特許第6031405号(P6031405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031405
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】ベンゾトリアゾール化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 249/20 20060101AFI20161114BHJP
   C08F 20/36 20060101ALI20161114BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   C07D249/20 502
   C07D249/20CSP
   C08F20/36
   C08F290/06
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-96263(P2013-96263)
(22)【出願日】2013年5月1日
(65)【公開番号】特開2014-218439(P2014-218439A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100143856
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 廣己
(72)【発明者】
【氏名】日渡 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】田崎 晃子
(72)【発明者】
【氏名】池島 哲也
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−273124(JP,A)
【文献】 特開2012−25681(JP,A)
【文献】 特開2012−25811(JP,A)
【文献】 特開平02−142778(JP,A)
【文献】 特開2004−099775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 249/20
C08F 20/36
C08F 290/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物。
【化1】
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、R3は炭素数1〜4のアルキレン基を表わし、R4は直接結合又は炭素数1〜8の2価炭化水素基を表わし、R5は水素原子又はメチル基を表わし、Xは下記一般式(2)〜(5)のいずれかで表される基を表わし、aは0〜1000の数を表わす。)
【化2】
(式中、R6は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、bは1〜1000の数を表わす。)
【化3】
(式中、R7は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、cは1〜1000の数を表わす。)
【化4】
(式中、R8は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、dは1〜1000の数を表わす。)
【化5】
(式中、R9は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、eは1〜1000の数を表わす。)
【請求項2】
請求項1に記載のベンゾトリアゾール化合物と他のラジカル重合性化合物とを重合させて得られる重合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に乳化重合に好適に使用できる、ラジカル反応が可能で親水性基を有するベンゾトリアゾール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール化合物は、高分子材料等の光照射による劣化を防止するために用いられる紫外線吸収剤として有用である。2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール化合物の多くは、低分子量の化合物であることから、高分子材料を加熱加工する際の揮散や、加工後の高分子材料からのブリード等の欠点があった。このため、高分子材料に2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール化合物を結合させ、揮散やブリードを防止することを目的として、ラジカル反応性基を有する2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール化合物(例えば、特許文献1〜4を参照)が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−38411号公報
【特許文献2】特開昭63−185969号公報
【特許文献3】特開平2−142778号公報
【特許文献4】特表2002−514662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの化合物は、乳化重合時の水への分散性が不十分であることから高分子材料に均一に結合されず、紫外線の吸収効果が十分発揮できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、水への分散性に優れたベンゾトリアゾール化合物について種々検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、下記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物である。
【化1】
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、R3は炭素数1〜4のアルキレン基を表わし、R4は直接結合又は炭素数1〜8の2価炭化水素基を表わし、R5は水素原子又はメチル基を表わし、Xは下記一般式(2)〜(5)のいずれかで表される基を表わし、aは0〜1000の数を表わす。)
【化2】
(式中、R6は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、bは1〜1000の数を表わす。)
【化3】
(式中、R7は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、cは1〜1000の数を表わす。)
【化4】
(式中、R8は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、dは1〜1000の数を表わす。)
【化5】
(式中、R9は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、eは1〜1000の数を表わす。)
【発明の効果】
【0006】
本発明の効果は、ラジカル反応性基を有し、水分散性が良好な、ベンゾトリアゾール化合物を提供したことにある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の化合物A1の1H−NMRチャートである。
図2】本発明の化合物A2の1H−NMRチャートである。
図3】本発明の化合物A3の1H−NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の前記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物について説明する。
前記一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わす。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、イソペンチル基等が挙げられる。R1としては、原料の入手が容易であり、紫外線吸収効果が大きいことから、水素原子、メチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基が好ましく、メチル基、t−ブチル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。R2としては、原料の入手が容易であり、紫外線吸収効果が大きいことから、メチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基が好ましく、メチル基、t−ブチル基が更に好ましく、メチル基が最も好ましい。R3は炭素数1〜4のアルキレン基を表わす。炭素数1〜4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、プロピレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、エチルメチレン基、ブチレン基、2−メチルプロピレン基等が挙げられる。R3としては、原料の入手が容易であり、副反応が少ないことから、エチレン基が好ましい。
【0009】
4は直接結合又は炭素数1〜8の2価炭化水素基を表わす。R4を、R4に隣接する2つのカルボニル基と組み合わせて下記一般式(1x)で表される基としてとらえると、下記一般式(1x)で表される基は炭素数2〜10の二塩基酸から2つの水酸基を除いた残基、R4は炭素数2〜10の二塩基酸から2つのカルボキシル基を除いた残基とみることも可能である。本発明のベンゾトリアゾール化合物を製造する場合には、工業的な入手が容易であり、反応も容易であることから、原料として炭素数2〜10の二塩基酸又はその酸無水物、中でも炭素数2〜10の二塩基酸の酸無水物を使用することが好ましい。炭素数2〜10の二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられ、炭素数2〜10の二塩基酸の酸無水物としては、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。従って、R4は、炭素数2〜10の二塩基酸から2つのカルボキシル基を除いた残基であることが好ましく、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸から2つのカルボキシル基を除いた残基であることが更に好ましく、コハク酸から2つのカルボキシル基を除いた残基であることが最も好ましい。
【化6】
(式中、R4は一般式(1)と同義である。)
【0010】
5は水素原子又はメチル基を表わし、本発明のベンゾトリアゾール化合物の保存安定性が良好であることから、R5はメチル基が好ましい。
【0011】
前記一般式(1)において、aは0〜1000の数を表わし、製造が容易であることから、aは0の数であることが好ましい。
【0012】
前記一般式(1)において、Xは下記一般式(2)〜(5)のいずれかで表される基を表わし、本発明のベンゾトリアゾール化合物の水溶性又は水分散性の点から、下記一般式(4)又は(5)で表される基が好ましく、下記一般式(5)で表される基が更に好ましい。
【化7】
(式中、R6は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、bは1〜1000の数を表わす。)
【化8】
(式中、R7は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、cは1〜1000の数を表わす。)
【化9】
(式中、R8は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、dは1〜1000の数を表わす。)
【化10】
(式中、R9は炭素数1〜5のアルキル基を表わし、eは1〜1000の数を表わす。)
【0013】
前記一般式(2)において、R6は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わす。炭素数1〜5のアルキル基としては、一般式(1)のR1及びR2で例示したアルキル基が挙げられる。R6としては原料の工業的な入手が容易であることから水素原子が好ましい。bは1〜1000の数を表わす。本発明のベンゾトリアゾール化合物の水溶性又は水分散性の点からは、bは大きい数であることが好ましいが、あまりにも大きい場合には、分子内に占めるベンゾトリアゾール部分の割合が少なくなり、本発明のベンゾトリアゾール化合物の紫外線吸収効果が低下することから、a+bが、2〜60の数であることが好ましく、2〜30の数であることが更に好ましく、2〜15の数であることが最も好ましい。
【0014】
前記一般式(3)において、R7は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わす。炭素数1〜5のアルキル基としては、一般式(1)のR1及びR2で例示したアルキル基が挙げられる。R7としては原料の工業的な入手が容易であることから水素原子が好ましい。cは1〜1000の数を表わす。本発明のベンゾトリアゾール化合物の水溶性又は水分散性の点からは、cは大きい数であることが好ましいが、あまりにも大きい場合には、分子内に占めるベンゾトリアゾール部分の割合が少なくなり、本発明のベンゾトリアゾール化合物の紫外線吸収効果が低下することから、a+cが、2〜60の数であることが好ましく、2〜30の数であることが更に好ましく、2〜15の数であることが最も好ましい。
【0015】
前記一般式(4)において、R8は炭素数1〜5のアルキル基を表わす。炭素数1〜5のアルキル基としては、一般式(1)のR1及びR2で例示したアルキル基が挙げられる。R8としては、本発明のベンゾトリアゾール化合物の水溶性又は水分散性の点から、炭素数の少ないアルキル基が好ましいが、製造が容易であることから、炭素数3〜4のアルキル基が好ましく、ブチル基又はイソブチル基が更に好ましい。dは1〜1000の数を表わす。本発明のベンゾトリアゾール化合物の水溶性又は水分散性の点からは、dは大きい数であることが好ましいが、あまりにも大きい場合には、分子内に占めるベンゾトリアゾール部分の割合が少なくなり、本発明のベンゾトリアゾール化合物の紫外線吸収効果が低下することから、a+dが、2〜60の数であることが好ましく、2〜30の数であることが更に好ましく、2〜15の数であることが最も好ましい。
【0016】
前記一般式(5)において、R9は炭素数1〜5のアルキル基を表わす。炭素数1〜5のアルキル基としては、一般式(1)のR1及びR2で例示したアルキル基が挙げられる。R9としては、本発明のベンゾトリアゾール化合物の水溶性又は水分散性の点から、炭素数の少ないアルキル基が好ましいが、製造が容易であることから、炭素数3〜4のアルキル基が好ましく、ブチル基又はイソブチル基が更に好ましい。eは1〜1000の数を表わす。本発明のベンゾトリアゾール化合物の水溶性又は水分散性の点からは、eは大きい数であることが好ましいが、あまりにも大きい場合には、分子内に占めるベンゾトリアゾール部分の割合が少なくなり、本発明のベンゾトリアゾール化合物の紫外線吸収効果が低下することから、a+eが、2〜60の数であることが好ましく、2〜30の数であることが更に好ましく、2〜15の数であることが最も好ましい。
【0017】
次に、本発明のベンゾトリアゾール化合物の製造方法について説明する。
一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物のうち、Xが一般式(2)で表される基である化合物、即ち、下記一般式(1−2)で表されるベンゾトリアゾール化合物は、下記の反応式で示すように一般式(1a)で表わされる化合物に一般式(6)で表わされる酸無水物を反応させて一般式(1b)で表わされる化合物とし、一般式(1b)で表わされる化合物のカルボキシル基を、カルボン酸クロライド基に変換して一般式(1c)で表わされる化合物とし、一般式(1c)で表わされる化合物と一般式(7)で表わされるアミン化合物とを反応させて得られる一般式(1−2a)で表わされる化合物に、更に一般式(8)で表わされる酸クロライド化合物を反応させることにより得ることができる。
【化11】
(式中、R1〜R5及びaは一般式(1)と同義であり、R6及びbは一般式(2)と同義である。)
【0018】
一般式(1a)で表わされる化合物のうち、aが1〜1000の数である化合物は、一般式(1a)においてaが0の数である化合物に、エチレンオキシドを付加反応することのより得ることができる。一般式(1a)においてaが0の数である化合物へのエチレンオキシドの付加は、公知の方法によればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を触媒として、80〜150℃で反応させればよい。一般式(1a)においてaが0の数である化合物は、特開平2−142778号公報に記載のベンゾトリアゾール化合物の製造方法により得ることができる。
【0019】
一般式(1a)で表わされる化合物と一般式(6)で表わされる酸無水物との反応は、トリエチルアミン等の塩基触媒、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒を用いることにより行うことができる。一般式(7)で表わされるアミン化合物のうち、R6が水素原子である化合物は、ポリエチレングリコールに水素及びアンモニアを、特開平7−003009号公報、特開平8−020643号公報に記載の方法により反応させることにより得ることができる。一般式(7)で表わされるアミン化合物のうち、R6が炭素数1〜5のアルキル基である化合物は、R6が水素原子である化合物のアミノ基に公知の方法により、炭素数1〜5のアルキル基を導入すればよい。一般式(1b)で表わされる化合物のカルボキシル基は、塩化チオニル、三塩化リン等を用いることにより、カルボン酸クロライド基に変換できる。
一般式(1c)で表わされる化合物と一般式(7)で表わされるアミン化合物の反応、及び一般式(1−2a)で表わされる化合物と一般式(8)で表わされる酸クロライド化合物との反応は、ピリジン、ピリミジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の塩基性溶媒中で行えばよい。
【0020】
一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物のうち、Xが一般式(3)で表される基である化合物、即ち、下記一般式(1−3)で表されるベンゾトリアゾール化合物は、下記の反応式で示すように、前記一般式(1c)で表わされる化合物と一般式(9)で表わされるアミン化合物とを反応させて得られる一般式(1−3a)で表わされる化合物に更に一般式(10)で表わされるエポキシ化合物を反応させることにより得ることができる。
【化12】
(式中、R1〜R5及びaは一般式(1)と同義であり、R7及びcは一般式(3)と同義である。)
【0021】
一般式(1c)で表わされる化合物と一般式(9)で表わされるアミン化合物との反応は、ピリジン、ピリミジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の塩基性溶媒中で行えばよい。尚、一般式(9)で表わされるアミン化合物は、前記一般式(7)で表わされるアミン化合物と同様の化合物である。
【0022】
一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物のうち、Xが一般式(4)で表される基である化合物、即ち、下記一般式(1−4)で表されるベンゾトリアゾール化合物は、下記の反応式で示すように、前記一般式(1c)で表わされる化合物と一般式(11)で表わされるアミン化合物とを反応させて得られる一般式(1−4a)で表わされる化合物に更に一般式(8)で表わされる酸クロライド化合物を反応させることにより得ることができる。
【化13】
(式中、R1〜R5及びaは一般式(1)と同義であり、R8及びdは一般式(4)と同義である。)
【0023】
一般式(1c)で表わされる化合物と一般式(11)で表わされるアミン化合物との反応、及び一般式(1−4a)で表わされる化合物と一般式(8)で表わされる酸クロライド化合物の反応は、ピリジン、ピリミジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の塩基性溶媒中で行えばよい。
【0024】
一般式(11)で表わされるアミン化合物は、下記の反応式で示すように、前記一般式(12)で表わされるエポキシ化合物に一般式(13)で表わされるアミン化合物を反応させることにより得ることができる。
【化14】
【0025】
一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物のうち、Xが一般式(5)で表される基である化合物、即ち、下記一般式(1−5)で表されるベンゾトリアゾール化合物は、下記の反応式で示すように、前記一般式(1c)で表わされる化合物と一般式(14)で表わされるアミン化合物とを反応させて得られる一般式(1−5a)で表わされる化合物に更に一般式(10)で表わされるエポキシ化合物を反応させることにより得ることができる。
【化15】
(式中、R1〜R5及びaは一般式(1)と同義であり、R9及びeは一般式(5)と同義である。)
【0026】
一般式(1c)で表わされる化合物と一般式(14)で表わされるアミン化合物との反応は、ピリジン、ピリミジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の塩基性溶媒中で行えばよい。
【0027】
一般式(14)で表わされるアミン化合物は、前記一般式(11)で表わされるアミン化合物と同様の反応により得ることができる。
【0028】
本発明のベンゾトリアゾール化合物は、ラジカル反応性基を有しており、他のラジカル重合性化合物と反応することが可能である。反応方式に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合の何れでも反応可能であるが、水への分散性に優れていることから、乳化重合で反応させることが好ましい。
【0029】
本発明のベンゾトリアゾール化合物が使用される乳化重合に用いられるラジカル重合性化合物に特に制限はなく、例えば、スチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のビニル芳香族類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアルデヒド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等の不飽和カルボン酸誘導体類;N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物類、アリルアルコール、アリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルメチルケトン、アリル酢酸、アリルフェノール等のアリル化合物類;N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メチロールマレインアミド酸、N−メチロールマレインアミド酸エステル、N−メチロールマレイミド、N−エチロールマレイミド等のN−置換不飽和アミド類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;ジビニルシクロヘキサン等の多官能ビニル化合物類等が挙げられる。
【0030】
本発明のベンゾトリアゾール化合物と他のラジカル重合性化合物とを重合させて得られる重合物において、本発明のベンゾトリアゾール化合物の含有量は、該重合物の用途にもよるが、一般に、他のラジカル重合性化合物100質量部に対する本発明のベンゾトリアゾール化合物の配合量が、0.001〜2質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部であることが更に好ましい。
【0031】
得られた重合物は、各種プラスチック製品、塗料、接着剤、粘着剤、インク、フィルム、コーティング剤、紙塗工剤、サイズ剤、シーラー等に使用することができるが、他の物質に塗布する用途や他の物質の塗布を補助する用途である、塗料、接着剤、粘着剤、コーティング剤や、紙塗工剤、シーラー等に使用することが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、特に限定のない限り、実施例中の「部」や「%」は質量基準によるものである。
【0033】
〔製造例1〕
撹拌装置、温度計を備えたガラス製反応容器に、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−(2−ヒドロキシエチル)ベンゾトリアゾール6.5g(20mmol)、無水コハク酸2.1g(21mmol)、触媒としてp−トルエンスルホン酸40mg及び溶媒としてトルエン50gを仕込み、80℃で2時間加熱撹拌し反応させた。反応終了後、水洗により副生成物を除去し、減圧してトルエンと水を除去した。続いて溶媒としてトルエン50g、触媒としてN,N−ジメチルホルムアミド100mgを仕込み、冷却しながら、塩化チオニル63g(250mmol)を15℃で30分かけて滴下し、更に、30℃で1時間撹拌して反応させた。トルエンを追加し、過剰の塩化チオニルをトルエンとの共沸により除去し、中間体Aのトルエン溶液を得た。中間体Aは一般式(1c)において、R1がt−ブチル基、R2がメチル基、R3がエチレン基、R4がコハク酸からカルボキシル基を除いた残基、aが0の数である化合物である。尚、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−(2−ヒドロキシエチル)ベンゾトリアゾールは、特開平2−142778号公報に記載の方法により製造した。
【0034】
〔実施例1〕
攪拌機、温度計を備えたガラス製反応容器にポリエチレングリコール400ジグリシジルエーテル4.5g(9.0mmol)、イソブチルアミン6.58g(90mmol)を仕込み、40℃で15時間加熱撹拌し反応させた後、過剰のイソブチルアミンを減圧により除去した。溶媒としてピリジン50gを仕込み、冷却しながら、中間体Aを2.0g(4.5mmol)含有するトルエン溶液を15℃で30分かけて滴下し、更に、30℃で1時間撹拌し反応させた。続いてメタクリル酸グリシジル2.82g(19.84mmol)、ヒドロキノン0.45g(4.5mmol)を加えて100℃で5時間撹拌し反応させた。反応終了後トルエン50gを追加して水洗した後、有機層から溶媒と水を減圧除去した。この反応物をトルエンに溶解後、ヘキサンにより再結晶し、生成物(収率33%、純度56%)を得た。得られた生成物が、本発明の化合物である化合物A1であることを、1H−NMRにて確認した。得られた1H−NMRのチャートを図1に示す。化合物A1は、一般式(1−5)においてR1がt−ブチル基、R2及びR5がメチル基、R3がエチレン基、R4がコハク酸からカルボキシル基を除いた残基、R9がイソブチル基、aが0、eが10の数である化合物である。
【0035】
〔実施例2〕
実施例1において、メタクリル酸グリシジル2.82g(19.84mmol)の代わりに、塩化メタクリロイル2.10g(20.09mmol)に変更した以外は実施例1と同じ操作を行い、生成物(収率50%、純度63%)を得た。得られた生成物が、本発明の化合物である化合物A2であることを、1H−NMRにて確認した。得られた1H−NMRのチャートを図2に示す。化合物A2は、一般式(1−4)においてR1がt−ブチル基、R2及びR5がメチル基、R3がエチレン基、R4がコハク酸からカルボキシル基を除いた残基、R8がイソブチル基、aが0、dが10の数である化合物である。
【0036】
〔実施例3〕
攪拌機、温度計を備えたガラス製反応容器に、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)2.67g(18.0mmol)、溶媒としてピリジン50gを仕込み、冷却しながら、中間体Aを2.0g(4.5mmol)含有するトルエン溶液を15℃で30分かけて滴下し、更に、30℃で1時間撹拌し反応させた。反応終了後、水洗により未反応の2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)を除去した後、有機層から溶媒と水を減圧除去した。続いてメタクリル酸グリシジル2.82g(19.84mmol)、ヒドロキノン0.45g(4.5mmol)、溶媒としてトルエン100gを加えて100℃で5時間撹拌し反応させた。反応終了後トルエン50gを追加して水洗した後、有機層から溶媒と水を減圧除去した。この反応物をトルエンに溶解後、ヘキサンにより再結晶し、生成物を得た(収率35%、純度58%)。得られた生成物が、本発明の化合物である化合物A3であることを、1H−NMRにて確認した。得られた1H−NMRのチャートを図3に示す。化合物A3は、一般式(1−3)においてR1がt−ブチル基、R2及びR5がメチル基、R3がエチレン基、R4がコハク酸からカルボキシル基を除いた残基、R7が水素原子、aが0、cが2の数である化合物である。
【0037】
【化16】
【0038】
【化17】
【0039】
【化18】
【0040】
【化19】
【0041】
実施例1〜3で得られた化合物A1〜A3、上記の比較の化合物B1〜B3、重合性モノマーとしてのアクリル酸ブチル、アクリル酸メチル及びアクリル酸、並びに上記乳化剤Cを、下記表1に示す質量比にて配合して、実施例4〜9及び比較例1〜4のモノマー溶液を調製し、下記の乳化重合方法にて乳化重合を行い乳化重合物を得た。各乳化重合物は下記の方法にて光沢保持率を測定した。結果を下記表1に示す。尚、光沢保持率が高いほど、紫外線吸収効果が優れ、長期間維持されることを示す。
【0042】
〔乳化重合方法〕
撹拌機、温度計及び窒素導入管を備えたガラス製反応容器に、脱イオン水120gを仕込み、系内を窒素ガスで置換した。モノマー溶液10gと過硫酸アンモニウム0.08gとを添加した後60℃に昇温し、モノマー溶液90gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、更に60℃で2時間撹拌して熟成し乳化重合物を得た。
【0043】
〔光沢保持率〕
上記乳化重合物を、50mm×70mmのガラス板に厚さ1mmになるように塗布し、12時間風乾後、100℃恒温槽で1時間乾燥したものを試験片とした。下記測定条件にて各試験片の光沢を測定した後、下記条件にて促進耐候性試験を行い、促進耐候性試験後の各試験片の光沢を測定した。この促進耐候性試験前の光沢に対する促進耐候性試験後の光沢の100分率を光沢保持率とした。
<光沢の測定条件> 使用機器:精密光沢計(村上色彩技術研究所製、型式:GM26D)、測定角:60°
<促進耐候性試験の条件> 使用機器:サンシャインウエザオメーター(スガ試験機製、型式:WEL−SUN−HCH−B)、試験条件:温度:63±3℃、サイクル:120分中18分降雨、試験時間:2,000時間
【0044】
【表1】
【0045】
表1の結果から、実施例4〜9の試験片は光沢保持率が高く、本発明のベンゾトリアゾール化合物を使用した乳化重合物から得られる塗膜が、厳しい自然環境の条件下においても長期間、優れた紫外線吸収効果を維持できることを示している。これは、本発明のベンゾトリアゾール化合物が、ラジカル反応性基により他のモノマーと反応して塗膜を形成しているだけでなく、乳化重合において、反応系で分散することにより塗膜中に均一に存在するためと考えられる。
図1
図2
図3