特許第6032238号(P6032238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6032238液晶層形成用組成物、円偏光分離シート及びその製造方法、並びに輝度向上フィルム及び液晶表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032238
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】液晶層形成用組成物、円偏光分離シート及びその製造方法、並びに輝度向上フィルム及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20161114BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20161114BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02F1/13 500
   G02F1/1335 510
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-85428(P2014-85428)
(22)【出願日】2014年4月17日
(62)【分割の表示】特願2010-19719(P2010-19719)の分割
【原出願日】2010年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-167639(P2014-167639A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2014年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】田村 健太郎
【審査官】 池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−098460(JP,A)
【文献】 特開2006−267630(JP,A)
【文献】 特開2011−068833(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/142206(WO,A1)
【文献】 特開2004−099861(JP,A)
【文献】 特開2006−224589(JP,A)
【文献】 特開2006−290929(JP,A)
【文献】 特開2000−095838(JP,A)
【文献】 特表2007−502911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/13
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に2つ以上の重合性官能基を有し、且つ屈折率異方性が0.2以上である液晶化合物と、
環状ケトン構造を有する溶媒と、
環状エーテル構造を有する溶媒と、
前記液晶化合物のN−I点より低い温度で揮発性を示す酸化防止剤と、
下記一般式(2)で表される化合物と
−A−Z−A−R (2)
(一般式(2)において、
及びRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基からなる群より選択される基を表し、
及びAは、それぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基を表し、前記1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基は、置換されていなくてもよく、置換基で1つ以上置換されていてもよく、
Zは、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH−、−OCH−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CHCOO−及び−CHOCO−からなる群より選択される。)
を含む、液晶層形成用組成物。
【請求項2】
前記環状ケトン構造を有する溶媒がシクロペンタノンである、請求項1記載の液晶層形成用組成物。
【請求項3】
前記環状エーテル構造を有する溶媒が1,3−ジオキソランである、請求項1又は2記載の液晶層形成用組成物。
【請求項4】
前記環状ケトン構造を有する溶媒と前記環状エーテル構造を有する溶媒とが重量比で30/70以上90/10以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶層形成用組成物。
【請求項5】
前記酸化防止剤が2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶層形成用組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶層形成用組成物の塗膜を基材上に形成する工程と、
前記塗膜を加熱して前記液晶化合物を配向させる工程と、
前記塗膜を不完全に硬化させる工程と、
前記塗膜を加熱する工程と、
前記塗膜を完全に硬化させる工程と
を、この順に有する円偏光分離シートの製造方法。
【請求項7】
前記酸化防止剤が、前記塗膜を加熱して前記液晶化合物を配向させる工程で揮発する、請求項6記載の円偏光分離シートの製造方法。
【請求項8】
円偏光分離シートと位相差フィルムとを備える輝度向上フィルムの製造方法であって、
請求項6又は7記載の円偏光分離シートの製造方法によって前記円偏光分離シートを製造することを含む、輝度向上フィルムの製造方法。
【請求項9】
輝度向上フィルムと液晶パネルとを備える液晶表示装置の製造方法であって、
請求項記載の輝度向上フィルムの製造方法によって前記輝度向上フィルムを製造することを含む、液晶表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光分離シート等の光学材料の作製に有用な液晶層形成用組成物、当該液晶層形成用組成物から作製された円偏光分離シート及びその製造方法、並びに、当該円偏光分離シートを備える輝度向上フィルム及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などのディスプレイ装置において、視野角やコントラストを向上させたり、輝度を向上させたりすることを目的として、複屈折フィルムが用いられている。かかる複屈折フィルムとしては、正又は負の固有複屈折を有するポリマーの延伸フィルムが知られていた。しかし、これら延伸フィルムは高温下において変形や光学特性の変化を生じることがあった。
【0003】
そこで、耐熱性を向上させたフィルムとして、液晶性を有する化合物(以下、適宜「液晶化合物」という。)を用いたフィルムが提案されている。その例を挙げると、高分子液晶化合物を基材に塗布して配向させたフィルムや、重合性液晶化合物を基材に塗布及び配向させて熱又は光によって硬化させたフィルムなどが知られている。しかし、これら液晶化合物を成膜して得られるフィルムでは、液晶化合物の溶解性の低さから使用できる液晶化合物が限定され、十分な光学特性が得られ難い。また、液晶化合物は欠陥なく均一に塗布することが難しく、生産性に欠ける。そこで、特許文献1〜3において改善方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/088101号
【特許文献2】特開平10−104615号公報
【特許文献3】特表2007−502911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶化合物を用いて得られるフィルムのひとつに円偏光分離シートが挙げられる。この円偏光分離シートは例えばコレステリック液晶を塗布して製造されるものである。円偏光分離シートを輝度向上フィルムとして用いる場合、円偏光分離シートは波長範囲で300nm以上の広い選択反射帯域を有することが好ましい。このように広い選択反射帯域を実現するためには、屈折率異方性Δnが0.20以上に高い液晶化合物を用いることが望まれる。
【0006】
しかし、一般に屈折率異方性の高い液晶化合物ほど、結晶性が増して溶解性に乏しくなり、欠陥なく均一に塗布することが難しい。例えば特許文献1〜3記載の技術で屈折率異方性の高い液晶化合物を成膜しようとすれば、特許文献1記載の液晶層形成用インキ組成物は液晶化合物に対して貧溶媒であるアルコール系溶剤を含有するため、塗布中に液晶化合物が析出して欠陥が生じる可能性がある。また、特許文献2記載の技術では比較的Δnの低い液晶化合物に対しては好適であるが、結晶性の高い高Δn液晶化合物に対しては2−ブタノンが貧溶媒となるため、高Δn液晶化合物を塗布する際に液晶化合物の析出が発生して欠陥となる可能性がある。また、特許文献3記載の技術では蒸気圧の比較的高い1,3−ジオキソランを多く使用するために厚みムラが発生しやすく、均一な成膜が難しい。
【0007】
そこで、出願人は、特願2009−223109において新規な液晶層形成用組成物を提案した。この液晶層形成用組成物は環状ケトン構造を有する溶媒と、環状エーテル構造を有する溶媒とを組み合わせた混合溶媒を含む組成物である。前記の混合溶媒が屈折率異方性の高い液晶化合物を良好に溶解するため、前記の液晶層形成用組成物を用いれば、欠陥がなく均一な液晶層を効率よく製造できる。
【0008】
ところが前記の液晶層形成用組成物について更に検討を進めたところ、前記の液晶層形成用組成物は安定性に乏しく、経時的にゲル化する傾向があるため、十分なポットライフを有していないことが判明した。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、欠陥なく均一な液晶層を効率よく製造でき、従来よりも長いポットライフを有する液晶層形成用組成物、この液晶層形成用組成物を用いた円偏光分離シート及びその製造方法、並びに、前記の円偏光分離シートを備える輝度向上フィルム及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上述した課題を解決するべく鋭意検討した結果、環状ケトン構造を有する溶媒、環状エーテル構造を有する溶媒および屈折率異方性の高い液晶化合物を含む液晶層形成用組成物に、更に所定の酸化防止剤を含ませるようにすると、液晶層形成用組成物の経時的なゲル化を抑制してポットライフを長くでき、しかも欠陥がなく均一な液晶層を効率よく製造できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔10〕を要旨とする。
【0011】
〔1〕 1分子中に2つ以上の重合性官能基を有し、且つ屈折率異方性が0.2以上である液晶化合物と、
環状ケトン構造を有する溶媒と、
環状エーテル構造を有する溶媒と、
前記液晶化合物のN−I点より低い温度で揮発性を示す酸化防止剤と
を含む、液晶層形成用組成物。
〔2〕 前記環状ケトン構造を有する溶媒がシクロペンタノンである、〔1〕記載の液晶層形成用組成物。
〔3〕 前記環状エーテル構造を有する溶媒が1,3−ジオキソランである、〔1〕又は〔2〕記載の液晶層形成用組成物。
〔4〕 前記環状ケトン構造を有する溶媒と前記環状エーテル構造を有する溶媒とが重量比で30/70以上90/10以下である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の液晶層形成用組成物。
〔5〕 前記酸化防止剤が2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールである、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の液晶層形成用組成物。
〔6〕 〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の液晶層形成用組成物の塗膜を基材上に形成する工程と、
前記塗膜を加熱して前記液晶化合物を配向させる工程と、
前記塗膜を不完全に硬化させる工程と、
前記塗膜を加熱する工程と、
前記塗膜を完全に硬化させる工程と
を、この順に経て得られる、円偏光分離シート。
〔7〕 〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の液晶層形成用組成物の塗膜を基材上に形成する工程と、
前記塗膜を加熱して前記液晶化合物を配向させる工程と、
前記塗膜を不完全に硬化させる工程と、
前記塗膜を加熱する工程と、
前記塗膜を完全に硬化させる工程と
を、この順に有する円偏光分離シートの製造方法。
〔8〕 前記酸化防止剤が、前記塗膜を加熱して前記液晶化合物を配向させる工程で揮発する、〔7〕記載の円偏光分離シートの製造方法。
〔9〕 〔6〕記載の円偏光分離シートと位相差フィルムとを備える、輝度向上フィルム。
〔10〕 〔9〕記載の輝度向上フィルムと液晶パネルとを備える、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、欠陥なく均一な液晶層を効率よく製造でき、ポットライフが長い液晶層形成用組成物、この液晶層形成用組成物を用いた円偏光分離シート及びその製造方法、並びに、前記の円偏光分離シートを備える輝度向上フィルム及び液晶表示装置を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態及び例示物等を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0014】
〔1.液晶層形成用組成物〕
本発明の液晶層形成用組成物は、1分子中に2つ以上の重合性官能基を有し且つ屈折率異方性が所定値以上である液晶化合物(以下、適宜「高Δn重合性液晶化合物」という。)と、環状ケトン構造を有する溶媒(以下、適宜「環状ケトン溶媒」という。)と、環状エーテル構造を有する溶媒(以下、適宜「環状エーテル溶媒」という。)と、所定の酸化防止剤とを含む組成物である。本発明の液晶層形成用組成物を基材上に成膜することにより塗膜が得られ、得られる塗膜は高Δn重合性液晶化合物を含む液晶層に該当する。また、液晶層を硬化させると液晶硬化物層が得られる。
【0015】
〔1−1.液晶化合物〕
高Δn重合性液晶化合物は、1分子中に2つ以上の重合性官能基を有する。重合性官能基は、適切な条件下において重合反応を生じて高Δn重合性液晶化合物を重合させる基である。高Δn重合性液晶化合物が重合性官能基を2つ以上有することにより、液晶層形成用組成物を成膜して硬化させる場合に、高Δn重合性液晶化合物を重合させて安定した硬化物を得ることができる。逆に、1分子中に重合性官能基が1つ以下であると、液晶層形成用組成物を成膜して硬化させた場合に、架橋した硬化物が得られないため円偏光分離シート等として実用に耐えうる膜強度が得られないことがある。後述する架橋剤を使用した場合でも、膜強度が不足し実用は困難になる傾向がある。
なお、実用に耐えうる膜強度とは、鉛筆硬度(JIS K5400)でHB以上、好ましくはH以上である。膜強度がHBより低いと傷がつきやすくハンドリング性に欠ける。好ましい鉛筆硬度の上限は、光学的性能や耐久性試験に悪影響を及ぼさなければ特に限定されない。
【0016】
前記の重合性官能基としては、例えば、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、チオエポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基、及びアミノ基などが挙げられる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルのことを指す。また、1分子中に含まれる重合性官能基は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0017】
高Δn重合性液晶化合物の屈折率異方性は、通常0.20以上、好ましくは0.21以上、より好ましくは0.23以上である。高Δn重合性液晶化合物の屈折率異方性が高いことにより、高Δn重合性液晶化合物を含む液晶層形成用組成物の屈折率異方性を向上させて、優れた光学的性能(例えば、円偏光分離特性)を有する円偏光分離シートを実現できる。また、屈折率異方性が0.30以上であると、紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合があるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望の光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。
なお、化合物の屈折率異方性はセナルモン法により測定できる。
【0018】
高Δn重合性液晶化合物の中でも好ましい例を挙げると、下記の一般式(1)で表される棒状液晶化合物が挙げられる。
−C−D−C−M−C−D−C−R (1)
【0019】
一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して、重合性官能基を表す。
【0020】
一般式(1)において、D及びDは、それぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のメチレン基及びアルキレン基等の二価の飽和炭化水素基、並びに、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。
【0021】
一般式(1)において、C〜Cは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH−、−OCH−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CHCOO−、及び−CHOCO−からなる群より選択される基を表す。
【0022】
一般式(1)において、Mはメソゲン基を表す。Mの具体例を挙げると、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の群から選択された2〜4個の骨格を、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH−、−OCH−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CHCOO−、及び−CHOCO−等の結合基によって結合されて形成される基を表す。
【0023】
前記のメソゲン基Mが有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−O−R、−O−C(=O)−R、−C(=O)−O−R、−O−C(=O)−O−R、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−NR、または−O−C(=O)−NRを表す。
ここで、R及びRは、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を表す。R及びRがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、Rは、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。前記「置換基を有してもよい炭素原子数1〜10個のアルキル基」における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜6個のアルコキシ基、炭素原子数2〜8個のアルコキシアルコキシ基、炭素原子数3〜15個のアルコキシアルコキシアルコキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7個のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0024】
本発明の液晶層形成用組成物は、1種類の高Δn重合性液晶化合物を単独で含んでいてもよく、2種類以上の高Δn重合性液晶化合物を任意の比率で組み合わせて含んでいてもよい。
【0025】
高Δn重合性液晶化合物の分子量は、好ましくは600以上である。本発明の液晶層形成用組成物が後述するように一般式(2)で表される化合物を含む場合、高Δn重合性液晶化合物の分子量を前記のように大きくすれば、一般式(2)で表される化合物の分子がそれよりも分子量の大きい高Δn重合性液晶化合物の隙間に入り込むことができ、配向均一性を向上させることができる。
【0026】
本発明の液晶層形成用組成物において、高Δn重合性液晶化合物の濃度は、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上であり、通常40重量%以下、好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。高Δn重合性液晶化合物の濃度をこのような範囲に収めることにより、高Δn重合性液晶化合物の析出を抑制しながら、所望の液晶層を効率よく成膜できる。
【0027】
〔1−2.溶媒〕
本発明の液晶層形成用組成物は、溶媒として、環状ケトン溶媒と環状エーテル溶媒とを含む。通常、本発明の液晶層形成用組成物はこれらの溶媒に他の成分が溶解した溶液の状態で使用される。これらの環状ケトン溶媒及び環状エーテル溶媒を含むことにより、液晶層形成用組成物において高Δn重合性液晶化合物の溶解性と溶媒の乾燥速度の制御性とを良好にして、欠陥のない均一な成膜が可能となる。
【0028】
環状ケトン溶媒としては、例えば、シクロプロパノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられ、中でもシクロペンタノンが好ましい。なお、環状ケトン溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0029】
環状エーテル溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等が挙げられ、中でも1,3−ジオキソランが好ましい。なお、環状エーテル溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の液晶層形成用組成物において、環状ケトン溶媒は環状エーテル溶媒よりも蒸気圧が低いことが好ましい。この観点から、環状ケトン溶媒と環状エーテル溶媒との重量比率(環状ケトン溶媒/環状エーテル溶媒)は、通常30/70以上、好ましくは40/60以上、より好ましくは45/55以上であり、通常90/10以下、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下である。前記範囲の下限以上とすることにより、溶媒の乾燥速度が過度に速くなることを防止して厚みムラの発生を抑制できる。また、前記範囲の上限以下とすることにより、溶媒の乾燥速度が過度に遅くなることを防止して液晶層及び液晶硬化物層に溶媒が残留することを抑制できる。
【0031】
本発明の液晶層形成用組成物における環状ケトン溶媒及び環状エーテル溶媒の量は、高Δn重合性液晶化合物100重量部に対する環状ケトン溶媒及び環状エーテル溶媒の合計量で、通常100重量部以上、好ましくは150重量部以上、より好ましくは200重量部以上であり、通常1900重量部以下、好ましくは900重量部以下、より好ましくは500重量部以下である。この範囲の下限以上とすることにより高Δn重合性液晶化合物の析出を安定して抑制でき、この範囲の上限以下とすることにより溶媒量が過剰となって液晶層及び液晶硬化物層の製造効率が低下することを防止できる。
【0032】
〔1−3.酸化防止剤〕
本発明の液晶層形成用組成物は、酸化防止剤を含む。本発明の液晶層形成用組成物に含まれる環状エーテル溶媒は、空気との自動酸化によって過酸化物を生成しやすい。さらに、環状エーテル溶媒は、環状ケトン溶媒等の他溶媒との混合系において、その傾向が昂進する場合がある。生成した過酸化物はラジカルを発生させ、高Δn重合性液晶化合物の重合を進行させる。このため、従来の液晶層形成用組成物はゲル化しやすかった。これに対して本発明の液晶層形成用組成物は、酸化防止剤を含むことにより、液晶層形成用組成物中の高Δn重合性液晶化合物の重合を抑制できる。これにより、液晶層形成用組成物が経時的にゲル化することを抑制して、液晶層形成用組成物のポットライフを長くすることができる。なおポットライフとは、液晶層形成用組成物をその状態を維持したままで保存できる期間を指す。つまり、ポットライフが長ければ、事前に十分な量の液晶層形成用組成物を在庫として準備することができるため、生産計画のフレキシビリティを高めることができる。
【0033】
酸化防止剤としては、高Δn重合性液晶化合物のN−I点より低い温度で揮発性を示す酸化防止剤を用いる。ここでN−I点とは、高Δn重合性液晶化合物がネマチック相からアイソトロピック相へと転移する温度であり、このN−I点より高温になると高Δn重合性液晶化合物はネマチック液晶性を失う。また揮発性とは、酸化防止剤が気体となって発散する性質のことをいい、気体となる以前の酸化防止剤が固体であったか液体であったかは問わない。
【0034】
本発明の液晶層形成用組成物を用いて広い選択反射帯域を有する円偏光分離シートを製造しようとする場合、通常は、液晶層形成用組成物の塗膜を形成した後で、塗膜に含まれる高Δn重合性液晶化合物を重合させて塗膜を不完全に硬化させる不完全硬化工程を行なう。不完全硬化工程は、液晶層形成用組成物から形成されるコレステリック樹脂層の反射スペクトルを広帯域にする広帯域化のために行われる工程である。酸化防止剤は不完全硬化工程において重合を妨げ不完全硬化を阻害するように機能する傾向があるため、酸化防止剤は円偏光分離シートの広帯域化を妨げ、ひいては効率的な製造を妨げる可能性があった。これに対し、高Δn重合性液晶化合物のN−I点より低い温度で揮発性を示す酸化防止剤を用いれば、不完全硬化工程の前に塗膜を加熱することによって酸化防止剤を容易に除去できる。特に、通常は不完全硬化工程の前に加熱によって高Δn重合性液晶化合物を配向させる配向処理工程を行なうため、この配向処理工程で酸化防止剤を容易に塗膜から除去できる。したがって、高Δn重合性液晶化合物のN−I点より低い温度で揮発性を示す酸化防止剤を採用することにより、液晶層形成用組成物のポットライフを長くすること、および円偏光反射シートを効率的に製造できるようにすることを、両方とも実現できる。
【0035】
前記のように高Δn重合性液晶化合物のN−I点より低い低温で揮発性を示す酸化防止剤は、従来の技術常識では、液晶層形成用組成物に適していないと認識されていた。このように認識されていた理由は、(i)低温で揮発性を示す酸化防止剤は、製造途中で揮発(すなわち、気体となって発散)して製造装置に付着して製造装置を汚しやすいと認識されていたため、(ii)低温で揮発性を示す酸化防止剤は、製造途中で揮発して製品に付着して製品を汚しやすいと認識されていたため、(iii)製品の耐酸化性を高めることを目的として酸化防止剤を使用している場合には製造途中で酸化防止剤が揮発することは目的を達成できないことになるので適切でないと認識されていたため、等が挙げられる。本発明の液晶層形成用組成物においては、前述のような従来の技術常識とは異なり、あえてN−I点より低い低温で揮発性を示す酸化防止剤を用いて、高品質な円偏光反射シートの効率的な製造を実現するものである。
【0036】
酸化防止剤がN−I点より低い温度で示す揮発性の程度は、本発明の液晶層形成用組成物が含む酸化防止剤の量、及び、液晶層形成用組成物から酸化防止剤を揮発させて除去するために使える時間の長さ等に応じて設定すればよい。例えば本発明の液晶層形成用組成物を円偏光分離シートの製造用途に使用する場合には、不完全硬化工程よりも以前に配向処理工程等で行う加熱によって、円偏光分離シートの広帯域化を実現できる程度に液晶層形成用組成物から酸化防止剤が除去されるだけの揮発性を示せばよい。
【0037】
酸化防止剤が示す具体的な揮発性の好ましい範囲を挙げると、例えば、後述する円偏光分離シートの製造方法における配向処理工程において、液晶層形成用組成物に含まれる酸化防止剤の通常90重量%以上、好ましくは99重量%以上、より好ましくは99.5重量%以上、理想的には100重量%が揮発することが望ましい。また、得られる円偏光分離シートが備える液晶硬化物層が含む酸化防止剤の量が、液晶層形成用組成物が含む酸化防止剤の量に対して、通常10重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であり、理想的には0重量%であることが望ましい。
【0038】
また、酸化防止剤は、本発明の液晶層形成用組成物の保存条件下において、揮発性を示さないか、揮発性を示すとしても本発明の効果を著しく損なわない程度に揮発量が少量であることが好ましい。ポットライフの長期化という本発明の効果を安定して発揮させるようにするためである。本発明の液晶層形成用組成物の保存条件下における具体的な揮発性の程度は保存時の温度、圧力、容器、保存時間等の保存条件に応じて一様ではない。通常は本発明の液晶層形成用組成物は環状ケトン溶媒及び環状エーテル溶媒の沸点より低い温度で保存し、具体的には常温(通常は25℃)、常圧(通常は1013hPa)において密閉容器内で保存する場合が多い。したがって、酸化防止剤の揮発性は、当該保存条件における保存期間を通じて液晶層形成用組成物中の酸化防止剤の濃度を後述する範囲に維持できる程度であることが好ましい。
【0039】
酸化防止剤の例を挙げると、一般的に使用されるものとしては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。中でも、上述した好ましい酸化防止剤の例を挙げると、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ヒドロキノンなどが挙げられ、特にBHTが好ましい。なお、本発明の液晶層形成用組成物は、酸化防止剤を、1種類を単独で含んでいてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて含んでいてもよい。
【0040】
【表1】
【0041】
本発明の液晶層形成用組成物が含む酸化防止剤の量は、その種類によっても異なるが、液晶層形成用組成物に含まれる不揮発成分に対して、通常0.01%以上、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.05%以上であり、通常5%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下である。酸化防止剤が少なすぎる場合は十分なポットライフが得られない可能性がある。また、酸化防止剤が多すぎる場合は酸化防止剤の揮散に時間がかかり製造の効率を下げたり、塗膜に残留して不完全硬化工程に影響を及ぼしたりする可能性がある。
【0042】
〔1−4.その他の成分〕
本発明の液晶層形成用組成物は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した成分以外にその他の成分を含んでいてもよい。
例えば、本発明の液晶層形成用組成物は、下記一般式(2)で表される化合物を含んでいてもよい。
−A−Z−A−R (2)
【0043】
一般式(2)において、R及びRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基からなる群より選択される基を表す。
【0044】
前記アルキル基及びアルキレンオキサイド基は、置換されていなくてもよく、ハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい。さらに、アルキル基及びアルキレンオキサイド基のそれぞれにおいて、2以上の置換基が存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
また、前記ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基は、炭素原子数1〜2個のアルキル基及び/又はアルキレンオキサイド基と結合していてもよい。
【0045】
及びRとして好ましい例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基が挙げられる。
【0046】
及びRの少なくとも一方は重合性官能基であることが好ましい。R及び/又はRとして重合性官能基を有することにより、前記一般式(2)で表される化合物が硬化時に液晶層中に固定され、より強固な膜として液晶硬化物層を形成することができる。ここで重合性官能基とは、例えば、高Δn重合性液晶化合物と同様のものが挙げられ、中でもカルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、及びアミノ基が好ましい。
【0047】
一般式(2)において、A及びAはそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基を表す。前記1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基は、置換されていなくてもよく、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜10個のアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の置換基で1つ以上置換されていてもよい。さらに、A及びAのそれぞれにおいて、2以上の置換基が存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0048】
及びAとして特に好ましいものとしては、1,4−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、及び2,6−ナフチレン基が挙げられる。これらの芳香環骨格は脂環式骨格と比較して比較的剛直であり、高Δn重合性液晶化合物のメソゲンとの親和性が高く、配向均一能がより高くなる。
【0049】
一般式(2)において、Zは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH−、−OCH−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CHCOO−、及び−CHOCO−からなる群より選択される。Zとして特に好ましいものとしては、単結合、−OCO−及び−CH=N−N=CH−が挙げられる。
【0050】
一般式(2)で表される化合物は、少なくとも一種が液晶性を有することが好ましく、また、キラリティを有することが好ましい。また、本発明の液晶層形成用組成物は、一般式(2)で表される化合物として、複数の光学異性体の混合物を含有することが好ましい。例えば、複数種類のエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物を含有することができる。一般式(2)で表される化合物の少なくとも一種は、その融点が、50℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。
【0051】
一般式(2)で表される化合物が液晶性を有する場合には、その屈折率異方性は高いことが好ましい。これにより、本発明の液晶層形成用組成物の屈折率異方性を向上させることができ、広帯域の円偏光分離シートを作製することができる。一般式(2)で表される化合物の少なくとも一種の屈折率異方性は、好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。なお、一般式(2)で表される化合物の中には高Δn重合性液晶化合物としての要件を充足するものもありえ、そのような化合物は本発明に係る高Δn重合性液晶化合物として扱うものとする。
【0052】
本発明の液晶層形成用組成物において、前記一般式(2)で表される化合物の分子量が600未満であることが好ましい。一般式(2)で表される化合物の分子量が600未満であることにより、一般式(2)で表される化合物がそれよりも分子量の大きい高Δn重合性液晶化合物の隙間に入り込むことができ、本発明の液晶層形成用組成物における高Δn重合性液晶化合物の配向均一性を向上させることができる。
【0053】
一般式(2)で表される化合物として特に好ましい具体例としては、例えば、下記の化合物(A1)〜(A10)が挙げられる。なお、化合物(A3)において、「*」はキラル中心を表す。
【0054】
【化1】
【0055】
【化2】
【0056】
一般式(2)で表される化合物の配合割合は、(一般式(2)で表される化合物の合計重量)/(高Δn重合性液晶化合物の合計重量)の重量比で、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.15以上が特に好ましく、また、1以下が好ましく、0.65以下がより好ましく、0.45以下が特に好ましい。前記重量比が小さすぎると本発明の液晶層形成用組成物における高Δn重合性液晶化合物の配向均一性が不十分となる場合があり、また逆に大きすぎると本発明の液晶層形成用組成物における高Δn重合性液晶化合物の配向均一性が低下したり、本発明の液晶層形成用組成物の液晶相の安定性が低下したり、本発明の液晶層形成用組成物の液晶組成物としての屈折率異方性が低下して、成膜した場合に所望の光学的性能(例えば、円偏光分離特性)が得られない場合がある。なお、合計重量とは、1種類を用いた場合にはその重量を示し、2種類以上用いた場合には合計の重量を示す。
【0057】
また、例えば、本発明の液晶層形成用組成物は、硬化後の膜強度向上や耐久性向上のために、架橋剤を含んでいてもよい。当該架橋剤としては、本発明の液晶層形成用組成物を成膜した液晶層の硬化時に同時に反応したり、硬化後に熱処理を行って反応を促進したり、湿気により自然に反応が進行したりして、液晶硬化物層の架橋密度を高めることができ、かつ配向均一性を悪化させないものを適宜選択し用いることができる。また架橋剤は、例えば紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
【0058】
架橋剤の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;などが挙げられる。なお、架橋剤は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、本発明の液晶層形成用組成物には架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を含ませ、膜強度や耐久性向上に加えて生産性を向上させるようにしてもよい。
【0059】
前記架橋剤の配合割合は、本発明の液晶層形成用組成物を硬化して得られる液晶硬化物層中における架橋剤の濃度が0.1重量%〜15重量%となるようにすることが好ましい。架橋剤の配合割合が0.1重量%より少ないと架橋密度向上の効果が得られない可能性があり、逆に15重量%より多いと液晶硬化物層の安定性を低下させる可能性がある。
【0060】
また、例えば、本発明の液晶層形成用組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、熱重合開始剤を用いてもよいが、通常は光重合開始剤を用いる。当該光重合開始剤としては、例えば、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させる公知の化合物が使用できる。
光重合開始剤の例を挙げると、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp′−ジクロロベンゾフェノン、pp′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]や1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)などのカルバゾールオキシム化合物、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。なお、所望する物性に応じて重合開始剤は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて本発明の液晶層形成用組成物に公知の光増感剤や重合促進剤としての三級アミン化合物を含ませて、液晶層形成用組成物の硬化性をコントロールすることもできる。
【0061】
重合開始剤の配合割合は、本発明の液晶層形成用組成物中0.03重量%〜7重量%であることが好ましい。重合開始剤の配合量が0.03重量%より少ないと重合度が低くなり得られる液晶硬化物層の膜強度が低下する場合がある。逆に7重量%より多いと、高Δn重合性液晶化合物の配向を阻害して液晶相が不安定になる場合がある。
【0062】
また、例えば、本発明の液晶層形成用組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。当該界面活性剤としては、配向を阻害しないものを適宜選択して使用することができる。
界面活性剤の例を挙げると、疎水基部分にシロキサン、フッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤等が好適に使用できる。中でも、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤としては、例えば、OMNOVA社PolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652;ネオス社フタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D;セイミケミカル社サーフロンのKH−40等を用いることができる。なお、界面活性剤は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0063】
界面活性剤の配合割合は、本発明の液晶層形成用組成物を硬化して得られる液晶硬化物層中における界面活性剤の濃度が0.05重量%〜3重量%となるようにすることが好ましい。界面活性剤の配合割合が0.05重量%より少ないと空気界面における配向規制力が低下して配向欠陥が生じる場合がある。逆に3重量%より多い場合には、過剰の界面活性剤が高Δn重合性液晶化合物分子間に入り込み、配向均一性を低下させる場合がある。
【0064】
また、例えば、本発明の液晶層形成用組成物は、カイラル剤を含んでいてもよい。カイラル剤の具体例としては、特開2005−289881号公報、特開2004−115414号公報、特開2003−66214号公報、特開2003−313187号公報、特開2003−342219号公報、特開2000−290315号公報、特開平6−072962号公報、米国特許第6468444号公報、国際公開第98/00428号、特開2007−176870号公報、等に掲載されるものを適宜使用することができる。その具体例を挙げると、例えばBASF社パリオカラーのLC756が挙げられる。なおカイラル剤は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0065】
カイラル剤の配合割合は、所望する光学的性能を低下させない範囲とする。具体的なカイラル剤の配合割合は、本発明の液晶層形成用組成物中、1重量%〜60重量%とすることが好ましい。
【0066】
本発明の液晶層形成用組成物は、例えば、耐久性向上のための紫外線吸収剤、光安定化剤等を含んでいてもよい。ただし、これらその他の成分の配合割合は、所望する光学的性能を低下させない範囲とする。
なお、その他の成分は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0067】
〔1−5.液晶層形成用組成物の製造方法〕
本発明の液晶層形成用組成物の製造方法は、特に限定されず、上記各成分を混合することにより製造することができる。
【0068】
〔1−6.本発明の液晶層形成用組成物の主な利点〕
本発明の液晶層形成用組成物は、保存時及び使用時において高Δn重合性液晶化合物が析出しにくいため欠陥の発生を抑制できる。また、溶媒の蒸発速度を容易に制御できるため、厚みムラのない均一な成膜が可能である。さらに、本発明の液晶層形成用組成物ではより広範な高Δn重合性液晶化合物を安定な溶解状態にできるため、広範な高Δn重合性液晶化合物を用いて多様なタイプの液晶層及び液晶硬化物層の製造に適用できる。
【0069】
また、酸化防止剤によりゲル化を抑制してポットライフを長くすることができる。具体的には、通常、常温において密閉容器中に1週間放置した場合であっても、前記のように欠陥の無い均一な液晶層を形成できる。
さらに、本発明の液晶層形成用組成物を用いて円偏光反射シートを製造する時には、酸化防止剤を容易に除去できるため、硬化時に高Δn重合性液晶化合物の重合の進行が妨げられず、円偏光反射シートを効率的に製造できる。
【0070】
〔2.円偏光分離シートの製造方法〕
本発明の液晶層形成用組成物は、前記のように欠陥なく均一な液晶層及び液晶硬化物層を形成できるという優れた利点を有する。これを利用して、本発明の液晶層形成用組成物を用い、円偏光分離シートを製造できる。円偏光分離シートの製造方法は、例えば国際公開第2008/007782号を参照すればよい。中でも本発明の液晶層形成用組成物を用いて円偏光分離シートを製造する場合、以下に説明する本発明の円偏光分離シートの製造方法を採用することが好ましい。
【0071】
本発明の円偏光分離シートの製造方法によって円偏光分離シートを製造する場合、少なくとも、本発明の液晶層形成用組成物の塗膜を基材上に形成する成膜工程と、塗膜を加熱して高Δn重合性液晶化合物を配向させる配向処理工程と、塗膜を不完全に硬化させる不完全硬化工程と、塗膜を加熱する加熱工程と、塗膜を完全に硬化させる完全硬化工程とを、この順に行う。また、必要に応じて、成膜工程、配向処理工程、不完全硬化工程、加熱工程及び完全硬化工程以外の工程を行うようにしてもよい。
【0072】
〔2−1.基材の用意〕
基材は、本発明の液晶層形成用組成物を成膜する対象となる部材である。この基材は、液晶硬化物層の形成後に剥がしてもよいが、剥がさずに液晶硬化物層と共に円偏光分離シートの一部として用いてもよい。基材を円偏光分離シートの一部として用いる場合、基材として通常は透明基材を用いる。透明基材の具体的な光線透過率は円偏光分離シートの用途に応じて一様ではないが、例えば1mm厚で全光線透過率が80%以上の基材を使用できる。
【0073】
透明基材としては例えば透明樹脂のシート又はフィルム等を用いることができる。透明基材の材料の具体例を挙げると、脂環式オレフィンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレン等の鎖状オレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、変性アクリルポリマー、エポキシ樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。これらの中でも、脂環式オレフィンポリマー又は鎖状オレフィンポリマーが好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性などの観点から脂環式オレフィンポリマーが特に好ましい。また、透明基材は、1層のみからなる単層構造であってもよく、2層以上の層を有する積層構造であってもよい。
【0074】
基材上には配向膜を設けてもよい。配向膜を設けることにより、その上に成膜される本発明の液晶層形成用組成物の塗膜中の高Δn重合性液晶化合物を所望の方向により確実に配向させることができる。配向膜は、基材表面に、必要に応じてコロナ放電処理等を施した後、配向膜の材料を水又は溶剤に溶解させた溶液等を塗布し、乾燥させ、その後乾燥塗膜にラビング処理を施すことにより形成することができる。
【0075】
前記配向膜の材料としては、例えば、セルロース、シランカップリング剤、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エポキシアクリレート、シラノールオリゴマー、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリオキサゾール、環化ポリイソプレンなどが挙げられるが、変性ポリアミドが特に好ましい。なお、配向膜の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0076】
前記変性ポリアミドとしては、例えば、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドに変性を加えたものが挙げられる。中でも脂肪族ポリアミドに変性を加えたものが好ましい。具体例を挙げると、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12、3元ないし4元共重合ナイロン、脂肪酸系ポリアミド、又は脂肪酸系ブロック共重合体(例えばポリエーテルエステルアミド、ポリエステルアミド)に変性を加えたもの等が挙げられる。当該変性としては、例えば、末端アミノ変性、カルボキシル変性、ヒドロキシル変性などの変性、並びにアミド基の一部をアルキルアミノ化又はN−アルコキシアルキル化する変性が挙げられる。N−アルコキシアルキル化変性ポリアミドとしては、例えば、ナイロン−6、ナイロン−66、又はナイロン−12等の共重合ナイロンのアミド基の一部をN−メトキシメチル化したものが挙げられる。前記変性ポリアミドの重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上であり、好ましくは500000以下、より好ましくは200000以下である。
【0077】
配向膜の厚さは、液晶層に所望の配向均一性が得られる厚さであればよい。具体的には、0.001μm以上が好ましく、0.01μm以上がより好ましく、5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。
【0078】
〔2−2.成膜工程〕
基材を用意した後で、本発明の液晶層形成用組成物の塗膜を基材上に形成する成膜工程を行なう。成膜により形成される本発明の液晶層形成用組成物の塗膜は、高Δn重合性液晶化合物を含む層であり、液晶層に該当する。なお、基材表面に配向膜を形成している場合、配向膜上に本発明の液晶層形成用組成物を成膜するようにする。
【0079】
成膜工程では、通常は、成膜後、一定時間の経過により塗膜から溶媒が乾燥除去される。この際、環状ケトン溶媒及び環状エーテル溶媒を含む混合溶媒が高Δn重合性液晶化合物を良好に溶解させているため、高Δn重合性液晶化合物の析出による液晶層の欠陥を防止できる。また、環状ケトン溶媒及び環状エーテル溶媒を含む混合溶媒の乾燥速度は過度に速すぎないため、塗膜に厚みムラが生じることがなく、ひいては液晶層及び液晶硬化物層の厚みムラの発生を防止できる。
なお、酸化防止剤の揮発性によっては、前記の溶媒の乾燥時に酸化防止剤が揮発することもある。
【0080】
通常、本発明の液晶層形成用組成物の成膜は塗布により行なう。塗布方法に制限はないが、例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法等の方法で実施すればよい。
【0081】
成膜時の温度条件は、通常10℃以上、好ましくは13℃以上、より好ましくは16℃以上であり、通常60℃以下、好ましくは45℃以下、より好ましくは35℃以下である。温度を前記範囲の下限以上とすることにより溶媒の乾燥速度が過度に遅くなって製造効率が低下することを防止でき、また上限以下とすることにより溶媒の乾燥速度が過度に速くなって塗膜の厚みムラが発生することをより安定して防止できる。
【0082】
〔2−3.配向処理工程〕
成膜工程により塗膜を形成した後、不完全硬化工程の前に、塗膜を加熱して高Δn重合性液晶化合物を配向させる配向処理工程を行う。
配向処理の加熱温度は、塗膜を通常50℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、また、通常190℃以下、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下に加熱すればよい。
また、加熱時間は、通常0.25分以上、好ましくは0.5分以上、より好ましくは1分以上であり、通常10分間以内、好ましくは8分以内、より好ましくは6分以内である。
配向処理を施すことにより、塗膜中の高Δn重合性液晶化合物を良好に配向させることができる。
【0083】
また、配向処理工程において塗膜を加熱することにより、塗膜に含まれる酸化防止剤が揮発する。これにより、塗膜に含まれていた酸化防止剤が除去されるので、配向処理工程よりも後で行われる不完全硬化工程における高Δn重合性液晶化合物の重合が酸化防止剤によって妨げられることを防止できる。
【0084】
〔2−4.不完全硬化工程〕
配向処理工程により塗膜中の高Δn重合性液晶化合物を配向させた後で、塗膜を不完全に硬化させる不完全硬化工程を行う。不完全硬化工程では、通常、塗膜に選択紫外線(広帯域化用紫外線ともいう)を照射する。前記の塗膜に選択紫外線が照射されると、塗膜内で重合反応ないし架橋反応が進行して、塗膜の硬化が進行する。
【0085】
ここで、選択紫外線とは、先に説明した塗膜中の材料の吸収、散乱、反射によって生じる光強度分布、または溶存酸素による重合阻害、隣接層との界面での相互作用等を用いて、塗膜の中の高Δn重合性液晶化合物の架橋度(もしくは重合度)を塗膜の厚み方向に異ならせることが可能な波長範囲もしくは照度を選択的に制御した紫外線を意味する。なお、この選択紫外線の照射によって、塗膜が完全に硬化(100%重合)することはない。このため、本工程を「不完全」硬化工程と呼ぶ。
選択紫外線の照射により、塗膜の中の高Δn重合性液晶化合物の架橋度を塗膜の厚み方向に異ならせることが可能となり、広い波長帯域幅において円偏光を反射できるようにコレステリック規則性を調整することができる。
【0086】
選択紫外線としては、波長範囲の幅を100nm以内とした紫外線を用いることが好ましい。具体的には、300nm以上400nm未満の波長のみを有する紫外線を用いることが好ましい。なお、前記波長範囲の幅は、半値全幅(透過率のピーク値の半分の値を取る両端間の幅)とする。前記波長範囲の制御は、例えば、バンドパスフィルター等を用いればよい。制御方法の具体例を挙げると、中心波長365nmのバンドパスフィルターを用いる方法、急峻なピークを有したスペクトルで発光する光源を用いる方法等が挙げられる。また、条件によっては波長範囲の幅を制御せずに用いることも可能である。
【0087】
選択紫外線の光源としては、例えば、水銀ランプ光源、メタルハライドランプ光源等を用いることができる。
【0088】
選択紫外線照射時の温度は、通常20〜40℃とする。また、照射する選択紫外線の積算光量は、通常、0.05mJ/cm以上50mJ/cm未満にする。なお積算光量は、基材面において、選択紫外線の波長にピーク感度を持つ(具体的には、例えば360nmにピーク感度を持つ)照度計を使用して測定する。
【0089】
選択紫外線は、塗膜側から照射してもよく、基材側から照射してもよく、塗膜側及び基材側の両側から照射してよい。中でも、光の強度分布を用いて架橋度を制御する場合は、酸素による重合阻害の影響を小さくする点で、基材側から照射することが好ましい。また、塗膜側から照射する場合は照度及び照射時間の安定度をより精密に制御することになるので(具体的には通常±3%以内)、生産性の面からも、基材側から照射することが好ましい。
【0090】
さらに、基材側から照射する場合、配向処理工程の後、不完全硬化工程の前に、基材上の塗膜を冷却して塗膜の温度を20℃〜40℃とする冷却工程を行なうことが好ましい。20℃〜40℃に維持された塗膜に上述の選択紫外線を照射することにより、塗膜の厚み方向に生ずる光の強度分布を反映して架橋度が異なる液晶硬化物層を形成することができる。塗膜を冷却する方法としては、例えば、冷風給気による冷却、冷却ロールによる冷却等を挙げることができる。
【0091】
〔2−5.加熱工程〕
不完全硬化工程の後で、塗膜を加熱する加熱工程を行う。加熱工程では、塗膜を加熱することにより塗膜のコレステリック規則性の周期を変化させるようにする。ここで「塗膜のコレステリック規則性の周期を変化させる」とは、コレステリック規則性を有する塗膜のピッチを厚み方向に変化させるということである。
【0092】
加熱工程における加熱処理条件としては、広帯域化の効果と共に生産性を考慮すると、通常50〜115℃の温度で0.001〜20分間、好ましくは65〜115℃の温度で0.001〜10分間、より好ましくは65〜115℃の温度で0.01〜5分間である。ただし、塗膜を形成する液晶化合物の種類により、液晶相を発現する温度領域が変わるので、それに伴い処理温度及び処理時間も異なる。
【0093】
また、コレステリック規則性の周期を変化させる方法としては、例えば、塗膜にさらに液晶化合物を塗布する方法、塗膜にさらに非液晶化合物を塗布する方法、などが挙げられる。そこで、これらの方法を、塗膜の加熱処理と組み合わせて行うようにしてもよい。
【0094】
不完全硬化工程及び加熱工程は、複数回繰り返すことが好ましい。これらの工程を複数回繰り返すことにより、塗膜のカイラル構造のピッチをより大きく変化させることが可能である。選択紫外線照射及びコレステリック規則性調整の条件は、反射帯域を調整するために、回数毎にそれぞれ適宜調整される。繰り返しの回数に制限はないが、生産性及び設備上の観点から2回以上4回以下であることが好ましい。5回以上行なうと、設備が大掛かりになり生産性が低下するおそれがある。
【0095】
ここで、不完全硬化工程及び加熱工程を「繰り返す」とは、不完全硬化工程の実施とそれに続く加熱工程の実施を含むシーケンスを繰り返すことをいう。即ち、不完全硬化工程及び加熱工程を2回繰り返すと、不完全硬化工程−加熱工程−不完全硬化工程−加熱工程の順で行われることになる。これらの工程の間には、前記冷却等の他の工程を行ってもよい。
【0096】
〔2−6.完全硬化工程〕
所定の回数だけ不完全硬化工程及び加熱工程を行った後で、塗膜を完全に硬化させる完全硬化工程を行う。塗膜を完全に硬化させる方法としては、前記塗膜が硬化してコレステリック規則性を有するようにする方法であれば特に制限されないが、本硬化紫外線を積算光量が10mJ/cm以上となるように照射する方法であることが好ましい。ここで、本硬化紫外線とは、塗膜を完全に硬化させることのできる波長範囲もしくは照度に設定した紫外線を意味する。なお、本硬化紫外線では、塗膜の中の高Δn重合性液晶化合物の架橋度を膜の厚さ方向に異ならせることは難しい。
【0097】
本硬化紫外線の積算光量は、好ましくは10mJ/cm以上、より好ましくは50mJ/cm以上であり、好ましくは1000mJ/cm以下、より好ましくは800mJ/cm以下である。積算光量は基材面において、紫外線光量計を使用して測定、または照度計を使用して照度を測定し、積算光量=照度×時間で算出することにより選定する。
本硬化紫外線の照射方向は、塗膜側と基材側のどちらからでも良いが、紫外線の照射効率が良い点から、塗膜側から照射することが好ましい。
【0098】
本硬化紫外線の照射は、窒素ガス雰囲気下などの酸素ガスの存在量の少ない雰囲気下で行うことが好ましい。このような雰囲気下で行うことにより、酸素による重合阻害の影響を低減することが可能である。本硬化紫外線の照射時の酸素ガス濃度は、重量基準で、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、特に好ましくは500ppm以下である。
【0099】
さらに、加熱工程の後、完全硬化工程の前に、基材上の塗膜を20℃〜40℃に冷却する工程を行なうことが好ましい。20℃〜40℃に維持された塗膜に上述の本硬化紫外線を照射することにより、加熱工程後のコレステリック規則性を有する塗膜のピッチの状態を維持することができる。
【0100】
この完全硬化工程により、コレステリック規則性を有する塗膜の機械的特性を、その広帯域化を維持しつつ、向上させることができる。以上のようにして、硬化した塗膜として液晶硬化物層が得られる。
【0101】
上述した円偏光分離シートの製造方法に好適な塗膜形成装置としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、基材を連続的に送り出す繰り出し装置と、この繰り出し装置から送り出された基材上に液晶層形成用組成物を塗布し塗膜を形成する塗工ヘッドとを備えるとともに、前記塗膜が形成された基材を冷却する冷却手段、波長範囲および/または照度が選択された選択紫外線及び本硬化紫外線を前記塗膜にそれぞれ照射する選択紫外線照射装置及び本硬化紫外線照射装置、並びに前記基材を加熱する手段を、2系統以上備えている塗膜形成装置が挙げられる。このような塗膜形成装置において、繰り出し装置や塗工ヘッドとしては、特に制限されず、公知のもの等を用いることができる。
また、前記の塗膜形成装置に用いられる冷却手段は、例えば、冷却ゾーン装置、冷却ロール等により構成することができ、冷却ゾーン装置により構成することが好ましい。当該冷却手段は、基材の搬送経路の一部分を囲み、その中の温度を、液晶層形成用組成物の硬化に適した一定の温度に保つ装置としてもよい。また、前記の冷却手段すべてを、選択紫外線照射装置および本硬化紫外線照射装置それぞれよりも前に備えることが好ましく、選択紫外線照射装置および本硬化紫外線照射装置それぞれの直前に備えることがより好ましい。
【0102】
〔2−7.円偏光分離シートの製造方法におけるその他の事項〕
前記の成膜工程、配向処理工程、不完全硬化工程、加熱工程及び完全硬化工程は、1回だけ行い液晶硬化物層を1層だけ形成するようにしてもよく、2回以上繰り返して2層以上の液晶硬化物層を形成することもできる。ただし、成膜工程、配向処理工程、不完全硬化工程、加熱工程及び完全硬化工程をそれぞれ1回のみ行った場合であっても、良好に配向した高Δn重合性液晶化合物の重合物を含み、例えば5μm以上といった十分な厚みの液晶硬化物層を容易に形成することができる。
【0103】
〔2−8.得られる円偏光分離シートの構成〕
以上のようにして硬化した塗膜として得られる液晶硬化物層は、通常、コレステリック樹脂層である。コレステリック樹脂層の構造は、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面ではさらに角度がずれるという具合に、分子が一定方向に配列している平面を進むに従って分子軸の角度がずれて(ねじれて)いくというコレステリック規則性を有する構造となる。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造は光学的にカイラルな構造となる。
【0104】
前記のようなコレステリック樹脂層は、円偏光分離機能を有する。すなわち、ある特定波長域の左回転若しくは右回転の円偏光を反射し、それ以外の円偏光を透過する機能を有する。したがって、このコレステリック樹脂層を備えるシートは、円偏光分離シートとして機能することになる。
コレステリック樹脂層としては、円偏光分離機能を可視光の全波長領域にわたって発揮する広帯域のものが好ましい。具体的には、400nm〜750nmの波長領域の光について円偏光分離機能を有するコレステリック樹脂層が好ましい。例えば、青色(波長410〜470nm)、緑色(波長520〜580nm)、赤色(波長600〜660)nmのいずれの波長域の光についても円偏光分離機能を有するコレステリック樹脂層が好ましい。
【0105】
円偏光分離機能を発揮する波長は、コレステリック樹脂層におけるカイラル構造のピッチに依存する。カイラル構造のピッチとは、カイラル構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでの平面法線方向の距離のことである。このカイラル構造のピッチの大きさを変えることによって、円偏光分離機能を発揮する波長を変えることができる。
【0106】
通常、上述した製造方法により液晶硬化物層として得られるコレステリック樹脂層は、高Δn重合性液晶化合物が不完全硬化工程及び完全硬化工程において重合し液晶性を失った非液晶性の樹脂層である。非液晶性の樹脂層であることにより、周囲の温度や電界などによってコレステリック規則性が変化しないため、好ましい。
【0107】
また、上述した製造方法により得られる液晶硬化物層は、通常、カイラル構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層となる。これにより、当該コレステリック樹脂層は、連続的に変化するピッチの大きさに対応した広範な範囲の波長において、円偏光分離機能を発揮できるようになっている。
【0108】
また、得られる液晶硬化物層の別の構成としては、例えば、カイラル構造のピッチの大きさを段階的に変化させたコレステリック樹脂層が挙げられる。カイラル構造のピッチを段階的に変化させたコレステリック樹脂層は、例えば、青色の波長域の光で円偏光分離機能を発揮するカイラル構造のピッチを有するコレステリック樹脂層、緑色の波長域の光で円偏光分離機能を発揮するカイラル構造のピッチを有するコレステリック樹脂層、及び、赤色の波長域の光で円偏光分離機能を発揮するカイラル構造のピッチを有するコレステリック樹脂層を積層することによって得ることができる。また、反射される円偏光の中心波長が470nm、550nm、640nm、及び770nmであるコレステリック樹脂層をそれぞれ作製し、これらのコレステリック樹脂層を任意に選択し、反射光の中心波長の順序で3〜7層積層することによって得ることができる。カイラル構造のピッチの大きさが異なるコレステリック樹脂層を積層する場合には、各コレステリック樹脂層で反射する円偏光の回転方向が同じであることが好ましい。また、カイラル構造のピッチの大きさが異なるコレステリック樹脂層の積層順序は、カイラル構造のピッチの大きさで、昇順又は降順になるようにすることが、視野角の広い液晶表示装置を得るために好ましい。これらコレステリック樹脂層の積層は、単に重ね置いただけでもよいし、粘着剤や接着剤を介して固着させてもよい。
このようなタイプのコレステリック樹脂層を製造するには、例えば、各ピッチに対応したコレステリック樹脂層を上述した製造方法で製造して張り合わせたり、あるピッチに対応したコレステリック樹脂層の上に別のピッチに対応したコレステリック樹脂層を積み重ねるようにして上述した方法で製造したりすればよい。
【0109】
上述したように液晶層形成用組成物に含まれていた酸化防止剤は、円偏光分離シートの製造過程において揮発し、除去される。したがって、得られる液晶硬化物層中の酸化防止剤の濃度は低い値となる。液晶硬化物層中の酸化防止剤の具体的な濃度を示すと、通常0.005重量%以下、好ましくは0.002重量%以下、より好ましくは0.0005重量%以下であり、理想的にはゼロである。
【0110】
液晶硬化物層の厚さに制限はないが、円偏光分離シートにコレステリック樹脂層として設ける場合、その乾燥膜厚は、好ましくは3.0μm以上、より好ましくは3.5μm以上であり、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは8μm以下である。コレステリック樹脂層の乾燥膜厚が3.0μmより薄いと反射率が低下する傾向があり、逆に10.0μmより厚いと、コレステリック樹脂層に対して斜め方向から観察した時に着色することがある。なお、前記乾燥膜厚は、液晶硬化物層が2以上の層である場合は各層の膜厚の合計を指し、液晶硬化物層が1層である場合にはその膜厚を指す。
【0111】
円偏光分離シートは、少なくとも前記の液晶硬化物層をコレステリック樹脂層として備えていれば、更に別の層を備えていてもよい。例えば、上記の透明基材、配向膜、保護層、粘着層などが挙げられる。
【0112】
本発明の円偏光分離シートは、欠陥及び厚みムラのない均一な液晶硬化物層を備えるため、欠陥及び場所ごとのバラツキが無い均一な円偏光分離機能を発揮できる。また、本発明の円偏光分離シートの製造方法によれば、前記のような優れた円偏光分離シートを効率よく製造できる。
【0113】
〔3.輝度向上フィルム〕
本発明の輝度向上フィルムは、少なくとも、上述した円偏光分離シート及び位相差フィルムを備える。輝度向上フィルムは、通常、光源側から円偏光分離シート及び位相差フィルムがこの順になるようにして、液晶表示装置などに設けられる。液晶表示装置等において、バックライト等の光源からの光が輝度向上シートを透過する際、円偏光分離シートにより所定の偏光のみが選択的に反射し、残りの光が透過される。透過した光はさらに位相差フィルムを透過することにより所定の偏光に変換され、液晶セルに入射する。一方、円偏光分離シートにより反射された光は、液晶表示装置の他の構成要素(反射板等)により反射されて偏光状態を変化させながら再度円偏光分離シートに入射し、円偏光分離シートを透過する所定の偏光となったものは円偏光分離シートを透過し、位相差フィルムにより所定の偏光に変換され、液晶セルに入射する。このように、輝度向上シートにより、液晶セルによる表示に必要な所定の偏光を増加させて液晶セルに供給することができるようになっている。
【0114】
位相差フィルムは、それに入射した光に位相差を生じさせる光学素子である。位相差フィルムとしては、例えば、180°の位相差を生じさせる1/2波長板、90°の位相差を生じさせる1/4波長板などが挙げられる。本発明の輝度向上フィルムは、通常、位相差フィルムとして1/4波長板を備える。
【0115】
1/4波長板は、その正面方向のリターデーションRe(以下、「Re」と略記することがある。)を透過光の略1/4波長とすればよい。ここで、透過光の波長範囲は、輝度向上フィルムに求められる所望の範囲とすることができ、具体的には例えば400nm〜700nmである。また、正面方向のリターデーションReが透過光の略1/4波長であるとは、Re値が、透過光の波長範囲の中心値において、中心値の1/4の値から±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲であることをいう。このようなリターデーション値を有することにより、1/4波長板は偏光変換機能、即ち円偏光を直線偏光に変換する機能を発現することができる。
【0116】
また、1/4波長板は、厚み方向のリターデーションRth(以下、「Rth」と略記することがある。)が0nm未満であることが望ましい。厚み方向のリターデーションRthの値は、透過光の波長範囲の中心値において、好ましくは−30nm〜−1000nm、より好ましくは−50nm〜−300nmとすることができる。このようなRe値及びRthを有する1/4波長板を採用することにより、輝度向上フィルムは輝度を向上させ輝度ムラを低減させながら、出射光の色ムラをも低減させることができる。
【0117】
ここで、前記正面方向のリターデーションReは、式I:Re=(nx−ny)×d(式中、nxは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。)で表される値であり、厚み方向のリターデーションRthは、式II:Rth={(nx+ny)/2−nz}×d(式中、nxは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは厚み方向に垂直な方向(面内方向)であってnxの方向に直交する方向の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。)で表される値である。
なお、前記正面方向のリターデーションRe及び厚み方向のリターデーションRthは、市販の位相差測定装置を用いて、1/4波長板を長手方向及び幅方向に100mm間隔(長手方向又は横方向の長さが200mmに満たない場合は、その方向へは等間隔に3点指定する)で、全面にわたり、格子点状に測定を行い、その平均値とする。
【0118】
1/4波長板としては、例えば、フィルム状のポリマーを延伸してなる延伸フィルムを用いることができる。好ましい例として、スチレン系樹脂層を含む樹脂フィルムを延伸してなる1/4波長板が挙げられる。より好ましくは、以下に述べる光学異方性素子が挙げられる。
【0119】
1/4波長板を構成する光学異方性素子は、スチレン系樹脂からなる層を有するものが好ましい。ここでスチレン系樹脂とは、スチレン構造を繰り返し単位の一部又は全部として有するポリマー樹脂であり、中でもポリスチレン又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体を好適に用いることができる。
【0120】
光学異方性素子に用いるスチレン系樹脂の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常300,000以下、好ましくは250,000以下、より好ましくは200,000以下である。
【0121】
前記光学異方性素子は、好ましくは、前記スチレン系樹脂からなる層と、他の熱可塑性樹脂を含む層との積層構造を有する。当該積層構造を有することにより、スチレン系樹脂による光学的特性と、他の熱可塑性樹脂による機械的強度とを兼ね備えた素子とすることができる。他の熱可塑性樹脂としては、脂環式構造を有する樹脂やメタクリル樹脂を好適に用いることができる。
【0122】
脂環式構造を有する樹脂としては、例えば脂環式オレフィンポリマーが挙げられる。脂環式オレフィンポリマーは、主鎖及び/または側鎖にシクロアルカン構造又はシクロアルケン構造を有する非晶性のオレフィンポリマーである。
【0123】
メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルを主成分とする重合体であり、例えばメタクリル酸エステルの単独重合体や、メタクリル酸エステルとその他の単量体との共重合体が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、通常、メタクリル酸アルキルが用いられる。共重合体とする場合は、メタクリル酸エステルと共重合するその他の単量体としては、アクリル酸エステルや、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物などが用いられる。
【0124】
1/4波長板の好ましい具体的態様として、スチレン系樹脂からなるフィルム(a層)の両面に、他の熱可塑性樹脂からなるフィルム(b層)を積層してなる複層フィルムを延伸してなる延伸複層フィルムが挙げられる。
【0125】
a層の材料である前記スチレン系樹脂及びb層の材料である前記他の熱可塑性樹脂を積層して、複層フィルムに成形する方法は、特に限定されず、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出による成形方法、ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法、及びコーティング成形方法などが挙げられる。中でも、製造効率や、フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出による成形方法が好ましい。押出し温度は、使用する前記スチレン系樹脂、及び前記他の熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択され得る。
【0126】
複層フィルムは、通常、前記a層の両面に、前記b層を積層してなる。a層とb層の間には、粘着層を設けることができるが、a層とb層とを直接に積層させる(つまり、b層/a層/b層の3層構成の積層体とする)ことが好ましい。また、複層フィルムにおいて、前記a層及びその両面に積層されたb層の厚みは特に制限はないが、好ましくはそれぞれ10〜300μm及び10〜400μmとすることができる。
【0127】
前記延伸複層フィルムは、前記複層フィルムを延伸してなる。当該延伸は、好ましくは一軸延伸又は斜め延伸により行うことができ、さらに好ましくはテンターによる一軸延伸又は斜め延伸により行うことができる。
【0128】
光学異方性素子の厚みは、好ましくは50μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは600μm以下である。
【0129】
1/4波長板は、それ自体が光学補償層としての機能をも有するものであってもよいが、1/4波長板に加え、別途光学補償層を有していてもよい。かかる光学補償層としては、上に述べた光学異方性素子と同様のものを用いることができるほか、基板上に液晶分子をホメオトロピック配向させて硬化させたホメオトロピック液晶配向フィルム(特許第3992969号公報)、基板上に液晶分子をネマチックハイブリッド配向させた状態を硬化したネマチックハイブリッド液晶配向フィルム(特開2000−66192号公報)等を用いることができる。
【0130】
本発明の輝度向上フィルムは、上述した円偏光分離シート及び位相差フィルム以外にも、更に別の層を備えていてもよい。例えば、それに入射した光を拡散させる光拡散シート;それに入射した光を集光する集光シート;輝度向上フィルムを構成する光学素子同士を粘着させるための粘着層;輝度向上フィルムに防汚性、傷つき防止性等の機能を付与する保護フィルム;ハードコート層;アンチブロッキング層等が挙げられる。
【0131】
本発明の輝度向上フィルムは、欠陥及び厚みムラのない均一な液晶硬化物層を備えるため、液晶表示装置等に設けられた場合に、その輝度を、欠陥や輝度ムラを無くして均一に高めることができる。
【0132】
〔4.液晶表示装置〕
本発明の液晶表示装置は、本発明の輝度向上フィルム及び液晶パネルを備える。液晶パネルは、特に限定されず液晶表示装置に用いられているものを適宜用いることができる。例えば、TN(Twisted Nematic)型液晶パネル、STN(Super Twisted Nematic)型液晶パネル、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型液晶パネル、IPS(In Plane Switching)型液晶パネル、VA(Vertical Alignment)型液晶パネル、MVA(Multiple Vertical Alignment型液晶パネル、OCB(Optical Compensated Bend)型液晶パネルなどが挙げられる。
【0133】
本発明の液晶表示装置は、通常、さらにバックライトを備える。この場合、バックライトと液晶パネルとの間に輝度向上フィルムが配置された構成とする。より具体的には、液晶表示装置のバックライトと液晶セルとの間において、円偏光分離シートの層が位相差フィルムの層よりもバックライト側になるように本発明の輝度向上フィルムを配置し、輝度向上を達成することができる。
【0134】
本発明の液晶表示装置は本発明の液晶層形成用組成物を用いて製造された液晶硬化物層を備える。この液晶硬化物層に欠陥がないため、本発明の液晶表示装置は、表示画像においても欠陥のない高画質を実現できる。また、液晶硬化物層に厚みムラがないため、表示画像における輝度ムラの発生を抑制できる。さらに、広範な種類の高Δn重合性液晶化合物を使用できるため、設計の自由度を高めることもできる。
【実施例】
【0135】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、以下の記載において、量を表す「部」は、特に断らない限り「重量部」を表す。また、構造式においてEtはエチル基を表す。
【0136】
〔実施例1〜5、比較例1〜5〕
(配向膜を有する透明樹脂基材の調製)
脂環式オレフィンポリマーからなるフィルム(株式会社オプテス製、商品名「ゼオノアフィルムZF14−100」)の両面をコロナ放電処理した。5重量%のポリビニルアルコール水溶液を当該フィルムの片面に♯2のワイヤーバーを使用して塗布し、塗膜を乾燥し、膜厚0.1μmの配向膜を形成した。次いで当該配向膜をラビング処理し、配向膜を有する透明樹脂基材を調製した。
【0137】
(液晶層形成用組成物の調製)
表2に示す配合割合(重量比)で各成分を混合して、液晶層形成用組成物を調製した。なお、液晶層形成用組成物に含まれる各成分の詳細は、以下の通りである。
【0138】
化合物1としては、下記化合物を使用した。この化合物1は高Δn重合性液晶化合物であり、その屈折率異方性は0.22である。
【化3】
【0139】
化合物2としては、下記化合物を使用した。この化合物2は液晶性を有さない化合物である。
【化4】
【0140】
カイラル剤としては、商品名LC756(BASF社製)を用いた。
重合開始剤としては、商品名イルガキュアOXE02(チバ・ジャパン社製)を用いた。
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤(商品名フタージェント209F、ネオス社製)を用いた。
【0141】
比較例4及び5において使用した酸化防止剤(Irganox1010、チバ・ジャパン社製)の構造は、以下の通りである。
【化5】
【0142】
(ポットライフの評価)
調製した液晶層形成用組成物を1週間、室温(25℃)下で、密閉容器中に保存した。保存後の液晶層形成用組成物の状態を確認し、粘度を測定した。結果を表2に示す。なお、表2においては保存後に粘度の変化が生じなかったものを「良」で示し、粘度が増加したものを「不良」で示す。
【0143】
(円偏光分離シートの作製)
温度23℃において、上記で調製した配向膜を有する透明樹脂基材の配向膜を有する面に、前記のように調製した液晶層形成用組成物を♯10のワイヤーバーを使用して塗布し、塗膜として液晶層を成膜した。この塗膜を100℃で5分間配向処理し、当該塗膜に対して0.1〜45mJ/cmの微弱な紫外線の照射処理と、それに続く100℃で1分間の加温処理からなるプロセスを2回繰り返した後、窒素雰囲気下で2000mJ/cmの紫外線を照射して硬化させ、乾燥膜厚5μmのコレステリック樹脂層(液晶硬化物層に相当する。)を有する円偏光分離シートを作製した。
【0144】
(円偏光分離シートの評価)
上記で作製した円偏光分離シートについて、温度23℃、湿度50%の環境下でライトボックス上に該円偏光分離シートを設置し、偏光板を通して色ムラ、結晶析出に由来する点欠陥を目視観察した。評価結果を表2に示す。なお、表2において色ムラの評価は、色ムラが無いか僅かであるものを「良」で示し、色ムラがあるものを「不良」で示した。また点欠陥は、確認された点欠陥の個数が3個/m未満のものを「良」で示し、3個/m以上が確認されたものを「不良」で示した。
【0145】
また、上記で作製した円偏光分離シートについて、450nm〜700nmの波長範囲における透過スペクトルを測定し、広帯域化について評価した。測定の結果、450nm〜700nmの波長範囲に亘って、58%以下の透過率のスペクトルを、50nm以上の抜け(即ち、透過率が58%を上回る局所的なピーク)なく確保できた場合を「良」とし、それ以外の場合を「不良」とした。結果を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
〔結果の検討〕
表2に示すように、本発明の実施例1〜5の液晶層形成用組成物は、比較例1〜5と比較して、ポットライフが長く、色ムラ及び欠陥が少ない広帯域の円偏光分離シートが得られる。
ここで、実施例1〜5と比較例1,2とを比較すると、環状ケトン溶媒と環状エーテル溶媒とを組み合わせた場合に、欠陥なく均一な液晶層が得られ、これにより色ムラ及び点欠陥の発生が抑制されることがわかる。
また、実施例1〜5と比較例3〜5とを比較すると、所定の揮発性を有する酸化防止剤を用いることにより、広帯域化に悪影響を与えることなくポットライフを長くすることができることがわかる。
【0148】
特に注目すべき点としては、実施例4において、他の実施例よりも酸化防止剤の量を増やしたにもかかわらず、円偏光分離シートの広帯域化を実現できていることがわかる。このため、所定の揮発性を有する酸化防止剤を用いれば、円偏光分離シートの製造過程において酸化防止剤を揮発により除去できるので、酸化防止剤の量を多くしても広帯域化に対する悪影響を避けられることが確認できる。
また、比較例3においては充分に長いポットライフを実現できていないことから、酸化防止剤を使用しない場合、充分なポットライフを実現できないことがわかる。
さらに、比較例4においては広帯域化の評価が不良である。具体的には、比較例4では条件を様々に変更しても、特に長波長側の透過率が58%より高く、広いスペクトルが得られなかった。このことから、揮発性に乏しい酸化防止剤は、ポットライフを長くすることはできるものの、酸化防止剤により広帯域化が妨げられることが確認できる。
また、比較例5では、広帯域化が実現できているものの、ポットライフの評価結果は不良である。したがって、揮発性に乏しい酸化防止剤の量を広帯域化を妨げない程度に少なくした場合、ポットライフを充分に長くすることができず、従来の技術ではポットライフと広帯域化との両立ができないことが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の液晶層形成用組成物は、液晶層の製造に係る任意の分野に使用することができ、特にコレステリック樹脂層の形成に用いて好適である。
本発明の円偏光分離シート及びその製造方法は、光学素子として任意の用途に使用できるが、中でも液晶表示装置に用いて好適である。
本発明の液晶表示装置は、表示装置として任意の装置において好適に設けることができる。