特許第6032452号(P6032452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032452
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20161121BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20161121BHJP
   E06B 9/24 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02B5/00 A
   E06B9/24 E
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-544017(P2015-544017)
(86)(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公表番号】特表2016-506533(P2016-506533A)
(43)【公表日】2016年3月3日
(86)【国際出願番号】KR2014009169
(87)【国際公開番号】WO2015047013
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2015年5月26日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0117070
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0130802
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、シン ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジ ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】パーク、ムーン スー
(72)【発明者】
【氏名】ユーン、ヒュク
【審査官】 南 宏輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−160963(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0037126(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0089782(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0065748(KR,A)
【文献】 特開2010−065514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に形成された吸収軸を有する第1領域と、前記第1方向とは相異なっている第2方向に形成された吸収軸を有する第2領域とを含む第1及び第2偏光層が、互いに対向するように配置されて含まれており、
前記第1及び第2偏光層のそれぞれのひとつの面に形成された配向膜と
含まれており、
前記第1及び第2偏光層の中で少なくとも一つは、重合性液晶化合物及び二色性染料を含むゲストホスト型染料層であり、
前記重合性液晶化合物は、メソゲン骨格と、アルケニル基、エポキシ基、シアノ基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、およびメタクリロイルオキシ基の少なくともひとつとを含む重合性官能基と含む光学素子。
【請求項2】
前記第1及び第2領域は、互いに共通方向に延長するストライプ形状を有しながら互いに交互に配置されている請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第1偏光層の第1領域は、前記第2偏光層の第1領域と対向するように配置されている第1状態で、前記第1偏光層の第1領域が前記第2偏光層の第2領域と対向する第2状態に移動されるように前記第1及び第2偏光層の相対的位置を変更させることができるように前記第1及び第2偏光層が配置されている請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1偏光層の第1領域と前記第2偏光層の第2領域は、吸収軸が互いに平行を成すように配置されており、前記第1偏光層の第2領域と前記第2偏光層の第2領域は、吸収軸が互いに平行を成すように配置されている請求項3に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第1偏光層の第1領域と前記第2偏光層の第2領域の吸収軸は、互いに垂直を成すように配置されており、前記第1偏光層の第2領域と前記第2偏光層の第1領域の吸収軸は、互いに垂直を成すように配置されている請求項3または4に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第1及び第2偏光層は、各々重合性液晶化合物及び二色性染料を含むゲストホスト型染料層である請求項1から5のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記ゲストホスト型染料層は、重合性液晶化合物及び二色性染料を含む偏光物質のコーティング層である請求項1から6のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記重合性液晶化合物は、水平配向された状態で前記第1偏光層または前記第2偏光層に含まれている請求項1から7のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記二色性染料は、400nm〜700nmの波長範囲内で最大吸光度を示す請求項1から8のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項10】
前記二色性染料の二色比は、5以上である請求項1から9のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項11】
前記配向膜は、光配向性化合物を含む光配向膜である請求項1から10のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項12】
前記第1及び第2偏光層の一面に形成される基材層をさらに含む請求項11に記載の光学素子。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の光学素子を含むスマートブラインド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子及びスマートブラインドに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートブラインドは、太陽光の透過率を調節することができるブラインドとして、スマートウィンドウ、電子カーテン、透過度可変ガラスまたは調光ガラスなどとも呼ばれる。
【0003】
スマートブラインドは、例えば、光の透過量を調節することができる光透過量調節層と、前記光透過量調節層に信号を印加して制御する駆動回路と、からなる。前記のように構成されたスマートブラインドは、印加された電圧の状態によってガラス全体を光が透過するか透過しないようにし、また、透過量を調節して明暗を異にすることができる。しかし、前記のような方式は、スマートブラインドを駆動するために別途の外部電源を供給しなければならないので、電力供給系統構造が複雑であるという問題点がある。
【0004】
最近では、特許文献1のように、別途の外部電源を必要としない偏光板位相差フィルムを組み合わせてスマートブラインドを製造する技術が開発されている。前記位相差フィルムでは、主に相異なっている方向の光軸を有する領域でパターン化されている液晶フィルムを使用しているが、この場合に、側面で微細な光軸偏差による光特性の不均一が招来されて側面で均一な視感を具現することができない問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第2004−0004138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光学素子及びスマートブラインドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例示的な光学素子は、互いに対向して配置されている第1偏光層及び第2偏光層を含むことができる。前記第1及び第2偏光層は、各々第1方向に形成された吸収軸を有する第1領域と、前記第1方向とは相異なっている第2方向に形成された吸収軸を有する第2領域と、を含むことができる。また、前記第1及び第2偏光層の中で少なくとも一つは、重合性液晶化合物及び二色性染料を含む染料層であることができる。このような染料層は、いわゆるゲストホスト型偏光素子と呼ばれ、例えば、重合性液晶化合物の配列によって二色性染料が一緒に配列され、染料の整列方向と平行な光は吸収し、垂直した光は透過させることで、非等方性光吸収効果を示すことができる。
【0008】
例示的な光学素子は、例えば、スマートブラインドで使用されることができる。本発明で「スマートブラインド」は、全面透過及び全面遮断モードはもちろんブラインドの所定部位でのみ透過または遮断モードを具現することができる機能性部材を意味することができる。
【0009】
本発明で「偏光層」は、一方向に形成された透過軸を有すると共に入射光に対して非等方性透過特性を示す機能性層を意味することができる。例えば、偏光層は、多くの方向に振動する入射光からいずれの一方向に振動する光は透過し、他の方向に振動する光は吸収する機能を有することができる。
【0010】
第1及び第2偏光層は、互いに相対的位置が変化するように配置されることができる。後述のように、光学素子は、第1及び第2偏光層の相対的位置変化に基づいて光透過量を調節することができる。図1の(A)は、第1及び第2領域1011、1012を含む第1偏光層101及び第1及び第2領域1021、1022を含む第2偏光層102が互いに対向して配置されている光学素子を例示的に示し、図1の(B)は、第1偏光層101及び第2偏光層102が互いに相対的位置が変化された状態の光学素子を例示的に示す。
【0011】
第1及び第2偏光層は、各々第1方向に形成された吸収軸を有する第1領域と、前記第1方向とは相異なっている第2方向、例えば、前記第1方向と垂直した方向に形成された吸収軸を有する第2領域と、を含むことができる。このような第1及び第2偏光層の第1領域1011、1021及び第2領域1021、1022は、例えば、図2及び図3に示したように、互いに共通方向に延長するストライプ形状を有すると共に互いに交互に配置されている。ストライプ形状の間隔及びピッチは、特別に限定されず、目的する光学素子の用途によって適切に選択されることができる。
【0012】
光学素子は、例えば、図1の(A)に示したように、第1偏光層の第1領域1011と第2偏光層の第1領域1021が互いに対向する第1状態に配置されることができる。この場合に、光学素子は、例えば、第1偏光層の第1領域1011と第2偏光層の第1領域1021の吸収軸(⇔)が互いに平行を成すように配置されることができ、第1偏光層の第2領域1012と第2偏光層の第2領域1022の吸収軸(⇔)が互いに平行を成すように配置されていることができる。この場合に、光学素子は、入射光のうち前記第1及び第2偏光層の対向する領域の吸収軸と平行な方向の偏光をそのまま透過させることができる。
【0013】
光学素子は、例えば、図1の(B)に示したように、第2偏光層の第1領域1021と対向して配置されている第1偏光層の第1領域1011が、前記第2偏光層の第2領域1022と対向する第2状態に移動されるように、前記第1及び第2偏光層の相対的位置が変更されることができる。対向する第1偏光層の第1領域1011と第2偏光層の第2領域1022の吸収軸(⇔)は、互いに垂直を成すことができる。この場合に、光学素子は、第1及び第2偏光層の対向する領域間の吸収軸(⇔)が垂直を成すので、入射光を遮断することができる。
【0014】
第1及び第2偏光層は、上述のように、第1及び第2偏光層の中でいずれの一つが前記ゲストホスト型染料層であるか、または第1及び第2偏光層各々が前記ゲストホスト型染料層であることができる。第1及び第2偏光層のなかでいずれかの一つがゲストホスト型染料層の場合、残り一つの偏光層は一方向に形成された透過軸を有する偏光子とパターン化された位相差フィルムの組合せであってもよい。但し、本発明が意図する透過及び遮断特性に優れたスマートブラインドを具現する側面で、第1及び第2偏光層は、いずれもゲストホスト染料層であることが好ましい。
【0015】
ゲストホスト型染料層は、例えば、重合性液晶化合物及び二色性染料を含む偏光物質のコーティング層であることができる。したがって、光学素子は、ロールツーロール工程で簡単で連続的に製造できるだけではなく、構造単純化を通じた素子の薄型化が可能である。
【0016】
本発明で「重合性液晶化合物」は、液晶性を示すことができる部位、例えば、メソゲン(mesogen)骨格などを含み、重合性官能基を一つ以上含む化合物を意味することができる。重合性液晶化合物は、例えば、重合された状態で偏光層内に含まれることができる。本発明で「重合性液晶化合物が重合された形態で含まれていること」は、前記液晶化合物が重合されて偏光層内で液晶高分子の主鎖または側鎖のような骨格を形成している状態を意味することができる。
【0017】
重合性液晶化合物は、下記化学式1で表示される化合物を使用することができる。
【0018】
[化学式1]
【化1】
【0019】
前記化学式1で、Aは、単一結合、−COO−または−OCO−であり、R〜R10は、各々独立的に水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、−O−Q−Pまたは下記化学式2の置換基である。また、前記R〜R10のうち少なくとも一つは、−O−Q−Pまたは下記化学式2の置換基であるか、R〜Rのうち隣接する2個の置換基またはR〜R10のうち隣接する2個の置換基は、互いに連結されて−O−Q−Pに置換されたベンゼンを形成し、前記Qは、アルキレン基またはアルキリデン基であり、Pは、アルケニル基、エポキシ基、シアノ基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基などの重合性官能基である。
【0020】
[化学式2]
【化2】
【0021】
化学式2で、Bは、単一結合、−COO−または−OCO−であり、R11〜R15は、各々独立的に水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基または−O−Q−Pである。前記R11〜R15のうち少なくとも一つは、−O−Q−Pであるか、R11〜R15のうち隣接する2個の置換基は、互いに連結されて−O−Q−Pに置換されたベンゼンを形成し、前記Qは、アルキレン基またはアルキリデン基であり、Pは、アルケニル基、エポキシ基、シアノ基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基などの重合性官能基である。
【0022】
前記化学式1及び化学式2で、隣接する1個の置換基は、互いに連結されて−O−Q−Pに置換されたベンゼンを形成するということは、隣接する2個の置換基が互いに連結されて全体的に−O−Q−Pに置換されたナフタリン骨格を形成することを意味する。
【0023】
前記化学式2で、Bの左側の「−」は、Bが化学式1のベンゼンに直接連結されていることを意味する。
【0024】
前記化学式1及び化学式2で用語「単一結合」は、AまたはBで表示される部分に別途の原子が存在しない場合を意味する。例えば、化学式1で、Aが単一結合の場合、Aの両側のベンゼンが直接連結されてビフェニル(biphenyl)構造を形成することができる。
【0025】
前記化学式1及び化学式2で、ハロゲンとして、塩素、臭素またはヨウ素などを例示することができる。
【0026】
本発明で用語「アルキル基」は、特定しない限り、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基または炭素数3〜20、炭素数3〜16または炭素数4〜12のシクロアルキル基を意味することができる。前記アルキル基は、任意的に一つ以上の置換基により置換されることができる。
【0027】
本発明で用語「アルコキシ基」は、特定しない限り、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルコキシ基を意味することができる。前記アルコキシ基は、直鎖状、分枝鎖状または環状であることができる。また、前記アルコキシ基は、任意的に一つ以上の置換基により置換されることができる。
【0028】
また、本発明で用語「アルキレン基」または「アルキリデン基」は、特定しない限り、炭素数1〜12、炭素数4〜10または炭素数6〜9のアルキレン基またはアルキリデン基を意味することができる。前記アルキレン基またはアルキリデン基は、直鎖状、分枝鎖状または環状であることができる。また、前記アルキレン基またはアルキリデン基は、任意的に一つ以上の置換基により置換されることができる。
【0029】
また、本発明でアルケニル基は、特定しない限り、炭素数2〜20、炭素数2〜16、炭素数2〜12、炭素数2〜8または炭素数2〜4のアルケニル基を意味することができる。前記アルケニル基は、直鎖状、分枝鎖状または環状であることができる。また、前記アルケニル基は、任意的に一つ以上の置換基により置換されることができる。
【0030】
また、前記化学式1及び化学式2で、Pは、好ましくは、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であり、より好ましくは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であり、さらに好ましくは、アクリロイルオキシである。
【0031】
本発明で特定官能基に置換されていることができる置換基として、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、エポキシ基、オキソ基、オキセタニル基、チオール基、シアノ基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基またはアリール基などを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0032】
重合性液晶化合物は、例えば、水平配向された状態で偏光層内に含まれている。本発明「水平配向」は、重合された液晶化合物を含む偏光層の光軸が偏光層の平面に対して、約0度〜約25度、約0度〜約15度、約0度〜約10度、約0度〜約5度または約0度の勾配角を有する場合を意味することができる。
【0033】
本発明で「染料」は、可視光領域、例えば、400nm〜700nm波長範囲内で少なくとも一部または全体範囲内の光を集中的に吸収及び/または変形させることができる物質を意味することができ、「二色性染料」は、可視光領域の少なくとも一部または全体範囲で光の異方性吸収が可能な物質を意味することができる。
【0034】
二色性染料には、例えば、いわゆるゲストホスト型偏光素子を形成することができると知られたもの、例えば、重合性液晶化合物の配向によって配列されることができる特性を有すると知られた公知の染料を選択して使用することができる。このような二色性染料には、例えば、アゾ染料またはアントラキノン染料などの公知された染料を使用することができ、具体的には、アゾ染料F355(登録商標)、F357(登録商標)またはF593(登録商標)(Nippon Kankoh Shikiso kenkyusho Ltd)などや、上記のものと対等な効果を示すことで公知されている種類の染料などを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0035】
二色性染料の二色比(dichroic ratio)は、目的する物性を損傷させない範囲内で適切に選択されることができる。本発明で二色比は、二色性染料の長軸方向に平行な偏光の吸収を前記長軸方向に垂直する方向に平行な偏光の吸収で分けた値を意味することができる。二色性染料は、例えば、5以上、6以上または7以上の二色比を有することができる。二色性染料は、例えば、可視光領域の波長範囲内、例えば、約380nm〜700nmまたは約400nm〜700nmの波長範囲内で少なくとも一部の波長またはある一つの波長で前記二色比を満足することができる。前記二色比の上限は、例えば、20以下、18以下、16以下または14以下程度であることができる。
【0036】
光学素子は、上述のように、重合性液晶化合物及び二色性染料を含むゲストホスト型染料層を利用して偏光特性がパターン化された第1及び第2偏光層を使用することで、正面だけではなく側面でも均一な偏光特性を示し、全体的に透過及び遮断特性に優れたスマートブラインドを具現することができる。
【0037】
一方、図4は、従来偏光板及び液晶フィルムの組合せを利用したスマートブラインドの構造を例示的に示す。図4のスマートブラインドの場合、全体的にいずれか一つの方向に形成された透過軸を有する偏光層401、404及び互いに相異なっている方向の光軸(⇔)を有する領域でパターン化されている位相差フィルム402、403を含む偏光ユニットを互いに対向して配置した構造を含む。図4のスマートブラインドの場合、光学素子に入射される光の偏光特性は、パターン化された位相差フィルムの光軸変化によって調節される。この場合に、側面で観察する場合、光軸偏差が発生して側面で均一な偏光特性を得ることができず、これによって、側面で均一な視感を具現しにくい問題点、すなわち、見る方向によって視感が相異なっている問題点がある。一方、本発明の光学素子は、入射される光の偏光特性が偏光層自体にパターン化されている吸収軸によって調節されることができるので、側面でも均一な偏光特性を示すことができる。
【0038】
光学素子は、第1及び第2偏光層の一面に存在する配向膜をさらに含むことができる。図5は、互いに相異なっている方向に配向された配向領域を有する配向膜501及び前記配向膜上に存在するゲストホスト型染料層502を例示的に示す。
【0039】
配向膜には、隣接する偏光層内の重合性液晶化合物の配向を適切に調節することができるものであれば、いずれの種類も使用することができ、例えば、ラビング配向膜のように接触式配向膜であるかまたは光配向膜化合物を含み、例えば、直線偏光の照射などのような非接触式方式により配向特性を示すことができるもので、公知された配向膜を使用することができる。
【0040】
配向膜には、例えば、光配向性化合物を含む光配向膜を使用することができる。本発明で用語「光配向性化合物」は、光の照射を通じて所定方向に整列(orientationally ordered)され、前記整列状態で隣接する液晶化合物なども所定方向に配向させることができる化合物を意味することができる。配向性化合物は、単分子化合物、単量体性化合物、オリゴマー性化合物または高分子性化合物であることができる。
【0041】
光配向性化合物は、光感応性残基(photosensitive moiety)を含む化合物であることができる。液晶化合物の配向に使用されることができる光配向性化合物は、多様に公知されている。光配向性化合物には、例えば、トランス−シース光異性化(trans−cisphotoisomerization)によって整列される化合物;鎖切断(chain scission)または光酸化(photo−oxidation)などの光分解(photo−destruction)によって整列される化合物;[2+2]添加環化([2+2]cycloaddition)、[4+4]添加環化または光二量化(photodimerization)などのような光架橋または光重合によって整列される化合物;光フリーズ再配列(photo−Fries rearrangement)によって整列される化合物または開環/閉環(ring opening/closure)反応によって整列される化合物などを使用することができる。トランス−シース光異性化によって整列される化合物として、例えば、スルホ化ジアゾ染料(sulfonated diazo dye)またはアゾ高分子(azo polymer)などのアゾ化合物やスチルベン化合物(stilbenes)などを例示することができ、光分解によって整列される化合物として、シクロブタンテトラカボキシル酸二無水物(cyclobutane−1、2、3、4−tetracarboxylic dianhydride)、芳香族ポリシランまたはポリエステル、ポリスチレンまたはポリイミドなどを例示することができる。また、光架橋または光重合によって整列される化合物として、シンナマート(cinnamate)化合物、クマリン(coumarin)化合物、シンナムアミド(cinnamamide)化合物、テトラヒドロフタルイミド(tetrahydrophthalimide)化合物、マレイミド(maleimide)化合物、ベンゾフェノン化合物またはジフェニルアセチレン(diphenylacetylene)化合物や光感応性残基としてチァルコニル(chalconyl)残基を有する化合物(以下、チァルコン化合物)またはアントラセニル(anthracenyl)残基を有する化合物(以下、アントラセニル化合物)などを例示することができ、光フリーズ再配列によって整列される化合物として、ベンゾエート(benzoate)化合物、ベンゾアミド(benzoamide)化合物、メタアクリルアミドアリール(メタ)アクリレート(methacrylamidoaryl methacrylate)化合物などの芳香族化合物を例示することができ、開環/閉環反応によって整列する化合物として、スピロピラン化合物などのように[4+2]π電子システム([4+2]π electronic system)の開環/閉環反応によって整列する化合物などを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0042】
光配向性化合物は、単分子化合物、単量体性化合物、オリゴマー性化合物または高分子性化合物であるか、前記光配向性化合物と高分子のブレンド(blend)形態であることができる。前記オリゴマー性または高分子性化合物は、上述した光配向性化合物から誘導された残基または上述した光感応性残基を主鎖内または側鎖に有することができる。
【0043】
光配向性化合物から誘導された残基または光感応性残基を有するか、または前記光配向性化合物と混合することができる高分子として、ポリノルボルネン、ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリイミド、ポリアミド酸(poly(amic acid))、ポリマレインイミド、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリアクリルニトリルまたはポリメタクリルニトリルなどを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0044】
配向性化合物に含まれることができる高分子として、代表的には、ポリノルボルネンシンナマート、ポリノルボルネンアルコキシシンナマート、ポリノルボルネンアリーロイルオキシシンナマート、ポリノルボルネンフッ素化シンナマート、ポリノルボルネン塩素化シンナマートまたはポリノルボルネンジシンナマートなどを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0045】
配向性化合物が高分子性化合物である場合に、前記化合物は、例えば、約10,000g/mol〜500,000g/mol程度の数平均分子量を有することができるが、これに限定されるものではない。
【0046】
配向層または配向層を形成する前駆物質は、前記光培向性化合物にさらに光開始剤を含むことができる。光開始剤には、例えば、光の照射によって自由ラジカル反応を誘導することができるものであれば、特別な限定なしに使用することができる。このような光開始剤として、アルファヒドロキシケトン化合物、アルファアミノケトン化合物、フェニルグリオキシレート化合物またはオキシムエステル化合物などを例示することができ、例えば、オキシムエステル化合物を使用することができる。前駆物質内での光開始剤の割合は、特別に限定されず、適切な反応を誘導することができる程度に含まれるとよい。
【0047】
光配向膜の配向は、互いに異なる方向に配向された第1及び第2配向領域を含むように実行することができ、前記配向過程は、直線偏光された光を照射して実行されることができる。前記配向過程で前記配向層の少なくとも一部領域は、互いに相異なっている方向に偏光された直線偏光に同時にまたは順に露出されることができる。
【0048】
また、光学素子は、第1及び第2偏光層のいずれか一面に存在する基材層をさらに含むことができる。光学素子が配向膜をさらに含む場合、前記基材層上に配向膜及び偏光層が順に形成されていることができる。基材層には、特別な制限なしに公知の基材層素材を使用することができる。基材層には、例えば、ガラスフィルム、結晶性または非結晶性シリコンフィルム、石英またはITO(Indium Tin Oxide)フィルムなどの無機系フィルムやプラスチックフィルムなどを使用することができる。また、基材層には、光学的に等方性である基板または位相差層のように光学的に異方性である基板を使用することができる。
【0049】
プラスチック基板には、TAC(triacetyl cellulose);ノルボルネン誘導体などのCOP(cyclo olefin copolymer);PMMA(poly(methyl methacrylate);PC(polycarbonate);PE(polyethylene);PP(polypropylene);PVA(polyvinyl alcohol);DAC(diacetyl cellulose); Pac(Polyacrylate); PES(poly ether sulfone);PEEK(polyetheretherketone); PPS(polyphenylsulfone);PEI(polyetherimide);PEN(polyethylenenaphthatlate);PET(polyethyleneterephtalate);PI(polyimide);PSF(polysulfone);PAR(polyarylate)または非晶質フッ素樹脂など含む基板を使用することができが、これに限定されるものではない。前記基材層には、必要に応じて金、銀、二酸化ケイ素または一酸化ケイ素などのケイ素化合物のコーティング層や、反射防止層などのコーティング層が存在することができる。
【0050】
また、本発明は、前記光学素子の用途に関する。光学素子は、上述のように、第1及び第2偏光層の相対的位置変化に基づいて光透過量を調節することができ、例えば、透過モードと遮断モードの間でスイッチングを行うことができる。また、光学素子は、重合性液晶化合物及び二色性染料を含むゲストホスト型染料層を利用して偏光特性がパターン化されている偏光層を使用することで、位相差フィルムを別途設けなくても正面だけではなく側面でも透過及び遮断特性に優れたスマートブラインドを具現することができる。このような光学素子は、例えば、光変調装置で使用されることができる。光変調装置では、スマートブラインド、スマートウィンドウ、ウィンドウ保護膜、フレキシブルディスプレイ素子、3D映像表示用アクティブリターダー(active retarder)または視野角調節フィルムなどを例示することができるが、これに限定されるものではない。前記光変調装置を構成する方式は、特別に限定されず、前記光学素子が使用される限り、通常的な方式が適用されることができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明の光学素子は、重合性液晶化合物及び二色性染料を含むゲストホスト型染料層を利用して偏光特性がパターン化されている偏光層で使用することで、位相差フィルムを別途設けなくても正面だけではなく側面でも透過及び遮断特性に優れたスマートブラインドを具現することができる。このような光学素子は、例えば、スマートブラインド、スマートウィンドウ、ウィンドウ保護膜、レキシブルディスプレイ素子、3D映像表示用アクティブリターダー(active retarder)または視野角調節フィルムなどのような多様な光変調装置に適用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の光学素子を例示的に示した図である。
図2】第1偏光層を例示的に示した図である。
図3】第2偏光層を例示的に示した図である。
図4】従来のスマートブラインドを例示的に示した図である。
図5】配向膜及びゲストホスト型染料層を例示的に示した図である。
図6】実施例1で製造された第1偏光層のイメージを示した図である。
図7】実施例1の光学素子の遮断モード(A)及び透過モード(B)の正面イメージである。
図8】実施例1の光学素子の遮断モード(A)及び透過モード(B)の側面イメージである。
図9】比較例1の光学素子の遮断モード(A)及び透過モード(B)の側面イメージである。
図10】評価例1の側面での色変化測定原理を示した図である。
図11】実施例1及び比較例1の光学素子の透過モードで側面色変化測定結果を示した図である。
図12】実施例1及び比較例1の光学素子の遮断モードで側面色変化測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明による実施例を通じて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲は、下記提示された実施例に限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
ガラスの一面に光配向膜形成用組成物を、乾燥後の厚さが約1,000Åになるようにコーティングし、80℃のオーブンで2分間乾燥させた。前記光配向膜形成用組成物は、5−ノルボネン−2−メチルシンナマート(LG化学社製)を、トルエン溶媒に固形分の濃度が2wt%になるように溶解させて製造した組成物を使用した。
【0055】
次いで、前記乾燥された光配向膜形成用組成物を大韓民国特許出願第2010−0009723号公報に開示された方法によって配向処理し、互いに異なる方向に配向された第1及び第2配向領域を含む光配向膜を形成した。具体的には、前記乾燥された組成物の上部に、幅が約450μmであるストライプ形状の光透過部及び光遮断部が上下及び左右に交互に形成されているパターンマスクを位置させ、また、前記パターンマスクの上部には、各々互いに異なる偏光を透過させる二つの領域が形成された偏光板を位置させた。その後、前記光配向膜が形成されているガラスを約3m/minの速度で移動させながら、前記偏光板及びパターンマスクを媒介で光配向膜形成用組成物に紫外線(300mW/cm)を約30秒間照射して配向処理を実行した。その後、配向処理された配向層上に二色性染料(G241、長瀬社製)と重合性液晶化合物(LC 242、BASF社製)を含む偏光組成物(G241:LC242=1:20(重量部))を約1μmの乾燥厚さになるように塗布し、下部の配向層の配向によって配向させた後に、紫外線(300mW/cm)を約10秒間照射して液晶を架橋及び重合させ、下部光配向膜の配向によって互いに直交する吸収軸を有する第1及び第2領域が形成されている偏光物質層を形成して第1偏光層を製造した。図6は、実施例1で製造された第1偏光層のイメージを示す。
【0056】
次に、第1偏光層の製造方法と同一な方法によって第2偏光層を製造した後、前記第1及び第2偏光層が互いに対向するように配置してスマートブラインドを製造した。
【0057】
対向する第1及び第2偏光層の領域の吸収軸が互いに平行を成すように配置して透過モード(white mode)を具現し、対向する第1及び第2偏光層の各領域の吸収軸が互いに垂直を成すように第2偏光層の相対的位置を変化させて遮断モード(black mode)を具現した。図7は、実施例1のスマートブラインドの遮断モード(A)及び透過モード(B)の正面イメージを示す。また、図8は、実施例1のスマートブラインドの遮断モード(A)及び透過モード(B)を正面から約30゜〜50゜の範囲内の側面で観察したイメージを示す。図7及び図8に示したように、実施例1のスマートブラインドは、正面だけではなく側面で観察した場合にも均一な偏光特性を示し、全体的に優れた透過及び遮断特性を示すことを確認することができる。
【0058】
<比較例1>
一方向に形成された吸収軸を有する偏光層上に、光軸が互いに垂直した第1及び第2領域が共通方向に延長するストライプ形状を有しながら交互に配置されている1/4波長板を積層して第1偏光ユニットを製造した。次に、前記第1偏光ユニットの製造方法と同一な方法によって第2偏光ユニットを製造した。前記偏光層では、ヨウ素染着PVA延伸フィルム(LG化学社製)を使用し、1/4波長板では、前記実施例1で製造された光配向膜上に重合性液晶化合物(LC242、BASF社製)を含む液晶組成物を約1μmの乾燥厚さになるように塗布し、下部の配向膜の配向によって配向させた後に、紫外線(300mW/cm)を約10秒間照射して液晶を架橋及び重合させて製造した液晶フィルムを使用した。
【0059】
次に、第1及び第2偏光ユニットの1/4波長板が互いに対向するように第1及び第2偏光ユニットを配置し、第1及び第2偏光ユニットの偏光層の吸収軸は互いに垂直するように配置して、比較例1のスマートブラインドを製造した。
【0060】
第1及び第2偏光ユニットの対向する1/4波長板の各領域の光軸が互いに平行を成すように配置して透過モード(white mode)を具現し、対向する1/4波長板の各領域の光軸が互いに垂直を成すように第2偏光ユニットの相対的位置を変化させて遮断モード(black mode)を具現した。図9は、比較例1のスマートブラインドの遮断モード(A)及び透過モード(B)を正面から約30゜〜50゜の範囲内の側面で観察したイメージを示す。図9に示したように、比較例1のスマートブラインドは、側面で観察する場合、光軸偏差によって均一な偏光特性を得ることができない。これによって、側面で均一な視感を具現することができないことを確認することができる。
【0061】
<評価例1.側面での色変化の観察>
実施例1及び比較例1で製造された光学素子をBLU(Black light Unit)上に、上述した透過モード(white mode)または遮断モード(black mode)を具現するように配置し、ELDIM 装備を利用して、図10に示したように、入射角(incident angle)50゜で360゜回転しながら光学素子の色変化を測定し、その結果を図11図12及び下記表1に示した。下記表1で、△xは、x座標の最大値と最小値の差を意味し、△yは、y座標の最大値と最小値の差を意味する。
【0062】
【表1】
【0063】
図11図12及び前記表1に示したように、液晶フィルムと偏光板を組み合わせて使用する比較例1の場合、実施例1に比べて側面では見る方向によって色変化が大きいことを確認することができ、これから比較例1の場合、側面で均一な視感を具現しにくいことが分かる。特に、図9の(B)に示したように、比較例1は、側面で透過モード(white mode)を観察する場合、均一な色を示すことができず、黄色と青色を示すことを確認することができるが、これは、図11の(A)に示したように、比較例1の場合、透過モード(white mode)で回転によって黄色から青色まで色変化が生ずる現像に起因することで判断される。
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12