【実施例】
【0023】
以下、本発明の一実施例に係る研削盤1について説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0024】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0025】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0026】
なお、本実施例において、「上」、「下」の語は、鉛直方向における上方、下方に対応するものとする。
【0027】
図1は、定圧シリンダを省略した研削盤1の基本的構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すメインユニット2の平面図である。
図3は、メインユニット2の側面図である。
図4は、メインユニット2の上部を示す斜視図である。
【0028】
研削盤1は、ウェハWを裏面研削して薄膜に形成する。研削盤1を用いて研削加工が施されるウェハWは、シリコンウェハ、シリコンカーバイドウェハ等の高硬度・高脆性を示すものが好適であるが、これらに限定されるものではない。研削盤1は、砥石21を備えるメインユニット2と、メインユニット2の下方に配置された搬送ユニット3と、を備えている。
【0029】
メインユニット2は、アーチ状のコラム22と、砥石21が取り付けられたスピンドル23と、スピンドル23を鉛直方向Vに摺動可能に支持する3つのリニアガイド24と、スピンドル23を鉛直方向Vに昇降させるスピンドル送り機構25と、を備えている。
【0030】
搬送ユニット3は、ウェハWを吸着保持可能なチャック31と、チャック31を載置するスライダ32と、を備えている。チャック31は、図示しない真空源に接続されており、ウェハWをチャック31の表面に真空吸着可能である。また、チャック31は、図示しないモータによってチャック31の中心を通る鉛直軸回りに回動可能である。スライダ32は、図示しないスライダ駆動機構によってレール33上を摺動可能であり、これにより、チャック31とスライド32とは、ウェハ搬送方向D1に一体になってスライドするようになっている。このようにして、チャック31上に真空吸着されたウェハWは、研削加工前に、スライダ32によって砥石21の下方まで搬入され、研削加工後に、砥石21の下方からメインユニット2の後方まで搬出される。
【0031】
研削盤1の動作は、図示しない制御ユニットによって制御される。制御ユニットは、研削盤1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御ユニットは、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御ユニットの機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0032】
次に、メインユニット2の具体的構成について説明する。スピンドル23は、コラム22の前面22aに鉛直方向Vに亘って凹設された溝22b内に収容されている。スピンドル23は、砥石21を下端に取り付けたサドル23aと、サドル23a内に設けられて砥石21を回転させるモータ23bと、を備えている。
【0033】
リニアガイド24は、コラム22の前方に配置された2つの前方リニアガイド24aと、溝22bに配置された1つの後方リニアガイド24bと、で構成される。前方リニアガイド24aと後方リニアガイド24bとは、鉛直方向Vに沿って互いに平行に設けられている。前方リニアガイド24aには、サドル23aが直接取り付けられている。また、後方リニアガイド24bには、後述するナット25aを介して、サドル23aが取り付けられている。これにより、前方リニアガイド24aと後方リニアガイド24bとは、サドル23aの案内レールとして機能する。
【0034】
前方リニアガイド24aは、溝22bの縁部に配置されている。後方リニアガイド24bは、溝22bの底部に配置されている。前方リニアガイド24aと後方リニアガイド24bとは、
図3に示すように、平面視でスピンドル23の重心Gが前方リニアガイド24a及び後方リニアガイド24bで形成される三角形T内に配置されるように、互いに離間して配置されている。
【0035】
スピンドル送り機構25は、サドル23aと後方リニアガイド24bとを連結するナット25aと、ナット25aを昇降させるボールネジ25bと、ボールネジ25bを回転させるモータ25cと、を備えている。モータ25cが駆動してボールネジ25bが正回転し、ナット25aが鉛直方向Vと平行なボールネジ25bの送り込み方向D2に下降することにより、サドル23aが下降する。送り込み方向D2は、砥石21がウェハWを加工する加工点Pを通って鉛直方向Vに平行な直線上にある。換言すると、ボールネジ25bの回転軸Oと砥石21の加工点Pとは、鉛直方向Vにおいて同一直線上に配置されている。
【0036】
メインユニット2には、ウェハWの厚みを計測する図示しないインプロセスゲージが設けられている。インプロセスゲージが計測したウェハWの厚みが所望の値に達すると、モータ25cが駆動してボールネジ25bが逆回転し、ナット25aに連結されたサドル23aが上昇することで、ウェハWと砥石21とが離間する。
【0037】
メインユニット2には、定圧シリンダ26が設けられている。定圧シリンダ26は、スピンドル送り機構25のナット25aを挟んで水平方向Hの両側に1つずつ設けられており、コラム22とナット25aとの間に介装されている。定圧シリンダ26は、図示しないシリンダ、ピストン、ピストンロッド、コンプレッサ等から成る公知の構成を採用したエアシリンダである。定圧シリンダ26の駆動圧は、砥石21がウェハWの臨界切り込み深さ(Dc値)だけ切り込んだ際に砥石21に作用する摩擦力に対応した値以下に設定される。Dc値は、ウェハWの材料毎に異なり、例えば、シリコンウェハで0.09μm、シリコンカーバイドウェハで0.15μmである。
【0038】
定圧シリンダ26は、スピンドル23及びスピンドル送り機構25を溝22b内で吊設している。具体的には、定圧シリンダ26のピストンロッドの下端がナット25aに連結されており、研削加工時に砥石21に作用する摩擦力がピストンロッドに伝わると、定圧シリンダ26のシリンダ内に充填された圧縮空気を押し戻すようにピストンを上昇させる。したがって、砥石21が所望の研削量(例えば、Dc値)より深く切り込もうとして、砥石21に作用する摩擦力が過大となる場合には、スピンドル23及びスピンドル送り機構25が一時的に上昇する。これにより、砥石21がDc値以上に切り込むことが抑制される。また、定圧シリンダ26がスピンドル送り機構25を挟んで水平方向Hの両側に設けられることにより、スピンドル送り機構25が上昇する際にスピンドル送り機構25が水平方向Hに傾くことが規制される。したがって、
図5に示すように、砥石21の砥粒が研削加工中にウェハWに過剰に接触しない、いわゆるフローティングした状態でウェハWを延性モード研削することができる。
【0039】
研削盤1を用いてSiC基板を延性モード研削する際の具体的な加工条件の一例としては、#8000の砥石21を用意し、スピンドル23の回転速度を2000rpm、チャック31の回転速度を300rpm、研削時の荷重を20kg、スピンドル送り機構25の送り速度を0.4μm/sに設定することが考えられる。これにより、SiC基板を延性モード研削することができる。
【0040】
このようにして、上述した研削盤1は、砥石21が所望の研削量より深く切り込もうとして、砥石21に作用する摩擦力が過大となる場合には、定圧シリンダ26が、スピンドル送り機構25を一時的に上昇させて加工点Pでの圧力集中を抑制することにより、スピンドル23がフローティングした状態でウェハWを延性モード研削するため、ウェハWにダメージを与えることなく安定して研削することができる。
【0041】
また、定圧シリンダ26がスピンドル送り機構25を挟んで設けられることにより、スピンドル送り機構25が水平方向Hへの移動を規制されるため、スピンドル23がフローティングした状態での延性モード研削をさらに安定して行うことができる。
【0042】
また、送り込み方向D2が鉛直方向Vに沿って平行で砥石21の加工点Pを通る直線上に配置されていることにより、スピンドル23をフローティングさせた状態でウェハWの研削を行う際に、砥石23がウェハWに接触する際の反力を抑えるようにスピンドル送り機構25がスピンドル23を送り出すため、スピンドル23がフローティングした状態での延性モード研削をさらに安定して行うことができる。また、スピンドル23が鉛直方向Vに沿って自重のみでウェハWを押圧しながら研削するため、従来のような水平方向に砥石を送って研削する研削盤と比較して、摺動抵抗が少なく微小な切り込み深さで研削することができる。
【0043】
さらに、スピンドル23の重心Gが、平面視でリニアガイド24が形成する三角形T内に配置されることにより、スピンドル23の周囲に配置されたリニアガイド24がスピンドル23の姿勢を規制するため、フローティングした状態での延性モード研削を安定して行うことができる。
【0044】
なお、スピンドル及びスピンドル送り機構を一時的に上昇させる機構は、上述したものに限定されるものではなく、砥石に作用する過剰な摩擦力を逃がすようにスピンドルを上昇可能なものであれば如何なる構成であっても構わない。
【0045】
リニアガイドの具体的構成は、スピンドルの昇降を鉛直方向に規制可能なものであればよく、上述したような、平面視でスピンドルの重心がリニアガイドにより形成される多角形内に配置されるようにスピンドルを支持するものに限定されず、例えば、2つのリニアガイドでスピンドルを支持し、かつ、平面視でスピンドルの重心が2つのリニアガイドにより形成される直線上に配置されるものであっても構わない。
【0046】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。