特許第6030644号(P6030644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030644
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】置換されたフェニル化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/46 20060101AFI20161114BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   C07D211/46CSP
   C07D401/12
【請求項の数】17
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-517625(P2014-517625)
(86)(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公表番号】特表2014-518230(P2014-518230A)
(43)【公表日】2014年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2012062202
(87)【国際公開番号】WO2013007502
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年6月15日
(31)【優先権主張番号】11305892.9
(32)【優先日】2011年7月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ドクトーア・ジーモン・ゲスラー
(72)【発明者】
【氏名】ドクトーア・テオ・ヴォールマン
【審査官】 伊藤 佑一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−507921(JP,A)
【文献】 特表2009−530336(JP,A)
【文献】 特表2011−510990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】
(式中、
nは1、2、3または4であり、そして
R1はHまたはカルバメート、アミド、N−アルキレンアリール、N−スルホニル保護基またはジアルキルホスホロアミデートから選択される保護基である)
の化合物を製造する方法であって、
(B)式(IV)
【化2】
(式中、R1はカルバメート、アミド、N−アルキレンアリール、N−スルホニル保護基またはジアルキルホスホロアミデートから選択される保護基である)
の化合物を、式(R2O)2HC−N(CH32(V)(式中、R2は(C1−C6)アルキ
ルである)の試薬、およびピロリジンの混合物と反応させるステップであって、
ここで、式(IV)の化合物よりも、試薬(V)を1.5当量またはそれ以上のモル過剰で用い、そしてピロリジンを4.0当量またはそれ以上のモル過剰で用いるステップと
、そして
式(VI)の化合物中の保護基を場合により除去して式(VI)(式中、R1はHである)の化合物を得るステップと、
を含む方法。
【請求項2】
式(IV)の化合物に対して試薬(V)2.0〜7.0当量を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試薬(V)が、N,Nジメチルホルムアミド−ジメチルアセタールである、請求項1ま
たは2に記載の方法。
【請求項4】
式(IV)の化合物に対してピロリジン4.0〜9.0当量を用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
DMFを加える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
式(I)
【化3】
(式中、
nは1、2、3または4であり、そして
R1はHまたはカルバメート、アミド、N−アルキレンアリール、N−スルホニル保護基またはジアルキルホスホロアミデートから選択される保護基である)
の化合物またはその塩を製造する方法であって、
(B)請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(VI)
【化4】
(式中、R1はカルバメート、アミド、N−アルキレンアリール、N−スルホニル保護基またはジアルキルホスホロアミデートから選択される保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)
の化合物を製造するステップと、
(C)適した溶媒中、ハロゲン化水素酸の存在下で式(VI)の化合物を環化し、それによって保護基を場合により除去して式(I)(式中、R1はHまたはカルバメート、アミド、N−アルキレンアリール、N−スルホニル保護基またはジアルキルホスホロアミデートから選択される保護基である)の化合物を得るステップと、
(D)R1が保護基である場合、場合により式(I)の化合物から保護基を除去して式(I)(式中、R1はHである)の化合物を得るステップと、
(E)場合により式(I)の化合物をその塩に変換するステップと、
を含む方法。
【請求項7】
環化ステップに用いるハロゲン化水素酸がHClである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
nが2または3である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
保護基が酸に不安定である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
R1中の保護基がtert−ブトキシカルボニルである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
式(II)
【化5】
(式中、Xはハロゲンである)
の化合物を適した溶媒中、かつアルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水素化物またはアルカリ金属から選択される塩基の存在下で式(III)
【化6】
(式中、
R1はHまたはカルバメート、アミド、N−アルキレンアリール、N−スルホニル保護基またはジアルキルホスホロアミデートから選択される保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)
の化合物と反応させ、そして
R1がHである場合、式(IV)の化合物中のアミノ基を保護して式(IV)(式中、R1はカルバメート、アミド、N−アルキレンアリール、N−スルホニル保護基またはジアルキルホスホロアミデートから選択される保護基である)の化合物を得ることによって
式(IV)の化合物を製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
式(VI)
【化7】
(式中、R1はHまたはtert−ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル
、p−メトキシベンジルカルボニル、ホルミル、アセチル、ベンジル、(ジフェニル)メチレン、トリチル、(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチレン、ジアルキルホスホロアミデートまたはp−トルエンスルホニルから選択される保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)
の化合物。
【請求項13】
保護基が酸に不安定な保護基である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
酸に不安定な保護基がtert−ブチルオキシカルボニルである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
nが2または3である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
4−[4−シアノ−3−((E)−2−ピロリジン−1−イル−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルである、請求項12に記載の化合物。
【請求項17】
式(I)
【化8】
(式中、
nは1、2、3または4であり、そして
R1はHまたはtert−ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルカルボニル、ホルミル、アセチル、ベンジル、(ジフェニル)メチレン、トリチル、(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチレン、ジアルキルホスホロアミデートまたはp−トルエンスルホニルから選択される保護基である)
の化合物またはその塩の製造における請求項12〜16のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(VI)
【化1】
(式中、nは、1、2、3または4であり、そしてR1はHまたは保護基である)の化合物に関する。さらに、本発明は、このような化合物を製造する新たな方法に関する。また、本発明は、式(I)
【化2】
の6−置換−1−(2H)−イソキノリノン誘導体の製造における中間体としてのこのような化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)の化合物は、酵素Rhoキナーゼの阻害剤であるか、またはRhoキナーゼ酵素のさらなる阻害剤の製造における中間体として用いることができ、これは、とりわけ、高血圧の治療に有益である。このような誘導体は、たとえば特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載されている。
【0003】
式(I)の化合物を製造するためのさらなる合成経路は、特許文献4に記載されている。この記載された経路は、特にtert−ブチルオキシ−ビス−(ジメチルアミノ)メタンを用いることによって、異なる中間体の製造における試薬としてアルコキシ−ビス(ジアルキルアミノ)メタン誘導体を使用している。しかし、この試薬は、特にラージスケールで使用する際、高価であり、そしてtert−ブチルオキシ−ビス−(ジメチルアミノ)メタンの場合、この試薬はあまり特徴的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2007/012421
【特許文献2】WO2007/065916
【特許文献3】WO2008/077550
【特許文献4】WO2009/080335
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、特にラージスケールで実施するのがより容易かつ安価であり、かつ好ましくはより高い収率で生成物が得られる、化合物(I)を製造するための代替経路を提供することである。この問題は、本発明によって解決されており、容易に入手可能な出発材料および試薬を用いて、記載された反応条件下、少しの化学反応ステップで、高い収率で式(I)の化合物を製造することができる新たな合成経路が提供される。この誘導体は、それ自体でRhoキナーゼ阻害剤として使用してもよいし、またはN原子にさらなる置換基を加えてこの化合物中のアミノ基を修飾することによって、もしくはイソキノリノン系中の任意の他の位置を修飾することによってさらなる阻害剤の合成における中間体として使用してもよい。
【0006】
定義
アルキルという用語および使用する対応するアルキレン置換基は、たとえば(C1−C6)アルキルまたは(C1−C4)アルキルまたは(C1−C2)アルキル中に示すように、線状、すなわち直鎖、または分枝状であることができ、かつそれぞれ1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する炭化水素残基として理解される。また、これは、アルキル基が、別の基において、たとえばアルコキシ基(O−アルキル)またはアルコキシカルボニル基またはアリールアルキル基中に置換基として存在する場合にも適用される。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル(アミル)またはヘキシル、これらのすべての基のn異性体、または分枝状異性体イソプロピル、イソブチル、1−メチルブチル、イソペンチル、ネオペンチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、イソヘキシル、sec−ブチル、tert−ブチル(1,1−ジメチルエチル)もしくはtert−ペンチル(1,1−ジメチルプロピル,tert−アミル)である。対応するアルキレン基は、メチレン、エチレン、プロピレンなどである。
【0007】
ハロゲンは、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)またはヨード(I)を意味する。
【0008】
アリールは、非置換または(C1−C4)アルキル、O(C1−C4)アルキルもしくはハロゲンから独立して選択される1、2もしくは3個、好ましくは1個の置換基で置換された、フェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルを意味する。−(C1−C4)アルキレンアリールまたはメチレンアリールのようなアルキレンアリール基中、アルキレンは、同じかまたは異なる炭素原子上でアリールによって1、2または3回置換されてもよい。アルキレンアリールとしては、たとえばフェニルメチレン(ベンジルとも称する)、(トリフェニル)メチレン(トリチルとも称する)、(ジフェニル)メチレン(ベンズヒドリルとも称する)または(4−メトキシフェニル)−ジフェニルメチレンが挙げられる。
【0009】
詳細な説明
新たな化合物を製造するための、および式(I)の化合物の製造において中間体としてこの新たな化合物を使用するための全体的な方法のステップを、スキーム1に示す。これに関して、以下のスキーム中の化合物(VI)ならびに反応ステップ(B)および、またステップ(C)は、本発明の実施態様である。
【0010】
【化3】
【0011】
方法のステップを、以下により詳細に記述する。
【0012】
化合物(VI)の製造
一実施態様において、本発明は、式(VI)
【化4】
(式中、
nは1、2、3または4であり、そして
R1はHまたは保護基である)
の化合物を製造する方法であって、
【0013】
(B)式(IV)
【化5】
(式中、
R1は保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)
の化合物を、式(R2O)2HC−N(CH32(V)(式中、R2は、(C1−C6)アルキルおよびピロリジンである)の試薬と反応させることを含み、
試薬(V)を1.5またはそれ以上の当量のモル過剰で用い、かつピロリジンを式(IV)の化合物よりも4.0またはそれ以上の当量のモル過剰で用い、そして式(VI)の化合物中の保護基を場合により除去して式(VI)(式中、R1はHである)の化合物を得る方法に関する。
【0014】
本方法の一実施態様において、R1はHである。別の実施態様において、R1は保護基である。
【0015】
ジメチルホルムアミドアセタールを用いた2−メチル−ニトロベンゼンおよびその誘導体のホルミル化は、いわゆるレイングルーバー・バッチョ(Leimgruber-Batcho)インドール合成(Leimgruber, W.; Batcho, A. D.米国特許第3732245号)の知られた出発点であり、ここでは、強力な電子吸引性ニトロ基が、オルト位のメチル基を酸性化するのに役立つ。N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(DMFDMA、(CH3O)2CH−N(CH32)を用いた温和なホルミル化により、メチル基をベータ−ジメチルアミノスチレンに変換し、これから、ニトロ基をアミンへ還元してインドールに閉環した(collapse)(スキーム2)。
【0016】
【化6】
【0017】
WO2009/080335(スキーム2)では、ニトロ基の代わりにCN基を有するフェニル化合物を反応させることを試みている。米国特許第3732245号によるジメチルホルムアミドジアルコキシアセタールの使用が失敗したことは、13頁に記載されている。スキーム3による式(IVa)(式中、R1はtert−ブチルオキシカルボニルであり、そしてnは3である)の化合物を異なるDMF−ジアルコキシアセタールと反応させることによって得られた対応する否定的な結果を、下の表1に示す。
【0018】
【化7】
【0019】
【表1】
【0020】
この反応は、ピロリジンまたはピペリジンを反応混合物に加えた場合に起こることが別の研究者によっても報告されている。しかし、メチル基に対してオルトのニトロ基とは別の置換基が、この反応において有用であり、かつ可能であることはまだ報告されていない。ニトロ基はメチル基を非常に活性化することが知られているため、ニトロ基が常に用いられる。この反応では、通常、およそ化学量論量(1〜1.5当量)のDMFDMAおよびピロリジンを用いることが文献に記述されており、たとえば、
a)J. Heterocyclc Chem. (1992, 19, 845-848)中にRepkeによって記載されており、ここでは、ニトロ化合物(40)/DMFDMA/ピロリジンの比率が20.6/22.7/24.0mmolであり、
b)Organic Process Research & Development (2006, 10, 1205-1211)中にBoiniによって記載されており、ここでは、2−ニトロトルエン/DMFDMA/ピロリジンの比率が2.19/2.63/2.63molであり、
c)Eur. J. Med. Chem. (1994, 29, 551-559)中にLeonardiによって記載されており、ここでは、ニトロ化合物17/DMFDMA/ピロリジンの比率が0.077/0.115/0.115mmolであり、
たとえばTetrahedron (1996, 52, 24, 8099-8112)中にOhkuboによって使用されているように最大3当量であり、ここでは、ニトロ化合物12a/DMFDMA/ピロリジンの比率が3.09/9.27/9.27mol(773ml)である。
【0021】
さらに、上記のように、反応性がかなり低いCN置換フェニル基質の変換を達成するために、アセタール試薬(V)の量を高めることおよび/または一定量のピロリジンを使用することを当業者に導く先行技術はない。
【0022】
実際に、ピロリジンを、通常、文献中に記載された量、たとえば化合物(IVa)に対して0.1〜3.0mol当量で加えた場合、化合物(VIb)を得る反応は、起こらないか、または低い収率しか得られなかった(VIb)(スキーム4;表2−項目a)、b)およびc))。
【0023】
【化8】
【0024】
【表2】
【0025】
したがって、このような基質において試薬(V)を用いる反応は起こらないことが予想される。しかし、この予想と対照的に、この反応は、実際のところ、本明細書に明記した条件下で行うことができ、そして高収率かつ高純度で生成物を得ることができる(スキーム4;表3−項目d)、e)およびf)参照)。
【0026】
【表3】
【0027】
このステップの全体的な反応をスキーム5に示し、その中に、nが3である式(IV)の化合物を例として示す。
【0028】
【化9】
【0029】
一実施態様において、R2は、(C1−C4)アルキルである。別の実施態様において、R2はメチルであり、そして試薬(R2O)2CH−N(CH32はN,Nジメチルホルムアミド−ジメチルアセタール(DMFDMA)である。試薬(V)のさらなる実施態様において、R2はn−ブチルであり、そしてこの試薬はN,Nジメチルホルムアミド−ジブチルアセタールである。他の適したホルムアミドアセタールは、N,Nジメチルホルムアミド−ジエチルアセタール、N,Nジメチルホルムアミド−ジプロピルアセタールまたはN,Nジメチルホルムアミド−ジイソプロピルアセタールである。
【0030】
化合物(IV)に対して用いる試薬(V)およびピロリジンの相対的な量は、本発明の一部である。試薬には最少量があるが、原則として、反応を実施するために試薬(V)またはピロリジンの過剰が最大になることはない。しかし、実際的な理由で、使用した試薬(V)およびピロリジンの量は、反応を実施するために必要となるよりも多くなることはない。
【0031】
したがって、本発明の一実施態様において、化合物(IV)に対する試薬(V)、たとえばDMFDMAの量は、2.0〜7.0モル当量の範囲である。別の実施態様において、この範囲は、2.0〜4.0モル当量である。さらなる実施態様において、この範囲は、2.0〜3.0モル当量である。さらに別の実施態様において、DMFDMAの量は、2.2モル当量である。一実施態様において、ピロリジンの比率は、化合物(IV)に対して4.0〜9.0モル当量の範囲である。別の実施態様において、ピロリジンを、4.0〜7.0モル当量の範囲で用いる。さらに別の実施態様において、ピロリジンを、化合物(IV)に対して5.0〜7.0モル当量の範囲で用いる。さらなる実施態様において、ピロリジンを、約6.6モル当量で用いる。この試薬混合物を用いると、式(IV)の化合物から式(VI)の化合物に実質的に完全に変換される。
【0032】
ピロリジンと異なる化合物が、この反応で有用であることは示されていない。この目的のため当分野において記載されたピペリジン、モルホリン、ジメチルアミンまたは第三級アミン、たとえばトリメチルアミンのような類似化合物(総説Heterocycles, 22, 1, (1984), p 195-221、特に198-200頁、およびその中の引用文献を参照のこと)は、効果がなかった。
【0033】
本発明によるステップB)のさらなる実施態様では、反応混合物にDMF(ジメチルホルムアミド)を場合により加えてもよい。一定量のDMFを反応混合物に加えることによりこの反応をさらに触媒し、そして化合物(VI)の収率をさらに改善することがわかっている。添加するDMFの量には制限がない。しかし、実際上、DMFを添加してもよい量は制限されており、必要な量を超えることはない。一実施態様において、この量は、化合物(IV)に対して約0.1〜4.0モル当量、好ましくは約2.0〜3.0モル当量で変更することができる。DMFのさらに増やしても全収率が高まることはない。DMFを用いるさらなる利点は、ピロリジンの量を減らして4.0〜6.0モル当量の範囲にすることができることである。DMFを用いると、反応時間および/または反応温度が低減され、それによって、より高い収率でありかつより純粋な生成物が得られる。DMFなしでは、式(VI)の化合物の収率は、約70〜85%(実施例2a)であるのに対して、DMFを用いると、収率は処理後に90%を超える(実施例2b、2c)。
【0034】
本発明では、当分野において記載されたこの反応で得られた中間体の全収率と比較して、中間の(VI)の収率における有意な改善が得られた。また、本発明は、容易に入手可能な試薬を使用することによって新たな中間体(VI)のより経済的な合成を提供する。
【0035】
式(IV)の化合物は、溶媒中に予め希釈することなく、試薬(V)およびピロリジンおよび場合によりDMFの混合物に直接加えてもよい。別法として、式(IV)の化合物を上に明記した適当な量でDMFのような適した溶媒中に溶解し、その後に試薬(V)およびピロリジンを加えてもよい。他の別法では、MTBE(メチル−tert−ブチルエーテル)のようなより低沸点のエーテルを溶媒として用いることができる。都合の良いことに、この溶媒は、試薬(V)およびピロリジンおよび場合によりDMFを加える前に、かなりの程度まで蒸留によって連続的に除去される。混合物を加熱し、それによって、残っているエーテルだけでなく、化合物(V)の反応から生じる生成物、たとえばメタノールまたはブタノールおよびジメチルアミンも除去される。
【0036】
反応を実施するために用いる温度は、80°〜200℃、好ましくは90°〜180°、より好ましくは120°〜170℃の範囲である。DMFを添加すると温度を下げることができ、適した温度範囲は約100℃〜120℃となる。反応に用いる時間は、化合物(IV)から化合物(VI)へ変換するのに十分な時間であり、たとえば、2時間から27時間までである。DMFを添加すると、反応時間をより短くすることができ、適した範囲は2時間から10時間となる。
【0037】
得られた生成物を、標準合成技術によって単離し、さらに精製することができる。たとえば、単離は、反応混合物の蒸発、続いて定型的な水性処理、およびその後の生成物の結晶化によって行ってもよい。別法として、水および/またはアルコールなどの適した抗溶媒を加えることによって反応混合物中に含まれる生成物を反応混合物から直接沈澱させてもよい。
【0038】
DMFDMAを含む、一般式(R2O)2CH−N(CH32(V)のDMFのアセタールは、Chemische Berichte 1968, 101, 41-50中にBrederckによって記載されたとおり製造してもよいし、またはさまざまな供給元から商業的に入手することができる。
【0039】
(VI)中のエナミンの立体化学はE異性体として描かれているが、そのエナミンはEおよびZ異性体の両方として存在してもよく、それらは合成的に同等である。
【0040】
保護基R1は、下の「保護基」に概説した基から選択することができる。
【0041】
化合物(I)の製造
さらなる実施態様において、本発明は、式(I)
【化10】
(式中、
nは1、2、3または4であり、そして
R1はHまたは保護基である)
の化合物またはその塩を製造する方法であって、
【0042】
(B)上記の方法にしたがってスキーム1に示す式(VI)
【化11】
(式中、
nは1、2、3または4であり、そして
R1は保護基である)
の化合物を製造するステップと、
【0043】
(C)適した溶媒中、かつハロゲン化水素酸の存在下で式(VI)の化合物を環化し、それによって保護基を場合により除去して式(I)
【化12】
(式中、R1はHまたは保護基である)
の化合物を得るステップと、
【0044】
(D)場合により、ステップ(C)で得た式(I)(式中、R1は保護基である)の化合物から保護基除去して化合物に式(I)(式中、R1はHである)を得るステップと、
(E)場合により、式(I)の化合物をその塩に変換するステップと
を含む方法に関する。
【0045】
式(VI)の4−ヘテロシクロアルコキシ2−(2'−ピロリジニルビニル)ベンゾニトリルから式(I)の6−ヘテロシクロアルコキシ−1−(2H)−イソキノリノンへの変換は、文献に記載されていない。WO2009/080335に記載されたものは、ジメチルアミノ誘導体の環化である。所望の6−ヘテロシクロアルコキシ−1−(2H)−イソキノリノン(I)を提供する条件および環化試薬が見出された。本明細書に用いるこれらの環化条件および試薬は、本発明の一部である。一実施態様において、式(VI)の4−ヘテロシクロアルコキシ−2−(2'−ピロリジニルビニル)ベンゾニトリルから式(I)の化合物への環化反応は、環化試薬として強酸の存在下で式(VI)の化合物を反応させることによって実施することができ、すなわち酸性反応条件下で反応を実施することができる。酸性条件下、適した溶媒、たとえばアルコール中、特に溶媒として(C1−C6)−アルカノール、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはペンタノールを用いて、ハロゲン化水素酸、たとえばHCl、HBrまたはHI、好ましくはHClの存在下で、環化反応を実施することが理解される。n−アルコールおよびこの異性体の両方を用いることができる。好ましくは、この反応は、メタノール、エタノール、n−プロパノールまたはn−ブタノール中で実施し、n−ブタノールが最も好ましい。
【0046】
ハロゲン化水素酸の供給源としてガス状HClまたはHBrまたはHIを用いて、アルコールに加えてもよい。ガス状HClの使用に対する別法として、アルコールと反応して無水アルコール性HCl溶液を形成する、TMSClまたはAcCl(アセチルクロリド)のような他の試薬を用いることもできる。環化の反応条件の好ましい設定としては、溶媒としてn−ブタノールのような(C1−C6)−アルカノール中のガス状HClの使用が含まれる。
【0047】
この反応は40℃〜140℃の温度範囲で実施し、より好ましくは、温度範囲は、使用するアルコールの沸点に応じて60℃〜120℃である。
【0048】
この反応は、ガス状HClのようなハロゲン化水素酸2〜30モル当量、より好ましくは3〜15モル当量を用いて実施する。技術スケールでは、過剰のハロゲン化水素酸、たとえばHClは、塩基性スクラバー中で容易に中和することができる。この環化反応では、保護基を場合により同時に除去して式(I)(式中、R1がHである)の化合物を得てもよい。式(I)(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物を得るためのR1中の保護基の選択においては、「保護基」の節を参照のこと。
【0049】
化合物(IV)の製造
本発明の方法に関して式(VI)の化合物を製造するために用いる式(IV)の化合物は、芳香族求核置換によって製造することができる。式(IV)の化合物を製造する反応は、WO2009/080335に記載されている。
【0050】
式(IV)の化合物は、
(A)式(II)
【化13】
(式中、Xはハロゲンである)
の化合物を、適した溶媒中かつアルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水素化物またはアルカリ金属から選択される塩基の存在下で式(III)
【化14】
(式中、
R1はHまたは保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)
の化合物と反応させて式(IV)
【化15】
の化合物を得、そしてR1がHである場合、式(IV)の化合物中のアミノ基を保護して式(IV)(式中、R1は保護基である)の化合物を得ることによって製造する。
【0051】
一実施態様において、化合物(III)を保護した後、これを化合物(II)と反応させる。式(III)の適した保護されたアルコールは、1−ベンジル−3−ピロリジノール、3−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル、1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−オールまたは4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルである。
【0052】
化合物(IV)を製造することができる条件は、以下のとおりである。
【0053】
【化16】
【0054】
一実施態様において、塩基は、ナトリウムまたはカリウムtert−ブトキシド(KOtBu)、ナトリウムまたはカリウムtert−アミラートから選択する。別の実施態様において、塩基はNaHである。より好ましい実施態様では、カリウムtert−ブトキシドまたはカリウム−tert−アミラートを塩基として用い、最も好ましくは、カリウムtert−ブトキシドを用いる。
【0055】
上のスキーム6に記述した変法a)およびb)を含むこの反応ステップに用いることができる溶媒は、エーテル、たとえばテトラヒドロフラン(THF)、2−メチル−THF、メチル−tertブチルエーテル(MTBE)、ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)またはジメトキシメタンおよび双極性非プロトン溶媒、たとえばジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミドである。一実施態様において、塩基/溶媒混合物は、MTBE入りのカリウムtert−ブトキシドである。使用する温度は、通常、4℃〜220℃の範囲、好ましくは80℃〜200℃の範囲、そしてより好ましくは40℃〜140℃の範囲である。より低沸点の溶媒を用いる場合、オートクレーブ中、圧力下で反応を実施することができる。反応時間は重要ではなく、使用する溶媒および温度に応じて変動してもよい。この反応は、前駆体(II)および(III)のほとんどまたはすべてが反応するまで実施し、これは、通常、数時間以内に起こり、そして通常、12時間以内に終了する。また、その後、本発明の方法に従って化合物(IV)を化合物(VI)に変換する場合、式(IV)の化合物の製造は、本発明の目的である。
【0056】
保護基
上記の反応ステップA)、B)およびC)の1つならびに対応する中間体において有用な保護基は、たとえば、T.W. Greene and P.G.M. Wuts: Protective Groups in Organic Synthesis, Third Edition, John Wiley and Sons, New York, 1999 Chapter 7, page 494中に列記されたさまざまな基から選択することができるが、そこに記載されたものに限定されるわけではない。さらに、WO2009/080335を参照すると、ここでは、式(IV)および(VI)および(I)の化合物の合成に関連する適した基が記載されている。
【0057】
R1中の保護基は、好ましくはステップA)およびB)に用いる塩基性反応条件下で安定であるものである。ステップA)およびまたステップB)およびC)においてならびに中間体(III)、(IV)および(VI)において有用な適した安定な保護基R1は、カルバメート、たとえばtert−ブチルオキシカルボニルおよびベンジルオキシカルボニルもしくはp−メトキシベンジルカルボニル、アミド、たとえばホルミルもしくはアセチル、N−アルキレンアリール、たとえばベンジル、(ジフェニル)メチレン、トリチルもしくは(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチレンまたはN−PおよびN−スルホニル保護基、たとえばジアルキルホスホロアミデートおよびp−トルエンスルホニルから選択することができる。
【0058】
保護基は当分野で知られている方法によって導入することができ、それによって式(III)(式中、R1はHである)のN−ヘテロシクロアルキルアルコールを対応する保護基供給試薬と反応させて保護されたアミンが得られる。別の実施態様において、R1がHである場合、上に概説した反応で得られた式(IV)の化合物中に保護基を導入してもよい。保護基を導入するために用いる適した試薬は、当分野で知られており、商業的に入手可能である。たとえば、tert−ブチルオキシカルボニル基を導入するために二炭酸ジ−tert−ブチルを用いてもよい。
【0059】
本合成を通して同じ保護基を用いることが好ましい。したがって、塩基性反応条件下で安定な保護基をステップA)およびB)およびC)中に用いることが好ましい。最も適しているのは、塩基に安定であるが、酸に不安定な保護基であり、これは環化反応が起こる同じ反応ステップにおいて同時に切断することができ、そしてステップC)で式(I)(式中、R1はHである)の化合物が得られる。
【0060】
本発明の実施態様において、式(III)、(IV)および(VI)の化合物では、R1の保護基として酸に不安定な保護基を用いる。このような酸に不安定な基の一実施態様において、R1についてはtert−ブチルオキシカルボニルを用い、これは化合物(IV)を製造するための塩基性反応下でも安定である。酸に不安定な基を用いて、ハロゲン化水素酸による式(VI)の化合物の環化反応により式(I)(式中、R1はHである)の化合物が直接得られる。酸に不安定な基を用いると、別個の脱保護ステップ(D)を省くことができる。
【0061】
反応ステップ(C)の後、保護基を除去することが望ましい場合、保護基を含む中間体を予め単離して別個のステップ(D)において保護基の除去を行ってもよいし、または環化反応後に得られた反応混合物を脱保護ステップに直接用いてもよい。
【0062】
一実施態様では、本発明の方法によって式(I)(式中、R1はHである)の化合物を製造する。別の実施態様では、ステップ(C)において、保護基を除去することによって式(I)(式中、R1はHである)の化合物を直接製造する。
【0063】
式(I)(式中、R1はHまたは保護基、好ましくはHである)の化合物を、場合によりその塩に変換する。遊離塩基を得るために環化ステップから酸を除去しない場合、化合物(I)を塩として直接得ることができる。環化ステップに用いる酸を、知られている方法によって除去し、別の酸と交換して式(I)の化合物の対応する塩を製造してもよい。
【0064】
薬学的に許容しうる塩を含む式(I)の化合物の塩は、たとえば塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸のような無機酸、ならびに、たとえば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、コハク酸、p−トルエンスルホン酸および酒石酸のような有機酸から当分野で知られている方法によって製造してもよい。
【0065】
本発明の別の実施態様において、Rhoキナーゼ阻害剤を作るため、本発明の方法によって製造した式(I)(式中、R1はHである)の化合物を、Hとは異なるR1置換基を有するそのさらなる誘導体の合成における中間体として用いてもよい。本発明は、式(I)(式中、R1はHである)の化合物を製造する方法に関し、そして第2のステップにおいて、R7基の適した化学当量を式(I)の化合物と反応させることによって、式(I')(式中、R1がR7になる)の化合物を製造する。たとえば、適したアルデヒドR7−C(O)H(式中、R7は、たとえば(C1−C6)アルキルまたはさらに置換された(C1−C6)アルキル基である)を、WO2007/012421中に記載された還元的アミノ化法により、式(I)(式中、R1はHである)の化合物と反応させて(C1−C6)アルキル置換された6−ヘテロシクロアルコキシ−1−(2H)−イソキノリノン(I')を得てもよい。
【0066】
別の実施態様において、本発明は、式(I)
【化17】
(式中、
nは1、2、3または4であり、そして
R1はHまたは保護基である)
の化合物またはその塩を製造する方法であって、
【0067】
(C)式(VI)
【化18】
(式中、
R1は保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)
の化合物を、適した溶媒中であり、かつハロゲン化水素酸の存在下で環化し、それによって場合により保護基を除去して式(I)
【化19】
(式中、R1はHまたは保護基である)の化合物を得るステップと、
【0068】
(D)R1が保護基である場合、場合により式(I)の化合物から保護基を除去して化合物式(I)(式中、R1はHである)を得るステップと、
(E)場合により式(I)の化合物をその塩に変換するステップと
を含む方法に関する。
【0069】
この方法は、式(I)の化合物の上述した合成における環化ステップ(C)に相当する。したがって、ステップ(C)、(D)および(E)に関連して上に記載した説明および実施態様は、ここでのこの方法の実施態様にも適用される。
【0070】
別の実施態様において、本発明は、式(VI)
【化20】
(式中、R1はHまたは保護基であり、そしてnは1、2、3または4である)
の化合物に関する。一実施態様において、R1は保護基である。別の実施態様において、R1はHである。
【0071】
式(VI)の化合物の一実施態様において、R1は、保護基について上に記載した特徴を有する保護基であり、好ましくは、カルバメート、たとえばtert−ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基またはp−メトキシベンジルカルボニルから選択される、酸に不安定な保護基であることを包含する。
【0072】
一実施態様において、この保護基はtert−ブチルオキシカルボニルであり、したがって、さらなる実施態様において、式(VI)の化合物は、式(VIb)
【化21】
を有する4−[4−シアノ−3−((E)−2−ピロリジン−1−イル−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(VIb)である。本発明のさらなる実施態様では、式(I)、(III)、(IV)または(VI)の任意の化合物中、nは2である。これらの化合物の別の実施態様において、nは3である。
【0073】
酸素(O)は、環炭素原子を介して任意の位置で式(I)、(III)、(IV)または(VI)の任意の化合物中のN含有環に結合してもよい。
【0074】
一実施態様において、nは3であり、そして得られたピペリジン環の4位にOを結合して式(Ic)
【化22】
の化合物を得るか、または、別の実施態様において、ピペリジン環の3位にOを結合してすべての立体異性形態における式(Id)
【化23】
の化合物を得る。
【0075】
別の実施態様において、ピロリジン環の3位にOを結合してすべての立体異性形態における式(Ie)
【化24】
の化合物を得る。
【0076】
さらに、スキーム中に示す式(I)の2H−イソキノリン−1−オンが、その互変異性形態において1−ヒドロキシ−イソキノリンとしても存在できることは当分野で知られており、そしてこれらの互変異性体は、本発明の範囲に包含される。さらに、式(I)、(IV)または(VI)の化合物は、キラル炭素原子を含んでもよい。したがって、これらの化合物は、エナンチオマーまたはジアステレオマーを含む立体異性形態で存在する。これらの立体異性形態およびすべての比率における立体異性形態の混合物は、本発明の範囲に包含される。
【0077】
本発明の方法の一実施態様では、6−(ピペリジン−4−イルオキシ)−2H−イソキノリン−1−オンまたはその塩を製造する。別の実施態様では、6−(ピペリジン−3−イルオキシ)−2H−イソキノリン−1−オンまたはその塩を製造する。さらなる実施態様では、6−(ピロリジン−3−イルオキシ)−2H−イソキノリン−1−オンまたはその塩を製造する。一実施態様において、これらの化合物の任意の塩は塩酸塩である。
【0078】
式(VI)の化合物は、Rhoキナーゼ阻害剤の製造における中間体として用いてもよい。したがって、また、本発明は、式(I)
【化25】
(式中、
nは1、2、3または4であり、そして
R1はHまたは保護基であり、好ましくはR1はHである)
の化合物の製造における式(VI)
【化26】
(式中、
R1はHまたは保護基であり、好ましくはR1は保護基であり、そして
nは1、2、3または4である)の化合物の使用に関する。
【実施例】
【0079】
以下の実施例では、本発明の方法および中間体をより詳細に概説する。したがって、以下の実施例は、本発明の一部および実施態様である。また、これらの実施例は例示することを意図しており、本発明を限定するものではない。
【0080】
略語
rt 室温
DABCO 1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン
DBU 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
DMF ジメチルホルムアミド
DMFDMA ジメチルホルムアミドジメチルアセタール
g グラム
ml ミリリットル
h 時間
【0081】
実施例
1)4−(4−シアノ−3−メチル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(MW=316.40g/mol)
a)DMF中に溶解した4−フルオロ−2−メチル−ベンゾニトリル1.35gを、DMF30mL中の4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル2.11gおよび水素化ナトリウム0.6gに加えた。反応が終了するまで、混合物を室温(rt)で撹拌した。反応物を水でクエンチした。水層を酢酸エチル(AcOEt)またはメチルtert.ブチルエーテル(MTBエーテル)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥し、濃縮して4−(4−シアノ−3−メチル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル2.6g(収率81%)を得た。質量:(C182423):計算値316、実測値261[M+H−t(C49)]+
【0082】
b)カリウムtert.ブトキシド22.6g、4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル33.2gおよびMTBエーテル300mLを還流で1時間撹拌した。この懸濁液に、MTBエーテル250mL中に溶解した4−フルオロ−2−メチル−ベンゾニトリル20.3gの溶液を20分以内に加え、還流への加熱を7時間続けた。反応物を水でクエンチした。有機層を分離し、水で洗浄し、濃縮して4−(4−シアノ−3−メチル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル54.8g(収率92%)を得た。1H NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 1.40 (s, 9H), 1.47-1.55 (m, 2H), 1.88-1.95 (m, 2H), 2.43 (s, 3H), 3.13-3.22 (m, 2H), 3.63-3.70 (m, 2H), 4.66-4.73 (m, 1H), 6.96 (dd, J = 8.6, 2.4 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 2.3 Hz,
1H), 7.67 (d, J = 8.7 Hz, 1H).
【0083】
2)4−[4−シアノ−3−((E)−2−ピロリジン−1−イル−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(MW=397.52g/mol))
a)4−(4−シアノ−3−メチル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル47.3g(0.15mol)、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール43.8mL(0.33mol)およびピロリジン81.9mL(0.99mol)を混合し、この混合物を30分以内に90℃に加熱し、この温度に2時間保った。すべての揮発性内容物を留去させた。温度を120℃に高め、この温度に27時間保った。加熱をやめ、非常に粘稠な黒ずんだ残留物をMTBエーテル400mL中に溶解し、飽和水性NaHCO3200mLで2回および水200mLで1回洗浄した。有機層を濃縮し、集めたイソプロパノール/水(245mL/105mL)から再結晶し、乾燥して4−[4−シアノ−3−((E)−2−ピロリジン−1−イル−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル49.5g(収率83%、純度96.4%)を得た。
【0084】
b)4−(4−シアノ−3−メチル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル94.6g(0.3mol)、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール87.6mL(0.66mol)、ピロリジン109mL(1.32mol)およびDMF60.4mL(0.78mol)を混合し、この混合物を30分以内に90℃に加熱し、この温度に1時間保った。すべての揮発性内容物を留去させた。温度を110℃に高め、この温度に2時間保った。温度を120℃にし、この温度に7.5時間保った。加熱をやめ、混合物を周囲温度にさました。次いで、水200mLおよびイソプロパノール400mLを加えた。混合物を周囲温度で3時間および5℃で1時間撹拌して生成物を沈殿させた。固形物を集め、イソプロパノール/水(70/30)ですすぎ、集め、乾燥して4−[4−シアノ−3−((E)−2−ピロリジン−1−イル−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル113.7g(収率95.5%、純度93.3%)を得た。
【0085】
c)4−(4−シアノ−3−メチル−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル47.3g(0.15mol)、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール43.8mL(0.33mol)、ピロリジン54.6mL(0.66mol)およびDMF30.2mL(0.39mol)を混合し、混合物を30分以内に90℃に加熱し、この温度に1時間保った。すべての揮発性内容物を留去させた。温度を110℃に高め、この温度に2.5時間保った。温度を120℃にし、この温度に5時間保った。加熱をやめ、混合物を周囲温度にさまし、MTBエーテル400mLで希釈し、飽和水性NaHCO3200mLで2回および水200mLで1回洗浄した。有機層を濃縮し、イソプロパノール/水(245mL/105mL)から再結晶させ、集め、乾燥して4−[4−シアノ−3−((E)−2−ピロリジン−1−イル−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル55.5g(収率93%、純度100%)を得た。
オフホワイトの結晶質固形物、融点115〜117℃、1H NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 1.40 (s, 9H), 1.46-1.55 (m, 2H), 1.85-1.94 (m, 2H), 2.49-2.52 (m, 4H), 3.17-3.26 (m, 2H), 3.26-3.30 (m, 4H),3.62-3.70 (m, 2H), 4.67-4.76 (m, 1H), 5.09 (d, J = 13.6 Hz, 1H), 6.60 (dd, J = 8.8, 2.4 Hz, 1H), 7.09 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.46 (d, J= 8.9 Hz, 1H), 7.68 (d, J = 13.7 Hz, 1H).
【0086】
3)6−(ピペリジン−4−イルオキシ)−2H−イソキノリン−1−オン塩酸塩(MW=280.80g/mol)
4−[4−シアノ−3−((E)−2−ピロリジン−1−イル−ビニル)−フェノキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル42gを、15℃でHClガス48gにより飽和した1−ブタノール135mLに少しずつ加えた。この混合物を1時間以内に63℃に加熱し、反応終了まで63〜65℃で撹拌した。HCl含有溶媒を、その後の蒸留および新たな1−ブタノールの添加によって交換し、沈殿物を集め、1−ブタノールですすぎ、乾燥して6−(ピペリジン−4−イルオキシ)−2H−イソキノリン−1−オン塩酸塩31.2g(収率106%、純度96.5%)を得た。1H NMR (500 MHz,d6-DMSO) δ 1.85-1.95 (m, 2H), 2.13-2.22 (m, 2H), 3.04-3.14 (m, 2H), 3.20-3.29 (m, 2H), 4.79-4.86 (m, 1H), 6.44 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 7.10 (dd, J = 8.9, 2.5 Hz,1H), 7.14 (dd, J = 7.2, 6.7 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 8.09 (d, J = 8.6Hz, 1H), 8.97-9.13 (bs, 2H) 11.09 (bd, J = 5 Hz, 1H).