特許第6032023号(P6032023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特許6032023-画像形成装置 図000002
  • 特許6032023-画像形成装置 図000003
  • 特許6032023-画像形成装置 図000004
  • 特許6032023-画像形成装置 図000005
  • 特許6032023-画像形成装置 図000006
  • 特許6032023-画像形成装置 図000007
  • 特許6032023-画像形成装置 図000008
  • 特許6032023-画像形成装置 図000009
  • 特許6032023-画像形成装置 図000010
  • 特許6032023-画像形成装置 図000011
  • 特許6032023-画像形成装置 図000012
  • 特許6032023-画像形成装置 図000013
  • 特許6032023-画像形成装置 図000014
  • 特許6032023-画像形成装置 図000015
  • 特許6032023-画像形成装置 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032023
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   G03G15/08 340
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-8253(P2013-8253)
(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-139611(P2014-139611A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2015年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】熊谷優
(72)【発明者】
【氏名】片岡薫
(72)【発明者】
【氏名】小松真
(72)【発明者】
【氏名】森敦司
(72)【発明者】
【氏名】鴨下幹雄
【審査官】 中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−271692(JP,A)
【文献】 特開2003−131439(JP,A)
【文献】 特開2008−209566(JP,A)
【文献】 特開平4−269778(JP,A)
【文献】 特開2010−72156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体と、画像情報に基づいて前記潜像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、トナーを用いて前記潜像担持体上の潜像を現像する現像装置と、前記現像装置内のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段と、前記潜像形成手段からの画像情報及び前記トナー濃度検知手段からのトナー濃度情報が入力されるトナー補給制御装置と、前記トナー補給制御装置で算出されるトナー補給量を補給するトナー補給装置と、を有する画像形成装置において、
前記トナー補給制御装置は、トナー濃度目標値から所定の濃度だけ濃い値を第1の補給制御閾値、前記トナー濃度目標値から所定の濃度だけ薄い値を第2の補給制御閾値として設定し、
前記トナー濃度と前記トナー濃度目標値との差が、前記第2の又は第1の補給制御閾値と前記トナー濃度目標値との差よりも大きい場合、前記トナー補給制御装置は、出力画像のピクセル数を基にトナー消費量を算出し、算出した前記トナー消費量に所定量を加算又は減算して前記トナー補給量を算出し(定量制御法)、
前記トナー濃度と前記トナー濃度目標値との差が、前記第2の又は第1の補給制御閾値と前記トナー濃度目標値との差以下の場合、前記トナー補給制御装置は、PID制御により前記トナー濃度を前記トナー濃度目標値に近づけるために所要の前記トナー補給量を算出する(PID制御法)画像形成装置。
【請求項2】
潜像担持体と、画像情報に基づいて前記潜像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、トナーを用いて前記潜像担持体上の潜像を現像する現像装置と、前記現像装置内のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段と、前記潜像形成手段からの画像情報及び前記トナー濃度検知手段からのトナー濃度情報が入力されるトナー補給制御装置と、前記トナー補給制御装置で算出されるトナー補給量を補給するトナー補給装置と、を有する画像形成装置において、
前記トナー補給制御装置は、トナー濃度目標値から所定の濃度だけ濃い値を第1の補給制御閾値、前記トナー濃度目標値から所定の濃度だけ薄い値を第2の補給制御閾値、前記第1の補給制御閾値から所定の濃度だけ濃い値を第3の補給制御閾値、前記第2の補給制御閾値から所定の濃度だけ薄い値を第4の補給制御閾値として設定し、
前記トナー濃度と前記トナー濃度目標値との差が、前記第2の又は第1の補給制御閾値と前記トナー濃度目標値との差よりも大きい場合、前記トナー補給制御装置は、出力画像のピクセル数を基にトナー消費量を算出し、算出した前記トナー消費量に所定量を加算又は減算して前記トナー補給量を算出し(定量制御法)、
前記トナー濃度と前記トナー濃度目標値との差が、前記第2の又は第1の補給制御閾値と前記トナー濃度目標値との差以下の場合、前記トナー補給制御装置は、PID制御により前記トナー濃度を前記トナー濃度目標値に近づけるために所要の前記トナー補給量を算出し(PID制御法)、
前記トナー濃度が、前記第1の補給制御閾値よりも低い濃度側から前記第1の補給制御閾値を超えた場合に、前記トナー補給制御装置は前記PID制御法から前記定量制御法に切り替えず、前記トナー濃度が、前記第3の補給制御閾値よりも低い濃度側から前記第3の補給制御閾値をさらに超えた場合に、前記トナー補給制御装置は前記PID制御法から前記定量制御法に切り替えて前記トナー補給量を算出し、
前記トナー濃度が、前記第2の補給制御閾値よりも高い濃度側から前記第2の補給制御閾値を超えた場合に、前記トナー補給制御装置は前記PID制御法から前記定量制御法に切り替えず、前記トナー濃度が、前記第4の補給制御閾値よりも高い濃度側から前記第4の補給制御閾値をさらに超えた場合に、前記トナー補給制御装置は前記PID制御法から前記定量制御法に切り替えて前記トナー補給量を算出する画像形成装置。
【請求項3】
前記トナー補給制御装置は、所定の時間間隔で前記トナー濃度の変化量から前記トナー補給量の多寡を判断し、前記トナー補給量が基準値より多い場合には算出した前記トナー補給量に1未満の値を乗算し、前記トナー補給量が基準値以下の場合には算出した前記トナー補給量に1以上の値を乗算する、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナー補給制御装置は、所定の時間間隔で時間に対する前記トナー濃度の傾きを算出し、その傾きと単位時間当たりの前記トナー補給量が変化しない場合の前記トナー濃度の理想的な傾きとの比を前記トナー補給量に乗算する、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記トナー補給制御装置は前記比に上限及び下限を設ける、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記トナー濃度目標値が変更されたとき、前記トナー補給制御装置は、変更前のPID制御区間において積分処理に用いた前記トナー濃度と前記トナー濃度目標値の差の累積値をクリアする、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ又はそれらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体たる感光体と、感光体の表面に担持された静電潜像を現像する現像手段たる現像器と、現像器内にトナーを補給するトナー補給装置とを有する画像形成装置において、以下のものが既に知られている。
【0003】
現像器は、回転する現像スリーブの表面に担持した現像剤を現像スリーブの回転に伴って現像領域に搬送する。そして、現像スリーブと感光体とが対向している現像領域にて、トナーと磁性キャリアとを含有する二成分現像剤中のトナーを感光体上の静電潜像に転移させることで静電潜像を現像する。
【0004】
現像に使用されたことでトナー濃度を低下させた現像剤は、現像ローラの回転に伴って現像器内の現像剤収容部に戻される。現像剤収容部内の現像剤のトナー濃度は、透磁率センサ等からなるトナー濃度検知手段によって検知される。現像に伴ってトナー濃度を低下させた現像剤が現像剤収容部に戻されるのに伴って、現像剤収容部内の現像剤のトナー濃度が目標値を下回ると、それが制御部で検知される。
【0005】
制御部は、所定のタイミングでトナー濃度検知手段によるトナー濃度の検知結果を取得し、その検知結果と所定の目標値の差分とに基づいた駆動量でトナー補給装置を駆動することで、現像剤収容部にトナーを補給して現像剤のトナー濃度を回復させる。
【0006】
このトナー補給装置の駆動量を算出する方法(以下、「トナー補給制御」という)としては、以下の2つの方法が知られている。
第1のトナー補給制御は、画像形成装置の潜像担持体上に露光装置(潜像形成手段)が潜像形成する際に用いるピクセル数等の画像書き込み情報(画像情報)から、その潜像を現像することで消費すると予想されるトナー消費量を算出し、算出したトナー消費量に見合った量のトナーを補給する方法である。
【0007】
第2のトナー補給制御は、周知のPID制御を利用して、トナー補給装置の駆動量を決定する方法である。トナー補給制御におけるPID制御では、トナー濃度を制御対象として、制御対象の現在値と目標値との差分に基づいて、比例処理(P)、積分処理(I)及び微分処理(D)によってそれぞれ必要制御量を算出する。そして、それらの総和を制御量として制御対象を制御する。
【0008】
第1のトナー補給制御では消費によるトナー濃度変動をなくし、第2のトナー補給制御ではトナー濃度をトナー濃度目標値にするためトナー補給を行うことができるため、第1、第2のトナー補給制御を組み合わせて画像品質を安定させることができる。
【0009】
一方、同じトナー濃度の現像剤であっても、トナーの単位重量当たりの帯電量(Q/M)が変化すると、現像領域で現像剤の磁性キャリアから潜像に転移するトナー量が変化することから、現像濃度が変化してしまう。このため、トナー濃度を単純に一定の目標値に調整しているだけでは、長期に渡って現像濃度を安定化させることはできない。そこで、像担持体上にテストトナー像を形成してそのトナー付着量(画像濃度)を検知した結果に基づいて、トナー濃度の目標値を補正する目標値補正処理を定期的に実施する方法が既に知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、今までのPID制御を用いたトナー補給制御では、トナー補給量が各装置の固体差や環境により設計値から離れてしまうと、トナー濃度とトナー濃度目標値との差が大きくなりやすい。また、トナー濃度とトナー濃度目標値との差が大きくなると、短時間にトナーを大量に補給するためトナー濃度の時間変化が大きくなってしまい、印刷頁間に濃度ムラが発生するという問題があった。
【0011】
特許文献1には、トナーを短時間に大量に補給させない目的で、トナー濃度目標値を段階的に変化させることが開示されている。しかし、印刷途中でトナー補給量が各装置の固体差や環境により設計値から離れてしまうと、トナー濃度とトナー濃度目標値との差が大きくなり、結局トナーを短時間に大量に補給してしまう。
【0012】
本発明は、画像形成装置においてトナー濃度とトナー濃度目標値との差が大きくなった場合でも、トナーを短時間に大量に補給せず、印刷頁間の濃度ムラを小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明は、潜像担持体と、画像情報に基づいて前記潜像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、トナーを用いて前記潜像担持体上の潜像を現像する現像装置と、前記現像装置内のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段と、前記潜像形成手段からの画像情報及び前記トナー濃度検知手段からのトナー濃度情報が入力されるトナー補給制御装置と、前記トナー補給制御装置で算出されるトナー補給量を補給するトナー補給装置と、を有する画像形成装置において、前記トナー補給制御装置は、トナー濃度目標値から所定の濃度だけ濃い値を第1の補給制御閾値、前記トナー濃度目標値から所定の濃度だけ薄い値を第2の補給制御閾値として設定し、前記トナー濃度と前記トナー濃度目標値との差が、前記第2の又は第1の補給制御閾値と前記トナー濃度目標値との差よりも大きい場合、前記トナー補給制御装置は、出力画像のピクセル数を基にトナー消費量を算出し、算出した前記トナー消費量に所定量を加算又は減算して前記トナー補給量を算出し(定量制御法)、前記トナー濃度と前記トナー濃度目標値との差が、前記第2の又は第1の補給制御閾値と前記トナー濃度目標値との差以下の場合、前記トナー補給制御装置は、PID制御により前記トナー濃度を前記トナー濃度目標値に近づけるために所要の前記トナー補給量を算出する(PID制御法)画像形成装置を提案する。
【発明の効果】
【0014】
トナー補給量が各装置の固体差や環境により設計値から離れてしまっても、トナーは短時間に大量に補給されず、印刷頁間や印刷頁内の濃度ムラを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る画像形成装置の一例であるフルカラープリンタの概略を示す断面構成図である。
図2】実施形態に係るトナー補給制御を実行する制御系の一例を示すブロック図である。
図3】PID制御においてトナー濃度とトナー濃度目標値の差が大きくなった際のトナー濃度変化について説明する図である。
図4】PID制御においてゲインを低くした際のトナー濃度変化について説明する図である。
図5】特許文献1におけるトナー濃度変化の課題について説明する図である。
図6】第1実施形態に係るトナー補給制御方法について説明する図である。
図7】定量制御のみを継続した場合のトナー濃度変化について説明する図である。
図8】本発明において一時的に単位時間当たりのトナー補給量が変化した場合について説明する図である。
図9】トナー濃度目標値がトナー濃度よりも低い場合のトナー補給制御方法について説明する図である。
図10】第2実施形態に係るトナー補給制御方法について説明する図である。
図11】第3実施形態に係るトナー補給制御方法について説明する図である。
図12】第4実施形態に係るトナー補給制御方法について説明する図である。
図13】第5実施形態に係るトナー補給制御方法について説明する図である。
図14】トナー濃度目標値が変更された場合のトナー濃度変化について説明する図である。
図15】第6実施形態に係るトナー補給制御方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る画像形成装置の一例であるフルカラープリンタの概略を示す断面構成図である。この図に示すフルカラープリンタ1の装置本体2内の略中央部には、4つのドラム状の潜像担持体としての感光体3Y,3M,3C,3Bkが、水平状態で図中左右方向に等間隔で離間して並列に配設されている。なお、添え字Y,M,C,Bkは各々イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色を示し、この添え字は必要に応じて割愛する。イエロー画像用の感光体3Yに着目すると、この感光体3Yは例えば直径30〜100mm程度のアルミニウム円筒表面に光導電性物質である有機半導体層を設けた構造よりなり、図中時計回り方向(図に示す矢印方向)に回転駆動される。感光体3Yの下方側周囲には静電写真プロセスに従い帯電ローラ4Y、現像ローラ5Yを有する現像装置6Y、クリーニング器7Y等の作像手段が順に配設されている。マゼンタ、シアン、ブラック画像用の感光体3M,3C,3Bk側についても同様である。即ち、用いるトナーの色が異なるだけである。なお、感光体としてはベルト状のものを用いることも可能である。
【0017】
感光体3Y,3M,3C,3Bk及び帯電ローラ4、現像装置6、クリーニング器7の下方には、各色の画像データ対応のレーザ光を一様帯電済みの感光体3Y,3M,3C,3Bkに対してスキャニング照射し、潜像形成手段としての露光装置8が設けられている。各帯電ローラ4と各現像ローラ5との間には、この露光装置8から照射されるレーザ光が感光体3Y,3M,3C,3Bkに向けて入り込むように細長いスペース(スリット)が確保されている。図示例の露光装置8は、レーザ光源、ポリゴンミラー等を用いたレーザスキャン方式のものを示したが、LEDアレイと結像手段とを組合せた方式の露光装置を用いることもできる。
【0018】
感光体3Y,3M,3C,3Bkの上部には、複数のローラ9,10,11により支持されて反時計回り方向に回転駆動される中間転写ベルト12が設けられている。この中間転写ベルト12は各感光体3Y,3M,3C,3Bkに対して共通なものであり、各感光体3Y,3M,3C,3Bkの現像工程後の一部が接触するように略水平状態で扁平に配置されており、ベルト内周部には各感光体3Y,3M,3C,3Bkに対向させて転写ローラ13Y,13M,13C,13Bkが設けられている。中間転写ベルト12の外周部に対しては、例えば、ローラ11に対向する位置にクリーニング装置14が設けられている。このクリーニング装置14はベルト表面に残留する不要なトナーを拭い去る。なお、この中間転写ベルト12としては、例えば、基体の厚さが50〜600μmの樹脂フィルム或いはゴムを基体とするベルトであって、感光体3Y,3M,3C,3Bkからのトナー像を転写可能とする抵抗値を有する。
【0019】
また、装置本体2内において露光装置8の下方には複数段、本例では2段の給紙カセット23,24が引き出し自在に配設されている。これらの給紙カセット23,24内に収納された記録媒体としての用紙Sは対応する給紙ローラ25,26により選択的に給紙されるもので、転写位置に向けて給紙搬送経路27が略垂直に形成されている。中間転写ベルト12の側方には搬送ベルト35が配設されている。この搬送ベルト35のループ内において、2次転写手段としての2次転写ローラ18が中間転写ベルト12の支持ローラの一つであるローラ9と対向するように設けられている。ローラ9と2次転写ローラ18は中間転写ベルト12及び搬送ベルト35を挟んで圧接され、所定の転写ニップを形成する。その転写位置直前の給紙搬送経路27には、転写位置への給紙タイミングをとる一対のレジストローラ28が設けられている。さらに、転写位置上方には給紙搬送経路27に連続し、装置本体2の上部の排紙スタック部29につながる搬送排紙経路30が形成されている。この搬送排紙経路30中には一対の定着ローラを有する定着装置31や、一対の排紙ローラ32等が配設されている。
【0020】
なお、装置本体2内において排紙スタック部29下部の空間は各感光体3Y,3M,3C,3Bkで用いる各色のトナーを収納し、そのトナーを対応する現像装置6にポンプ等により搬送供給可能なトナー容器収納部33が設けられている。
【0021】
このような構成において、用紙Sに画像を形成する動作について説明する。
先ず、パーソナルコンピュータ、スキャナー、ファクシミリ等から、出力画像に対応する画像信号がコントローラ50に伝送される。コントローラ50は、この画像信号を制御動作により決定された適正な出力画像信号に変換し、露光装置8に伝送する。露光装置8では半導体レーザから出射されたイエロー用の画像データ対応のレーザ光が帯電ローラ4Yにより一様帯電済みの感光体3Yの表面に照射されることにより静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置6Yによる現像処理を受けてイエロートナーで現像され、可視像となり、感光体3Yと同期して移動する中間転写ベルト12上に転写ローラ13Yによる転写作用を受けて転写される。このような潜像形成、現像、転写動作は感光体3M,3C,3Bk側でもタイミングをとって順次同様に行われる。この結果、中間転写ベルト12上には、イエローY、マゼンタM、シアンC及びブラックBkの各色トナー画像が順次重なり合ったフルカラートナー画像として担持され、搬送される。
【0022】
一方、給紙カセット23,24のいずれかから用紙Sが給紙され、給紙搬送経路27を通ってレジストローラ28へと搬送される。中間転写ベルト12上のフルカラートナー画像とタイミングをとって用紙Sがレジストローラ28より送り出され、2次転写ローラ18の作用により中間転写ベルト12上のフルカラートナー画像が用紙S上に転写される。フルカラートナー像が転写された用紙Sは搬送ベルト35により定着装置31へと搬送され、定着装置31による定着処理を経て排紙ローラ32により排紙スタック部29上に排紙される。
【0023】
両面印刷の場合は、定着後の用紙Sを切換爪38を切り換えることにより反転路36へ導き、切換爪39を切り換えることにより反転後の用紙Sを再給紙路37からレジストローラ28へと再給紙して用紙の表裏を反転させる。このとき、中間転写ベルト12上には裏面画像となるトナー像を形成して担持させておき、用紙Sの裏面(第二面)にトナー像を転写して定着装置31による定着処理を経て排紙ローラ32により排紙スタック部29上に排紙する。
【0024】
なお、ここではフルカラー印刷の場合で説明したが、特定色あるいはブラックによるモノクロ印刷時であっても、使用されない感光体が存在するだけで、動作的には同様である。
【0025】
図2は、実施形態に係るトナー補給制御を実行する制御系の一例を示すブロック図である。
図2に示す制御系において、トナー補給制御装置100には、現像装置6に取り付けられたトナー濃度検知手段(不図示)からトナー濃度情報が入力される。また、制御装置100には、露光装置8から潜像形成に用いる画像情報が入力される。本実施形態の制御装置100は、例えばプリント基板を実体とし、トナー濃度情報を用いたPID制御と画像情報を用いた定量制御とを併用したトナー補給制御を実行する。具体的には、PID制御では制御装置100は、トナー濃度検知手段からのトナー濃度情報と目標トナー濃度との差分値に基づいて、現在のトナー濃度を目標トナー濃度へ回復させるために必要なトナー補給量を算出する。また、定量制御では制御装置100は、露光装置8からの画像情報に基づいて、その画像情報に基づく画像形成動作により消費されるトナー量を予測し、そのトナー消費によるトナー濃度低下を抑制するのに必要なトナー補給量を算出する。制御装置100は、トナー補給量のトナーが現像装置6へ補給されるようにトナー補給装置70を制御する。
【0026】
図3は、PID制御においてトナー濃度とトナー濃度目標値の差が大きくなった際のトナー濃度変化について説明する図である。
従来から、トナー濃度をトナー濃度目標値に近づけるためにPID制御を用いていた。PID制御を用いると、図示のように、トナー濃度とトナー濃度目標値の差が大きい区間(a)においてはトナー濃度の傾きが大きくなり、差が小さい区間(b)においては傾きが小さくなる。区間(a)では単位時間当たりのトナー濃度変化量が大きくなるため、印刷頁間又は頁内に大きな画像濃度変化が生じてしまう。
【0027】
図4は、PID制御においてゲインを低くした際のトナー濃度変化について説明する図である。
図示のように、従来技術においてPID制御においてゲインを低く設定すると、トナー濃度の傾きを小さくし、トナー濃度がトナー濃度目標値に近づく速度を遅らせることが出来る。しかし、トナー濃度とトナー濃度目標値との差が小さくなった区間(c)では、トナー補給量に誤差が生じた場合、トナー濃度をトナー濃度目標値に再度近づけられず、トナー濃度が薄くなったり濃くなったり振動してしまうことがある。
【0028】
図5は、特許文献1におけるトナー濃度変化の課題について説明する図である。
特許文献1では、図3で示した課題を解決するためにトナー濃度目標値を段階的に変更する方法が記載されている。しかし、環境等によって一時的に単位時間当たりのトナー補給量が変化すると、トナー濃度とトナー濃度目標値との差が大きくなる区間が生じてしまうことがある。このような場合、PID制御により単位時間当たりのトナー濃度変化が大きくなるため、やはり印刷頁間又は頁内に大きな画像濃度変化が生じてしまう。
【0029】
図6は、第1実施形態に係るトナー補給制御方法について説明する図である。
図示のように、トナー補給制御装置100は、トナー濃度目標値から所定の値だけ異なる濃度を補給制御閾値とする。具体的には、トナー補給制御装置100は、トナー濃度目標値から所定の濃度だけ濃い値を第1の補給制御閾値(1)に、トナー濃度目標値から所定の濃度だけ薄い値を第2の補給制御閾値(2)に設定する。このとき、トナー濃度とトナー濃度目標値との差が、補給制御閾値とトナー濃度目標値との差よりも大きい場合(すなわち、図6の定量制御区間)には、トナー補給制御装置100は、露光装置8から入力される出力画像のピクセル数から所定の時間間隔でトナー消費量を算出し、算出したトナー消費量に所定の補給量を加算した分だけトナー補給装置70によりトナー補給を行う(以下、「定量制御法」という)。
【0030】
トナー濃度とトナー補給量は比例関係にあるため、図示のように、トナー濃度は略一定勾配でトナー濃度目標値に近づくことになる。これにより、トナー濃度とトナー濃度目標値との差が大きくなっても、印刷頁間又は頁内の大きな画像濃度変化の発生を抑制することができる。
【0031】
一方、トナー濃度とトナー濃度目標値との差が、補給制御閾値とトナー濃度目標値との差以下の場合(すなわち、図6のPID制御区間)には、トナー補給制御装置100は、露光装置8から入力される出力画像のピクセル数から所定の時間間隔でトナー消費量を算出し、算出したトナー消費量にPID制御で算出した補給量を加算した分だけトナー補給装置70によりトナー補給を行い、トナー濃度をトナー濃度目標値に近づける(以下、「PID制御法」という)。
【0032】
図7は、定量制御のみを継続した場合のトナー濃度変化について説明する図である。
図示のように、補給制御閾値を設けずに定量制御のみを行うと、トナー濃度はトナー濃度目標値と一致することなく振動し続けてしまうことがある。このため、トナー濃度とトナー濃度目標値との差が、補給制御閾値とトナー濃度目標値との差よりも小さい場合(すなわち、図6のPID制御区間)には、所定の時間間隔でトナー消費量を算出し、算出したトナー消費量にPID制御で算出した補給量を加算した分だけ補給を行う(PID制御法)。これにより、図6に示したように、トナー濃度をトナー濃度目標値に追従させることができる。
【0033】
図8は、本発明において一時的に単位時間当たりのトナー補給量が変化した場合について説明する図である。
図中の区間Rは、定量制御の際に環境などにより一時的に単位時間当たりのトナー補給量が変化した部分を示す。この場合、図示のように区間Rではトナー濃度の傾きが一時的に変化するが、区間Rを出てトナー補給量が元に戻ったときには再び略一定勾配のトナー濃度変化になる。よって、一時的に単位時間当たりのトナー補給量が変化した場合でも、印刷頁間又は頁内の大きな画像濃度変化が発生することはない。
【0034】
図9は、トナー濃度がトナー濃度目標値よりも濃い場合のトナー補給制御方法について説明する図である。
図6の場合とは対照的に、トナー濃度がトナー濃度目標値よりも濃く、定量制御区間にある場合、トナー補給制御装置100は、図9に示すように露光装置8から入力される出力画像のピクセル数から所定の時間間隔でトナー消費量を算出し、算出したトナー消費量に所定のトナー量を減算した分だけトナー補給装置70によりトナー補給を行う(定量制御法)。この場合、算出したトナー消費量にマイナスの補給量を加算した分だけトナー補給を行うことになる。
【0035】
これにより、トナー濃度がトナー濃度目標値よりも濃い場合においても、図6の場合と同様のトナー補給制御により印刷頁間の濃度ムラを低減することができる。
【0036】
図10は、第2実施形態に係るトナー補給制御方法について説明する図である。
前記第1実施形態では、トナー濃度検知手段によるトナー濃度の検知結果にノイズが入るとトナー濃度が補給制御閾値を行き来することになり、トナー補給制御装置100により定量制御法とPID制御法の切り替えが頻繁に行われる。このとき、PID制御法では使用するパラメータによっては過去のトナー濃度とトナー濃度目標値の差の累積値を用いる積分処理において累積値が溜まらなくなるため、トナー濃度がトナー濃度目標値に近づきにくくなる。
【0037】
そこで、第2実施形態では4つの補給制御閾値を設ける。
図10において、トナー補給制御装置100は、トナー濃度目標値から所定の濃度だけ濃い又は薄い4つの値を第1〜第4の補給制御閾値(1)〜(4)とする。ここで、第3の補給制御閾値(3) > 第1の補給制御閾値(1) > トナー濃度目標値 > 第2の補給制御閾値(2) > 第4の補給制御閾値(4) の関係がある。
【0038】
このとき、トナー補給制御装置100は以下の動作を実行する。
・トナー濃度とトナー濃度目標値との差が、第2の又は第1の補給制御閾値(2)又は(1)とトナー濃度目標値との差よりも大きい場合には、露光装置8から入力される出力画像のピクセル数から所定の時間間隔でトナー消費量を算出する(定量制御法)。
・トナー濃度とトナー濃度目標値との差が、第2の又は第1の補給制御閾値(2)又は(1)とトナー濃度目標値との差以下の場合には、PID制御によりトナー濃度をトナー濃度目標値に近づけるために所要のトナー補給量を算出する(PID制御法)。
・ただし、トナー濃度が、第1の補給制御閾値(1)よりも低い濃度側から第1の補給制御閾値(1)を超えた場合に、PID制御法から定量制御法に切り替えず、トナー濃度が、第3の補給制御閾値(3)よりも低い濃度側から第3の補給制御閾値(3)をさらに超えた場合に、PID制御法から定量制御法に切り替えてトナー補給量を算出する。
・また、トナー濃度が、第2の補給制御閾値(2)よりも高い濃度側から第2の補給制御閾値(2)を超えた場合に、PID制御法から定量制御法に切り替えず、トナー濃度が、第4の補給制御閾値(4)よりも高い濃度側から第4の補給制御閾値(4)をさらに超えた場合に、PID制御法から定量制御法に切り替えてトナー補給量を算出する。
その後、トナー補給制御装置100は、算出したトナー補給量だけトナー補給装置70によりトナー補給を行う。
【0039】
よって、トナー濃度が、第2の補給制御閾値(2)よりも高い濃度側から第2の補給制御閾値(2)を超えた場合、PID制御法から定量制御法に切り替えず、第2の補給制御閾値(2)及び第4の補給制御閾値(4)の間の区間ではPID制御法を続行する。また、トナー濃度が、第1の補給制御閾値(1)よりも低い濃度側から第1の補給制御閾値(1)を超えた場合、PID制御法から定量制御法に切り替えず、第1の補給制御閾値(1)及び第3の補給制御閾値(3)の間の区間ではPID制御法を続行する。言い換えれば、第1の補給制御閾値(1)及び第2の補給制御閾値(2)によって画一的にPID制御法と定量制御法を区別せず、PID制御区間に幅を持たせている。第2の補給制御閾値(2)と第4の補給制御閾値(4)の間の区間と、第1の補給制御閾値(1)と第3の補給制御閾値(3)の間の区間では、PID制御法と定量制御法の両方が行われる。
【0040】
以上のように4つの閾値を設けることで、トナー濃度の検知結果にノイズが入ったときに制御装置により定量制御法とPID制御法の切り替えが頻繁に行われることが抑えられる。よって、積分処理で用いる過去のトナー濃度とトナー濃度目標値の差を累積しやすくなり、トナー濃度をトナー濃度目標値に一致させやすくなる。
【0041】
図11は、第3実施形態に係るトナー補給制御方法について説明する図である。
図示のように、トナー補給量に変化がない場合(図中左側の点線)、トナー濃度グラフの傾きは定量制御によって一定となる。一方、単位時間当たりのトナー補給量が変化した場合(図中右側の点線)、トナー補給量が変化する区間R内におけるトナー濃度グラフの傾きは区間R外と異なり、区間Rから出るときに再び区間R外での傾きに一致する。また、トナー濃度がトナー濃度目標値に到達する時間は、トナー補給量に変化がない場合と比べて遅くなる。
【0042】
そこで、第3実施形態では、トナー補給制御装置100は、所定の時間間隔でトナー濃度の変化量からトナー補給量の多寡を判断し、基準値より多い場合には算出したトナー補給量に1未満の値を乗算し、基準値以下の場合には算出したトナー補給量に1以上の値を乗算する。図中の縦の破線は、当該所定の時間間隔で行う補給量補正タイミングを示している。この例では、区間R内でトナー補給量を2回増大補正している。
【0043】
以上の制御を行うことによって、トナー補給量が環境等により変化した場合に、トナー濃度がトナー濃度目標値に達するまでの時間を補給量変化がない理想的な場合に近づけることができる。後述の第4実施形態と比較して、本実施形態では理想的な補給量変化に近づくスピードは遅いが、緩やかな補正を行うことによって頁間のトナー濃度差は小さくなる。
【0044】
図12は、第4実施形態に係るトナー補給制御方法について説明する図である。
前記第3実施形態と同様に、定量制御時に環境等のために単位時間当たりのトナー補給量が変化した場合(図中右側の点線)、トナー濃度がトナー濃度目標値に到達する時間は補給量変化がない場合(図中左側の点線)と比べて異なってしまう。この課題について、第4実施形態では、トナー補給制御装置100は、所定の時間間隔でトナー濃度グラフの傾き(X)を算出し、その傾き(X)と補給量変化がない場合の理想的な傾き(Y)との比をトナー補給量に乗算する。この場合、傾き(Y)と傾き(X)の比をとり、比は1より大きい値となる。図中の縦の破線は、当該所定の時間間隔で行う補給量補正タイミングを示している。この例では、区間R内でトナー補給量を1回増大補正して、トナー濃度グラフの傾きを区間R外での傾きに略一致させている。
【0045】
以上の処理を行うことによって、図12に示すように、トナー補給量が変化する区間Rが長くなっても、トナー濃度の傾きが変化した後に初めてトナー補給量の補正を行ったときに、トナー濃度グラフの傾きを区間R外での理想的な傾きに戻すことができる。
【0046】
前記第3実施形態と比較して、単位時間当たりのトナー補給量が大きく変化した後にトナー補給量が元に戻ると、トナー濃度変化量が大きくなる可能性があるが、トナー濃度グラフの傾きを迅速に理想的な傾きにすることができる。
【0047】
図13は、第5実施形態に係るトナー補給制御方法について説明する図である。
図示のように、前記第4実施形態ではトナー濃度の傾きが急になる箇所が生じ得る。そこで、第5実施形態では、トナー補給制御装置100は、前記第4実施形態と同様に理想的な傾き(Y)とトナー濃度グラフの傾き(X)の比を求め、これを補給量に乗算するが、求める傾きの比に上限及び下限を設定する。これにより、図示のように、トナー濃度は前記第4実施形態と同様にトナー補給制御を行った場合よりも緩やかに変化する。
【0048】
以上の制御により、トナー濃度がトナー濃度目標値に近づく時間は、第4実施形態と同様に制御を行った場合よりも遅くなるが、単位時間当たりのトナー補給量が大きく変化した後にトナー補給量が元に戻った場合でも、急激なトナー濃度変化を防ぐことができる。
【0049】
図14は、トナー濃度目標値が変更された場合のトナー濃度変化について説明する図である。
本発明では、トナー濃度目標値が変更された場合などに、それまで行っていたトナー補給制御方法が切り替わることがある。図中の縦の破線が示すタイミングでトナー濃度目標値が変更されている。例えば、初めのPID制御区間において積分処理に用いるトナー濃度とトナー濃度目標値の差の累積値(以下、「I項」という)が残っている状態で、トナー濃度グラフは縦の破線を越えて変更されたトナー濃度目標値での定量制御区間に入り、その後再度PID制御区間に入る。このとき、I項を含めてトナー補給制御を行うため、トナー濃度グラフの傾きが急になったり、トナー濃度がトナー濃度目標値よりも高い値になったりすることがある。
【0050】
図15は、第6実施形態に係るトナー補給制御方法について説明する図である。
図14のような問題を解決するために、トナー濃度目標値が変更されたとき、トナー補給制御装置100は、変更前のPID制御区間において積分処理に用いたトナー濃度とトナー濃度目標値の差の累積値(I項)をクリアする。
【0051】
図15に示すように、以上の処理によって、トナー濃度グラフが再度PID制御区間に入った際にはI項による影響がなく、トナー濃度はトナー濃度目標値に緩やかに近づくことになる。
【符号の説明】
【0052】
1 画像形成装置
3 感光体(潜像担持体)
8 露光装置(潜像形成手段)
6 現像装置
70 トナー補給装置
100 トナー補給制御装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特開2001−13746号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15