特許第6030005号(P6030005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030005
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】白金族元素の回収方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 11/00 20060101AFI20161114BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20161114BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20161114BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20161114BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20161114BHJP
   C01G 55/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   C22B11/00 101
   C22B3/04ZAB
   C22B3/44 101
   C22B7/00 G
   B09B3/00 304J
   C01G55/00
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-45023(P2013-45023)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2014-173107(P2014-173107A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】八木 和人
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−217536(JP,A)
【文献】 特開2011−195935(JP,A)
【文献】 特開2012−219314(JP,A)
【文献】 特開2009−041047(JP,A)
【文献】 特開2009−097024(JP,A)
【文献】 特表2008−527165(JP,A)
【文献】 特開2007−302944(JP,A)
【文献】 特開2006−130387(JP,A)
【文献】 柴田隼次他1名,貴金属のリサイクル技術,資源と素材,2002年12月 5日,vol.118 No.1,p.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金族元素を含む合金を硝酸溶液で浸出し濾別することで白金族元素を主成分とする残渣と非白金族元素を主成分とする浸出液に分離する工程と、該白金族元素を主成分とする残渣を塩酸と酸化剤とからなる混合溶液で溶解することで白金族元素を白金族元素イオンの塩化物錯体に転換する工程と、該白金族元素イオンの塩化物錯体を含有する溶液に1価カチオンの塩化物を添加することで白金族元素の晶析物を析出させて、これを濾別回収する工程、とからなり、得られる白金族元素の純度が99.9wt%以上であることを特徴とする白金族元素の回収方法。
【請求項2】
前記白金族元素が、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウムからなる群から選択した一種以上の元素であることを特徴とする請求項1に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項3】
前記非白金族元素が、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ホウ素からなる群から選択した一種以上の元素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項4】
白金族元素を含む合金を硝酸溶液で浸出し濾別することで白金族元素を主成分とする残渣と非白金族元素を主成分とする浸出液に分離する工程において、該硝酸溶液の濃度をpH0〜2となるように調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項5】
白金族元素を含む合金を硝酸溶液で浸出し濾別することで白金族元素を主成分とする残渣と非白金族元素を主成分とする浸出液に分離する工程において、該硝酸溶液に連続的または断続的に硝酸を添加することで硝酸濃度を調整することを特徴とする請求項4に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項6】
白金族元素を含む合金を硝酸溶液で浸出し濾別することで白金族元素を主成分とする残渣と非白金族元素を主成分とする浸出液に分離する工程において、該硝酸溶液の温度を50〜100℃となるように制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項7】
白金族元素を含む合金を硝酸溶液で浸出し濾別することで白金族元素を主成分とする残渣と非白金族元素を主成分とする浸出液に分離する工程において、濾別した浸出液中の白金族元素の濃度が500mg/L以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項8】
該白金族元素を主成分とする残渣を塩酸と酸化剤とからなる混合溶液で溶解することで白金族元素を白金族元素イオンの塩化物錯体に転換する工程において、該混合溶液の温度を30〜100℃となるように制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項9】
該白金族元素を主成分とする残渣を塩酸と酸化剤とからなる混合溶液で溶解することで白金族元素を白金族元素イオンの塩化物錯体に転換する工程において、該酸化剤が、過酸化水素水、次亜塩素酸イオンを含む溶液、過炭酸ナトリウム、オゾンを含む溶液、塩素ガス及び塩素ガスを含む溶液の群から選択した一種以上の酸化剤であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項10】
該白金族元素イオンの塩化物錯体を含有する溶液に1価カチオンの塩化物を添加することで白金族元素の晶析物を析出させて、これを濾別回収する工程において、該1価カチオンの塩化物が、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、塩化アンモニウムの群から選択した一種以上の塩化物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の白金族元素回収方法。
【請求項11】
さらに、該晶析物を大気中、水素雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中、400〜1200℃で焙焼することで白金族元素を回収する工程からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の白金族元素の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金族元素を含有する合金から純度の高い白金族元素を高収率で回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の進展に伴い、電子回路や各種の電子素子形成のために様々な薄膜が形成されている。また、記録媒体用磁性薄膜(例えばCo-Cr-Pt-Ti等)の材料用として、白金族元素を含有するスパッタリングターゲットを使用して、薄膜を形成することが行われている。これらの薄膜は白金等を含有する合金製のターゲットをアルゴンガス等の不活性雰囲気下でスパッタリングすることにより形成される。
【0003】
このようなターゲットが製作される段階では、切削屑等の多量の端材が生じる。これらは全てスクラップとなるが、白金族元素は高価な材料なので、これを回収して再使用する必要がある。たとえば、特許文献1〜2には、白金含有スクラップを王水等の酸で溶解し残渣を除去した後、白金含有溶液にNaOH溶液を添加して、不純物を水酸化物として沈殿させ、これを濾過した後、塩化アンモニウム溶液を添加して塩化白金酸アンモニウム沈殿回収し、さらにこの塩化白金酸アンモニウムを焙焼することにより、白金を回収すること技術が開示されている
【0004】
このように従来では、白金または白金族合金の溶解には王水が用いられてきた。その理由として、白金族元素は非常に化学的に安定なので、塩酸や硝酸、硫酸のみでは溶解がほとんど進まず、また、不動態の性質を有する遷移金属との合金の場合には、さらに溶解が困難となる場合がある。したがって、王水の有する強力な酸化力が一般的に利用されている。
【0005】
ところが、王水による溶解の場合、後工程で問題が生じていた。一つは硝酸イオンが溶液中に存在していると、白金族元素の塩化錯体と1価カチオン、特に、アンモニウムイオンからなる晶析物の生成率が低下し、白金族元素の回収率が低減することがあった。そして、これを回避するために王水溶解後に硝酸イオンを分解する工程(脱硝反応工程)が必要となり、試薬コストの増大、さらには追加工程による回収時間の延長が問題となった。
【0006】
二つには王水溶解ではその強力な酸化力ゆえに白金族元素以外の遷移金属を含む不純物元素も共に溶解してしまうので、溶解液から回収した白金族元素には多量の不純物元素が随伴しており、純度が低下するという問題があった。そして、この不純物を除去するために別の精製工程を追加するか、再精製を行う必要があり、同様に試薬コストの増大や回収時間の延長が問題となった。以上の理由により、白金族元素の回収、精製プロセスにおいては、回収効率と純度の向上、さらには、試薬コストの低減、回収工程の短縮を実現させる必要がある。
【0007】
上記に関連して、特許文献3には、ブラスト粉中に含まれる微量の白金を回収する方法として、ブラスト粉を希硫酸に投入し、白金以外の金属を溶解して濾過した後、得られた沈殿物を王水又は酸化性塩酸溶液に溶解し、その溶解液に塩化アンモニウムを添加して、白金を塩化白金酸アンモニウム塩の沈殿物として回収する技術が開示されている。この技術も王水を利用するもので上記の問題を抱えている。その他、特許文献4には、陽イオン不純物をクロロ錯体とし、これをカルボン酸で抽出することで、白金族元素の分離回収する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−129145号公報
【特許文献2】特開2003−27154号公報
【特許文献3】特開2012−219314号公報
【特許文献4】特許第3496319号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上から、本発明はスパッタリング用白金族元素含有ターゲットの製造工程等で発生する端材、切削屑、平研屑等のスクラップから、白金族元素含有ターゲットに再使用できる、高純度の白金族元素を低コストで効率的に回収する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、
1)白金族元素を含む合金を硝酸溶液で浸出し濾別することで白金族元素を主成分とする残渣と非白金族元素を主成分とする浸出液に分離する工程と、該白金族元素を主成分とする残渣を塩酸と酸化剤とからなる混合溶液で溶解することで白金族元素を白金族元素イオンの塩化物錯体に転換する工程と、該白金族元素イオンの塩化物錯体を含有する溶液に1価カチオンの塩化物を添加することで白金族元素の晶析物を析出させて、これを濾別回収する工程、とからなることを特徴とする白金族元素の回収方法、
2)前記白金族元素が、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウムからなる群から選択した一種以上の元素であることを特徴とする上記1)記載の白金族元素の回収方法、
3)前記非白金族元素が、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ホウ素からなる群から選択した一種以上の元素であることを特徴とする上記1)又は2)記載の白金族元素の回収方法、
4)白金族元素を含む合金を硝酸溶液で浸出し濾別することで白金族元素を主成分とする残渣と非白金族元素を主成分とする浸出液に分離する工程において、該硝酸溶液の濃度をpH0〜2となるように調整することを特徴とする上記1)〜3)のいずれか一に記載の白金族元素の回収方法、
5)白金族元素を含む合金を硝酸溶液で浸出し濾別することで白金族元素を主成分とする残渣と非白金族元素を主成分とする浸出液に分離する工程において、該硝酸溶液に連続的または断続的に硝酸を添加することで硝酸濃度を調整することを特徴とする上記4)記載の白金族元素の回収方法、
6)白金族元素を含む合金を硝酸溶液で浸出し濾別することで白金族元素を主成分とする残渣と非白金族元素を主成分とする浸出液に分離する工程において、該硝酸溶液の温度を50〜100℃となるように制御することを特徴とする上記1)〜5)のいずれか一に記載の白金族元素の回収方法、
7)白金族元素を含む合金を硝酸溶液で浸出し濾別することで白金族元素を主成分とする残渣と非白金族元素を主成分とする浸出液に分離する工程において、濾別した浸出液中の白金族元素の濃度が500mg/L以下であることを特徴とする上記1)〜6)のいずれか一に記載の白金族元素の回収方法、
8)該白金族元素を主成分とする残渣を塩酸と酸化剤とからなる混合溶液で溶解することで白金族元素を白金族元素イオンの塩化物錯体に転換する工程において、該混合溶液の温度を30〜100℃となるように制御することを特徴とする上記1)〜7)のいずれか一に記載の白金族元素の回収方法、
9)該白金族元素を主成分とする残渣を塩酸と酸化剤とからなる混合溶液で溶解することで白金族元素を白金族元素イオンの塩化物錯体に転換する工程において、該酸化剤が、過酸化水素水、次亜塩素酸イオンを含む溶液、過炭酸ナトリウム、オゾンを含む溶液、塩素ガス及び塩素ガスを含む溶液の群から選択した一種以上の酸化剤であることを特徴とする上記1)〜8)のいずれか一に記載の白金族元素の回収方法、
10)該白金族元素イオンの塩化物錯体を含有する溶液に1価カチオンの塩化物を添加することで白金族元素の晶析物を析出させて、これを濾別回収する工程において、該1価カチオンの塩化物が、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、塩化アンモニウムの群から選択した一種以上の塩化物であることを特徴とする上記1)〜9)のいずれか一に記載の白金族元素回収方法、
11)さらに、該晶析物を大気中又は不活性ガス雰囲気中、400〜1200℃で焙焼することで白金族元素を回収する工程からなることを特徴とする上記1)〜10)にいずれか一に記載の白金族元素の回収方法、を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、スパッタリング用白金族元素含有ターゲットの製造工程で発生する端材、切削屑、平研屑等のスクラップから、比較的簡単な工程で、ターゲットに再使用できる高純度の白金族元素を高収率で回収することができるという優れた効果を有する。また、これによって得られた高純度の白金元素含有ターゲットは、薄膜の物理的特性又は化学的特性を改善するだけでなく、不純物元素に起因するスパッタリング中の異常放電、パーティクル等の発生が減少するという著しい特長を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、まず、白金族元素を含む合金を硝酸溶液で浸出し濾別することで、白金族元素を主成分とする残渣と非白金族元素を主成分とする浸出液に分離する。本発明は、非白金族元素を硝酸で浸出することが特に重要である。従来は、王水を使用して白金族元素を浸出していたが、本発明のように非白金族元素を浸出することで、酸の過剰消費がなくなるため試液コストを低減することができる。さらに、本発明の方法では、白金族元素のロスが少なく(すなわち、白金族元素は硝酸にほとんど浸出しない)、また、塩酸を使用する場合のように水素の発生もない。なお、本発明とは直接関係はないが、浸出液は廃液とせず、必要に応じて非白金族元素の回収も可能である。
【0013】
非白金族元素を浸出する際は、該硝酸溶液の濃度をpH0〜2となるように調整することが好ましい。pHがマイナスであると、白金族元素が浸出することがあり、一方、pHが2を超えると、非白金族元素の浸出率が低下するからである。また、硝酸添加は濃度を調整しながら連続的または断続的に添加することが好ましい。これは、浸出可能な非白金族元素が存在すると、硝酸添加後pHは徐々に高くなるが、一方で、非白金族元素が全て溶解すると、pHの変化がなくなる。したがって、このような添加の方法により、硝酸の過剰消費を抑制することができる。
【0014】
また、白金族元素を含む合金を硝酸溶液で浸出し濾別することで白金族元素を主成分とする残渣と非白金族元素を主成分とする浸出液に分離する工程において、硝酸溶液の温度を50〜100℃となるように制御することが好ましい。硝酸溶液の温度が50℃未満であると反応速度が低下し、一方、100℃超であると硝酸溶液の一部が蒸発してNOxガスが発生するため好ましくない。さらに、非白金族元素の浸出を効果的に行うことで、濾別した浸出液中の白金族元素の濃度が500mg/L以下とすることができ、白金族元素の回収率を高めることができる。
【0015】
次に、本発明は、白金族元素を主成分とする残渣を塩酸と酸化剤とからなる混合溶液で溶解することで、白金族元素を白金族元素イオンの塩化物錯体に転換する。これにより、先述の脱硝反応処理を行う必要がなく、試薬コストの低減、回収工程の簡略化が可能となる。また、このとき、混合溶液の温度を30〜100℃となるように制御することが好ましい。混合溶液の温度が30℃未満であると反応速度が低下し、一方、100℃超であると混合溶液の一部が蒸発し、ガスを発生するため好ましくない。また酸化剤は、公知のものを使用することができるが、過酸化水素水、次亜塩素酸イオンを含む溶液、過炭酸ナトリウム、オゾンを含む溶液、塩素ガス及び塩素ガスを含む溶液を用いることが好ましい。
【0016】
その後、本発明は、白金族元素イオンの塩化物錯体を含有する溶液に1価カチオンの塩化物を添加することで、白金族元素の晶析物を析出させて、これを濾別回収する。該1価カチオンの塩化物としては、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、塩化アンモニウムを用いることができる。これによって得られた晶析物は、適宜、加熱処理することで、高純度の白金族元素を得ることができる。加熱処理の条件としては、回収する白金族元素により異なるが、例えば、大気中、水素ガス雰囲気中、又は、窒素ガス若しくはアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中、400〜1200℃で焙焼することができる。
【0017】
以上のように、本発明は、スパッタリング用白金族元素含有ターゲットの製造工程で発生する端材、切削屑、平研屑等のスクラップからの白金族元素の回収方法であって、特に、白金族元素と非白金族元素との合金スクラップからの白金族元素を回収する方法であり、白金族元素としては、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム又はこれらの二種以上を組み合わせた合金が挙げられ、また、非白金族元素として、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ホウ素又はこれらの二種以上を組み合わせた合金が挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0019】
(実施例1)
Ni−Pt−Ir合金を純水に浸漬した後、液温80℃に維持しながらpH0〜2になるように硝酸を連続的又は断続的に添加した。これにより、白金族元素(Pt、Ir)が沈殿し、非白金族元素(Ni)が浸出した。pH変動がなくなった後、硝酸の添加を停止し、濾過を行って白金族元素と非白金族元素を分離した。このとき、濾液に含まれる白金族元素(Pt、Ir)の濃度は、1mg/L未満であった。
次に、白金族元素を主成分とする濾過残渣に、塩酸と過酸化水素の混合溶液を添加し、液温80℃となるように加熱して、濾過残渣を全て溶解し、白金族元素イオンの塩化物錯体を形成した。このとき、溶液に含まれる白金族元素(Pt、Ir)の濃度は50g/Lであり、また、非白金族元素(Ni)の濃度は10g/Lであった。
その後、この白金族元素イオンの塩化物錯体の溶液に、塩化アンモニウムを添加し、数時間経過後、白金族元素のアンモニウム結晶を析出した。これを濾過して、液中に生成した晶析物を濾別した。さらに、この白金族元素の晶析物を水素雰囲気中、700℃で2時間加熱処理することにより、高純度の白金族元素を回収した。
この回収した白金族元素に対して、GDMS(グロー放電質量分析)を行った結果、主な不純物であるNiの含有量が20wtppm未満であった。また、その他の不純物含有量も合計で50wtpp未満であった。そして、濾液に含まれる白金族元素の含有量は500wtppm未満であり、白金族元素の回収率は90%以上であった。
【0020】
(実施例2)
Cr−Fe−Co−Cu−B−Ru−Pd合金を純水に浸漬した後、液温100℃に維持しながらpH0〜2になるように硝酸を連続的又は断続的に添加した。これにより、白金族元素(Ru、Pd)が沈殿し、非白金族元素(Cr、Fe、Co、Cu、B)が浸出した。pH変動がなくなった後、硝酸の添加を停止し、濾過を行って白金族元素と非白金族元素を分離した。このとき、濾液に含まれる白金族元素(Ru、Pd)の濃度は、1mg/L未満であった。
次に、白金族元素を主成分とする濾過残渣に、塩酸と過酸化水素の混合溶液を添加し、液温100℃となるように加熱して、濾過残渣を全て溶解し、白金族元素イオンの塩化物錯体を形成した。このとき、溶液に含まれる白金族元素(Ru、Pd)の濃度は30g/Lであり、また、非白金族元素(Cr、Fe、Co、Cu、B)の濃度は10g/Lであった。
その後、この白金族元素イオンの塩化物錯体の溶液に、塩化アンモニウムを添加し、数時間経過後、白金族元素のアンモニウム結晶を析出した。これを濾過して、液中に生成した晶析物を濾別した。さらに、この白金族元素の晶析物を水素雰囲気中、1200℃で2時間加熱処理することにより、高純度の白金族元素を回収した。
この回収した白金族元素に対して、GDMS(グロー放電質量分析)を行った結果、主な不純物であるCr、Fe、Co、Cu、Bの合計含有量が100wtppm未満であった。また、その他の不純物含有量も合計で500wtpp未満であった。そして、濾液に含まれる白金族元素の含有量は500wtppm未満であり、白金族元素の回収率は90%以上であった。
【0021】
(実施例3)
Mn−Ni−Ru−Ir合金を純水に浸漬した後、液温50℃に維持しながらpH0〜2になるように硝酸を連続的又は断続的に添加した。これにより、白金族元素(Ru、Ir)が沈殿し、非白金族元素(Mn、Ni)が浸出した。pH変動がなくなった後、硝酸の添加を停止し、濾過を行って白金族元素と非白金族元素を分離した。このとき、濾液に含まれる白金族元素(Ru、Ir)の濃度は、1mg/L未満であった。
次に、白金族元素を主成分とする濾過残渣に、塩酸と過酸化水素の混合溶液を添加し、液温30℃となるように加熱して、濾過残渣を全て溶解し、白金族元素イオンの塩化物錯体を形成した。このとき、溶液に含まれる白金族元素(Ru、Ir)の濃度は30g/Lであり、また、非白金族元素(Mn、Ni)の濃度は3g/Lであった。
その後、この白金族元素イオンの塩化物錯体の溶液に、塩化アンモニウムを添加し、数時間経過後、白金族元素のアンモニウム結晶を析出した。これを濾過して、液中に生成した晶析物を濾別した。さらに、この白金族元素の晶析物を水素雰囲気中、1200℃で2時間加熱処理することにより、高純度の白金族元素を回収した。
この回収した白金族元素に対して、GDMS(グロー放電質量分析)を行った結果、主な不純物であるMn、Niの合計含有量が50wtppm未満であった。また、その他の不純物含有量も合計で100wtpp未満であった。そして、濾液に含まれる白金族元素の含有量は500wtppm未満であり、白金族元素の回収率は、90%以上であった。
【0022】
(実施例4)
Mn−Ni−Rh合金を純水に浸漬した後、液温80℃に維持しながらpH0〜2になるように硝酸を連続的又は断続的に添加した。これにより、白金族元素(Rh)が沈殿し、非白金族元素(Mn、Ni)が浸出した。pH変動がなくなった後、硝酸の添加を停止し、濾過を行って白金族元素と非白金族元素を分離した。このとき、濾液に含まれる白金族元素(Rh)の濃度は、1mg/L未満であった。
次に、白金族元素を主成分とする濾過残渣に、塩酸と過酸化水素の混合溶液を添加し、液温80℃となるように加熱して、濾過残渣を全て溶解し、白金族元素イオンの塩化物錯体を形成した。このとき、溶液に含まれる白金族元素(Rh)の濃度は20g/Lであり、また、非白金族元素(Mn、Ni)の濃度は3g/Lであった。
その後、この白金族元素イオンの塩化物錯体の溶液に、塩化アンモニウムを添加し、数時間経過後、白金族元素のアンモニウム結晶を析出した。これを濾過して、液中に生成した晶析物を濾別した。さらに、この白金族元素の晶析物を水素雰囲気中、700℃で2時間加熱処理することにより、高純度の白金族元素を回収した。
この回収した白金族元素に対して、GDMS(グロー放電質量分析)を行った結果、主な不純物であるMn、Niの合計含有量が20wtppm未満であった。また、その他の不純物含有量も合計で50wtpp未満であった。そして、濾液に含まれる白金族元素の含有量は500wtppm未満であり、白金族元素の回収率は、90%以上であった。
【0023】
(実施例5)
Fe−Ni−Co−Pt合金を純水に浸漬した後、液温90℃に維持しながらpH0〜2になるように硝酸を連続的又は断続的に添加した。これにより、白金が沈殿し、非白金族元素(Fe、Ni、Co)が浸出した。pH変動がなくなった後、硝酸の添加を停止し、濾過を行って白金族元素と非白金族元素を分離した。このとき、濾液に含まれる白金元素の濃度は、1mg/L未満であった。
次に、白金元素を主成分とする濾過残渣に、塩酸と過酸化水素の混合溶液を添加し、液温90℃となるように加熱して、濾過残渣を全て溶解し、白金族元素イオンの塩化物錯体を形成した。このとき、溶液に含まれる白金元素の濃度は50g/Lであり、また、非白金族元素(Fe、Ni、Co)の濃度は10g/Lであった。
その後、この白金元素イオンの塩化物錯体の溶液に、塩化アンモニウムを添加し、数時間経過後、白金元素のアンモニウム結晶を析出した。これを濾過して、液中に生成した晶析物を濾別した。さらに、この白金元素の晶析物を大気雰囲気中、800℃で2時間加熱処理することにより、高純度の白金元素を回収した。
この回収した白金元素に対して、GDMS(グロー放電質量分析)を行った結果、主な不純物であるFe、Ni、Coの合計含有量が20wtppm未満であった。また、その他の不純物含有量も合計で50wtpp未満であった。そして、濾液に含まれる白金族元素の含有量は500wtppm未満であり、白金族元素の回収率は90%以上であった。
【0024】
(比較例1)
Ni−Pt−Ir合金を純水に浸漬した後、液温40℃に維持しながらpH0〜2になるように硝酸を連続的又は断続的に添加した。これにより、白金族元素(Rt、Ir)が沈殿し、非白金族元素(Ni)が浸出した。pH変動がなくなった後、硝酸の添加を停止し、濾過を行って白金族元素と非白金族元素を分離した。
比較例1では、pHの変動がなくなった時点において、合金の50%近くが未溶解のままで残った。次に、白金族元素を主成分とする濾過残渣に、塩酸と過酸化水素の混合溶液を添加し、液温80℃となるように加熱して、濾過残渣を全て溶解し、白金族元素イオンの塩化物錯体を形成した。このとき、溶液に含まれる白金族元素(Pt、Ir)の濃度は20g/Lであった。
その後、この白金族元素イオンの塩化物錯体の溶液に、塩化アンモニウムを添加し、数時間経過後、白金族元素のアンモニウム結晶を析出した。これを濾過して、液中に生成した晶析物を濾別した。さらに、この白金族元素の晶析物を水素雰囲気中、700℃で2時間加熱処理することにより、白金族元素を回収した。この回収した白金族元素に対して、GDMS(グロー放電質量分析)を行った結果、主な不純物であるNiの含有量が1000wtppm以上含まれていた。
以上から、硝酸溶液の液温が比較的低い場合には、非白金族元素の浸出が十分に行われず、回収した白金族元素の純度が低下した。但し、このような溶解温度であっても、白金族元素の分離回収は可能である。
【0025】
(比較例2)
Ni−Pt−Ir合金を純水に浸漬した後、液温80℃に維持しながらpHマイナスになるように硝酸を連続的又は断続的に添加した。これにより、白金族元素(Pt、Ir)が沈殿し、非白金族元素(Ni)が浸出した。pHの変動がなくなった後、硝酸の添加を停止し、濾過を行って白金族元素と非白金族元素を分離した。このとき、濾液に含まれる白金族元素(Pt、Ir)の濃度は、500mg/L以上であった。
以上から、硝酸溶液のpHが比較的低い場合には、白金族元素も若干浸出してしまい、白金族元素の回収率が低下した。但し、このような硝酸濃度であっても、白金族元素の分離回収は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、スパッタリング用白金族元素含有ターゲットの製造工程で発生する端材、切削屑、平研屑等のスクラップから、比較的簡単な工程で、ターゲットに再使用できる高純度の白金族元素を高収率で回収することができるというので、大きな産業上の利点がある。