(54)【発明の名称】室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法、並びに前記組成物の硬化物を用いた自動車オイルシール、建築用シーラント、及び電気電子部品の製造方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接着促進剤(E)が、アミノアルキルアルコキシシラン、ケチミノアルキルアルコキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシラン、ウレイドアルキルアルコキシシランから選択されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。
前記オルガノシラン(B)が、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルプロピルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルエチルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルプロピルケトオキシム)シランから選択されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
エラストマー固形物へと硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物はよく知られている。典型的にかかる組成物は、反応性末端基(例えばシラノール基)を有するポリジオルガノシロキサンを、例えばアルケニルオキシシラン、オキシムシラン、アセトキシシラン、アルコキシシラン、又はアミノシランのようなポリジオルガノシロキサン用のオルガノシラン架橋剤と混合することにより得られる。これらの材料は、室温で大気水分にさらされると、ポリジオルガノシロキサンと反応したオルガノシラン架橋剤が加水分解し、相当するガスを放出することで硬化する。このような室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の重要な用途としては、例えば自動車用オイルシールや建築用防水シール材、ならびに電気電子部品が挙げられる。そのため、このような組成物には、一般に意匠性を保持するための外観や施工性のための性状、エラストマーとしての物性や機材との接着性が良好であることが求められる。
【0003】
上述のような室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物にはエラストマーのみでは得られないようなゴム物性や耐薬品性、接着性を与えるために充填材が用いられる。充填材は通常、さまざまな粒子径を有し、それら表面は無処理のものや脂肪酸等の処理剤にて処理されたものが用いられている。このような充填材としては、例えば乾式シリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、重質炭酸カルシウム、コロイド質炭酸カルシウム、アルミナ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、カーボンブラック、チタニア、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、クレー及びマイカ等が挙げられ、それら全ては、硬化物に機械的強度や耐薬品性、接着性を与える目的で用いられる。
【0004】
さらに、上述のような室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、様々な基材、特に金属(アルミや鉄等)やプラスチック(ポリブチレンテレフタレートやポリカーボネート、変性ポリプロピレンオキサイド等)に対する接着性を高めるために、接着促進剤を添加することが一般的である。標準的に用いられる接着促進剤としては、例えば、アミノアルキルアルコキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシラン及びそれらの誘導体等のアルコキシシランが挙げられる。
【0005】
また、接着促進剤として用いられてきた化合物の別の群としては、例えば、特許文献1〜3に示されるような、イソシアヌレートを含むケイ素化合物が挙げられる。このような化合物は、典型的に下記一般式(3)で表される構造を含有する。
【化1】
(式中、D置換基の1つは、−R−Si(R
4)
p(OR
4)
3−p(ここでRは、アルキレンアリーレン、アルキレン、シクロアルキレン及びそれらのハロゲン置換誘導体から選択される二価の炭化水素基であり、R
4は、8個以下の炭素原子を有するアルキル又はハロアルキル基であり、pは、0〜3である。)であり、残りのD置換基は、上述の−R−Si(R
4)
p(OR
4)
3−p、スチリル、ビニル、アリル、クロロアリル又はシクロヘキセニルから選択される基である。)
【0006】
ただし、必ずしも室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に接着促進剤を添加すれば、期待する接着性が得られるとは限らない。そこで、期待する接着性を得るために充填材を併用する場合が多い。しかし、充填材を用いることで、シリコーンオイル中に分散させる際、充填材同士が凝集してしまい意匠性を損なう、分散性の低下によってチキソ性が低下し、形状保持性が悪化する(流動してしまう)等の問題が生じる場合がある。この傾向を低減するために、例えば脂肪酸、オルガノクロロシラン、オルガノポリシロキサン、及びヘキサメチルジシラザン等の疎水化剤によって表面を疎水化処理した充填材が使用されている。そのような表面処理を施した充填材を使用することで、形状保持性はある程度向上するが、一方で、その効果が充分でない、表面処理された充填材の価格が高騰する等の問題がある。
【0007】
また、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の性状をコントロールするための技術としては、これまでに工程や原料添加方法を変更する方法が提案されている。一例を挙げると、特許文献4においては、接着促進剤であるアミノシランカップリング剤を充填材より先に添加することで、流動性が向上するという提案がなされている。また特許文献5においては、硬化触媒であるチタン触媒を硬化性ベースオイル中に先に添加し、その後無機質充填材であるシリカ粉末を添加することで、保存性や透明性・低温硬化性が向上し、また経時における粘度上昇を抑えることができるとの提案がなされている。
【0008】
形状保持性を向上させる技術としては、特許文献6において両末端水酸基を有するオルガノポリシロキサンにオキシムシランを添加し、無機充填材、硬化触媒の順序にて調製することで、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物のチキソ性が増し、形状保持性が向上できるという提案がなされている。しかし、この方法では脱オキシム型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物のみが得られ、他の硬化タイプ、例えば脱アセトン型や脱アルコール型、脱酢酸型には応用できないという制限があった。
【0009】
その問題を解決するため近年、特許文献7においては両末端水酸基を有するオルガノポリシロキサンにオルガノシランと硬化触媒を添加し、その後充填材、接着促進剤の順にて添加、混合することで、チキソ性の高い種々硬化タイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得ることができるという提案がなされている。しかし、本提案では特にバッチプロセスにおいては反応性が高いオルガノシラン、例えばビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン等のアルケニルオキシシラン類、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルプロピルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルエチルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルプロピルケトオキシム)シラン等のオキシムシラン類を用いた場合、同時に添加する硬化触媒により硬化が急激に進行する部分が生じ、釜内に硬化物ゲルが生じるほか、充填材を添加する際に空気中の湿気で硬化が進行したり、充填材が含有する水分にて硬化が進行してしまい、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が高粘度になったり、硬化物ゲルが混入するため意匠性が損なわれる問題が生じていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、チキソ性が高く、外観が良く、粘度安定性に優れた、種々硬化タイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明によれば、
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造するためのバッチプロセスであって、
1)ケイ素に結合している水酸基を2つ以上有するポリマー(A)と、下記一般式(1)で表されるオルガノシラン(B)を、混合機に入れて分散させ、ブレンドを作製する工程、
(R
1)
(4−n)Si(OR
2)
n (1)
(式中、R
1は炭素数1〜6のハロゲン置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基又はアリール基であり、R
2は炭素数1〜6の有機基であり、nは2、3又は4である。)
2)前記ブレンドに、硬化触媒(C1)を加え、分散させる工程、
3)さらに、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ、カーボン、チタニア、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、クレー及びマイカからなる群から選ばれる1種類以上の充填材(D)を添加し、分散させてベースを作製する工程、
4)前記ベースに、さらに硬化触媒(C2)を添加し、分散させる工程、及び
5)さらに、下記一般式(2)で表される1種類以上の接着促進剤(E)を添加し、最終生成物が十分に均質になるまで分散させる工程、
(R
3O)
(3−q)(R
3)
qSi−X (2)
(式中、R
3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のハロゲン置換もしくは非置換のアルキル基であり、Xはアミノ、ケチミノ、メルカプト、エポキシ、イソシアネート、ウレイド、アクリロキシ、メタクリロキシ及びそれらの混合物からなる群から選ばれる基によって官能基化された飽和、不飽和又は芳香族炭化水素基であり、qは0〜3の整数である。)
を有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法であれば、チキソ性が高く、外観が良く、粘度安定性に優れた、種々硬化タイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得ることができる。
【0014】
また、このとき、前記硬化触媒(C1)と前記硬化触媒(C2)の添加量が、C1≦C2となるよう添加することが好ましい。
【0015】
(C1)成分及び(C2)成分をこのような添加量とすることで、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に硬化物ゲルが混入しにくいため、意匠性やゴム物性が良好な室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得ることができる。
【0016】
また、このとき、前記工程2)〜5)のうち一つ以上の工程において、揮発成分を取り除く操作を行うことが好ましい。
【0017】
このように揮発成分を取り除く操作を行うことで、混合中に混入する泡を取り除くことができ、かつ得られる組成物の保存安定性が向上することも期待できる。
【0018】
また、このとき、前記接着促進剤(E)が、アミノアルキルアルコキシシラン、ケチミノアルキルアルコキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシラン、ウレイドアルキルアルコキシシランから選択されるものであることが好ましい。
【0019】
このような接着促進剤(E)であれば、より接着性に優れた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得ることができる。
【0020】
また、このとき、前記オルガノシラン(B)が、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルプロピルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルエチルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルプロピルケトオキシム)シランから選択されるものであることが好ましい。
【0021】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法であれば、オルガノシラン(B)として、このようなバッチプロセスにおいて反応性が高いアルケニルオキシシラン類やオキシムシラン類を用いて、チキソ性が高く、外観が良く、粘度安定性に優れた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得ることができる。
【0022】
また、本発明は、前記製造方法で得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物を用いた自動車オイルシールを提供する。
【0023】
また、本発明は、前記製造方法で得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物を用いた建築用シーラントを提供する。
【0024】
また、本発明は、前記製造方法で得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物を用いた電気電子部品を提供する。
【0025】
このように本発明の製造方法で得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物であれば、自動車オイルシール、建築用シーラント、及び電気電子部品等として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法であれば、従来チキソ性が低下する組成物配合においてもチキソ性が良好であり、外観も良いため意匠性に優れ、粘度安定性にも優れた種々硬化タイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得ることができる。また、本発明の製造方法では、硬化触媒の添加量を自由に決定できるため、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性の調整が非常に簡便である。また、本発明の製造方法で得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物はオイルシール、建築用シーラント、及び電気電子部品等として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上述のように、チキソ性が高く、外観が良く、粘度安定性に優れた、種々硬化タイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造する方法の開発が求められていた。
【0028】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討を重ねた結果、ケイ素に結合している少なくとも2つの水酸基を有するポリマー(A)と、オルガノシラン(B)を予め混合分散し、その後最低限必要な量の硬化触媒(C1)を添加することで、上記ポリマー(A)の水酸基とオルガノシラン(B)を穏やかに反応させることができるため、硬化物ゲルの混入を防ぐことができることを見出した。さらに、その後充填材(D)を添加し、混合分散することで高チキソ性の混合物が得られ、目的に応じた速硬化性を得るために追加の硬化触媒(C2)を、目的に応じた接着性を得るために接着促進剤(E)を添加することで、高チキソ性を維持しつつ目的に応じた速硬化性と接着性を有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化物ゲルの混入がなく製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
本発明は、
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造するためのバッチプロセスであって、
1)ケイ素に結合している水酸基を2つ以上有するポリマー(A)と、下記一般式(1)で表されるオルガノシラン(B)を、混合機に入れて分散させ、ブレンドを作製する工程、
(R
1)
(4−n)Si(OR
2)
n (1)
(式中、R
1は炭素数1〜6のハロゲン置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基又はアリール基であり、R
2は炭素数1〜6の有機基であり、nは2、3又は4である。)
2)前記ブレンドに、硬化触媒(C1)を加え、分散させる工程、
3)さらに、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ、カーボン、チタニア、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、クレー及びマイカからなる群から選ばれる1種類以上の充填材(D)を添加し、分散させてベースを作製する工程、
4)前記ベースに、さらに硬化触媒(C2)を添加し、分散させる工程、及び
5)さらに、下記一般式(2)で表される1種類以上の接着促進剤(E)を添加し、最終生成物が十分に均質になるまで分散させる工程、
(R
3O)
(3−q)(R
3)
qSi−X (2)
(式中、R
3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のハロゲン置換もしくは非置換のアルキル基であり、Xはアミノ、ケチミノ、メルカプト、エポキシ、イソシアネート、ウレイド、アクリロキシ、メタクリロキシ及びそれらの混合物からなる群から選ばれる基によって官能基化された飽和、不飽和又は芳香族炭化水素基であり、qは0〜3の整数である。)
を有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法である。
【0031】
[(A)成分]
(A)成分であるケイ素に結合している水酸基を2つ以上有するポリマーは種々の構造で表されるが、例えばその中でも最も単純な構造としては下記一般式(4)で表されるものが挙げられる。
HO(R
52SiO)
LH (4)
(式中、R
5はそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、及びそれらの水素原子の一部がハロゲン原子で置換された基であり、Lは10以上の整数である。)
【0032】
このようなR
5の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換基が挙げられる。
【0033】
また、Lは10以上の整数であり、このジオルガノポリシロキサンの23℃における粘度が100〜200,000mPa・sの範囲となる数が好ましく、より好ましくは23℃における粘度が500〜100,000mPa・sの範囲となる数である。
【0034】
また、(A)成分のポリマーは、組成物全体に対して約30〜90質量%の量で配合することが好ましく、より好ましくは約40〜60質量%である。(A)成分のポリマーを約30質量%以上の量で配合することで、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の機械的特性の低下を抑制することができる。また、90質量%以下の量で配合することで、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の形状保持性の低下を抑制することができる。
【0035】
[(B)成分]
(B)成分であるオルガノシランは、下記一般式(1)で表される。
(R
1)
(4−n)Si(OR
2)
n (1)
(式中、R
1は炭素数1〜6のハロゲン置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基又はアリール基であり、R
2は炭素数1〜6の有機基であり、nは2、3又は4である。)
【0036】
上記式中のR
1は炭素数1〜6のハロゲン置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基又はアリール基であり、このようなR
1としてはメチル基、ビニル基、フェニル基等が好ましい。
【0037】
(B)成分のオルガノシランは上記(A)成分の水酸基と反応し加水分解性基となるほか、後述する充填材(D)や製造中に混入する水分を除去するための原料であり、かつ得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の架橋剤となる。このようなオルガノシラン架橋剤は、アルケニルオキシ基、オキシム基、アセトキシ基、アルコキシ基を有するシランから選択されることが好ましい。その中でもより好ましくは、アルケニルオキシ基、オキシム基を有するシランである。
【0038】
このような(B)成分のオルガノシランの具体例としては、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン等のアルケニルオキシシラン類、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルプロピルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルプロピルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルプロピルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルエチルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルプロピルケトオキシム)シラン等のオキシムシラン類、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン等のアセトキシシラン類が挙げられる。
その中でも、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルプロピルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルエチルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルプロピルケトオキシム)シランから選択されることが好ましい。
【0039】
(B)成分のオルガノシランの添加量は、0.5〜5質量%が好ましく、より好ましくは1.5〜3質量%である。(B)成分のオルガノシランを0.5質量%以上の量で添加することで、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の経時における保存安定性の低下や、硬化物ゲル等の混入による意匠性の低下を抑制することができる。また、5質量%以下の量で添加することで、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の機械的特性の低下や、硬化の遅延を抑制することができる。
【0040】
[(C1)成分及び(C2)成分]
(C1)成分である硬化触媒は、(A)成分中に含まれる水酸基と(B)成分のオルガノシランとの反応を促進する目的で添加するものである。また(C2)成分の硬化触媒は、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物において速硬化性を付与する目的で添加するものである。
【0041】
ここで、硬化触媒(C1)と硬化触媒(C2)の添加量は、C1≦C2となるよう配合することが好ましい。このような添加量とすることで、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に硬化物ゲルが混入し意匠性やゴム物性の安定性が損なわれることを抑制できる。
【0042】
また、(C1)成分の硬化触媒と(C2)成分の硬化触媒は、同一であっても異種であってもよい。また、この硬化触媒は反応プロセスを促進すればどのような触媒種であってもよい。このような触媒としては、例えばアミン化合物や金属の有機塩が挙げられ、より具体的には(B)成分としてアルケニルオキシ基を有するオルガノシランを用いる場合はアミン系触媒が好ましく、(B)成分としてオキシム基、アセトキシ基、アルコキシ基を有するオルガノシランを用いる場合は、金属の有機塩を用いることが好ましい。
【0043】
このような触媒の具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン等の1級アミン類、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン等の2級アミン類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等の3級アミン類、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチル−2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]グアニジン等のグアニジン骨格を有するアミン類、ジメチルジメトキシスズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジベンジルマレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジバーサテート等の有機スズ化合物類、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、チタンテトラtert−ブトキシド、tert−アミルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート等の有機チタン化合物類、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート、ジルコニウムテトラアセチルアセテート、ジルコニウムモノアセチルアセテート等の有機ジルコニウム化合物類、アルミニウムテトライソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトエート等の有機アルミニウム化合物類、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物類、その他、ナフテン酸やオクチル酸の金属塩(具体的には亜鉛、カルシウム、マンガン、コバルト、カリウム、ニッケル、鉄、リチウム、バリウム、ジルコニウム等)が挙げられる。
【0044】
硬化触媒(C1)及び(C2)の合計の添加量は触媒種によっても異なるが、0.01〜1.0質量%が好ましく、より好ましくは0.02〜0.7質量%である。すなわち、硬化触媒(C1)は0.01質量%以上、0.5質量%未満となる量が好ましい。硬化触媒を0.01質量%以上の量で添加することで、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性の低下や未硬化となることを抑制することができる。また、1.0質量%以下の量で添加することで、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性が適度であるため、作業性の悪化や、硬化物ゲルの混入による意匠性の低下を抑制することができる。
【0045】
[(D)成分]
(D)成分である炭酸カルシウム、アルミナ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ、カーボン、チタニア、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、クレー及びマイカからなる群から選ばれる充填材は、硬化後のゴム状弾性体に機械的強度や硬さを付与する目的で添加するものである。これら充填材は1種類で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
これら充填材の表面処理については制限を受けないが、より形状保持性を高めるためには表面処理を行った充填材を使用することが好ましい。しかしながら、表面処理をすることにより価格的に高騰するようであれば、無処理の充填材を使用してもよい。炭酸カルシウムの具体例としては、重質炭酸カルシウム、コロイド質炭酸カルシウム等が挙げられ、シリカの具体例としては、煙霧質シリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。
【0047】
(D)成分の充填材の添加量は、2〜60質量%が好ましく、より好ましくは5〜58質量%、さらに好ましくは8〜53質量%である。(D)成分の充填材を2質量%以上の量で添加することで、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の形状保持性の低下を抑制することができる。また、60質量%以下の量で添加することで、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の粘度の増加による作業性の悪化や、製造中に硬化しやすくなり、結果的に硬化物ゲルが混入することによる意匠性の低下を抑制することができる。
【0048】
[(E)成分]
(E)成分である接着促進剤は、下記一般式(2)で表される。
(R
3O)
(3−q)(R
3)
qSi−X (2)
(式中、R
3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のハロゲン置換もしくは非置換のアルキル基であり、Xはアミノ、ケチミノ、メルカプト、エポキシ、イソシアネート、ウレイド、アクリロキシ、メタクリロキシ及びそれらの混合物からなる群から選ばれる基によって官能基化された飽和、不飽和又は芳香族炭化水素基であり、qは0〜3の整数である。)
【0049】
上記接着促進剤は、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に良好な接着性を付与させる目的で添加する。接着促進剤は1種類で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
接着促進剤としては、上記一般式(2)中のXに指定官能基を有する公知のものを用いることができる。その具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノアルキルアルコキシシラン類、3−トリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)−1−プロパンアミンの部分加水分解物、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)−1−プロパンアミンの部分加水分解物等のケチミノアルキルアルコキシシラン類、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシシラン等のメルカプトアルキルアルコキシシラン類、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシアルキルアルコキシシラン類、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメキシシラン等のイソシアネートアルキルアルコキシシラン類、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドアルキルアルコキシシラン類、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシアルキルアルコキシシラン類、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシアルキルアルコキシシラン類が挙げられる。
【0051】
また、これらの中でも、アミノアルキルアルコキシシラン、ケチミノアルキルアルコキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシラン、ウレイドアルキルアルコキシシランから選択されるものであることが好ましい。
【0052】
(E)成分の接着促進剤の添加量は、0.2〜2質量%が好ましく、より好ましくは0.3〜1.5質量%、さらに好ましくは0.4〜1.2質量%である。(E)成分の接着促進剤を0.2質量%以上の量で添加することで、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の接着性の低下を抑制することができる。また、2質量%以下の量で添加することで、得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の機械的特性の低下を抑制でき、また添加量が少ないため経済的である。
【0053】
[任意の成分]
本発明の製造方法では、目的に応じて上記(A)〜(E)成分以外の任意の成分を添加することができる。その具体例としては、ゴム物性を調整するための末端未反応性ポリマーである可塑剤、着色するための顔料や染料、導電性や放熱性を付与するための金属粉、押し出し作業性を改良するための粘度調整剤、紫外線吸収剤、防かび剤、耐熱性向上剤、難燃化剤等が挙げられ、これらの各種添加剤を加えて室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造してもよい。
【0054】
[製造プロセス]
本発明の室温硬化性オルガノシロキサン組成物の製造方法は、バッチプロセスにて行われる。本発明のバッチプロセスは、
1)上記(A)成分のポリマーと上記(B)成分のオルガノシランを、混合機に入れて分散させブレンドを作製する工程、
2)前記ブレンドに上記硬化触媒(C1)を加え分散させる工程、
3)さらに、1種類以上の上記充填材(D)を添加し、分散させてベースを作製する工程、
4)前記ベースに、さらに上記硬化触媒(C2)を添加し、分散させる工程、及び
5)さらに、1種類以上の上記接着促進剤(E)を添加し、最終生成物が十分に均質になるまで分散させる工程、
を有する。
【0055】
本発明ではケイ素に結合している少なくとも2つの水酸基を有するポリマー(A)と、オルガノシラン(B)を予め混合して混合液を得た後、硬化触媒(C1)を混合し、充填材(D)を添加する。その後、使用される用途に応じて必要量の硬化触媒(C2)と接着促進剤(E)を添加することで、目的に応じた速硬化性及び接着性を有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得ることができる。
【0056】
また、硬化触媒(C2)と接着促進剤(E)成分は同時に添加しても、別々に添加してもよい。硬化触媒(C2)と接着促進剤(E)成分を同時に添加する場合制限はないが、硬化触媒(C2)と接着促進剤(E)を事前に混合せず添加するのが好ましい。
【0057】
また、上記の工程2)〜5)のうち一つ以上の工程において、揮発成分を取り除く操作を行うことが好ましい。
すなわち、工程2)、工程3)、工程4)、及び工程5)のそれぞれの工程で毎回揮発成分を取り除く操作を行ってもよいし、例えば工程2)、工程3)でのみ揮発成分を取り除く操作を行う、工程4)、工程5)でのみ揮発成分を取り除く操作を行う等でもよい。
【0058】
ここで「揮発成分」とは、工程中に発生する副生成物や、混合中に混入し得る空気その他の泡などが挙げられる。このように揮発成分を取り除く操作を行うことで、工程中に発生する副生成物や、混合中に混入する空気の泡等を取り除くことができ、かつ得られる組成物の保存安定性が向上することも期待できる。
【0059】
また、ここで「分散」とは、理想的には内部添加成分が均一に分散することが好ましいが、これを確認する方法は時間を要する。そこで、混合機内に添加した内部添加成分をある一定の回転速度(rpm)にて一定時間混合することを「分散」とした。回転数としては、2rpm以上にて約1分間以上混合し分散することが好ましく、5rpm以上にて約5分間以上混合し分散することがより好ましい。
【0060】
上記のような本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法であれば、従来チキソ性が低下する組成物配合においてもチキソ性が良好であり、外観も良いため意匠性に優れ、粘度安定性にも優れた種々硬化タイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得ることができる。また、本発明の製造方法では、硬化触媒の添加量を自由に決定できるため、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性の調整が非常に簡便である。
【0061】
また、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法で得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、自動車オイルシール、建築用シーラント、電気電子部品(例えば、電気電子用接着剤等)に好適に用いることができる。また、シール又は接着の形態としては、例えばFIPG(Formed In Place Gaskets)、シーリング材、接着剤等が挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例はすべてバッチプロセスにて行い、混合機としてはプラネタリミキサー((株)井上製作所製)を用いた。また、実施例中の部とはいずれも質量部を表す。また、特に記載のない粘度等の物性値は、23℃での値を示す。
【0063】
(実施例1)
1)(A)成分として粘度20,000mPa・sのα,ω−ビス−ジヒドロキシ−ジメチルポリシロキサン100質量部に、(B)成分としてビニルトリイソプロペノキシシランを5質量部加え、分散混合したのち、
2)(C1)成分として1,1,3,3−テトラメチル−2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]グアニジンを0.2質量部加え、減圧脱泡混合を行った。
3)その後、(D)成分として沈降性シリカ(商品名;クリスタライトVXS−2、(株)龍森社製)を100質量部、煙霧状シリカ(商品名;MU−215、信越化学工業(株)社製)を7質量部加え、減圧脱泡分散混合を行った。
4)その後、さらに(C2)成分として1,1,3,3−テトラメチル−2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]グアニジンを0.6質量部加え、減圧脱泡分散混合を行った。
5)その後、(E)成分として3−アミノプロピルトリエトキシシランを2質量部加え、減圧脱泡分散混合を行い目的とする組成物(i)を得た。
なお、各成分の質量%は、A;46.56質量%、B:2.33質量%、C1:0.09質量%、C2:0.28質量%、D:49.81質量%、E:0.93質量%であった。
【0064】
(実施例2)
1)(A)成分として粘度20,000mPa・sのα,ω−ビス−ジヒドロキシ−ジメチルポリシロキサン100質量部に、(B)成分としてビニルトリス(メチルプロピルケトオキシム)シランを6質量部加え、分散混合したのち、
2)(C1)成分としてジブチルスズジベンジルマレートを0.1質量部加え、減圧脱泡分散混合を行った。
3)その後、(D)成分として重質炭酸カルシウム(商品名;ホワイトンSSB、白石カルシウム(株)社製)を100質量部、煙霧状シリカ(商品名;MU−215、信越化学工業(株)製)を7質量部加え、減圧脱泡分散混合を行った。
4)その後、さらに(C2)成分としてジブチルスズジベンジルマレートを0.4質量部加え、減圧脱泡分散混合を行った。
5)その後、(E)成分として3−アミノプロピルトリエトキシシランを1.5質量部加え、減圧脱泡分散混合を行い目的とする組成物(ii)を得た。
なお、各成分の質量%は、A;46.51質量%、B:2.79質量%、C1:0.05質量%、C2:0.19質量%、D:49.76質量%、E:0.70質量%であった。
【0065】
(比較例1)
上記の実施例1において、工程2)を省いた以外は、実施例1と同様に操作を行い目的とする組成物(iii)を得た。
【0066】
(比較例2)
上記の実施例1において、工程1)中に(C1)成分として1,1,3,3−テトラメチル−2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]グアニジンを0.2質量部加えて、工程2)を省いた以外は、実施例1と同様に操作を行い目的とする組成物(iv)を得た。
【0067】
(比較例3)
1’)(A)成分として粘度20,000mPa・sのα,ω−ビス−ジヒドロキシ−ジメチルポリシロキサン100質量部に、
3’)(D)成分として沈降性シリカ(商品名;クリスタライトVXS−2、(株)龍森社製)を100質量部、煙霧状シリカ(商品名;MU−215、信越化学工業(株)社製)を7質量部加え、減圧脱泡分散混合を行った。
その後、(B)成分としてビニルトリイソプロペノキシシランを5質量部加え、混合したのち、
4)その後、さらに(C2)成分として1,1,3,3−テトラメチル−2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]グアニジンを0.4質量部加え、減圧脱泡分散混合を行った。
5)その後、(E)成分として3−アミノプロピルトリエトキシシランを2質量部加え、減圧脱泡分散混合を行い目的とする組成物(v)を得た。
【0068】
(比較例4)
上記の実施例1において、(C1)成分として1,1,3,3−テトラメチル−2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]グアニジン0.2質量部と、(C2)成分として実施例1の工程4)に使用した1,1,3,3−テトラメチル−2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]グアニジン0.6質量部とをすべて工程1)中に加えて、工程2)及び4)を省いた以外は、実施例1と同様に操作を行い目的とする組成物(vi)を得た。
【0069】
[試験方法]
上記のバッチプロセスにて室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造後、製造後の釜内部に硬化物ゲルの有無を目視にて確認した。得られた組成物の粘度は、製造直後と70℃に5日間保管した後にASTM D1092に準じて23℃における見掛け粘度を測定した。また上記の実施例1,2及び比較例1〜4で得られた組成物(i)〜(vi)を2mmの型枠に流し込み、23℃、50%RHで4日間養生して2mm厚のゴムシ−トを得た。その際、得られたゴムシートの外観を目視にて確認し、硬化物ゲルや充填材の凝集物の有無を確認した。JIS A 5758に規定する方法に準じてタックフリータイム(指触乾燥時間)を測定し、JIS K6249に準じて2mm厚シ−トよりゴム物性を測定した。また、この組成物より、幅25mm、長さ100mmのアルミ被着体を用いて接着面積2.5mm
2、接着厚さ1mmのせん断接着試験体を作製し、23℃、50%RHで4日間養生して測定を行いせん断接着力と凝集破壊率を確認した。硬化速度試験方法は、内径が10mmのガラスシャーレにサンプルを充填し、23℃、50%RHで1日後に空気に触れた部分から硬化した厚さを測定した。流動性の確認試験としては、混合直後とその2倍の時間した場合、また混合20分後の液状組成物を幅20×長さ150×深さ10mmのアルミチャンネルに充填後、直ちに垂直に立て掛けて液状組成物が流動する距離を測定し、移動距離3mm以下を合格とした。下記に実施例1,2及び比較例1〜4で得られた組成物(i)〜(vi)の試験結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示されるように、実施例1,2で調製した組成物は、装置内部や組成物中に硬化物ゲルが確認されず、また流動性も生じなかった。さらに、組成物の製造から5日後においても、製造直後からの粘度の変化が少なかった。それに対し、比較例1では工程2)を省いたため、ポリマー(A)とオルガノシラン(B)のみの状態で反応が行われず、流動性が生じた。さらに、比較例2,4においては、工程1)中に硬化触媒を添加したため、ポリマー(A)とオルガノシラン(B)との反応が急激に進行し、装置内及び組成物中に硬化物ゲルが発生・混入した。また、比較例3においては、ポリマー(A)と充填材(D)を混合後、オルガノシラン(B)、硬化触媒(C2)、接着促進剤(E)の順で混合したため、オルガノシラン(B)がポリマー(A)末端の水酸基のみではなく、充填材(D)の表面の水酸基等とも反応してしまい、流動性が生じた。さらに、接着促進剤(E)も充填材(D)の表面と反応してしまったため接着性が低下した。また、比較例1〜4では、組成物の製造から5日後には大きく粘度が上昇した。
【0072】
以上のように、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法であれば、装置内部や組成物中に硬化物ゲルが発生しないため外観が良好であり、流動性が生じることがなく(すなわちチキソ性が良好であり)、また接着性も良好で、粘度安定性にも優れた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得ることができる。
【0073】
以上のことから、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法であれば、従来チキソ性が低下する組成物配合においてもチキソ性が良好であり、外観も良いため意匠性に優れ、粘度安定性にも優れた種々硬化タイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得ることができることが明らかとなった。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。