特許第6031197号(P6031197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031197
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】塗工液、それを用いた物品及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 181/00 20060101AFI20161114BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161114BHJP
   C09D 11/10 20140101ALI20161114BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20161114BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20161114BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   C09D181/00
   C09D7/12
   C09D11/10
   C09D11/30
   B41M5/00 E
   B41J2/01 501
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-542577(P2015-542577)
(86)(22)【出願日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】JP2014076677
(87)【国際公開番号】WO2015056591
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2016年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-217704(P2013-217704)
(32)【優先日】2013年10月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲澤 大助
(72)【発明者】
【氏名】星野 勝義
(72)【発明者】
【氏名】田川 麗央
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−049246(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/131747(WO,A1)
【文献】 特開平08−201978(JP,A)
【文献】 特開平08−160568(JP,A)
【文献】 特開平03−179023(JP,A)
【文献】 特開2010−018698(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/021405(WO,A1)
【文献】 特開昭63−101414(JP,A)
【文献】 KOCHEM, K.H. et al.,New materials for the antistatic coating of films,Kunststoffe German Plastics,1992年,Vol.82,No.7,p.13-16
【文献】 FELDHUES,M. et al.,Polyalkoxythiophenes soluble electrically conducting polymers.,Synthetic Metals,1989年,Vol.28 No.1/2,p.C487-C493
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B41J 2/01
B41M 1/30
B41M 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリチオフェンを含有することを特徴とし、
前記ポリチオフェンに対して、塩化物イオン又は過塩素酸イオンがドーピングされたメタリック調塗膜形成用塗工液。
【化1】
(式中のRは水素原子表し、Rメトキシ基を表す。また、nは3〜100の整数を表す。)
【請求項2】
前記ポリチオフェンを0.05〜15質量%含有する請求項1載のメタリック調塗膜形成用塗工液。
【請求項3】
請求項1又は2記載のメタリック調塗膜形成用塗工液から形成された塗膜を基材上に有することを特徴とする物品。
【請求項4】
請求項1又は2記載のメタリック調塗膜形成用塗工液が基材上に印刷された印刷物。
【請求項5】
請求項1又は2記載のメタリック調塗膜形成用塗工液をグラビア印刷によって基材上に印刷することを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2記載のメタリック調塗膜形成用塗工液をインクジェット印刷によって基材上に印刷することを特徴とする印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を用いて粒状感のない均一なメタリック調塗膜が得られ、かつ保存安定性に優れる塗工液、該塗工液を用いて塗工された物品、及び該塗工液を用いて有版又は無版印刷方式で印刷された印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の意匠性を向上するため、アルミニウムフレーク、ブロンズフレーク、マイカフレーク、雲母状酸化鉄、金属酸化物を被覆した雲母状酸化鉄、金属酸化物を被覆したマイカフレーク等のメタリック顔料を配合したメタリック塗料を用いて、物品の外観をメタリック調に塗装している。このメタリック調を出すために用いられているメタリック顔料は粒子であるため、メタリック調の意匠は得られるものの、金属メッキのような粒状感のないものは得にくいという問題があった。また、メタリック塗料中の他の成分との比重差によりメタリック顔料が沈降するため、保存安定性に問題があり、メタリック顔料がメタリック塗料中で凝集し、メタリック感が低下する問題もあった。
【0003】
また、食品包装等のパッケージにメタリック調の文字、絵柄をグラビア印刷するため、メタリックグラビアインキが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。このメタリックグラビアインキも同様にメタリック顔料が配合されているため、メタリック塗料と同様の問題を有していた。
【0004】
一方、無版印刷方式であるインクジェット印刷によって、メタリックインクジェットインクを用いて、メタリック調の文字、絵柄を印刷することも行われている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、インクジェット印刷は、ノズルよりインクを噴射して被印刷物に付着する方式であるため、インク中にメタリック顔料が凝集すると、それがノズル詰まりの原因となる問題があった。
【0005】
そこで、粒状感のない均一なメタリック調塗膜が得られ、保存安定性に優れ、メタリック塗料、メタリックグラビアインキ、メタリックインクジェットインク等に用いることができる塗工液が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−8268号公報
【特許文献2】特開2007−46034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、粒状感のない均一なメタリック調塗膜が得られ、かつ保存安定性に優れる塗工液、該塗工液を用いて塗工された物品、及び該塗工液を用いて有版又は無版印刷方式で印刷された印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、チオフェン環に特定の置換基を有するポリチオフェンを、金属光沢を発現する着色材料として用いることで、保存安定性に優れる塗工液が得られ、該塗工液を用いて塗工された物品や該塗工液を用いて有版又は無版印刷方式で印刷された印刷物は、粒状感のない均一なメタリック調塗膜が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるポリチオフェンを含有することを特徴とする塗工液、該塗工液を用いて塗工された物品、及び該塗工液を用いて有版又は無版印刷方式で印刷された印刷物を提供するものである。
【化1】
(式中のRは水素原子、アルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基を表し、Rはアルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基を表す。また、nは3〜100の整数を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗工液は、メタリック調を発現する材料として、メタリック顔料を用いず、有機化合物であるポリチオフェンを用いているため、塗料、グラビアインキ、インクジェットインク等に用いた場合、塗料等に含まれる他の成分と比重差がメタリック顔料より少ないことから、沈降することなく保存安定性に優れている。また、本発明に用いるポリチオフェンは、溶剤系であっても、水系であってもほぼ溶解した状態であるため、メタリック顔料のように粒状感のあるメタリック調ではなく、金属メッキのような均一なメタリック調塗膜を得ることができる。さらに、メタリック顔料のように凝集することもないことから、得られる塗膜のメタリック調が経時的に低下することもなく、またインクジェット印刷に用いるインクジェットインクとして用いた場合、ノズル詰まりを生じることもない。
【0011】
上記のような特長を有していることから、本発明の塗工液は、メタリック塗料、メタリックグラビアインキ、メタリックインクジェットインク等として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の塗工液は、下記一般式(1)で表されるポリチオフェン(以下、「置換ポリチオフェン(1)」と略記する。)を含有するものである。
【化2】
(式中のRは水素原子、アルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基を表し、Rはアルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基を表す。また、nは3〜100の整数を表す。)
【0013】
なお、上記一般式(1)中のR及びRは、上記一般式(1)に含まれる繰り返し単位を180度回転すると互いに入れ替わる関係にあり、置換ポリチオフェン(1)は、R及びRが、上記式(1)で示した配置から互いに入れ替わった配置を有する繰り返し単位を含んでいてもよい。すなわち、置換ポリチオフェン(1)は、全ての繰り返し単位においてRとRの互いの位置関係が同じであってもよいし、適宜選択される少なくとも一つの繰り返し単位において上記一般式(1)で示したRとRの位置が逆になっていてもよい。
【0014】
前記置換ポリチオフェンは、下記一般式(2)で表される置換チオフェン化合物(以下、「置換チオフェン化合物(2)」と略記する。)の2分子以上が互いに結合して重合したものである。
【化3】
(式中のRは水素原子、アルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基を表し、Rはアルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基を表す。)
【0015】
置換チオフェン化合物(2)において、Rは水素原子、アルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基であり、Rはアルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基であるが、Rは水素原子であることが好ましく、Rはアルコキシ基であることが好ましい。また、置換ポリチオフェン(1)を合成するにあたって、その原料である置換チオフェン化合物(2)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0016】
置換チオフェン化合物(2)において、R、Rのいずれか、もしくは両方がアルコキシ基である場合、アルキル鎖の炭素原子数は1〜10であることが好ましく、1〜4がより好ましい。アルコキシ基を有する置換チオフェン化合物(2)の具体例としては、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−プロポキシチオフェン、3−イソプロポキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3−メトキシ−4−エトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン等が挙げられる。
【0017】
置換チオフェン化合物(2)において、R、Rのいずれか、もしくは両方がアミノ基である場合、置換チオフェン化合物(2)の具体例としては、3−アミノチオフェン、3,4−ジアミノチオフェン、3−(N−メチルアミノ)チオフェン、3−(N,N−ジメチルアミノ)チオフェン、3−(N−エチルアミノ)チオフェン、3−(N,N−ジエチルアミノ)チオフェン、3−(N,N−プロピルアミノ)チオフェン、3−(N,N−ジブチルアミノ)チオフェン、3,4−ビス(N,N−ジメチルアミノ)チオフェン、3,4−ビス(N,N−ジエチルアミノ)チオフェン等が挙げられる。
【0018】
置換チオフェン化合物(2)において、Rが水素原子以外であり、R及びRの置換基の種類が異なる場合、置換チオフェン化合物(2)の具体例としては、3−アミノ−4−メチルチオフェン、3−アミノ−4−ヒドロキシチオフェン、3−メチル−4−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシ−4−アミノチオフェン、3−メトキシ−4−メチルチオフェン、3−メトキシ−4−ヒドロキシチオフェン等が挙げられる。
【0019】
置換ポリチオフェン(1)を表す一般式(1)中のnは、置換チオフェン化合物(2)を単位とする繰り返し単位数を表し、その範囲は3〜100である。また、より優れたメタリック調の塗膜を得るためには、繰り返し単位数nは3〜40の範囲が好ましい。
【0020】
置換ポリチオフェン(1)は、置換チオフェン化合物(2)を原料として、化学重合法又は電解重合法によって製造することができる。本発明における「化学重合法」とは、溶媒存在下で置換チオフェン化合物(2)と酸化剤を投入し、液相、固相、液相と固相の界面又はその両相において重合が行われる方法をいう。また、「電解重合法」とは、溶媒存在下で置換チオフェン化合物(2)と電解質を投入し、陽極として白金、金等を用い、陰極として白金、ニッケル等を用いて、それらの電極を液中に挿入し、電解液に電圧を印加することによって電極上で重合が行われる方法をいう。
【0021】
化学重合法において用いる酸化剤と、電解重合法で用いる電解質とは、同様なものが使用でき、各種金属塩を用いることができる。前記金属塩としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、錫、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、セリウム、ネオジム等の金属のフッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、アンモニウム塩、硫酸塩、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、クロム酸塩、重クロム酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラフルオロ硼酸塩等が挙げられる。これらの中でも、過塩素酸鉄(III)、塩化鉄(III)が好ましい。
【0022】
置換ポリチオフェン(1)の製造において、化学重合法で用いた酸化剤、又は電解重合法で用いた電解質由来の陰イオンがドーパントとしてポリチオフェン骨格に導入される場合がある。このドーパントが、ポリチオフェン骨格内にあるカチオン部位と相互作用して安定化し、本発明の塗工液を塗工・印刷した際に、塗膜表面で置換ポリチオフェン(1)の分子配向が促進され、メタリック調塗膜がより得られやすくなる。このように、本発明の塗工液は、置換ポリチオフェン(1)に対して陰イオンがドーピングされたものであることが好ましい。
【0023】
化学重合法で用いる溶媒は、置換チオフェン化合物(2)が十分に溶解するものが好ましく、電解重合法で用いる溶媒は、置換チオフェン化合物(2)及び電解質が十分に溶解するものが好ましい。また、酸化剤については十分に溶解しない状態であっても酸化剤の表面で重合反応が進行するので、化学重合法で用いる溶媒は、酸化剤が十分に溶解する溶媒でなくてもよいが、十分に溶解するものが好ましい。化学重合法、及び電解重合法で用いる溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0024】
また、化学重合法における置換チオフェン化合物(2)と酸化剤の使用量、及び電解重合法における置換チオフェン化合物(2)と電解質の使用量は、置換ポリチオフェン(1)の分子配向がより促進され、メタリック調塗膜がより得られやすくなることから、置換チオフェン化合物(2)1モルに対し、酸化剤又は電解質が0.25〜15モルの範囲が好ましく、0.5〜10モルの範囲がより好ましい。
【0025】
上記の化学重合法又は電解重合法によって得られる置換ポリチオフェン(1)は、着色した固形分として反応液中に沈殿して得られる。沈殿した置換ポリチオフェン(1)は、濾過、洗浄後、減圧乾燥等の乾燥工程を経て回収することで得られる。得られた置換ポリチオフェン(1)を塗料、グラビアインキ、インクジェットインク等の用途ごとに求められる特性(例えば、乾燥速度や環境・人体への毒性)に応じた溶媒に溶解させることにより、本発明の塗工液が得られる。
【0026】
本発明の塗工液は、置換ポリチオフェン(1)を0.05〜15質量%含有することが好ましい。本発明の塗工液は、用途ごとに求められる特性に応じて適宜調製されるが、上記の範囲では本発明の効果が十分に得られる。
【0027】
本発明の塗工液をメタリック塗料として用いる場合、メタリック塗料中の各成分の組成としては、例えば、置換ポリチオフェン(1)0.25〜15質量部、ビヒクル10〜50質量部、溶剤50〜90質量部、その他添加剤5質量部以下で構成されるものが挙げられる。
【0028】
前記ビヒクルとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、マレイン酸樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。これらのビヒクルは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。ここで、本発明の塗工液は、メタリック調の塗膜を得るために、塗膜とするためにビヒクルが必要なメタリック顔料を用いず、代わりに自己成膜性を有する置換ポリチオフェン(1)を用いるため、必ずしもビヒクルは必要ではない。ビヒクルを用いない場合、メタリック塗料中の各成分の組成としては、例えば、置換ポリチオフェン(1)0.25〜10質量部、溶剤90〜99.5質量部、その他添加剤5質量部以下で構成されるものが挙げられる。
【0029】
前記溶剤としては、例えば、水;エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル等のエステル溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶剤;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソルブアセテート等のエーテル溶剤;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール及びそのエステル化合物;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のジグリム溶剤;トリクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環式エーテル溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0030】
前記その他添加剤としては、例えば、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤、防黴剤、防腐剤、ワックス等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0031】
本発明の塗工液をメタリック塗料として用いる場合の塗工方法としては、例えば、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、カーテンコーター、シャワーコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー、アプリケーター、バーコーター等が挙げられる。本発明の塗工液は、これらの塗工方法に応じた適正な粘度とするために、前記溶剤で希釈して用いることが好ましい。
【0032】
本発明の物品は、本発明の塗工液から形成された塗膜を基材上に有するものであるが、本発明の塗工液をメタリック塗料として用いる場合の物品の基材としては、プラスチック基材、金属基材、ガラス基材、各種建材、ゴム基材等が挙げられる。
【0033】
前記プラスチック基材の素材となる樹脂としては、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等の汎用プラスチック;ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン(U−PE)、ポリフッ化ビニリデン等のエンジニアリングプラスチック;ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等のスーパーエンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。また、前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂を素材としたプラスチック基材の形状は、成形されたものでもフィルム又はシート状のものでもよい。
【0034】
前記金属基材としては、例えば、圧延鋼材、熱間圧延軟鋼板、冷間圧延鋼板、溶融亜鉛鍍金鋼板、ブリキ、電気亜鉛鍍金鋼板、クロムモリブデン鋼鋼材、冷間圧延ステンレス鋼板、炭素工具鋼鋼材、高炭素クロム軸受鋼鋼材、銅板、りん青銅版、アルミニウム合金板、マグネシウム合金板、ニッケル合金板、チタン合金板等が挙げられる。
【0035】
前記ガラス基材としては、例えば、フロート板ガラス等が挙げられる。また、前記各種建材としては、例えば、スレートボード、ケイ酸カルシウム板、スラグ石膏板、モルタル板等が挙げられる。
【0036】
前記ゴム基材の材質としては、例えば、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレン・プロピレンジエンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらのゴム基材の形状は、成形されたものでもフィルム又はシート状のものでもよい。
【0037】
本発明の物品の基材をプラスチック基材、金属基材とする場合、基材への本発明の塗工液の塗膜の密着性を向上させるため、基材表面にプライマーを予め塗工しておいてもよい。プライマーとしては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、水性ウレタン樹脂等を用いたプライマーが挙げられる。
【0038】
また、本発明の塗工液の塗膜の耐久性を向上させるため、該塗膜上にトップコート層を設けてもよい。トップコート層とする塗剤に用いる樹脂としては、例えば、石油系樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、フッ素樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、ビニル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0039】
本発明の物品は、印刷物であってもよい。本発明の印刷物の一態様としては、本発明の塗工液をグラビア印刷によって基材上に印刷して得られたものが挙げられる。本発明の塗工液をメタリックグラビアインキとして用いる場合、メタリックグラビアインキ中の各成分の組成としては、例えば、置換ポリチオフェン(1)0.25〜10質量部、ビヒクル5〜40質量部、溶剤50〜90質量部、その他添加剤5質量部以下で構成されるものが挙げられる。
【0040】
前記ビヒクルとしては、例えば、トール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン、ライムロジン、ロジンエステル、マレイン酸樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらのビヒクルは、溶媒に溶解したものも溶媒に分散したものも用いることができる。また、これらのビヒクルは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。ここで、上記の本発明の塗工液をメタリック塗料として用いる場合と同様、必ずしもビヒクルは必要ではないため、ビヒクルを用いない場合、メタリックグラビアインキ中の各成分の組成としては、例えば、置換ポリチオフェン(1)0.25〜10質量部、溶剤90〜99.5質量部、その他添加剤3質量部以下で構成されるものが挙げられる。
【0041】
本発明の塗工液をメタリックグラビアインキとして用いる場合に使用する溶剤及びその他の添加剤は、上記のメタリック塗料として用いる場合と同様のものを用いることができる。
【0042】
本発明の印刷物のうち、グラビア印刷によるものは、本発明の塗工液をメタリックグラビアインキとして用いて、被印刷基材にグラビア印刷したものである。前記被印刷基材としては、プラスチックフィルム基材、紙基材等が挙げられる。前記プラスチックフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリル共重合体フィルム;これらのフィルムに用いられる複数の樹脂を共押出したフィルム;これらのフィルムをベースとしてバリア性を付与するためにポリ塩化ビニリデン等の樹脂のコーティングをしたフィルム;アルミニウムなどの金属、シリカ、アルミナ等の無機化合物を蒸着したフィルム等が挙げられる。
【0043】
また、前記紙基材としては、例えば、アート紙、コート紙、マット紙、上質紙、中質紙等が挙げられるが、これらの中でも、表面が平滑なアート紙、コート紙は、本発明の塗工液を印刷することにより、より優れたメタリック調の印刷物が得られることから好ましい。
【0044】
本発明の塗工液をメタリックグラビアインキとして用いて、プラスチックフィルム基材にグラビア印刷する際には、上記のメタリック塗料として用いる場合と同様に、基材表面に、プライマーを予め塗工しておいてもよい。また、本発明の塗工液をグラビア印刷することによって得られた塗膜上に、同様にトップコート層を設けてもよい。
【0045】
本発明の印刷物の一態様としては、本発明の塗工液をインクジェット印刷によって基材上に印刷して得られたものが挙げられる。本発明の塗工液をメタリックインクジェットインクとして用いる場合、メタリックインクジェットインク中の各成分の組成としては、例えば、置換ポリチオフェン(1)0.05〜7.5質量部、ビヒクル1〜10質量部、溶剤85〜98質量部、その他添加剤5質量部以下で構成されるものが挙げられる。各成分の組成がこの範囲であれば、より優れたメタリック感を有する塗膜が得られ、インクジェットプリンターのノズルヘッドからのインクの吐出安定性もより安定したものとすることができる。
【0046】
前記ビヒクルとしては、上記の本発明の塗工液をメタリックグラビアインキとして用いる場合と同様のものを用いることができる。また、上記の本発明の塗工液をメタリック塗料及びメタリックグラビアインキとして用いる場合と同様、必ずしもビヒクルは必要ではないため、ビヒクルを用いない場合、メタリックインクジェットインク中の各成分の組成としては、例えば、置換ポリチオフェン(1)0.05〜7.5質量部、溶剤90〜99.5質量部、その他添加剤5質量部以下で構成されるものが挙げられる。各成分の組成がこの範囲であれば、より優れたメタリック感を有する塗膜が得られ、インクジェット印刷機のノズルヘッドからのインクの吐出安定性もより安定したものとすることができる。
【0047】
本発明の塗工液をメタリックインクジェットインクとして用いる場合に使用する溶剤としては、水の他に、インクの乾燥防止を目的とする湿潤性を有する溶剤を用いることが好ましい。この湿潤性溶剤としては、水との混和性があり、インクジェットプリンターのヘッドの目詰まり防止効果が得られるものが好ましく、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、前記湿潤性溶剤のメタリックインクジェットインク中の含有量は、3〜50質量%の範囲が好ましい。
【0048】
さらに、被印刷基材への浸透性改良や被印刷基材上でのドット径調整機能を有する溶剤を添加することが好ましい。このような溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;エチレングリコールヘキシルエーテルやジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物;プロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物などが挙げられる。これらの溶剤も同様に、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、このような溶剤のメタリックインクジェットインク中の含有量は、0.01〜10質量%の範囲が好ましい。
【0049】
本発明の塗工液をメタリックインクジェットインクとして用いる場合に使用するその他の添加剤としては、表面張力等のインク特性を調整するために添加する界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0050】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等が挙げられる。
【0051】
前記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。
【0052】
上記以外の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も用いることができる。
【0053】
上記の界面活性剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、界面活性剤の溶解安定性等が向上することから、そのHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値は、7〜20の範囲であることが好ましい。また、界面活性剤を添加する場合の添加量は、インク全量中に0.001〜2質量%の範囲が好ましく、0.001〜1.5質量%の範囲がより好ましく、0.01〜1質量%の範囲がさらに好ましい。
【0054】
また、上記の界面活性剤以外のその他の添加剤として、必要に応じて防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0055】
上記のメタリックインクジェットインクの表面張力は、インクジェットプリンターでの印刷適性がより向上することから、20〜60mN/mの範囲が好ましく、20〜45mN/mの範囲がより好ましく、20〜40mN/mの範囲がさらに好ましい。
【0056】
また、上記のメタリックインクジェットインクの粘度は、インクジェットプリンターでの吐出安定性がより向上することから、1.2〜20mPa・sの範囲が好ましく、2〜15mPa・sの範囲がより好ましい。なお、メタリックインクジェットインクの表面張力及び粘度は、配合する界面活性剤や水溶性溶媒の種類や添加量を調整することにより、上記の好ましい範囲内にすることができる。
【0057】
本発明の印刷物のうち、インクジェット印刷によるものは、本発明の塗工液をメタリックインクジェットインクとして用いて、被印刷基材にインクジェット印刷したものである。前記被印刷基材としては、普通紙(再生紙を含む)、コート紙、多孔性微粒子系光沢紙、フィルムベース高分子系光沢紙、紙ベース多孔性微粒子系光沢紙、ポリエチレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリル共重合体フィルム;これらのフィルムに用いられる複数の樹脂を共押出したフィルム;これらのフィルムをベースとしてバリア性を付与するためにポリ塩化ビニリデン等の樹脂のコーティングをしたフィルム;アルミニウムなどの金属、シリカ、アルミナ等の無機化合物を蒸着したフィルムなどが挙げられる。
【0058】
本発明の塗工液をメタリックインクジェットインクとして用いて、プラスチックフィルム基材にインクジェット印刷する際には、上記のメタリック塗料及びメタリックグラビアインキとして用いる場合と同様に、基材表面に、プライマーを予め塗工してプライマー層を設けておいてもよい。前記プライマー層としては、2液硬化型ウレタン樹脂、水性ウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、活性エネルギー線硬化性ビニルモノマー等の塗膜又は硬化塗膜が挙げられる。また、本発明の塗工液をインクジェット印刷することによって得られた塗膜上に、同様にトップコート層を設けてもよい。
【実施例】
【0059】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により下記の条件で測定したものである。
【0060】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:N−メチルピロリドン
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0061】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0062】
<合成例1>
容量50mlの三角フラスコに、酸化剤として過塩素酸鉄(III)6.5g、アセトニトリル7.3gを加え、攪拌して濃度1Mの溶液を調製した。つぎに、窒素導入管、アリーン冷却管を装着した容量100mlの三口フラスコに、3−メトキシチオフェン1.0g、アセトニトリル12.8gを加え、窒素ガスを液中に導入しながらフラスコを氷浴に浸し、30分間攪拌して濃度0.5Mの溶液を調製した。このあと氷浴を外して液温を20℃まで上げた後、前述の1M−過塩素酸鉄(III)アセトニトリル溶液を三口フラスコ中に注ぎ、20℃で4時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を桐山漏斗で濾過し、更にメタノールによる残渣洗浄を行って酸化剤を除去した。洗浄後に得られた残渣を真空乾燥し、金属光沢を発現するポリチオフェン系化合物(S−1)の青紫色固体を収率80%で得た。ポリチオフェン系化合物(S−1)の重量平均分子量Mwは1,600であった。
【0063】
<合成例2>
容量50mlの三角フラスコに、酸化剤として塩化鉄(III)9.5g、アセトニトリル4.3gを加え、攪拌して濃度2Mの溶液を調製した。つぎに、窒素導入管、アリーン冷却管を装着した容量100mlの三口フラスコに、3−メトキシチオフェン1.0g、アセトニトリル12.8gを加え、窒素ガスを液中に導入しながらフラスコを氷浴に浸し、30分間攪拌して濃度0.5Mの溶液を調製した。このあと氷浴を外して液温を50℃まで上げた後、前述の2M−塩化鉄(III)アセトニトリル溶液を三口フラスコ中に注ぎ、50℃で4時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を桐山漏斗で濾過し、更にメタノールによる残渣洗浄を行って酸化剤を除去した。洗浄後に得られた残渣を真空乾燥し、金属光沢を発現するポリチオフェン系化合物(S−2)の青紫色固体を収率75%で得た。ポリチオフェン系化合物(S−2)の重量平均分子量Mwは1,400であった。
【0064】
<実施例1>
合成例1で得られたポリチオフェン系化合物(S−1)1gを、アセトニトリル70g、メチルエチルケトン29.6gから成る混合溶媒に溶解させ、更にこの溶液を攪拌しながらレオロジーコントロール剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−410」)0.1g、消泡剤(サンノプコ株式会社製「ダッポーSN−368」)0.3gを加え、メタリックグラビアインキ組成物(A−1)を得た。これを後述するグラビアインキとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、グラビアインキ印刷物(AP−1)を得た。
【0065】
<実施例2>
プライマー(DICグラフィックス株式会社製「ユニビアNT K1メジューム」)を希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この希釈プライマー溶液を、後述するグラビアインキとしての各評価法で指定したグラビアインキの塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷し、プライマー塗膜の乾燥後に実施例1で得られたメタリックグラビアインキ組成物(A−1)を後述するグラビアインキとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷した。これによりプライマー/グラビアインキの2層からなるグラビアインキ印刷物(AP−2)を得た。
【0066】
<実施例3>
プライマー(DICグラフィックス株式会社製「ユニビアNT K1メジューム」)を希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この希釈プライマー溶液を、後述するグラビアインキとしての各評価法で指定したグラビアインキの塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷し、プライマー塗膜の乾燥後に実施例1で得られたメタリックグラビアインキ組成物(A−1)を塗工・印刷した。次にトップコート(DICグラフィックス株式会社製「アルティマZ OPニス」)を希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この希釈トップコート溶液を、後述するグラビアインキとしての各評価法で指定したグラビアインキの塗工・印刷方法と同様の方法で、前述の(A−1)層の上に塗工・印刷し、プライマー/グラビアインキ/トップコートの3層からなるグラビアインキ印刷物(AP−3)を得た。
【0067】
<実施例4>
合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1gを水99.2gに溶解させ、更にこの溶液を攪拌しながらレオロジーコントロール剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK―420」)0.1g、消泡剤(サンノプコ株式会社製「SNデフォーマー777」)0.2g、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会製「BYK―348」)0.5gを加え、メタリックグラビアインキ組成物(A−4)を得た。これを後述するグラビアインキとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、グラビアインキ印刷物(AP−4)を得た。
【0068】
<実施例5>
プライマー(DICグラフィックス株式会社製「SFプライマー No.930」)を希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この希釈プライマー溶液を、後述するグラビアインキとしての各評価法で指定したグラビアインキの塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷し、プライマー塗膜の乾燥後に実施例4で得られたメタリックグラビアインキ組成物(A−2)を塗工・印刷した。これによりプライマー/グラビアインキの2層からなるグラビアインキ印刷物(AP−5)を得た。
【0069】
<比較例1>
溶剤系裏刷りグラビアインキ(DICグラフィックス株式会社製「ユニビアLT 銀K1」)をメタリックグラビアインキ(B−1)と呼称し、希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この溶液を後述するグラビアインキとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷し、グラビアインキ印刷物(BP−1)を得た。
【0070】
<比較例2>
水系裏刷りグラビアインキ(DICグラフィックス株式会社製「マリーンプラスG 銀(K3)」)をメタリックグラビアインキ(B−2)と呼称し、希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「水性用レジューサーNo.3」)を用いてザーンカップNo.3−18秒の粘度になるまで希釈した。この溶液を後述するグラビアインキとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷し、グラビアインキ印刷物(BP−2)を得た。
【0071】
上記の実施例1〜5及び比較例1〜2で得られたメタリックグラビアインキ及びそれらを用いた印刷物について下記の評価を行った。
【0072】
<グラビアインキとしての評価法>
[光沢値]
グラビアインキ組成物を、バーコーターを用いて、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm)のコロナ表面処理面に膜厚1μmで塗工し、80℃で乾燥させた。80℃で塗膜乾燥後、光沢計(BYK Gardner製micro−TRI−gloss)で入射角60度、反射角60度の光沢を任意の5点で測定し、その平均値を記録した。
【0073】
[塗膜外観]
グラビアインキ組成物を、バーコーターを用いて、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm)のコロナ表面処理面に膜厚1μmで塗工し、80℃で乾燥させた。乾燥後の塗膜外観について、下記項目を以下に示す基準にて目視評価した。
(下地隠蔽性)
○:下地を完全に隠蔽している。
△:下地が僅かに透けている。
×:下地が明確に透けており、基材種類を目視で判別できる。
(塗膜の鏡面反射)
○:像の歪み・ぼやけなく鏡像の細部に至るまで認識できる。
△:像の歪み・ぼやけが多少あるが鏡像の形状は認識できる。
×:像の歪み・ぼやけが酷く鏡像が何であるか認識できない。
(塗膜粒状感)
○:メッキ表面のように粒状感が全くない。
△:非常に細かい粒状模様が見える。
×:明らかに粒状感がある。
【0074】
[沈降安定性]
グラビアインキ組成物をガラス製サンプル瓶に入れて蓋を閉め、常温で静置し、6時間静置後、24時間静置後の顔料分の沈降度合を目視で観測した。
○:24時間後も顔料沈降は観測されなかった。
△:6時間後は顔料沈降が観測されなかったが、24時間後には顔料沈降が確認された。
×:6時間後で顔料沈降が確認された。
【0075】
[保存安定性]
グラビアインキ組成物を、E型粘度計(東機産業株式会社製「TV−20形」)で粘度を測定した後、ガラス製サンプル瓶に入れて蓋を閉めて密封させた状態で60℃の恒温槽に放置した。30日後に恒温槽からサンプル瓶を取り出し、インクの粘度を測定した。評価は以下のように判断した。
○:粘度の変化率が10%未満。
△:粘度の変化率が10%以上20%未満。
×:粘度の変化率が20%以上、又はインクの分離が発生。
【0076】
[フィルム基材への密着性]
グラビアインキ組成物を、バーコーターを用いて、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「パイレンP2161」、厚さ20μm、下記表1では「OPP」と略記)、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm、下記表1では「PET」と略記)、2軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製「エンブレムON」、厚さ15μm、下記表1では「ONy」と略記)のコロナ表面処理面にそれぞれ膜厚1μmで塗工し、80℃で乾燥させた。次に、この塗工表面にセロハンテープ(ニチバン株式会社製「セロテープ」(登録商標)、18mm幅)を貼り付け、貼り付けから10秒後に毎秒10mmの速度で180度方向にテープを剥がし、剥離試験を行った。試験後の塗工物表面を解像度300dpiのスキャナで電子データ化し、剥離部分面積/セロテープ面積=塗膜剥離比率(%)を算出した。この値が小さい程、インク塗膜とフィルム間の密着性が強いことを意味する。この値は各フィルムにおいて30%以下であることが好ましく、15%以下であると更に好ましい。
【0077】
[版かぶり性]
グラビアインキ組成物を、印刷速度毎分100メートル、150メートルの2水準で、ヘリオ175線階調版を用いて2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「パイレンP2161」、厚さ20μm)のコロナ放電処理面に印刷した。非画線部にも拘らずインキが印刷されている現象、即ち版かぶりが少しでも発生し、印刷物へ転移した印刷速度を以下の基準で評価した。
○:印刷速度が毎分150メートルでも版かぶりが発生しない場合。
△:版かぶりが発生した印刷速度が毎分150メートルの場合。
×:版かぶりが発生した印刷速度が毎分100メートルの場合。
【0078】
[ハイライト転移性]
グラビアインキ組成物を、印刷速度毎分100メートル、150メートルの2水準で、ヘリオ175線諧調版を用いて2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「パイレンP2161」、厚さ20μm)のコロナ放電処理面に印刷した。印刷物の諧調部分を観測し、ハイライト部分(濃度20%、15%、10%、7%、5%、3%、1%)のうち印刷面積の98%以上が印刷されている最も薄いハイライト値を記録した。この値が低いほどハイライト転移性に優れ、色調の淡い部分であっても明瞭に印刷することができ、特に5%以下が好ましい。
【0079】
[耐ブロッキング性]
グラビアインキ組成物を、バーコーターを用いて2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「パイレンP2161」、厚さ20μm)のコロナ放電処理面に膜厚1μmで塗工し、80℃で乾燥させた。次に、グラビアインキ組成物の塗工面の上に、もう一枚の前記2軸延伸ポリプロピレンフィルムの未処理面を密着させた。この2枚重ねのフィルム試験片に0.5MPaの圧力をかけて温度50℃、相対湿度80%の環境下、24時間放置した。フィルムを常温まで空冷した後、2枚の試験片を剥がした。試験後の塗工物表面を解像度300dpiのスキャナで電子データ化し、剥離部分面積/加圧面積=塗膜剥離比率[%]を算出した。この値が小さい程、耐ブロッキング性に優れていることを意味する。この値は各フィルムにおいて20%以下であることが好ましく、10%以下であると更に好ましい。
【0080】
[ラミネート接着強度]
グラビアインキ組成物を、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm)のコロナ放電処理面に膜厚1μmで塗工し、80℃で乾燥させた。次に、この塗工表面にラミネート用接着剤(DICグラフィックス株式会社製「ディックドライLX−703VL」15質量部、DICグラフィックス株式会社製「KR−90」1質量部)を塗工量3.0g/mで塗工した。この接着剤塗工フィルムに、シーラントとして直鎖低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製「TUX−HC」、厚さ60μm)を重ね、ラミネート接着を行った。このラミネート積層物を40℃の恒温槽中に72時間静置し、エージングを行なった後、フィルムを常温まで空冷し、ラミネート積層物を15mm幅のテープ状に切断した。引張試験機(株式会社オリエンテック製「テンシロン RTM−25」)を用いて、シーラントを180度折り曲げた状態における剥離試験を引張速度300mm/minで行い、その強度を記録した。ラミネート強度は1.0N/15mm以上が好ましく、2.0N/15mm以上であると更に好ましい。
【0081】
本発明の塗工液をグラビアインキとして用いた場合のグラビアインキ印刷物の構成及び各評価結果をまとめたものを表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
<実施例6>
プロピレングリコール5g、1,3−ブタンジオール3g、水89.8gの混合溶媒を調製し、ここに合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、レベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール485」)1.2gを加え、水性インクジェット記録用メタリックインク(A−6)を得た。これを後述するインクジェットインクとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、インクジェット印刷物(AP−6)を得た。
【0084】
<実施例7>
プロピレングリコール15g、1,3−ブタンジオール10g、及び水64.9gから成る混合溶媒を調製し、ここに合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、アクリル樹脂(DIC株式会社製「ボンコート WKA−565」)8.6g及びレベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール485」)0.5gを加え、水性インクジェット記録用メタリックインク(A−7)を得た。これを後述するインクジェットインクとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、インクジェット印刷物(AP−7)を得た。
【0085】
<実施例8>
プロピレングリコール15g、1,3−ブタンジオール10g、及び水63.5gから成る混合溶媒を調製し、ここに合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、ポリオレフィン樹脂(東洋紡株式会社製「ハードレン NA−3002」)10g及びレベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール485」)0.5gを加え、水性インクジェット記録用メタリックインク(A−8)を得た。これを後述するインクジェットインクとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、インクジェット印刷物(AP−8)を得た。
【0086】
<比較例3>
蒸着アルミ顔料(BASF社製「Metasheen 41−0310」、アルミ含有量10質量%の2−メトキシ―1−メチルエチルアセテート分散液)を、超音波発振器(日本精機製作所株式会社製「US−300T」)を用いて3分間超音波破砕し、平均粒子径(D50)6.0μm、平均厚さ20nmのアルミ顔料分散液を得た。この分散液20gに、プロピレングリコール15g、1,3−ブタンジオール10g、水45.9g、アクリル樹脂(DIC株式会社製「ボンコート WKA−565」)8.6g及びレベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール485」)0.5gを加え、水性インクジェット記録用メタリックインク(B−3)を得た。これを後述するインクジェットインクとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、インクジェット印刷物(BP−3)を得た。
【0087】
上記の実施例6〜8及び比較例3で得られたインクジェットインク及びそれらを用いた印刷物について、下記の評価を行った。
【0088】
<インクジェットインクとしての評価法>
[光沢値]
インクジェットインク組成物を、最大駆動周波数7.6KHz、解像度360dpi(25.4mm当たり360ドット)のピエゾヘッドを有するインクジェットプリンターで、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm)のコロナ表面処理面に印刷した。80℃で塗膜乾燥後、光沢計(BYK Gardner製micro−TRI−gloss)で入射角60度、反射角60度の光沢を任意の5点で測定し、その平均値を記録した。
【0089】
[塗膜外観(フィルム)]
インクジェットインク組成物を、最大駆動周波数7.6KHz、解像度360dpi(25.4mm当たり360ドット)のピエゾヘッドを有するインクジェットプリンターで、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm)のコロナ表面処理面に印刷した。80℃で塗膜乾燥後、塗膜外観について、下記項目を以下に示す基準にて目視評価した。
(下地隠蔽性)
○:下地を完全に隠蔽している。
△:下地が僅かに透けている。
×:下地が明確に透けており、基材種類を目視で判別できる。
(塗膜の鏡面反射)
○:像の歪み・ぼやけなく鏡像の細部に至るまで認識できる。
△:像の歪み・ぼやけが多少あるが鏡像の形状は認識できる。
×:像の歪み・ぼやけが酷く鏡像が何であるか認識できない。
(塗膜粒状感)
○:メッキ表面のように粒状感が全くない。
△:非常に細かい粒状模様が見える。
×:明らかに粒状感がある。
【0090】
[塗膜外観(紙)]
インクジェットインク組成物を、最大駆動周波数7.6KHz、解像度360dpi(25.4mm当たり360ドット)のピエゾヘッドを有するインクジェットプリンターで、グリーン購入法適合A4版コピー用紙(三菱製紙株式会社製「三菱PPC用紙RE−N FSC認証−MX」)に全ベタ印刷した。印刷後の外観について、下記項目を以下に示す基準にて目視評価した。
○:金箔のような金属光沢と輝度感が確認できる。
△:金属色がくすんでいるが、光沢感があることは確認できる。
×:輝度感が無く、金属色に見えない。
【0091】
[沈降安定性]
インクジェットインク組成物をガラス製サンプル瓶に入れて蓋を閉め、常温で静置し、6時間静置後、及び24時間静置後の顔料分の沈降度合を目視で観測した。
○:24時間後も顔料沈降は観測されなかった。
△:6時間後は顔料沈降が観測されなかったが、24時間後には顔料沈降が確認された。
×:6時間後で顔料沈降が確認された。
【0092】
[保存安定性]
インクジェットインク組成物を、E型粘度計(東機産業株式会社製「TV−20形」)で粘度を測定した後、ガラス製サンプル瓶に入れて蓋を閉めて密封させた状態で60℃の恒温槽に放置した。30日後に恒温槽からサンプル瓶を取り出し、インクの粘度を測定した。評価は以下のように判断した。
○:粘度の変化率が10%未満。
△:粘度の変化率が10%以上20%未満。
×:粘度の変化率が20%以上、又はインクの分離が発生。
【0093】
[フィルム基材への密着性]
インクジェットインク組成物を、最大駆動周波数7.6KHz、解像度360dpi(25.4mm当たり360ドット)のピエゾヘッドを有するインクジェットプリンターで、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「パイロンP2161」、厚さ20μm、下記表2では「OPP」と略記)、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm、下記表2では「PET」と略記)のコロナ表面処理面にそれぞれ印刷した。80℃で塗膜乾燥後、この塗工表面にセロハンテープ(ニチバン株式会社製「セロテープ」(登録商標)、18mm幅)を貼り付け、10秒後に毎秒10mmの速度で180度方向にセロテープをはがし、剥離試験を行った。試験後の塗工物表面を解像度300dpiのスキャナで電子データ化し、剥離部分面積/セロテープ面積=塗膜剥離比率[%]を算出した。この値が小さい程、インク塗膜とフィルム間の密着性が強いことを意味する。この値は各フィルムにおいて30%以下であることが好ましく、20%以下であると更に好ましい。
【0094】
[吐出適性試験]
インクジェットインク組成物を、最大駆動周波数7.6KHz、解像度360dpi(25.4mm当たり360ドット)のピエゾヘッドを有するインクジェットプリンターで、PETフィルム(東洋紡株式会社製「エステルE−5100」)にA4ベタ100枚相当印字後、チェックパターンを印字し、不吐出ノズルを評価した。評価は以下のように判断した。
○:不吐出ノズル1%未満。
△:不吐出ノズル1%以上5%未満。
×:不吐出ノズル5%以上。
【0095】
本発明の塗工液をインクジェットインクとして用いた場合のインクジェット印刷物の構成及び各評価結果をまとめたものを表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
<実施例9>
アクリル樹脂(DIC株式会社製「アクリディック 56−1155」)40g、芳香族系有機溶剤(東燃ゼネラル石油株式会社製「ソルベッソ100」)30g、及び酢酸ブチル30gを混合して攪拌し、プライマーを調製した。これを後述するメタリック塗料としての各評価法で指定したメタリック塗料の塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷した。次に、合成例1で得られたポリチオフェン系化合物(S−1)1.5gを、アセトニトリル18g、N−メチルピロリドン80gから成る混合溶媒に溶解させ、更にこの溶液を攪拌しながらレベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK―348」)0.5gを加え、メタリック塗料(A−9)を得た。これを前述のプライマー塗工層の上に、後述するメタリック塗料としての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、プライマー層/メタリック塗工層の2層からなるメタリック塗装物(AP−9)を得た。
【0098】
<実施例10>
N−メチルピロリドン47.5g、アセトニトリル12.5gから成る混合溶媒を調製し、ここに合成例1で得られたポリチオフェン系化合物(S−1)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、アクリル樹脂(DIC株式会社製「アクリディック 56−1155」)40gを加え、メタリック塗料(A−10)を得た。これを後述するメタリック塗料としての各評価法で指定した方法で塗工することにより、メタリック塗装物(AP−10)を得た。
【0099】
<実施例11>
水性アクリル樹脂(DIC株式会社製「ボンコート EM−400」)80g、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル19.7g、及びレベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK―348」)0.5gを混合して攪拌し、プライマーを調製した。これを後述するメタリック塗料としての各評価法で指定したメタリック塗料の塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷した。次に、合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1.5gを水98.0gに溶解させ、更にこの溶液を攪拌しながらレベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK―348」)0.5gを加え、メタリック塗料(A−11)を得た。これを前述のプライマー塗工層の上に、後述するメタリック塗料としての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、プライマー層/メタリック塗工層の2層からなるメタリック塗装物(AP−11)を得た。
【0100】
<実施例12>
ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル10g、及び水48.5gから成る混合溶媒を調製し、ここに合成例1で得られたポリチオフェン系化合物(S−1)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、水性アクリル樹脂(DIC株式会社製「ボンコート EM−400」)40g、及びレベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK―348」)0.5gを加え、メタリック塗料(A−12)を得た。これを後述するメタリック塗料としての各評価法で指定した方法で塗工することにより、塗装物(AP−12)を得た。
【0101】
<比較例4>
アルミ顔料(東洋アルミ株式会社製「TCR−3040」)0.79g、アルミ顔料(昭和アルミパウダー株式会社製「SAP 550N」)3.88g、アクリル樹脂(DIC株式会社製「アクリディック 56−1155」)33.6g、キシレン10g、芳香族系有機溶剤(東燃ゼネラル石油株式会社製「ソルベッソ100」)20g、及び酢酸ブチル31.7gを混合し、メタリック塗料(B−4)を得た。これを後述するメタリック塗料としての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、メタリック塗装物(BP−4)を得た。
【0102】
<比較例5>
アルミ顔料(Eckart社製「STAPA Hydrolan 2194」)5.0g、ジエチレングリコールジメチルエーテル5.0g、及び顔料分散剤(楠本化学株式会社製「Disparlon AQ−330」)0.5gを混合して混練し、アルミペーストを調製した。このアルミペースト10.0gに水性アクリル樹脂(DIC株式会社製「バーノック WD−551」)55.6g、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−348」)0.2g、レベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール 104DPM」)0.6g、消泡剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−011」)0.4g、及びレオロジーコントロール剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−425」)0.3gを混合し、主剤メタリック塗料を調製した。さらにこの主剤メタリック塗料70gに水分散型ポリイソシアネート(DIC株式会社製「バーノック DNW−5500」)5.8g、水10gを加えて2液硬化型メタリック塗料(B−5)を得た。これを後述するメタリック塗料としての各評価法で指定した方法で塗工・印刷し、23℃で7日間乾燥させてメタリック塗装物(BP−5)を得た。
【0103】
上記の実施例9〜12及び比較例4〜5で得られたメタリック塗料及びそれらの塗装物について、下記の評価を行った。
【0104】
<メタリック塗料としての評価法>
[光沢値]
塗料組成物をガラス板にエアースプレーにて膜厚10μmで塗装を行い、常温で10分、続けて80℃で10分乾燥させた。乾燥後の塗膜表面について、光沢計(BYK Gardner社製「micro−TRI−gloss」)で入射角60度、反射角60度の光沢を任意の5点で測定し、その平均値を記録した。
【0105】
[塗膜外観]
塗料組成物をPC(ポリカーボネート)板、PET(ポリエチレンテレフタレート)板にエアースプレーにて膜厚10μmで塗装を行い、常温で10分、続けて80℃で10分乾燥させた。乾燥後の塗膜外観について、下記項目を以下に示す基準にて目視評価した。
(下地隠蔽性)
○:下地を完全に隠蔽している。
△:下地が僅かに透けている。
×:下地が明確に透けており、基材種類を目視で判別できる。
(塗膜の鏡面反射)
○:像の歪み・ぼやけなく鏡像の細部に至るまで認識できる。
△:像の歪み・ぼやけが多少あるが鏡像の形状は認識できる。
×:像の歪み・ぼやけが酷く鏡像が何であるか認識できない。
(塗膜粒状感)
○:メッキ表面のように粒状感が全くない。
△:非常に細かい粒状模様が見える。
×:明らかに粒状感がある。
【0106】
[沈降安定性]
塗料組成物をガラス製サンプル瓶に入れて蓋を閉め、常温で静置し、6時間静置後、及び24時間静置後の顔料分の沈降度合を目視で観測した。
○:24時間後も顔料沈降は観測されなかった。
△:6時間後は顔料沈降が観測されなかったが、24時間後には顔料沈降が確認された。
×:6時間後で顔料沈降が確認された。
【0107】
[保存安定性]
塗料組成物を、E型粘度計(東機産業株式会社製「TV−20形」)で粘度を測定した後、ガラス製サンプル瓶に入れて蓋を閉めて密封させた状態で60℃の恒温槽に放置した。30日後に恒温槽からサンプル瓶を取り出し、インクの粘度を測定した。評価は以下のように判断した。
○:粘度の変化率が10%未満。
△:粘度の変化率が10%以上20%未満。
×:粘度の変化率が20%以上、又はインクの分離が発生。
【0108】
[1次密着性試験]
塗料組成物をPC(ポリカーボネート)板、PET(ポリエチレンテレフタレート)板にエアースプレーにて膜厚10μmで塗装を行い、常温で10分、続けて80℃で10分乾燥させた。次に、塗膜表面にカッターナイフで1mm角で10×10個の切れ目を入れ、セロハンテープ(ニチバン社製「セロテープ」(登録商標)、18mm幅)による剥離試験を行い、残存する目数を下記基準で評価した。
○:86〜100個
△:60〜85個
×:59個以下
【0109】
[2次密着性試験]
上述の1次密着性試験と同様の手段で塗装基材を準備し、これを40℃の温水に24時間浸漬した。その後、1次密着性試験と同様のセロハンテープ(ニチバン株式会社製「セロテープ」(登録商標)、18mm幅)による剥離試験を行い、残存する目数を下記基準で評価した。
○:86〜100個
△:60〜85個
×:59個以下
【0110】
本発明の塗工液をメタリック塗料として用いた場合のメタリック塗装物の構成及び各評価結果をまとめたものを表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
表1〜表3に示した評価結果から、本発明の塗工液は、メタリックグラビアインキ、メタリックインクジェットインク、メタリック塗料として十分使用できることが確認できた。また、これらを塗工、印刷することにより、被印刷物、被塗工物に、粒状感のない均一な金属メッキと同等のメタリック調の塗膜を形成できることも確認できた。
【0113】
一方、メタリック顔料を用いた比較例の塗工液は、沈降安定性、保存安定性に劣ることが確認できた。また、比較例の塗工液を塗工、印刷することにより、被印刷物、被塗工物に、メタリック調の意匠は得られるものの、粒状感のあるメタリック調しか得られなかった。