることによる硬化膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm
2〜1000mJ/cm
2の範囲にすることが望ましい。5mJ/cm
2未満では、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生しやすくなる。一方、1000mJ/cm
2を超えると組成物の分解による硬化膜の劣化のおそれが生じる。
さらに、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソ、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御してもよい。
【0079】
本発明のパターン形成方法においては、光照射によりパターン形成層(本発明の組成物からなる層)を硬化させた後、必要に応じて硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程を含んでいてもよい。光照射後に本発明の組成物を加熱硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分間が好ましく、15〜45分間がさらに好ましい。
パターン形成方法の具体例としては、特開2012−169462号公報の段落番号0125〜0136に記載のものが挙げられ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0080】
また、本発明のパターン形成方法は、基材上に下層膜組成物を塗布して下層膜を形成する工程、下層膜表面に本発明の組成物を塗布する工程、本発明の組成物と下層膜を、基材と微細パターンを有するモールドの間に挟んだ状態で光照射し、本発明の組成物を硬化する工程、モールドを剥離する工程を含んでいてもよい。さらに、基材上に下層膜組成物を塗布した後、熱または光照射によって、下層膜組成物の一部を硬化した後、本発明の組成物を塗布するようにしてもよい。
【0081】
下層膜組成物は、例えば、硬化性主剤を含む。硬化性主剤は、熱硬化性であっても光硬化性であってもよく、熱硬化性が好ましい。硬化性主剤の分子量は400以上であることが好ましく、低分子化合物でもポリマーでもよいが、ポリマーが好ましい。硬化性主剤の分子量は、好ましくは500以上であり、より好ましくは1000以上でありさらに好ましくは3000以上である。分子量の上限としては、好ましくは200000以下であり、より好ましくは100000以下であり、さらに好ましくは50000以下である。分子量を400以上とすることで、成分の揮発をより効果的に抑制できる。例えば、特表2009−503139号公報の段落番号0040〜0055に記載のものが挙げられ、この内容は本願明細書に組み込まれる。これらの化合物は、その1種を単独で使用することもできるし、また、その2種以上を混合して使用することもできる。
本発明では、例えば、以下の化合物を用いることができる。
【化6】
平均m+n=4、平均n/(m+n)=0.5
【0082】
硬化性主剤の含有量は溶剤を除く全成分中30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。硬化性主剤は2種類以上であってもよく、この場合は、合計量が前記範囲となることが好ましい。
【0083】
下層膜組成物は、溶剤を含有していることが好ましい。好ましい溶剤としては、常圧における沸点が80〜200℃の溶剤である。溶剤の種類としては下層膜組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
下層膜組成物中における前記溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、塗布性、目的とする膜厚によって最適に調整されるが、塗布性改善の観点から、全組成物中70質量%以上の範囲で添加することができ、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。溶剤は、その1種を単独で使用することもできるし、また、その2種以上を混合して使用することもできる。
【0084】
下層膜組成物は、他の成分として、界面活性剤、熱重合開始剤、重合禁止剤および触媒の少なくとも1種を含有していても良い。これらの配合量としては、溶剤を除く全成分に対し、50質量%以下が好ましい。これらの化合物は、その1種を単独で使用することもできるし、また、その2種以上を混合して使用することもできる。
【0085】
下層膜組成物は、上述の各成分を混合して調整することができる。また、上述の各成分を混合した後、例えば、孔径0.003μm〜5.0μmのフィルターで濾過することが好ましい。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
【0086】
下層膜組成物は、基材上に塗布して下層膜を形成する。基材上に塗布する方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法、あるいはインクジェット法などにより基材上に塗膜あるいは液滴を配置することができる。膜厚均一性の観点から、より好ましくはスピンコート法である。その後、溶剤を乾燥する。好ましい乾燥温度は70℃〜130℃である。好ましくはさらに活性エネルギー(好ましくは熱および/または光)によって硬化を行う。好ましくは150℃〜250℃の温度で加熱硬化を行うことである。溶剤を乾燥する工程と硬化する工程を同時に行っても良い。このように、下層膜組成物を塗布した後、熱または光照射によって、下層膜組成物の一部を硬化した後、本発明の組成物を塗布することが好ましい。このような手段を採用すると、本発明の組成物の光硬化時に、下層膜組成物も完全に硬化し、密着性がより向上する傾向にある。
【0087】
本発明の組成物からなる下層膜の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.1nm〜100nm程度であり、好ましくは0.5〜20nmであり、さらに好ましくは1〜10nmである。また、下層膜組成物を、多重塗布により塗布してもよい。得られた下層膜はできる限り平坦であることが好ましい。
【0088】
基材(基板または支持体)は、種々の用途によって選択可能であり、例えば、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基材、紙、SOG(Spin On Glass)、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基材、TFTアレイ基材、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基材、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基材など特に制約されない。しかしながら、エッチング用途に用いる場合、半導体作製基材が好ましい。
【0089】
微細パターン
上述のように本発明のパターン形成方法によって形成された微細パターンは、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)やエッチングレジストとして使用することができる。
また、本発明の組成物を用いたパターンは、耐溶剤性も良好である。本発明における硬化性組成物は多種の溶剤に対する耐性が高いことが好ましいが、一般的な基板製造工程時に用いられる溶剤、例えば、25℃のN−メチルピロリドン溶媒に10分間浸漬した場合に膜厚変動を起こさないことが特に好ましい。
本発明のパターン形成方法によって形成されたパターンは、エッチングレジストとしても有用である。本発明の組成物をエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基材として例えばSiO
2等の薄膜が形成されたシリコンウエハ等を用い、基材上に本発明のパターン形成方法によってナノオーダーの微細なパターンを形成する。その後、ウェットエッチングの場合にはフッ化水素等、ドライエッチングの場合にはCF
4等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基材上に所望のパターンを形成することができる。本発明の組成物は、フッ化炭素等を用いるドライエッチングに対するエッチング耐性も良好であることが好ましい。
【0090】
半導体デバイスの製造方法
本発明の半導体デバイスの製造方法は、上述した微細パターンをエッチングマスクとして用いることを特徴とする。上述した微細パターンをエッチングマスクとして、基材に対して処理を施す。例えば、微細パターンをエッチングマスクとしてドライエッチングを施し、基材の上層部分を選択的に除去する。基材に対してこのような処理を繰り返すことにより、半導体デバイスを得ることができる。半導体デバイスは、例えば、LSI(large scale integrated circuit:大規模集積回路)である。
【実施例】
【0091】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0092】
<光インプリント用硬化性組成物の調製>
下記表に示す割合で、重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)および一般式(I)で表される化合物(C)を混合し、さらに重合禁止剤として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル(東京化成社製)を、硬化性組成物に対して200ppm(0.02質量%)となるように加えた。これを0.1μmのPTFE製フィルターでろ過し、本発明の光インプリント用硬化性組成物X−1〜X−16および比較用硬化性組成物R−1〜R−5を調製した。尚、表1は、重量比で示した。E型粘度計RE85L(東機産業)および表面張力計CBVP−A3(協和界面化学)を用いて、調製した硬化性組成物の23℃における粘度および表面張力を測定した。測定した粘度および表面張力の結果を表に示す。
【0093】
実施例および比較例で用いた、重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)および一般式(I)で表される化合物(C)の詳細は、下記のとおりである。
【0094】
<重合性化合物(A)>
A−1:ビスコート#192(2−フェノキシエチルアクリレート、大阪有機化学工業社製)
A−2:2−ブロモメチルナフタレンとアクリル酸より合成
A−3:ライトアクリレートNP−A(ネオペンチルグリコールジアクリレート、共栄社化学社製)
A−4:α,α'−ジクロロ−m−キシレンとアクリル酸より合成
A−5:R−1620(2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、ダイキン工業製)
【化7】
【0095】
<光重合開始剤(B)>
B−1:イルガキュア 819(BASF社製)
B−2:ルシリン TPO(BASF社製)
B−3:ダロキュア 1173(BASF社製)
B−4:イルガキュア OXE01(BASF社製)
【0096】
<一般式(I)で表される化合物(C)>
C−1:ユニオックスMM−550(日油株式会社製)
【0097】
一般式(I)で表される化合物(C−3)、(C−4)、(C−7)、(C−8)、(C−9)、(C−10)、(C−12)、(C−14)、および(C−16)は、以下に記載の方法で合成した。
【0098】
−一般式(I)で表される化合物(C−3)の合成−
【化8】
【0099】
ユニルーブM−400(日油株式会社製)40.0gとジメチルスルホキシド100mLとを混合した後、カリウムt−ブトキシド(和光純薬工業社製)12.3gを分割添加した。さらに、ベンジルブロミド(和光純薬工業社製)17.1gを滴下した後、室温で4時間反応させた。得られた反応混合物に、水100mLを加えた後、クロロホルム200mLで分液抽出を行った。有機層を減圧濃縮することで、目的の一般式(I)で表される化合物(C−3)を得た。
【0100】
−一般式(I)で表される化合物(C−4)の合成−
【化9】
【0101】
ユニルーブM−550(日油株式会社製)27.5gと酢酸エチル100mLとを混合した後、酢酸無水物(和光純薬工業社製)5.6gを加えた。さらに、トリエチルアミン(和光純薬工業社製)5.6gを滴下した後、室温で4時間反応させた。得られた反応混合物に、飽和重曹水100mLを加えて小過剰の酢酸無水物を加水分解した後、クロロホルム200mLで分液抽出を行った。次いで、有機層を0.1Mの希塩酸水100mLで、さらに純水100mLで洗浄した。有機層を減圧濃縮することで、目的の一般式(I)で表される化合物(C−4)を得た。
【0102】
−一般式(I)で表される化合物(C−7)の合成−
【化10】
【0103】
ユニオールD−700(日油株式会社製)35.0gとジメチルスルホキシド200mLとを混合した後、カリウムt−ブトキシド12.3gを分割添加した。さらに、p−トルエンスルホン酸メチル(和光純薬工業社製)20.5gを滴下した後、室温で4時間反応させた。得られた反応混合物に、1MのNaOH水溶液100mLを加え、小過剰のp−トルエンスルホン酸メチルを加水分解した後、酢酸エチル200mLで分液抽出を行った。次いで、有機層を水100mLで洗浄した。有機層を減圧濃縮することで、目的の一般式(I)で表される化合物(C−7)を得た。
【0104】
−一般式(I)で表される化合物(C−8)の合成−
【化11】
【0105】
ユニルーブMB−7(日油株式会社製)77gとジメチルスルホキシド200mLとを混合した後、カリウムt−ブトキシド12.3gを分割添加した。さらに、p−トルエンスルホン酸メチル(和光純薬工業社製)20.5gを滴下した後、室温で4時間反応させた。得られた反応混合物に、1MのNaOH水溶液100mLを加え、小過剰のp−トルエンスルホン酸メチルを加水分解した後、酢酸エチル200mLで分液抽出を行った。次いで、有機層を水100mLで洗浄した。有機層を減圧濃縮することで、目的の一般式(I)で表される化合物(C−8)を得た。
【0106】
−一般式(I)で表される化合物(C−9)の合成−
【化12】
【0107】
プルロニック(株式会社ADEKA社製)55gとジメチルスルホキシド200mLとを混合した後、カリウムt―ブトキシド12.3gを分割添加した。さらに、p−トルエンスルホン酸メチル(和光純薬工業社製)20.5gを滴下した後、室温で4時間反応させた。得られた反応混合物に、1MのNaOH水溶液100mLを加え、小過剰のp−トルエンスルホン酸メチルを加水分解した後、酢酸エチル200mLで分液抽出を行った。次いで、有機層を水100mLで洗浄した。有機層を減圧濃縮することで、目的の一般式(I)で表される化合物(C−9)を得た。
【0108】
−一般式(I)で表される化合物(C−10)の合成−
【化13】
【0109】
ユニオックスG−450(日油株式会社製)15.0gとジメチルスルホキシド200mLを混合した後、カリウムt−ブトキシド12.3gを分割添加した。さらに、p−トルエンスルホン酸メチル(和光純薬工業社製)20.5gを滴下した後、室温で4時間反応させた。得られた反応混合物に、1MのNaOH水溶液100mLを加え、小過剰のp−トルエンスルホン酸メチルを加水分解した後、クロロホルム200mLで分液抽出を行った。次いで、有機層を水100mLで洗浄した。有機層を減圧濃縮することで、目的の一般式(I)で表される化合物(C−10)を得た。
【0110】
−一般式(I)で表される化合物(C−12)の合成−
【化14】
【0111】
ユニオールTG−700(日油株式会社製)23.3gとジメチルスルホキシド200mLとを混合した後、カリウムt−ブトキシド12.3gを分割添加した。さらに、p−トルエンスルホン酸メチル(和光純薬工業社製)20.5gを滴下した後、室温で4時間反応させた。得られた反応混合物に、1MのNaOH水溶液100mLを加え、小過剰のp−トルエンスルホン酸メチルを加水分解した後、酢酸エチル200mLで分液抽出を行った。次いで、有機層を水100mLで洗浄した。有機層を減圧濃縮することで、目的の一般式(I)で表される化合物(C−12)を得た。
【0112】
−一般式(I)で表される化合物(C−14)の合成−
【化15】
【0113】
ユニルーブDGP−700(日油株式会社製)17.5gとジメチルスルホキシド200mLとを混合した後、カリウムt−ブトキシド12.3gを分割添加した。さらに、p−トルエンスルホン酸メチル(和光純薬工業社製)20.5gを滴下した後、室温で4時間反応させた。得られた反応混合物に、1MのNaOH水溶液100mLを加え、小過剰のp−トルエンスルホン酸メチルを加水分解した後、酢酸エチル200mLで分液抽出を行った。次いで、有機層を水100mLで洗浄した。有機層を減圧濃縮することで、目的の一般式(I)で表される化合物(C−14)を得た。
【0114】
−一般式(I)で表される化合物(C−16)の合成−
【化16】
【0115】
ペンタエリスリトールプロピレンオキシド付加物(シグマ アルドリッチ社製)15.7gとジメチルスルホキシド200mLとを混合した後、カリウムt−ブトキシド12.3gを分割添加した。さらに、p−トルエンスルホン酸メチル(和光純薬工業社製)20.5gを滴下した後、室温で4時間反応させた。得られた反応混合物に、1MのNaOH水溶液100mLを加え、小過剰のp−トルエンスルホン酸メチルを加水分解した後、酢酸エチル200mLで分液抽出を行った。次いで、有機層を水100mLで洗浄した。有機層を減圧濃縮することで、目的の一般式(I)で表される化合物(C−16)を得た。
【0116】
<比較用化合物(S)>
S−1:ZONYL FSO−100(DUPONT社製、S−1は、R
1R
2の一般構造を有し、R
1=F(CF
2CF
2)y−であり、yは1〜7であり、R
2=−CH
2CH
2O(CH
2CH
2O)xHであり、xは0〜15である。)
S−2:ポリエチレングリコール(和光純薬工業社製、数平均分子量600)
S−3:ポリプロピレングリコール(和光純薬工業社製、トリオール型、数平均分子量700)
S−4:ポリエチレングリコールジメチルエーテル250(関東化学社製、数平均分子量250)
【0117】
【化17】
【0118】
【表1】
【0119】
<下層膜組成物の調製>
NKオリゴ EA−7140/PGMAc(新中村化学工業社製)3gを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート997gに溶解させた後、0.1μmのテトラフロロエチレンフィルターでろ過して下層膜組成物を得た。
【化18】
NKオリゴ EA−7140/PGMAc (固形分70%)
平均m+n=4、平均n/(m+n)=0.5
【0120】
(評価)
得られた各実施例および比較例のインプリント用硬化性組成物について以下の評価を行った。結果を下記表に示す。
【0121】
<インクジェット(IJ)吐出位置精度>
シリコンウェハ上に、23℃に温度調整した光インプリント用硬化性組成物を、インクジェットプリンターDMP−2831(富士フイルムダイマティックス社製)を用いて、ノズルあたり1plの液滴量で吐出して、シリコンウェハ上に液滴が100μm間隔の正方配列となるように塗布した。
塗布された基板の5mm角の2500ドッドを観察し、正方配列からのずれを測定し、標準偏差σを算出した。インクジェット吐出位置精度は、以下の通りA〜Dで評価した。
A:σ<3μm
B:3μm≦σ<5μm
C:5μm≦σ<10μm
D:10μm≦σ
【0122】
<離型力評価>
シリコンウエハ上に下層膜組成物をスピンコートし、100℃のホットプレート上で1分間加熱して溶剤を乾燥した。さらに、220℃のホットプレート上で5分間加熱することで、下層膜組成物を硬化させて下層膜を形成した。硬化後の下層膜の膜厚は、3nmであった。
前記シリコンウェハ上の下層膜の表面に、23℃に温度調整した光インプリント用硬化性組成物を、インクジェットプリンターDMP−2831(富士フイルムダイマティックス製)を用いて、ノズルあたり1plの液滴量で吐出して、下層膜上に液滴が約100μm間隔の正方配列となるように塗布した。
下層膜上に塗布した光硬化性組成物に対して、0.1気圧の減圧下、石英モールド(ライン/スペース=1/1、線幅30nm、溝深さ60nm、ラインエッジラフネス3.0nm)を接触させ、石英モールド側から高圧水銀ランプを用いて100mJ/cm
2の条件で露光した。露光後、石英モールドを離し、そのときの離型力(F)を測定した。離型力(F)は、特開2011−206977号公報の段落番号0102〜0107に記載の比較例に記載の方法に準じて測定を行った。離型力(F)は、以下の通りS〜Eで評価した。
S:F<12N
A:12N≦F<13N
B:13N≦F<15N
C:15N≦F<20N
D:20N≦F<30N
E:30N≦F
【0123】
【表2】
【0124】
表の結果から明らかな通り、実施例1〜16で得られた光インプリント用硬化性組成物は、インクジェット吐出位置精度および離型力の評価が優れていた。
一方、比較例1〜4で得られた光インプリント用硬化性組成物は、上述した一般式(I)で表される化合物を含有していないため、インクジェット吐出位置精度および離型力の評価が良好ではなかった。また、比較例1は、表面張力が大幅に低いことから、硬化性組成物をインクジェットプリンターから吐出させることができず、離型力を評価できなかった。
【0125】
このように、本発明によれば、光インプリント用硬化性組成物に、重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、上述した一般式(I)で表される化合物とを含有させることによって、インクジェット適性および離型性に優れた光インプリント用硬化性組成物を提供できることがわかった。