特許第6032189号(P6032189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6032189塗布膜形成装置、塗布膜形成方法、記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032189
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】塗布膜形成装置、塗布膜形成方法、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20161114BHJP
   B05C 11/08 20060101ALI20161114BHJP
   B05D 1/40 20060101ALI20161114BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   H01L21/30 564C
   B05C11/08
   H01L21/30 564D
   B05D1/40 A
   B05D3/00 D
   B05D3/00 C
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-250254(P2013-250254)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-109306(P2015-109306A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133776
【弁理士】
【氏名又は名称】三井田 友昭
(72)【発明者】
【氏名】立花 康三
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−283331(JP,A)
【文献】 特開平07−308625(JP,A)
【文献】 特開平09−292717(JP,A)
【文献】 特開2005−235950(JP,A)
【文献】 特開2012−038968(JP,A)
【文献】 特開2012−238838(JP,A)
【文献】 特開2013−230468(JP,A)
【文献】 特開2015−009180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 7/00−21/00
B05D 1/00−7/26
G11B 7/26
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板を回転させる回転機構と、
前記基板に塗布膜を形成するために前記基板の中央部に塗布液を供給する塗布液供給機構と、
基板の周縁部上方を覆うために基板の周方向に沿うように環状に設けられた環状部材と、
前記基板保持部に対して前記環状部材を相対的に昇降させる昇降機構と、
前記基板の周縁部上方の気流を整流する処理位置に前記環状部材が位置する状態で、基板の中央部に供給された塗布液が遠心力により周縁部に向けて広がるように当該基板を第1の回転数で回転させるステップと、次いで前記環状部材を前記基板に対して上昇させて、前記基板の回転数の低下による当該基板の表面近傍の気流の乱れを抑えるための退避位置に退避させるステップと、然る後、前記塗布膜の膜厚分布を調整するために前記基板の回転数を前記第1の回転数よりも低い第2の回転数に低下させるステップと、が行われるように制御信号を出力する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記環状部材を前記退避位置に退避させるステップと並行して、前記基板が前記第1の回転数よりも低く、前記第2の回転数よりも高い第3の回転数で回転させるステップが行われるように制御信号を出力することを特徴とする塗布膜形成装置。
【請求項2】
前記基板は、直径450mmのウエハであり、前記第3の回転数は800rpm以下の回転数であることを特徴とする請求項記載の塗布膜形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記環状部材を退避位置で静止させ、当該静止から1秒以上経過した後に、前記基板の回転数を前記第2の回転数に低下させるように制御信号を出力することを特徴とする請求項1または2記載の塗布膜形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記塗布液供給機構から基板の中央部に塗布液を供給すると共に、塗布液供給用の回転数で基板を回転させるステップと、
次いで、塗布液供給機構から基板への塗布液の供給を停止させると共に、前記塗布液供給用の回転数及び前記第1の回転数よりも低い液溜まり形成用の回転数で基板を回転させるステップと、が行われ、
前記第1の回転数で基板を回転させるステップは、前記液溜まり形成用の回転数で基板を回転させるステップの後に行われるように制御信号を出力することを特徴とする請求項1ないしのいずれか一つに記載の塗布膜形成装置。
【請求項5】
前記基板保持部に保持された基板を囲み、その内側が排気されるカップと、
前記カップ内の排気流量を調整する排気流量調整機構と、
を備え、
前記第1の回転数及び当該第1の回転数で基板を回転させるときの前記排気流量が処理毎に変更可能であり、
前記第1の回転数に対応した排気流量で前記カップ内の排気が行われることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一つに記載の塗布膜形成装置。
【請求項6】
基板保持部に基板を水平に保持する工程と、
前記基板の周縁部上方を覆うために当該基板の周方向に沿うように環状に設けられた環状部材を、基板の周縁部上方の気流を整流する処理位置に位置させる工程と、
前記基板に塗布膜を形成するために、前記基板の中央部に塗布液を供給する工程と、
前記環状部材が前記処理位置に位置する状態で、前記基板保持部に保持された基板を回転機構により第1の回転数で回転させ、前記基板の遠心力により基板の中央部に供給された塗布液を当該基板の周縁部に向けて広げる工程と、
次いで、昇降機構により前記環状部材を前記処理位置から前記基板に対して相対的に上昇させ、前記基板の回転数の変化による当該基板の表面近傍の気流の乱れを抑えるための退避位置に位置させる工程と、
然る後、前記基板の回転数を前記第1の回転数よりも低い第2の回転数に低下させ、前記塗布膜の膜厚分布を調整する工程と、
を備え
前記環状部材を前記基板に対して相対的に上昇させる工程は、前記基板を前記第1の回転数よりも低く、前記第2の回転数よりも高い第3の回転数で回転させる工程と並行して行われることを特徴とする塗布膜形成方法。
【請求項7】
前記基板は、直径450mmのウエハであり、前記第3の回転数は800rpm以下の回転数であることを特徴とする請求項記載の塗布膜形成方法。
【請求項8】
前記退避位置に移動した環状部材を静止させる工程を含み、
前記基板の回転数を前記第2の回転数に低下させる工程は、前記環状部材の静止から1秒以上経過した後に行われることを特徴とする請求項6または7に記載の塗布膜形成方法。
【請求項9】
基板に塗布液を供給すると共に、塗布液供給用の回転数で基板を回転させる工程と、
次いで、基板への塗布液の供給を停止させると共に、前記塗布液供給用の回転数よりも低い液溜まり形成用の回転数で基板を回転させる工程と、
を含み、
前記基板を第1の回転数で回転させる工程は、前記液溜まり形成用の回転数で基板を回転させる工程の後に行われることを特徴とする請求項ないしのいずれか一つに記載の塗布膜形成方法。
【請求項10】
処理毎に互いに異なる前記第1の回転数で基板を回転させる工程と、
前記第1の回転数で基板を回転させる工程に並行して、当該第1の回転数に対応付けられた排気流量で、前記基板保持部に保持された基板を囲むカップ内を排気する工程と、
を含むことを特徴とする請求項ないしのいずれか一つに記載の塗布膜形成方法。
【請求項11】
基板に塗布膜を形成する塗布膜形成装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記プログラムは請求項ないし10のいずれか一つに記載された塗布膜形成方法を実行するためにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に塗布膜を形成する塗布膜形成装置、塗布膜形成方法及び前記装置に用いられるコンピュータプログラムを含む記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
基板への塗布膜、例えばレジスト膜の形成処理を行うにあたり、速やかに成膜を行えることからスピンコーティングと呼ばれる手法が広く用いられている。このスピンコーティングでは、基板の裏面をスピンチャックに保持し、基板の表面の中心部にレジストを供給する。そして、基板を回転させて、遠心力によりレジストを基板の周縁部へと広げると共に、当該レジストを乾燥させて、膜を形成する。
【0003】
前記レジストの乾燥を速やかに行うためには基板の回転数を高くして、レジスト中の溶剤の揮発を促進することが考えられる。しかし基板の回転数を高くするほど前記当該基板上の気流のレイノルズ数が高くなり、当該レイノルズ数がしきい値を超えると基板上の気流が乱流となる。すると、レジスト膜表面に乱流化した気流が転写される。つまり、レジスト膜に気流に沿った塗布斑、即ち凹凸が形成され、膜厚の面内均一性が低下する。
【0004】
基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)については大型化が進行しており、例えばその直径が450mmであるものを用いることが検討されている。このようにウエハが大きくなると、ウエハの周縁部において前記塗布斑の形成を抑制できる回転数の上限が低くなる。当該回転数を高くしても前記塗布斑の形成を防ぐことができるように、ウエハ上にリング状の整流板を設け、当該整流板の下面側において気流が乱流となることを抑えることが検討されている。
【0005】
その一方で、ウエハに供給するレジストの量が抑えられるようにレジスト膜の形成を行うことが検討されている。そのようなレジスト膜の形成処理を行うにあたり前記整流板を設けると、後述の評価試験で説明するように、ウエハの面内において周端部の膜厚が他の部分の膜厚に比べて小さくなり、それによって膜厚の面内均一性が低下してしまう場合があることが確認された。特許文献1には、角型の基板の隅部と対向するように当該基板の上方にリング状のプレートを設けて、上記のようにレジストが塗布された基板上の気流を整流する技術について記載されているが、このような問題及び当該問題を解決する手法について記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−235950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情においてなされたものであり、その目的は、基板に塗布膜を形成するにあたり、基板に速やかに塗布膜を形成すると共に、当該基板の面内における前記塗布膜の膜厚の均一性を高くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の塗布膜形成装置は、基板を水平に保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板を回転させる回転機構と、
前記基板に塗布膜を形成するために前記基板の中央部に塗布液を供給する塗布液供給機構と、
基板の周縁部上方を覆うために基板の周方向に沿うように環状に設けられた環状部材と、
前記基板保持部に対して前記環状部材を相対的に昇降させる昇降機構と、
前記基板の周縁部上方の気流を整流する処理位置に前記環状部材が位置する状態で、基板の中央部に供給された塗布液が遠心力により周縁部に向けて広がるように当該基板を第1の回転数で回転させるステップと、次いで前記環状部材を前記基板に対して上昇させて、前記基板の回転数の低下による当該基板の表面近傍の気流の乱れを抑えるための退避位置に退避させるステップと、然る後、前記塗布膜の膜厚分布を調整するために前記基板の回転数を前記第1の回転数よりも低い第2の回転数に低下させるステップと、が行われるように制御信号を出力する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記環状部材を前記退避位置に退避させるステップと並行して、前記基板が前記第1の回転数よりも低く、前記第2の回転数よりも高い第3の回転数で回転させるステップが行われるように制御信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板の周縁部上方の気流を整流する処理位置に環状部材を位置させた状態で基板を回転させて塗布液を基板の周縁部に向けて広げ、基板の回転数の変化による当該基板の表面近傍の気流の乱れが抑えられる退避位置に前記環状部材を上昇させた後に、基板の回転数を低下させて膜厚分布を調整する。このような構成により、前記塗布液を基板の周縁部に向けて広げるときに、回転数を高くしても基板の周縁部上において乱流の発生を抑えることができる。そして、膜厚分布の調整時には基板の周縁部において、当該分布が十分に調整される前に前記環状部材の整流作用により塗布液の乾燥が進行してしまうことを防ぐことができる。結果として、塗布膜の形成処理に要する時間が長くなることを抑え、且つ基板の面内において前記塗布膜の膜厚の均一性の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】レジスト塗布装置の縦断側面図である。
図2】前記レジスト塗布装置の平面図である。
図3】前記レジスト塗布装置によるウエハ処理の工程図である。
図4】前記レジスト塗布装置によるウエハ処理の工程図である。
図5】前記レジスト塗布装置によるウエハ処理の工程図である。
図6】前記レジスト塗布装置によるウエハ処理の工程図である。
図7】前記レジスト塗布装置によるウエハ処理の工程図である。
図8】前記レジスト塗布装置によるウエハ処理の工程図である。
図9】前記ウエハ処理におけるウエハの回転数の変化とリングプレートの高さの変化とを示すタイムチャートである。
図10】前記リングプレートの変形例を示す縦断側面図である。
図11】前記リングプレートの変形例を示す縦断側面図である。
図12】比較例のウエハ処理におけるウエハの回転数の変化とリングプレートの高さの変化とを示すタイムチャートである。
図13】評価試験における膜厚分布を示すグラフ図である。
図14】評価試験における膜厚分布を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の塗布膜形成装置の一実施形態であり、基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)Wにレジストを供給してレジスト膜を形成するレジスト塗布装置1について、図1の縦断側面図と、図2の平面図とを参照して説明する。レジスト塗布装置1は、ウエハWの裏面中央部を真空吸着することにより、当該ウエハWを水平に保持する基板保持部であるスピンチャック11を備えている。このスピンチャック11は、下方より軸部12を介して回転機構である回転駆動部13に接続されており、当該回転駆動部13により鉛直軸回りに回転することができる。
【0012】
スピンチャック11の下方側には、軸部12を取り囲んで円形板14が設けられる。円形板14に設けられる孔を介して3本の昇降ピン15が昇降する(図1では昇降ピン15は、2つのみ表示している)。レジスト塗布装置1の外部の搬送機構とスピンチャック11との間で、ウエハWを受け渡すことができる。図中16は、昇降ピン15を昇降させるピン昇降機構である。
【0013】
前記スピンチャック11を取り囲むようにしてカップ2が設けられている。カップ2は、回転するウエハWより飛散したり、こぼれ落ちた廃液を受け止めると共に、当該廃液をレジスト塗布装置1外に排出するためにガイドする。カップ2は、前記円形板14の周囲にリング状に設けられた山型ガイド部21を備えている。山型ガイド部21は、ウエハWよりこぼれ落ちた液を、ウエハWの外側下方へとガイドする役割を有し、その断面形状が山型に形成されている。山型ガイド部21の外周端から下方に伸びるように環状の垂直壁22が設けられている。
【0014】
また、山型ガイド部21の外側を取り囲むように垂直な筒状部23と、この筒状部23の上縁から内側上方へ向けて斜めに伸びる上側ガイド部24とが設けられている。上側ガイド部24には、周方向に複数の開口部25が設けられている。また、筒状部23の下方側は凹部状に形成され、山型ガイド部21の下方に環状の液受け部26を形成する。この液受け部26においては、排液路27が接続されると共に、排気管28が下方から突入する形で設けられている。排気管28には排気流量を調整するための排気ダンパ29が介設されている。排気管28には、排気圧を測定する図示しないセンサが設けられている。このセンサからの信号に基づいて、後述の制御部10は当該排気ダンパ29の開度を調整し、前記排気流量が調整される。
【0015】
上側ガイド部24の基端から垂直な筒状部31が上方へ伸びるように設けられ、この筒状部31の上縁から内側上方へ伸び出すように傾斜壁32が設けられる。傾斜壁32、上側ガイド部24及び筒状部23、31により、ウエハWから当該ウエハWの回転により飛散した液が受け止められ、受け止められた液がウエハWの外側下方へガイドされて排液路27に導入される。カップ2の上方にはファンフィルタユニット16が設けられている。ウエハWの処理中は、このファンフィルタユニット16から、下方のカップ2に向けて清浄な気体が供給されると共に、前記排気管28によりカップ2内の排気が行われている。
【0016】
このレジスト塗布装置1には、レジストノズル33が設けられている。レジストノズル33はレジスト供給源34に接続される。図2に示すように、レジストノズル33はアーム35の先端に設けられている。アーム35の基端は、当該アーム35を昇降させ、且つガイド36に沿って水平方向に移動自在な移動機構37に接続されている。移動機構37によりレジストノズル33は、ウエハWの上方の所定位置とカップ2の外側における待機領域38との間で移動することができる。
【0017】
レジスト塗布装置1は、整流部材であるリングプレート41を備えている。このリングプレート41は円形で平板である環状部材として形成され、スピンチャック11に保持されたウエハWの周縁部を覆うように当該周縁部に沿って形成されている。リングプレート41は、支持部材42によって水平に支持される。支持部材42は昇降機構43に接続されており、この昇降機構43はリングプレート41を、図1に鎖線で示す退避位置と実線で示す処理位置との間で昇降させる。
【0018】
前記処理位置は、後述するようにウエハWを比較的高い回転数で回転させて、レジストをウエハWの周縁部へ広げると共に、当該レジストを乾燥させるときにおけるリングプレート41の位置である。さらに詳しくは、ウエハWとリングプレート41との間を流れる気流が乱流となることを防ぐための位置である。この処理位置におけるリングプレート41の下面とウエハW表面との離間距離d1(図1参照)は、例えば5mm以下であり、この例では2mmとしている。
【0019】
前記退避位置は、ウエハW表面全体にレジストが塗布された後、レジストの膜厚分布を調整するためにウエハWの回転数を低下させるにあたり、この回転数の低下によってウエハWの表面近傍における気流の乱れが抑えられる位置である。この退避位置におけるリングプレート41の下面とウエハW表面との離間距離d2は、例えば150mm以上である。また、この退避位置におけるリングプレート41の下面とカップ2の上端との離間距離d3は、例えば110mm以上である。
【0020】
リングプレート41の内側に設けられる開口部を44とする。この開口部44は円形に形成されている。ウエハWが回転し、その周囲が負圧雰囲気になるときに、開口部44を介して当該開口部44の上方からウエハWの周囲へ気体が流れ込む。この気体の流入によって、前記負圧雰囲気が形成されることによるウエハWの周囲の気流の乱れが防がれる。
【0021】
この開口部44の中心とリングプレート41の中心とは、スピンチャック11の回転軸上に位置している。ウエハWの直径は、例えば450mmであり、この場合、開口部44の直径は例えば150mm〜300mmであり、この例では200mmとされている。
【0022】
レジスト塗布装置1には、コンピュータである制御部10が設けられている。制御部10には、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)及びメモリーカードなどの記憶媒体に格納されたプログラムがインストールされる。インストールされたプログラムは、レジスト塗布装置1の各部に制御信号を送信してその動作を制御するように命令(各ステップ)が組み込まれている。具体的には、回転駆動部13によるウエハWの回転数の変更、レジストノズル33の移動、及びレジスト供給源34からレジストノズル33へのレジストの給断、リングプレート41の昇降、排気ダンパ29による排気流量の調整などの動作が、前記プログラムにより制御される。
【0023】
次に上述のレジスト塗布装置1を用いた処理について、図3図8の当該装置1の動作を示す作用図を用いて説明する。また、図9に示すタイミングチャートも適宜参照する。このタイミングチャートにおいては、ウエハWの回転数の変化を実線で示し、ウエハWの表面とリングプレート41の下面との離間距離(以下、単に離間距離と記載する場合がある)を点線で示している。また、チャート中の横軸の数値は、所定の時刻からの経過時間(単位:秒)を示している。このレジスト塗布装置1では、ウエハWに供給されるレジストの量が比較的少なくてもウエハWの周端部における膜厚の低下が抑えられ、ウエハWの面内で均一性高い膜厚を有するレジスト膜を形成することができるように処理が行われる。
【0024】
ファンフィルタユニット16からカップ2に気体が供給されると共に、前記排気管28によりカップ2内の排気が行われた状態とされ、さらにリングプレート41が待機位置に位置する状態で、図示しない搬送機構によりウエハWがレジスト塗布装置1に搬送される。昇降ピン15により、ウエハWはスピンチャック11に受け渡され、その裏面の中央部が当該スピンチャック11に吸着されて保持されると、リングプレート41が下降し、上記の処理位置の若干上方で停止する。このときウエハW表面とリングプレート41の下面との離間距離が、ウエハWから跳ねたレジストが当該下面に付着することを防ぎ、且つ速やかにリングプレートが処理位置へ移動できるように5mm以上、例えば10mm〜20mmとされる。ウエハWが塗布液供給用の回転数である800rpm〜2500rpm、例えば1500rpmで回転すると共に排気管28の排気圧が130Paとなるように排気流量が制御され、待機領域38からウエハWの中心部上にレジストノズル33が移動する。
【0025】
そして、前記レジストノズル33からウエハWの中心部にレジストRが吐出され(図9中、時刻t1)、吐出されたレジストRは、遠心力によりウエハWの周縁部側へと広がる(図3)。所定の量のレジストRが吐出されると当該吐出が停止し、ウエハWの回転数が低下して液溜まり形成用の回転数である100rpm〜500rpm、例えば200rpmになると共に、リングプレート41が処理位置へと下降する(図4、時刻t2)。回転数が低下することで、レジストRがウエハW上を広がる速度が抑えられ、ウエハWの中央部にレジストRの液溜まりが形成される。レジストノズル33から落下するレジストRの液滴は、前記液溜まりと馴染み、混ざり合う。これによって、当該液滴による塗布斑の発生が抑えられる。
【0026】
レジストノズル33が待機領域38へ戻り、ウエハWの回転数が第1の回転数である800rpm〜1300rpm、例えば1200rpmになるように上昇すると共に、前記排気圧が例えば20Paとなるように排気流量が低下する(時刻t3)。この例では前記排気圧はウエハWの処理終了まで20Paに維持されるように、排気流量が制御される。上記のようにファンフィルタユニット16により下降気流が形成されている状態でウエハWが1200rpmと、比較的高速で回転しているため、ウエハWの周囲は負圧雰囲気になり、前記下降気流がリングプレート41の開口部44を介してウエハW表面の中央部に供給され、リングプレート41とウエハWとの間の隙間に引き込まれて、ウエハWの周縁部へと流れる。ウエハWの下方の排気管28により排気が行われていることから、ウエハWの周縁部へ流れた前記気流は、ウエハWの下方へと向かい、当該排気管28により排気される。
【0027】
ウエハWの中央部から周縁部へ向かう気流の流路の高さは、リングプレート41の下面により制限されているため、リングプレート41の下面を通過する気流のレイノルズ数は小さく抑えられるので、前記ウエハWの表面の中央部から周縁部へ向かう気流は、層流または層流とみなせる気流である。即ち、ウエハWの周縁部上で乱流が発生することが抑えられる。図5では点線の矢印で、このようにウエハWの周囲に形成される気流を示している。
【0028】
ウエハWの回転による遠心力で、液溜まりとなっていたレジストRがウエハWの周縁部へ向けて展伸される。この展伸中に上記の気流に曝され、レジストRに含まれる溶剤が揮発し、当該レジストRの乾燥が進行する。このようにウエハWを比較的高い回転数で回転させると共に、ウエハWの周縁部上で乱流の発生を抑制することで、レジストRの乾燥速度を高くすることができると共に、レジスト膜に前記乱流による塗布斑の形成が抑えられる。
【0029】
ウエハWの回転数を上昇させてから所定の時間経過後、ウエハWの回転数が所定の回転数になるように低下すると同時に、リングプレート41が処理位置から退避位置に向かって上昇を開始する(時刻t4、図6)。リングプレート41を上昇させる理由については後述する。前記所定の回転数(第3の回転数)は、処理位置からリングプレート41が離れてもウエハW周縁部上の気流が乱流となることが抑えられる範囲の中で、レジストRの乾燥速度の低下を抑えることができるように高い回転数とすることが有効である。具体的には、例えば800rpm以下であり、ここでは800rpmとしている。
【0030】
レジストRがウエハWの周縁部まで広がり、ウエハW全体がレジストRにより覆われると共に、レジストRの乾燥が進行する。その一方で、リングプレート41が前記退避位置に到達して静止し(時刻t5、図7)、静止した時点から例えば1秒以上経過すると、ウエハWの回転数が第2の回転数である50rpm〜200rpm例えば100rpmになるように低下する(時刻t6)。このようにリングプレート41の上昇停止から間隔を空けてウエハWの回転数を低下させるのは、リングプレート41の上昇によるウエハW表面近傍における気流の乱れが収まった後に前記回転数を低下させるためである。即ち、前記気流の乱れが収まる前に回転数を低下させてさらなる気流の乱れが発生することにより、レジストRに塗布斑が形成されてしまうことを抑えることを目的とする。
【0031】
ウエハWが100rpmと比較的低い回転数で回転を続けることで、ウエハW表面のレジストRにおいて含まれる固形成分が、遠心力によりウエハWの中心部側から周縁部側へ向かって流動する。それによって比較的小さいウエハWの周端部の膜厚が次第に大きくなり、ウエハWの面内における膜厚分布の均一性が高くなる(図8)。
【0032】
後述の評価試験で示すように、このようにウエハW面内の膜厚分布を調整するためにウエハWを比較的低い回転数で回転させるときに、リングプレート41が処理位置に位置していると、ウエハWの周端部における膜厚が小さくなるようにレジスト膜が形成され、膜厚分布の均一性が低くなってしまう。これは、リングプレート41が処理位置に位置したままだと、リングプレート41とウエハWとの離間距離が小さいため、ウエハW表面を流れる気流の流速が比較的高い。このように流速が高い気流に曝されることにより、レジストRの乾燥が速く進行し、その結果、レジストRの流動性が速く低下してしまい、上記のレジストR中の固形成分の移動が十分に起こらないものと考えられる。それを防ぐために、上記のように時刻t4において、前記処理位置からリングプレート41を上昇させている。
【0033】
ここで、上記のレジストRをウエハWに展伸させる時刻t3〜t4において、処理位置にリングプレート41が位置し、比較的高い回転数でウエハWを回転させて、ウエハW表面近傍の気流が安定化した状態となっていても、この状態から膜厚分布の調整を行うためにウエハWの回転数を100rpmに低下させるとすると、この回転数の変化によりリングプレート41の開口部44からウエハW表面に引き込まれる気流の量が変化し、ウエハW表面近傍の気流が乱れてしまうおそれがある。この気流の乱れを防ぐために、既述したように回転数を100rpmに低下させる前に、そのように回転数の低下によって前記ウエハW表面近傍の気流が乱流となることを抑えることができる退避位置へとリングプレート41を退避させている。そして、このようにリングプレート41を退避させることに起因して、レジスト膜の膜厚分布が乱れることを抑えるために、時刻t4〜t5の動作として説明したように、そのようにリングプレート41を退避させることに並行して、ウエハWの回転数を800rpmに低下させている。
【0034】
レジスト塗布装置1による処理の説明に戻ると、100rpmで所定の時間、ウエハWが回転を続けた後、ウエハWの回転数が800rpmになるように上昇する(時刻t7)。これによって、膜厚分布が調整されたレジストRの乾燥が進行し、ウエハWにレジスト膜が形成される。然る後、ウエハWの回転が停止して処理が終了し、ウエハWがスピンチャック11から図示しない搬送機構に受け渡され、レジスト塗布装置1の外部へ搬送される。
【0035】
このレジスト塗布装置1によれば、レジストノズル33からウエハWの中央部に供給されたレジストを乾燥させると共にウエハWの周縁部へ展伸させるときには、その下面がウエハWに近接するようにリングプレート41を処理位置に位置させてウエハW表面の周縁部の気流を整流し、前記乾燥が促進されるように比較的高い回転数でウエハWを回転させる。その後、リングプレート41を前記処理位置から、ウエハWの回転数の低下によるウエハWの表面近傍の気流が乱れることが抑えられる退避位置に移動させ、然る後、ウエハWを比較的低い回転数で回転させる。それによってリングプレート41の前記整流作用が働かず、ウエハWの周縁部におけるレジストの乾燥速度が抑えられた状態で、当該周縁部の膜厚が上昇するようにウエハWの面内で膜厚分布の調整が行われる。従って、ウエハWの処理時間が長くなることを抑え、且つウエハW面内でのレジスト膜の膜厚分布の均一性が低下することを抑えることができる。
【0036】
また、前記処理位置から前記リングプレート41を移動させることに並行して、ウエハWの回転数を800rpmに低下させているので、ウエハW表面の周縁部における気流の乱れをより確実に抑えることができる。従って、ウエハW面内におけるレジスト膜の膜厚分布の低下を、より確実に抑えることができる。
【0037】
ところで、リングプレート41が処理位置に位置する状態で、排気管28からの排気流量を多くすれば、リングプレート41の開口部44からウエハW表面へ引き込まれ、ウエハWの周縁部へ向かって流れる気流の量が増加し、それによってウエハWの周縁部上において、乱流の発生をより確実に抑えることができる。つまり、前記排気流量を大きくすることで、時刻t3〜t4で前記乱流の発生が抑えられるように設定可能なウエハWの回転数の上限を高くすることができる。
【0038】
図9の時刻t3〜t4においてウエハWに塗布斑が形成される回転数の上限は、レジストの種類によって異なる。また、均一性高い膜厚を得るために、前記排気流量は前記回転数に応じて決められる。そこで、制御部3を、当該レジストの種類と、時刻t3〜t4のウエハWの回転数と、時刻t3〜t4の排気流量とが対応付けられたデータを備えるように構成する。前記排気流量は、例えば前記排気管28の排気圧として記憶される。そして、ウエハWに供給するレジストの種類に応じて、当該データに基づいて時刻t3〜t4の回転数及び排気流量が決定されるようにしてもよい。
【0039】
例えば一のレジストを塗布するときには、上記の実施形態と同様に時刻t3〜t4において、排気管28の排気圧が20Pa、ウエハWの回転数が1200rpmとなるように制御される。そして、一のレジストと異なる種類の他のレジストを塗布するときには時刻t3〜t4において、前記排気圧が30Pa、時刻t3〜t4間の回転数が1300rpmとなるように制御され、時刻t4以降の排気圧は、例えば上記の実施形態と同じく20Paにされる。時刻t3〜t4におけるウエハWの回転数が高いほど、レジストの乾燥速度を高くしてスループットの向上を図ることができる。また、ウエハWへのレジストの供給量を適宜調整すると共に、この時刻t3〜t4における前記回転数によってレジスト膜の乾燥速度を制御し、レジスト膜の膜厚を調整するようにしてもよい。即ち、一の粘度を有するレジストから、異なる膜厚を有するレジスト膜を形成することができる。
【0040】
上記の例では、時刻t4において、800rpmへのウエハWの回転数の低下と、退避位置へのリングプレート41の上昇開始とを同時に行っているが、レジスト膜に塗布斑が形成されなければ、前記回転数の低下のタイミングと前記上昇開始のタイミングとを互いにずらしてもよい。
【0041】
図10に、他のリングプレートの構成例を示す。このリングプレート51の下面について縦断面で見ると、当該リングプレート51の外周縁部側は直線状に構成され、内周縁部側は曲線状に構成されている。そして、このリングプレート51の下面は、外周縁部側に向かうにつれてウエハW表面との距離が小さくなるように構成されている。それによって、ウエハWの周縁部において気流の流路をより小さくして、気流の乱れをより確実に抑えることができる。
【0042】
リングプレート51において、ウエハWの中央部側では前記下面とウエハWとの距離が大きいため、開口部44へ進入してから下方へ向かう気流がウエハWに到達するまでに、当該ウエハWの遠心力及び排気によって、ウエハWの周縁部に向かって曲がりやすく、ウエハWに真下に向かう気流成分が供給されることが抑えられる。従って、リングプレート41の開口部44における周縁部直下のレジストRが前記気流成分によって早く乾燥することが抑えられ、その結果としてウエハW面内のレジスト膜の膜厚分布がばらつくことが、より確実に抑えられる。このように径方向に沿ってウエハW表面との距離が変化するリングプレート51を用いる場合、例えば前記処理位置は、リングプレート51の下面のうちウエハW表面に最も近接した位置と当該ウエハW表面との離間距離が5mm以下になる位置とする。
【0043】
図11に、更に他のリングプレートの構成例を示す。このリングプレート52は、開口部44の上面の周縁部に突起部53を有する。この突起部53により、開口部44からウエハWの内側に向かおうとする気流が一旦突起部53に乗り上げられるので、ウエハW表面において開口部44の周縁部直下の気流がより分散される。結果として、ウエハW面内における膜厚分布の低下を抑えることができる。当該突起部53の形状は、図11のように断面視角形とする代わりに、断面視円形や楕円の一部をなすように構成してもよい。
【0044】
塗布液としてレジストを用いる場合について説明してきたが、反射防止膜形成用の薬液や絶縁膜形成用の薬液を基板に塗布する場合も、本発明を適用することができる。なお、基板同士を貼り合わせるための接着剤を塗布する場合にも適用することができる。また、基板は円形基板に限られず、角形基板を用いてもよい。また、これまで説明したリングプレートの各構成は、互いに組み合わせることができる。また、各リングプレートの材質としては、上面部が金属、下面部が樹脂にて構成される例、あるいは全体が樹脂にて構成される例を挙げることができる。
【0045】
上記の例ではウエハWに対して、リングプレート41を昇降させているが、ウエハWの処理中にリングプレート41の高さを固定し、スピンチャック11を昇降させてウエハWとリングプレート41との離間距離を変更するように装置を構成してもよい。また、上記の例では退避位置にてリングプレート41が停止した状態でウエハWの回転数を200rpmに低下させているが、リングプレート41がウエハWの膜厚分布に影響を与えない領域を上昇していれば、当該上昇中にウエハWの回転数を低下させるようにしてもよい。
【0046】
(評価試験)
以下、本発明に関連して行われた評価試験について説明する。
評価試験1
評価試験1−1として、上記のレジスト塗布装置1と略同様の塗布装置を用いて直径が300mmのウエハWにレジスト塗布処理を行った。この評価試験1−1で用いる塗布装置には、リングプレート41が設けられていない。レジストの吐出量は前記ウエハW1枚あたり、0.25mLとした。処理を行うにあたり、ウエハWの回転数は、図12の実線で示すグラフのように制御した。この回転数の制御は上記の実施形態と略同様に行っており、回転数が変化する各タイミングについて、実施形態と同様の時刻t1〜t7の符号をグラフ中に表示している。ただし、この評価試験1では実施形態の時刻t4における回転数の低下を行っておらず、時刻t3で回転数が上昇して、回転数を1200rpmになった後は、時刻t6まで回転数を1200rpmに維持し、時刻t6で200rpmになるように当該回転数を低下させている。
【0047】
評価試験1−2として、評価試験1−1と異なるようにウエハWの回転数を制御して処理を行った。具体的には、回転数を3000rpmとしてウエハW中心部にレジストを供給し、レジストを周縁部に向けて広げた。次いで、レジストの供給停止し、回転数を100rpmとして膜厚分布を調整して、その後回転数を2000rpmに上昇させてレジストの乾燥を行った。このように回転数が異なる他は、評価試験1−1と同様の条件で処理を行った。
【0048】
評価試験1−1、1−2で処理された各ウエハWの直径に沿って膜厚を測定した。図13のグラフにおいて、実線で評価試験1−1のウエハWの膜厚分布を、点線で評価試験1−2のウエハWの膜厚分布を、各々示している。グラフの縦軸は膜厚(単位:nm)であり、横軸はウエハWの中心からの距離(単位:mm)である。グラフに示されるように評価試験1−2では、前記距離が120〜150mmの範囲及び−120〜−150mmの範囲で、ウエハWの周端に向かうにつれて膜厚が低下している。それに対して評価試験1−1では、そのような膜厚の低下が観察されず、膜厚の均一性が高いことが分かる。
【0049】
評価試験2
評価試験2−1として、上記のレジスト塗布装置1を用いて直径が450mmのウエハWに処理を行った。ウエハWへのレジストの吐出量は、0.76gに設定した。評価試験2−1において、ウエハWの回転数は、評価試験1−1と同様に制御した。つまり前記図12のグラフで示すように回転数を制御した。リングプレート41については、図12のグラフの鎖線で示すように、その高さを制御した。具体的にこのリングプレート41の高さについて、上記の実施形態との差異点を説明すると、前記処理位置に位置させた後、ウエハWの処理中は退避位置に退避させず、当該処理位置に位置させたままとした。
【0050】
評価試験2−2として、評価試験1−2と同様にウエハWの回転数を制御して処理を行った。この評価試験2−2では、評価試験1と同様にリングプレート41が設けられていないレジスト塗布装置を用いて処理を行った。それ以外の処理条件は、評価試験2−1と同様とした。
【0051】
評価試験2−1、2−2で処理された各ウエハWの半径に沿って膜厚を測定した。図14は、図13のグラフと同様に、評価試験2−1、2−2のウエハWの膜厚分布を示しており、評価試験2−1の結果を実線で、評価試験2−2の結果を鎖線で夫々示している。このグラフより、評価試験2−1では、評価試験2−2と同程度に、ウエハWの周縁部において、膜厚が低下してしまっている。この評価試験2−1の結果と、上記の評価試験1−1の結果とから、リングプレート41が処理位置に位置し続けることにより、膜厚分布の調整が十分に行われていないことが分かる。従って、当該膜厚分布の調整を行うときに、実施形態で説明したようにリングプレート41を退避位置へ退避させることが有効である。
【0052】
評価試験3
上記の実施形態と同様に複数のウエハWにレジストの塗布処理を行った。ただし、時刻t3〜t4における排気管28の排気圧及びウエハWの回転数は、処理毎に変更した。処理を終えた各ウエハWのレジスト膜について、乱流が転写されたことによる塗布斑の有無を調べた。下記の表1は、評価試験3の結果を示している。表中、前記塗布斑が観察されない処理に○を、前記塗布斑が観察された処理に×を夫々付して示している。
【0053】
【表1】
【0054】
この表1に示すように、排気管28の排気圧を20Pa、30Paに設定したとき、前記回転数が800rpm、1000rpm、1100rpmであると、塗布斑は観察されなかったが、回転数が1200rpmであると塗布斑が観察された。排気管28の排気圧を40Paに設定したときは、前記回転数が800rpm、1000rpm、1100rpmである場合に加えて、回転数が1200rpmである場合も前記塗布斑が観察されなかった。従って、排気流量を高くすることで、時刻t3〜t4の回転数を高くし、実施の形態で説明したように、レジストの乾燥速度の上昇を図ることが可能であることが示された。
【符号の説明】
【0055】
1 レジスト塗布装置
10 制御部
11 スピンチャック
2 カップ
28 排気管
33 レジストノズル
41 リングプレート
43 昇降機構
44 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14