特許第6032405号(P6032405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032405
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/00 20060101AFI20161121BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B01D63/00
   C02F1/44 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-196404(P2012-196404)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2014-50788(P2014-50788A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年8月31日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構最先端研究開発支援プログラム(Mega−ton Water System)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雅人
(72)【発明者】
【氏名】井手口 誠
(72)【発明者】
【氏名】川岸 朋樹
(72)【発明者】
【氏名】枡田 守弘
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−289856(JP,A)
【文献】 特開平06−000344(JP,A)
【文献】 特開平07−155564(JP,A)
【文献】 特開平06−000340(JP,A)
【文献】 実開昭55−175439(JP,U)
【文献】 特表2011−519716(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/033103(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00 − 71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過膜を覆う平型プレフィルタを備えた外圧濾過式の膜モジュールであって、
前記平型プレフィルタの膨張を抑制する抑制構造体を備えており、前記抑制構造体は、前記平型プレフィルタの外側に設けられた網状体であり、さらに、前記網状体を押さえつける棒を備える、膜モジュール。
【請求項2】
前記網状体は、樹脂製又は金属製である、請求項1に記載の膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜モジュールに関し、特に、濾過膜の表面に平型プレフィルタを設けた膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、活性汚泥や凝集汚泥などを含む被処理水を濾過するために、外圧濾過式の浸漬型膜分離装置が用いられている。外圧濾過式の浸漬型膜分離装置は、多数の中空糸膜又は管状膜のような濾過膜を備える膜モジュールを有している。そして浸漬型膜分離装置を、槽内に貯留した被処理水中に浸漬させ、膜モジュール内に負圧を作用させることで被処理水を膜モジュール内に吸引し、濾過膜によって被処理水を濾過する。
【0003】
浸漬型膜分離装置は、様々な種類の被処理水を濾過するのに適しているが、その中でも、高汚濁性水(例えば、SS(Suspended Solid)濃度が50ppmより高く、且つTOC(Total Organic Carbon)量が100ppmよりも高い排水)を処理する場合には、膜表面にSSや有機物が堆積し易い。そして、膜表面にSSや有機物が堆積すると、SSや有機物が塊を形成し、近接する膜同士が固着して一体化し、膜の有効膜面積が低下する、所謂、インターファイバークロッギングを起こしてしまう、という問題があった。
【0004】
インターファイバークロッギングが発生すると、膜の濾過能力が極端に低下するため、インターファイバークロッギングを事前に防止することが望ましい。そしてインターファイバークロッギングを防止することができる膜モジュールとして、膜を平型のプレフィルタで覆った膜モジュールが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3694536号公報
【0006】
特許文献1の膜モジュールは、中空糸膜を覆う平型プレフィルタを備えおり、平型プレフィルタによってSSや有機物を事前に捕捉してこれらが膜に付着するのを防止するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
膜を平型プレフィルタで覆って構成された膜モジュールの洗浄の洗浄方法に関しては、いまだ確立された技術が存在しないが、その形状から膜モジュールの二次側(濾過水側)から一次側(被処理水側)に向けて洗浄液を流すインライン洗浄が有効であると考えられている。しかしながら、インライン洗浄を行うと、洗浄液の圧力によって平型プレフィルタが膨張してしまい、平型プレフィルタが破損し、又は平型プレフィルタから洗浄液が滲み出て洗浄液の使用量が増加する、という問題がある。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、インライン洗浄を行ったとしても平型プレフィルタの破損を防止することができ、且つ洗浄液の消費量の増加を抑制することができる平型プレフィルタを備えた膜モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、濾過膜を覆う平型プレフィルタを備えた外圧濾過式の膜モジュールであって、平型プレフィルタの膨張を抑制する抑制構造体を備えており、抑制構造体は、平型プレフィルタの外側に設けられた網状体であり、さらに、網状体を押さえつける棒を備える。
【0010】
このように構成された本発明によれば、抑制構造体によって平型プレフィルタの膨張を抑制することができるので、インライン洗浄を行って膜モジュール内の圧力が高まったときに平型プレフィルタが膨張するのを抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、網状体は、樹脂製又は金属製である。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、インライン洗浄を行ったとしても平型プレフィルタの破損を防止することができ、且つ洗浄液の消費量の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による膜モジュールを備える膜濾過装置を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態による膜モジュールを示す斜視図である。
図3図1のIII−III断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による膜モジュールについて説明する。
図1は、膜モジュールを備える膜濾過装置を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、膜濾過装置1は、複数の膜モジュール3と、膜モジュール3の下側に配置された散気板5と、を備えている。複数の膜モジュール3は、互いの面が向かい合うように所定の間隔をもって配列されている。そして膜モジュール3の下側には、外部のブロワーと接続された散気板5が配置されている。
【0016】
散気板5は、ブロワーから流れてきた空気が全ての膜モジュール3に当たるように、広範囲にわたって空気を放出するようになっている。散気板5から放出された空気は、隣接する膜モジュール3同士の間を通って膜モジュール3にあたり、膜モジュール3を物理的に洗浄する。
【0017】
図2は、膜濾過装置の膜モジュールを示す斜視図であり、図3は、図2のIII−III断面の断面図である。
膜モジュール3は、平行に配列された複数本の濾過膜7と、濾過膜7の両端に各々固定された一対のハウジング9とを備えている。
【0018】
濾過膜7は、例えばセルロース系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系、PMMA系、ポリスルフォン系の材料の中空糸膜を編地に加工したもので構成されている。編地への加工のしやすさなどを考えるとポリエチレン等の強伸度の高い材質のものが好ましい。尚、濾過膜として使用可能なものであれば、孔径、空孔率、膜厚、外径等には特に制限はない。また、濾過膜7としては、中空糸膜を例えば緯糸として用いて編地としたものを一枚、又は編地を数枚積層した積層体を使用するのが好適である。従来の円筒形モジュールの場合には、綛取りして収束した中空糸膜を円筒形の構造材内に収納するのに困難はなかった。一方、細長い矩形の開口部に対して綛取りした中空糸膜を収納するのは困難であるが、編地を用いれば容易に収納することができる。尚、ここでいう編地の積層には、編地を切断せずに適当な長さに折り畳み重ねたものをも包含する。編地の積層(折り畳み)枚数は、編地の厚さ、即ち中空糸膜の太さや編地を編成する際の中空糸膜の合糸本数によっても変化するが、通常は5枚程度までであり、前述した固定部材の矩形断面の短辺の長さの制限を満たすように構成するのが好ましい。
【0019】
ハウジング9は、複数本の濾過膜7の束を受け入れるための開口を備えており、開口内に固定用樹脂を充填し、固定用樹脂によって濾過膜7の束を固定する。濾過膜7の両端は開口しており、濾過膜7によって濾過した濾過水は、濾過膜7内を通ってハウジング9内に流れ込む。また、一対のハウジング9のうちの一方は、濾過した水を取り出すための取水口11を備えており、膜モジュール3で濾過された濾過水は、取水口11を通じて膜濾過装置1の外部に排出される。
【0020】
ハウジング9を構成する材料は、機械的強度及び耐久性を有するものであれば良く、例えばポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ABS樹脂、変成PPE樹脂等が例示される。使用後に焼却処理が必要な場合には、燃焼により有毒ガスを出さずに完全燃焼させる事のできる炭化水素系の樹脂を材質とするのが好ましい。
【0021】
また、固定用樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン等の液状樹脂を硬化させたものを使用するのが良い。
【0022】
ハウジング9の取水口11は、膜モジュール3内に洗浄液を流し込む洗浄装置13に接続されている。洗浄装置13は、ハウジング9の取水口11を通じて洗浄液を膜モジュール3内に流し込む。洗浄液は、被処理水中の汚泥の性質に応じて適宜選択され、被処理水中の汚泥が有機物を含む場合には、次亜塩素酸ナトリウム溶液などの酸化剤を用い、無機物を含む場合には、シュウ酸、クエン酸、塩酸などの酸溶液を用いる。そして洗浄装置13は、洗浄液を膜モジュール3内に流し込み、これにより濾過膜7に付着した汚泥を化学的に洗浄する。
【0023】
また、複数本の濾過膜7の周囲には、濾過膜7のインターファイバークロッギングを防止するための平型プレフィルタ15が設けられている。平型プレフィルタ15は、一つの膜モジュール3の全ての濾過膜7を完全に覆うように設けられたフィルタであり、膜表面にSSや有機物が堆積するのを防止して、濾過膜7のインターファイバークロッギングを防止する。
【0024】
平型プレフィルタ15は、例えば0.1〜100μmの多数の微小孔を有するフィルタであり、セルロース系、アクリル系、ポリオレフィン系の材料によって構成されている。また、コスト面や膜面にケーキ層が形成されケーキ濾過が行われる点等を考慮し、不織布等をベースとしたデプスフィルタによって平型プレフィルタ15を構成してもよい。
【0025】
そして平型プレフィルタ15を配置することにより、濾過膜7の一次側(処理水側)は、完全に平型プレフィルタ15によって覆われる。
【0026】
膜モジュール3は、さらに、平型プレフィルタ15の膨張を抑制する抑制構造体17を備えている。抑制構造体17は、平型プレフィルタ15の外側に配置された網状体である。抑制構造体17は、一対のハウジング9の間に張設されており、平型プレフィルタ15の外周を囲むように配置されている。具体的には、抑制構造体17は、平型プレフィルタ15の露出している全ての面を覆うように形成されており、インライン洗浄を行ったときの平型プレフィルタ15の膨張に抵抗できる程度の張力をもってハウジング9に固定されている。
【0027】
抑制構造体17としては、平型プレフィルタ15や濾過膜7のような濾過能力を実質的に有しておらず、平型プレフィルタ15による濾過を過度に阻害するものでなければ特に制限はなく、ステンレス製や硬質プラスチック製の網状体などが好適に用いられる。また、網状体をさらに棒で押さえつけることで、より確実に平型プレフィルタ15の膨張を抑制することができる。網状体の仕様に関しては、平型プレフィルタ15を損傷しないもので、網状体自体が目詰まりしたり、平型プレフィルタ15を目詰まりさせたりしないものであれば特に制限はない。
【0028】
上述の膜濾過装置1によって被処理水を濾過する場合、先ず、被処理水が貯まっている槽内に膜濾過装置1を浸漬させる。そして、膜モジュール3の取水口11に接続されたポンプを作動させることにより、膜モジュール3内に負圧を作用させる。これにより、膜モジュール3の周囲にある被処理水が、まず、平型プレフィルタ15で濾過される。これにより、被処理水中のSSや有機物の一部が平型プレフィルタ15の表面に付着する。平型プレフィルタ15を通過した被処理水は、濾過膜7の被処理水側(一次側)から濾過水側(二次側)に向けて流れて濾過膜7内を通過する。これにより、被処理水は濾過され、濾過水は、ハウジング9内を通って取水口11から膜濾過装置1外部に排出される。
【0029】
また膜濾過装置1は、散気板5から濾過膜7に向けて空気を放出して曝気又はエアレーション、及び洗浄装置13を作動させるインライン洗浄により、定期的に濾過膜7を物理的に洗浄する。
【0030】
洗浄装置13によって濾過膜7を洗浄する場合、洗浄装置13を作動させて洗浄液を所定の圧力で、取水口11を通して膜モジュール3内に流し込む。これにより、洗浄液は、ケーシング9内から濾過膜7の内部に流入し、濾過膜7の濾過水側(二次側)から被処理水側(一次側)に向けて流れる。これにより、濾過膜7の表面に付着した汚泥を化学的に洗浄する。このとき、濾過膜7の被処理水側に流れた洗浄液は、濾過膜7を完全に覆っている平型プレフィルタ15内に流れ込むので、平型プレフィルタ15には、二次側から一次側に向けて、平型プレフィルタ15を膨張させようとする圧力が作用する。そこで、抑制構造体17により、平型プレフィルタ15の膨張を抑制する。これにより、膨張による平型プレフィルタ15の破損を防止することができる。また、平型プレフィルタ15の膨張を抑制することにより、膜モジュール3内での洗浄液の濃度を保つことができ、これにより洗浄液の消費を抑制することができる。
【0031】
以下、実施例により本発明の実施方法を更に詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を限定するものではない。
【0032】
実施例1(ネットで覆ったモジュール)
膜モジュールの製作
親水化ポリエチレン多孔質中空糸膜EX540VS(三菱レイヨン(株)製、内径:350μm、外径:540μm、材質:ポリエチレン)を用い、固定用樹脂として2液硬化型ウレタン樹脂C4403/N4224(日本ポリウレタン社製)を使用してハウジングに固定した。さらに、中空糸膜部分とハウジングを覆うように不織布を設置し、図1に示す平型プレフィルタ付き中空糸膜モジュール(以下、膜モジュールとする)を製造した。なお、膜モジュールの外寸は550mm×250mm×30mm、平型プレフィルタの有効膜面積は0.22m2、中空糸膜の平均有効長は200mm、中空糸膜面積は5m2とした。
【0033】
ネットの設置
この膜モジュールの平型プレフィルタ表面を覆うように、長さ600mm、幅300mmの高密度ポリエチレン製ネット(厚み2.1mm、網目ピッチ10×10mm)を設置し、外周をポリエチレン製結束バンドで固定した。
【0034】
膜モジュール内部の体積測定
この膜モジュールの平型プレフィルタに直径10mmの穴を開け、チューブフィッティングを設置した。膜モジュール全体を水道水に沈め、膜モジュール内の空気を追い出した後、このチューブフィッティング部分から流量5L/minで空気を吹き込んだところ、通気開始46秒後にプレフィルタ表面から空気が噴出し始めたため、この膜モジュールの内部体積は3.8Lであることがわかった。また、通気流量を徐々に増した場合、膜モジュール内の気圧が250kPaに達しても平型プレフィルタは破損しなかった。
【0035】
比較例1(ネットで覆わないモジュール)
膜モジュールの製作
ネットを設けないこと以外は、実施例1同様の膜モジュールを製作した。
【0036】
膜モジュール内部の体積測定
この膜モジュールのプレフィルタに直径10mmの穴を開け、チューブフィッティングを設置した。膜モジュール全体を水道水に沈め、膜モジュール内の空気を追い出した後、このチューブフィッティング部分から流量5L/minで空気を吹き込んだところ、通気開始83秒後にプレフィルタ表面から空気が噴出し始めたため、この膜モジュールの内部体積は6.9Lであることがわかった。また、通気流量を徐々に増すと、膜モジュール内の気圧が180kPaに達した時点で、平型プレフィルタが接着部分から破損した。
【符号の説明】
【0037】
1 膜濾過装置
3 膜モジュール
7 濾過膜
13 洗浄装置
15 平型プレフィルタ
17 抑制構造体
図1
図2
図3