(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030770
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】非水系電解液及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20161114BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20161114BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20161114BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20161114BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20161114BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20161114BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/0525
H01M10/052
H01M10/0565
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-536735(P2015-536735)
(86)(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公表番号】特表2015-531539(P2015-531539A)
(43)【公表日】2015年11月2日
(86)【国際出願番号】KR2014008159
(87)【国際公開番号】WO2015037852
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2015年3月9日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0108578
(32)【優先日】2013年9月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ホ・アン
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨ・ソク・キム
(72)【発明者】
【氏名】トゥ・キュン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ミン・リム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホン・イ
【審査官】
結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−513205(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0136019(US,A1)
【文献】
特表2008−532248(JP,A)
【文献】
特開2003−051336(JP,A)
【文献】
特開2010−176930(JP,A)
【文献】
特開2007−317655(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0078532(US,A1)
【文献】
米国特許第09012094(US,B1)
【文献】
特表2010−530118(JP,A)
【文献】
特開2008−282619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水性有機溶媒、リチウム塩、及び下記化学式(1)で表されるボレート系塩化合物を含
み、
前記リチウム塩は、LiPF6、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiBF4、LiSbF6、LiN(C2F5SO2)2、LiAlO4、LiAlCl4、LiSO3CF3及びLiClO4からなる群より選ばれる1種または2種以上のリチウム塩であることを特徴とする非水系電解液:
【化1】
前記式で、
R
1からR
4は、それぞれ独立的にハロゲンまたはハロゲンで置換された炭素数1から3のアルキルである。
【請求項2】
前記ボレート系塩化合物は、下記化学式(1a)で表すことを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液。
【化2】
【請求項3】
前記非水系電解液は、下記化学式(2)及び下記化学式(3)からなる群より選ばれる一つ以上のボレート系塩化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液:
【化3】
【化4】
前記式で、
R
5からR
12は、それぞれ独立的に水素、炭素数1から3のアルキル、ハロゲンまたはハロゲンで置換された炭素数1から3のアルキルである。
【請求項4】
前記化学式(3)のボレート系塩化合物は、下記化学式(3a)で表すことを特徴とする請求項3に記載の非水系電解液:
【化5】
【請求項5】
前記ボレート系塩化合物は、非水系電解液の全体含量を基準に0.1から20重量%の含量で含まれることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液。
【請求項6】
前記非水系電解液は、化学式(1)のボレート系塩化合物、及び前記化学式(2)及び前記化学式(3)からなる群より選ばれる一つ以上のボレート系塩化合物を1:0.2から1:2.0の重量比で混合して含むことを特徴とする請求項3に記載の非水系電解液。
【請求項7】
前記非水系電解液は、前記化学式(1)のボレート系塩化合物、前記化学式(2)のボレート系塩化合物及び前記化学式(3)のボレート系塩化合物を1:0.2:0.2から1:1.0:1.0の重量比で混合して含むことを特徴とする請求項3に記載の非水系電解液。
【請求項8】
前記非水性有機溶媒は、環状カーボネート溶媒、線形カーボネート溶媒、エステル溶媒及びケトン溶媒からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合溶液を含むことを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液。
【請求項9】
前記環状カーボネート溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートからなる群より選ばれる1種または2種以上の混合溶液であることを特徴とする請求項8に記載の非水系電解液。
【請求項10】
前記線形カーボネート溶媒は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネートからなる群より選ばれる1種または2種以上の混合溶液であることを特徴とする請求項8に記載の非水系電解液。
【請求項11】
前記エステル溶媒は、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びγ-カプロラクトンからなる群より選ばれる1種または2種以上の混合溶液であることを特徴とする請求項8に記載の非水系電解液。
【請求項12】
正極、負極、前記正極と負極との間に介在されたセパレーター、及び
請求項1に記載の非水系電解液を含むことを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項13】
前記リチウム二次電池は、リチウムイオン二次電池またはリチウムポリマー二次電池であることを特徴とする請求項12に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液及びこれを含むリチウム二次電池に関し、より具体的には添加剤として一つ以上のボレート系塩化合物を含む非水系電解液及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの小型化及び軽量化が実現され、携帯用電子機器の使用が一般化されるに伴い、これらの電力源として高エネルギー密度を有する二次電池に対する研究が活発になされている。
【0003】
前記二次電池としては、ニッケル-カドミウム二次電池、ニッケル-メタルハイドライド二次電池、ニッケル-水素二次電池、リチウム二次電池などを挙げることができるが、特にこの中でも既存のアルカリ水溶液を用いる電池より2倍以上高い放電電圧を表すだけでなく、単位重量当たりのエネルギー密度が高く急速充電が可能なリチウム二次電池に対する研究が台頭している。
【0004】
前記リチウム二次電池は、リチウム金属酸化物からなる正極、炭素材料やリチウム金属合金からなる負極、及びリチウム塩と有機溶媒からなる電解液で構成されている。
【0005】
このとき、前記有機溶媒は揮発され易く、引火性が高いので、過充電、過放電時に内部発熱による短絡及び発火が発生し、リチウム二次電池の高温安全性が低下する。
【0006】
したがって、電池のサイクル寿命及び高温寿命を向上させることができる電解液を開発しようとする研究が多様に試みられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、常温及び高温安全性を改善することができる添加剤を含む非水系電解液を提供する。
【0008】
また、本発明は前記非水系電解液を含むことにより、電池サイクル特性及び高温貯蔵安全性が向上したリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
先ず、本発明では、
非水性有機溶媒、リチウム塩、及び下記化学式(1)で表されるボレート系塩化合物を含む非水系電解液を提供する:
【0010】
【化1】
【0011】
前記式で、
R
1からR
4は、それぞれ独立的にハロゲン、またはハロゲンで置換された炭素数1から3のアルキルである。
【0012】
また、本発明の非水系電解液は、下記化学式(2)及び化学式(3)からなる群より選ばれる一つ以上のボレート系塩化合物をさらに含む非水系電解液を提供する:
【0013】
【化2】
【0014】
【化3】
【0015】
前記式で、
R
5からR
12はそれぞれ独立的に水素、炭素数1から3のアルキル、ハロゲン、またはハロゲンで置換された炭素数1から3のアルキルである。
【0016】
また、本発明では正極、負極、前記正極と負極との間に介在されたセパレーターと、前記本発明の電解液を含むリチウム二次電池とを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、一つ以上のボレート系塩化合物を添加剤として含む非水系電解液を提供することにより、サイクル特性及び高温貯蔵安定性が向上したリチウム二次電池を製造することができる。
【0018】
次の図は、本発明の好ましい実施例を例示するものであり、前述した発明の内容とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を担うものなので、本発明はそのような図に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1から4及び比較例1から3で製造された二次電池の高温でのサイクル測定結果を比べたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい具体例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるとの原則に即し、本発明の技術的思想に符合する意味と概念に解釈されなければならない。したがって、本明細書に記載された実施例に示された構成は、本発明の最も好ましい具体例に過ぎないだけで、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、本出願時点において、これらを代替することができる多様な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0021】
具体的に、本発明は、非水性有機溶媒、リチウム塩、及び下記化学式(1)で表されるボレート系塩化合物を含む非水系電解液を提供する:
【0023】
前記式で、
R
1からR
4は、それぞれ独立的にハロゲンまたはハロゲンで置換された炭素数1から3のアルキルである。
【0024】
具体的に、前記ボレート系塩化合物は、前記化学式(1)でR
1からR
4がハロゲンであることが好ましく、さらに好ましくは下記化学式(1a)で表すことができる。
【0026】
また、本発明の一実施形態による非水系電解液は、前記化学式(1)で表されるボレート系塩化合物の他にも下記化学式(2)及び下記化学式(3)からなる群より選ばれる一つ以上のボレート系塩化合物をさらに含むことができる:
【0029】
前記式で、
R
5からR
12は、それぞれ独立的に水素、炭素数1から3のアルキル、ハロゲン、またはハロゲンで置換された炭素数1から3のアルキルである。
【0030】
具体的に、前記化学式(3)のボレート系塩化合物は下記化学式(3a)で表すことができる。
【0032】
前記ボレート系塩化合物の全体含量は、非水系電解液の総重量に対して0.1から20重量%の量で存在するのが好ましい。もし、ボレート系塩化合物の含量が0.1重量%未満であれば、電極上に堅固な固体被膜を形成する効果が僅かなことがあり得、20重量%を超過すれば、ボレート系塩化合物自体の分解反応が深刻となる問題があり得る。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式(1)のボレート系塩化合物と、化学式(2)及び化学式(3)からなる群より選ばれる一つ以上のボレート系塩化合物とを同時に含む場合、これらを単独で用いた場合より自己放電の側面で好ましいことがあり得る。
【0034】
本発明の一実施形態による非水系電解液は、前記化学式(1)のボレート系塩化合物、及び前記化学式(2)及び前記化学式(3)からなる群より選ばれる一つ以上のボレート系塩化合物の混合比(重量比)が非水系電解液の総重量に対して0.1から20重量%の範囲内に含まれれば特に制限しないが、具体的に化学式(1)のボレート系塩化合物:前記化学式(2)及び前記化学式(3)からなる群より選ばれるボレート系塩化合物の混合比(重量比)は1:0.2から
1:2.0、好ましくは1:0.2から
1:1.0で混合して含むことができる。
【0035】
本発明のさらに他の一実施形態によれば、前記化学式(1)、化学式(2)及び化学式(3)のボレート系塩化合物を全て含む場合、前記非水系電解液は、前記化学式(1)のボレート系塩化合物、化学式(2)のボレート系塩化合物及び化学式(3)のボレート系塩化合物を1:0.2
:0.2から
1:1.0
:1.0の重量比で混合して含むことができる。
【0036】
従来は、サイクル特性を改善するため、ホウ酸トリス-トリメチルシリルまたはホウ酸トリス-トリエチルシリルを添加剤として含む非水系電解液、または鎖型炭酸エステル及び/または鎖型カルボン酸エステルと、トリス(トリメチルシリル)ボレート及び電解質塩を含む非水系電解液を用いたことがあるが、前記添加剤を含む非水系電解液の場合、界面抵抗が増加して高温貯蔵時にセルのスウェリング(swelling)現象が誘発されるため、適切なサイクル特性及び容量保存率を得難いとの問題があった。
【0037】
よって、本発明の一実施形態によれば、前記化学式(1)で表されるボレート系塩化合物、またはこれに加えて前記化学式(2)及び化学式(3)からなる群より選ばれる一つ以上のボレート系塩化合物をさらに含む非水系電解液を提供することにより、電池の活性化(formation)のための充電工程時、または高温熟成(aging)工程時に電極の表面に電解液の分解を効果的に防ぐことができる堅固な固体電解質(SEI)被膜を形成することができる。これによって、二次電池の界面抵抗を低下させることができるので、電池サイクル特性及び高温貯蔵安全性の改善の効果、特に高電圧電池寿命の改善の効果を得ることができる。
【0038】
一方、本発明の一実施形態による非水系電解液において、前記非水性有機溶媒及びリチウム塩は、通常のリチウム二次電池の製造時に非水系電解液に使用可能な種類の有機溶媒及びリチウム塩を含むことができる。このとき、これらの含量もまた一般に使用可能な範囲内で適切に変更して含むことができる。
【0039】
具体的に、前記非水性有機溶媒は環状カーボネート溶媒、線形カーボネート溶媒、エステル溶媒またはケトン溶媒など、リチウム二次電池の非水性有機溶媒として使用可能な通常の有機溶媒を含むことができ、これらを単独にだけでなく、2種以上混合して用いることができる。
【0040】
前記環状カーボネート溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネート(BC)からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合溶液を挙げることができる。また、前記線形カーボネート溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)
、メチルプロピルカーボネート(MPC)及びエチルプロピルカーボネート(EPC)からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合溶液を挙げることができる。また、前記エステル溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びγ-カプロラクトンからなる群より選ばれる1種または2種以上の混合溶液を挙げることができる。また、ケトン溶媒としては、ポリメチルビニルケトンなどが用いられ得る。
【0041】
また、本発明の非水系電解液において、前記リチウム塩としては、LiPF
6、LiAsF
6、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiBF
4、LiSbF
6、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiAlO
4、LiAlCl
4、LiCo
0.2Ni
0.56Mn
0.27O
2、LiCoO
2、LiSO
3CF
3及びLiClO
4などを単独にまたは混合して用いることができ、これらの他にもリチウム二次電池の電解液に通常用いられるリチウム塩を制限なく用いることができる。
【0042】
本発明のさらに他の一具体例で、正極、負極及び前記正極と負極との間に介在されたセパレーターと、本発明の非水系電解液を含むリチウム二次電池とを提供する。
【0043】
このとき、前記正極は、リチウムをインターカレーション及びジインターカレーションすることができる正極活物質を含んでなり、前記負極は、リチウムをインターカレーション及びジインターカレーションすることができる負極活物質を含んでなる。
【0044】
前記正極及び負極活物質としては、リチウム二次電池の製造時に正極及び負極活物質として用いられる活物質であれば制限なく用いられてよく、代表的な負極活物質としては結晶質炭素、非晶質炭素または炭素複合体のような炭素系負極活物質が単独にまたは混合して用いられてよく、正極活物質としてはマンガン系スピネル(spinel)活物質またはリチウム金属酸化物が用いられてよい。前記リチウム金属酸化物の中には、コバルトまたはマンガンを含有するリチウム-コバルト系酸化物、リチウム-マンガン系酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物及びリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物などが好ましく用いられてよい。これら化合物の中でも、リチウム-コバルト系酸化物、リチウム-マンガン系酸化物またはリチウム-ニッケル-マンガン系酸化物が好ましい。
【0045】
前記リチウム二次電池は、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池及びリチウムポリマー電池のうちいずれにも製造されて用いられてよい。
【0046】
一般に、二次電池の初期充電過程で、正極から排出されたリチウムイオンが負極(黒鉛)に挿入される前に、電解液の分解に伴い、負極(黒鉛)の表面に電池反応に影響を与えるSEI被膜が形成され得る。この被膜は、リチウムイオンは通過させ、電子の移動を遮断させる性質を有するだけでなく、電解液が引き続き分解されないようにする保護被膜としての役割を担うことができる。よって、負極の表面に被膜が形成されると、電極と電解液との間で電子の移動による電解液の分解が抑制され、選択的にリチウムイオンの挿入・脱離のみ可能になる。しかし、生成されたSEI被膜は、電池の寿命が尽きるまで安定的に存在せず、繰り返される充放電サイクルに伴う収縮・膨張によって破壊されるか、外部からの熱、衝撃によって破壊されることがあり得る。このように破壊されたSEI被膜は継続的な充放電過程によって修復されながら、付加的にまたは非可逆的に電荷が費やされるので、持続的な可逆容量の減少をもたらし得る。特に、電解液の分解により生成された固体被膜の厚さが増加するほど、界面抵抗が増加して電池の性能が劣化する。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、前記ボレート系塩化合物を一つ以上含む非水系電解液を利用することにより、電極の表面上に高いイオン伝導性と低い電子伝導性を有し、電極の収縮、膨張に耐え、熱的安定性に優れた固体被膜を形成することができる。また、これに伴い、遷移金属の溶出を防止すると共に、高温貯蔵時に電池の膨張現象を抑制することができるので、高温サイクル特性が向上した二次電池を製造することができる。さらに、前記添加剤の場合、正極から発生する遷移金属の溶出を防止して電池の性能を改善することができる。
【0048】
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多様な他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記に詳述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例】
【0049】
実施例1
<非水系電解液の製造>
カーボネート溶媒であるエチレンカーボネート(EC):エチルプロピオネート(EP)を1:9重量比で含む1M LiPF
6電解液(100g)を製造した。前記電解液に前記化学式(1a)のボレート系塩化合物(1g)を添加して非水系電解液を製造した。
【0050】
<リチウム二次電池の製造>
正極活物質としてLiNi
0.5Mn
1.5O
4 96重量%、導電材としてカーボンブラック(carbon black) 2重量%、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(PVdF) 2重量%を溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加して正極混合物スラリーを製造した。前記正極混合物スラリーを厚さが20μm程度の正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布し、乾燥して正極を製造した後、ロールプレス(roll press)を行って正極を製造した。
【0051】
また、負極活物質として人造黒鉛、バインダーとしてPVdF、導電材としてカーボンブラック(carbon black)をそれぞれ96重量%、3重量%及び1重量%にして溶媒であるNMPに添加し、負極混合物スラリーを製造した。前記負極混合物スラリーを厚さが10μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布し、乾燥して負極を製造した後、ロールプレス(roll press)を行って負極を製造した。
【0052】
このように製造された正極と負極を、PEセパレーターと共に通常の方法でポリマー型電池を製作した後、製造した前記非水性電解液を注液してリチウム二次電池の製造を完成した。
【0053】
実施例2
実施例1の非水系電解液に、前記化学式(1a)のボレート系塩化合物(1g)の代わりに前記化学式(1a)のボレート系塩化合物(1g)及び前記化学式(2)のボレート系塩化合物(0.5g)を混合して添加したことを除いては、実施例1と同一の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0054】
実施例3
実施例1の非水系電解液に、前記化学式(1a)のボレート系塩化合物(1g)の代わりに前記化学式(1a)のボレート系塩化合物(1g)及び前記化学式(3a)のボレート系塩化合物(0.5g)を混合して添加したことを除いては、実施例1と同一の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0055】
実施例4
実施例1の非水系電解液に、前記化学式(1a)のボレート系塩化合物(1g)の代わりに前記化学式(1a)のボレート系塩化合物(0.5g)、前記化学式(2)のボレート系塩化合物(0.5g)及び前記化学式(3a)のボレート系塩化合物(0.5g)を混合して添加したことを除いては、実施例1と同一の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0056】
比較例1
実施例1の非水系電解液に、前記化学式(1a)のボレート系塩化合物(1g)の代わりに前記化学式(2)のボレート系塩化合物(1g)を添加することを除いては、前記実施例1と同一の方法で電解液及びこれを含むリチウム二次電池を製造した。
【0057】
比較例2
実施例1の非水系電解液に、前記化学式(1a)のボレート系塩化合物(1g)の代わりに前記化学式(3a)のボレート系塩化合物(1g)を添加することを除いては、前記実施例1と同一の方法で電解液及びこれを含むリチウム二次電池を製造した。
【0058】
比較例3
実施例1の電解液に化学式(1a)の添加剤を用いていないことを除いては、実施例1と同一の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0059】
(実験例)
性能評価実験
実験例1
リチウム二次電池は、12.5mAh容量のパウチセルを用いた。
【0060】
前記実施例1から4及び比較例1から3で製造された二次電池の寿命評価は、常温で1C/1Cの充放電条件で行い、その結果を
図1に示した。
【0061】
図1を検討してみれば、本発明の実施例1から4は、比較例1から3に比べて二次電池の寿命特性が著しく向上することが分かる。
【0062】
具体的に検討してみれば、本発明の実施例1から4及び比較例1から3の二次電池を常温で1C/1Cの充放電条件で約300回までサイクルを進めた結果、化学式(1a)のボレート系塩化合物を含む実施例1から4は、300回サイクルまで6mAhで緩やかなグラフの傾きを見せたが、化学式(1a)を含んでいない比較例1から3の場合、約50回目サイクル以後の容量が著しく減少することを確認することができた。
【0063】
特に、化学式(1a)のボレート系塩化合物を含んで2種以上のボレート系塩化合物を用いた実施例2から4は、初期サイクルと300回目サイクルまでの容量変化率が殆どなく、300回目サイクルで比較例2に比べて4倍以上向上することが分かる。
【0064】
比較例1及び3の場合、約10回目のサイクルから著しく減少する容量保有率を示し、約80回目のサイクル以後は測定が不可能であった。
【0065】
一方、高温性能実験は、実施例1から4及び比較例1から4で製造された二次電池をそれぞれ4.85Vまで充電し、4.85Vの定電圧で終了電流が0.63mAとなるまで充電した。以後、電池を45℃で1週間の間貯蔵し、高温貯蔵後の残存容量と1C充電後に回復される容量とを1C条件で測定し、その結果を表1に示した。その結果、
図1に示されたように、比較例3の電池に比べて本発明の実施例1から4の二次電池のサイクル特性がより優れることを確認することができた。
【0066】
【表1】
【0067】
前記表1から分かるように、本願実施例1から4で製造された二次電池は、残存容量が3.8mAh以上、回復容量が7.2mAh以上で比較例1から3に比べて著しく増加することを確認することができる。
【0068】
特に、本発明で特徴とする化学式(1a)のボレート系塩化合物を添加した実施例1から4の場合、化学式(1a)のボレート系塩化合物を添加していない比較例1から3に比べ、残存容量は約1%から約460%以上、回復容量は約1%から80%まで向上することが分かる。
【0069】
また、1種のボレート系塩化合物を投入した場合、化学式(1a)のボレート系塩化合物を添加した実施例1が、化学式(2)または(3a)のボレート系塩化合物を添加した比較例1と2に比べて上昇した。
【0070】
特に、2種以上のボレート系塩化合物を用いた実施例2から4の場合、化学式(1a)を単独に用いた実施例1に比べ、残存容量は80%から150%、回復容量は9%から15%向上することが分かる。
【0071】
また、化学式(1a)から(3a)を含んでいない比較例3の場合、実施例1に比べて残存容量は180%以上、回復容量は50%以上減少することを確認した。
【0072】
したがって、本発明の実施例によって、化学式(1a)を用いた二次電池、好ましくは化学式(1a)に化学式(2)または化学式(3a)、または化学式(2)及び(3a)を組み合わせて用いる場合、二次電池の残存容量及び回復容量を著しく向上させ得ることを確認することができる。