(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
IMS(IP Multimedia Subsystem)と称されるシステムでは、ユーザがローミングしても(ローミング先で使用する他社の網を在圏網という)、ホーム網(端末が契約している網)で受けているサービスを提供する。これを実現するため、ユーザがローミングすると、端末とホーム網のSIPサーバ(C−CSCF)との間で、レジスタリクエスト信号の送信と応答を行い、端末の位置登録をホーム網のC−CSCFで行う。さらに、レジスタリクエスト信号のパスヘッダに経路情報を書き込むことで発信時/着信時に信号が経由するルーチング経路を確定する。ローミング端末を使った通信サービスは位置登録時に確定したルーチング経路を使って行われるが、経路情報を在圏網とホーム網で共用するため、在圏網(またはホーム網)は、ホーム網(または在圏網)に経路情報(トポロジやルーチングテーブル)を知られてしまうという問題が生じる。また、ルーチング経路確定後にルーチング経路上にあるノードやリンクなどのネットワークを構成する装置に障害が発生すると、経路変更機能がないためサービスの提供ができなくなる。
【0003】
したがって、ローミング時における、経路情報漏洩とネットワーク通信サービスの途絶を容易に回避する手段が求められる。尚、ローミング時のシステム動作の詳細な記述は、特に、たとえば3GPP(3rd Generation Partnership Project)などの標準化団体によって公開されている仕様書で見つけることができる。
【0004】
(従来装置、システムの内容)
(1)ローミング時のレジスタリクエスト信号/応答信号による経路決定手順
図10は、従来において、ローミング端末(SIP−UA_A)が位置登録を行うため、レジスタリクエスト信号(REGISTER)をホーム網のC−CSCF(セッション制御を行うSIPサーバ)へ送るまでの処理の流れを示す。
【0005】
S1:ユーザがローミングすると、SIP−UA_Aは、電源を入れた時やエリアが変わった時、位置登録を行う。
【0006】
まず、SIP−UA_Aは、レジスタリクエスト信号を在圏網のP−CSCF#1に送信する。
【0007】
S2:P−CSCF#1は、レジスタリクエスト信号のパスヘッダ(図の「Path」。以下同じ)に自身のアドレス(例えば、<sip:pcscf#1.visited.net>)を付与し、レジスタリクエスト信号を、在圏網のルーチング規則に従って在圏網のI−CSCF#1(中継処理を行うSIPサーバ)へ転送する。
【0008】
S3:I−CSCF#1は、同様に、パスヘッダに自身のアドレス(例えば、<sip:icscf#1.visited.net>)を付与し、同様にI−CSCF#2に転送する。
【0009】
S4:I−CSCF#2は、同様に、パスヘッダに自身のアドレス(例えば、<sip:icscf#2.visited.net>)を付与し、同様にI−CSCF#4に送信する。
【0010】
S5:I−CSCF#4は、同様に、パスヘッダに自身のアドレス(例えば、<sip:icscf#4.home.net>)を付与し、同様にC−CSCFに転送する。
【0011】
S6:C−CSCFは、レジスタリクエスト信号のパスヘッダに記載されている経路情報を取り出し、ルート情報として格納する。
【0012】
S7:C−CSCFは、レジスタリクエスト信号のパスヘッダ(P−CSCF#1からI−CSCF#4までの経路)と、サービスルートヘッダ(C−CSCFからI−CSCF#2までの経路)を応答信号(200OK信号)に付与してI−CSCF#4に送信する。サービスルートヘッダは、図では「Service−Route」であり、以下同じ。
【0013】
なお、C−CSCFは、C−CSCFからP−CSCF#1までの経路をルート情報(図では「Route」であり、以下同じ)として格納する。
【0014】
S8:応答信号はパスヘッダに基づいて、レジスタリクエスト信号が経由したルートを逆に辿り、ローミング端末に着信する。
【0015】
S9:ローミング端末は、応答信号のパスヘッダ、サービスルートヘッダから、P−CSCF#1からC−CSCFまでの経路情報を取り出し、ルート情報として格納する。
【0016】
(2)レジスタリクエスト信号/応答信号による経路決定後のルーチング
レジスタリクエスト信号/応答信号による経路決定後、ローミング端末からの発着信のSIP信号は「(1)の経路決定手順」で決定した経路に従って流れる。具体的には、発着信のSIP信号は、レジスタリクエスト信号が経由したSIPサーバ(P−CSCF,I−CSCF,C−CSCF)を経由する。
【0017】
図11は、従来における、SIP−UA_Aからホーム網にある端末(SIP−UA_B)への発信時のINVITE信号のルーチングの例を示す。
【0018】
S1:SIP−UA_Aは、発信時にINVITE信号をSIP−UA_Bに送信するが、
図10のS9で格納したルート情報に基づき、INVITE信号の送出先がP−CSCF#1であると判断すると共に、INVITE信号にルート情報を付与して、P−CSCF#1に送信する。
【0019】
S2:P−CSCF#1は、SIP−UA_AからINVITE信号を受信する。そして、P−CSCF#1は、ルート情報から転送先がI−CSCF#1と判断し、ルート情報から自身のアドレスを削除し、INVITE信号をI−CSCF#1に転送する。
【0020】
S3:I−CSCF#1は、P−CSCF#1からINVITE信号を受信する。そして、I−CSCF#1は、ルート情報から転送先がI−CSCF#2であると判断し、ルート情報から自身のアドレスを削除し、INVITE信号をI−CSCF#2に転送する。
【0021】
S4:I−CSCF#2は、I−CSCF#1からINVITE信号を受信する。そして、I−CSCF#2は、ルート情報から転送先がI−CSCF#4であると判断し、ルート情報から自身のアドレスを削除し、INVITE信号をI−CSCF#4に転送する。
【0022】
S5:I−CSCF#4は、I−CSCF#2からINVITE信号を受信する。そして、I−CSCF#4は、ルート情報から転送先がC−CSCFであると判断し、ルート情報から自身のアドレスを削除し、INVITE信号をC−CSCFに転送する。
【0023】
S6:C−CSCFは、I−CSCF#4からINVITE信号を受信し、INVITE信号に記載されている着電話番号に基づいて、INVITE信号を端末(SIP−UA_B)に着信する。
【0024】
図12は、従来における、SIP−UA_BからSIP−UA_Aへの発信時のINVITE信号のルーチングの例を示す。
【0025】
S1:SIP−UA_Bは、C−CSCFへINVITE信号を送信する。
【0026】
S2:C−CSCFは、INVITE信号を受信し、
図10のS6で格納したルート情報をINVITE信号に付与し、ルート情報に基づいて、INVITE信号をI−CSCF#4に送信する。
【0027】
S3:I−CSCF#4は、C−CSCFからINVITE信号を受信し、ルート情報から自身のアドレスを削除し、INVITE信号をI−CSCF#2に転送する。
【0028】
S4:I−CSCF#2は、I−CSCF#4からINVITE信号を受信し、ルート情報から自身のアドレスを削除し、INVITE信号をI−CSCF#1に転送する。
【0029】
S5:I−CSCF#1は、I−CSCF#2からINVITE信号を受信し、ルート情報から自身のアドレスを削除し、INVITE信号をP−CSCF#1に転送する。
【0030】
S6:INVITE信号に記載されているSIP−UA_Aの電話番号に基づいてSIP−UA_Aに着信する。
【0031】
(3)従来方式の問題
従来方式では、レジスタリクエスト時に決定したルーチング経路が変更されないことと、経路情報を在圏網とホーム網で共用することにより次のような問題がある。
【0032】
(a)問題1
ルーチング経路確定後に、ルーチング経路上のネットワーク構成要素が故障した場合、発着信が不可能となる。
【0033】
図13は、従来において、経路ルーチングを行っている時に、I−CSCF#1が故障した時の発信不能状態の例を示す。
図14は、従来において、経路ルーチングを行っている時に、I−CSCF#1が故障した時の着信不能状態の例を示す。
【0034】
発着信が不能な状態は、位置登録を再度行うためレジスタリクエスト信号をホーム網のC−CSCFへ送り、故障装置を迂回したルーチングを確定するまで継続する。位置登録が再度行われるケースは、端末が圏をまたがって移動した場合、電源を切って再立ち上げを行った場合が考えられる。
【0035】
(b)問題2
ルーチング経路が固定的に確定されるため、ルーチング経路上のネットワーク構成装置が輻輳した場合、迂回等による負荷軽減を行うことができない。
【0036】
図15に示した例では、同じ機能をもつサーバが2ユニット(I−CSCF#1とI−CSCF#3)設置されている状況で、I−CSCF#1が輻輳した際、I−CSCF#1を経路として使用している端末を、処理能力に余裕のあるI−CSCF#3に変更することができない。その結果、電話がかかりにくくなるだけではなく、I−CSCF#1の負荷が軽減されないため輻輳が継続する。
【0037】
(c)問題3
ルーチング経路が固定的に確定されるため、ルーチング経路上のネットワーク構成装置に対して装置の機能の中断が必要な工事/設定変更を行う場合、サービスの中断が伴う。
図16は、従来において、経路ルーチングを行っている時に、I−CSCF#1が工事中となり、機能を停止させたため、発信不能状態となった例を示す。
図17は、同様の理由で、着信不能状態となった例を示す。
【0038】
I−CSCF#3へ迂回させればローミング端末(SIP−UA_A)からの疎通を確保できるのにもかかわらず、従来方式では迂回ができないため、疎通を確保できない。
【0039】
(d)問題4
従来方式では、レジスタリクエスト信号と応答信号(200OK)を使うことでレジスタリクエスト信号が流れた経路(経由した在圏網およびホーム網のSIPサーバのアドレス)を、在圏網(他事業者網)とホーム網(自事業者網)で共用し、ローミング端末からの発着信のためのSIP信号の経路を確定している。このように、経路情報を在圏網(他事業者網)とホーム網(自事業者網)で共用するため、他事業者網に自事業者網のルーチング経路やネットワーク構成(SIPサーバの接続関係)を把握されるため、設備情報保護の観点から望ましくない。
【0040】
問題1、2、3を解決する従来技術として、複数のSIPプロキシのネットワークIFに同一の仮想IPアドレスを割り振る機能を用いる方法が考えられる。
図18を使って説明する。二重化したI−CSCF(I−CSCF#1とI−CSCF#3)とVRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)対応ルータ#1、#2から構成される。ルータ#1、#2はそれぞれI−CSCF#1、#3に接続され、I−CSCF#1とI−CSCF#3は同一アドレスを、ルータには仮想IPアドレスが割り当てられている。I−CSCF#1とルータ#1がマスター、I−CSCF#3とルータ#2がバックアップで、通常はI−CSCF#1で動作している。I−CSCF#1が故障すると、VRRPの機能を使ってルータ#1からルータ#2に切り替え、I−CSCF#3へ迂回させる。しかしこの方法は、IPレベルの故障検出しかできないこと、VRRP対応ルータを必要とすること、I−CSCF故障時の切り替え処理を行うソフトウェアが必要となることにより、コスト上昇の要因となる。
【0041】
以上が問題1、2、3を解決する従来技術であるが、問題4に対しては解決する従来技術はない。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0051】
IMSシステムにおいて、ローミング端末を使った通信サービスは、位置登録時に確定したルーチング経路を使って行われるが、ルーチンング経路確定後にルーチング経路上にあるノードやリンクなどのネットワーク構成装置の障害や輻輳の発生、工事によるサービスの中断が生じると、サービスを提供できなくなる。さらに、経路情報を在圏網(他事業者網)とホーム網(自事業者網)で共用するため、他事業者網に自事業者網のルーチング経路やネットワーク構成を把握され、設備情報保護の観点から望ましくない。
【0052】
障害や輻輳、工事によって生じる問題(例、信頼性低下、サービスの中断、輻輳の拡大)を解決する手段として、これまでの技術では、冗長化構成をとり、同一アドレスを割り当てて、障害時の設備切り替え(迂回)を行うためのソフトウェアの開発が必要とされる。
【0053】
本実施の形態では、これまでの解決方法で要求される条件を必要としない、IMSシステムのローミング手順には変更を加えない、という条件で、障害や輻輳、工事によって生じる問題(例、信頼性低下、サービスの中断、輻輳の拡大)を簡便に解決する手段を与え、さらに、これまでの方式によるルーチング手順に変更を加えることなく簡便に、自事業者網の経路情報が他事業者網に漏洩するのを回避する技術について説明する。
【0054】
(1)自事業者網の経路情報が他事業者網に漏洩するのを回避するための技術
図1,
図2、
図3、
図4を使って、自事業者網の経路情報が他事業者網に漏洩するのを回避する技術について説明する。なお、図において、P−CSCF#1、I−CSCF#1、I−CSCF#2、I−CSCF#3、I−CSCF#4、C−CSCFはSIPサーバである。
【0055】
図1は、ローミング端末(SIP−UA_A)が位置登録を行うため、レジスタリクエスト信号(REGISTER)をホーム網のC−CSCF(セッション制御を行うSIPサーバ)へ送るまでの処理の流れを示す。
【0056】
S1:ローミング端末(SIP−UA_A)は、レジスタリクエスト信号を在圏網のP−CSCF#1へ送信する。
【0057】
S2:P−CSCF#1は、端末からのレジスタリクエスト信号を受信し、そのパスヘッダに自身のアドレス(例えば、<sip:pcscf#1.visited.net>)を付与し、レジスタリクエスト信号を、在圏網のルーチング規則に従って在圏網のI−CSCF#1に転送する。
【0058】
S3:I−CSCF#1は、P−CSCF#1からレジスタリクエスト信号を受信し、パスヘッダに自身のアドレス(例えば、<sip:icscf#1.visited.net>)を付与し、レジスタリクエスト信号を、在圏網のルーチング規則に従って在圏網のI−CSCF#2に転送する。
【0059】
図2は、I−CSCF#2の構成の一部を示すもので、特に経路情報の漏洩を回避するための構成を示す。
【0060】
I−CSCF#2は、通信網(ここでは在圏網)と外部網(ここではホーム網)の間での通信信号の中継を行う通信装置である。I−CSCF#2は、在圏網における通信信号の経路を示す経路情報と当該経路情報を示すダミー値とを対応づけて記憶する対応関係表11と、通信網内から受信した通信信号を外部網に送信するに際し、当該通信信号に含まれる、通信網における当該通信信号の経路を示す経路情報を、該経路情報を示すダミー値に置き換えるとともに、当該経路情報と当該ダミー値とを対応づけて対応関係表11に記憶させる送信処理部12と、外部網から受信した通信信号を通信網内に送信するに際し、対応関係表11から、当該通信信号に含まれるダミー値に対応する経路情報を読み出し、当該通信信号のダミー値を当該経路情報に置き換える受信処理部13とを備える。
【0061】
なお、図示しないが、I−CSCF#4も同様の構成を備える
図1に戻り、説明を続ける。
【0062】
S4:I−CSCF#2は、I−CSCF#1からレジスタリクエスト信号を受信する。送信処理部12は、ホーム網(他網)へレジスタリクエスト信号を送信する際、レジスタリクエスト信号のパスヘッダに記載されている在圏網(自網)の経路情報(I−CSCF#2までの経路情報(P−CSCF#1、I−CSCF#1))の漏洩を回避するため、これをダミー値(例えばSIP:B.visited.net)に置き換え、さらに自身のアドレス (<sip:icscf#2.visited.net>)を付与し、レジスタリクエスト信号をI−CSCF#4に送信する。
【0063】
S5:さらに、I−CSCF#2の送信処理部12は、ダミー値(SIP:B.visited.net)とI−CSCF#2までの経路情報(P−CSCF#1→I−CSCF#1→I−CSCF#2)とを対応づけて対応関係表11に記憶させる。
【0064】
S6:ホーム網のI−CSCF#4は、在圏網のI−CSCF#2からレジスタリクエスト信号を受信し、そのパスヘッダに自身のアドレス(例えば、<sip:icscf#4.home.net>)を付与し、レジスタリクエスト信号を、ホーム網のルーチング規則に従ってホーム網のC−CSCFへ転送する。
【0065】
S7:C−CSCFは、レジスタリクエスト信号のパスヘッダに記載されている経路情報を取り出し、ルート情報として格納する。
【0066】
このようにして、これまでの方式では、パスヘッダにはレジスタリクエスト信号が経由してきた在圏網のサーバのアドレスが記載されていたが、本方式ではダミー値を記載することで、在圏網の経路情報がホーム網に漏洩するのを回避することができる。
【0067】
次に、
図3、
図4を参照し、ローミング端末(SIP−UA_A)から送信されたレジスタリクエスト信号を受信したホーム網のC−CSCFが、応答信号をローミング端末まで送る手順を説明する。
【0068】
図3は、C−CSCFが、レジスタリクエスト信号に対する応答信号をI−CSCF#2に送るまでの処理の流れを示す。
【0069】
S1:C−CSCFは、レジスタリクエスト信号のパスヘッダ(在圏網のダミー値とI−CSCF#2からC−CSCFまでの経路が記載されている)と、サービスルートヘッダ(C−CSCFからI−CSCF#2までの経路を記載したもの)を応答信号(200OK信号)に付与してI−CSCF#4に送信する。
【0070】
S2:I−CSCF#4は、C−CSCFから応答信号を受信する。I−CSCF#4の送信処理部12は、ホーム網内の経路情報の漏洩を回避するため、応答信号のサービスルートヘッダにおいて、I−CSCF#4からC−CSCFまでの経路情報をダミー値(例えばSIP:A.home.net)に置き換え、応答信号をI−CSCF#2に送信する。
【0071】
S3:また、I−CSCF#4の送信処理部12は、ダミー値(SIP:A.home.net)と、I−CSCF#4からC−CSCFまでの経路情報(I−CSCF#4→C−CSCF)とを対応づけて対応関係表11に記憶させる。
【0072】
このようにして、これまでの方式では、レジスタリクエスト信号が経由してきたホーム網のサーバのアドレスをパスヘッダに記載していたが、本方式ではホーム網のサーバのアドレスの代わりにダミー値(SIP:A.home.net)を記載することで、ホーム網の経路情報が在圏網に漏洩するのを回避できる。
【0073】
図4は、I−CSCF#2が、受信した応答信号をローミング端末へ送るまでの処理の流れを示すものである。
【0074】
S1:I−CSCF#2は、ホーム網のI−CSCSF#4から応答信号を受信する。I−CSCF#2の受信処理部13は、対応関係表11から、応答信号のパスヘッダに記載されている在圏網のダミー値(SIP:B.visited.net)に対応する経路情報を読み出し、パスヘッダのダミー値を経路情報に置き換え、置き換え後の応答信号をI−CSCF#1に送信する。
【0075】
S2:応答信号はパスヘッダに基づいて、レジスタリクエスト信号が経由したルートを逆に辿り、ローミング端末に着信する
S3:ローミング端末は、受信した応答信号のパスヘッダ、サービスヘッダから、ホーム網のC−CSCFまでの経路情報を取り出し、ルート情報として格納する。
【0076】
ルート情報においては、ホーム網のI−CSCF#4からC−CSCFまでの経路情報はダミー値(SIP:A.home.net)に置き換えられているので、ホーム網内における経路情報が在圏網に漏洩するのを回避できる。
【0077】
以上の説明のように、在圏網とホーム網との通信を行うサーバ(図ではI−CSCF#2,I−CSCF#4)において、他網への通信時には自網内での経路情報をダミー値に置き換えることで、自網内の経路情報が他網に漏洩するのを回避できる。そして、他網から受信した自網のダミー値に対しては、経路情報とダミー値との対応関係表を参照し、自網内での経路情報に変換し、自網内でのルーチングを実現する。
【0078】
図5に、ローミング端末(SIP−UA_A)からホーム網にある端末(SIP−UA_B)への発信時におけるINVITE信号のルーチング例を示す。
【0079】
S1:SIP−UA_Aは、発信時にINVITE信号をSIP−UA_Bに送信するが、
図4のS3で生成したルート情報に基づき、INVITE信号の送出先がP−CSCF#1であると判断すると共に、INVITE信号にルート情報を付与して、P−CSCF#1に送信する。
【0080】
S2:P−CSCF#1は、SIP−UA_AからINVITE信号を受信する。そして、P−CSCF#1は、ルート情報から転送先がI−CSCF#1と判断し、ルート情報から自身のアドレスを削除し、INVITE信号をI−CSCF#1に転送する。
【0081】
S3:I−CSCF#1は、P−CSCF#1からINVITE信号を受信する。そして、I−CSCF#1は、ルート情報から転送先がI−CSCF#2であると判断し、ルート情報から自身のアドレスを削除し、INVITE信号をI−CSCF#2に転送する。
【0082】
S4:I−CSCF#2は、I−CSCF#1からINVITE信号を受信する。そして、I−CSCF#2は、ルート情報から転送先がI−CSCF#4であると判断し、ルート情報から自身のアドレスを削除し、INVITE信号をI−CSCF#4に転送する。
【0083】
S5:I−CSCF#4は、I−CSCF#2からINVITE信号を受信する。I−CSCF#4の受信処理部13は、対応関係表11から、INVITE信号に記載されているホーム網のダミー値(SIP:A.home.net)に対応する経路情報(<sip:ccscf home.net>)を読み出し、ダミー値を経路情報に書き換え、経路情報に基づいて、INVITE信号をC−CSCFに転送する。
【0084】
S6:C−CSCFは、I−CSCF#4からINVITE信号を受信し、INVITE信号に記載されている着電話番号に基づいて、INVITE信号を端末(SIP−UA_B)に着信する。
【0085】
図6に、SIP−UA_BからSIP−UA_Aへの着信時のINVITE信号のルーチングの例を示す。
【0086】
S1:SIP−UA_Bは、C−CSCFにINVITE信号を送信する。
【0087】
S2:C−CSCFは、INVITE信号を受信し、
図1のS7で格納したルート情報をINVITE信号に付与し、ルート情報に基づいて、INVITE信号をI−CSCF#4に送信する。
【0088】
S3:I−CSCF#4は、C−CSCFからINVITE信号を受信し、ルート情報から転送先がI−CSCF#2と判断し、ルート情報から自身のアドレスを削除し、INVITE信号をI−CSCF#2に転送する。
【0089】
S4:I−CSCF#2は、I−CSCF#4からINVITE信号を受信する。I−CSCF#2の受信処理部13は、対応関係表11から、INVITE信号のルート情報に記載されたダミー値(SIP:B.visited.net)に対応する経路情報(<sip:icscf#1visited.net><sip:pcscf#1visited.net>)を読み出し、ルート情報のダミー値を経路情報に置き換え、ルート情報から自身のアドレスを削除し、経路情報に基づいて、INVITE信号をI−CSCF#1に転送する。
【0090】
S5:I−CSCF#1は、I−CSCF#2からINVITE信号を受信する。そして、I−CSCF#1は、ルート情報から転送先がP−CSCF#1と判断し、ルート情報から自身のアドレスを削除し、INVITE信号をP−CSCF#1に転送する。
【0091】
S6:P−CSCF#1は、I−CSCF#1からINVITE信号を受信し、INVITE信号に記載されているSIP−UA_Aの電話番号に基づいてSIP−UA_Aに着信する。
【0092】
以上のように、例えば、I−CSCF#2は、在圏網における通信信号の経路を示す経路情報と当該経路情報を示すダミー値とを対応づけて記憶する対応関係表11と、通信網内から受信した通信信号を外部網に送信するに際し、当該通信信号に含まれる、通信網における当該通信信号の経路を示す経路情報を、該経路情報を示すダミー値に置き換えるとともに、当該経路情報と当該ダミー値とを対応づけて対応関係表11に記憶させる送信処理部12と、外部網から受信した通信信号を通信網内に送信するに際し、対応関係表11から、当該通信信号に含まれるダミー値に対応する経路情報を読み出し、当該通信信号のダミー値を当該経路情報に置き換える受信処理部13とを備えるので、在圏網における経路情報がホーム網に漏洩するのを回避できる。
【0093】
また、I−CSCF#4も同様の構成を備えるので、ホーム網における経路情報が在圏網に漏洩するのを回避できる。
【0094】
(2)障害や輻輳、工事によるサービスの中断の問題を解決する技術
次に、
図7、
図8、
図9を参照し、上記決定した経路に存在するI−CSCF#1が故障した場合であっても、経路変更(迂回)によってサービスを継続する手順を説明する。
【0095】
図7は、I−CSCF#1が故障した場合において、SIP−UA_AからSIP−UA_Bへの発信呼を疎通させる場合の処理の流れを示す。
【0096】
図8は、P−CSCF#1の構成の一部を示すもので、特に障害や輻輳、工事によるサービスの中断を問題解決するための構成を示す。
【0097】
P−CSCF#1は、通信網(ここでは在圏網)を構成するノードである通信装置である。P−CSCF#1は、P−CSCF#1に隣接する隣接ノードごとに該隣接ノードが正常か異常かを記憶する経路情報テーブル21と、隣接ノードごとに該隣接ノードが正常か異常かを監視する隣接ノード監視部22と、隣接ノードの異常が検出されたなら、経路情報テーブル21において、当該隣接ノードの状態を正常状態から異常状態に変更するテーブル更新部23と、隣接ノードのいずれかに対する通信信号の送信に際し、当該隣接ノードが正常か異常かを経路情報テーブル21を参照して判断し、当該隣接ノードが異常であるなら、経路情報テーブル21において正常となっている別の隣接ノードを当該通信信号の迂回先として選択する迂回処理部24とを備える。
【0098】
経路情報テーブル21は、ここでは、通信信号の目的地ごとに、その目的地に信号を送信する際の次の送信先となれる隣接ノードをグループ化し、グループごとに正常か異常かを記憶する。
【0099】
経路情報テーブル21において正常となっている隣接ノードは、同グループの他の隣接ノードが異常である場合の迂回先サーバ(迂回ホップ)となる。
【0100】
なお、図示しないが、他のSIPサーバも同様の構成を備える。
【0102】
S1:各SIPサーバの隣接ノード監視部22は、通信回線で接続されているSIPサーバが正常か異常(故障/輻輳/工事中)かを監視する。例えばP−CSCF−#1の隣接ノード監視部22は、隣接するI−CSCF#1、I−CSCF#3の状態を監視する。I−CSCF#1の隣接ノード監視部22は、P−CSCF#1、I−CSCF#2の状態を監視する。I−CSCF#3の隣接ノード監視部22は、P−CSCF#1、I−CSCF#2の状態を監視する。例えば、P−CSCF#1の隣接ノード監視部22は、P−CSCF#1、I−CSCF#2の状態を監視する。
【0103】
前述のように、各SIPサーバは隣接SIPサーバの異常状態を検出した時の迂回先サーバ(迂回ホップ)を経路情報テーブル21に設定しておく。例えば、P−CSCF#1の隣接サーバは、I−CSCF#1、I−CSCF#3であり、経路情報テーブル21には、I−CSCF#1(I−CSCF#3)の異常状態を検出した時の迂回先サーバがI−CSCF#3(I−CSCF#1)であると設定される。
【0104】
S2:P−CSCF#1のテーブル更新部23は、隣接ノード監視部22がI−CSCF#1の異常(例えば、故障)を検出したなら、経路情報テーブル21におけるI−CSCF#1の状態を正常状態から異常状態に変更する。
【0105】
S3:P−CSCF#1は、ローミング端末(SIP−UA_A)からホーム網の端末(SIP−UA_B)へのINVITE信号を受信する。P−CSCF#1の迂回処理部24は、このINVITE信号をルート情報に基づいてI−CSCF#1に送信するに際し、I−CSCF#1が正常か異常かを経路情報テーブル21を参照して判断する。迂回処理部24は、当該隣接ノードが異常であるなら、経路情報テーブル21から同じ目的地の部分を選択し、当該部分において正常となっている別の隣接ノード(ここではI−CSCF#3)をINVITE信号の迂回先として選択する。
【0106】
S4:P−CSCF#1は、受信したINVITE信号のルート情報に記載されているI−CSCF#1のアドレスを、迂回先として選択したI−CSCF#3のアドレスに置き換え、INVITE信号をI−CSCF#3に送信する。
【0107】
なお、正常となっている別の隣接ノードが複数ある場合は、予め設定した優先順位の最高のノードを迂回先とすればよく、または、迂回先をランダムに選択してもよい。
【0108】
S5:I−CSCF#3は、P−CSCF#1からINVITE信号を受信する。そして、I−CSCF#3は、ルート情報から転送先がI−CSCF#2と判断し、ルート情報から自身のアドレスを削除し、INVITE信号をI−CSCF#2に転送する。
【0109】
S6:I−CSCF#2は、I−CSCF#3からINVITE信号を受信する。そして、I−CSCF#2は、ルート情報から転送先がI−CSCF#4と判断し、ルート情報から自身のアドレスを削除し、INVITE信号をI−CSCF#4に転送する。
【0110】
S7:I−CSCF#4は、I−CSCF#2からINVITE信号を受信する。I−CSCF#4の受信処理部13は、対応関係表11から、INVITE信号のルート情報に記載されたダミー値(SIP:A.home.net)に対応する経路情報を読み出し、ダミー値を経路情報に置き換え、置き換え後のINVITE信号をルート情報に基づいて、C−CSCFに転送する。
【0111】
S8:C−CSCFは、INVITE信号に記載されている着電話番号から端末(SIP−UA_B)に着信する。
【0112】
尚、I−CSCF#1の異常を検出するのは隣接するP−CSCF#1とI−CSCF#2の2つのSIPサーバであり、ここではP−CSCF#1における迂回処理について説明を行った。I−CSCF#2においても同様の処理が行われるが、
図9で説明する。
【0113】
図9は、SIP−UA_BからSIP−UA_Aへの着信呼を疎通させる場合の処理の流れを示す。
【0114】
S1:各SIPサーバの隣接ノード監視部22は、通信回線で接続されているSIPサーバが正常か異常(故障/輻輳/工事中)かを監視する。図では、I−CSCF#2について記載しているが、他のSIPサーバにおいても同様の処理を行う。
【0115】
I−CSCF#2の隣接ノードは、I−CSCF#1、I−CSCF#3であり、I−CSCF#2の経路情報テーブル21には、I−CSCF#1(I−CSCF#3)の異常状態を検出した時の迂回先サーバがI−CSCF#3(I−CSCF#1)であると設定される。
【0116】
S2:I−CSCF#2のテーブル更新部23は、隣接ノード監視部22がI−CSCF#1の異常(例えば、故障)を検出したなら、経路情報テーブルのI−CSCF#1の状態を正常状態から異常状態に変更する。
【0117】
S3〜S5:
図6のS1〜S3と同様に処理がなされる。
【0118】
S6:I−CSCF#2は、I−CSCF#4からINVITE信号を受信する。迂回処理部24は、このINVITE信号をそのルート情報に基づいてI−CSCF#1に送信するに際し、I−CSCF#1が正常か異常かを経路情報テーブル21を参照して判断する。迂回処理部24は、当該隣接ノードが異常であるなら、経路情報テーブル21において同じ目的地の部分を選択し、当該部分において正常となっている別の隣接ノード(ここではI−CSCF#3)をINVITE信号の迂回先として選択する。
【0119】
なお、正常となっている別の隣接ノードが複数ある場合は、予め設定した優先順位の最高のノードを迂回先とすればよく、または、迂回先をランダムに選択してもよい。
【0120】
S7:I−CSCF#2は、受信したINVITE信号のルート情報に記載されているI−CSCF#1のアドレスを、迂回先として選択したI−CSCF#3のアドレスに置き換え、INVITE信号をI−CSCF#3に送信する。
【0121】
S8:INVITE信号はルート情報に基づいてルーチングされ、SIP−UA_Aに着信する。
【0122】
以上の説明のように、各SIPサーバは、隣接する隣接ノードごとに該隣接ノードが正常か異常かを記憶する経路情報テーブル21と、隣接ノードごとに該隣接ノードが正常か異常かを監視する隣接ノード監視部22と、隣接ノードの異常が検出されたなら、経路情報テーブル21において、当該隣接ノードの状態を正常状態から異常状態に変更するテーブル更新部23と、隣接ノードのいずれかに対する通信信号の送信に際し、当該隣接ノードが正常か異常かを経路情報テーブル21を参照して判断し、当該隣接ノードが異常であるなら、経路情報テーブル21において正常となっている別の隣接ノードを当該通信信号の迂回先として選択する迂回処理部24とを備えるので、レジスタリクエスト信号/応答信号によって経路を確定した後において、経路上のノードが故障などで使用できない場合であっても、通信途絶がなく、通信サービスを継続させることができる。
【0123】
特に、
図2に示した構成を兼ね備えるI−CSCF#2などにおいては、さらに、在圏網における経路情報がホーム網に漏洩することも回避できる。
【0124】
なお、本実施の形態においては、通信信号として、レジスタリクエスト信号、応答信号、INVITE信号を例にしたが、これに限らず、その通信網で使用される通信信号を用いればよい。すなわち、本発明において、通信信号はこれらの信号に限らない。
【0125】
また、ダミー値として、SIP:B.visited.netのような文字列を使用したが、これに限らず、他の形態のダミー値(例えば暗号など)を使用してもよい。また、ダミー値は、サーバのアドレスに限るものではない。