【実施例】
【0032】
以下に本発明を実施例により、詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0033】
〜開環重合の進行確認〜
核磁気共鳴装置(NMR)(Varian社製、(商品名)GEMINI−2000型フーリエ変換核磁気共鳴装置)を用い、
1H−NMR(溶媒CDCl
3、テトラメチルシラン(TMS)基準)にて開環重合の追跡を行った。
【0034】
〜ラクチド共重合体の分子量、多分散度の測定〜
溶離液にクロロホルムを用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(東ソー(株)製、高速液体クロマトグラフ(商品名)SD−8020、カラム:(商品名)TSK−gel G2000H
xL、G3000H
xL及びG5000H
xL、溶出液:クロロホルム)を用い(40℃、流速1.0ml/min )、標準ポリスチレン換算値として測定した。
【0035】
〜ラクチド共重合体の溶融温度(Tm)、ガラス転移温度(Tg)の測定〜
示差走査熱量分析計(DSC)(セイコーインスツルメンツ製、(商品名)DSC6200(リファレンス:空アルミニウムパン;昇温速度:10℃/min;窒素流速:40mL/min)を用いて、0℃から230℃の範囲で加熱、急冷後、再加熱して測定した。
【0036】
合成例1
(4−(2−ヒドロキシエチル)−ε−カプロラクトンの合成)
(エチル−2−(4−オキソシクロヘキシリデン−4−エチレンアセタール)アセテート の合成)
ナスフラスコに攪拌子を入れて真空加熱乾燥した後、水素化ナトリウム(60% in oil)(132mg,3.3mmol)を秤取った。窒素置換したのちベンゼン(6.0ml)を加えた。0℃に冷却後、ホスホノ酢酸トリエチル(0.75ml,3.75mmol)を滴下して0℃〜室温で30分撹拌した。別の乾燥済みフラスコに1,4−シクロヘキサジオンモノエチレンアセタール(468mg,3.0mmol)を秤り取り、窒素置換後にベンゼン(3.0ml)で溶液とし、ステンレスキャニュラを用いて塩基処理したホスホノ酢酸トリエチル溶液へ加えて室温で1.5時間撹拌した。TLCで原料の消失を確認後、上澄みは飽和塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。沈殿は水に溶かしてトルエンで分液抽出後、上澄みと有機相を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製した(662mg,収率97%)。
【0037】
(エチル−2−(4−オキソシクロヘキシル−4−エチレンアセタール)アセテート の合成)
ナスフラスコ中でエタノール(5.0ml)にエチル−2−(4−オキソシクロヘキシリデン)アセテート−4−エチレンアセタール(662mg,2.92mmol)を溶解し、10wt%パラジウムカーボン(154 mg,0.14mmol)を添加し、ゴム風船圧をかけた水素ガス雰囲気にて一昼夜室温で撹拌した。TLCで原料の消失を確認した後、セライトで減圧濾過して濃縮後、真空乾燥で溶媒を除去した。パラジウムカーボンが混入したため、次の反応にて収量を算出した。
【0038】
(4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノン− エチレンアセタールの合成)
窒素雰囲気下のナスフラスコでエチル−2−(4−オキソシクロヘキシル−4−エチレンアセタール)アセテート を脱水ジエチルエーテル(13ml)に溶解し−20℃に冷却した。水素化アルミニウムリチウム(173mg,4.56mmol)と撹拌子を別のフラスコへ秤り取り窒素置換した後、エチル−2−(4−オキソシクロヘキシル−4−エチレンアセタール)アセテート のジエチルエーテル溶液を加えて−20℃から室温で1時間撹拌した。TLCで原料スポットの消失を確認後、冷却しながら水(0.17ml)、2mol/l水酸化ナトリウム水溶液(0.17ml,0.34mmol)、水(0.51ml)を滴下して反応を停止しセライトで濾過した。濾液をジエチルエーテルで分液抽出し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製した(430mg,収率79%)。
【0039】
(4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノンの合成)
THF(4ml)に4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノン− エチレンアセタール(430mg,2.31mmol)を溶解し、1mol/l塩酸(4ml)を加えて室温で一晩撹拌した。TLCで原料の消失を確認後、ジクロロメタンで分液抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を留去した(328mg,収率99%)。
【0040】
(4−(2−ヒドロキシエチル)−ε−カプロラクトンの合成)
ジクロロメタン(4ml)に4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノン(328mg,2.30mmol)を溶解し、80%メタクロロ過安息香酸(760mg,3.52mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。TLCで原料の消失を確認後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで分液抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製した。溶媒を留去後、クーゲル蒸留器で減圧蒸留(180℃,60Pa)し、再びシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。残存する水分を共沸で除去するためにクロロホルム溶液として減圧乾燥し、無色油状の4−(2−ヒドロキシエチル)−ε−カプロラクトンを得た。得られた4−(2−ヒドロキシエチル)−ε−カプロラクトンは一晩真空乾燥した後、精製トルエンで溶液とし凍結脱気して精製窒素下に保存した(122mg,収率33%、全収率25%)。
【0041】
実施例1
(触媒溶液の調製)
(N,N’−ビス(3−(tert−ブチルメチルシリル)サリチリデン)−2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン)ベンゾキシアルミニウムのトルエン溶液(0.60ml,0.020mmol)を調製後、さらに触媒溶液を精製トルエン(1.2ml)で希釈した。
(開環重合反応)
真空加熱乾燥した攪拌子入りすり付き試験管にラセミ体ラクチド(288mg,2.0mmol)を秤り取り、1時間以上真空乾燥した。ここへ4−(2−ヒドロキシエチル)−ε−カプロラクトンの0.10mol/lトルエン溶液(0.20ml,0.020mmol)を加えたのち、精製窒素下で触媒溶液のトルエン希釈液(1.8ml、0.020mmol)を加え70℃で撹拌し、開環重合反応を行った。
開環重合の進行は、
1H−NMRで追跡した。重合時間24時間、転化率が96%で重合を停止し、得られたラクチド共重合体を得た
得られたラクチド共重合体の粗ポリマーのSECを測定した結果、数平均分子量(Mn)は、17700、多分散度は1.42であった。メタノールによる精製、乾燥を行い、精製ラクチド共重合体を得た。DSC測定を行った結果、Tm=199℃、Tg=51℃であった。
得られたラクチド共重合体は、一般式(1)におけるl+n=122、m=1、p=2であるラクチド共重合体であり、
13C−NMR(DEPT−135)を測定したところ、主鎖中の分岐部位に帰属される三級炭素の共鳴吸収が、31ppmに観測され、分岐構造を有することを確認した。
【0042】
実施例2
4−(2−ヒドロキシエチル)−ε−カプロラクトンの添加量0.020mmolの代りに、0.040mmolとした以外は、実施例1と同様の方法によりラクチドと4−(2−ヒドロキシエチル)−ε−カプロラクトンの開環重合反応を行った。
開環重合の進行を、
1H−NMRで追跡した。転化率92%で重合を停止し、ラクチド共重合体を得た。
得られたラクチド共重合体の粗ポリマーのSECを測定した結果、数平均分子量(Mn)は、12800、多分散度は、1.35であった。また、精製ラクチド共重合体のDSC測定を行った結果、Tm=200℃、Tg=47℃であった。
得られたラクチド共重合体は、一般式(1)におけるl+n=88、m=2、p=2であるラクチド共重合体であった。
【0043】
実施例3
4−(2−ヒドロキシエチル)−ε−カプロラクトンの添加量0.020mmolの代りに、0.080mmolとした以外は、実施例1と同様の方法でラクチドと4−(2−ヒドロキシエチル)−ε−カプロラクトンの開環重合反応を行った。
開環重合の進行を、
1H−NMRで追跡し、転化率95%で重合を停止し、ラクチド共重合体を得た。
得られたラクチド共重合体の粗ポリマーのSECを測定した結果、数平均分子量(Mn)は、9200、多分散度は、1.66であった。また、精製ラクチド共重合体のDSC測定を行った結果、Tm=194℃、Tg=46℃であった。
得られたラクチド共重合体は、一般式(1)におけるl+n=63、m=3、p=2であるラクチド共重合体であった。
【0044】
比較例1
ラセミ体ラクチドの代りに、L体ラクチドを用い、4−(2−ヒドロキシエチル)−ε−カプロラクトンを用いなかった以外は、実施例1と同様の方法でラクチドの開環重合反応を行った。
開環重合の進行を、
1H−NMRで追跡し、転化率95%で重合を停止し、ラクチド重合体を得た。
得られたラクチド重合体の粗ポリマーのSECを測定した結果、数平均分子量(Mn)は、24900、多分散度は、1.10であった。また、精製ラクチド重合体のDSC測定を行った結果、Tm=167℃、Tg=47℃であった。
得られたラクチド重合体は、ラクチドの単独重合体であり、
13C−NMR(DEPT−135)を測定したところ、主鎖中の分岐部位に帰属される三級炭素の共鳴吸収が見られず、分岐構造は確認できなかった。