【実施例】
【0059】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により下記の条件で測定したものである。
【0060】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:N−メチルピロリドン
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0061】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0062】
<合成例1>
容量50mlの三角フラスコに、酸化剤として過塩素酸鉄(III)6.5g、アセトニトリル7.3gを加え、攪拌して濃度1Mの溶液を調製した。つぎに、窒素導入管、アリーン冷却管を装着した容量100mlの三口フラスコに、3−メトキシチオフェン1.0g、アセトニトリル12.8gを加え、窒素ガスを液中に導入しながらフラスコを氷浴に浸し、30分間攪拌して濃度0.5Mの溶液を調製した。このあと氷浴を外して液温を20℃まで上げた後、前述の1M−過塩素酸鉄(III)アセトニトリル溶液を三口フラスコ中に注ぎ、20℃で4時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を桐山漏斗で濾過し、更にメタノールによる残渣洗浄を行って酸化剤を除去した。洗浄後に得られた残渣を真空乾燥し、金属光沢を発現するポリチオフェン系化合物(S−1)の青紫色固体を収率80%で得た。ポリチオフェン系化合物(S−1)の重量平均分子量Mwは1,600であった。
【0063】
<合成例2>
容量50mlの三角フラスコに、酸化剤として塩化鉄(III)9.5g、アセトニトリル4.3gを加え、攪拌して濃度2Mの溶液を調製した。つぎに、窒素導入管、アリーン冷却管を装着した容量100mlの三口フラスコに、3−メトキシチオフェン1.0g、アセトニトリル12.8gを加え、窒素ガスを液中に導入しながらフラスコを氷浴に浸し、30分間攪拌して濃度0.5Mの溶液を調製した。このあと氷浴を外して液温を50℃まで上げた後、前述の2M−塩化鉄(III)アセトニトリル溶液を三口フラスコ中に注ぎ、50℃で4時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を桐山漏斗で濾過し、更にメタノールによる残渣洗浄を行って酸化剤を除去した。洗浄後に得られた残渣を真空乾燥し、金属光沢を発現するポリチオフェン系化合物(S−2)の青紫色固体を収率75%で得た。ポリチオフェン系化合物(S−2)の重量平均分子量Mwは1,400であった。
【0064】
<実施例1>
合成例1で得られたポリチオフェン系化合物(S−1)1gを、アセトニトリル70g、メチルエチルケトン29.6gから成る混合溶媒に溶解させ、更にこの溶液を攪拌しながらレオロジーコントロール剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−410」)0.1g、消泡剤(サンノプコ株式会社製「ダッポーSN−368」)0.3gを加え、メタリックグラビアインキ組成物(A−1)を得た。これを後述するグラビアインキとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、グラビアインキ印刷物(AP−1)を得た。
【0065】
<実施例2>
プライマー(DICグラフィックス株式会社製「ユニビアNT K1メジューム」)を希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この希釈プライマー溶液を、後述するグラビアインキとしての各評価法で指定したグラビアインキの塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷し、プライマー塗膜の乾燥後に実施例1で得られたメタリックグラビアインキ組成物(A−1)を後述するグラビアインキとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷した。これによりプライマー/グラビアインキの2層からなるグラビアインキ印刷物(AP−2)を得た。
【0066】
<実施例3>
プライマー(DICグラフィックス株式会社製「ユニビアNT K1メジューム」)を希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この希釈プライマー溶液を、後述するグラビアインキとしての各評価法で指定したグラビアインキの塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷し、プライマー塗膜の乾燥後に実施例1で得られたメタリックグラビアインキ組成物(A−1)を塗工・印刷した。次にトップコート(DICグラフィックス株式会社製「アルティマZ OPニス」)を希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この希釈トップコート溶液を、後述するグラビアインキとしての各評価法で指定したグラビアインキの塗工・印刷方法と同様の方法で、前述の(A−1)層の上に塗工・印刷し、プライマー/グラビアインキ/トップコートの3層からなるグラビアインキ印刷物(AP−3)を得た。
【0067】
<実施例4>
合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1gを水99.2gに溶解させ、更にこの溶液を攪拌しながらレオロジーコントロール剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK―420」)0.1g、消泡剤(サンノプコ株式会社製「SNデフォーマー777」)0.2g、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会製「BYK―348」)0.5gを加え、メタリックグラビアインキ組成物(A−4)を得た。これを後述するグラビアインキとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、グラビアインキ印刷物(AP−4)を得た。
【0068】
<実施例5>
プライマー(DICグラフィックス株式会社製「SFプライマー No.930」)を希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この希釈プライマー溶液を、後述するグラビアインキとしての各評価法で指定したグラビアインキの塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷し、プライマー塗膜の乾燥後に実施例4で得られたメタリックグラビアインキ組成物(A−2)を塗工・印刷した。これによりプライマー/グラビアインキの2層からなるグラビアインキ印刷物(AP−5)を得た。
【0069】
<比較例1>
溶剤系裏刷りグラビアインキ(DICグラフィックス株式会社製「ユニビアLT 銀K1」)をメタリックグラビアインキ(B−1)と呼称し、希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この溶液を後述するグラビアインキとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷し、グラビアインキ印刷物(BP−1)を得た。
【0070】
<比較例2>
水系裏刷りグラビアインキ(DICグラフィックス株式会社製「マリーンプラスG 銀(K3)」)をメタリックグラビアインキ(B−2)と呼称し、希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「水性用レジューサーNo.3」)を用いてザーンカップNo.3−18秒の粘度になるまで希釈した。この溶液を後述するグラビアインキとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷し、グラビアインキ印刷物(BP−2)を得た。
【0071】
上記の実施例1〜5及び比較例1〜2で得られたメタリックグラビアインキ及びそれらを用いた印刷物について下記の評価を行った。
【0072】
<グラビアインキとしての評価法>
[光沢値]
グラビアインキ組成物を、バーコーターを用いて、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm)のコロナ表面処理面に膜厚1μmで塗工し、80℃で乾燥させた。80℃で塗膜乾燥後、光沢計(BYK Gardner製micro−TRI−gloss)で入射角60度、反射角60度の光沢を任意の5点で測定し、その平均値を記録した。
【0073】
[塗膜外観]
グラビアインキ組成物を、バーコーターを用いて、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm)のコロナ表面処理面に膜厚1μmで塗工し、80℃で乾燥させた。乾燥後の塗膜外観について、下記項目を以下に示す基準にて目視評価した。
(下地隠蔽性)
○:下地を完全に隠蔽している。
△:下地が僅かに透けている。
×:下地が明確に透けており、基材種類を目視で判別できる。
(塗膜の鏡面反射)
○:像の歪み・ぼやけなく鏡像の細部に至るまで認識できる。
△:像の歪み・ぼやけが多少あるが鏡像の形状は認識できる。
×:像の歪み・ぼやけが酷く鏡像が何であるか認識できない。
(塗膜粒状感)
○:メッキ表面のように粒状感が全くない。
△:非常に細かい粒状模様が見える。
×:明らかに粒状感がある。
【0074】
[沈降安定性]
グラビアインキ組成物をガラス製サンプル瓶に入れて蓋を閉め、常温で静置し、6時間静置後、24時間静置後の顔料分の沈降度合を目視で観測した。
○:24時間後も顔料沈降は観測されなかった。
△:6時間後は顔料沈降が観測されなかったが、24時間後には顔料沈降が確認された。
×:6時間後で顔料沈降が確認された。
【0075】
[保存安定性]
グラビアインキ組成物を、E型粘度計(東機産業株式会社製「TV−20形」)で粘度を測定した後、ガラス製サンプル瓶に入れて蓋を閉めて密封させた状態で60℃の恒温槽に放置した。30日後に恒温槽からサンプル瓶を取り出し、インクの粘度を測定した。評価は以下のように判断した。
○:粘度の変化率が10%未満。
△:粘度の変化率が10%以上20%未満。
×:粘度の変化率が20%以上、又はインクの分離が発生。
【0076】
[フィルム基材への密着性]
グラビアインキ組成物を、バーコーターを用いて、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「パイレンP2161」、厚さ20μm、下記表1では「OPP」と略記)、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm、下記表1では「PET」と略記)、2軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製「エンブレムON」、厚さ15μm、下記表1では「ONy」と略記)のコロナ表面処理面にそれぞれ膜厚1μmで塗工し、80℃で乾燥させた。次に、この塗工表面にセロハンテープ(ニチバン株式会社製「セロテープ」(登録商標)、18mm幅)を貼り付け、貼り付けから10秒後に毎秒10mmの速度で180度方向にテープを剥がし、剥離試験を行った。試験後の塗工物表面を解像度300dpiのスキャナで電子データ化し、剥離部分面積/セロテープ面積=塗膜剥離比率(%)を算出した。この値が小さい程、インク塗膜とフィルム間の密着性が強いことを意味する。この値は各フィルムにおいて30%以下であることが好ましく、15%以下であると更に好ましい。
【0077】
[版かぶり性]
グラビアインキ組成物を、印刷速度毎分100メートル、150メートルの2水準で、ヘリオ175線階調版を用いて2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「パイレンP2161」、厚さ20μm)のコロナ放電処理面に印刷した。非画線部にも拘らずインキが印刷されている現象、即ち版かぶりが少しでも発生し、印刷物へ転移した印刷速度を以下の基準で評価した。
○:印刷速度が毎分150メートルでも版かぶりが発生しない場合。
△:版かぶりが発生した印刷速度が毎分150メートルの場合。
×:版かぶりが発生した印刷速度が毎分100メートルの場合。
【0078】
[ハイライト転移性]
グラビアインキ組成物を、印刷速度毎分100メートル、150メートルの2水準で、ヘリオ175線諧調版を用いて2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「パイレンP2161」、厚さ20μm)のコロナ放電処理面に印刷した。印刷物の諧調部分を観測し、ハイライト部分(濃度20%、15%、10%、7%、5%、3%、1%)のうち印刷面積の98%以上が印刷されている最も薄いハイライト値を記録した。この値が低いほどハイライト転移性に優れ、色調の淡い部分であっても明瞭に印刷することができ、特に5%以下が好ましい。
【0079】
[耐ブロッキング性]
グラビアインキ組成物を、バーコーターを用いて2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「パイレンP2161」、厚さ20μm)のコロナ放電処理面に膜厚1μmで塗工し、80℃で乾燥させた。次に、グラビアインキ組成物の塗工面の上に、もう一枚の前記2軸延伸ポリプロピレンフィルムの未処理面を密着させた。この2枚重ねのフィルム試験片に0.5MPaの圧力をかけて温度50℃、相対湿度80%の環境下、24時間放置した。フィルムを常温まで空冷した後、2枚の試験片を剥がした。試験後の塗工物表面を解像度300dpiのスキャナで電子データ化し、剥離部分面積/加圧面積=塗膜剥離比率[%]を算出した。この値が小さい程、耐ブロッキング性に優れていることを意味する。この値は各フィルムにおいて20%以下であることが好ましく、10%以下であると更に好ましい。
【0080】
[ラミネート接着強度]
グラビアインキ組成物を、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm)のコロナ放電処理面に膜厚1μmで塗工し、80℃で乾燥させた。次に、この塗工表面にラミネート用接着剤(DICグラフィックス株式会社製「ディックドライLX−703VL」15質量部、DICグラフィックス株式会社製「KR−90」1質量部)を塗工量3.0g/m
2で塗工した。この接着剤塗工フィルムに、シーラントとして直鎖低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製「TUX−HC」、厚さ60μm)を重ね、ラミネート接着を行った。このラミネート積層物を40℃の恒温槽中に72時間静置し、エージングを行なった後、フィルムを常温まで空冷し、ラミネート積層物を15mm幅のテープ状に切断した。引張試験機(株式会社オリエンテック製「テンシロン RTM−25」)を用いて、シーラントを180度折り曲げた状態における剥離試験を引張速度300mm/minで行い、その強度を記録した。ラミネート強度は1.0N/15mm以上が好ましく、2.0N/15mm以上であると更に好ましい。
【0081】
本発明の塗工液をグラビアインキとして用いた場合のグラビアインキ印刷物の構成及び各評価結果をまとめたものを表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
<実施例6>
プロピレングリコール5g、1,3−ブタンジオール3g、水89.8gの混合溶媒を調製し、ここに合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、レベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール485」)1.2gを加え、水性インクジェット記録用メタリックインク(A−6)を得た。これを後述するインクジェットインクとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、インクジェット印刷物(AP−6)を得た。
【0084】
<実施例7>
プロピレングリコール15g、1,3−ブタンジオール10g、及び水64.9gから成る混合溶媒を調製し、ここに合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、アクリル樹脂(DIC株式会社製「ボンコート WKA−565」)8.6g及びレベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール485」)0.5gを加え、水性インクジェット記録用メタリックインク(A−7)を得た。これを後述するインクジェットインクとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、インクジェット印刷物(AP−7)を得た。
【0085】
<実施例8>
プロピレングリコール15g、1,3−ブタンジオール10g、及び水63.5gから成る混合溶媒を調製し、ここに合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、ポリオレフィン樹脂(東洋紡株式会社製「ハードレン NA−3002」)10g及びレベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール485」)0.5gを加え、水性インクジェット記録用メタリックインク(A−8)を得た。これを後述するインクジェットインクとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、インクジェット印刷物(AP−8)を得た。
【0086】
<比較例3>
蒸着アルミ顔料(BASF社製「Metasheen 41−0310」、アルミ含有量10質量%の2−メトキシ―1−メチルエチルアセテート分散液)を、超音波発振器(日本精機製作所株式会社製「US−300T」)を用いて3分間超音波破砕し、平均粒子径(D50)6.0μm、平均厚さ20nmのアルミ顔料分散液を得た。この分散液20gに、プロピレングリコール15g、1,3−ブタンジオール10g、水45.9g、アクリル樹脂(DIC株式会社製「ボンコート WKA−565」)8.6g及びレベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール485」)0.5gを加え、水性インクジェット記録用メタリックインク(B−3)を得た。これを後述するインクジェットインクとしての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、インクジェット印刷物(BP−3)を得た。
【0087】
上記の実施例6〜8及び比較例3で得られたインクジェットインク及びそれらを用いた印刷物について、下記の評価を行った。
【0088】
<インクジェットインクとしての評価法>
[光沢値]
インクジェットインク組成物を、最大駆動周波数7.6KHz、解像度360dpi(25.4mm当たり360ドット)のピエゾヘッドを有するインクジェットプリンターで、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm)のコロナ表面処理面に印刷した。80℃で塗膜乾燥後、光沢計(BYK Gardner製micro−TRI−gloss)で入射角60度、反射角60度の光沢を任意の5点で測定し、その平均値を記録した。
【0089】
[塗膜外観(フィルム)]
インクジェットインク組成物を、最大駆動周波数7.6KHz、解像度360dpi(25.4mm当たり360ドット)のピエゾヘッドを有するインクジェットプリンターで、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm)のコロナ表面処理面に印刷した。80℃で塗膜乾燥後、塗膜外観について、下記項目を以下に示す基準にて目視評価した。
(下地隠蔽性)
○:下地を完全に隠蔽している。
△:下地が僅かに透けている。
×:下地が明確に透けており、基材種類を目視で判別できる。
(塗膜の鏡面反射)
○:像の歪み・ぼやけなく鏡像の細部に至るまで認識できる。
△:像の歪み・ぼやけが多少あるが鏡像の形状は認識できる。
×:像の歪み・ぼやけが酷く鏡像が何であるか認識できない。
(塗膜粒状感)
○:メッキ表面のように粒状感が全くない。
△:非常に細かい粒状模様が見える。
×:明らかに粒状感がある。
【0090】
[塗膜外観(紙)]
インクジェットインク組成物を、最大駆動周波数7.6KHz、解像度360dpi(25.4mm当たり360ドット)のピエゾヘッドを有するインクジェットプリンターで、グリーン購入法適合A4版コピー用紙(三菱製紙株式会社製「三菱PPC用紙RE−N FSC認証−MX」)に全ベタ印刷した。印刷後の外観について、下記項目を以下に示す基準にて目視評価した。
○:金箔のような金属光沢と輝度感が確認できる。
△:金属色がくすんでいるが、光沢感があることは確認できる。
×:輝度感が無く、金属色に見えない。
【0091】
[沈降安定性]
インクジェットインク組成物をガラス製サンプル瓶に入れて蓋を閉め、常温で静置し、6時間静置後、及び24時間静置後の顔料分の沈降度合を目視で観測した。
○:24時間後も顔料沈降は観測されなかった。
△:6時間後は顔料沈降が観測されなかったが、24時間後には顔料沈降が確認された。
×:6時間後で顔料沈降が確認された。
【0092】
[保存安定性]
インクジェットインク組成物を、E型粘度計(東機産業株式会社製「TV−20形」)で粘度を測定した後、ガラス製サンプル瓶に入れて蓋を閉めて密封させた状態で60℃の恒温槽に放置した。30日後に恒温槽からサンプル瓶を取り出し、インクの粘度を測定した。評価は以下のように判断した。
○:粘度の変化率が10%未満。
△:粘度の変化率が10%以上20%未満。
×:粘度の変化率が20%以上、又はインクの分離が発生。
【0093】
[フィルム基材への密着性]
インクジェットインク組成物を、最大駆動周波数7.6KHz、解像度360dpi(25.4mm当たり360ドット)のピエゾヘッドを有するインクジェットプリンターで、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「パイロンP2161」、厚さ20μm、下記表2では「OPP」と略記)、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm、下記表2では「PET」と略記)のコロナ表面処理面にそれぞれ印刷した。80℃で塗膜乾燥後、この塗工表面にセロハンテープ(ニチバン株式会社製「セロテープ」(登録商標)、18mm幅)を貼り付け、10秒後に毎秒10mmの速度で180度方向にセロテープをはがし、剥離試験を行った。試験後の塗工物表面を解像度300dpiのスキャナで電子データ化し、剥離部分面積/セロテープ面積=塗膜剥離比率[%]を算出した。この値が小さい程、インク塗膜とフィルム間の密着性が強いことを意味する。この値は各フィルムにおいて30%以下であることが好ましく、20%以下であると更に好ましい。
【0094】
[吐出適性試験]
インクジェットインク組成物を、最大駆動周波数7.6KHz、解像度360dpi(25.4mm当たり360ドット)のピエゾヘッドを有するインクジェットプリンターで、PETフィルム(東洋紡株式会社製「エステルE−5100」)にA4ベタ100枚相当印字後、チェックパターンを印字し、不吐出ノズルを評価した。評価は以下のように判断した。
○:不吐出ノズル1%未満。
△:不吐出ノズル1%以上5%未満。
×:不吐出ノズル5%以上。
【0095】
本発明の塗工液をインクジェットインクとして用いた場合のインクジェット印刷物の構成及び各評価結果をまとめたものを表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
<実施例9>
アクリル樹脂(DIC株式会社製「アクリディック 56−1155」)40g、芳香族系有機溶剤(東燃ゼネラル石油株式会社製「ソルベッソ100」)30g、及び酢酸ブチル30gを混合して攪拌し、プライマーを調製した。これを後述するメタリック塗料としての各評価法で指定したメタリック塗料の塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷した。次に、合成例1で得られたポリチオフェン系化合物(S−1)1.5gを、アセトニトリル18g、N−メチルピロリドン80gから成る混合溶媒に溶解させ、更にこの溶液を攪拌しながらレベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK―348」)0.5gを加え、メタリック塗料(A−9)を得た。これを前述のプライマー塗工層の上に、後述するメタリック塗料としての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、プライマー層/メタリック塗工層の2層からなるメタリック塗装物(AP−9)を得た。
【0098】
<実施例10>
N−メチルピロリドン47.5g、アセトニトリル12.5gから成る混合溶媒を調製し、ここに合成例1で得られたポリチオフェン系化合物(S−1)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、アクリル樹脂(DIC株式会社製「アクリディック 56−1155」)40gを加え、メタリック塗料(A−10)を得た。これを後述するメタリック塗料としての各評価法で指定した方法で塗工することにより、メタリック塗装物(AP−10)を得た。
【0099】
<実施例11>
水性アクリル樹脂(DIC株式会社製「ボンコート EM−400」)80g、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル19.7g、及びレベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK―348」)0.5gを混合して攪拌し、プライマーを調製した。これを後述するメタリック塗料としての各評価法で指定したメタリック塗料の塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷した。次に、合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1.5gを水98.0gに溶解させ、更にこの溶液を攪拌しながらレベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK―348」)0.5gを加え、メタリック塗料(A−11)を得た。これを前述のプライマー塗工層の上に、後述するメタリック塗料としての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、プライマー層/メタリック塗工層の2層からなるメタリック塗装物(AP−11)を得た。
【0100】
<実施例12>
ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル10g、及び水48.5gから成る混合溶媒を調製し、ここに合成例1で得られたポリチオフェン系化合物(S−1)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、水性アクリル樹脂(DIC株式会社製「ボンコート EM−400」)40g、及びレベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK―348」)0.5gを加え、メタリック塗料(A−12)を得た。これを後述するメタリック塗料としての各評価法で指定した方法で塗工することにより、塗装物(AP−12)を得た。
【0101】
<比較例4>
アルミ顔料(東洋アルミ株式会社製「TCR−3040」)0.79g、アルミ顔料(昭和アルミパウダー株式会社製「SAP 550N」)3.88g、アクリル樹脂(DIC株式会社製「アクリディック 56−1155」)33.6g、キシレン10g、芳香族系有機溶剤(東燃ゼネラル石油株式会社製「ソルベッソ100」)20g、及び酢酸ブチル31.7gを混合し、メタリック塗料(B−4)を得た。これを後述するメタリック塗料としての各評価法で指定した方法で塗工・印刷することにより、メタリック塗装物(BP−4)を得た。
【0102】
<比較例5>
アルミ顔料(Eckart社製「STAPA Hydrolan 2194」)5.0g、ジエチレングリコールジメチルエーテル5.0g、及び顔料分散剤(楠本化学株式会社製「Disparlon AQ−330」)0.5gを混合して混練し、アルミペーストを調製した。このアルミペースト10.0gに水性アクリル樹脂(DIC株式会社製「バーノック WD−551」)55.6g、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−348」)0.2g、レベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール 104DPM」)0.6g、消泡剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−011」)0.4g、及びレオロジーコントロール剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−425」)0.3gを混合し、主剤メタリック塗料を調製した。さらにこの主剤メタリック塗料70gに水分散型ポリイソシアネート(DIC株式会社製「バーノック DNW−5500」)5.8g、水10gを加えて2液硬化型メタリック塗料(B−5)を得た。これを後述するメタリック塗料としての各評価法で指定した方法で塗工・印刷し、23℃で7日間乾燥させてメタリック塗装物(BP−5)を得た。
【0103】
上記の実施例9〜12及び比較例4〜5で得られたメタリック塗料及びそれらの塗装物について、下記の評価を行った。
【0104】
<メタリック塗料としての評価法>
[光沢値]
塗料組成物をガラス板にエアースプレーにて膜厚10μmで塗装を行い、常温で10分、続けて80℃で10分乾燥させた。乾燥後の塗膜表面について、光沢計(BYK Gardner社製「micro−TRI−gloss」)で入射角60度、反射角60度の光沢を任意の5点で測定し、その平均値を記録した。
【0105】
[塗膜外観]
塗料組成物をPC(ポリカーボネート)板、PET(ポリエチレンテレフタレート)板にエアースプレーにて膜厚10μmで塗装を行い、常温で10分、続けて80℃で10分乾燥させた。乾燥後の塗膜外観について、下記項目を以下に示す基準にて目視評価した。
(下地隠蔽性)
○:下地を完全に隠蔽している。
△:下地が僅かに透けている。
×:下地が明確に透けており、基材種類を目視で判別できる。
(塗膜の鏡面反射)
○:像の歪み・ぼやけなく鏡像の細部に至るまで認識できる。
△:像の歪み・ぼやけが多少あるが鏡像の形状は認識できる。
×:像の歪み・ぼやけが酷く鏡像が何であるか認識できない。
(塗膜粒状感)
○:メッキ表面のように粒状感が全くない。
△:非常に細かい粒状模様が見える。
×:明らかに粒状感がある。
【0106】
[沈降安定性]
塗料組成物をガラス製サンプル瓶に入れて蓋を閉め、常温で静置し、6時間静置後、及び24時間静置後の顔料分の沈降度合を目視で観測した。
○:24時間後も顔料沈降は観測されなかった。
△:6時間後は顔料沈降が観測されなかったが、24時間後には顔料沈降が確認された。
×:6時間後で顔料沈降が確認された。
【0107】
[保存安定性]
塗料組成物を、E型粘度計(東機産業株式会社製「TV−20形」)で粘度を測定した後、ガラス製サンプル瓶に入れて蓋を閉めて密封させた状態で60℃の恒温槽に放置した。30日後に恒温槽からサンプル瓶を取り出し、インクの粘度を測定した。評価は以下のように判断した。
○:粘度の変化率が10%未満。
△:粘度の変化率が10%以上20%未満。
×:粘度の変化率が20%以上、又はインクの分離が発生。
【0108】
[1次密着性試験]
塗料組成物をPC(ポリカーボネート)板、PET(ポリエチレンテレフタレート)板にエアースプレーにて膜厚10μmで塗装を行い、常温で10分、続けて80℃で10分乾燥させた。次に、塗膜表面にカッターナイフで1mm角で10×10個の切れ目を入れ、セロハンテープ(ニチバン社製「セロテープ」(登録商標)、18mm幅)による剥離試験を行い、残存する目数を下記基準で評価した。
○:86〜100個
△:60〜85個
×:59個以下
【0109】
[2次密着性試験]
上述の1次密着性試験と同様の手段で塗装基材を準備し、これを40℃の温水に24時間浸漬した。その後、1次密着性試験と同様のセロハンテープ(ニチバン株式会社製「セロテープ」(登録商標)、18mm幅)による剥離試験を行い、残存する目数を下記基準で評価した。
○:86〜100個
△:60〜85個
×:59個以下
【0110】
本発明の塗工液をメタリック塗料として用いた場合のメタリック塗装物の構成及び各評価結果をまとめたものを表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
表1〜表3に示した評価結果から、本発明の塗工液は、メタリックグラビアインキ、メタリックインクジェットインク、メタリック塗料として十分使用できることが確認できた。また、これらを塗工、印刷することにより、被印刷物、被塗工物に、粒状感のない均一な金属メッキと同等のメタリック調の塗膜を形成できることも確認できた。
【0113】
一方、メタリック顔料を用いた比較例の塗工液は、沈降安定性、保存安定性に劣ることが確認できた。また、比較例の塗工液を塗工、印刷することにより、被印刷物、被塗工物に、メタリック調の意匠は得られるものの、粒状感のあるメタリック調しか得られなかった。