(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記計測することでは、前記第1移動体が示す剛体モードに対して逆相の共振モードを含む振舞いを示す前記第2移動体の部分の位置に関連する第2制御量を計測する、請求項43に記載の露光方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態について、
図1〜
図12を用いて説明する。
【0030】
図1には、本実施形態に係るフラットパネルディスプレイ、例えば液晶表示装置(液晶パネル)などの製造に用いられる露光装置110の概略構成が示されている。露光装置110は、液晶表示素子パターンが形成されたマスクMと、プレートステージPSTに保持されたガラスプレート(以下、「プレート」という)Pとを、投影光学系PLに対して所定の走査方向(ここでは、
図1における紙面内左右方向であるX軸方向とする)に沿って同一速度で同一方向に相対走査し、マスクMのパターンをプレートP上に転写するスキャニング・ステッパ(スキャナ)である。以下においては、露光時にマスクMとプレートPとが投影光学系PLに対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向(X方向)とし、水平面内でこれに直交する方向をY軸方向(Y方向)、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向(Z方向)とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0031】
露光装置110は、照明系IOP、マスクMを保持するマスクステージMST、投影光学系PL、マスクステージMST及び投影光学系PLなどが搭載された不図示のボディ、プレートPをプレートホルダPHを介して保持するプレートステージPST、及びこれらの制御系等を備えている。制御系は、露光装置110の構成各部を統括制御する主制御装置(不図示)及びその配下のステージ制御装置50(
図3等参照)によって主に構成される。
【0032】
照明系IOPは、例えば米国特許第5,729,331号明細書などに開示される照明系と同様に構成されている。すなわち、照明系IOPは、図示しない光源(例えば、水銀ランプ)から射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッター、波長選択フィルタ、各種レンズなどを介して、露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。また、照明光ILの波長は、波長選択フィルタにより、例えば要求される解像度に応じて適宜切り替えることが可能になっている。
【0033】
マスクステージMSTには、回路パターンなどがそのパターン面(
図1における下面)に形成されたマスクMが、例えば真空吸着(あるいは静電吸着)により固定されている。マスクステージMSTは、不図示のボディの一部である鏡筒定盤の上面に固定されたX軸方向に伸びる一対のマスクステージガイド(不図示)上に、不図示の気体静圧軸受(例えばエアベアリング)を介して非接触状態で支持(浮上支持)されている。マスクステージMSTは、例えばリニアモータを含むマスクステージ駆動系MSD(
図1では不図示、
図3参照)により、走査方向(X軸方向)に所定のストロークで駆動されるとともに、Y軸方向、及びθz方向にそれぞれ適宜微少駆動される。マスクステージMSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、マスク干渉計システム16により計測される。
【0034】
マスク干渉計システム16は、マスクステージMSTの端部に設けられた移動鏡(又は鏡面加工された反射面)15に測長ビームを照射し、移動鏡15からの反射光を受光することにより、マスクステージMSTの位置を計測する。その計測結果はステージ制御装置50に供給され(
図3参照)、ステージ制御装置50は、マスク干渉計システム16の計測結果に基づいて、マスクステージ駆動系MSDを介してマスクステージMSTを駆動する。
【0035】
投影光学系PLは、マスクステージMSTの
図1における下方において、不図示のボディの一部(鏡筒定盤)に支持されている。投影光学系PLは、例えば米国特許第5,729,331号明細書に開示された投影光学系と同様に構成されている。すなわち、投影光学系PLは、マスクMのパターン像の投影領域が例えば千鳥状に配置された複数、例えば5つの投影光学系(マルチレンズ投影光学系)を含み、Y軸方向を長手方向とする長方形状の単一のイメージフィールドを持つ投影光学系と同等に機能する。ここでは、3つの投影光学系がY軸方向に所定間隔で配置され、残りの2つの投影光学系が、3つの投影光学系から+X側に離間して、Y軸方向に所定間隔で配置されている。本実施形態では、複数(5つ)の投影光学系のそれぞれとしては、例えば両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成するものが用いられている。また、以下では投影光学系PLの千鳥状に配置された複数の投影領域をまとめて露光領域と呼ぶ。
【0036】
照明系IOPからの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、投影光学系PLの像面側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたプレートP上の照明領域に共役な照明光ILの照射領域(露光領域)に形成される。そして、マスクステージMSTとプレートステージとの同期駆動によって、照明領域(照明光IL)に対してマスクMを走査方向(X軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域(照明光IL)に対してプレートPを走査方向(X軸方向)に相対移動させることで、プレートPの走査露光が行われ、プレートP上にマスクMのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系IOP及び投影光学系PLによってプレートP上にマスクMのパターンが生成され、照明光ILによるプレートP上の感応層(レジスト層)の露光によってプレートP上にそのパターンが形成される。
【0037】
プレートステージPSTは、投影光学系PLの下方(−Z側)に配置されている。プレートステージPSTは、X軸方向(走査方向)に移動するキャリッジ30と、該キャリッジ30の上に支持されてプレートPを保持して非走査方向に移動するプレートテーブルPTBとを備えている。
【0038】
図2には、プレートステージPSTが、プレート干渉計システム18(18X、18Y、18X
1、18X
2、
図3参照)とともに、斜視図にて示されている。プレートテーブルPTBは、
図2に示されるように、平面視矩形板状の部材から成り、その上面の中央にプレートP(
図2では不図示、
図1参照)を吸着保持するプレートホルダPHが固定されている。プレートテーブルPTBは、複数、例えば3つの支持機構(不図示)を介してYスライダ32Y上に支持されている。各支持機構は、プレートテーブルPTBを支持するとともに、その支持点にてプレートテーブルPTBをZ軸方向に駆動するアクチュエータ(例えばボイスコイルモータ等)を含む。3つの支持機構により、プレートテーブルPTBは、Yスライダ32Y上で、3自由度方向(Z軸、θx方向、及びθyの各方向)に微小駆動される。
【0039】
Yスライダ32Yは、逆U字状のXZ断面を有し、エアベアリング(不図示)等を介して非接触で、Y軸方向に伸びるYビーム(Yガイド)34Yに上方から係合している。Yビーム34Yの内部には、例えば複数のコイルがY軸方向に所定間隔で配置され、Yスライダ32Yの内面側には、例えば複数の永久磁石が、配置されている。Yビーム34YとYスライダ32Yとによって、可動子であるYスライダ32YをY軸方向に駆動するムービングマグネット型のYリニアモータ36Yが構成されている。プレートテーブルPTBが、Yリニアモータ36Yによって、Yビーム34Yに沿ってY軸方向に駆動される。なお、Yリニアモータ36Yとしては、ムービングマグネット型に限らず、ムービングコイル型のリニアモータを用いることもできる。
【0040】
Yビーム34Yの長手方向の一端と他端の下面には、Xスライダ32X
1,32X
2が固定されている。Xスライダ32X
1,32X
2は、それぞれ、逆U字状のYZ断面を有し、Y軸方向に離間して配置され、かつX軸方向に延設された一対のXガイド34X
1,34X
2にエアベアリング(不図示)等を介して非接触で、上方から係合している。Xガイド34X
1,34X
2は、それぞれ、不図示の防振部材を介して(あるいは直接)床面F上に設置されている。
【0041】
Xガイド34X
1,34X
2のそれぞれの内部には、例えば複数のコイルがX軸方向に所定間隔で配置され、Xスライダ32X
1,32X
2の内面側には、それぞれ、複数の永久磁石が配置されている。Xガイド34X
1とXスライダ32X
1とによって、可動子であるXスライダ32X
1をX軸方向に駆動するムービングマグネット型のXリニアモータ36X
1が構成されている。同様に、Xガイド34X
2とXスライダ32X
2とによって、可動子であるXスライダ32X
2をX軸方向に駆動するムービングマグネット型のXリニアモータ36X
2が構成されている。
【0042】
ここで、一対のXスライダ32X
1,32X
2と、Yビーム34Yとを含んで、キャリッジ30(
図1参照)が構成され、キャリッジ30が、一対のXリニアモータ36X
1,36X
2によって、X軸方向に駆動される。また、一対のXリニアモータ36X
1,36X
2が異なる推力(駆動力)を発生することで、一対のXリニアモータ36X
1,36X
2によって、キャリッジ30が、θz方向に駆動されるようになっている。なお、Xリニアモータ36X
1,36X
2としては、ムービングマグネット型に限らず、ムービングコイル型のリニアモータを用いることもできる。
【0043】
本実施形態では、上述したYリニアモータ36Y、一対のXリニアモータ36X
1,36X
2、及び3つの支持機構(不図示)によって、プレートテーブルPTBを6自由度方向(X軸,Y軸,Z軸,θx,θy,θzの各方向)に駆動するプレートステージ駆動系PSD(
図3参照)が構成されている。プレートステージ駆動系PSD(の構成各部)は、ステージ制御装置50によって制御される(
図3参照)。
【0044】
図2に戻り、プレートテーブルPTBの上面には、その中央にプレートPを吸着保持するプレートホルダPHが固定されている。また、プレートテーブルPTBの上面には、−X端部及び+Y端部に、それぞれX軸に直交する反射面を有する移動鏡(平面ミラー)17X、Y軸に直交する反射面を有する移動鏡(平面ミラー)17Yが、固定されている。また、Xスライダ32X
1の上面にはコーナーキューブ17X
1が、Xスライダ32X
2の上面にはコーナーキューブ(不図示)が、それぞれ固定されている。
【0045】
プレートステージPSTの位置は、プレート干渉計システム18(
図3参照)によって計測されている。プレート干渉計システム18は、
図2に示される4つの干渉計18X,18Y、18X
1及び18X
2を含む。
【0046】
干渉計18Xは、プレートテーブルPTBに設けられた移動鏡17XにX軸に平行な少なくとも3本の測長ビームを照射し、それぞれの反射光を受光して、プレートテーブルPTBのX軸方向、θz方向、及びθy方向の位置を計測する。干渉計18Yは、プレートテーブルPTBに設けられた移動鏡17YにY軸に平行な少なくとも2本の測長ビームを照射し、それぞれの反射光を受光して、プレートテーブルPTBのY軸方向及びθx方向の位置を計測する。
【0047】
干渉計18X
1は、Xスライダ32X
1上に固定されたコーナーキューブ17X
1にX軸に平行な測長ビームを照射し、その反射光を受光してキャリッジ30のX軸方向の位置(X位置)を計測する。同様に、干渉計18X
2は、Xスライダ32X
2上に固定されたコーナーキューブ(不図示)にX軸に平行な測長ビームを照射し、その反射光を受光してキャリッジ30のX軸方向の位置(X位置)を計測する。
【0048】
プレート干渉計システム18の各干渉計の計測結果は、ステージ制御装置50に供給される(
図3参照)。ステージ制御装置50は、後述するように、プレートステージPSTの速度を用いて、プレートステージ駆動系PSD(より正確には、一対のXリニアモータ36X
1,36X
2及びYリニアモータ36Y)を介してプレートステージPST(プレートテーブルPTB)をXY平面内で駆動する。ここで、ステージ制御装置50は、プレート干渉計システム18の各干渉計からの位置に関する計測結果を微分器に通すことによりプレートステージPSTの速度を算出する。また、プレートステージPST(プレートテーブルPTB)のX軸方向の駆動に際して、後述するように、干渉計18Xの計測結果と、干渉計18X
1及び18X
2の少なくとも一方の計測結果とが用いられる。
【0049】
なお、ステージ制御装置50は、露光時などに、不図示のフォーカス検出系の検出結果に基づいて、プレートステージ駆動系PSD(より正確には、3つの支持機構(不図示))を介してプレートテーブルPTBをZ軸、θy及びθzの少なくとも一方向に微小駆動する。
【0050】
図3には、露光装置110のステージ制御に関連する制御系の構成が示されている。
図3の制御系は、例えばマイクロコンピュータなどを含むステージ制御装置50を中心として構成されている。
【0051】
露光装置110では、予め行われたプレートのアライメント計測(例えば、EGA等)の結果に基づいて、以下の手順で、プレートPの複数のショット領域が露光される。すなわち、主制御装置(不図示)の指示に応じて、ステージ制御装置50が、マスク干渉計システム16及びプレート干渉計システム18の計測結果を監視して、マスクステージMSTとプレートステージPSTとをそれぞれの走査開始位置(加速開始位置)に移動する。そして、ステージMST,PSTをX軸方向に沿って同一方向に同期駆動する。これにより、前述のようにして、プレートP上の1つのショット領域にマスクMのパターンが転写される。走査露光中、ステージ制御装置50は、例えば補正パラメータに従って、マスクステージMSTとプレートステージPSTの同期駆動(相対位置及び相対速度)を微調整する。これにより、前工程レイヤに形成されたパターンに重なるように、マスクMのパターンの投影像が位置合わせされる。
【0052】
1つのショット領域に対する走査露光が終了すると、ステージ制御装置50が、プレートステージPSTを、次のショット領域に対する走査開始位置(加速開始位置)へ移動(ステッッピング)させる。そして、次のショット領域に対する走査露光を行う。このようにして、プレートPのショット領域間のステッピングとショット領域に対する走査露光とを繰り返すことにより、プレートP上の全てのショット領域にマスクMのパターンが転写される。
【0053】
次に、プレートステージPSTを駆動する駆動システム(プレートステージPSTの駆動を制御する制御系)の設計について説明する。
【0054】
本実施形態では、並進方向、一例としてX軸方向にプレートステージPSTを駆動する駆動システムについて説明する。また、比較のため、従来技術についても、簡単に説明する。
【0055】
従来技術では、1入力1出力系(SISO系)のフィードバック制御系(閉ループ制御系)が構築される。この1入力1出力系(SISO系)のフィードバック制御系を、露光装置110に適用する場合を考える。この場合、干渉計18Xにより、制御対象であるプレートステージPST(プレートテーブルPTB)のX位置(制御量)が計測される。その計測結果Xは、ステージ制御装置50に供給される。ステージ制御装置50は、計測結果Xを用いて操作量U(Xリニアモータ36X
1,36X
2が発する駆動力F、又はXリニアモータ36X
1,36X
2のコイルに流す電流量I等)を求め、求められた操作量Uをプレートステージ駆動系PSDへ送る。プレートステージ駆動系PSDは、受信した操作量Uに従って、例えば、駆動力Fに等しい駆動力を発する、或いは電流量Iに等しい量の電流をXリニアモータ36X
1,36X
2のコイルに流す。これにより、プレートステージPSTの駆動が制御される。
【0056】
図4には、上述の1入力1出力系(SISO系)のフィードバック制御系におけるプレートステージPST(プレートテーブルPTB)の入出力応答(操作量Uに対する制御量Xの応答)を表現する伝達関数P(=X/U)の周波数応答特性を示すボード線図(振幅(ゲイン)|P(s)|及び位相arg(P(s)))、すなわちゲイン線図(上側の図)及び位相線図(下側の図)が示されている。ここで、s=jω=j2πf、j=√(−1)、fは周波数である。図中、実線は、例えば後述する力学模型に基づいて求められた理論結果を示し、一点鎖線は、実験結果(実験機を用いて測定された結果)を示す。実験では、操作量Uに対して制御量Xを測定し、その結果を定義式(P=X/U)に適用することにより、伝達関数Pの周波数応答特性が求められている。
【0057】
伝達関数Pの周波数応答特性において、10数Hz付近に、共振モード(共振振舞い)が現れることが確認できる。伝達関数Pは、基本的な振舞いとして、周波数fの増加に対して、その振幅を単調に減少し、位相を一定に保つ。これらは、ゲイン線図及び位相線図において、それぞれ、右下がりの直線及び傾き零の直線を示す。そして、伝達関数Pは、共振振舞いとして、10数Hz付近において、振幅を急激に増加そして減少し、位相を急激に減少そして増加する。これらは、ゲイン線図及び位相線図において、それぞれ、連続する山と谷の形及び谷の形を示す。すなわち、伝達関数Pは、10数Hz付近において、剛体モードに対して逆相の共振モードを示す。
【0058】
上述の共振モード(共振振舞い)は、近年の露光装置の大型化により、より低周波数域に現れ、プレートステージPSTの駆動の精密かつ安定な制御の大きな妨げになっている。なお、
図4の周波数応答特性の実験結果において、高周波数域(数10Hz以上)において激しい振動振舞いが見られるが、ここでは特に問題としない。
【0059】
上述の共振モード(共振振舞い)を相殺し、プレートステージPSTの駆動を精密かつ安定に制御するために、プレート干渉計システム18の干渉計18X(第1計測器)に加えて干渉計18X
1(第2計測器)を用いることにより、1入力2出力系(SIMO系)のフィードバック制御系を構築する。ここで、キャリッジ30の位置は、干渉計18X
1、18X
2のいずれによっても計測することができ、両者の計測値の平均によっても得られるが、ここでは、説明の便宜上、干渉計18X
1を用いるものとする。
【0060】
この1入力2出力系(SIMO系)のフィードバック制御系では、干渉計18X,18X
1により、それぞれ、プレートステージPST(制御対象)を構成するプレートテーブルPTB(制御対象の第1部分)及びキャリッジ30(制御対象の第2部分)のX位置(制御量)X
2,X
1が計測される。これらの計測結果(X
2,X
1)は、ステージ制御装置50に供給される。ステージ制御装置50は、計測結果(X
2,X
1)を用いて操作量U(駆動力F)を求め、求められた操作量Uをプレートステージ駆動系PSDへ送信する。プレートステージ駆動系PSD(Xリニアモータ36X
1,36X
2)は、受信した操作量U(駆動力F)に従って、駆動力Fに等しい駆動力をキャリッジ30(第2部分)に加える。これにより、プレートステージPSTが駆動される。
【0061】
図5(A)には、キャリッジ30の入出力応答(操作量U(駆動力F)に対する制御量X
1)を表現する伝達関数P
1(=X
1/U)の周波数応答特性を示すボード線図、すなわちゲイン線図(上側の図)及び位相線図(下側の図)が示されている。また、
図5(B)には、プレートテーブルPTBの入出力応答(操作量U(駆動力F)に対する制御量X
2)を表現する伝達関数P
2(=X
2/U)の周波数応答特性を示すボード線図、すなわちゲイン線図(上側の図)及び位相線図(下側の図)が示されている。
【0062】
プレートテーブルPTBに対する伝達関数P
2の周波数応答特性(
図5(B)参照)は、前述の周波数応答特性(
図4参照)と同様の振舞いを示す。ただし、共振振舞い(共振モード)が現れる周波数域が、幾分高周波数側にシフトしている。これに対し、キャリッジ30に対する伝達関数P
1の周波数応答特性は、伝達関数P
2の周波数応答特性と相反する振舞い(逆相の共振モード)、すなわち剛体モードに対して同相の共振モードを示す。伝達関数P
1は、周波数fの増加に対して、その振幅を急激に減少そして増加し、位相を急激に増加そして減少する。これらは、
図5(A)のゲイン線図及び位相線図において、それぞれ、連続する谷と山の形及び山の形を示している。
【0063】
また、1入力2出力系(SIMO系)の制御対象に対するフィードバック制御を用いた露光装置が、特開2006−203113号公報に記載されている。しかし、2つの出力を合成して1出力とし、1入力1出力系(SISO系)の制御対象に対して1つの制御器を設計する構成であるため、で十分とは言えなかった。
【0064】
また、本実施形態の露光装置110では、干渉計18X,18X
1によるプレートステージPSTの位置計測の基準位置、すなわち移動鏡17Xとコーナーキューブ17X
1の設置位置にオフセットがある。このオフセットを取り除くために、制御器にハイパスフィルタを接続して、低周波数帯域において制御量X
1をカットする必要がある。しかし、この取扱により、SIMO系のフィードバック制御系であっても、後述するように、周波数応答特性においてハイパスフィルタに起因する特異な振舞いが現れ、設計上の外乱抑圧特性が得られていない。
【0065】
本実施形態に係る露光装置110では、1入力2出力系(SIMO系)のフィードバック制御系を構築するにあたり、第1計測器(干渉計18X(移動鏡17X))が設置されたプレートステージPSTの第1部分(プレートテーブルPTB)が示す剛体モードに対して逆相の共振モードを含む振舞いを示すプレートステージPSTの第2部分(キャリッジ30(Xスライダ32X
1))に、第2計測器(干渉計18X
1(コーナーキューブ17X
1))を設置している。これにより、目的のフィードバック制御系の構築が可能となる。
【0066】
図6には、本実施形態に係るプレートステージPSTの駆動システムに対応する1入力2出力系(SIMO系)の閉ループ制御系(フィードバック制御系)を示すブロック図が示されている。この閉ループ制御系に対応する駆動システムは、制御対象であるプレートステージPSTの第1部分(プレートテーブルPTB)の(X軸方向の)位置(第1の制御量X
2)及び第2部分(キャリッジ30)の(X軸方向の)位置(第2の制御量X
1)をそれぞれ計測するプレート干渉計システム18の干渉計18X,18X
1と、第1及び第2の制御量の計測結果(X
2,X
1)を合成して合成制御量(X
mix)を生成する合成部52と、プレートステージPSTの目標値Rと合成制御量(X
mix)の生成結果とに基づいて操作量Uを演算し、その結果をプレートステージ駆動系PSDに送信してプレートステージPSTの駆動を制御するステージ制御装置50と、を含む。ここで、X位置X
2,X
1は、それぞれ干渉計18X、18X
1によって計測されるが、
図6では図示が省略されている。以降の閉ループ制御系のブロック図においても同様に計測器は図示が省略される。
【0067】
ここで、目標値(目標軌道)、制御量、操作量等は、時間の関数として定義されるが、
図6及びそれを用いた説明では、制御ブロック図の説明に際しての慣習に従い、それらのラプラス変換を用いて説明を行うものとする。また、後述する演算式U(R−X
mix)についても、ラプラス変換形においてその定義を与えるものとする。また、以降においても、特に断らない限り、ラプラス変換(ラプラス変換形)を用いて説明するものとする。
【0068】
ステージ制御装置50は、目標生成部50
0と制御器50
1と減算器50
2とを含む。なお、これら各部は、実際には、ステージ制御装置50を構成するマイクロコンピュータとソフトウェアによって実現されるが、ハードウェアによって構成しても勿論良い。目標生成部50
0は、プレートステージPSTの目標値、ここでは目標位置(時々刻々変化する位置の目標値)Rを生成して、減算器50
2に供給する。減算器50
2は、目標位置Rと合成部52からの合成制御量X
mixとの差、すなわち偏差(R−X
mix)を算出し、制御器50
1(伝達関数C)に供給する。制御器50
1は、偏差(R−X
mix)が零となるように、演算(制御演算)により操作量U=C(R−X
mix)を算出する。ここで、Cは、制御器50
1の伝達関数である。伝達関数とは、入力信号r(t)と出力信号C(t)とのラプラス変換の比R(s)/C(s)、すなわちインパルス応答関数のラプラス変換関数である。このように、ステージ制御装置50は、目標位置Rと合成部52からの合成制御量X
mixとに基づいて演算式U=C(R−X
mix)で表される制御演算を行って操作量Uを求め、該操作量Uを制御対象であるプレートステージPSTに与える。これにより、操作量Uに従ってプレートステージPSTが駆動され、その位置が制御される。
【0069】
合成部52は、比例器(比例ゲインβ,α)52
1,52
2,加算器52
3、ハイパスフィルタ52
4、ローパスフィルタ52
5、加算器52
mを含み、干渉計18Xによって計測されるプレートテーブルPTB(伝達関数P
2)のX位置X
2(現在位置)と干渉計18X
1によって計測されるキャリッジ30(伝達関数P
1)のX位置X
1(現在位置)とを合成して合成制御量(X
mix)を生成し、目標生成部50
0(減算器50
2)に供給する。ここで、比例器(比例ゲインβ,α)52
1,52
2は、それぞれ、干渉計18X
1,18Xからの計測結果X
1,X
2を比例ゲインβ,α倍して(βX
1,αX
2)、加算器52
3に送る。加算器52
3は、比例器52
1,52
2からの出力の和(αX
2+βX
1)を生成し、ハイパスフィルタ52
4に供給する。ハイパスフィルタ52
4及びローパスフィルタ52
5は、同じカットオフ周波数fcを有し、それぞれ、加算器52
3からの信号(αX
2+βX
1)のうちのカットオフ周波数fcより高い周波数成分F
1(αX
2+βX
1)及び干渉計18Xからの計測結果X
2のうちのカットオフ周波数fcより低い周波数成分F
2(X
2)のみを通し、加算器52
mに供給する。加算器52
mは、ハイパスフィルタ52
4とローパスフィルタ52
5からの信号F
1(αX
2+βX
1),F
2(X
2)を合成して合成制御量X
mix=F
1(αX
2+βX
1)+F
2(X
2)を生成し、ステージ制御装置50(減算器50
2)に供給する。
【0070】
ハイパスフィルタ52
4及びローパスフィルタ52
5の具体例として、次式(1a)により与えられる1次フィルタ、式(1b)により与えられる2次フィルタ、式(1c)により与えられる4次フィルタが挙げられる。
【0071】
【数1】
式(1a)及び式(1b)において、カットオフ周波数fcを用いてω
f=2πfcである。
【0072】
上述の構成の閉ループ制御系(フィードバック制御系)において生成されるX
mixは、共振のない低周波数帯域では制御対象のX
2、共振が存在する中・高周波数帯域では共振に対して不可観測なαX
2+βX
1となる。これにより、操作量Uの入力から合成量X
mixの出力までのプレートステージPSTと合成部52の伝達特性は、理想的な剛体モデルを用いて表現することができる。また、合成量X
mixは、低周波数帯域ではX
2に等しいため、干渉計18X,18X
1の位置計測の基準位置(移動鏡17Xとコーナーキューブ17X
1の設置位置)間のオフセットを取り除くために、制御器にハイパスフィルタを接続する必要もない。さらに、ステージ制御装置50は、剛体モデルに基づいて設計した制御器50
1のみを用いて構成することができる。
【0073】
上述の構成の閉ループ制御系(フィードバック制御系)を、周波数分離SRC (FS-SRC)型制御系と呼ぶ。
【0074】
本実施形態では、比例器52
1,52
2を設計するために、すなわち比例ゲインβ,αを決定するために、簡素化された力学模型(剛体模型)を用いてプレートステージPSTの力学的運動を表現する。
【0075】
図7には、プレートステージPSTの力学的運動(並進運動)を表現する第1の模型、並進2慣性系模型が示されている。プレートステージPSTは、第1計測器(干渉計18X)が設置されたプレートテーブルPTB及び第2計測器(干渉計18X
1、18X
2)が設置されたキャリッジ30の2部分から構成されるものとする。そして、これらの部分のX軸方向の運動を、ばねとダンパにより連結された2つの剛体の運動、より詳細には、プレートステージ駆動系PSD(Xリニアモータ36X
1,36X
2)に対応する駆動系から駆動力Fを与えられてX軸方向に並進する剛体M1(キャリッジ30に対応する)と、剛体M1とは、ばねとダンパを介して連結され、剛体M1上で並進運動する剛体M2(プレートテーブルPTBに対応する)との運動として表現する。なお、2つの剛体はばねとダンパにより連結されるものとする、或いは注目する2つの剛体を含む2以上の剛体がばね(又はばねとダンパ)により連結されるものとして表現しても良い。
【0076】
キャリッジ30及びプレートテーブルPTBに対応する2つの剛体(第1及び第2剛体)の質量をそれぞれM
1,M
2、第1及び第2剛体間の摩擦による剛性係数及び粘性係数をそれぞれk
2,c
2、第1剛体に対する粘性係数をc
1、及び第2剛体に作用する推力をFとする。
【0077】
上述の並進2慣性系模型において、第1及び第2剛体の入出力応答(駆動力Fに対する位置X
1,X
2の応答)を表す伝達関数P
1,P
2は、ラプラス変換形において、次のように与えられる。
【0078】
【数2】
これに対し、比例ゲインα,βを次のように決定する。
【0079】
【数3】
比例ゲインα,βの決定は後述する倒立振子型模型におけるそれと同様であるため、その詳細は省略する。伝達関数P
1,P
2と比例ゲインα,βとを用いると、推力Fに対するX
3=αX
2+βX
1の伝達特性は、次のように、理想的な剛体モデルの特性を有する。
【0081】
比例ゲインα,βは、質量M
1,M
2のみに依存し、ばね定数k
2、粘性係数c
1,c
2等、プレートステージPSTの状態に応じて変化し得るパラメータに依存しないことに注目する。これは、閉ループ伝達関数においてP
1,P
2の共振モードが相殺され、2つの剛体の質量M
1,M
2(すなわちキャリッジ30及びプレートテーブルPTBの質量)が変化しない限り、閉ループ伝達関数の振舞いは如何なるプレートステージPSTの状態の変化に対しても不変であることを意味する。
【0082】
図8(A)には、プレートステージPSTの力学的運動(並進運動)を表現する第2の模型、倒立振子型模型が示されている。プレートステージPSTは、第1計測器(干渉計18X)が設置されたプレートテーブルPTB及び第2計測器(干渉計18X
1)が設置されたキャリッジ30の2部分から構成されるものとする。そして、これらの部分のX軸方向の運動を、ばねにより連結された2つの剛体の運動、より詳細には、プレートステージ駆動系PSD(Xリニアモータ36X
1,36X
2)に対応する駆動系から駆動力Fを与えられてX軸方向に並進する剛体Cr(キャリッジ30に対応する)と、剛体Cr上の回転中心Oにてばねを介して連結され、回転中心Oに関して(θ
O方向に)回転する剛体Tb(プレートテーブルPTBに対応する)との運動として表現する。なお、2つの剛体はばねとダンパにより連結されるものとする、或いは注目する2つの剛体を含む2以上の剛体がばね(又はばねとダンパ)により連結されるものとして表現しても良い。
【0083】
ここで、剛体Cr,TbのX位置をそれぞれX
1,X
2、質量をそれぞれM
1,M
2、剛体Tbの(回転中心Oに関する)慣性モーメントをJ、粘性(剛体Crの速度に比例する抵抗)をC、剛体Tbと剛体Crとの間の減衰係数をμ、ばね定数(剛体Tbと剛体Crとの間のねじり剛性)をk、剛体Tbの重心と回転中心Oとの間の距離をL、剛体Cr,TbのそれぞれのX位置(X
1,X
2)計測の際のそれぞれの基準位置間のZ軸方向に関する離間距離をlとする。なお、
図8(B)の表に、これらの力学パラメータの値が示されている。これらの値は、式(2a)(2b)により表されるモデル式が、それぞれ、
図5(A)及び
図5(B)に示される周波数応答特性の実験結果、すなわち操作量U(F)に対する第1及び第2制御量X
2,X
1の実測結果を式(2b)(2a)に適用することにより求められる伝達関数P
2,P
1の周波数応答特性を再現するように、最小自乗法等を用いて決定されたものである。
【0084】
上述の倒立振子型模型において、剛体Cr,Tbの入出力応答(駆動力Fに対する位置X
1,X
2の応答)を表す伝達関数P
1,P
2は、式(2a)及び式(2b)により与えられる。ただし、以下のとおりである。
【0086】
上記の伝達関数P
1,P
2を用いて、比例ゲインα,β(及び伝達関数C)を決定する。便宜のため、伝達関数P
1,P
2,Cを、分数式形P
1=N
P1/D
PD
R,P
2=N
P2/D
PD
R,C=1/D
Cにおいて表す。ただし、以下のとおりである。
N
P1=b
12s
2+b
11s+b
10 …(7a)
N
P2=b
22s
2+b
21s+b
20 …(7b)
D
P=s
2+c/(M
1+M
2)s …(7c)
D
R=a
4s
2+(a
3−a
4c/(M
1+M
2))s+a
1(M
1+M
2)/c …(7d)
この場合、F
1=1,F
2=0としたときのフィードバック制御系(
図6)に対する閉ループ伝達関数の特性方程式A
CLは、1+CβP
1+CαP
2の分数式の分子部分により与えられる。すなわち、
A
CL=D
CD
PD
R+βN
P1+αN
P2 …(8)
特性方程式A
CLにおいて、任意の解析関数γを用いて、次式(9)を満たすようにα,βを決定する。
βN
P1+αN
P2=γD
R …(9)
【0087】
これにより、開ループ伝達関数βP
1+αP
2=γ/D
CD
Pが得られ、P
1,P
2のそれぞれに含まれる共振振舞いを与える極(すなわちP
1,P
2のそれぞれが示す共振モード)が極零相殺される。さらに、特性方程式A
CLが安定な極(本説明では便宜上、重根となるようにする)を有するように、すなわち次式(10)を満たすように、D
C,γを決定する。
A
CL=(D
CD
P+γ)D
R=(s+ω
1)(s+ω
2)…(s+ω
n)D
R …(10)
【0088】
次に、比例ゲインα,βが特異点(極)を有するD
Rを含まないように、式(7a)〜式(7d)及び式(9)より、次のように決定される。
【0089】
【数6】
伝達関数P
1,P
2と比例ゲインα,βとを用いると、推力Fに対するX
3=αX
2+βX
1の伝達特性は、次のように、良い近似で理想的な剛体モデルの特性を有する。
【0091】
残りのD
C,γの決定において、幾らかの自由度が残る。そこで、例えば、比例器52
1,52
2と制御器50
1とからPID制御器を設計することとする。これにより、D
C=s
2+b
1s,α=b
2s
2+b
3s+b
4が得られる。ただし、b
1=ω
1+ω
2+ω
3+ω
4−c/(M
1+M
2),b
2=ω
1ω
2+ω
1ω
3+ω
1ω
4+ω
2ω
3+ω
2ω
4+ω
3ω
4−b
1c/(M
1+M
2),b
3=ω
1ω
2ω
3+ω
1ω
2ω
4+ω
2ω
3ω
4+ω
1ω
3ω
4,b
4=ω
1ω
2ω
3ω
4である。
【0092】
比例ゲインα,βは、質量M
1,M
2および距離L,lのみに依存し、ばね定数k、減衰係数μ,粘性c等、プレートステージPSTの状態に応じて変化し得るパラメータに依存しないことに注目する。これは、閉ループ伝達関数においてP
1,P
2の共振モードが相殺され、剛体Cr,Tbの質量M
1,M
2(すなわちキャリッジ30及びプレートテーブルPTBの質量)および距離L,lが変化しない限り、閉ループ伝達関数の振舞いは如何なるプレートステージPSTの状態の変化に対しても不変であることを意味する。
【0093】
図9には、プレートステージPSTの力学的運動(並進運動)を表現する第3の模型、2共振2慣性ばね型模型が示されている。2共振2慣性ばね型模型は、プレートステージPSTを、第1計測器(干渉計18X)が設置されたプレートテーブルPTB及び第2計測器(干渉計18X
1)が設置されたキャリッジ30の2部分のそれぞれの並進運動を、ばねとダンパにより連結された2つの剛体の並進運動として表現する。なお、2つの剛体はばねのみにより連結されるものとする、或いは注目する2つの剛体を含む2以上の剛体がばねとダンパ(又はばねのみ)により連結されるものとして表現しても良い。
【0094】
プレートテーブルPTB及びキャリッジ30に対応する2つの剛体(第1及び第2剛体)の質量をそれぞれM
2,M
1、第1剛体に対する剛性係数及び粘性係数をそれぞれk
0,c
0、第2剛体に対する剛性係数及び粘性係数をそれぞれk
1,c
1、第1及び第2剛体間の摩擦による剛性係数及び粘性係数をそれぞれk
2,c
2、及び第1剛体に作用する推力をFとする。
【0095】
上述の2共振2慣性ばね型模型において、第1及び第2剛体の入出力応答(駆動力Fに対する位置X
1,X
2の応答)を表す伝達関数P
1,P
2は、式(2a)及び式(2b)により与えられる。ただし、以下のとおりである。
【0096】
【数8】
なお、この2共振2慣性ばね型模型に対し、
図6のブロック図により表されるフィードバック制御系に代えて
図10のブロック図により表されるフィードバック制御系を採用する。すなわち、
図6における比例器(比例ゲインβ,α)52
1,52
2が
図10における制御器(伝達関数β,α)52
7,52
8に置き換えられる。これに対応して、比例ゲインβ,αが伝達関数β=β(s),α=α(s)に置き換えられる。便宜上、伝達関数を比例ゲインβ,αと同じ表記を用いて表すこととする。
【0097】
2共振2慣性ばね型模型に対し、伝達関数α,βを次のように決定する。
【0098】
【数9】
ただし、次のようにP
2を与える。
【0099】
【数10】
伝達関数α,βの決定は先述の倒立振子型模型におけるそれと同様であるため、その詳細は省略する。これにより、推力Fに対するX
3=αX
2+βX
1の伝達特性は、次のように、理想的な2次ローパスフィルタの特性を有する。
【0100】
【数11】
ここで、ζ及びω
npは、それぞれ、任意に設計可能であり、推力FからX
3までの理想的な2次ローパスフィルタ特性の減衰比(ダンピングファクタ)と固有角周波数である。
【0101】
伝達関数α,βは、第1及び第2剛体間の摩擦による粘性係数c
2に依存しない、すなわち、第1及び第2剛体に相当するプレートステージPSTとキャリッジ30との間の状態に応じて変化し得るパラメータに依存しないことに注目する。これは、閉ループ伝達関数においてP
1,P
2の共振モードが相殺され、閉ループ伝達関数の振舞いはプレートステージPSTとキャリッジ30との間の状態の変化に対して不変であることを意味する。
【0102】
発明者らは、上で設計したSIMO系のフィードバック制御系(FS−SRC)のパフォーマンスを、シミュレーションにより検証した。また、比較のため、PID型制御器とノッチフィルタの組み合わせからなる従来の1入力1出力系(SISO系)のフィードバック制御系(PIDと呼ぶ)(例えば特開2006−203113号公報参照)及び第1及び第2の制御量(X
2,X
1)をフィルタ合成せずに用いる従来のSRC型フィードバック制御系(SRCと呼ぶ)のパフォーマンスも検証した。
【0103】
プレートステージPSTの力学的運動(応答特性)は、前述の倒立振子型模型を用いて再現されている。ここで、
図8(B)の表にまとめられた力学パラメータの値が使用されている。また、FS-SRC及びSRCにおいて用いられる制御器(C等)はPID型の制御器を採用した。また、3つのフィードバック制御系ともに、制御器を同一の極配置で設計した。また、SRCでは、干渉計18X,18X
1の位置計測の基準位置(移動鏡17Xとコーナーキューブ17X
1の設置位置)間のオフセットを取り除くために、干渉計18X
1(制御量X
2)の制御器にカットオフ周波数fc=5Hzの2次ハイパスフィルタを追加した。FS-SRCのフィルタ52
1,52
2は2次フィルタとし、カットオフ周波数は1Hzとした。
【0104】
図11には、本実施形態のSIMO系のFS−SRCの感度関数(閉ループ伝達関数)Sの周波数応答特性を示すゲイン線図が示されている。また、比較のため、従来のSISO系のPID及び従来のSIMO系のSRCの感度関数Sの周波数応答特性を示すゲイン線図も示されている。従来のSISO系のPID、従来のSIMO系のSRC、本実施形態のSIMO系のFS−SRCともに、10数Hzで、ハイパスフィルタに起因する特異な振舞いが現れている。しかし、その程度は、従来のSISO系のPID及び従来のSIMO系のSRCに対して、本実施形態のSIMO系のFS−SRCでは、十分に小さいことがわかる。
【0105】
また、SRCはハイパスフィルタを追加したことにより、同一の極配置で制御器を設計したにもかかわらず、低域でPIDと同等の感度性能が得られていない。これに対して、FS-SRCは低域でPIDと同等の感度特性となり、さらに共振モードによる特異な振る舞いも発生せず、理想的な感度特性を示している。
【0106】
図12には、ナイキスト線図が示されている。SRC、FS-SRCともに共振の影響を受けず、PIDに比べて安定余裕が十分に大きいことがわかる。
【0107】
以上説明したように、本実施形態に係る露光装置110によると、プレートステージPST(制御対象)の位置(第1制御量)X
2を計測する干渉計18X(第1計測器)が設置されたプレートテーブルPTB(制御対象の第1部分)が示す剛体モードに対して逆相の共振モードを含む振舞いを示すキャリッジ30(制御対象の第2部分)に、プレートステージPSTの位置(第2制御量)X
1を計測する干渉計18X
1(第2計測器)が設置される。第1及び第2計測器を用いることにより、高帯域でロバストなプレートステージPSTの駆動を制御する駆動システムを設計することが可能となる。
【0108】
また、本実施形態のSIMO系のフィードバック制御系では、干渉計18X(第1計測器)と干渉計18X
1(第2計測器)の計測結果をフィルタ処理して合成制御量X
mixを求め、該合成制御量X
mixと目標値Rとを用いて記操作量Uを求め、該操作量を前記制御対象に与える構成を採用している。ここで、干渉計18X(第1計測器)と干渉計18X
1(第2計測器)の計測結果(X
2,X
1)とこれらに対応するゲイン(又は伝達関数)(α,β)とを用いて合成量(X
c=αX
2+βX
1)を求め、該合成量(X
c)と第1及び第2計測器の一方の計測結果(X
2,X
1)とをそれぞれハイパスフィルタ(F
1)と該ハイパスフィルタと同じカットオフ周波数を有するローパスフィルタ(F
2)を介して合成することで、合成制御量X
mix=F
1(αX
2+βX
1)+F
2(X
2)が求められる。
【0109】
従来のSIMO系のフィードバック制御系では、第1及び第2計測器(干渉計18X,18X
1)によるプレートステージPSTのX位置計測の基準位置、すなわち移動鏡17Xとコーナーキューブ17X
1の設置位置にオフセットがあるため、このオフセットを取り除くためにハイパスフィルタを接続して低周波数帯域において制御量をカットしなければならない。しかし、共振が現れる帯域が低く制御量がカットされる周波数帯域に重複する場合、共振モードを自己相殺するための(P
1の共振モードをP
2の共振モードにより相殺するための)信号までもがカットされてしまうため、かえって制御精度の低下を招いてしまうことがある。これに対し、本実施形態のSIMO系のフィードバック制御系では、上述の構成により、合成制御量X
mixは、共振のない低周波数帯域では制御対象のX
2、共振が存在する中・高周波数帯域では共振に対して不可観測なαX
2+βX
1となるので、オフセットを取り除くためのハイパスフィルタを制御器に接続する必要がなく、さらに、ステージ制御装置50は、剛体モデルに基づいて設計した制御器50
1のみを用いて構成することができる。これにより、共振が現れる帯域に関係なく、高帯域でロバストなプレートステージPSTの駆動を制御する駆動システムを設計することが可能となる。
【0110】
また、ゲイン(又は伝達関数)β,αを、プレートステージPSTの第1及び第2部分(プレートテーブルPTB及びキャリッジ30)の応答を表現する伝達関数P
2,P
1のそれぞれに含まれる共振モードに対応する極が開ループ伝達関数βP
1+αP
2において相殺されるように決定する。さらに、伝達関数P
2,P
1の具体形を、第1及び第2部分の運動をばねにより連結された2つの剛体の運動として表現する力学模型(剛体模型)を用いて与える。これにより、閉ループ伝達関数においてP
2,P
1の共振振舞い(共振モード)が相殺され(制御対象の共振モードがP
2とP
1の反共振モードの線形和により相殺され)、如何なる状態の変化に対してもロバストなプレートステージPSTの駆動を制御する駆動システムを設計することが可能となる。
【0111】
また、本実施形態に係る露光装置110は、上述のように設計されたプレートステージPSTの駆動システムを備えるため、プレートステージPSTを精密且つ安定に駆動することが可能となり、露光精度、すなわち重ね合わせ精度の向上が可能となる。
【0112】
なお、上記実施形態では、伝達関数(α,β)を、第1及び第2部分に対応する伝達関数P
2,P
1のそれぞれに含まれる共振モードに対応する極が開ループ伝達関数βP
1+αP
2において相殺されるように決定することで、プレートステージPSTの安定化を向上させるようにしたが、それに限定されるものではない。例えば、前記伝達関数P
2,P
1のそれぞれに含まれる共振モードに対応する極を相殺させず、プレートステージの制振効果を高めて共振モードを安定化させるように、伝達関数(α,β)を求めてもよい。本実施形態では、ナイキスト線図において、共振モードを表す円の大きさや向きを伝達関数P
2,P
1のそれぞれの特性の範囲で自由に設定することができる。安定化の目安としては、例えば、共振モードを表す円が、ほぼ第1象限及び第4象限(右半平面)上に位置する状態、言い換えると、第2象限及び第3象限(左半平面)上には殆ど位置しない状態となるように、伝達関数(α,β)を設定してもよい。
【0113】
また、本実施形態のSIMO系のフィードバック制御系では、干渉計18X(第1計測器)と干渉計18X
1(第2計測器)の計測結果(X
2,X
1)から求められる合成量(X
c=αX
2+βX
1)と第1及び第2計測器の一方の計測結果(X
2,X
1)とをそれぞれハイパスフィルタ(F
1)とローパスフィルタ(F
2)を介して合成したが、ハイパスフィルタとローパスフィルタに代えて、例えば、バンドパスフィルタ、ノッチフィルタ等を用いて合成することとしてもよい。つまり、合成量(X
c)の共振モードが存在する周波数帯域と第1及び第2計測器の一方の計測結果(X
2,X
1)の共振モードが存在しない周波数帯域とを合成して合成制御量X
mixを求める構成であれば、如何なるフィルタを用いてSIMO系のフィードバック制御系を構成してもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、X軸方向についてのプレートステージPSTの駆動を制御する場合について説明したが、Y軸方向及びZ軸方向についてのプレートステージPSTの駆動を制御する場合についても、同様にして、フィードバック制御系を設計することができ、同等の効果を得ることができる。
【0115】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態について、
図13〜
図17を用いて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同一の構成部分には同一の符号を用いるとともに、詳細説明も省略する。
【0116】
先述の第1の実施形態におけるSIMO系のフィードバック制御系(FS-SRC)では、1つの共振モードに注目して合成部52を設計することで、その共振モードを観測することなく高帯域でロバストなプレートステージPSTの駆動制御を可能とした。しかし、共振モードが複数存在する場合、合成部52の設計において注目する1つの共振モード以外の共振モードが観測されてしまう。そこで、本実施形態のフィードバック制御系(FS-SRC)では、合成部52を、複数の共振モードのそれぞれが存在する周波数帯域毎に分離して設計する。先述のフィードバック制御系(FS-SRC)を複数の共振モードに拡張したこの構成のフィードバック制御系を、MultiFS-SRCと呼ぶ。
【0117】
図13には、本実施形態に係るプレートステージPSTの駆動システムに対応する1入力2出力系(SIMO系)の閉ループ制御系(フィードバック制御系)を示すブロック図が示されている。第1の実施形態におけるSIMO系のフィードバック制御系(FS-SRC)と対比して、合成部52の設計のみが異なる。そこで、合成部52の設計についてのみ説明する。ただし、複数の共振モードが存在し、それらのうちのN(≧2)の共振モードを考慮するものとする。
【0118】
合成部52は、N組の比例器(比例ゲインβ
n,α
n)52
n1,52
n2及び加算器52
n3(n=1〜N)、N+1のフィルタ52
n4(n=0〜N)、並びに1つの加算器52
mを含む。
【0119】
n組目の比例器52
n1,52
n2及び加算器52
n3より、干渉計18Xによって計測されるプレートテーブルPTB(伝達関数P
2)のX位置X
2(現在位置)と干渉計18X
1によって計測されるキャリッジ30(伝達関数P
1)のX位置X
1(現在位置)とを合成することで、中間合成量(X
srcn)が生成される。ここで、比例器(比例ゲインβ
n,α
n)52
n1,52
n2は、それぞれ、干渉計18X
1,18Xからの計測結果X
1,X
2を比例ゲインβ
n,α
n倍して(β
nX
1,α
nX
2)、加算器52
n3に送る。加算器52
n3は、比例器52
n1,52
n2からの出力の和(α
nX
2+β
nX
1)を生成し、これを中間合成量(X
srcn=α
nX
2+β
nX
1)としてフィルタ52
n4に供給する。N組の比例器52
n1,52
n2及び加算器52
n3(n=1〜N)はすべて同様に構成されている。
【0120】
N組の比例器52
n1,52
n2(n=1〜N)は、それぞれ、n番目の共振モードに注目して設計される。その詳細は、第1の実施形態において説明したとおり、n番目の共振モードを表現する適当なモデルを採用して、比例器52
n1,52
n2の比例ゲインβ
n,α
nが決定される。
【0121】
Nのフィルタ52
n4(n=1〜N)は、それぞれの入力信号(中間合成量X
srcn)をフィルタ処理F
n(X
srcn)して、加算器52
mに供給する。ここで、フィルタ52
n4の通過帯域には、対応するn番目の共振モードの共振周波数ω
n及びその近傍の周波数帯域が含まれる。ただし、Nのフィルタ52
n4(n=1〜N)の通過帯域は、重複しないよう互いに分離されている。
【0122】
一方、フィルタ52
04には、干渉計18Xによって計測されるプレートテーブルPTB(伝達関数P
2)のX位置X
2が供給される。フィルタ52
04は、その入力信号X
2をフィルタ処理F
0(X
2)して、加算器52
mに供給する。ここで、フィルタ52
n4の通過帯域には、Nのフィルタ52
n4(n=1〜N)の通過帯域以外の帯域、本実施形態では共振モードが存在しない低周波帯域が含まれる。
【0123】
加算器52
mは、N+1のフィルタ52
n4(n=0〜N)からの信号F
0(X
2),F
n(X
srcn)を合成して合成量X
mix=F
0(X
2)+Σ
n=1〜NF
n(X
srcn)を生成し、ステージ制御装置50(減算器50
2)に供給する。
【0124】
N+1のフィルタ52
n4(n=0〜N)の具体例として、次式(17a)により与えられるフィルタ、式(17b)により与えられるフィルタが挙げられる。
【数12】
ただし、上記式(17b)において、関数N
nは次式(18)により与えられるノッチフィルタである。
【数13】
フィルタF
0は、その入力信号(X
2)のうち周波数f
0(=ω
0/2π)より低い周波数帯域のみを通すローパスフィルタである。フィルタF
n(n=1〜N−1)は、その入力信号(X
srcn)のうち周波数f
n−1(=ω
n−1/2π)より高く、周波数f
n(=ω
n/2π)より低い周波数帯域のみを通すバンドパスフィルタである。フィルタF
Nは、その入力信号(X
srcn)のうち周波数f
N(=ω
N/2π)より高い周波数帯域のみを通すハイパスフィルタである。
【0125】
式(17a)および式(17b)のいずれのフィルタも、条件Σ
n=0〜NF
n=1を満し、N+1のフィルタ52
n4(n=0〜N)のそれぞれの通過帯域が重ならないように定められている。
【0126】
上述の構成のフィードバック制御系(MultiFS-SRC)において生成される合成量X
mixは、共振のない低周波数帯域(ω<ω
0)では制御対象のX
2、n番目の共振モードが存在する周波数帯域(ω
n−1≦ω<ω
n)ではX
srcn、N番目の共振モードが存在する周波数帯域(ω≧ω
N)ではX
srcNとなる。これにより、複数の共振モードのそれぞれが存在する周波数帯域毎に分離して、それぞれの共振モードに注目して対応する比例器52
n1,52
n2(n=1〜N)を個別に設計することができる。
【0127】
発明者らは、上で設計したフィードバック制御系(MultiFS-SRC)及び先述の第1の実施形態におけるフィードバック制御系(FS-SRC)のパフォーマンスを、シミュレーションにより検証した。
【0128】
図14には、シミュレーションの対象とするキャリッジ30及びプレートテーブルPTBのプラント特性P
1,P
2(周波数応答特性を示すボード線図、すなわちゲイン線図(上側の図)及び位相線図(下側の図))が示されている。ここで、P
1,P
2は、キャリッジ30及びプレートテーブルPTBのそれぞれの入出力応答(操作量U(駆動力F)に対する制御量X
1,X
2)を表現する伝達関数P
1(=X
1/U),P
2(=X
2/U)である。プラント特性P
1,P
2において、20Hz付近に、キャリッジ30に対するプレートテーブルPTBの倒れ込みに由来する第1の共振モードが、60Hz付近にプレートテーブルPTBのねじれに由来する第2の共振モードが現れている。
【0129】
フィードバック制御系(MultiFS-SRC)においては、2つの共振モードの両方を考慮して制御系(合成部52)を設計した。なお、第1の共振モードに対しては、
図8に示される倒立振子型模型を適用して、合成部52内の比例器52
11,52
12を設計した(比例ゲインβ
1,α
1を決定した)。また、第2の共振モードに対しては、倒立振子型模型のような2質点系模型は適用できず複雑な連続体模型を要することから、シミュレーションにより比例器52
21,52
22を設計した(比例ゲインβ
2,α
2を決定した)。フィードバック制御系(FS-SRC)においては第2の共振モードのみを考慮して制御系(合成部52)を設計した。フィードバック制御系(MultiFS-SRC)と同様に、シミュレーションにより合成部52内の比例器52
1,52
2を設計した(比例ゲインβ,αを決定した)。
【0130】
図15には、2つのフィードバック制御系(MultiFS-SRC及びFS-SRC)を適用した場合におけるプレートテーブルPTBのプラント特性P
2(周波数応答特性を示すボード線図、すなわちゲイン線図(上側の図)及び位相線図(下側の図))が示されている。2つのフィードバック制御系(MultiFS-SRC及びFS-SRC)のいずれにおいても、第2の共振モードを考慮して合成部52を設計したため、60Hz付近において共振モードが不可観測化されている。これに対して、フィードバック制御系(MultiFS-SRC)においては、第1の共振モードを考慮して合成部52を設計しているため、20Hz付近において共振モードが不可観測化されているのに対して、フィードバック制御系(FS-SRC)においては、第1の共振モードを考慮していないため、20Hz付近において共振モードが現れている。
【0131】
図16には、2つのフィードバック制御系(MultiFS-SRC及びFS-SRC)を適用した場合における感度関数(閉ループ伝達関数)が示されている。2つのフィードバック制御系(MultiFS-SRC及びFS-SRC)のいずれにおいても、60Hz付近において共振モードが不可観測化されている。これに対して、フィードバック制御系(MultiFS-SRC)においては、20Hz付近において共振モードが不可観測化されているのに対して、フィードバック制御系(FS-SRC)においては、第1の共振モードに由来するピークが現れている。
【0132】
図17には、2つのフィードバック制御系(MultiFS-SRC及びFS-SRC)を適用した場合におけるナイキスト線図が示されている。フィードバック制御系(FS-SRC)について、第1の共振モードに由来して、点(−0.3,−0.3)付近において軌跡が点(−1,0)に近づいていることが分かる。これに対して、フィードバック制御系(MultiFS-SRC)については、第1の共振モードも不可観測化されているため、軌跡は点(−1,0)に近づかず、安定余裕が確保されている。
【0133】
従って、フィードバック制御系(MultiFS-SRC)を適用することで、複数の共振モードを不可観測化し、より高い安定性が得られることが実証された。
【0134】
以上説明したように、本実施形態のSIMO系のフィードバック制御系(MultiFS-SRC)では、干渉計18X(第1計測器)と干渉計18X
1(第2計測器)の計測結果(X
2,X
1)と複数組(N(≧2)組)の伝達関数(α
n,β
n(n=1〜N))とを用いて複数の合成量(X
cn=α
nX
2+β
nX
1(n=1〜N))を求め、それら複数の合成量と、干渉計18X(第1計測器)の計測結果(X
2)と、をフィルタ処理して合成制御量X
mix=F
0(X
2)+Σ
n=1〜NF
n(α
nX
2+β
nX
1)が求められる。ここで、複数の共振モードのそれぞれが存在する周波数帯域毎に分離して、それぞれの共振モードに注目して対応する比例器52
n1,52
n2(n=1〜N)を個別に設計(比例ゲインβ
n,α
nを決定)する。それにより、複数の共振モードを不可観測化し、より安定性の高いプレートステージPSTの駆動を制御する駆動システムが得られる。
【0135】
なお、上記第1及び第2の実施形態では、プレート干渉計システム18の干渉計18X(第1計測器)及び干渉計18X
1(第2計測器)を用いて、それぞれ、プレートステージPSTの第1部分(プレートテーブルPTB)の位置(第1の制御量X
2)及び第2部分(キャリッジ30)の位置(第2の制御量X
1)を計測する構成を採用した。これに代えて、例えば、第1計測器は、第2部分(キャリッジ30)の位置を基準に第1部分(プレートテーブルPTB)の位置を計測する構成を採用してもよい。逆に、第2計測器は、第1部分(プレートテーブルPTB)の位置を基準に第2部分(キャリッジ30)の位置を計測する構成を採用してもよい。すなわち、第1及び第2計測器の一方は、プレートステージPSTの第1部分(プレートテーブルPTB)と第2部分(キャリッジ30)との間の相対位置を計測する構成を採用してもよい。係る場合、その一方の計測器として、干渉計に限らず、例えば、プレートテーブルPTBとキャリッジ30との一方に設けられたヘッドを用いて他方に設けられたスケールに計測光を照射し、その戻り光を受光するエンコーダを用いることも可能である。
【0136】
また、プレート干渉計システム18の構成は、上記の構成に限らず、目的に応じて、適宜、さらに干渉計を追加した構成を採用することができる。また、プレート干渉計システム18に代えて、あるいはプレート干渉計システム18とともにエンコーダ(又は複数のエンコーダから構成されるエンコーダシステム)を用いても良い。
【0137】
なお、上記各実施形態は、サイズ(長辺又は直径)が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。
【0138】
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F
2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0139】
また、上記実施形態では、投影光学系PLが、複数本の光学系を備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学系の数はこれに限らず、1つ以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、例えばオフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。また、上記実施形態では投影光学系PLとして、投影倍率が等倍系のものを用いる場合について説明したが、これに限らず、投影光学系は拡大系及び縮小系のいずれでも良い。
【0140】
また、上記各実施形態(のステージ駆動システム)は、一括露光型又はスキャニング・ステッパなどの走査型露光装置、及びステッパなどの静止型露光装置のいずれにも適用することができる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の投影露光装置にも上記各実施形態は適用することができる。また、上記各実施形態は、投影光学系を用いない、プロキシミティ方式の露光装置にも適用することができるし、光学系と液体とを介して基板を露光する液浸型露光装置にも適用することができる。この他、上記各実施形態は、2つのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回のスキャン露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置(米国特許第6,611,316号明細書)などにも適用できる。
【0141】
また、露光装置の用途としては、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、例えば半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記各実施形態を適用できる。なお、露光対象となる物体はガラスプレートに限られるものでなく、例えばウエハ、セラミック基板、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。
【0142】
液晶表示素子(あるいは半導体素子)などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたマスク(あるいはレチクル)を製作するステップ、ガラスプレート(あるいはウエハ)を製作するステップ、上述した各実施形態の露光装置、及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをガラスプレートに転写するリソグラフィステップ、露光されたガラスプレートを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ガラスプレート上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【0143】
なお、これまでの説明で引用した露光装置などに関する全ての公報及び米国特許明細書の開示を援用して本明細書の記載の一部とする。