(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032463
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】重合体の分散液を製造する方法および重合体の分散液
(51)【国際特許分類】
C08F 2/22 20060101AFI20161121BHJP
C08F 220/36 20060101ALI20161121BHJP
C08F 220/60 20060101ALI20161121BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20161121BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20161121BHJP
C09D 133/24 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
C08F2/22
C08F220/36
C08F220/60
C09D5/02
C09D133/14
C09D133/24
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-107705(P2012-107705)
(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-234266(P2013-234266A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原口 辰介
(72)【発明者】
【氏名】夏井 大助
(72)【発明者】
【氏名】前 学志
(72)【発明者】
【氏名】野田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】坂下 啓一
(72)【発明者】
【氏名】中谷 文紀
【審査官】
藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/068110(WO,A1)
【文献】
特開2009−144047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/22−2/30
C08F20/36
C08F20/60
C08F220/36
C08F220/60
C09D5/02
C09D133/14
C09D133/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性基を2つ以上有する単量体(a1)を0.1〜2.0モル%と下記一般式(1)で表される単量体(a2)を含む単量体混合物(A)を乳化重合し、重合体の分散液を製造する方法。
【化1】
(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基、Xは酸素原子、イミノ基、下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。R
2およびR
3は水素原子、炭素数1〜8の直鎖型アルキル基、炭素数1〜8の分岐型アルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜8の脂環式炭化水素、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、互いに同一でも異なってもよい。また、R
2とR
3とで環構造を形成してもよく、環構造は置換基を有してもよい。
)
【化2】
(式(2)中、nは1〜10の整数を表す。R
4およびR
5は水素原子又はメチル基を表し、R
4およびR
5の少なくとも一方は水素原子である。)
【化3】
(式(3)中、nは1〜10の整数を表す。)
【請求項2】
前記単量体(a2)のR2およびR3が水素原子である請求項1記載の重合体の分散液を製造する方法。
【請求項3】
ラジカル重合性基を2つ以上有する単量体(a1)0.1〜2.0モル%、下記一般式(1)で表される単量体(a2)、並びに前記単量体(a1)及び(a2)以外の単量体を重合させてなる重合体の分散液。
【化4】
(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基、Xは酸素原子、イミノ基、下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。R2およびR3は水素原子、炭素数1〜8の直鎖型アルキル基、炭素数1〜8の分岐型アルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜8の脂環式炭化水素、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、互いに同一でも異なってもよい。また、R2とR3とで環構造を形成してもよく、環構造は置換基を有してもよい。)
【化5】
(式(2)中、nは1〜10の整数を表す。R4およびR5は水素原子又はメチル基を表し、R4およびR5の少なくとも一方は水素原子である。)
【化6】
(式(3)中、nは1〜10の整数を表す。)
【請求項4】
前記単量体(a2)のR2およびR3が水素原子である請求項3記載の重合体の分散液。
【請求項5】
請求項3または請求項4記載の重合体の分散液を含む水性被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性に優れた水性塗料用の重合体の分散液の製造方法およびその分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料分野において、地球環境や塗装作業環境等への配慮から、有機溶剤を媒体とする溶剤系塗料から、水を媒体とする水性塗料への変換が図られている。しかしながら、重合体の分散液を含む水性塗料は、溶剤系塗料よりも親水性が高く、耐候性が不十分であり、更なる改良が求められている。
例えば特許文献1には、ガラス転移温度を規定した樹脂成分を用い、耐候性、耐ブロッキング性に優れた塗膜を得ることを目的とした重合体の分散液が記載されている。
特許文献2には、分子内にビニル基とピペリジン骨格を有する単量体を重合した成型体用の重合体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−63567号公報
【特許文献2】国際公開第2011/068110号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2に記載の製造方法による重合体の分散液は、水性塗料用の重合体として用いるには耐候性が十分ではなかった。
本発明の目的は、耐候性に優れた水性塗料用の重合体の分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨は、ラジカル重合性基を2つ以上有する単量体(a1)を0.1〜2.0モル%と、下記一般式(1)で表される単量体(a2)を含む単量体混合物(A)を乳化重合し、重合体の分散液を製造する方法にある。
【0006】
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基、Xは酸素原子、イミノ基、下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。R
2およびR
3は水素原子、炭素数1〜8の直鎖型アルキル基、炭素数1〜8の分岐型アルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜8の脂環式炭化水素、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、互いに同一でも異なってもよい。また、R
2とR
3とで環構造を形成してもよく、環構造は置換基を有してもよい。)
にある。
【0007】
【化2】
(式(2)中、nは1〜10の整数を表す。R
4およびR
5は水素原子又はメチル基を表し、R
4およびR
5の少なくとも一方は水素原子である。)
【0008】
【化3】
(式(3)中、nは1〜10の整数を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の重合体の分散液を含む水性被覆材は、耐候性に優れた塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、ラジカル重合性基を2つ以上有する単量体(a1)と、一般式(1)で表される単量体(a2)を含む単量体混合物(A)を乳化重合する。
【0011】
単量体(a1)
本発明で用いる単量体(a1)はラジカル重合性基を2つ以上有する単量体であり、例えば以下のものが挙げられる。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルにヒドロキシ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジオールと(メタ)アクリル酸のジエステル化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1分子当たり3個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸のポリエステル化合物;アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリル(イソ)シアヌレート、イソ(テレ)フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル、マレイン酸ジアリルトリス(2−アクリロイルオキシエチレン)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等。
【0012】
また、アリル基を2つ以上有する単量体を使用すると得られる塗膜の耐候性が向上するため好ましい。中でも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、イソ(テレ)フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が好ましく、アリル基を3つ有するトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートがより好ましい。なお、単量体(a1)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記単量体混合物(A)に含まれる単量体(a1)の含有量は、0.1〜2.0モル%である。含有率が0.1モル%以上であれば優れた耐候性が得られ、2.0モル%以下であれば成膜性の低下による耐候性の低下を抑制できる。さらに、単量体(a1)の含有量は耐候性の点から、0.3〜1.0モル%が好ましい。
【0014】
単量体(a2)
本発明で用いる単量体(a2)は、下記一般式(1)で表される。
【0015】
【化4】
(式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基、Xは酸素原子、イミノ基、下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。R
2およびR
3は水素原子、炭素数1〜8の直鎖型アルキル基、炭素数1〜8の分岐型アルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜8の脂環式炭化水素、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、互いに同一でも異なってもよい。また、R
2とR
3とで環構造を形成してもよく、環構造は置換基を有してもよい。)
【0016】
【化5】
(式(2)中、nは1〜10の整数を表す。R
4およびR
5は水素原子又はメチル基を表し、R
4およびR
5の少なくとも一方は水素原子である。)
【0017】
【化6】
(式(3)中、nは1〜10の整数を表す。)
【0018】
一般式(1)中、単量体(a2)の合成が容易であることから、Xは酸素原子であることが好ましい。また、塗膜の耐候性が良好となることから、R
2およびR
3は炭素数1〜8の直鎖型アルキル基、又は炭素数1〜8の分岐型アルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0019】
単量体(a2)としては、例えば、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシピペリジン、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリルアミドピペリジン、1−プロピルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシピペリジン、1−プロピルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリルアミドピペリジン、1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシピペリジン、1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリルアミドピペリジン、1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシピペリジン、1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリルアミドピペリジン、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ)エトキシピペリジン、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ−1,4−ジオキソ)ブトキシピペリジンが挙げられる。
これらの中では、得られる塗膜の耐候性が良好となることから、1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシピペリジンがより好ましい。
これらの単量体(a2)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0020】
また、前記単量体混合物(A)に含まれる単量体(a2)の含有量は、0.1〜5.0モル%が好ましく0.2〜3モル%がより好ましい。単量体(a2)の含有率が0.1モル%以上であれば耐候性が向上し、5.0モル%以下であれば塗膜強度が向上する。
【0021】
なお単量体(a2)は、公知の方法により合成することができる。例えば、1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−メタクリロイルオキシピペリジン(以下、「単量体(a1−1)」という。)は、特表2009−541428号公報に記載の方法に従い、1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンを合成した後、メタクリロイルクロリドと反応させて合成することができる。具体的には、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシドを、塩化銅(I)の存在下、アセトンおよび30%過酸化水素水溶液と反応させ、得られた1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンを、メタクリロイルクロリドと反応させることで合成することができる。
また、1−プロピルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−メタクリロイルオキシピペリジン(以下、「単量体(a1−2)」という。)は、特表2008−519003号公報に記載の方法に従い合成することができる。
また、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−メタクリロイルオキシピペリジン(以下、「単量体(a1−3)」という。)も、特表2008−519003号公報に記載の方法で合成することができる。
【0022】
その他の単量体
さらに、前記単量体(a1)、(a2)以外に、前記単量体混合物(A)に含まれる単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート。2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体;ヒドロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート等の末端ヒドロキシ型ポリアルキレンオキシド基含有ラジカル重合性単量体;メトキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート等のアルキル基末端型ポリアルキレンオキシド基含有ラジカル;2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレート;2−アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ラジカル重合性単量体;ジ(メタ)アクリル酸亜鉛等の金属含有ラジカル重合性単量体;(メタ)アクリロニトリル、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等の他の(メタ)アクリル系単量体;スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルアルキルケトン等のカルボニル基および/又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体:1,3−ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系単量体;酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン等のラジカル重合性単量体が挙げられる。
【0023】
また、得られる塗膜の耐候性の点から、前記単量体混合物(A)には自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体を含むことが好ましい。自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体とは、ビニル系樹脂中に残存する自己架橋性官能基が、樹脂分散液が室温で保管されている間は化学的に安定であり、塗装時の乾燥、加熱又はその他の外的要因によって側鎖の官能基同士で反応し、側鎖基間に化学結合を形成させる単量体をいう。
自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のオキシラン基含有エチレン性不飽和単量体、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミドのアルキロール又はアルコキシアルキル化合物が挙げられる。これらは必要に応じて1種以上を選択して使用できる。
【0024】
自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体の含有量は、0.1〜10モル%であることが好ましい。含有量が0.1モル%以上であれば、優れた耐候性が得られやすく、含有量が10モル%以下であれば、成膜性に起因する耐候性の低下を抑制しやすい。
【0025】
また、得られる塗膜の耐候性の点から、カルボニル基および/又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体を含むことが好ましい。
カルボニル基および/又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体としては、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、炭素数4〜7個のビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナール、(メタ)アクリルアミド、ピバリンアルデヒド、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニルアクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
これらの単量体を共重合した重合体を含む本発明の水性被覆材に、分子中に少なくとも2個のヒドラジノ基を有する有機ヒドラジン化合物(以下、「ヒドラジン化合物」という。)を配合し塗料化すると、重合体中のカルボニル基と、ヒドラジン化合物のヒドラジノ基との間で架橋反応が進行し、塗膜の耐候性が向上する。
前記単量体の含有量は、0.1〜5モル%であることが好ましい。
【0027】
ヒドラジン化合物としては、例えば、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等の炭素数が2〜15のジカルボン酸のジヒドラジドや、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン、1−ヒドラジノカルボエチル−3−ヒドラジノカルボイソプロピル−5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン等のヒダントイン骨格を有する化合物が挙げられる。
ヒドラジン化合物は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
また、前記単量体とヒドラジン化合物の比率は、単量体混合物(A)中に含まれるカルボニル基を有する単量体のモル数を(P)、重合体の分散液に配合されるヒドラジン化合物のヒドラジノ基のモル数を(Q)としたとき、比率(P)/(Q)を0.1〜10とすることが好ましく、0.8〜2とすることがより好ましい。(P)/(Q)が0.1以上であれば、未反応のヒドラジン化合物による塗膜の耐水性および耐候性の低下を抑制しやすい。(P)/(Q)が10以下であれば、塗膜の耐候性が向上する。
【0029】
さらに、重合体の分散安定性の点から、エチレン性不飽和カルボン酸を含むことが好ましい。
エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、5−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは必要に応じて1種以上を選択して使用できる。
エチレン性不飽和カルボン酸の含有量は、0.1〜5モル%であることが好ましい。含有量が0.1モル%以上であれば、得られる重合体の分散安定性が向上し、耐候性に優れた塗膜が得られやすい。5モル%以上であれば、得られる塗膜の耐水性および耐候性の低下を抑制しやすい。
【0030】
単量体混合物(A)の乳化重合は、公知の方法で行えばよく、例えば、界面活性剤の存在下、単量体混合物を重合系内に供給し、重合開始剤により重合すればよい。また、ソープフリー重合、シード重合等を用いても良い。例えばポリオルガノシロキサン重合体の分散液などを用いてシード重合を行うことが知られている。
【0031】
界面活性剤としては、公知のアニオン性、カチオン性、およびノニオン性の界面活性剤、が挙げられる。塗膜の耐候性の点から、ラジカル重合性結合を持つ反応性界面活性剤が好ましい。
界面活性剤の添加量は、単量体100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。
界面活性剤を0.1質量部以上とすることによって、重合安定性および重合体の分散安定性が向上する。また、界面活性剤を10質量部以下とすることによって、塗膜の耐水性および耐候性を損なうことなく、水性被覆材とする際の配合安定性や、水性被覆材の経時的安定性等を維持することができる。
【0032】
重合開始剤は、ラジカル重合に使用される公知のものが使用可能である。具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等の油溶性アゾ化合物類や2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}およびその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)およびその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピンアミジン)およびその塩類、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]およびその塩類等の水溶性アゾ化合物;過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物類が挙げられる。これらの重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤の添加量は、単量体100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、高分子量化による耐候性向上を考慮すると、0.01〜0.1重量部が好ましい。
【0033】
乳化重合を行う際、重合温度は30〜100℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。また、重合時間は2〜10時間が好ましい。
【0034】
また、前記重合体のキュムラント解析による平均粒子径は、重合体の分散安定性および塗膜性能のバランスから30〜300nmであることが好ましい。前記平均粒子径が30nm以上であれば、重合中に凝集物が生じにくく、少量の界面活性化剤であっても安定に重合することができ、塗膜の耐候性を維持することができる。また、前記平均粒子径が300nm以下であれば、成膜性が向上し、耐水性に優れた塗膜が得られる。より好ましくは50〜200nmである。
【0035】
さらに得られた重合体の分散液は、重合後、塩基性化合物の添加により、分散液のpHを中性領域〜弱アルカリ性、すなわちpH6.5〜11.0程度に調整することが好ましい。これにより、得られた重合体の分散安定性が向上する。
【0036】
また、得られた重合体を含む水性被覆材は、必要に応じてさらに各種顔料、消泡剤、顔料分散剤、レベリング剤、たれ防止剤、難燃性向上剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、および防腐剤等を含有してもよい。
【0037】
また、他の水溶性樹脂、粘性制御剤、メラミン類等の硬化剤と混合して使用してもよい。水性被覆材は、主成分である重合体、前記界面活性剤、および添加剤等で固形分を形成し、通常、固形分20〜80質量%の状態で使用される。
【0038】
各種基材の表面に水性被覆材を塗装する方法としては、例えば、噴霧コート法、ローラーコート法、バーコート法、エアナイフコート法、刷毛塗り法、ディッピング法およびフローコート法等の各種の塗装法を選択できる。水性被覆材は、室温乾燥もしくは50〜180℃で加熱乾燥を行うことによって塗膜を得ることができる。
【0039】
本製造方法により得られた重合体の分散液を含む水性被覆材は、セメントモルタル、スレート板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリート、金属、ガラス、磁器タイル、アスファルト、木材、防水ゴム材、プラスチック、および珪酸カルシウム基材等の各種素材の表面仕上げ被覆材として有用である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳しく説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を表す。重合体の分散液および塗膜の評価は以下の方法によって行った。
【0041】
<単量体(a2)の同定方法>
単量体(a2)の構造の確認には、1H−NMR JNM−EX270(日本電子(株)製、商品名)を用いた。単量体(a2)を重水素化クロロホルムに溶解させ、ピークの積分強度およびピーク位置から、化合物を同定した。測定温度は25℃、積算回数は16回である。
【0042】
<評価用塗板作製方法>
得られた重合体の分散液にMFT(最低造膜温度)が0℃以下になるように、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを添加し、評価用塗料とした。
評価用水性被覆材をリン酸亜鉛処理鋼鈑(ボンデライト#100処理鋼鈑、板厚0.8m
m、縦150mm×横70mm)にバーコーター#48にて塗装し、室温で5分間静置した後、130℃で20分間強制乾燥した。次いで、室温まで放冷し評価用塗板とした。
【0043】
<耐候性評価方法>
評価用塗板を用い、ダイプラ・メタルウエザーKU−R4−W型(ダイプラ・ウィンテス(株)製)にて耐候性試験を行った。このとき、試験サイクルは、照射16時間(湿度:70%RH、ブラックパネル温度:65℃)/暗黒2時間(湿度:70%RH、ブラックパネル温度:65℃)/結露4時間(湿度:98%RH、ブラックパネル温度:30℃)、UV強度:63mW/cm2の条件で、840時間経過後、1320時間経過後、1800時間経過後のΔE値および60°光沢保持率を耐候性の指標とし、下記の基準に従って評価した。
◎:1800時間経過後のΔE値が1未満であり、60°光沢保持率が80%以上
○:1800時間経過後のΔE値が3未満であり、60°光沢保持率が60%以上
△:1320時間経過後のΔE値が3未満であり、60°光沢保持率が60%以上
×:1320時間経過後のΔE値が3以上であり、60°光沢保持率が60%未満
××:840時間経過後のΔE値が3以上であり、60°光沢保持率が60%未満
【0044】
[合成例1] 単量体(a2−1)の合成
2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシド17.8g(100mmol)をアセトン100mlに溶解し、30%過酸化水素水溶液34g(300mmol)を添加した。5℃まで冷却しながら、塩化銅(I)0.49g(5.0mol%)を添加し、反応混合物の温度を5℃から55℃の間に15分間保持した。その後、35%塩酸を0.5g添加し、反応混合物を室温において2時間撹拌した。
2時間後、4mol/Lの重亜硫酸ナトリウム水溶液50ml、飽和炭酸水素カリウム水溶液100mlを加え、300mlの酢酸エチルで抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮し、1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンを得た。
得られた1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンをジクロロメタン50ml、トリエチルアミン50mlに溶解し、メタクリロイルクロリド10.4g(100mmol)を0℃にて添加した。徐々に室温まで昇温しつつ、1時間反応させた。1時間後、反応混合物を回転エバポレーターで濃縮し、残渣に水300mlを加え、酢酸エチル300mlで抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=10/1体積比)によって精製して、無色の液体を19.0g得た(収率74.3%)。
1H−NMRの測定により、生成物が単量体(a1−1)であることを確認した。
1H−NMR(CDCl
3):δ(ppm):1.19(s、6H),1.23(s、6H),1.60(m、2H),1.87(m、2H),1.92(s、3H),3.62(s、3H),5.07(m、1H),5.53(s、1H),6.06(s、1H)
単量体(a2−1)の構造を、下記式(4)に示す。
【0045】
【化7】
【0046】
[合成例2] 単量体(a2−2)の合成
ジクロロメタン100mL中、トリエチルアミン48.6g(480mmol)および、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド68.9g(400mmol)が溶解した溶液に、トリメチルシリルクロリド47.8g(440mmol)を0℃で添加した。25℃に昇温して2時間反応させた後、回転エバポレーターで濃縮した。残渣に水500mlを加え、総計500mlの酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮し、残渣をヘキサンに溶解し、再結晶により、4−トリメチルシリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド96.2gを得た。
切削屑状マグネシウム4.6g(190mmol)、脱水テトラヒドロフラン(THF)100ml、ヨウ素10mgを反応容器に入れ、容器内をアルゴンで置換した後、1−ブロモプロパン23.4g(190mmol)を、容器内の温度を55℃から65℃に保ちつつ滴下し、Grignard反応剤を調製した。
別の反応容器中で、4−トリメチルシリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド96.2g(394mmol)を、脱水THF100mlに溶解し、調製したGrignard反応剤を0℃で滴下した。3時間反応させた後、溶液を回転エバポレーターで濃縮した。残渣に500mlの水を加え、総計500mlの酢酸エチルで抽出し、有機層を回転エバポレーターで濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=20/1 体積比))によって精製し、1−(1−プロピル)オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−トリメチルシリルオキシピペリジン38.5gを得た。
1−(1−プロピル)オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−トリメチルシリルオキシピペリジン38.5gをメタノール300mlに溶解し、炭酸カリウム0.14g(0.1mmol)を加えて3時間反応させた後、溶液を回転エバポレーターで濃縮した。残渣に水300mlを加え、総計300mlの酢酸エチルで抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮し、残渣をジクロロメタン20ml、トリエチルアミン20mlに溶解し、メタクリロイルクロリド14.1g(135mmol)を0℃で滴下した。1時間反応させた後、析出したトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、溶液を回転エバポレーターで濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=20/1 体積比)によって精製し、無色の液体を29.7g得た(収率26.2%)。
1H−NMRの測定により、生成物が単量体(a1−2)であることを確認した。
1H−NMR(CDCl
3):δ(ppm):0.94(t、3H),1.21(s、12H),1.53(m、2H),1.61(m、2H),1.86(m、2H),1.92(s、3H),3.70(t、2H),5.07(m、1H),5.53(s、1H),6.06(s、1H)
単量体(a2−2)の構造を、下記式(5)に示す。
【0047】
【化8】
【0048】
[合成例3] 単量体(a2−3)の合成
THF200mL中、トリエチルアミン30.3g(300mmol)および、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド34.4g(200mmol)が溶解した溶液に、無水酢酸25.5g(250mmol)を0℃で添加した。25℃に昇温して12時間反応させた後、回転エバポレーターで濃縮した。残渣を氷水1リットルに投入し、析出した橙色固体を濾取して、4−アセチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド33.8gを得た。
4−アセチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド21.4g(100mmol)を、オクタン200mLに溶解し、酸化モリブデン(VI)0.9g(6mmol)を加え、加熱還流して脱水した。共沸により脱水しつつ、t−ブチルハイドロパーオキサイド70%水溶液19.2g(150mmol)を9時間かけて滴下し、反応させた。室温まで冷却後、飽和重亜硫酸ナトリウム水溶液30mlを徐々に加え、未反応の過酸化物を失活させた。有機層を回転エバポレーターで濃縮した後、残渣をエタノール100mLに溶解させ、6.7g(150mmol)の水酸化カリウムを加えて、25℃で2時間反応させた。
混合物を回転エバポレーターで濃縮し、残渣に水200mLを加え、総計200mLのジクロロメタンを用いて抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮した後、ジクロロメタン20mLおよびトリエチルアミン10mLに溶解させ、メタクリロイルクロリド10.5g(100mmol)を、0℃で添加し、1時間反応させた。混合物を回転エバポレーターで濃縮し、残渣に水200mLを加え、総計200mLの酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=20/1 体積比)によって精製し、無色の液体を26.3g得た(収率74.4%)。
1H−NMRの測定により、生成物が単量体(a1−3)であることを確認した。
1H−NMR(CDCl3):δ(ppm):0.89(m、6H),1.17(m、10H),1.18(s、6H),1.21(s、6H),1.61(m、2H),1.85(m、2H),1.92(s、3H),3.60−3.93(m、1H),5.07(m、1H),5.53(s、1H),6.03(s、1H)
単量体(a2−3)の構造を、下記式(6)に示す。
【0049】
【化9】
(式(6)中、Ocは下記式(7)〜(9)の構造である。以下、下記式(7)〜(9)を「Oc」と表す。)
【0050】
【化10】
【0051】
【化11】
【0052】
【化12】
【0053】
[製造例1] ポリオルガノシロキサン重合体水分散液の調製
下記原料組成物をホモミキサーで予備混合し、圧力式ホモジナイザーを用いて200kg/cm
2の圧力で強制乳化して、原料プレエマルションを得た。
次いで、水(90部)およびドデシルベンゼンスルホン酸(10部)を、攪拌機、還流冷却管、温度制御装置および滴下ポンプを備えたフラスコに仕込み、攪拌下に、フラスコの内温を85℃に保ちながら、前記原料プレエマルションを4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間重合を進行させ、冷却して、下記水酸化ナトリウム水溶液を加えてポリオルガノシロキサン共重合体水分散液(SiEm)を調製した。固形分は18重量%であった。
原料組成物:
環状ジメチルシロキサンオリゴマーの3〜7量体混合物 98部
γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン 2部
脱イオン水 310部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.7部
水酸化ナトリウム水溶液:
水酸化ナトリウム 1.5部
脱イオン水 30部
【0054】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、および滴下ポンプを備えたフラスコに下記第1原料混合物を仕込み、フラスコの内温を40℃に昇温した後に、下記第1開始剤水溶液および還元剤水溶液を添加し、ラジカル重合を開始した。重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を75℃まで冷却した。
第1原料混合物
ポリオルガノシロキサン共重合体
SiEm:6部
単量体混合物(A)
・単量体(a1)
トリアリルシアヌレート:1部(0.5mol%)
・その他の単量体
メチルメタクリレート:27部(32.9mol%)
グリシジルメタクリレート:1部(0.9mol%)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート:1部(0.9mol%)
界面活性剤
アデカリアソープSR−1025(商品名、ADEKA(株)製):5部
脱イオン水:103部
第1開始剤水溶液
パーブチルH69(日本油脂(株)製):0.02部
還元剤水溶液
硫酸第一鉄:0.0002部
エチレンジアミン四酢酸(EDTA):0.00027部
アスコルビン酸ナトリウム:0.12部
脱イオン水:6部
次いで、還元剤水溶液を添加してから0.5時間後に、2段目の共重合体の構成成分を含む第2原料混合物(予め乳化分散させたプレエマルション液)と下記開始剤水溶液とを1.75時間かけて滴下した。この滴下中はフラスコの内温を75℃に保持し、滴下終了後は75℃で1.5時間保持した。
第2原料混合物
単量体混合物(A)
・単量体(a2)
単量体(a2−1):0.54部(0.3mol%)
・その他の単量体
メチルメタクリレート:20.4部(24.9mol%)
ノルマルブチルメタクリレート:20.4部(17.5mol%)
2−エチルヘキシルアクリレート:23.2部(15.4mol%)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート:2.5部(2.3mol%)
アクリル酸:2部(3.4mol%)
ジアセトンアクリルアミド:1.5部(1.1mol%)
界面活性剤
アデカリアソープSR−1025:3部
サーフマーFP−120(東邦化学工業(株)製):0.5部
28%アンモニア水溶液:0.17部
脱イオン水:25部
第2開始剤水溶液
パーブチルH69:0.03部
脱イオン水:5部
その後、室温まで冷却し、28%アンモニア水(1.44部)を添加後、第3原料混合物を添加して水性被覆材を得た。
第3原料混合物
アジピン酸ジヒドラジド:0.7部
脱イオン水:1.5部
【0055】
[実施例2〜8]
「第1原料混合物」、「第2原料混合物」を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして水性被覆材を得た。
[比較例1〜4]
「第1原料混合物」、「第2原料混合物」を表2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして水性被覆材を得た。
それぞれの塗膜評価結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
比較例1は単量体混合物(A)に単量体(a2)が含まれていないため、長期に渡る光沢を保持できず、さらには塗膜が基盤から剥離してしまった。
比較例2は単量体混合物(A)に単量体(a2)の代わりにチヌビン123を用いたが、チヌビン123は分子内にラジカル重合性基を有していないため、得られた塗膜は長期に渡って十分な光沢保持率を有することができなかった。
比較例3は単量体混合物(A)にラジカル重合性基を2つ以上有する単量体(a1)が含まれていないため、長期に渡って光沢を保持することができなかった。
比較例4は単量体混合物(A)にラジカル重合性基を2つ以上有する単量体(a1)が多く含まれているため、塗膜が基盤から剥離してしまった。