(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では本発明の理解を容易にするため、まず初めに従来の生体分子計測装置におけるドリフト・オフセットとバックグラウンドに起因する課題について説明し、その後に本発明の実施形態について説明する。
【0019】
<従来技術の課題:測定誤差について>
図1は、後述するISFETアレイ304の構成を示す図である。
図1(a)は、ISFETアレイ304のなかの3つのISFET114と反応槽(以下、ウェルと呼ぶ)111〜113の側断面図であり、
図1(b)のA−A’線断面図に相当する。
図1(b)は、ISFETアレイ304の上面図である。なお、各トランジスタへの配線は省略してある。
【0020】
図2は、バックグラウンド処理の例を示す信号波形図である。
図2(a)(b)に示すように、ウェル111において測定された波形117から、空ウェル112において測定された波形118を差し引くことにより、バックグラウンドを計算することができる。空ウェル112には測定対象であるDNA115が存在しないため、純粋に試薬溶液108を注入することによって発生するバックグラウンドのみが測定されるからである。ただし、ISFET114は特性ばらつきを有するため、ウェル111のバックグラウンド波形119と、空ウェル112において得られる波形118とは、厳密には一致しない。その結果、前述の差分処理によって得られる信号波形120は、目的の信号成分に誤差を加えたものとなる。
【0021】
こうしたISFET114の特性ばらつきの影響を軽減するため、特許文献2においては、ウェル111の近傍にある複数の空ウェル112から得られる測定波形を平均化してバックグラウンドを推定している。しかしながら、ウェル111自体も特性ばらつきがあるため、複数の空ウェル112から得られる測定波形を平均化しても、個々のウェル111に起因する誤差が残る。また、推定処理のための計算量が増大する課題もある。
【0022】
<従来技術の課題:データ量について>
図1に示す通り、チップを製造した段階でISFET114の構造上に正電荷800や負電荷801がトラップされ、その量はISFET114ごとに異なり、これがISFET114内のトランジスタ閾値がオフセットする原因となる。トラップされる場所は、主にイオン感応膜100の表面、イオン感応膜100と保護膜101との間の界面、フローティングゲート102、ゲート酸化膜104である。各ISFET114のトランジスタ閾値は、トラップされた電荷の種類と量に依存してオフセットする。
【0023】
図3は、ISFET114から得られる測定信号の波形を例示する図である。
図3(a)は、複数のISFET114を備えたDNAシーケンサが取得した各ISFET114の信号波形を重ね書きしたものである。
図3(a)に示すように、各ISFET114から得られる信号波形間にはオフセットが見られる。
図3(b)は、これら波形のうちの1つについて、オフセットを除去した波形200と、さらに前述のバックグラウンド処理によって最終的に得られた信号波形201とを示す。
【0024】
実際にISFETから出力される波形から、計算処理によってオフセットとバックグラウンドを除去し、最終的に信号波形201を得るためには、
図3(a)に示すように広範囲にわたる波形を十分な分解能で記録する必要がある。そのため、波形を読み出すA/Dコンバータは広いダイナミックレンジを必要とし、さらには出力されるデータ量が膨大になる。
【0025】
たとえば、水素イオン濃度の変動による理論上の電圧変動は、ネルンストの式から求めることができ、25℃においてはおおよそ59mV/pHである。実際のISFETにおいては、これより若干低下し、pHあたり数10mV程度である。これを1mVの精度で測定する場合、±10Vのレンジでオフセットする波形データを全て記録するには14〜15ビットのA/D変換精度が必要である。pH変化による波形変動は数秒単位にわたるため、100Hzのサンプリングレートで5秒測定するとすれば、1つのISFET114が1回測定するに当たって出力するデータ量はおよそ1kバイトである。測定を100回繰り返すとし、ウェル数を100万とすれば、最終的に出力されるデータ量は100Gバイトであり、複数回の測定データを保存するとなると膨大なデータ量となる。これに対し、伸長反応に由来する信号は、pH1〜pH14の間で変動したとしても59mV×14=826mVと、たかだか1Vである。結果、1mVの精度で測定する場合でもA/D変換精度は10ビットで足りるので、データ量を3割近く低減することができる。
【0026】
このように、データ量を考慮すると、ISFETのドリフト・オフセットやバックグラウンドは、データ処理の前にデバイス上であらかじめ低減しておくか、または簡単な計算処理だけで除去できることが望ましい。
【0027】
<実施の形態1>
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。ここでは半導体センサとしてISFETを用い、生体分子計測装置としてDNAの配列を決定するDNAシーケンサを例として示すが、本発明の適用先はDNAシーケンサに限定されるものではなく、生体分子の反応生成物を電気的に計測するシステムに広く適用することができる。ISFETはイオン感応膜を適切に選択することによって種々のイオンを検出することができるので、例えばナトリウムイオンやカリウムイオンが変化するような生体分子を測定する装置に対して本発明を適用することができ。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
再び
図1を参照する。ISFETアレイ304は2次元状に配置された複数のウェル703を有し、各ウェル703の底部にはISFET114のイオン感応膜100が配置されている。ウェル703は、半導体プロセスによって形成された1辺数100nm〜数μm程度の大きさの穴である。測定時には、各ウェル703の中に、測定対象となる生体分子115が付着したビーズ702が装填される。生体分子115がDNAである場合は、DNA115をビーズ702に付着させる際に、エマルジョンPCRなどの方法によって測定対象のDNAを複製し、ビーズ702上のDNA本数を増やしておくと、発生する水素イオン(詳細は
図6で後述する)の量が増えて検出が容易になる。
【0029】
ISFET114は一般に、イオン感応膜100、保護膜101、フローティングゲート102、ゲート電極103、ゲート酸化膜104、ドレイン105、ソース106、シリコン基板107、基板コンタクト110を有する。フローティングゲート102とゲート電極103がなく、ゲート酸化膜104の上に保護膜101とイオン感応膜100を直接積層する場合もある。ISFET114とその直上に形成された1つのウェル703をまとめてセル116と呼ぶ場合もある。
【0030】
生体分子115から発生するイオンを測定する際は、感応膜100を試薬溶液108に接触させ、参照電極109を試薬溶液108中に浸す。この状態で、参照電極109に電圧VREFを与えると、イオン感応膜100、保護膜101、ゲート酸化膜104の間の容量性結合を介してドレイン105−ソース106間にチャネルが誘起され、ISFET114の特性に応じてドレイン電流−参照電極電圧特性が得られる。
【0031】
図4は、ドレイン電流−参照電極電圧特性を例示する図である。溶液108中にイオンが存在すると、イオン感応膜100と試薬溶液108の間に界面電位が発生し、ゲート電極103に印加される実効的な電圧が変化する。界面電位の大きさはイオンの濃度に依存するため、例えば溶液108のイオン濃度がC1からC2に変化すると、ISFET114のトランジスタ閾値がV1からV2に変化したように見える。この閾値の変化から、溶液108のイオン濃度を測定することができる。
【0032】
図5は、本実施形態1に係る生体分子計測装置の機能ブロック図である。測定対象である生体分子115は、ビーズ702に付着してISFETアレイ304上に装填される。生体分子115がイオン反応するために必要な試薬は送液装置303によって試薬容器301から送出され、ISFETアレイチップ1002上で生体分子115と反応する。ISFETアレイチップ1002は、この反応によって生成物されるイオンの濃度変化を検出する。反応後の廃液は、廃液容器310によって回収される。送液装置303は、例えば一般的な送液ポンプを複数使用して実現することができる。または、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを、試薬容器301ごとに用意されたバルブを介して圧力を調整しながら試薬容器301に注入して、ガスの圧力により試薬容器301から試薬を押し出すことによって実現することもできる。
【0033】
コントローラ312は、あらかじめプログラムされた実験シーケンスとデータ処理装置311が取得したデータに応じて、送液装置303の送液ポンプの送液タイミングと送液量の調整、ISFETアレイチップ1002の動作状態の制御、データ処理装置311の制御、試薬流路302、313、314のいずれかまたはISFETチップ1002上に設けられた参照電極の電圧制御、などを実施する。さらにコントローラ312は、ISFETアレイチップ1002上に設けられた温度センサ307の測定値に基づき、同じくISFETアレイチップ1002上に設けられたヒータ308と試薬溶液を冷却する冷却装置300を制御する。
【0034】
データ処理装置311は、ISFETアレイチップ1002から出力された測定結果を示すデータを取得して解析する。データ処理装置311は、一般的なA/D変換器を搭載したインターフェースボードとコンピュータによって構成することができる。選択回路305と読み出し回路309については後述する。
【0035】
図6は、DNAの構造と伸長反応について説明する図である。
図6(a)は、1本鎖DNAを模式的に表した図である。実際の1本鎖DNAは、リン酸とデオキシリボースからなる鎖に4種類の塩基が結合し、複雑な立体構造を形成するが、ここでは簡単のため、リン酸とデオキシリボースからなる鎖を直線404で表し、4種類の塩基、すなわちアデニンをA(400)、チミンをT(401)、シトシンをC(402)、グアニンをG(403)のように記号で表す。
【0036】
図6(b)は、DNAの伸長反応を模式的にあらわした図である。ATCGの1本鎖405に、TAGからなるプライマ406が結合した状態を示す。この状態で、シトシンを含むデオキシリボヌクレオチド3リン酸(dNTP)の一種(dCTP)407と、図中では示していない伸長酵素であるDNAポリメラーゼが存在すると、dCTPがG末端に結合すると同時に、
図6(c)に示すように、2リン酸409と水素イオン408が離脱する。
【0037】
水素イオン408を検出することによりDNA配列を決定する方法は以下のとおりである。まず、配列を決定したい未知の1本鎖DNA405にプライマ406を結合させる。この状態で、dCTP、dTTP、dATP、dGTPの4種の試薬を順番に注入し、それぞれの試薬を注入した際の水素イオン濃度を測定する。例えばdATPを注入した時に水素イオンが発生すれば、元の1本鎖DNA405のうちプライマ406が結合した部分を除いた先頭が、Aの相補塩基、すなわちTであったことが分かる。上記試薬注入と水素イオン濃度測定を繰り返すことにより、順番にDNA配列を決定することができる。
【0038】
図7は、本実施形態1に係る生体分子計測装置がDNA配列を決定する処理を説明するフローチャートである。以下、
図7の各ステップについて説明する。
【0039】
(
図7:ステップS600〜S601)
ビーズ702をセルに装填し終えた段階でISFETアレイチップ1002を装置にセットする。反応に用いる試薬dNTPと洗浄液は、あらかじめ冷却装置300を用いて、DNAポリメラーゼの至適温度より十分低い温度に冷却しておく。測定を開始すると、コントローラ312はあらかじめ決められた手順で試薬dNTPを選択し(S600)、送液装置303は試薬溶液108をISFETアレイチップ1002上のセルに注入する(S601)。この段階では、dNTPの温度が低くDNAポリメラーゼがほとんど働かないため、伸長反応はほぼ起こらない。
【0040】
(
図7:ステップS602〜S604)
コントローラ312は、伸長反応を誘起するトリガとして、チップ上のヒータ308を用いてウェル703とウェル703内の試薬溶液108を加熱し、DNAポリメラーゼを活性化させる(S602)。ISFET114は、ヒータ308の動作によって誘起された伸長信号を測定する(S603)。伸長信号を測定し終えた段階で、コントローラ312は送液装置303によって低温の洗浄液を注入し、反応しなかったdNTPと、反応生成物である水素イオン、2リン酸を洗い流すと同時に、冷却装置300によりチップを冷却する(S604)。
【0041】
(
図7:ステップS605〜S609)
コントローラ312は、洗浄が終わった後、次のdNTPを選択し(S605〜S609)、ステップS601に戻って同様の処理を繰り返す。繰り返しの過程においてISFET114が測定した伸長信号は、データ処理装置311が備えるA/D変換器によってデジタル信号に変換され、データ処理装置311が備える記憶装置内に測定データとして蓄積される。データ処理装置311は、繰り返しの結果得られる配列にしたがって、DNAの構造を特定することができる。
【0042】
図7で説明したフローチャートによって得られるISFET114の出力信号の時間変化について、
図8〜10を用いて説明する。
【0043】
図8は、1つのセルを模式的に表した側面図であり、ISFET114上にDNA115が固定されていることを示す。ここでは簡単のため、ISFET114のイオン感応膜100からゲート電極103に至るまでの構造をまとめて長方形704で示した。
【0044】
図8の時刻T
0において、チップ上のセルは洗浄液で満たされており、冷却状態にある。時刻T
601において試薬溶液108としてdNTP溶液をセルに注入すると、dNTP溶液中に含まれる各種イオンや、洗浄液とdNTP溶液の間のpHの違いに起因して、ISFET114の閾値が変化する。セル内の洗浄液がdNTP溶液に置き換わると、次第にISFET114の閾値変動がおさまる。時刻T
602においてdNTP溶液をヒータ308で加熱すると、DNAポリメラーゼが活性化される。DNAとdNTPが結合すれば水素イオンが発生してpHが変化するため、これに応じてISFET114の閾値も変化する。続く時刻T
604で洗浄液を注入するとdNTP溶液の成分や反応生成物である水素イオンが洗い流されてセル中が洗浄液で満たされ、時刻T
0と同様の状態に戻る。また、洗浄液を注入することにより、ISFET114はDNAポリメラーゼの至適温度より低い低温に冷却される。
【0045】
図9は、ISFETアレイチップ1002のうち、ISFETアレイ304、選択回路305、読み出し回路309の構成例を示した回路図である。選択回路305は、一般的なnビットデコーダとドライバによって構成され、コントローラ312から与えられたn本の行アドレスに基づき、2^n本の行選択線WLのうち1つを活性化する。ISFETアレイ304は、ISFET114とISFET114を選択するための選択トランジスタを行選択線WLとデータ線DLAの交点に2次元状に並べたものである。各々のセル2303は、2つの選択トランジスタ1200、1201とISFET114から構成される。各々のセルは、行選択線WLk、ソース線SLk、データ線DLAk、DLBkに接続される。行アドレスによってj番目のWLjがH状態に活性化されると、WLjに接続される全てのセルにおいて、選択トランジスタが導通状態となり、同一WLj上の全てのISFET114が、それぞれソース線SLとデータ線DLAに接続される。
図9においては、全てのトランジスタがNMOSである例を示したが、もちろん全てをPMOSで構成してもよい。この場合、行選択線WLの論理が反転する。
【0046】
ソース線SLk、データ線DLAk、DLBkは、読み出し回路309中のk番目のアンプ2302−kに接続される。本アンプは2つの一般的な定電流源1700と1704、2つのアンプ1701と1702、および出力用のアンプ1703とトランジスタ1705からなる。次に、ISFET114の信号を読み出す際の各アンプの動作について説明する。
【0047】
定電流源1700と1703は一定の電流をグラウンドへ引き抜く。アンプ1701と1702は増幅率1倍のボルテージフォロワ構成のアンプであり、一般的な差動増幅回路で実現できる。これらのアンプにより、DLAkとDLBkとの間に、トランジスタ1705と、定電流源1704に流れる一定電流Idとによって決定される一定電圧VABを発生させる。かかる構成によれば、ISFETアレイ中の選択ISFETのソース・ドレイン電圧Vdsはおよそ一定値VABで固定され、また、ドレイン電流は定電流源1700で決定される定電流Idに固定される。ISFET114が線形領域で動作していれば、ドレイン電流Id、ゲート−ソース間電圧Vgs、ソース−ドレイン間電圧Vdsは下記式1を満たす。βはISFET114特有の定数、VthはISFET114のトランジスタ閾値である。
Id=β{(Vgs−Vth)−1/2×Vds}×Vds (式1)
【0048】
溶液中のイオンにより、ISFET114の閾値がΔVthだけずれたとすると、アンプ2302−kによりドレイン電流Id一定、ソース−ドレイン電圧Vdsが一定という動作条件になっていることを加味すると、下記式2が成立する。
Id=β{(Vgs’−(Vth+ΔVth))−1/2×Vds}×Vds (式2)
【0049】
Idは0ではないので(式1)を(式2)で割って整理すると、下記式3が得られる。
Vgs’−Vgs=ΔVth (式3)
【0050】
式3より、ゲート電圧、すなわち参照電極109の電圧を固定しておけば、ISFET114の閾値変動はソース電位の変動として出力される。Vdsは一定なので、ソース電位の変動はドレイン電位の変動となり、結果としてΔVthがアンプ出力端子Okより出力される。ただし、ΔVthにはオフセットやバックグラウンドが重畳されているので、後述の
図10に示すように伸長信号とこれらノイズを
図7のフローチャートによって時間的に分離し、伸長信号のみを精度よく読み取ることを図る。
【0051】
図9に示す回路図においては、複数のISFET114いずれかを選択回路305によって選択し、その出力を読み出し回路309によって読み出すこととしているが、ISFETアレイチップ1002のデータ出力ピンの本数が許す限りは、ISFET114毎に出力ピンを設けてもよい。また、A/DコンバータをISFETアレイチップ1002上に搭載し、ISFET114の出力をデジタルデータに変換してから出力してもよい。この場合、ISFETアレイチップ1002からデータ処理装置311までの通信経路がデジタル化されるため、経路上の干渉ノイズに対する耐性が向上する。
【0052】
図10は、
図7のフローチャートを実施した際の1つのISFET114の閾値変動を
図9の回路によって読み出した信号波形である。先に説明した通り、時刻T
601においてdNTP溶液をセルに注入すると、ドリフトとオフセットに起因する波形成分1301とバックグラウンド成分1300が重畳した信号がISFET114から出力される。セルがdNTP溶液で満たされると、次第に信号の変化率が減少し、ある値に漸近する。試薬溶液108を注入し始めてからある程度の時間が経過した時刻T
602において、ヒータ308により試薬溶液108を加熱してDNAポリメラーゼを活性化する。DNAとdNTPが結合すると水素イオンが発生しpHが変化するため、ISFET114の出力信号内に伸長信号1302が現れる。伸長反応が無い場合は水素イオンが発生しないため、伸長信号1302は現れない。時刻T
604で洗浄液を注入するとdNTP溶液の成分や反応生成物である水素イオンが洗い流されてセル中が洗浄液で満たされるため、初期の信号値に戻る。
【0053】
このように、
図7に示すフローチャートにしたがって、試薬溶液108を注入し始めた後、好適には試薬溶液108を注入し終えた後にトリガを生じさせることより、バックグラウンド成分1300の変化と伸長信号1302を時間的に分離することができる。
【0054】
さらに、時刻T
602以降の信号値から、ヒータ308で加熱する直前の信号値、すなわちドリフトおよびオフセットの成分1301と、バックグラウンド成分1300を含んだ信号値を差し引けば、これらノイズを含まない伸長信号波形を容易に得ることができる。
【0055】
上記構成によれば、特許文献2に記載されている、複数の空ウェルを用いたバックグラウンド推定処理が不要となり、処理を大幅に軽減することができる。また、伸長信号1302を測定するISFET114自身の測定値を使って引き算処理を実施するため、ISFET114の特性ばらつきの影響も受けない。
【0056】
<実施の形態1:変形例>
以上の説明においては、洗浄液とdNTPを用いてセルを冷却し、チップ上のヒータ308を用いてセルを加熱して伸長反応を誘起する例を示したが、温度を制御する手法はこれに限らない。例えば、ペルチェ素子などの冷却機構をISFETアレイチップ1002に接触させてチップを冷却してもよい。また、一般的に使われるヒータをISFETアレイチップ1002に接触させてチップを加熱してもよい。ただし、伸長反応を誘起する加熱に関しては、なるべく急峻に温度を変化させることが望ましい。なぜなら、温度が緩やかに上昇すると、ビーズ702上の複製DNAの伸長反応が同時に起こらず、伸長信号ピークがなだらかになるからである。
【0057】
図11は、半導体プロセスによってヒータ配線を搭載したISFETアレイ304とその断面図である。イオン感応膜100より下の構造については
図1と同じであるため省略した。ウェル703の列の間に半導体プロセスによって配線900を形成し、これに電流を流すことによりジュール熱を発生させてセルを加熱する。かかる構成によれば、熱源がウェル703の近傍にあるため、ウェル703内の温度を高速に上昇させることができる。
【0058】
加熱後の試薬溶液108の温度は、DNAポリメラーゼが最も効果的に働く至適温度付近になることが望ましい。至適温度はDNAポリメラーゼの種類に大きく依存する。例えばDNAポリメラーゼがKlenow Fragmentである場合は37℃付近、TaqDNAポリメラーゼである場合は70〜75℃である。また、温度が高すぎると酵素が変性して失活する原因ともなるため、過熱を防ぐ必要がある。そのため、あらかじめ決められた時間の間だけ配線900に電流を流して加熱するか、ISFETアレイチップ1002上に温度センサ307を設けておき、至適温度近辺になるように温度をモニタしながらヒータ308を制御するとよい。
【0059】
上記では、低温の状態からDNAポリメラーゼの至適温度まで加熱してDNAの伸長反応を誘起する例を示したが、至適温度より高い温度から至適温度まで冷却して伸長反応を誘起してもよい。
【0060】
伸長反応を誘起するトリガは温度に限らない。例えば特開2009−126789号公報に記載されている光応答性ヌクレオチドを試薬溶液108として用いる場合は、波長366nmのUV照射を伸長反応トリガとすることができる。波長366nmのUV光源としては、例えば市販のLEDを利用することができる。その他、試薬溶液108を、伸長反応を誘起しないバッファ溶液とdNTP試薬に分けて構成しておき、始めにセルをバッファ溶液で満たした後にdNTP試薬を注入してもよい。この場合は、dNTP試薬を注入することがトリガとして作用する。いずれの場合においても、伸長反応を誘起するトリガを生成する機能部が、「トリガ生成部」に相当する。
【0061】
図8において、時刻T
601でdNTP溶液を注入したのち、伸長反応を誘起するタイミングT
602は、以下のように決定することができる。ひとつの方法は、あらかじめ実験によって、dNTP溶液を注入してからバックグラウンド信号の変化が十分小さくなるまでの時間T
SATを測定しておき、T
601からT
SAT経過した段階で伸長反応のトリガをかけるようにコントローラ312をプログラムしておくものである。その他の方法としては、バックグラウンド信号波形を観察してその変化が収まった時点を自動的に検出するものである。
図12を用いて説明する。
【0062】
図12は、バックグラウンド信号波形とその微分値の経時変化を示す図である。コントローラ312は、バックグラウンド信号波形を微分し、その値があらかじめ設定した閾値を下回った時刻をT
602として採用してもよい。この場合、バックグラウンド信号の変化量が目標値を下回った段階で直ちに伸長反応を開始し、測定フローにかかる時間を短縮できる。信号波形の微分は、反転増幅器と容量素子と抵抗素子で構成される一般的な微分回路で実現することができる。閾値判定は一般的な電圧比較回路で実施することができる。あるいは、データ処理装置311上のソフトウェアによって波形微分と閾値判定を実施することもできる。
【0063】
図13は、ISFETアレイチップ1002上の一部のISFET114を用いてバックグラウンドを除去する場合の構成例を示す図である。必ずしも全てのISFET114を用いてバックグラウンドを検出する必要はなく、試薬溶液108が流れる方向における下流側に配置されたISFET114のみを用いてバックグラウンドを検出することもできる。
【0064】
図13(a)に示すように、洗浄液1102で満たされたセルに対し、試薬注入口1103からdNTP溶液1101を入れ、試薬排出口1104から洗浄液1102やdNTP溶液を排出することを考える。この場合、試薬注入口1103よりも試薬排出口1104に近い位置、すなわち、溶液の流れの下流側にある1以上のISFET114のバックグラウンド波形に基づきT
602を決定すればよい。下流側でバックグラウンド波形の変化が収まれば、ISFETアレイチップ1002全体の溶液交換が終わったと判断できるからである。
図9において示したように、ISFET114を定電流源で駆動する場合、アレイの並列数増加によって電流を流すISFET114の数が増大し、結果として消費電力増大を招く。上記のようにバックグラウンド測定のために使用するISFET114の数を限定することにより、チップの消費電力を大幅に低減することができる。また、微分処理のために必要な計算量を低減することもできる。
【0065】
図13(b)に示すように、ISFETアレイチップ1002の下流にバックグラウンドを測定する専用のセル1105を設けてもよい。この場合は、セル1105からバックグラウンドを読み取る回路を読み出し回路309とは別に設けることが望ましい。
【0066】
図14は、
図13に示すセル1105が出力する信号を読み出す読み出し回路1106を備えた回路図である。読み出し回路1106は、読み出し回路309とは独立した専用の回路である。その他の回路構成は
図5と同じである。
図14に示す回路構成により、バックグラウンドを測定する際にISFETアレイの選択回路305や多数の定電流源から構成される読み出し回路309を動作させる必要がなくなるため、さらに消費電力を低減することができる。
【0067】
<実施の形態1:まとめ>
以上のように、本実施形態1に係る生体分子計測装置は、送液装置303が試薬溶液108を送出し始めた後、好適には送出し終えた後に、ヒータ308またはその他の手段によって試薬溶液108を反応させるトリガを生成する。これにより、
図10に示すように伸長信号1302とバックグラウンドを時間的に分離し、伸長信号1302のみを容易に取り出すことができる。
【0068】
また、本実施形態1に係る生体分子計測装置は、ISFET114のドレイン電流をIdに固定し、ソース・ドレイン電圧VdsをVABに固定する回路を備える。これにより、式3に示すように、ISFET114の閾値変化ΔVthのみを出力端子Okから取り出すことができる。
【0069】
また、本実施形態1に係る生体分子計測装置は、各ISFET114が出力する信号のみを用いて、各ISFET114が検出するドリフト・オフセット成分1301とバックグラウンド成分1300を差し引くことができる。これにより、バックグラウンドを検出するための演算量を抑制することができる。さらには、オフセット範囲を抑制することによりデータ値の範囲が狭くなるので、A/D変換器の変換精度とデータ量を抑制することができる。
【0070】
<実施の形態2>
実施形態1においては、ISFET114が検出した信号波形からドリフト・オフセット成分1301とバックグラウンド1300を演算によって差し引き、伸長信号1302のみを取り出すことを説明した。本発明の実施形態2では、ドリフト・オフセット成分1301とバックグラウンド1300を差し引く別の構成例について説明する。
【0071】
図15は、本実施形態2に係る生体分子計測装置が備えるISFETアレイチップ1002上の1個のセルとその周辺回路を抜粋した回路図である。図示していないが、実際は
図9と同様に複数の行選択線WL、ソース線SL、データ線DLAおよびDLBが存在する。ISFET114については、イオン感応膜100とフローティングゲート102のみ模式的に示し、保護膜101は省略した。
【0072】
本実施形態2において、フローティングゲート102は、トランジスタ1500を介して定電圧源(例えばグラウンド)に接続される。この定電圧源は、ISFET114のゲート入力102の電位を固定するものであり、必ずしもグラウンドでなくともよい。トランジスタ1500は、コントローラ312が生成する駆動信号φによって制御され、フローティングゲート102と定電圧源との間の接続をON/OFFする。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0073】
図16は、本実施形態2に係る生体分子計測装置がDNA配列を決定する処理を説明するフローチャートである。以下、
図16の各ステップについて説明する。
【0074】
(
図16:ステップS1600〜S1601)
これらのステップは、
図7におけるステップS600〜S601と同様である。ステップS1601の後、後述する
図17に示すようにバックグラウンド1300とドリフト・オフセット成分1301が検出される。
【0075】
(
図16:ステップS1602)
コントローラ312は、トランジスタ1500に対する駆動信号φとして、Hi信号を印加する。トランジスタ1500がONになると、フローティングゲート102の電位がグラウンドに固定される。これにより、バックグラウンド1300とドリフト・オフセット成分1301がリセットされる。コントローラ312は、これらノイズがリセットされた後、トランジスタ1500をOFFに戻す。本ステップにおいてISFET114が検出する信号波形は、後述の
図17で改めて示す。
【0076】
(
図16:ステップS1603〜S1610)
これらのステップは、
図7におけるステップS602〜S609と同様である。ステップS1610の次は、ステップS1601に戻って同様の処理を繰り返す。
【0077】
図17は、
図16のフローチャートを実施した際の1つのISFET114の閾値変動を
図15の回路によって読み出した信号波形である。ステップS1601の後、
図17(a)の時刻T
1601に示すように、ISFET114はバックグラウンド1300とドリフト・オフセット成分1301を検出する。時刻T
1602においてコントローラ312がステップS1602を実施すると、ISFET114が検出する信号は信号基準点1303へリセットされる。トランジスタ1500をONにする時刻は、バックグラウンド1300が安定してから伸長反応トリガを供給するまでの間となるようにすることが望ましい。
【0078】
図17(a)に示すように、ISFET114の出力信号は、ドリフト・オフセット成分1301とバックグラウンド成分1300を含まず、伸長信号1302のみとなる。これにより、データ処理装置311はこれらノイズを差し引く処理を実施する必要がなくなり、さらに処理負荷を軽減することができる。また、ISFETアレイチップ1002が出力する信号の波高値が低く抑えられるため、A/Dコンバータが必要とするダイナミックレンジを低くすることができる。さらにはデータ量も削減されるため、データ記憶領域を節約することができる。
【0079】
図17(b)は、駆動信号φの変形例を示す。同図に示すように、dNTP溶液を注入するときと洗浄するときは駆動信号φをHiにし、伸長信号1302を測定するときのみ駆動信号φをLoにしてもよい。これにより、伸長信号1302を測定するとき以外はISFET114の出力値が信号基準点1303に固定され、急峻な信号変化をなくすことができるため、ノイズをさらに低減することができる。
【0080】
図17(b)において、伸長信号1302を取得する時点でトランジスタ1500がOFFになっていればよいので、例えば伸長反応トリガを入力して加熱を開始した後、至適温度に到達する前に駆動信号φをLoにしてもよい。また、UV照射によって伸長反応を進める場合、UVを一定時間照射して終わってから駆動信号φをLoにしてもよい。これにより、UV光源の高エネルギー光によってISFET114の出力が変調される影響を軽減することができる。
【0081】
<実施の形態2:まとめ>
以上のように、本実施形態2に係る生体分子計測装置は、フローティングゲート102と定電圧源との間の接続をON/OFFするトランジスタ1500を備え、伸長信号1302を測定する前にトランジスタ1500をONしてノイズをリセットする。これにより、ノイズ成分を差し引く処理が不要になり、データ処理装置311の演算負荷を軽減することができる。また、A/Dコンバータのダイナミックレンジやデータ量を小さく抑えることができる。
【0082】
本実施形態2においては、トランジスタ1500を用いてノイズをリセットした後に伸長反応トリガを出力して伸長信号1302を測定することを説明したが、伸長反応トリガを用いない場合においても、トランジスタ1500を用いてドリフト・オフセット成分1301をキャンセルすることができる。この場合、温度センサ307、ヒータ308、冷却装置300が不要になり、システム構成を簡単化することができる。生体分子計測装置の駆動手順は、
図16からステップS1603を除いたものとなる。
【0083】
<実施の形態3>
実施形態1〜2においては、ドリフト・オフセット成分1301とバックグラウンド成分1300を除去することによってISFET114の信号品質を改善する構成例について説明した。本発明の実施形態3では、他の手段によってISFET114の信号品質を改善する構成例について説明する。
【0084】
図18は、本実施形態3に係る生体分子計測装置の機能ブロック図である。本実施形態3に係る生体分子計測装置は、実施形態2で説明した構成に加えて、余剰溶液除去装置315を備える。その他の構成は実施形態2と同様であるため、以下では差異点を中心に説明する。
【0085】
余剰溶液除去装置315は、ウェル703の外に存在する試薬溶液を除去する装置であり、コントローラ312によって制御される。余剰溶液除去装置315は、例えば後述の
図19で説明する媒質1107をセルに送り込むためのポンプによって構成することができる。媒質1107は、試薬溶液流路316を介して供給される。
【0086】
図19は、ウェル703の側断面図である。以下
図19を用いて、余剰溶液除去装置315の動作を説明する。
【0087】
図19(a)において、送液装置303は、洗浄液1102で満たされたセルに対し、試薬注入口1103からdNTP溶液1101を注入し、試薬排出口1104から洗浄液1102を排出する。
図19(b)において、余剰溶液除去装置315は、媒質1107を試薬注入口1103からセルに注入し、ウェル703の外にある余剰なdNTP溶液1101を試薬排出口1104から排出する。余剰なdNTP溶液1101が排出されると、
図19(c)に示すようにウェル703外のdNTP溶液1101は除去される。ヒータ308が
図19(c)に示す状態の下でセルを加熱すると、水素イオン408が発生する。
【0088】
図20は、本実施形態3に係る生体分子計測装置がDNA配列を決定する処理を説明するフローチャートである。以下、
図20の各ステップについて説明する。
【0089】
(
図20:ステップS1900〜S1902)
これらのステップは、
図16におけるステップS1600〜S1602と同様である。ただし、ステップS1910〜S1913から戻ってくる箇所を考慮して、駆動信号φをHiにするステップS1901を先に実施することとした。ステップS1902においてはトランジスタ1500がONになっているため、ドリフト・オフセット成分1301とバックグラウンド成分1300はリセットされている。
【0090】
(
図20:ステップS1903)
コントローラ312は、余剰溶液除去装置315を駆動し、
図19(b)に示すように、ウェル703外にある余剰なdNTP溶液1101を試薬排出口1104から排出する。ウェル703の中にのみdNTP溶液1101を残すためには、媒質1107はdNTP溶液1101と混ざらず、かつdNTP溶液1101より比重の軽いものを用いることが望ましい。例えば空気、窒素やアルゴンなどの不活性ガス、油が好適である。
【0091】
(
図20:ステップS1904〜S1913)
これらのステップは、
図16のステップS1603〜S1610と同様である。ただし本フローチャートにおいては、ループ外のステップS1901で駆動信号φをHiにセットしているので、これと整合を取るため、伸長反応トリガの前後であるステップS1904とS1907においてそれぞれ駆動信号φをLoとHiに切り替えることとした。
【0092】
余剰溶液除去装置315により、DNAの伸長反応が起こっている間、各ウェル703は分離されるため、ウェル703間で水素イオン408が伝搬することを防ぐことができる。すなわち、隣接ウェル間のクロストークを防止することができる。また、dNTP溶液1101はウェル703内にしか存在しないため、発生した水素イオン408がウェル703外に拡散したり、ウェル703外の溶液の緩衝効果によって消滅したりするなどして、ISFET114の出力信号が減衰することを防ぐことができる。その結果、伸長信号1302の波高値を増大し、信号の持続時間を向上させる効果が期待できる。
【0093】
なお、余剰なdNTP溶液1101を除去することによって各ウェル703を分離すると、参照電極109とウェル703内のdNTP溶液1101との間の導通状況が悪化する可能性がある。その場合は、ウェル703内に個別に参照電極109を設ければよい。
【0094】
余剰なdNTP溶液1101を除去し易くするためには、ISFETアレイチップ1002の基板表面を、dNTP溶液1101に対して撥水性を有する材料でコートしておくとよい。これにより、基板表面に余剰なdNTP溶液1101が除去されずに残存する可能性を低減することができる。このコート材料の撥水性は、余剰なdNTP溶液1101が除去することを促進できる程度であれば足りる。具体的には、テフロン(登録商標、デュポン社)やサイトップ(登録商標、旭硝子)などの市販のフッ素系コーティング剤により撥水性を持たせることが可能である。さらに表面に凹凸を加工する事で、撥水性を高めることも可能である。
【0095】
<実施の形態3:変形例>
図21は、各ウェル703を分離する別構成例を示す図である。
図21において、媒質1107によって余剰なdNTP溶液1101を除去することに代えて、構造物1108を用いて各ウェル703に蓋をする。これにより、媒質1107を追加することなく各ウェル703を分離することができる。
【0096】
図22は、構造物1108の内部構造を示す図である。
図22に示すように、構造物1108側にヒータ1110を追加することにより、より迅速にウェル703内の溶液を加熱することができる。さらに参照電極1109を構造物1108側に設け、配線1111と1112を介して他の回路部と接続してもよい。また、構造物1108の表面を、dNTP溶液1101に対して撥水性を有する材料でコートしておいてもよい。これにより、基板表面に余剰なdNTP溶液1101が除去されずに残存する可能性をさらに低減することができる。
【0097】
<実施の形態3:まとめ>
以上のように、本実施形態3に係る生体分子計測装置は、各ウェル703を分離し、隣接するウェル703間でクロストークにより信号成分が干渉することを防ぐ。これによりISFET114の信号品質を向上させることができる。
【0098】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることもできる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換することもできる。
【0099】
例えば、実施形態1〜3においては、ビーズ702に固定された試料DNAの反応を測定する例を示したが、DNAを固定する方法の変形例として、表面を化学修飾したウェル703にDNAを固定してもよい。これにより、溶液を交換する際にビーズ702と試料DNAが流失してしまう可能性を低減することができる。
【0100】
また、本発明はDNA試料の構造を特定する計測装置に限られず、生体分子試料と試薬が反応することによって生成されるイオンを検出する計測装置一般について適用することができる。イオンを検出する半導体センサとしてISFETを例に挙げたが、同様の機能を発揮する半導体センサであればその他のものを用いてもよい。