【実施例】
【0038】
次に、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの内容に制限されるものではない。なお、後述する本発明の実施例において、特にことわりのない限り、加工条件、測定(評価)条件は下記によるものである。
【0039】
[表面粗さの測定]
JIS B 0601に準じて、触針式表面粗さ測定器(TENCOR社製、TENCOR P-10)を使用して、荷重100μN、走査速度20μm/秒、測定距離800μmの条件でRz(十点平均粗さ)を測定した。
【0040】
[金属張積層体の密着性評価]
得られた両面銅張積層体をラミネート進行方向(MD方向)に長さ150mmに切り出し、市販のエッチング液(アデカケルミカFE-210、株式会社ADEKA製)を用いたサブトラクティブ法により、銅箔をエッチングして、ラミネート進行方向に沿って、幅1mm、長さ100mmの直線導体パターン7を形成した(
図2)。この際、直線導体パターン7は、両面金属張積層体の幅方向(加圧ロールの長さ方向)の中央の位置、中央から幅方向左右にそれぞれ10mm離れた位置の3箇所に形成して、密着性試験片とした。この直線導体パターンをラミネートロールに接する銅箔面(B)と離間フィルムと接する銅箔面(B‘)についてそれぞれ形成した試験片を作成し密着性の評価を実施した。この密着性試験片の3本の直線導体パターンについて、絶縁フィルム(A)から剥離する強度をJISC 6471 8.1 方法B(180°方向引き剥がし)に準じて測定した。そして、3本の剥離強度の平均値が0.8kN/m以上の場合を良好とし、0.8kN/m未満の場合を不良とする2段階で「密着性」を評価した。また、密着性のばらつきについては、3本の剥離強度のうちの最大値と最小値との差が0.3kN/m未満の場合を良好とし、0.3kN/m以上を不良とする2段階で「密着性のばらつき」を評価した。
【0041】
(実施例1)
絶縁性フィルム(A)として、厚さ50μm、幅30mmの液晶ポリマーフィルム2(融点320℃)がロール状に巻かれた長尺フィルムを準備し、金属箔(B、B')として、厚さ12μm、幅40mmの市販の電解銅箔1および1'(表面粗さRz:絶縁性フィルム積層面1.6μm、露出面1.4μm)がロール状に巻かれた長尺銅箔を準備し、離間フィルム(C)として、厚さ50μm、幅40mmの非熱可塑性である市販の耐熱性ポリイミドフィルム3(Tg:340℃、表裏ともに表面粗さRz:0.9μm、熱容量79.8
J/K)がロール状に巻かれた長尺耐熱性ポリイミドフィルムを準備した。これらを
図1に示すように、絶縁性フィルム繰出しロールA、金属箔繰出しロールB及びB'、離間フィルム繰出しロールCにそれぞれセットし、一対の加圧ロール4(r
1、r
2)の間に、"電解銅箔1/液晶ポリマーフィルム2/電解銅箔1'/耐熱性ポリイミドフィルム3/電解銅箔1'/液晶ポリマーフィルム2/電解銅箔1"の順で重なるように供給し、熱圧着後に自然冷却して、剥離ロール6により耐熱性ポリイミドフィルム3と電解銅箔1'とを層間剥離し、耐熱性ポリイミドフィルム3は離間フィルム巻取りロールC'で回収し、液晶ポリマーフィルム2と電解銅箔1および1'とが貼り合わされた両面銅張積層体5は、2箇所に設置した製品巻取りロールxでそれぞれ回収するようにした。
【0042】
電解銅箔1、1'、液晶ポリマーフィルム2、及び耐熱性ポリイミドフィルム3をいずれも0.7m/分の速度で移動させて、2つとも表面温度が280℃の加圧ロール4間により、ロール間圧力40kN/mで熱圧着し、熱圧着後は、自然冷却により積層物を冷却して、離間フィルム巻取りロールC'で耐熱性ポリイミドフィルム3を回収し、2箇所の製品巻取りロールxでは、実施例1に係る両面銅張積層体5をそれぞれ回収した。なお、実施例1で使用した装置の加圧ロール4は、いずれも長さ130mm、ロール径150mmのロール内部に表面温度調節機能を有する表面粗度Rzが1.6μmの炭素鋼製金属ロールを用いた。
【0043】
上記実施例1において、熱圧着後の電解銅箔1’と離間フィルムである耐熱性ポリイミドフィルム3の層間剥離は不具合なく極めて順調に行われ、回収された両面銅張積層体5を目視にて確認したところ、破れや皺、表面荒れの発生は全く確認されなかった。また、2箇所で回収された両面銅張積層体5の一方から、上述したようにして密着性試験片を作製し、液晶ポリマーフィルム2と電解銅箔1、および1'との密着性評価を行ったところ、3本の直線導体パターンで得られた剥離強度の平均値で評価した「密着性」はそれぞれ0.83kN/m、1.02kN/mであり、良好であった。更には、3本の剥離強度のうちの最大値と最小値との差から求めた「密着性のばらつき」はそれぞれ0.27kN/m、0.08kN/mであり、液晶ポリマーフィルム2と電解銅箔1および1’とが、面内で均一に接着されていることが確認された。結果を表1に示す。
【0044】
(実施例2)
離間フィルム(C)として、厚さ75μmの非熱可塑性である市販の耐熱性ポリイミドフィルム3(Tg:340℃、表裏ともに表面粗さRz:0.9μm、熱容量119.6
J/K)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る両面銅張積層体を得た。
【0045】
この実施例2において、熱圧着後の電解銅箔1'と耐熱性ポリイミドフィルム3の層間剥離は不具合なく極めて順調に行われた。また、密着性試験片による評価は、「密着性」が良好であり、「密着性のばらつき」も良好であって、液晶ポリマーフィルム2と電解銅箔1および1’とが、面内で均一に接着されていることが確認された。結果を表1に示す。
【0046】
(実施例3)
離間フィルム(C)として、両面銅張積層体(新日鐵化学社製 エスパネックスMシリーズ(MB12−25−12REQ)、表裏ともに表面粗さRz:0.85μm、熱容量122.8
J/K)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る両面銅張積層体を得た。この両面銅張積層体は、中心に絶縁層として厚さ25μmのポリイミド樹脂を有し、その両面に厚さ12μmの銅箔がそれぞれ設けられており、銅箔の露出面の表面粗さ(Rz)はいずれも0.85μmである。
【0047】
この実施例3の製造においても、熱圧着後の電解銅箔1'と離間フィルムである両面銅張積層体3の層間剥離は不具合なく極めて順調に行われた。また、密着性試験片による評価では、「密着性」が良好であり、「密着性のばらつき」も良好あって、得られた両面銅張積層体5は、面内で均一に接着されていることが確認された。結果を表1に示す。
【0048】
(実施例4)
離間フィルム(C)として、厚さ25μmのアルミニウム箔(表裏ともに表面粗さRz:1.2μm、熱容量60.5
J/K)を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係る両面銅張積層体を得た。
【0049】
この実施例4の製造においても、熱圧着後の電解銅箔1'と離間フィルムであるアルミニウム箔3の層間剥離は不具合なく極めて順調に行われた。また、密着性試験片による評価では、「密着性」が良好であり、「密着性のばらつき」も良好あって、得られた両面銅張積層体5は、面内で均一に接着されていることが確認された。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例5)
離間フィルム(C)として、厚さ50μmのアルミニウム箔(表裏ともに表面粗さRz:1.2μm、熱容量121.1
J/K)を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係る両面銅張積層体を得た。
【0051】
この実施例5の製造においても、熱圧着後の電解銅箔1'と離間フィルムであるアルミニウム箔3の層間剥離は不具合なく極めて順調に行われた。また、密着性試験片による評価では、「密着性」が良好であり、「密着性のばらつき」も良好あって、得られた両面銅張積層体5は、面内で均一に接着されていることが確認された。結果を表1に示す。
【0052】
(比較例1)
離間フィルム(C)として、厚さ25μmの非熱可塑性である市販の耐熱性ポリイミドフィルム3(Tg:340℃、表裏ともに表面粗さRz:0.9μm、熱容量39.9
J/K)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る両面銅張積層体を得た。
【0053】
この比較例1の製造においても、熱圧着後の電解銅箔1'と離間フィルムである耐熱性ポリイミドフィルム3の層間剥離は不具合なく極めて順調に行われた。但し、密着性試験片による評価では、「密着性」は良好であったが、「密着性のばらつき」は0.32kN/mであって、実施例の結果に比べて、両面銅張積層体5の面内での接着性は不均一であることが分った。結果を表1に示す。
【0054】
(比較例2)
離間フィルム(C)として、厚さ100μmの非熱可塑性である市販の耐熱性ポリイミドフィルム3(Tg:340℃、表裏ともに表面粗さRz:0.9μm、熱容量159.5
J/K)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2に係る両面銅張積層体を得た。
【0055】
この比較例2の製造においても、熱圧着後の電解銅箔1'と離間フィルムである耐熱性ポリイミドフィルム3の層間剥離は不具合なく極めて順調に行われた。但し、密着性試験片による評価では、「密着性」は良好であったが、「密着性のばらつき」は0.40kN/mであって、実施例の結果に比べて、両面銅張積層体5の面内での接着性は不均一であることが分った。結果を表1に示す。
【0056】
(比較例3)
離間フィルム(C)として、厚さ125μmの非熱可塑性である市販の耐熱性ポリイミドフィルム3(Tg:340℃、表裏ともに表面粗さRz:0.9μm、熱容量199.4
J/K)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3に係る両面銅張積層体を得た。
【0057】
この比較例3の製造においても、熱圧着後の電解銅箔1'と離間フィルムである耐熱性ポリイミドフィルム3の層間剥離は不具合なく極めて順調に行われた。しかしながら、密着性試験片による評価では、離間フィルム側の電解銅箔1'と液晶ポリマーフィルム2の「密着性」が0.51kN/mであり、実施例の結果に比べて、密着性が低いことが分かった。結果を表1に示す。
【0058】
(比較例4)
離間フィルム(C)として、両面銅張積層体(新日鐵化学社製 エスパネックスMシリーズ(MB12−50−12REQ)、表裏ともに表面粗さRz:0.85μm、熱容量162.8
J/K)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例4に係る両面銅張積層体を得た。
【0059】
この比較例4の製造においても、熱圧着後の電解銅箔1'と離間フィルムである両面銅張積層体3の層間剥離は不具合なく極めて順調に行われた。しかしながら、密着性試験片による評価では、離間フィルム側の電解銅箔1'と液晶ポリマーフィルム2の「密着性」が0.55kN/mであり、実施例の結果に比べて、密着性が低いことが分かった。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例5)
離間フィルム(C)として、厚さ50μmのステンレス箔(熱容量196.7
J/K)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例5に係る両面銅張積層体を得た。
【0061】
この比較例5の製造においても、熱圧着後の電解銅箔1'と離間フィルムであるステンレス箔3の層間剥離は不具合なく極めて順調に行われた。しかしながら、密着性試験片による評価では、離間フィルム側の電解銅箔1'と液晶ポリマーフィルム2の「密着性」が0.71kN/mであり、実施例の結果に比べて、密着性が低いことが分かった。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
以上の結果から、本発明に係る製造方法によれば、しわの発生や接着強度のばらつきをなくして、絶縁性フィルムと金属箔との層間密着性に優れた高品質の両面金属張積層体を、工業的に生産性良く製造できることが分かった。なお、本発明は上記実施の形態に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。