特許第6030639号(P6030639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6030639微多孔質膜層およびナノ繊維層を含む多孔質複合膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030639
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】微多孔質膜層およびナノ繊維層を含む多孔質複合膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/56 20060101AFI20161114BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20161114BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20161114BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   B01D71/56
   B01D69/10
   B01D69/12
   B01D71/26
【請求項の数】20
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-510421(P2014-510421)
(86)(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公表番号】特表2014-514158(P2014-514158A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】US2012037031
(87)【国際公開番号】WO2012154790
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年5月7日
(31)【優先権主張番号】61/483,820
(32)【優先日】2011年5月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ラウル・エー・ラミレス
(72)【発明者】
【氏名】ワイ−ミン・チェ
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/120668(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/065949(WO,A1)
【文献】 特開2007−301436(JP,A)
【文献】 特表2008−526485(JP,A)
【文献】 特表2011−502775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 71/56
B01D 69/10
B01D 69/12
B01D 71/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0nmから50nmの間の孔径定格を有する非ふるい膜層と、
nmから50nmの間の孔径定格を有するふるい膜層と、
前記非ふるい膜層およびふるい膜層の孔径定格よりも大きい孔径定格を有し、基本重量が、20g/mら35g/mの間であり、平均イソプロピルアルコール(IPA)バブルポイントが、3.5ポンド/平方インチから5ポンド/平方インチの間であるナイロンナノ繊維層と
を含み、
前記非ふるい膜層がナイロン膜層である、濾過材。
【請求項2】
前記ナイロンナノ繊維層が、前記非ふるい膜層と前記ふるい膜層との間に介在している、請求項1に記載の濾過材。
【請求項3】
前記非ふるい膜層が、前記ふるい膜層と前記ナイロンナノ繊維層との間に介在している、請求項1に記載の濾過材。
【請求項4】
前記ふるい膜層が、前記非ふるい膜層と前記ナイロンナノ繊維層との間に介在している、請求項1に記載の濾過材。
【請求項5】
さらに、多孔質支持材の1つまたは複数の層を含む、請求項1に記載の濾過材。
【請求項6】
前記濾過材が、上流端および下流端を有し、前記非ふるい膜層、前記ふるい膜層および前記ナイロンナノ繊維層が、上流保持層、中心保持層および下流保持層を形成するように配置され、前記ナイロンナノ繊維層は、前記下流保持層を形成しない、請求項1に記載の濾過材。
【請求項7】
前記ナイロンナノ繊維層が上流保持層を形成する、請求項6に記載の濾過材。
【請求項8】
前記ふるい膜層が下流保持層を形成する、請求項6に記載の濾過材。
【請求項9】
前記非ふるい膜層が上流保持層を形成し、前記ナイロンナノ繊維層が中心保持層を形成する、請求項8に記載の濾過材。
【請求項10】
前記非ふるい膜層が中心保持層を形成し、前記ナイロンナノ繊維層が上流保持層を形成する、請求項8に記載の濾過材。
【請求項11】
前記ふるい膜層が上流保持層を形成する、請求項6に記載の濾過材。
【請求項12】
前記ナイロン膜層および前記ナイロンナノ繊維層が、それぞれ、ナイロン−6を含む、請求項に記載の濾過材。
【請求項13】
前記濾過材が、少なくとも1つのナイロンナノ繊維層を含む、請求項1に記載の濾過材。
【請求項14】
前記濾過材が、3つのナイロンナノ繊維層を含む、請求項13に記載の濾過材。
【請求項15】
前記ふるい膜層が、超高分子量ポリエチレン(UPE)膜層である、請求項1に記載の濾過材。
【請求項16】
前記ナイロン膜層が、10nmの孔径定格を有し、前記UPE膜層が50nmの孔径定格を有する、請求項15に記載の濾過材。
【請求項17】
前記ナイロン膜層が50nmの孔径定格を有し、前記UPE膜層が2nm〜5nmの孔径定格を有する、請求項15に記載の濾過材。
【請求項18】
ハウジングおよび請求項1〜17のいずれか一項に記載の濾過材を含むフィルター。
【請求項19】
フォトレジストからゲルを除去するための、請求項1〜17のいずれか一項に記載の濾過材または請求項18に記載のフィルターの使用。
【請求項20】
フォトレジストからゲルを除去する方法であって、請求項1〜17のいずれか一項に記載の濾過材または請求項18に記載のフィルターにフォトレジストの流れを通過させることによって、フォトレジストからゲルを除去する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2011年5月9日に出願された米国仮出願第61/483,820号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
米国特許公開第2008/0217239号は、微多孔質膜に隣接し、必要に応じて微多孔質膜に結合したナノウェブを有する複合メディアの液体フィルターを開示している。この微多孔質膜は、評価粒径で3.7のLRV値によって特徴付けられ、このナノウェブは、微多孔質膜の評価粒径で0.95を超える分別濾過効率を有する。この開示によれば、ナノウェブは、電界紡糸法(エレクトロスピニング)またはエレクトロブロー法によって製造することができる。この開示によれば、複合メディアは、フィルターカートリッジの形態、フラットパネルまたは円筒形ユニットの形態で用いることができ、気体および液体の両方の流れのフィルタリングなどの様々なフィルタリング法の用途、半導体製造、ならびに他の用途で用いることができる。濾過膜として用いるためのポリオレフィン系微多孔質膜の例が記載されており、この明細書は、ナノウェブを形成するために、ギ酸中にポリアミド−6,6をエレクトロブローすることを開示している。
【0003】
米国特許第7,008,465号は、ホコリ、汚れおよび他の粒子を効果的に除去するために、少なくとも1つの高効率基板を含む活性濾過層と少なくとも1つの細繊維層またはナノ繊維層の組み合わせを使用する層状のフィルターメディアを開示している。このような基板の種類には、HEPAメディア、ガラス繊維HEPA、ULPAメディア、95%DOPメディア、メルトブローンメディア、エレクトレットメディア、セルロース/メルトブローン層状メディアなどが含まれ得る。このナノ繊維層および高効率基板は、比較的低い圧力降下で、ユーザにサブミクロン粒子を効率的に除去することを可能にするバランスの取れた一連の性質を得るように選択される。高効率基板(単層または多層の基板構造のいずれか)は、ASTM 1215に従って試験した時に80%を超える粒子効率を有する。この開示によれば、材料クラスの細繊維は、約0.01ミクロン〜5ミクロンの直径を有することができる。このようなマイクロ繊維は、ポリマー表面に部分的に可溶化または合金化される添加材料の別々の層もしくは添加材の外側コーティング、またはそれらの両方を含む滑面を有することができる。混合されたポリマー系で使用するために開示される材料は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−10、ナイロン(6−66−610)コポリマーおよび他の一般的な直鎖脂肪族ナイロンの組成物である。これらの細繊維は、電界紡糸法によって製造することができる。
【0004】
国際公開第2004/112183号は、リチウム二次電池などの電気化学デバイス用の複合膜を開示している。この複合膜には、微多孔質ポリオレフィン膜、およびこの微多孔質ポリオレフィン膜の少なくとも片側に結合し、ナノ繊維を構成するウェブ相多孔質膜が含まれる。この開示によれば、微多孔質ポリオレフィン膜は、ポリエチレンポリマーで構成される少なくとも1つの層を有する膜であり、この微多孔質ポリオレフィン膜は、好ましくは5ミクロン〜50ミクロンの厚さ、30%〜80%の多孔度を有する。さらに、この開示によれば、このナノ繊維は、好ましくは50nm〜2,000nmの直径を有する。ナノ繊維で作られているウェブ相多孔質膜は、電界紡糸法によりポリマー溶液を直接紡糸することによって微多孔質膜の一面上に形成されてもよい。
【0005】
Entegris社が2008年8月18日に出願した日本国特許出願第2008−210063号は、エレクトロスピニング法を用いて製造されたポリアミド不織布を開示し、所有権を主張しており、その繊維径は50nm〜200nmであり、明細書に定義される通り、500mLのフロー時間は2秒〜20秒であり、明細書に定義される通り、0.144ミクロンPSLの除去率は40%〜100%である。この不織布を有するフィルターユニットが主張されている。
【0006】
特開2007−301436号の概要は、ナノ繊維が三次元的に絡合しているシート状のナノ繊維構造層と、このナノ繊維構造層の濾過上流側の表面を完全に覆っている上流側の多孔質材料層と、このナノ繊維構造層の濾過下流側の表面に完全に積層した下流側の多孔質材料層とを備えるエアフィルターメディアを開示している。上流側の多孔質材料層および下流側の多孔質材料層のナノ繊維構造層と完全に積層した面は、フワフワした突起がなく、平坦で、滑らかである。下流側多孔質材料層は、気流速度が1m/秒で、圧力損失が100Pa以下であるガス透過性を有する。
【0007】
特開2006−326579号の概要は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜と、通気性支持材と、エレクトロスピニング法(電荷誘導紡糸法または静電紡糸法)によって形成されたポリマー繊維で構成されているウェブ層とを含むフィルターメディアを開示している。この発明のフィルターメディアでは、ウェブ層に隣接した空気透過性の接着剤層が提供されてもよい。例えば、PTFE多孔質膜の平均孔径の範囲は、0.01μm〜5μmである。ナイロン、ポリエチレン、およびポリプロピレンの電界紡糸で作られた繊維が開示されている。
【0008】
特開2007−075739号の概要は、濾過される気体に含まれる粒子を捕捉するフィルターメディアと、このフィルターメディアを支持する支持フレームとを有するフィルターユニットを開示している。このフィルターメディアは、PTFE多孔質膜と、このフィルターメディアとガス透過性支持材との間にPTFE膜を保持するように配置される繊維フィルターメディアとを有する。繊維フィルターメディアを構成する繊維は、0.02μm〜15μm(ミクロン)の平均繊維径を有し、ガス透過性支持材は、平均繊維径が15μmを超える繊維で構成されている。このフィルターメディアは、繊維フィルターメディアがPTFE膜に対して濾過されるガスの流れの下流側に位置するように、支持フレームに支持されている。この開示によれば、この繊維フィルターメディアは電界紡糸することができる。
【0009】
国際公開第2004/069959号は、酸発生剤成分との化学増幅型フォトレジスト組成物である粗樹脂溶液のフィルタリングを開示している。この開示によれば、濾過膜材の具体例としては、PTFEなどのフッ素樹脂類、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂類、ナイロン6およびナイロン66などのポリアミド樹脂が挙げられる。この明細書は、ポリマーおよびオリゴマーの副生成物を除去するために、濾過膜を用いる2段階フィルターに粗樹脂溶液を通過させる工程も開示している。フィルタリングプロセスの一具体例において、薄い粗樹脂溶液を第1の濾過ステップとしてナイロンフィルターに通して濾過し、次いで、得られた濾液を、第2の濾過ステップとして、ポリプロピレンフィルターに通して濾過する。ポリエチレンフィルターも、この第2の濾過工程で使用されるものとして開示された。
【0010】
米国特許出願第2010/0038307号は、スクリム層(複数可)とも呼ばれる、任意の多孔質基材を有する1000nm未満の平均径を有する少なくとも1つのナノ繊維層を含む濾過メディアを開示している。開示される多孔質基材は、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、湿式不織布、樹脂結合不織布、織物、編布、有孔フィルム、紙、およびそれらの組み合わせである。濾過メディアは、約0.5ミクロンから約5ミクロンの間の平均流孔径を有するものとして開示されており、液体中の粒状物質のフィルタリングに用いられる。このメディアは、差圧が2psi(14kPa)から15psi(100kPa)の間に増加するので、比較的高いレベルの、堅実で、減少しない流速、少なくとも0.055L/分/cmの流速を有すると報告されている。
【0011】
フォトリソグラフィーは、半導体デバイス製造において最も困難なステップの一つである。フォトリソグラフィーは露光を用いて、フォトレジストと呼ばれる感光性化学物質でコーティングされたシリコンウエハ上にフォトマスクのパターンを転写する。粒子およびゲルを除去するコーターシステムにおけるフォトレジストの濾過は、リソグラフィープロセスにおける重要なステップである。濾過は、リソグラフィープロセスと関係する欠陥を減らすことができることを無数の刊行物が証明している。ゲル粒子は形を変えて、従来のふるいフィルターを通って移動することができるので、フォトレジストからのゲル粒子の濾過は特に取り組みがいがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国仮出願第61/483,820号
【特許文献2】米国特許公開第2008/0217239号
【特許文献3】米国特許第7,008,465号
【特許文献4】国際公開第2004/112183号
【特許文献5】特開2007−301436号
【特許文献6】特開2006−326579号
【特許文献7】特開2007−075739号
【特許文献8】国際公開第2004/069959号
【特許文献9】米国特許出願第2010/0038307号
【特許文献10】米国特許第4,127,706号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、改良されたフォトレジスト濾過を提供するために、保持力が改善されたゲル粒子を有する濾過材が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ゲル保持力が改善されたフォトレジスト濾過用の濾過材に関する。一実施形態において、この濾過材は、約10nmから約50nmの間の孔径定格(pore size rating)を有する非ふるい膜層と、約2nmから約50nmの間の孔径定格を有するふるい膜層と、非ふるい膜層およびふるい膜層の孔径定格よりも大きい孔径定格を有し、基本重量が約20g/mから約35g/mの間であり、平均イソプロピルアルコール(IPA)バブルポイントが約3.5ポンド/平方インチから約5ポンド/平方インチの間であるナイロンナノ繊維層と、を含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態において、ナイロンナノ繊維層は、非ふるい膜層とふるい膜層との間に介在している。他の実施形態において、非ふるい膜層は、ふるい膜層とナイロンナノ繊維層との間に介在している。さらに他の実施形態において、ふるい膜層は、非ふるい膜層とナイロンナノ繊維層との間に介在している。
【0016】
いくつかの実施形態において、この濾過材は、さらに、多孔質支持材の1つまたは複数の層を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、この濾過材は、少なくとも1つのナイロンナノ繊維層を含む。具体的には、この濾過材は、3つのナイロンナノ繊維層を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、非ふるい膜層はナイロン膜層である。具体的には、ナイロンナノ繊維層およびナイロン膜層は、それぞれ独立して、ナイロン−6またはナイロン−6,6である。より具体的には、ナイロンナノ繊維層およびポリアミド膜層は、それぞれナイロン−6である。
【0019】
いくつかの実施形態において、この濾過材は、上流端および下流端を有し、非ふるい膜層、ふるい膜層およびナイロンナノ繊維層は、上流保持層、中心保持層および下流保持層を形成するように配置され、その際、ナイロンナノ繊維層は下流保持層を形成しない。具体的には、ナイロンナノ繊維層が上流保持層を形成する。より具体的には、非ふるい膜層が中心保持層を形成し、ナイロンナノ繊維層が上流保持層を形成する。あるいは、ふるい膜層が下流保持層を形成する。あるいは、非ふるい膜層が上流保持層を形成し、ナイロンナノ繊維層が中心保持層を形成する。あるいは、ふるい膜層が上流保持層を形成する。
【0020】
一実施形態において、この濾過材は、約10nmから約50nmの間の孔径定格を有するポリアミド膜層と、約3nmから約50nmの間の孔径定格を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)膜層と、ポリアミド膜層およびUHMWPE膜層の孔径定格よりも大きい孔径定格を有し、基本重量が約20g/mから約35g/mの間であり、平均イソプロピルアルコール(IPA)バブルポイントが約3.5ポンド/平方インチから約5ポンド/平方インチの間であるナイロンナノ繊維層と、を含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、ナイロンナノ繊維層は、ポリアミド膜層とUHMWPE膜層との間に介在する。他の実施形態において、ポリアミド膜層は、UHMWPE膜層とナイロンナノ繊維層との間に介在している。さらに他の実施形態において、UHMWPE膜層は、ポリアミド膜層とナイロンナノ繊維層との間に介在している。
【0022】
いくつかの実施形態において、この濾過材は、上流端および下流端を有し、ポリアミド膜層、UHMWPE膜層およびナイロンナノ繊維層は、上流保持層、中心保持層および下流保持層を形成するように配置され、その際、ナイロンナノ繊維層は下流保持層を形成しない。具体的には、ナイロンナノ繊維層が上流保持層を形成する。より具体的には、ポリアミド膜層が中心保持層を形成し、ナイロンナノ繊維層が上流保持層を形成する。あるいは、UHMWPE膜層が下流保持層を形成する。あるいは、ポリアミド膜層が上流保持層を形成し、ナイロンナノ繊維層が中心保持層を形成する。あるいは、UHMWPE膜層が上流保持層を形成する。
【0023】
いくつかの実施形態において、ナイロン膜層は、約10nmの孔径定格を有し、UPE膜層は、約50nmの孔径定格を有する。あるいは、ナイロン膜層は、約50nmの孔径定格を有し、UPE膜層は、約2nm〜約5nmの孔径定格を有する。
【0024】
本発明の別の実施形態は、本発明のハウジングおよび濾過材を含むフィルターである。
【0025】
本発明の別の実施形態は、フォトレジストからゲルを除去するための、本発明の濾過材または本発明の濾過材を含むフィルターの使用である。
【0026】
本発明の別の実施形態は、フォトレジストからゲルを除去する方法であって、本発明の濾過材または本発明の濾過材を含むフィルターにフォトレジストの流れを通過させることによって、フォトレジストからゲルを除去する工程を含む方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の濾過材と関連するいくつかの利点がある。例えば、ナノ繊維層が濾過材の厚さを増加させると、フォトレジストの滞留時間が改善され、濾過材によるゲル保持力も改善される。ナノ繊維層および微多孔質膜層にナイロンを用いることにより、濾過材の非ふるい保持力が改善され、これが、リソグラフィープロセスにおける問題、特にゲルベースの問題を減少させ、濾過材を含むフィルターの寿命を増加させる。予想外に、ナイロンナノ繊維層は、複数のフィルター層を使用することによって生じた圧力降下も減少させ、このナイロンナノ繊維層は、粒子およびゲルの保持力を改善し、フォトリソグラフィープロセスにおける問題を減少させ、収率損失を減少させ、かつスピンコーティングプロセスの動作のためのより大きいウィンドウを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】微多孔質膜層とナノ繊維層またはナノ多孔質膜層とナノ繊維層の2つを含む本発明の濾過材のいくつかの非限定的なバージョンを示す図である。
図2】単層被覆率(%)の関数として、本発明の例示的な濾過材の保持率(%)を示すグラフである。
図3】脱イオン水中の5nm金粒子の200ppb溶液の体積(mL)の関数として、様々なナイロン膜の金粒子の吸収率(%)を示すグラフである。
図4】水中のフタル酸溶液の濾過量の関数として、様々な濾過材の下流で測定されるフタル酸の重量(μg)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
様々な組成物および方法が記載されているが、これらは変わる場合があり、この発明は、記載される特定の分子、組成物、設計、方法またはプロトコルに限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、単に特定のバージョンまたは実施形態を説明する目的のためであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解されたい。
【0030】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が特に明確に指示しない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「ナノ繊維」への言及は、当業者などに知られている1つまたは複数のナノ繊維およびその同等物への参照である。特に定義しない限り、本明細書に使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の方法および本明細書に記載のものと同様または同等の材料は、本発明の実施形態の実施もしくは試験において使用することができる。本明細書で言及される全ての刊行物は、参照によりその全体が組み込まれる。本発明が先行発明によるそのような開示に先行する資格がないことを認めるものとして解釈されるものは本明細書にはない。「任意の」または「必要に応じて」とは、続いて記載される事象または状況が起こってもまたは起こらなくてもよく、その記載は、その事象が起こる場合と起こらない場合を含むことを意味する。本明細書の全ての数値は、はっきり示されるか否かにかかわらず、「約」という用語によって修飾され得る。「約」という用語は、一般に、当業者が列挙された値に等しいと思う(すなわち、同じ機能または結果を有する)数値の範囲を指す。いくつかの実施形態において、「約」という用語は、表示値の±10%を指し、他の実施形態において、「約」という用語は、表示値の±2%を指す。組成物および方法は、様々な構成要素またはステップを「含む」(「を含むが、これらに限定されない」という意味として解釈される)ことに関して記載されているが、これらの組成物および方法も、様々な構成要素およびステップ「から本質的になる」、または「からなる」ことができ、そのような専門用語は、本質的に閉じたまたは閉じたメンバーグループを定義するものとして解釈されるべきである。
【0031】
本発明は、1つまたは複数の実施に関して示され、説明されるが、本明細書および添付の図面を読んで、理解することに基づき、同等の変更および改良が当業者には想起されるであろう。本発明は、このような全ての改良および変更を含み、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。さらに、本発明の特定の特徴または態様は、いくつかの実施のうちの1つのみに関して開示されるが、任意の既定の用途または特定の用途に望ましくかつ有利であり得るように、このような特徴または態様は、他の実施の1つもしくは複数の他の特徴または1つもしくは複数の他の態様と組み合わせることができる。さらに、「含む(include)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語またはその変形は、発明を実施するための形態または特許請求の範囲のいずれかにおいて使用され、このような用語は、いわば、「含む(comprising)」という用語と同様に包括的であることが意図される。また、「例示的」という用語は、最良よりもむしろ、一例を意味することを単に意図する。本明細書に示される特徴、層および/または要素は、簡潔さと理解を容易にする目的で、互いに対して特定の寸法および/または方向で示されており、実際の寸法および/または方向は、本明細書に示されるものと実質的に異なり得ることも理解されるべきである。
【0032】
以下の説明および添付の図面と併せて考慮すると、本発明のこれらのおよび他の態様は、より良く認識され、理解されるであろう。以下の説明は、本発明の様々な実施形態およびその多くの特定の詳細を示すが、例示の目的で与えられ、限定するものではない。多くの代替、改良、追加または再構成が本発明の範囲内で行われてもよく、本発明は、そのような全ての代替、改良、追加または再構成を含む。
【0033】
本発明の例示的な実施形態を以下に記載する。
【0034】
本明細書で引用される全ての特許、公開された出願および参考文献の教示は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0035】
本発明は、特に、その例示的な実施形態を参照して示し、説明するが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更がその中で行われ得ることは、当業者なら理解するであろう。
【0036】
フィルターの性能は、ふるい保持性能、非ふるい保持性能、膜厚、フィルター膜内の流体の滞留時間、膜を通る流体通路(層流または乱流)、および膜の流動性能またはフロー時間などの様々な属性に依存する。別の重要なフィルター属性は、剪断速度の関数である膜(液界面)における液体の境界層の厚さであり、この界面は、液体流の流量分布(チャネリング)に影響を与える。
【0037】
本発明の1つのバージョンは、IPAもしくはHFE−7200のバブルポイントによって決定される場合に約2nm〜約50nmの孔径定格を有するふるい微多孔質膜またはふるいナノ多孔質膜と、IPAもしくはHFE−7200のバブルポイントによって決定される場合に約10nm〜約50nmの孔径定格を有する非ふるい微多孔質膜または非ふるいナノ多孔質膜と、ふるい微多孔質膜もしくはふるいナノ多孔質膜の孔径定格および非ふるい微多孔質膜もしくは非ふるいナノ多孔質膜の孔径定格より大きい孔径定格を有するナノ繊維層とを含む(濾過材または複合膜とも呼ぶことができる)フィルター材である。いくつかの実施形態において、このナノ繊維層は、IPAバブルポイントによって決定される場合に約1.75ミクロン〜約2.5ミクロンの孔径定格を有する。いくつかの実施形態において、このナノ繊維層は、約20g/mから約35g/mの間の基本重量を有する。いくつかの実施形態において、このナノ繊維層は、約3.5ポンド/平方インチから約5ポンド/平方インチの間の平均イソプロピルアルコール(IPA)バブルポイントを有する。
【0038】
本明細書で使用される「ふるい膜」は、主にふるい保持機構を介して粒子を捕捉するか、または粒子を捕捉するために最適化された膜を指す。例示的なふるい膜には、テフロン(登録商標)膜とUHMWPE膜が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用される「ふるい保持機構」は、粒子がフィルターまたは微多孔質膜の孔よりも大きいことによる結果の保持を指す。ふるい保持力は、2次フィルターの機能を効果的に果たすフィルターケーキ(フィルターまたは膜の表面での粒子の凝集)を形成することによって向上させることができる。
【0040】
本明細書で使用される「非ふるい膜」は、主に非ふるい保持機構を介して粒子を捕捉するか、または粒子を捕捉するために最適化された膜を指す。負に帯電している場合が多いゲルの濾過では、ナイロン膜が非ふるい膜の機能を果たす。例示的な非ふるい膜には、ナイロン−6膜またはナイロン−6,6膜などのナイロン膜が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書で使用される「非ふるい保持機構」は、フィルターもしくは微多孔質膜の圧力降下またはバブルポイントに関連しない、妨害、拡散および吸着などの機構によって生じる保持を指す。
【0042】
濾過条件に応じて、膜は、ふるい保持機構もしくは非ふるい保持機構のいずれか、またはふるい保持機構と非ふるい保持機構の両方を介して動作することができることが理解されるべきである。これらの用語は、フォトレジストの濾過中に存在する典型的な条件を参照して本明細書で使用される。
【0043】
バブルポイントによって決定される、非ふるい微多孔質膜に対するふるい微多孔質膜の孔径の比は、10対1、約10対約1、5対1、約5対約1、3対1、または約3対約1で有り得る。例えば、本発明の一実施形態において、ナノ繊維層は、バブルポイントによって決定される場合に50(±20%)nm孔径定格を有する微多孔質UHMWPE膜と、バブルポイントによって決定される場合に10(±20%)nm孔径定格を有するナイロン微多孔質膜との間に介在している。この組み合わせは、良好な流れを維持しながら、非ふるい保持(ゲル/凝集体)を最適化するのに都合がよい。
【0044】
バブルポイントによって決定される、ふるい微多孔質膜に対する非ふるい微多孔質膜の孔径の比は、5〜25対1、10〜25対1、5〜10対1、約5〜25対約1、約10〜25対約1または約5〜10対約1で有り得る。例えば、ふるい保持を最大化するために使用することができる本発明のバージョンにおける膜の組み合わせは、バブルポイントによって決定される50(±20%)nm孔径定格を有するナイロン微多孔質膜と、バブルポイントによって決定される5(±20%)nm孔径定格またはバブルポイントによって決定される2(±20%)nm孔径定格を有する微多孔質UHMWPE膜との間に介在するナイロンナノ繊維層を含む。
【0045】
本発明の一実施形態は、3つの層を含む濾過材である。第1の層は、約10nmから約50nmの間の孔径定格を有する非ふるい(例えば、ナイロン)膜層である。第2の層は、約2nmから約50nmの間の孔径定格を有するふるい(例えば、UHMWPE)膜層である。第3の層は、ポリアミド膜層およびUHMWPE膜層の孔径定格より大きい孔径定格を有するナイロンナノ繊維層である。
【0046】
これらの3つの層は、意図された流体流の方向を参照して表され得る。これらの実施形態において、これらの3つの層は、上流保持層、中心保持層および下流保持層と呼ぶことができる。
【0047】
本明細書および特許請求の範囲の目的のために、「微多孔質膜」という用語は、超多孔質膜、ナノ多孔質膜、および微多孔質膜などの用語によっても記載され得る多孔質膜を含めるために使用される。これらの微多孔質膜は、限定されないが、ゲル、粒子、コロイド、細胞、ポリオリゴマーなどの供給流の成分(保持液)を保持するが、細孔よりも実質的に小さい成分は、孔を通過し透過蒸気に入る。微多孔質膜による供給流中の成分の保持は、動作条件、例えば、面速度、および界面活性剤の使用、pH、ならびにこれらの組み合わせに依存し得、かつ微多孔質膜の孔のサイズ、構造および分配に対する粒子のサイズおよび構造(硬質粒子またはゲル)に依存し得る。好ましい実施形態において、この微多孔質膜はナノ多孔質膜である。
【0048】
本明細書で使用される「保持率(%)」は、流体流の経路に配置された濾過材によって流体流から除去される粒子の割合を指す。nmサイズの蛍光ポリスチレンラテックス(PSL)ビーズは、「蛍光分光法によるサブ30nmの粒子の保持試験(Sub−30 nm Particle Retention Test by Fluorescence Spectroscopy)」Yaowu、Xiaoら、セミコン中国、2009年3月19〜20日、中国上海(この内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示される方法および材料を利用する本発明のフィルター材および微多孔質膜の保持率を測定するために用いることができる。本発明のいくつかのバージョンにおいて、蛍光ナノ粒子は、G25粒子である。G25粒子は、公称直径が25nmの粒子をまとめているデューク科学(Duke Scientific社)によって配布される。しかし、20nm〜30nm、場合によって、21nm〜24nmの範囲の粒子を用いることができる。フィルター材を評価するために用いられる蛍光粒子の単層被覆率は、1%から30%の間で有り得るが、他の単層被覆率も用いることができる。
【0049】
保持効率、または対数減少値(LRV)は、フィルター材または微多孔質膜の効率の別の評価基準である。フィルター材または微多孔質膜のLRVは、例えば、蛍光PSLビーズを用いる実験から算出することができる。対数減少値(LRV)は、次のように定義される。
【0050】
LRV=Log10(入口濃度/出口濃度)
【0051】
ふるい保持率、またはふるい条件下もしくは本質的なふるい条件下でのふるい保持率は、様々な界面活性剤を用いて評価することができる。粒子はフィルター膜または微多孔質膜の孔よりも大きいので、ふるい保持が生じる。ふるい保持力は、2次フィルターの機能を効果的に果たすフィルターケーキ(フィルターまたは膜の表面での粒子の凝集)を形成することによって向上させることができる。界面活性剤の使用は、微多孔質膜の非ふるい効果、ナノ繊維層、および任意の支持材を最小限に抑え、粒子保持試験のためのふるい条件または本質的なふるい条件を提供する。微多孔質膜のようなフィルター材またはフィルター構成要素の粒子保持は、ふるい条件下(または本質的なふるい条件下)で、有機液体、有機液体を含むフォトレジストおよび反射防止コーティングのような組成物、ならびに濾過がフィルター材または微多孔質膜のふるい濾過特性によって支配されている他の同様の液体の中のフィルター材の粒子保持特性と相関させることができると期待される。本発明のいくつかの実施形態においては、このフィルターまたは微多孔質膜は、ふるい条件下で、約90%〜約99.99%、約95%〜約99.99%、約98%〜約99.99%、または約99%〜約99.99%の保持率を有する。いくつかの実施形態において、このフィルターまたは微多孔質膜は、ふるい条件下で、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の保持率を有する。
【0052】
本発明のいくつかのバージョンにおいて、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはトリトンX−100[(C1422O(CO))]、(平均9.5個のエチレンオキシド単位上に)親水性のポリエチレンオキシド基ならびに炭化水素の親油性基もしくは疎水性基を有する非イオン界面活性剤である。この炭化水素基は、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル基である。使用される界面活性剤の量は、臨界ミセル濃度(CMC)を超えるように選択することができる。CMCを超える界面活性剤の濃度は、流体の表面張力を監視する表面張力計を用いて測定することができる。本発明のいくつかのバージョンにおいて、界面活性剤は0.1%(w/w)〜0.3%(w/w)の範囲であり、これは、ふるい条件または本質的なふるい条件を提供する。
【0053】
微多孔質またはナノ多孔質の非ふるい膜層は、イソプロピルアルコール(IPA)(またはHFE7200のような同等物)ポロメトリー(porisometry)バブルポイントに基づく、5nmから100nmの間、5nmから50nmの間または10nmから50nmの間の孔径定格を有することができる。微多孔質またはナノ多孔質のふるい膜層は、IPA(またはHFE7200のような同等物)ポロメトリーバブルポイントに基づく、2nmから200nmの間、2nmから100nmの間、2nmから50nmの間、10nmから50nmの間または3nmから50nmの間の孔径定格を有することができる。
【0054】
非ふるい保持は、フィルターもしくは微多孔質膜の圧力降下またはフィルターもしくは微多孔質膜のバブルポイントに関係なく、流体流から粒子を除去する、妨害、拡散および吸着などの保持機構を含む。膜表面への粒子の吸着は、例えば、分子間のファンデルワールス力および静電力によって媒介され得る。蛇行状の膜を通って移動する粒子が、膜と接触しないように十分に速く方向を変えることができない場合に、妨害が生じる。拡散による粒子輸送は、粒子がフィルターメディアと衝突する一定の確率を作り出す主に小さな粒子のランダム運動またはブラウン運動から生じる。粒子とフィルターまたは粒子と膜の間に反発力が存在しない場合、非ふるい保持機構は活発になり得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態において、非ふるい保持率(%)は、中性条件下(例えば、膜もしくはフィルターの等電点または膜もしくはフィルターの等電点付近)で評価することができる。
【0055】
ゲルは負に帯電することができる。したがって、正の電荷密度を有する微多孔質膜を有するフィルター材(例えば、ポリアミドまたはナイロン膜)は、非ふるい保持機構を介して液体流からゲルを除去するのに有用であり得る。本発明の他の実施形態において、非ふるい保持率(%)は、酸性条件下(例えば、膜またはフィルターの等電点より低いpH)で評価することができる。非ふるい保持率(%)は、例えば、金ナノ粒子を用いて評価することができる。
【0056】
本発明の別のバージョンは、微多孔質のポリアミド膜層と、微多孔質の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)膜層と、ポリマーナイロンナノ繊維の層とを含む濾過材である。微多孔質またはナノ多孔質のポリアミド膜層は、イソプロピルアルコール(IPA)(またはHFE7200のような同等物)ポロメトリーバブルポイントに基づく、5nmから100nmの間、5nmから50nmの間、または10nmから50nmの間の孔径定格を有することができる。微多孔質またはナノ多孔質のUHMWPE膜層は、IPA(またはHFE7200のような同等物)ポロメトリーバブルポイントに基づく、2nmから200nmの間、2nmから100nmの間、2nmから50nmの間、10nmから50nmの間または3nmから50nmの間の孔径定格を有することができる。ナノ繊維層は、ポリアミド膜層の孔径定格またはUHMWPE膜層の孔径定格のいずれかより大きい孔径定格、約20g/mから約35g/mの間の基本重量、約3.5ポンド/平方インチから約5ポンド/平方インチの間の平均IPAバブルポイントを有することができる。
【0057】
非ふるい膜層またはふるい膜層は、支持フレームもしくはハウジング内のフィルター配置に応じて、流路内の濾過材の上流層または下流層で有り得る。本発明の他のバージョンにおいて、ポリマーナイロンのナノ繊維層は、濾過材の構成配置に応じて、流路の上流層であり得るか、またはポリマーナイロンのナノ繊維層は、ふるい膜層と非ふるい膜層との間に介在させることができる。
【0058】
ナノ繊維膜、微多孔質膜およびナノ多孔質膜、ならびにそれらを特徴付ける方法は、国際特許出願公開WO2010/120668号に開示されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0059】
本発明のナノ繊維は、ポリマーから形成されている。本発明のいくつかのバージョンにおいて、ナノ繊維材料を形成するために用いられるポリマーは、微多孔質膜保持層の1つを形成するために用いられるポリマーと同じである。ポリアミド、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、およびポリエステルは、ナノ繊維層のために本発明のバージョンで用いることができる。用いることができるポリアミド縮合ポリマー(ナイロン材料)には、ナイロン−6、ナイロン−6,6、およびナイロン−6,6〜6,10などが含まれるが、これらに限定されない。本発明のポリマーナノ繊維層は、メルトブロー法によって形成される場合、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレンなどのポリオレフィン、ポリ(エチレンテレフタレート)などのポリエステル、ならびに上記のナイロンポリマーなどのポリアミドを含み、ナノ繊維にメルトブローすることができる任意の熱可塑性ポリマーが使用され得る。好ましい実施形態において、ポリマーナノ繊維は、ポリマーナイロンナノ繊維である。具体的には、ポリマーナイロンナノ繊維は、ナイロン−6またはナイロン−6,6のナノ繊維である。より具体的には、ポリマーナイロンナノ繊維はナイロン−6である。あるいは、ポリマーナイロンナノ繊維は、金ナノ粒子の吸収がナイロン−6の金ナノ粒子の吸収の約25%、約10%または約5%以内である任意のナイロンナノ繊維を含むか、またはその任意のナイロンナノ繊維からなる。
【0060】
ナノ繊維層は、古典的な電界紡糸法などの電界紡糸法またはエレクトロブロー法、特定の状況において、メルトブローまたは他のそのような適切なプロセスによって製造することができるナノ繊維を含むか、またはそのようなナノ繊維から成り得る。古典的な電界紡糸法は、米国特許第4,127,706号(この教示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に示されている技術であり、その中で、高電圧が、ナノ繊維および不織マットを作製するための溶液中のポリマーに印加される。本発明のバージョンのナノ繊維は、電界紡糸法で作製することができるか、または、例えば、メルトブロー法で作製されたナノ繊維と電界紡糸法で作製されたナノ繊維の組み合わせを含み得る。
【0061】
本発明のバージョンにおいて、IPAもしくは3M(登録商標)社製のHFE−7200バブルポイント、または同等物によって決定されるナノ繊維層の孔径定格は、同様にバブルポイントによって決定される複合膜中の微多孔質膜層の孔径定格よりも大きい。したがって、ナノ繊維層は、フィルター材の中のどんな微多孔質膜よりもIPAのバブルポイントが低くなる。本発明のいくつかのバージョンにおいて、ナノ繊維層の(ポロメトリーによって決定される)平均IPAバブルポイントは、約3.5ポンド/平方インチから約5ポンド/平方インチの間である。
【0062】
濾過材のいくつかのバージョンにおけるナノ繊維層の厚さは、約110ミクロン〜約170ミクロン、約120ミクロン〜約150ミクロン、約110ミクロン〜約130ミクロンまたは約135ミクロン〜約170ミクロンの範囲であり得る。(SEM分析によって決定される)繊維径は、約350nm〜1200nmまで変化させることができ、平均直径は、約500nm〜800nmの範囲である。ナノ繊維試料の繊維径を、例えば、ソフトイメージ・システム・ソフトウェア(Soft Image System software)を有するFEI走査型電子顕微鏡(3000倍〜5000倍)を用いて代表的な試料について測定し(非常に大きいか、または非常に小さい直径の繊維、例えば、他の繊維の95%より大きいかまたは小さいものを無視する)、10〜20個のデータポイントに基づいて繊維径および平均値を計算することができる。本発明のいくつかのバージョンにおいて、平均繊維径は約750nmである。本発明の他のバージョンにおいて、平均繊維径は、約700nm〜約800nmである。本発明のいくつかのバージョンにおいて、ナノ繊維層の基本重量は、約20g/m〜約35g/mであり、ナノ繊維層の密度は0.2(±10%)g/cmであり、通気度は、6(秒/200ml)から10.5(秒/200ml)の間であり得る。
【0063】
本発明において、濾過材中のナノ繊維層は、(PSLビーズと脱イオン水の溶液に0.1%トリトンX−100界面活性剤を加えた)ふるい条件下で、約25nmサイズの蛍光ナノ粒子を保持する。本発明のいくつかのバージョンにおいて、(PSLビーズと脱イオン水の溶液に0.1%トリトンX−100界面活性剤を加えた)ふるい条件下での25nm(公称)蛍光PSLビーズに対する濾過材中のナノ繊維層の保持率は、ナノ繊維層に蛍光PSLビーズを含む約8ppb溶液(重量/重量)が添加された場合の蛍光PSLビーズの単層については、85(±5)%〜98(±5)%、またはそれ以上である(8ppb濃度のPSLビーズを用いて、8ppbの蛍光ビーズ溶液100mlが膜ディスクを通過する時に、90mmの膜ディスクの試料膜表面上に25nm蛍光PSLビーズの1%単層を堆積させることができる)。本発明のいくつかのバージョンにおいて、25nm(公称)蛍光PSLビーズに対する濾過材中のナノ繊維層の保持率は、ふるい条件下で、25nm蛍光PSLビーズの8ppb溶液が膜に繰り返し添加された場合のフィルター材上の蛍光PSLビーズの5つ以下の単層については、90(±5)%以上である。本発明のいくつかのバージョンにおけるナノ繊維層のためのガーレー数(Gurley Number)は、28.6mmの直径を有する試験試料については、100ミリリットル当たり約5.75秒〜100ミリリットル当たり約10.75秒の範囲で有り得る。
【0064】
本発明のいくつかのバージョンにおいて、ナノ繊維層は、さらに、ナノ繊維層と接触する支持材を含む。具体的には、この支持材は不織支持材である。ナノ繊維層のための例示的な不織支持材には、不織ナイロン、不織ポリエーテルスルホン(PES)または不織UHMWPEが含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
本発明のいくつかのバージョンにおいて、濾過材は、少なくとも1つのナイロンナノ繊維層を含む。具体的には、この濾過材は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つのナイロンナノ繊維層を含む。あるいは、この濾過材は、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのナイロンナノ繊維層を含む。
【0066】
本発明のいくつかのバージョンにおいて、微多孔質ふるい膜は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPEまたはUPE)膜である。UPEは、分子量が数100万、例えば、100万以上、通常は200万から600万の間である、非常に長い鎖を有する熱可塑性のポリエチレンのバージョンである。本発明のいくつかのバージョンにおいて、ふるい微多孔質膜はUPEを含むか、またはUPEからなる。あるいは、このふるい微多孔質膜は、PTFEなどのフッ素ポリマーまたは過フッ化ポリマーである。具体的には、このふるい微多孔質膜はPTFEである。
【0067】
本発明のいくつかのバージョンにおいて、非ふるい微多孔質膜、または非ふるい特性を有する微多孔質膜は、(本明細書ではポリアミドとも呼ばれる)ナイロンを含むか、またはナイロンからなる。より具体的には、ナイロン微多孔質膜は、ナイロン−6またはナイロン−6,6の微多孔質膜である。さらにより具体的には、ナイロン微多孔質膜は、ナイロン−6微多孔質膜である。あるいは、非ふるいナイロン微多孔質膜は、金ナノ粒子の吸収がナイロン−6の金ナノ粒子の吸収の約25%、約10%または約5%以内である任意のナイロンを含むか、またはそれらからなる。
【0068】
ふるい微多孔質膜および非ふるい微多孔質膜は、それぞれ独立して、平均IPAバブルポイントを有し、3M(登録商標)社製のHFE−7200などの別の溶媒を用い、表面張力を補償する、約20psigを超える、場合によっては、30psigを超える、さらに他の場合においては、約50psigを超える同等のバブルポイントを有することができる。いくつかのバージョンにおいて、ふるい微多孔質膜および非ふるい微多孔質膜は、それぞれ独立して、平均IPAバブルポイント、または3M(登録商標)社製のHFE−7200などの別の溶媒を用い、表面張力を補償する、20psig〜150psigの同等のバブルポイントを有する。
【0069】
本発明のバージョンにおいて、ふるい微多孔質膜および非ふるい微多孔質膜は、それぞれ独立して、3M(登録商標)社製の液体HFE−7200において75psi〜90psiの平均バブルポイントを有し、場合によって、HFE−7200において約85psi(586,054Pa)の平均バブルポイントを有する。本発明のいくつかのバージョンにおいて、ふるい微多孔質膜および非ふるい微多孔質膜は、それぞれ、3M(登録商標)社製のHFE−7200において95psi〜110psiの平均バブルポイント、場合によって、約100psi(689,476Pa)の平均バブルポイントを有する。本発明のいくつかのバージョンにおいて、ふるい微多孔質膜および非ふるい微多孔質膜は、それぞれ、3M(登録商標)社製のHFE−7200において115psi〜125psiの平均バブルポイント、場合によって、約120psi(827,371Pa)の平均バブルポイントを有する。本発明のさらに他のバージョンにおいて、ふるい微多孔質膜および非ふるい微多孔質膜は、それぞれ、3M(登録商標)社製の液体HFE−7200において140psi〜160psiの平均バブルポイントを有する。ふるい微多孔質膜および非ふるい微多孔質膜は、それぞれ独立して、対称または非対称の微多孔質膜であり得る。
【0070】
本発明のいくつかのバージョンにおいて、ふるい微多孔質膜は、Entegris社製で、10nmの非対称評価膜(asymmetric rated membrane)と呼ばれ、3M(登録商標)社製の液体HFE−7200において75psi〜90psiの平均バブルポイントを有し、場合によって、約85psi(586,054Pa)の平均バブルポイントを有する非対称UPE膜であり得る。本発明のいくつかのバージョンにおいて、ふるい微多孔質膜は、Entegris社製で、5nmの非対称評価膜と呼ばれ、3M(登録商標)社製の液体HFE−7200において95psi〜110psiの平均バブルポイントを有し、場合によって、約100psi(689,476Pa)の平均バブルポイントを有する非対称UPE膜であり得る。本発明のいくつかのバージョンにおいて、ふるい微多孔質膜は、Entegris社製で、3nmの非対称評価膜と呼ばれ、3M(登録商標)社製の液体HFE−7200において115psi〜125psiの平均バブルポイントを有し、場合によって、約120psi(827,371Pa)の平均バブルポイントを有する非対称UPE膜であり得る。
【0071】
本発明のいくつかのバージョンにおいて、ふるい微多孔質膜および非ふるい微多孔質膜は、圧力0.10MPaおよび温度21℃で、IPA500mLについて、350秒〜6500秒、場合によっては、500秒〜6500秒の範囲のIPAフロー時間によって特徴付けられる。3M(登録商標)社製の液体HFE−7200において75psi〜90psiの平均バブルポイントを有する非対称0.005ミクロン(5nm)UPE膜のIPAフロー時間は、圧力0.1MPa、21℃で、IPA500mLについて、5000秒〜7000秒の範囲であり得る。
【0072】
IPAフロー時間は、温度21℃、圧力97,900Pa(約0.1MPa、または約14.2psid)で、イソプロピルアルコール500mLが微多孔質膜の47mmディスク単独またはフィルター材(例えば、微多孔質膜、ナノ繊維層、および12.5cmの面積を有する任意の支持体)を通って流れるための時間である。
【0073】
バブルポイントは、空気流ポロメーターを用いる平均IPAバブルポイントを指す。場合によって、微多孔質膜のバブルポイントは、HFE−7200(3M(登録商標)社、セントポール、ミネソタ州から入手可能)において測定された平均バブルポイントを指す。HFE−7200バブルポイントは、HFE−7200で測定されたバブルポイントに1.5または約1.5をかけることによってIPAバブルポイント値に変換することができる。3M(登録商標)社製のHFE−7200は、エトキシノナフルオロブタンであり、25℃で13.6mN/mと報告された表面張力を有する。
【0074】
ふるい微多孔質膜および非ふるい微多孔質膜は、フィルター材において対称、非対称またはこれらの組み合わせ(例えば、濾過材中、一方の微多孔質膜は対称であり、他方の微多孔質膜は非対称であり得る)の細孔構造を有し得る。対称の微多孔質膜は、膜を通して実質的に同じである、平均的な大きさの細孔によって特徴づけられる孔径定格を有する多孔質構造を有する。非対称の微多孔質膜では、細孔の大きさは、膜を通って変化し、一般に、膜の一方の面の堅固な側から、他方の面の開放側に向かってサイズが増加する。本発明のいくつかのバージョンにおいて、微多孔質膜は、膜のむき出し側が液体透過性であるむき出し膜(skinned membrane)であってよい。非対称の他のタイプが知られている。例えば、細孔径が、膜の厚さの中の位置で最小細孔径を経験するもの(砂時計形状)である。非対称の微多孔質膜は、同じ評価の細孔径および厚さの対称微多孔質膜に比べて、より高いフラックスを有する傾向がある。また、濾過される流体流に面するより大きな孔側を有する非対称の微多孔質膜を用い、予め濾過効果を作り出すことができる。本発明のバージョンの微多孔質膜は、対称、非対称、および砂時計からなる群から選択される細孔構造を有することができる。本発明のいくつかのバージョンにおいて、微多孔質膜の細孔構造は非対称である。
【0075】
濾過材は、さらに、支持材の1つまたは複数の層を含むことができる。支持材は、濾過材中の保持層のうちの1つまたは複数の側に配置することができる。支持材には、様々な網材、不織多孔質材料、およびスパンボンド材料などが含まれるが、これらに限定されない。この支持材は液体に対して透過性があり、本発明のいくつかのバージョンにおいて、フィルター材のフロー時間が、微多孔質膜単独のフロー時間と本質的に同じか、またはそれ未満であるように選択される。支持材は、プリーツ/カートリッジ組立プロセスにおけるナノ繊維および/または膜の取扱いに強度を与えることができる。支持材は、深部メディアで有り得るので、フィルターメディアの機能も果たし得る。本発明のいくつかのバージョンにおいて、この支持材は不織材料である。支持材または不織支持材は、最終的な液体塗布に化学的に適合する。不織支持材の非限定的な例としては、ポリアミド(PA)から作られたものが挙げられ、限定されないが、ナイロン−6、ナイロン−6,6、およびアラミド、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ならびにPES(ポリエーテルスルホン)などの様々なナイロンを含むことができる。PA6は、ナイロン−6またはナイロン−6,6とも呼ばれるポリアミド6を指す。本発明のいくつかのバージョンにおいて、不織支持材は、他のプロセスによる他の望ましくない物質のウェブへの導入(混入)の可能性を減らすために熱結合されるナイロン−6樹脂を含む。本発明の1つのバージョンにおいて、支持材は、旭化成から入手できるナイロンNO5040であり、これは、フィルター材のフロー時間に影響しないか、または実質的に影響しない。不織支持材の基本重量は、その厚さに関係し、圧力損失を最小限にするように選択することができ、フィルターパックへのアセンブリに正しい数のプリーツを提供するように選択することもできる。不織支持材が厚くなるにつれて、フィルターカートリッジの固定直径の中心筒形状に適合することができるプリーツの数は減少する。本発明のいくつかのバージョンにおいて、不織支持材は、約40g/mから約30g/mの基本重量を有する。本発明の他のバージョンにおいて、不織支持材は、約(40±5)g/mの基本重量を有する。
【0076】
図1は、2つの微多孔質膜層またはナノ多孔質膜層とナノ繊維層の3つの異なる膜層を含む本発明の濾過材のいくつかの非限定的なバージョンを示す。例えば、構造1は、上流保持層として微多孔質ナイロン膜、中心保持層としてナイロンナノ繊維、および下流保持層として微多孔質UHMWPE膜を有する複合膜を示す。構造2は、下流保持層として微多孔質ナイロン膜、中心保持層としてナイロンナノ繊維、および上流保持層として微多孔質UHMWPE膜を有する複合膜を示す。構造3は、中心保持層として微多孔質ナイロン膜、上流保持層としてナイロンナノ繊維、および下流保持層として微多孔質UHMWPE膜を有する複合膜を示す。構造4は、下流保持層として微多孔質ナイロン膜、上流保持層としてナイロンナノ繊維層、および中心保持層として微多孔質UHMWPE膜を有する複合膜を示す。有利に、層の順序および材料の種類は、濾過用途および除去される対象欠陥(例えば、粒子、ゲル、これらの組み合わせ)に応じて変更することができる。
【0077】
ハウジングに用いられる材料(コア、ケージおよびエンドキャップ)、ならびにエンドキャップに膜を密封するために用いられるポッティング材/結合材は、ポッティング用のポリエチレンならびにシェル、コア、ケージ、および他の支持材用の高密度ポリエチレン材を含み得る。用いることができる他のポッティング材は、当業者に知られている。
【0078】
本発明の別の実施形態は、本発明のハウジングおよび濾過材を含むフィルターである。
【0079】
本発明の別の実施形態は、フォトレジストからゲルを除去するための本発明の濾過材または本発明の濾過材を含むフィルターの使用である。有利に、本発明の濾過材のナノ繊維層は、濾過材の厚さを増加させることによって、フォトレジストの滞留時間が改善され、ゲル保持力も改善される。ナノ繊維層にナイロンを用いることにより、濾過材の非ふるい保持力が改善され、リソグラフィープロセスにおける問題、特に、ゲルベースの問題が減少し、かつ濾過材を含むフィルターの寿命が増加する。予想外に、ナイロンナノ繊維層は、複数のフィルター層を用いることによって生じた圧力降下も減少させ、このナイロンナノ繊維層は、粒子およびゲルの保持力を改善し、フォトリソグラフィープロセスにおける問題を減少させ、収率損失を減少させ、スピンコーティングプロセスのための動作のより大きな窓を提供することができる。
【0080】
本発明の別の実施形態は、フォトレジストからゲルを除去する方法であって、フォトレジストの流れを、本発明の濾過材または本発明の濾過材を含むフィルターに通過させることによって、フォトレジストからゲルを除去する工程を含む方法である。いくつかの実施形態において、フォトレジストの流速は、約0.2cc/分〜約3cc/分である。いくつかの実施形態において、濾過材の圧力降下は、約1psi以下である。
【0081】
実施例
実施例1.リーク試験、バブルポイントおよび流速
本発明の例示的なフィルター材を、リーク試験、バブルポイントおよび流速によって特徴付けた。例示的なフィルター材には、Delnet III不織布層、基本重量約30g/m、平均IPAバブルポイント4.5(±10%)ポンド/平方インチ、厚さ約165(±2%)ミクロン、(例えば、SEM分析によって決定される)平均繊維径約750nmを有するナノ繊維層、Entegris社の0.05ミクロンと孔径評価された微多孔質UPE膜、Delnet III不織布層、Entegris社の0.01ミクロンと孔径評価された微多孔質ナイロン膜、およびDelnet不織布層が含まれる。フィルター材の重量を、スケールを用いて測定した。リーク試験を、水タンクにフィルター材を浸漬させ、フィルター材を60秒間、0.35MPaまで加圧し、リークについてフィルター材を検査することにより行った。フィルター材を約20秒間、水中60%IPAで予め湿らせ、次いで、圧力を増加させながら、フィルター材の下流端に見える泡を監視することによってバブルポイントを測定した。約20秒間、水中60%IPAにフィルター材を予め湿らせ、このフィルター材を0.6kg/cmまで加圧し、約1分後に液体流量を測定することによって流速を測定した。この濾過材のバブルポイントは、42ポンド/平方インチを超え、この濾過材は、0.6kg/cmの圧力で0.22L/分から0.46L/分の間の水流速を有していた(平均水流速は、0.6kg/cmの圧力で0.4L/分であった)。
【0082】
この濾過材(またはフィルター材)の流速は、(IPAまたはHFE−7200バブルポイントによって)10nmと孔径評価された非対称UPE微多孔質膜と同じであった。
【0083】
【表1】
【0084】
試料を洗浄し、70℃でオーブン乾燥させた。次いで、上記のフィルター材から脱落した粒子を、10mL/分の流速でRION KS−40粒子計数器を用いて評価した。データ収集を、5分間洗い流した後に開始した。
【0085】
表2は、上記のとおりに実施した粒子脱落試験(particle shed testing)の結果を示す。この実施例の複合フィルターは、10mL/分のDI水の流量で10分間洗い流した後に、0.3ミクロン以上に5個以下の粒子を有するように清浄することができ、洗い流すことができる。
【0086】
【表2】
【0087】
実施例2.蛍光PSLビーズの保持
この実験では、7つの47ミリメートル(mm)ディスク膜クーポンに、界面活性剤溶液(DI水中0.06%トリトンX−100)に懸濁した25nmの蛍光粒子(Duke Scientific G25)を添加した。保持試験を、約0.75L/分の一貫した流速で実施した。化学天秤を用いて、膜上に1%〜6%の単層被覆率から負荷値を測定した。
【0088】
蛍光分光法を、日立F−7000蛍光分光計にて行った。G25粒子の励起/発光波長を468/506nmとして選択し、cuton光学フィルターを、発光スペクトルに現れる励起光の干渉を最小限にするために設置した。濾液の蛍光スペクトルを、試験中に収集した。
【0089】
試料番号1は、Impact 2 Duo(5nmのUPEおよびナイロンナノ繊維、Entegris社から入手可能)であるフィルター材に相当する。試料番号2は、Impact 2 Duo(3nmのUPE、ナイロンナノ繊維およびカルレッツOリング(Kalrez o−ring)、Entegris社から入手可能)であるフィルター材に相当する。試料番号3は、Impact 2 Duo(V2 OM、5nmのUPEおよびナイロンナノ繊維、Entegris社から入手可能)であるフィルター材に相当する。試料番号4は、1250cmの表面積を有する3nmの非対称UHMWPE膜(Entegris社から入手可能)を含むフィルター材に相当する。試料番号5は、ナイロンナノ繊維膜、50nmのUHMWPE膜および600cmの表面積を有する10nmのナイロン膜を含むフィルター材に相当する。試料番号6は、ナイロンナノ繊維膜、50nmのUHMWPE膜および600cmの表面積を有する10nmのナイロン膜を含むフィルター材に相当する。試料番号5および試料番号6は、本発明の例示的なフィルター材である。
【0090】
図2は、試料番号5および試料番号6が、2層のフィルター材(試料番号1〜3)と比べて、それらに匹敵する蛍光PSLビーズのふるい保持を有することを示す。図2は、試料番号5および試料番号6が、単層の3nmUHMWPE膜(試料番号4)と比べて、蛍光PSLビーズのふるい保持が改善されたことも示す。
【0091】
実施例3.金ナノ粒子の吸収
この実験では、5つのフィルター材に、15mL/分の流速でDI水中5nmの金ナノ粒子の200ppb溶液を添加した。これらの金ナノ粒子をクエン酸で安定化させ、ゲルの代表として用いた。金粒子の吸収率(%)を、液体の体積(mL)の関数として測定した。結果を図3に示す。
【0092】
図3は、ナイロン−6ナノ繊維層またはディスク(1層は47mm径の試料の1ディスクである)が、脱イオン水中200重量ppbの濃度で5nmの金ナノ粒子を吸収するのに、ナイロン−6,6ナノ繊維層よりも優れていることを示す。ナイロン−6,6ナノ繊維層と比較して、ナイロン−6ナノ繊維層の吸収の増加は、おそらくナイロン−6ナノ繊維層における非ふるい保持の増加に起因する。図3は、ナイロン−6ナノ繊維の3つの層を含むフィルター材が、基本重量30g/mで、ナイロン−6ナノ繊維の単一層よりも約4倍高い吸収を有することも示す。さらに、20nmと孔径評価されたナイロン−6の微多孔質膜が、20nmと孔径評価されたナイロン−6,6の微多孔質膜よりもはるかに優れた金粒子の吸収を有する。図3に基づき、ナイロン−6ナノ繊維の3つのディスクおよび20nmナイロン−6膜の層は、5nmの金粒子の非常に高い吸収を有すると思われる。
【0093】
実施例4.フタル酸の吸収
脱イオン水中のppmレベルのフタル酸に対するナイロン−6、ナイロン−6,6およびUPE材の吸収特性も試験した。水中ppmレベルのフタル酸を、フィルター材に通過させ、試料の下流のフタル酸量を検出し、測定した(y軸)。y軸の値が高くなると、試料を通過するフタル酸も多くなり、試料に吸収されるフタル酸が少なくなることを意味する。グラフは、ナイロン−6微多孔質膜が、ナイロン−6,6微多孔質膜よりも多くのフタル酸を吸収し(両方の膜は、20nmサイズと評価された材料である)、両方のナイロン微多孔質膜が、ナイロンナノ繊維フィルター材よりも多くのフタル酸を吸収したことを示す。結果は、ナイロン−6ナノ繊維層の数が増加するにつれて、試料を通過したフタル酸の量が減少することも示した。これらの結果は、平均して、ナイロン膜の全てが、UPE微多孔質膜よりも多くのフタル酸を吸収したことも示した。
【0094】
本発明を、その特定の実施形態を参照してかなり詳細に説明してきたが、他のバージョンも可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲は、説明に限定されるべきではなく、これらのバージョンは本明細書内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4