(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自端末の絶対位置を示す絶対位置情報、他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻及び通信相手を示す近接通信情報、並びに前記自端末に搭載された慣性航法センサにより検出された慣性航法情報を取得する取得手段、
前記取得手段によって取得された前記絶対位置情報を初期位置とし、前記取得手段により取得された前記慣性航法情報の時系列データに基づいて、前記自端末の慣性航法位置の軌跡を推定する軌跡推定手段、
前記軌跡推定手段によって推定された前記慣性航法位置の軌跡から、前記自端末の移動方向が変化した位置を各々抽出する抽出手段、
前記抽出手段によって抽出された位置を関節とし、前記慣性航法位置の軌跡を近似するように前記関節間を直線で結んだネットワークモデルであって、前記取得手段により取得された近接通信情報が示す他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻に対応する前記自端末の慣性航法位置を通信位置として前記近接通信情報と共に記録した前記ネットワークモデルを生成するモデル生成手段、及び
前記モデル生成手段によって生成された前記ネットワークモデルを送信する送信手段
を含む複数の移動体端末と、
前記複数の前記移動体端末から各々送信された前記ネットワークモデルを受信する受信手段、
前記受信手段によって受信された前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルに基づいて、前記移動体端末間での近接通信を行った通信位置が前記移動体端末間で対応していることを拘束条件として、前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルの各関節の角度を推定する角度推定手段、及び
前記角度推定手段によって推定された前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルの各関節の角度に基づいて、前記移動体端末毎の慣性航法位置の各々を補正する補正手段
を含む慣性航法装置と、
を含む慣性航法システム。
自端末の絶対位置を示す絶対位置情報、他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻及び通信相手を示す近接通信情報、並びに前記自端末に搭載された慣性航法センサにより検出された慣性航法情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記絶対位置情報を初期位置とし、前記取得手段により取得された前記慣性航法情報の時系列データに基づいて、前記自端末の慣性航法位置の軌跡を推定する軌跡推定手段と、
前記軌跡推定手段によって推定された前記慣性航法位置の軌跡から、前記自端末の移動方向が変化した位置を各々抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された位置を関節とし、前記慣性航法位置の軌跡を近似するように前記関節間を直線で結んだネットワークモデルであって、前記取得手段により取得された近接通信情報が示す他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻に対応する前記自端末の慣性航法位置を通信位置として前記近接通信情報と共に記録した前記ネットワークモデルを生成するモデル生成手段と、
前記モデル生成手段によって生成された前記ネットワークモデルと、他の移動体端末の前記ネットワークモデルとに基づいて、前記移動体端末間での近接通信を行った通信位置が前記移動体端末間で対応していることを拘束条件として推定された前記ネットワークモデルの各関節の角度に基づいて、前記自端末の慣性航法位置の各々を補正する補正手段と、
を含む移動体端末。
移動体端末の絶対位置情報を初期位置とし、慣性航法センサにより検出された慣性航法情報の時系列データに基づいて推定された前記移動体端末の慣性航法位置の軌跡から抽出された、前記移動体端末の移動方向が変化した位置の各々を関節とし、前記移動体端末の慣性航法位置の軌跡を近似するように前記関節間を直線で結んだネットワークモデルであって、他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻に対応する前記移動体端末の慣性航法位置を通信位置として、前記近接通信を行った時刻及び通信相手を示す近接通信情報と共に記録した前記ネットワークモデルを、複数の前記移動体端末について各々取得する手段と、
前記取得手段によって取得された前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルに基づいて、移動体端末間での近接通信を行った通信位置が前記移動体端末間で対応していることを拘束条件として、前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルの各関節の角度を推定する角度推定手段と、
前記角度推定手段によって推定された前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルの各関節の角度に基づいて、前記移動体端末毎の慣性航法位置の各々を補正する補正手段と、
を含む慣性航法装置。
前記角度推定手段は、前記ネットワークモデルが表す慣性航法位置の軌跡の初期位置が、前記取得した絶対位置情報であること、前記関節間の距離が、前記関節の前記慣性航法位置に基づいて定められる距離であること、及び前記通信位置が、前記慣性航法位置の軌跡上に存在することを更に拘束条件として、前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルの各関節の角度を推定する請求項1記載の慣性航法システム。
前記軌跡推定手段は、前記取得手段により新たな絶対位置情報が取得される毎に、該新たな絶対位置情報を用いて、前記慣性航法位置の軌跡を推定する請求項1、4、又は5記載の慣性航法システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、地磁気センサのキャリブレーションが不完全であるため、方位誤差を補正しきれない、という問題がある。
【0007】
また、非特許文献1記載の技術では、UWBを利用しているため、コストが高い、という問題がある。WifiやBluetooth(登録商標)などの安価なセンサを用いて、非特許文献1と同様の方法により、慣性航法誤差を補正することも考えられるが、測距誤差が問題となる。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、高価なセンサを用いることなく、移動体端末の位置を精度良く推定することができる慣性航法システム、移動体端末、慣性航法装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の慣性航法システムは、自端末の絶対位置を示す絶対位置情報、他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻及び通信相手を示す近接通信情報、並びに前記自端末に搭載された慣性航法センサにより検出された慣性航法情報を取得する取得手段、前記取得手段によって取得された前記絶対位置情報を初期位置とし、前記取得手段により取得された前記慣性航法情報の時系列データに基づいて、前記自端末の慣性航法位置の軌跡を推定する軌跡推定手段、前記軌跡推定手段によって推定された前記慣性航法位置の軌跡から、前記自端末の移動方向が変化した位置を各々抽出する抽出手段、前記抽出手段によって抽出された位置を関節とし、前記慣性航法位置の軌跡を近似するように前記関節間を直線で結んだネットワークモデルであって、前記取得手段により取得された近接通信情報が示す他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻に対応する前記自端末の慣性航法位置を通信位置として前記近接通信情報と共に記録した前記ネットワークモデルを生成するモデル生成手段、及び前記モデル生成手段によって生成された前記ネットワークモデルを送信する送信手段を含む複数の移動体端末と、前記複数の前記移動体端末から各々送信された前記ネットワークモデルを受信する受信手段、前記受信手段によって受信された前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルに基づいて、前記移動体端末間での近接通信を行った通信位置が前記移動体端末間で対応していることを拘束条件として、前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルの各関節の角度を推定する角度推定手段、及び前記角度推定手段によって推定された前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルの各関節の角度に基づいて、前記移動体端末毎の慣性航法位置の各々を補正する補正手段を含む慣性航法装置と、を含んで構成されている。
【0010】
本発明の慣性航法システムによれば、複数の移動体端末の各々において、取得手段によって、自端末の絶対位置を示す絶対位置情報、他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻及び通信相手を示す近接通信情報、並びに前記自端末に搭載された慣性航法センサにより検出された慣性航法情報を取得する。軌跡推定手段によって、前記取得手段によって取得された前記絶対位置情報を初期位置とし、前記取得手段により取得された前記慣性航法情報の時系列データに基づいて、前記自端末の慣性航法位置の軌跡を推定する。抽出手段によって、前記軌跡推定手段によって推定された前記慣性航法位置の軌跡から、前記自端末の移動方向が変化した位置を各々抽出する。
【0011】
そして、モデル生成手段によって、前記抽出手段によって抽出された位置を関節とし、前記慣性航法位置の軌跡を近似するように前記関節間を直線で結んだネットワークモデルであって、前記取得手段により取得された近接通信情報が示す他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻に対応する前記自端末の慣性航法位置を通信位置として前記近接通信情報と共に記録した前記ネットワークモデルを生成する。送信手段によって、前記モデル生成手段によって生成された前記ネットワークモデルを送信する。
【0012】
そして、慣性航法装置において、受信手段によって、前記複数の前記移動体端末から各々送信された前記ネットワークモデルを受信する。角度推定手段によって、前記受信手段によって受信された前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルに基づいて、前記移動体端末間での近接通信を行った通信位置が前記移動体端末間で対応していることを拘束条件として、前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルの各関節の角度を推定する。
【0013】
そして、補正手段によって、前記角度推定手段によって推定された前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルの各関節の角度に基づいて、前記移動体端末毎の慣性航法位置の各々を補正する。
【0014】
このように、移動体端末の各々について、絶対位置情報を初期位置とし、慣性航法情報の時系列データに基づいて推定される慣性航法位置の軌跡から、自端末の移動方向が変化した位置を抽出して、抽出された位置を関節とし、他の移動体端末との間で近接通信を行った位置を記録したネットワークモデルを生成し、移動体端末間での近接通信を行った通信位置が移動体端末間で対応していることを拘束条件として、移動体端末毎のネットワークモデルの各関節の角度を推定することにより、高価なセンサを用いることなく、移動体端末の位置を精度良く推定することができる。
【0015】
本発明に係る移動体端末は、自端末の絶対位置を示す絶対位置情報、他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻及び通信相手を示す近接通信情報、並びに前記自端末に搭載された慣性航法センサにより検出された慣性航法情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記絶対位置情報を初期位置とし、前記取得手段により取得された前記慣性航法情報の時系列データに基づいて、前記自端末の慣性航法位置の軌跡を推定する軌跡推定手段と、前記軌跡推定手段によって推定された前記慣性航法位置の軌跡から、前記自端末の移動方向が変化した位置を各々抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出された位置を関節とし、前記慣性航法位置の軌跡を近似するように前記関節間を直線で結んだネットワークモデルであって、前記取得手段により取得された近接通信情報が示す他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻に対応する前記自端末の慣性航法位置を通信位置として前記近接通信情報と共に記録した前記ネットワークモデルを生成するモデル生成手段と、前記モデル生成手段によって生成された前記ネットワークモデルと、他の移動体端末の前記ネットワークモデルとに基づいて、前記移動体端末間での近接通信を行った通信位置が前記移動体端末間で対応していることを拘束条件として推定された前記ネットワークモデルの各関節の角度に基づいて、前記自端末の慣性航法位置の各々を補正する補正手段と、を含んで構成されている。
【0016】
本発明に係る慣性航法装置は、移動体端末の絶対位置情報を初期位置とし、慣性航法センサにより検出された慣性航法情報の時系列データに基づいて推定された前記移動体端末の慣性航法位置の軌跡から抽出された、前記移動体端末の移動方向が変化した位置の各々を関節とし、前記移動体端末の慣性航法位置の軌跡を近似するように前記関節間を直線で結んだネットワークモデルであって、他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻に対応する前記移動体端末の慣性航法位置を通信位置として、前記近接通信を行った時刻及び通信相手を示す近接通信情報と共に記録した前記ネットワークモデルを、複数の前記移動体端末について各々取得する手段と、前記取得手段によって取得された前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルに基づいて、移動体端末間での近接通信を行った通信位置が前記移動体端末間で対応していることを拘束条件として、前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルの各関節の角度を推定する角度推定手段と、前記角度推定手段によって推定された前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルの各関節の角度に基づいて、前記移動体端末毎の慣性航法位置の各々を補正する補正手段と、を含んで構成されている。
【0017】
上記の角度推定手段は、前記ネットワークモデルが表す慣性航法位置の軌跡の初期位置が、前記取得した絶対位置情報であること、前記関節間の距離が、前記慣性航法位置の軌跡に基づいて得られる距離であること、及び前記通信位置が、前記慣性航法位置の軌跡上に存在することを更に拘束条件として、前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルの各関節の角度を推定するようにすることができる。
【0018】
上記の移動体端末は、前記取得手段によって取得した近接通信情報に基づいて、他の移動体端末との間で近接通信を行った通信位置を抽出する通信位置抽出手段を更に含み、前記モデル生成手段は、前記通信位置抽出手段によって抽出された通信位置を前記近接通信情報と共に記録した前記ネットワークモデルを生成するようにすることができる。
【0019】
上記の軌跡推定手段は、前記取得手段により新たな絶対位置情報が取得される毎に、該新たな絶対位置情報を用いて、前記慣性航法位置の軌跡を推定するようにすることができる。
【0020】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、自端末の絶対位置を示す絶対位置情報、他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻及び通信相手を示す近接通信情報、並びに前記自端末に搭載された慣性航法センサにより検出された慣性航法情報を取得する取得手段、前記取得手段によって取得された前記絶対位置情報を初期位置とし、前記取得手段により取得された前記慣性航法情報の時系列データに基づいて、前記自端末の慣性航法位置の軌跡を推定する軌跡推定手段、前記軌跡推定手段によって推定された前記慣性航法位置の軌跡から、前記自端末の移動方向が変化した位置を各々抽出する抽出手段、前記抽出手段によって抽出された位置を関節とし、前記慣性航法位置の軌跡を近似するように前記関節間を直線で結んだネットワークモデルであって、前記取得手段により取得された近接通信情報が示す他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻に対応する前記自端末の慣性航法位置を通信位置として前記近接通信情報と共に記録した前記ネットワークモデルを生成するモデル生成手段、及び前記モデル生成手段によって生成された前記ネットワークモデルと、他の移動体端末の前記ネットワークモデルとに基づいて、前記移動体端末間での近接通信を行った通信位置が前記移動体端末間で対応していることを拘束条件として推定された前記ネットワークモデルの各関節の角度に基づいて、前記自端末の慣性航法位置の各々を補正する補正手段として機能させるためのプログラムである。
【0021】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、移動体端末の絶対位置情報を初期位置とし、慣性航法センサにより検出された慣性航法情報の時系列データに基づいて推定された前記移動体端末の慣性航法位置の軌跡から抽出された、前記移動体端末の移動方向が変化した位置の各々を関節とし、前記移動体端末の慣性航法位置の軌跡を近似するように前記関節間を直線で結んだネットワークモデルであって、他の移動体端末との間で近接通信を行った時刻に対応する前記移動体端末の慣性航法位置を通信位置として、前記近接通信を行った時刻及び通信相手を示す近接通信情報と共に記録した前記ネットワークモデルを、複数の前記移動体端末について各々取得する取得手段、前記取得手段によって取得された前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルに基づいて、移動体端末間での近接通信を行った通信位置が前記移動体端末間で対応していることを拘束条件として、前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルの各関節の角度を推定する角度推定手段、及び前記角度推定手段によって推定された前記移動体端末毎の前記ネットワークモデルの各関節の角度に基づいて、前記移動体端末毎の慣性航法位置の各々を補正する補正手段として機能させるためのプログラムである。
【0022】
なお、本発明のプログラムを記憶する記憶媒体は、特に限定されず、ハードディスクであってもよいし、ROMであってもよい。また、CD−ROMやDVDディスク、光磁気ディスクやICカードであってもよい。更にまた、該プログラムを、ネットワークに接続されたサーバ等からダウンロードするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の慣性航法システム、移動体端末、慣性航法装置、及びプログラムによれば、移動体端末の各々について、絶対位置情報を初期位置とし、慣性航法情報の時系列データに基づいて推定される慣性航法位置の軌跡から、自端末の移動方向が変化した位置を抽出して、抽出された位置を関節とし、他の移動体端末との間で近接通信を行った位置を記録したネットワークモデルを生成し、移動体端末間での近接通信を行った通信位置が移動体端末間で対応していることを拘束条件として、移動体端末毎のネットワークモデルの各関節の角度を推定することにより、高価なセンサを用いることなく、移動体端末の位置を精度良く推定することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る慣性航法システム10は、複数の移動体端末30と、複数の移動体端末30から送信された移動体端末情報を受信して、複数の移動体端末30の位置を推定する慣性航法装置50とを備えている。複数の移動体端末30と慣性航法装置50とは、インターネットなどのネットワーク60を介して接続されている。
【0027】
移動体端末30は、Bluetooth(登録商標)や赤外線通信などにより近接して存在する他の移動体端末30との間で近接通信を行う近接通信装置32と、GPS(Global Positioning System)衛星及び基地局から送信されたGPS情報を受信するGPS装置34と、加速度センサ、地磁気センサ、ジャイロセンサ等で構成され、移動体端末30の移動量及び移動方向を含むINS(Inertial Navigation System)情報を取得するINS装置36と、移動体端末情報を慣性航法装置50へ送信するコンピュータ38とを含んで構成されている。
【0028】
このコンピュータ38は、移動体端末30全体の制御を司るCPU、後述するネットワークモデル生成処理ルーチンやモデル補正処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM、データを一時的に記憶するRAM、記憶手段としてのメモリ、ネットワークインタフェース等を含んで構成されており、機能的には、通信点抽出部40と、慣性航法推定部42と、関節抽出部44と、ネットワークモデル生成部46と、送受信部48とを含んだ構成で表すことができる。なお、慣性航法推定部42は本発明の軌跡推定手段の一例である。
【0029】
近接通信装置32は、他の移動体端末30との間で近接通信を行った際に、近接通信を行った時刻、通信相手、及び受信した信号強度を示す近接通信情報を出力する。
【0030】
GPS装置34は、受信したGPS情報に基づいて移動体端末30の位置を測位し、移動体端末の各時刻における絶対位置情報として出力する。GPS情報を受信できない屋内等の区間においては、絶対位置情報を出力しない。
【0031】
INS装置36は、加速度センサ、地磁気センサ、ジャイロセンサ等で検出された、移動体端末30の移動量及び移動方向を含むINS情報を出力する。
【0032】
通信点抽出部40は、近接通信装置32により得られた近接通信情報の信号強度に基づいて、信号強度が閾値以上となる近接通信情報を、通信位置のデータとして抽出する。
【0033】
図2(A)に示すように、Bluetooth(登録商標)や無線LANなどの通信では、距離に応じて受信する信号強度が変化する。移動体端末同士がすれ違うときには、信号強度が最大になる時点で最も距離が近くなる。
【0034】
そこで、通信点抽出部40は、抽出した、信号強度が閾値以上となる近接通信情報の中から、
図2(B)に示すように、信号強度から推定した距離に基づいて、過去T秒間の推定距離が最小値となる時点での近接通信情報を、通信位置のデータとして抽出する。
【0035】
慣性航法推定部42は、取得した各時刻の絶対位置情報の有無に基づいて、GPS受信不可区間に入る直前に移動体端末30で受信したGPS情報(最後に受信したGPS情報)に基づく絶対位置情報を、移動体端末30の初期位置として設定する。
【0036】
また、慣性航法推定部42は、設定した初期位置を基準として、取得したセンサ値及び下記(1)式に示すINSモデルに基づいて、各移動体端末の各時刻における慣性航法位置(以下、「INS軌跡」ともいう)を推定する。
【0038】
上記(2)式では、進行距離を歩幅ρxステップ数で求める。ステップ数は加速度センサの垂直成分の波形から、ピークの数を数えて求められる。s
kはk番目のステップにおける移動体端末30のINS情報(INS装置36の観測値)である。また、ρ
kは移動体端末30を携帯する歩行者のk番目のステップの歩幅である。θ
kは移動体端末30のk番目のステップにおける進行方位であり、地磁気センサの観測値である。Kは歩行者の歩幅パラメータ(定数)、a
maxkは移動体端末30のk番目のステップ付近の加速度最大値、a
minkは移動体端末30のk番目のステップ付近の加速度最小値である。上記(2)式においてパラメータKが決まるとINS軌跡が一意に決まるため、INS軌跡を計算することは、パラメータKを求める問題になる。
【0039】
関節抽出部44は、慣性航法推定部42によって推定されたINS軌跡に基づいて、方位変化が大きい位置を抽出し、抽出した位置を関節として定義する。例えば、
図3に示すように、INS軌跡から、方位角変化を算出し、方位角変化から、各時刻について、一定時間の角度変化量を算出する。角度変化量が閾値以上であって、角度変化量が極大となる時刻を抽出し、抽出された時刻に対応する慣性航法位置を抽出し、関節として定義する。
【0040】
ネットワークモデル生成部46は、通信点抽出部40による抽出結果、慣性航法推定部42によって推定されたINS軌跡、及び関節抽出部44による抽出結果を取得し、取得した各情報に基づいて、INS軌跡を近似するように、抽出された関節間を直線で結んだネットワークモデルであって、抽出された通信位置の時刻に対応する移動体端末30の慣性航法位置を通信位置として近接通信情報と共に記録したネットワークモデルを生成し、自端末の識別情報を付与して、移動体端末情報として生成する。
【0041】
ここで、
図4に示すように、生成されるネットワークモデルは、出発点、関節、通信位置の各々をノードとして表し、ノード間が直線リンクで結合されている。
【0042】
ネットワークモデルの各ノードには、慣性航法から求まるノードの位置情報が記録されると共に、ノード番号とノード種別とが付与されている(1:gps, 2:関節, 3:通信点, …)。また、通信位置のノードの各々には、通信相手の端末IDが記録されている。また、ネットワークモデルは、リンク情報(どのノード間が結合されているか、[1,2],[2,3],[3,4]…)を含んでいる。
【0043】
送受信部48は、ネットワークモデル生成部46により生成された、自端末の識別情報(端末ID)を付したネットワークモデルを含む移動体端末情報を慣性航法装置50へ送信する。また、慣性航法装置50で補正されたネットワークモデルの各ノード位置を示す位置情報を受信し、図示しない表示装置等に受信した位置情報を表示するように制御する。
【0044】
慣性航法装置50は、慣性航法装置50全体の制御を司るCPU、後述するネットワーク計算処理ルーチンを実現するためのプログラムを記憶したROM、データを一時的に記憶するRAM、HDD等の記憶装置、及びネットワークインタフェース等を含むコンピュータ52で構成されている。このコンピュータ52は、機能的には、送受信部54と、ネットワーク計算部56と、ノード位置補正部58とを含んだ構成で表すことができる。なお、ネットワーク計算部56は本発明の角度推定手段の一例であり、ノード位置補正部58本発明の補正手段の一例である。
【0045】
送受信部54は、複数の移動体端末30から送信された移動体端末情報の各々を受信し、移動体端末情報に含まれるネットワークモデルをネットワーク計算部56へ受け渡す。また、補正した各ネットワークモデルの各ノードの位置情報を各移動体端末30へ送信する。
【0046】
ネットワーク計算部56は、複数の移動体端末30のネットワークモデルに基づいて、以下の(2)式〜(6)式に示す拘束条件の下、ネットワークモデルの各関節の角度の最適解を求める。
【0048】
ただし、初期値と変位の関係が、以下の式で表わされる。
【0051】
m:移動体端末を識別する番号1〜N
x
jm:移動体端末mの関節jの位置
θ
jm:移動体端末mの関節jの角度
x
cm:移動体端末mの通信位置cの位置
x
GPSm:GPSにより観測された絶対位置
d
j1-j2m:関節j1、j2の距離
【0052】
上記(2)式の拘束条件は、各移動体端末のネットワークモデルの初期位置は、GPSで求めた絶対位置であることを示している。上記(3)式の拘束条件は、関節間の距離は、当該関節の慣性航法位置に基づいて定められることを示している。上記(4)式の拘束条件は、通信位置が、INS軌跡上に存在することを示している。上記(5)式の拘束条件は、近接無線通信を行った移動体端末間で当該移動体端末の通信位置が同一であることを示している。上記(6)式の拘束条件は、地磁気センサに関するオフセット誤差の平均は0となることを示している。
【0053】
上記(2)式〜(6)式の連立方程式は、以下の(7)式に示す行列方程式の形に書ける。
【0055】
なお、移動体端末30が3つ以上ある場合には、移動体端末30毎に、上記(2)式〜(4)式の方程式が生成され、移動体端末30の組み合わせ毎に、上記(5)式の方程式が生成される。
【0056】
ここで、Q
yを、上記(2)式〜(6)式の拘束条件の誤差を表す共分散行列とすると、以下の(8)式に従って、最小二乗法により最適解が求められる。
【0058】
ネットワーク計算部56は、複数の移動体端末30から受信した移動体端末情報のネットワークモデルに基づいて、上記(8)式に従って、最小二乗法により、各ネットワークモデルの各関節の角度の初期値との変位Δθ、各ノード(各関節及び各通信位置)の位置の初期値との変位Δxの最適解を求める。
【0059】
ノード位置補正部58は、ネットワーク計算部56によって計算された各ネットワークモデルの各ノードの位置の初期値との変位Δxに基づいて、複数の移動体端末30から受信した移動体端末情報のネットワークモデルの各ノード位置を補正する。
【0060】
このようにして、拘束条件を同時に満たす各関節の角度の最適解を計算することにより、ネットワークモデルの各ノードに設定された慣性航法位置が近接通信情報を使って補正される(
図5(A)、(B)参照)。
【0061】
次に、
図6を参照して、第1の実施の形態に係る移動体端末30において実行されるネットワークモデル生成処理ルーチンについて説明する。
【0062】
ステップ100で、GPS装置34によってGPS情報を受信したか否かを判定する。GPS装置34によってGPS情報を受信すると、ステップ102へ進む。
【0063】
ステップ102では、上記ステップ100で受信したGPS情報に基づく絶対位置情報を、移動体端末30の初期位置として設定する。
【0064】
ステップ104では、GPS装置34によってGPS情報を受信したか否かを判定する。GPS装置34によってGPS情報を受信すると、移動体端末30の初期位置を新たに設定する必要があると判断し、上記ステップ102へ戻る。一方、GPS装置34によってGPS情報を受信していない場合には、ステップ106へ進む。
【0065】
ステップ106では、INS装置36の加速度センサ、磁気センサ、ジャイロセンサ等で検出されたINS情報を取得する。ステップ108では、近接通信装置32によって行われた近接通信の近接通信情報を取得する。
【0066】
ステップ110において、上記ステップ106、108で所定期間以上のデータを取得したか否かを判定する。所定期間以上のデータを取得していない場合には、ステップ104へ戻る。一方、所定期間以上のデータを取得した場合には、ステップ112へ進む。
【0067】
ステップ112では、上記ステップ102で設定した初期位置を基準として、上記ステップ106で取得したINS情報及び上記(1)式に示すINSモデルに基づいて、移動体端末30の各時刻における慣性航法位置を推定し、INS軌跡を推定する。
【0068】
次のステップ114では、上記ステップ112で推定されたINS軌跡から、方位変化が大きい位置を関節として抽出する。ステップ116では、上記ステップ108で取得した近接通信情報の信号強度に基づいて、通信位置を抽出する。
【0069】
そして、ステップ118において、上記ステップ112で推定されたINS軌跡、上記ステップ114で抽出された関節の位置、及び上記ステップ116で抽出された通信位置に基づいて、ネットワークモデルを生成する。
【0070】
このとき、前回のステップ118で生成されたネットワークモデルであって、初期位置が同一であるネットワークモデルが存在する場合には、前回のステップ116で生成されたネットワークモデルと結合させたネットワークモデルを生成する。また、後述するモデル補正処理ルーチンで、前回生成されたネットワークモデルの各ノード位置が補正されている場合には、当該補正されているネットワークモデルと結合させたネットワークモデルを生成する。
【0071】
次のステップ120では、上記ステップ118で生成されたネットワークモデルに、移動体端末30のIDを付して、移動体端末情報として慣性航法装置50へ送信し、上記ステップ104へ戻る。
【0072】
このように、各移動体端末30が、上記ネットワークモデル生成処理ルーチンを実行することにより、GPS情報を受信した後にGPS受信不可区間に入った場合に、GPS情報に基づく絶対位置を初期位置としたネットワークモデルを随時生成して、慣性航法装置50へ送信する。
【0073】
次に、
図7を参照して、第1の実施の形態に係る慣性航法装置50において実行されるネットワーク計算処理ルーチンについて説明する。
【0074】
ステップ130で、送受信部54が、複数の移動体端末30から送信された移動体端末情報の各々を受信して、移動体端末情報を収集する。
【0075】
次に、ステップ132で、上記ステップ130で収集された移動体端末情報に含まれるネットワークモデルにおける通信位置の有無に基づいて、受信した移動体端末情報に通信位置が含まれるか否かを判定する。通信位置が含まれる場合には、ステップ134へ移行し、一方、通信位置が含まれない場合には、ネットワーク計算を行うことができないと判断し、ネットワーク計算処理ルーチンを終了する。
【0076】
ステップ134では、上記ステップ130で収集された移動体端末情報に含まれるネットワークモデルについて成立する拘束条件((2)式〜(6)式)の下、各ネットワークモデルの各ノードの位置の変位及び各関節の角度の変位の最適解を計算する。
【0077】
次に、ステップ136で、上記ステップ136で計算された各ノードの位置の変位に基づいて、移動体端末情報に含まれるネットワークモデルの各ノード位置を補正する。ステップ138では、上記ステップ136で各ノード位置が補正されたネットワークモデルの各々を、当該ネットワークモデルを含む移動体端末情報を送信した移動体端末30へ送信し、ネットワーク計算処理ルーチンを終了する。
【0078】
次に、
図8を参照して、第1の実施の形態に係る移動体端末30において実行されるモデル補正処理ルーチンについて説明する。
【0079】
まず、ステップ150において、送受信部48によって、慣性航法装置50から送信された、各ノード位置が補正されたネットワークモデルを受信したか否かを判定する。各ノード位置が補正されたネットワークモデルを受信すると、ステップ152へ進み、上述したネットワークモデル生成処理ルーチンで生成したネットワークモデルを、上記ステップ150で受信した、各ノード位置が補正されたネットワークモデルに更新し、モデル補正処理ルーチンを終了する。
【0080】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る慣性航法システムによれば、移動体端末の各々において、GPS情報に基づく絶対位置情報を初期位置とし、INS情報の時系列データに基づいて推定されるINS軌跡から、自端末の移動方向が変化した位置を抽出して、抽出された位置を関節とし、他の移動体端末との間で近接通信を行った位置を記録したネットワークモデルを生成する。慣性航法装置は、複数の移動体端末の各々で生成されたネットワークモデルに基づいて、移動体端末間での近接通信を行った通信位置が移動体端末間で同一となることを拘束条件として、移動体端末毎のネットワークモデルの各関節の角度の最適解を推定することにより、高価なセンサを用いることなく、移動体端末の位置を精度良く推定することができる。
【0081】
また、屋内に設置するインフラがない場合でも、近接通信を使って慣性航法誤差を補正することで、携帯端末のみで自己位置を精度よく推定することができる。また、測距精度の低いWifi等であっても、距離の近い状況ではある程度の測距精度が保証できる。一方、データ点数が少なくなるが、関節モデルを利用することで自由度を下げることができるため、少ないデータ点数でも効果を得ることができる。
【0082】
また、INS軌跡をリンク構造であるネットワークモデルで近似し、Wifiを使った協調測位で、ネットワークモデルの各関節の角度を推定する。これによって、地磁気センサのオフセット誤差を補正できる。また、ネットワークモデルの自由度が低いため、精度良い点が少ないWifiデータなどの近接通信情報であっても、移動体端末の位置を精度よく推定することができる。
【0083】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0084】
第2の実施の形態では、慣性航法装置側で、ネットワークモデルを生成している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0085】
図9に示すように、第2の実施の形態に係る慣性航法システム210の移動体端末230は、近接通信装置32と、GPS装置34と、INS装置36と、移動体端末情報を慣性航法装置250へ送信するコンピュータ238とを含んで構成されている。
【0086】
このコンピュータ238は、機能的には、制御部248と送受信部48とを含んだ構成で表すことができる。
【0087】
制御部248は、各時刻において、近接通信装置32から出力された近接通信情報、GPS装置34から出力された絶対位置情報、及びINS装置36から出力されたINS情報を取得し、取得した各情報をまとめて、自端末の識別情報を付与した移動体端末情報として生成する。なお、近接通信情報は近接通信が行われた際に出力され、絶対位置情報はGPS情報が受信された場合に出力されるものであるため、各時刻における移動体端末情報には、近接通信情報及び絶対位置情報が含まれない場合もある。
【0088】
送受信部48は、制御部248により生成された移動体端末情報を所定時間毎に慣性航法装置250へ送信する。また、慣性航法装置250で推定された位置を示す位置情報を受信し、図示しない表示装置等に受信した位置情報を表示するように制御する。
【0089】
慣性航法装置250は、機能的には、送受信部54と、通信点抽出部240と、慣性航法推定部242と、関節抽出部244と、ネットワークモデル生成部246と、ネットワーク計算部56と、ノード位置補正部58とを含んだ構成で表すことができる。
【0090】
送受信部54は、複数の移動体端末230から送信された移動体端末情報の各々を受信し、移動体端末情報に含まれる絶対位置情報及びセンサ値を慣性航法推定部242へ受け渡し、かつ、移動体端末情報に含まれる近接通信情報を通信点抽出部240へ受け渡す。また、各ノードの位置情報を補正した各ネットワークモデルから得られる各移動体端末30の絶対位置情報を各移動体端末230へ送信する。
【0091】
通信点抽出部240は、複数の移動体端末230の各々について、当該移動体端末230から送信された移動体端末情報に含まれる近接通信情報の信号強度に基づいて、上記の第1の実施の形態における通信点抽出部40と同様に、信号強度が閾値以上となる近接通信情報を、当該移動体端末230の通信位置のデータとして抽出する。
【0092】
慣性航法推定部242は、複数の移動体端末230の各々について、当該移動体端末230について取得した各時刻の絶対位置情報の有無に基づいて、上記の第1の実施の形態と同様に、GPS受信不可区間に入る直前に移動体端末30で受信したGPS情報(最後に受信したGPS情報)に基づく絶対位置情報を、移動体端末230の初期位置として設定する。
【0093】
また、慣性航法推定部242は、複数の移動体端末230の各々について、設定した初期位置を基準として、取得したセンサ値及び上記(1)式に示すINSモデルに基づいて、上記の第1の実施の形態と同様に、当該移動体端末230の各時刻における慣性航法位置を推定し、当該移動体端末230のINS軌跡を推定する。
【0094】
関節抽出部244は、複数の移動体端末230の各々について、慣性航法推定部242によって当該移動体端末について推定されたINS軌跡に基づいて、上記の第1の実施の形態と同様に、方位変化が大きい位置を抽出し、抽出した位置を関節として定義する。
【0095】
ネットワークモデル生成部246は、複数の移動体端末230の各々について、通信点抽出部40による当該移動体端末に対する抽出結果、慣性航法推定部42によって推定された当該移動体端末のINS軌跡、及び関節抽出部44による当該移動体端末に対する抽出結果を取得し、取得した各情報に基づいて、上記の第1の実施の形態と同様に、当該移動体端末230のネットワークモデルを生成する。
【0096】
第2の実施の形態に係る慣性航法装置250によって実行されるネットワーク計算処理ルーチンについて
図10を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0097】
まず、ステップ260で、送受信部54が、一定期間の間、複数の移動体端末230から送信された移動体端末情報の各々を受信して、移動端端末情報を収集する。
【0098】
次に、ステップ262で、上記ステップ260で収集された移動体端末情報に基づいて、受信した移動体端末情報に近接通信情報が含まれるか否かを判定する。近接通信情報が含まれる場合には、ステップ264へ移行し、一方、近接通信情報が含まれない場合には、ネットワーク計算を行うことができないと判断し、ネットワーク計算処理ルーチンを終了する。
【0099】
ステップ264では、上記ステップ260で移動体端末情報を受信した複数の移動体端末230の各々について、上記ステップ260で収集した当該移動体端末230の移動体端末情報に含まれる最後のGPS情報に基づく絶対位置情報を、当該移動体端末230の初期位置として設定する。
【0100】
ステップ266では、上記ステップ260で移動体端末情報を受信した複数の移動体端末230の各々について、上記ステップ264で設定した初期位置を基準として、上記ステップ260で収集した移動体端末情報に含まれる各センサ値及び上記(1)式に示すINSモデルに基づいて、当該移動体端末230の各時刻における慣性航法位置を推定し、INS軌跡を推定する。
【0101】
次のステップ268では、上記ステップ260で移動体端末情報を受信した複数の移動体端末230の各々について、上記ステップ266で推定された当該移動体端末230のINS軌跡から、方位変化が大きい位置を関節として抽出する。ステップ270では、上記ステップ260で移動体端末情報を受信した複数の移動体端末230の各々について、上記ステップ260で収集した当該移動体端末230の移動体端末情報に含まれる近接通信情報の信号強度に基づいて、通信位置を抽出する。
【0102】
そして、ステップ272において、上記ステップ260で移動体端末情報を受信した複数の移動体端末230の各々について、上記ステップ266で推定されたINS軌跡、上記ステップ268で抽出された関節の位置、及び上記ステップ270で抽出された通信位置に基づいて、当該移動体端末230のネットワークモデルを生成する。
【0103】
ステップ134では、上記ステップ272で生成されたネットワークモデルについて成立する拘束条件((2)式〜(6)式)の下、各ネットワークモデルの各ノードの位置の変位及び各関節の角度の変位の最適解を計算する。
【0104】
次に、ステップ136で、上記ステップ136で計算された各ノードの位置の変位に基づいて、各移動体端末230のネットワークモデルの各ノード位置を補正する。ステップ274では、上記ステップ260で移動体端末情報を受信した複数の移動体端末230の各々について、上記ステップ136で各ノード位置が補正された当該移動体端末230のネットワークモデルに基づいて、当該移動体端末230の絶対位置情報を求め、当該移動体端末230へ送信し、ネットワーク計算処理ルーチンを終了する。
【0105】
なお、第2の実施の形態に係る慣性航法システム210の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0106】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る慣性航法システムによれば、慣性航法装置において、移動体端末の各々について、GPS情報に基づく絶対位置情報を初期位置とし、INS情報の時系列データに基づいて推定されるINS軌跡から、自端末の移動方向が変化した位置を抽出して、抽出された位置を関節とし、他の移動体端末との間で近接通信を行った位置を記録したネットワークモデルを生成する。そして、慣性航法装置は、複数の移動体端末の各々で生成されたネットワークモデルに基づいて、移動体端末間での近接通信を行った通信位置が移動体端末間で同一となることを拘束条件として、移動体端末毎のネットワークモデルの各関節の角度の最適解を推定することにより、高価なセンサを用いることなく、移動体端末の位置を精度良く推定することができる。
【0107】
なお、上記実施の形態では、移動体端末を歩行者が携帯する形態を想定しているが、移動体端末を車両等の移動体に搭載した形態としてもよい。
【0108】
また、上記実施の形態では、GPS受信不可区間に入る直前にGPS情報に基づく絶対位置を初期位置として設定する場合について説明したが、例えば、建物に入る際に移動体端末に搭載されたIC等に記録されるタグ情報等を初期位置として設定してもよい。
【0109】
また、慣性航法装置において、各ネットワークモデルの各関節の角度の最適解を計算する場合を例に説明したが、これに限定されるものでない。例えば、移動体端末において、自己のネットワークモデルを生成すると共に、他の移動体端末からネットワークモデルを受信し、移動体端末が、複数のネットワークモデルに基づいて、各ネットワークモデルの各関節の角度の最適解を計算するようにしてもよい。