特許第6032647号(P6032647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032647
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】可撓翼および船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/38 20060101AFI20161121BHJP
   B63H 9/06 20060101ALI20161121BHJP
   B64C 3/48 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B63H25/38 Z
   B63H9/06 A
   B64C3/48
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-26866(P2013-26866)
(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-156159(P2014-156159A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2016年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】高川 真一
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第3836099(US,A)
【文献】 特公昭45−023780(JP,B1)
【文献】 特開2012−176727(JP,A)
【文献】 特開2011−255892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H,B64C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
nを4以上の正数とした場合に、翼の先端から後端に向けて、第1、第2、…、第(n−1)、第nの翼片に分割された可撓翼であって、
各翼片は、隣り合う翼片に対して、回転部を中心として回転可能に支持されると共に、
第1ないし第(n−2)の翼片には、翼の一側部に第1の連結部が設けられ、
第3ないし第nの翼片には、翼の他側部に第2の連結部が設けられ、
前記第1、…、第(n−2)の各翼片の前記第1の連結部は、前記隣り合う翼片を挟んで反対側に配置された第3、…、第nの翼片の前記第2の連結部に、連結部材で連結された、
ことを特徴とする可撓翼。
【請求項2】
翼の一側面と他側面とが対称の形状に形成された対称翼により構成されたことを特徴とする請求項1に記載の可撓翼。
【請求項3】
請求項1または2に記載の可撓翼により構成された舵であって、前記可撓翼の複数の翼片の中の1つの翼片が、船体から延びる軸に支持され、前記軸を回転させることで、船体の移動方向を制御する前記舵、
を備えたことを特徴とする船舶。
【請求項4】
請求項1または2に記載の可撓翼により構成された帆であって、前記可撓翼の複数の翼片の中の1つの翼片が、船体から延びる回転軸に支持された前記帆、
を備えたことを特徴とする船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の翼片が移動可能に連結されて全体として可撓な可撓翼および前記可撓翼を備えた船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶や航空機等で使用される翼において、翼の形状を変化させる技術として、下記の特許文献1〜3に記載の技術が従来公知である。
【0003】
特許文献1(特開2007−326502号公報)には、船尾の推進プロペラ(1)の後方に、左右一対のホーン(5,6)が固定支持されている。特許文献1に記載の構成では、各ホーン(5,6)には、舵ブレード(2,3)が舵軸(7,8)を中心として回転可能に支持されており、前後方向の中央部において、舵軸(7,8)を中心として、舵ブレード(2,3)を、船の進行方向に対して、最大で90°回転させることが可能な構成が記載されている。なお、前記ホーン(5,6)と舵ブレード(2,3)が流れに沿って配置された状態では、全体として翼型状に構成されている。
【0004】
特許文献2(登録実用新案第3003037号公報)には、舵軸(16)に対して回転可能に支持された主舵板(10)の後端部に、ヒンジ軸(12)を介して、フラップ(14)が回転可能に支持された構成が記載されている。
特許文献3(特開平6−183395号公報)には、船底(4)に、主舵軸(6)を介して、主舵板(12)が回転可能に支持されると共に、主舵板(12)に固定された固定フレーム(30)を介して、フラップ(16)が回転可能に支持されている。すなわち、特許文献3に記載の技術では、主舵軸(6)回りの主舵板(12)の回転と、主舵板(12)および固定フレーム(30)に対するフラップ(16)の回転とにより、航行する方向を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−326502号公報(図1図4
【特許文献2】登録実用新案第3003037号公報(図1図5
【特許文献3】特開平6−183395号公報(「0015」〜「0021」、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(従来技術の問題点)
特許文献1〜3に記載の技術では、翼型の舵を前後に2分割して、後部を回転させることで、キャンバーラインを可変にして、迎え角を変化させている。特許文献1〜3に記載の技術では、迎え角を小さくすることで、流体に対する抵抗を小さくしたり、迎え角を大きくすることで、揚力や抵抗を大きくしている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載の技術のような可変キャンバーライン構造では、翼の一部分のみが変形する構成であり、迎え角を大きくしようとすると、後部の回転角度を大きくする必要がある。したがって、制御する必要のある回転量が90°まで大きくする必要がある。
回転部分で急激な角度変化が発生し、大きな負荷がかかりやすく、強度を高めておく必要もある。
仮に、特許文献1〜3に記載の技術において、2分割の構成ではなく、3つ以上に分割して、各分割部分を少しずつ回転させることで、全体としての迎え角を大きくすることも考えられる。しかし、この構成では、各回転部分にそれぞれアクチュエータを装備する必要があり、多数のアクチュエータが必要となって、構成の複雑化や高コスト化を招く問題がある。
【0007】
本発明は、簡素な構成で大きな迎え角を実現可能な翼を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の可撓翼は、
nを4以上の正数とした場合に、翼の先端から後端に向けて、第1、第2、…、第(n−1)、第nの翼片に分割された可撓翼であって、
各翼片は、隣り合う翼片に対して、回転部を中心として回転可能に支持されると共に、
第1ないし第(n−2)の翼片には、翼の一側部に第1の連結部が設けられ、
第3ないし第nの翼片には、翼の他側部に第2の連結部が設けられ、
前記第1、…、第(n−2)の各翼片の前記第1の連結部は、前記隣り合う翼片を挟んで反対側に配置された第3、…、第nの翼片の前記第2の連結部に、連結部材で連結された、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の可撓翼において、
翼の一側面と他側面とが対称の形状に形成された対称翼により構成されたことを特徴とする。
【0010】
前記技術的課題を解決するために、請求項3に記載の発明の船舶は、
請求項1または2に記載の可撓翼により構成された舵であって、前記可撓翼の複数の翼片の中の1つの翼片が、船体から延びる軸に支持され、前記軸を回転させることで、船体の移動方向を制御する前記舵、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
前記技術的課題を解決するために、請求項4に記載の発明の船舶は、
請求項1または2に記載の可撓翼により構成された帆であって、前記可撓翼の複数の翼片の中の1つの翼片が、船体から延びる回転軸に支持された前記帆、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、3、4に記載の発明によれば、本発明の構成を有しない場合に比べて、簡素な構成で大きな迎え角を実現可能な翼を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、一側面側と他側面側のどちら側に撓んでも同様の機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の実施例1の可撓翼を有する船舶の説明図である。
図2図2は実施例1の可撓翼の説明図であり、図2A図1の要部拡大図、図2B図2AのIIB−IIB線断面図である。
図3図3は実施例1の舵が右方に傾斜された状態の説明図であり、図3Aは傾斜の際に撓まなかった場合の説明図、図3Bは傾斜時に撓んだ状態の説明図である。
図4図4は実施例1の舵が左方に傾斜された状態の説明図であり、図4Aは傾斜の際に撓まなかった場合の説明図、図4Bは傾斜時に撓んだ状態の説明図である。
図5図5は実施例2の可撓翼の説明図であり、図5Aは迎え角が0°の状態の説明図、図5B図5Aに示す状態から翼の先端側が右方になびいた状態の説明図、図5C図5Aに示す状態から翼の先端側が左方になびいた状態の説明図である。
図6図6は実施例3の船舶の説明図である。
図7図7は実施例4の魚型ロボットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例である実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の実施例1の可撓翼を有する船舶の説明図である。
図1において、本発明の実施例1の船舶1では、船尾部2に、推進装置の一例としてのプロペラ3が配置されている。プロペラ3の後方には、船尾舵4が配置されている。実施例1の船尾舵4は、船尾船底部6に対して、舵軸7により回転可能に支持されている。
なお、前記舵軸7は、図示しないアクチュエータにより、船舶1の針路に応じて、回転制御される。
【0016】
図2は実施例1の可撓翼の説明図であり、図2A図1の要部拡大図、図2B図2AのIIB−IIB線断面図である。
図1図2Aにおいて、実施例1の船尾舵4は、平板状の上下一対の上板11および下板12を有する。上板11および下板12は、舵軸7に対して固定支持されている。上板11と下板12との間には、可撓翼の一例としての翼型部13が支持されている。
なお、実施例1の翼型部13は、対称翼形状に形成されている。すなわち、翼の一側面の一例としての右側面13aと、他側面の一例としての左側面13bとが、中心線(キャンバーライン)13cに対して、対称の形状に形成されている。
実施例1の翼型部13は、複数の翼片14a〜14fに分割されている。実施例1では、翼の先端から後端に向けて、第1翼片14a、第2翼片14b、第3翼片14c、第4翼片14d、第5翼片14e、第6翼片14fの6つの翼片に分割されている、
【0017】
図2Bにおいて、第1の翼片14aは、キャンバーライン13cに沿って延びる板状の第1の主フレーム21aを有する。第1の主フレーム21aの後端部には、右後方に向けて延びる第1の右フレーム22aが一体的に形成されている。実施例1の第1の右フレーム22aの右端部には、第1の連結部の一例としての右連結部23aが形成されている。第1の主フレーム21aと第1の右フレーム22aの外端には、翼型部13の外表面の一部を構成する第1のカバー26aが固定支持されている。第1のカバー26aは、翼型部13の外形形状に応じた形状に形成されている。
【0018】
第2の翼片14bは、第1の主フレーム21aと同様に、キャンバーライン13cに沿って延びる板状の第2の主フレーム21bを有する。実施例1の翼型部13では、第2の主フレーム21bに舵軸7が固定支持されている。第2の主フレーム21bの後端部には、第1の右フレーム22aと同様に構成された第2の右フレーム22bが形成されている。第2の右フレーム22bの右端部には、第1の連結部の一例としての右連結部23bが形成されている。第2の主フレーム21bの前端部には、左前方に延びる第2の左フレーム24bが一体的に形成されている。第2の右フレーム22bおよび第2の左フレーム24bの外端には、翼型部13の外表面の一部を構成する第2のカバー26bが固定支持されている。前記第1の主フレーム21aの後端と、第2の主フレーム21bの前端との間は、回転部の一例としての第1のヒンジ27aにより回転可能に支持されている。
【0019】
第3の翼片14cは、各主フレーム21a,21bと同様に、キャンバーライン13cに沿って延びる板状の第3の主フレーム21cを有する。第3の主フレーム21cの前後両端部には、第2の右フレーム22b、第2の左フレーム24bと同様に構成された第3の右フレーム22cおよび第3の左フレーム24cが形成されている。第3の右フレーム22cの右端部には、第1の連結部の一例としての右連結部23cが形成されている。第3の左フレーム24cの左端部には、第2の連結部の一例としての左連結部25cが形成されている。第3の右フレーム22cおよび第3の左フレーム24cの外端には、翼型部13の外表面の一部を構成する第3のカバー26cが固定支持されている。前記第2の主フレーム21bの後端と、第3の主フレーム21cの前端との間は、回転部の一例としての第2のヒンジ27bにより回転可能に支持されている。
また、第1の右フレーム22aの右連結部23aと、第3の左フレーム24cの左連結部25cとの間は、連結部材の一例としての第1のロッド28aで連結されている。第1のロッド28aの両端部は、各連結部23a,25cに対して回転可能に連結されている。また、図2に示す迎え角が0°の状態において、第1のロッド28aと、各フレーム22a、24cとは、成す角が直角(90°)に設定されている。なお、第1のロッド28aは、第2の主フレーム21bに対して、上下方向で異なる位置に配置されている。
【0020】
第4の翼片14dは、各主フレーム21a〜21cと同様に、キャンバーライン13cに沿って延びる板状の第4の主フレーム21dを有する。第4の主フレーム21dの前後両端部には、各右フレーム22b,22cや左フレーム24b,24cと同様に構成された第4の右フレーム22dおよび第4の左フレーム24dが形成されている。第4の右フレーム22dの右端部には、第1の連結部の一例としての右連結部23dが形成されている。第4の左フレーム24dの左端部には、第2の連結部の一例としての左連結部25dが形成されている。第4の右フレーム22dおよび第4の左フレーム24dの外端には、翼型部13の外表面の一部を構成する第4のカバー26dが固定支持されている。前記第3の主フレーム21cの後端と、第4の主フレーム21dの前端との間は、回転部の一例としての第3のヒンジ27cにより回転可能に支持されている。
また、第2の右フレーム22bの右連結部23bと、第4の左フレーム24dの左連結部25dとの間は、連結部材の一例としての第2のロッド28bで連結されている。第2のロッド28bの両端部は、各連結部23b,25dに対して回転可能に連結されている。また、図2に示す迎え角が0°の状態において、第2のロッド28bと、各フレーム22b,24dとは、成す角が直角(90°)に設定されている。
【0021】
第5の翼片14eは、各主フレーム21a〜21dと同様に、キャンバーライン13cに沿って延びる板状の第5の主フレーム21eを有する。第5の主フレーム21eの前後両端部には、各右フレーム22b〜22dや左フレーム24b〜24dと同様に構成された第5の右フレーム22eおよび第5の左フレーム24eが形成されている。第5の左フレーム24eの左端部には、第2の連結部の一例としての左連結部25eが形成されている。第5の右フレーム22eおよび第5の左フレーム24eの外端には、翼型部13の外表面の一部を構成する第5のカバー26eが固定支持されている。前記第4の主フレーム21dの後端と、第5の主フレーム21eの前端との間は、回転部の一例としての第4のヒンジ27dにより回転可能に支持されている。
また、第3の右フレーム22cの右連結部23cと、第5の左フレーム24eの左連結部25eとの間は、連結部材の一例としての第3のロッド28cで連結されている。第3のロッド28cの両端部は、各連結部23c,25eに対して回転可能に連結されている。また、図2に示す迎え角が0°の状態において、第3のロッド28cと、各フレーム22c,24eとは、成す角が直角(90°)に設定されている。
【0022】
第6の翼片14fは、各主フレーム21a〜21eと同様に、キャンバーライン13cに沿って延びる板状の第6の主フレーム21fを有する。第6の主フレーム21fの前端部には、各左フレーム24b〜24eと同様に構成された第6の左フレーム24fが形成されている。第6の左フレーム24fの左端部には、第2の連結部の一例としての左連結部25fが形成されている。第6の主フレーム21fおよび第6の左フレーム24fの外端には、翼型部13の外表面の一部を構成する第6のカバー26fが固定支持されている。前記第5の主フレーム21eの後端と、第6の主フレーム21fの前端との間は、回転部の一例としての第5のヒンジ27eにより回転可能に支持されている。
また、第4の右フレーム22dの右連結部23dと、第6の左フレーム24fの左連結部25fとの間は、連結部材の一例としての第4のロッド28dで連結されている。第4のロッド28dの両端部は、各連結部23d,25fに対して回転可能に連結されている。また、図2に示す迎え角が0°の状態において、第4のロッド28dと、各フレーム22d,24fとは、成す角が直角(90°)に設定されている。
【0023】
(実施例1の作用)
図3は実施例1の舵が右方に傾斜された状態の説明図であり、図3Aは傾斜の際に撓まなかった場合の説明図、図3Bは傾斜時に撓んだ状態の説明図である。
前記構成を備えた実施例1の船舶1では、船舶1の針路に応じて、アクチュエータが作動して、舵軸7が回転し、船尾舵4が回転する。
図3Aにおいて、図2に示す状態から船尾舵4の船首側が右舷方向に傾斜した場合、プロペラ3からの流水を受けて、図3Aの矢印Y1に示すように、第1の翼片14aが、第1のヒンジ27aを中心として、第2の翼片14bに対して右舷方向に回転する。第1の翼片14aが右方に回転すると、第1の翼片14aの右連結部23aに連結された第1のロッド28aが、図3Aの矢印Y2に示すように、第3の翼片14cの左連結部25cを斜め後方に押す方向に移動する。したがって、第3の翼片14cの左連結部25cが第1のロッド28aから力を受けて、図3Aの矢印Y3に示すように、第2のヒンジ27bを中心として、第3の翼片14cが右舷側に回転する。
【0024】
このとき、第3の翼片14cに連結された第4の翼片14d〜第6の翼片14fは、第3の翼片14cの回転に伴って、第3の翼片14cと共に一体的に右舷側に回転しようとする。ここで、第4の翼片14dは、左連結部25dが、第2のロッド28bを介して第2の翼片14bの右連結部23bに連結されている。そして、第2の翼片14bは、舵軸7に固定されており回転しない。
よって、第4の翼片14dは、第2のヒンジ27bを中心とする第3の翼片14cの回転に伴って、回転しようとするが、第2のロッド28bで、第4の翼片14dの回転が制限を受ける。したがって、第4の翼片14dは、第3の翼片14cとは一体的に回転できず、第3の翼片14cに対して、第3のヒンジ27cを中心として、相対的に回転する。このとき、第2のロッド28bが伸縮しないため、第4の翼片14dは、図3Aの矢印Y4に示すように、右舷方向に回転する。
【0025】
同様にして、第4の翼片14dが、第3のヒンジ27cを中心として回転する際に、第4の翼片14dに連結された第5の翼片14e、第6の翼片14fも、第4の翼片14dと一体的に回転しようとするが、第5の翼片14eが、第3のロッド28cにより回転の制限を受ける。したがって、第5の翼片14eが、第4の翼片14dに対して、第4のヒンジ27dを中心として相対的に回転する。よって、図3Aの矢印Y5に示すように、第5の翼片14eは右舷方向に回転する。
第6の翼片14fも、第4の翼片14d、第5の翼片14eと同様にして、第5の翼片14eに対して、第5のヒンジ27eを中心として相対的に回転する。よって、図3Aの矢印Y6に示すように、第6の翼片14fは右舷方向に回転する。
したがって、船尾舵4は、最終的には、図3Bに示すように、大きな迎え角を有する状態に変形する。図3Bに示すように、変形後の船尾舵4は、流れに対してなびいて撓んだ形に変形している。
【0026】
図4は実施例1の舵が左方に傾斜された状態の説明図であり、図4Aは傾斜の際に撓まなかった場合の説明図、図4Bは傾斜時に撓んだ状態の説明図である。
図4において、船尾舵4が、図3の場合とは逆方向に傾斜した場合には、矢印Y1′〜Y6′に示すように、同様のメカニズムで、逆方向になびく形に変形する。
したがって、実施例1の船尾舵4は、舵軸7の回転角度よりも大きな迎え角を有する翼型形状となり、図3B図4Bの矢印Y7、Y7′に示す方向に大きな揚力を発生させることができる。よって、変形しない舵を有する構成に比べて、舵軸7の回転角度が少なくても、大きな迎え角を発生させることができ、大きく針路を変更することができる。
【0027】
特に、実施例1の船尾舵4は、舵軸7を回転させて船尾舵4を流れに対して傾斜させるだけで、ロッド28a〜28dを介した連動により、全体形状が流れになびいた状態に変形する。すなわち、翼片14a〜14fを互いに回転させるためのアクチュエータ等の駆動部材を設けることなく、全体形状を変形させることができる。よって、駆動部材を設けず、翼片14a〜14fを1つ飛びにロッド28a〜28dで連結するという簡素な構成で、実施例1の船尾舵4は、故障等の心配も少なく、信頼性の高い変形可能な構造となっている。
また、実施例1の船尾舵4は、対称翼形状に形成されている。したがって、図3図4に示すように、どちらの傾斜にも対応可能である。
【0028】
さらに、実施例1の船尾舵4では、迎え角が0°の場合に、各ロッド28と各フレーム22,24との成す角が90°に設定されている。したがって、図3に示すように右方になびく場合と、図4に示すように左方になびく場合とで、左右対称に移動可能である。仮に、各ロッド28と各フレーム22,24とが成す角が90°でない場合、舵軸7を左右で同じ角度回転させても、翼型部13の動き(湾曲の程度)が左右で異なる。しかしながら、実施例1では、各ロッド28と各フレーム22,24とが成す角が90°に設定されており、舵軸7の回転角度が左右で同じ場合は、翼型部13の動きも左右で同じ動きとなり、制御が容易になっている。
なお、翼型の変形の程度は、ロッド28a〜28dの長さや、連結部23a〜23d、25c〜25fの位置、主フレーム24a〜24fの長さ、翼片14a〜14fの数等を調整することで、任意に変更可能である。よって、翼片14a〜14fの数も任意に変更可能であるが、本発明の構成上、ロッド28を介したリンク機構が成立するには、少なくとも4つ以上は必要であると考えられる。
【実施例2】
【0029】
図5は実施例2の可撓翼の説明図であり、図5Aは迎え角が0°の状態の説明図、図5B図5Aに示す状態から翼の先端側が右方になびいた状態の説明図、図5C図5Aに示す状態から翼の先端側が左方になびいた状態の説明図である。
次に本発明の実施例2の説明をするが、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例は下記の点で、前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成される。
図5において、実施例2の船尾舵4の翼型部13では、第1の翼片14aの第1の主フレーム21aに、左方に延びる駆動連結部31が形成されている。駆動連結部31は、第2の翼片14bの第2の左フレーム24bに対向して配置されている。駆動連結部31と、第2の左フレーム24bとの間には、駆動源の一例としての圧電素子32が配置されている。圧電素子32は、電圧の印加に応じて、伸縮、傾斜可能に構成されている。
【0030】
(実施例2の作用)
前記構成を備えた実施例2の船尾舵4では、圧電素子32への電圧の印加を制御して、圧電素子32を伸縮させることが可能である。図5Aに示す状態から圧電素子32が伸びると、第1の翼片14aの駆動連結部31が押されて、第1の翼片14aが第1のヒンジ27aを中心として、右方に回転する。したがって、実施例1の図3の場合と同様にして、図5Bに示す形態に翼型部13が変形する。また、図5Aに示す状態から圧電素子32が縮むと、第1の翼片14aの駆動連結部31が第2の左フレーム24b側に引っ張られて、第1の翼片14aが第1のヒンジ27aを中心として、左方に回転する。したがって、実施例1の図4の場合と同様にして、図5Cに示す形態に翼型部13が変形する。
【0031】
よって、実施例2の船尾舵4では、アクチュエータとしての圧電素子32を制御することで、翼型部13を変形させることができる。特に、圧電素子32の伸縮量を制御することで、翼型部13の撓んだ形状の撓み具合を、任意の撓み具合に制御することができる。すなわち、大きな揚力が必要な場合は、撓み量を大きくして迎え角を大きくすることも可能であり、小さな揚力が必要な場合を撓み量を小さくして迎え角を小さくすることも可能である。
したがって、実施例2の船尾舵4では、各ヒンジにアクチュエータやモータ等を配置する従来の構成に比べて、1つの圧電素子で、翼型部13の全体の形状を変形可能である。よって、従来の構成に比べて、簡素な構成で、任意の迎え角とすることができる。
【0032】
なお、実施例2では、アクチュエータとして圧電素子32を例示したが、これに限定されない。例えば、ボールネジ等の伸縮可能な部材や、右回転用の形状記憶合金と左回転用の形状記憶合金と熱源といった形態、バネとソレノイドの組み合わせ等、第2の翼片14bに対して第1の翼片14aを相対移動可能な任意の構成を採用可能である。また、アクチュエータを設置する場所は、第1の翼片14aと第2の翼片14bとの間に限定されず、任意の場所とすることが可能である。どの場所に配置しても、ロッド28のリンクを介して、任意の形態に変形可能である。
【実施例3】
【0033】
図6は実施例3の船舶の説明図である。
次に本発明の実施例3の説明をするが、この実施例3の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例は下記の点で、前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成される。
図6において、実施例3の船舶41では、硬帆42として、船尾舵4の翼型部13と同様の構成を採用している。
【0034】
(実施例3の作用)
前記構成を備えた実施例3の船舶41では、硬帆42を、回転軸の位置例としてのマスト43を中心として回転させることで、風に対してなびくように、硬帆42が変形可能である。よって、硬帆42をマスト43に対して回転させることで、簡素な構成で大きな揚力(推進力)を得ることができる。
なお、実施例3の硬帆42の構成において、実施例2の構成を適用することも可能である。
【実施例4】
【0035】
図7は実施例4の魚型ロボットの説明図である。
次に本発明の実施例4の説明をするが、この実施例4の説明において、前記実施例1、2の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例は下記の点で、前記実施例1、2と相違しているが、他の点では前記実施例1、2と同様に構成される。
実施例4の魚型ロボット51では、魚型ロボット51の本体部52は、外形が魚の外形を模した形状に形成され、断面形状が、図7に示すように、実施例2の船尾舵4の翼型部13と同様に構成されている。そして、本体部52の外表面には、実際の魚に応じて、尾びれ53や胸びれ54が支持されている。
なお、実施例2と異なり、舵軸7は存在せず、圧電素子32には、無線通信により伸縮の制御信号が入力される。実施例4の魚型ロボット51では、作動時には、圧電素子32が周期的に伸縮するように制御される。
【0036】
(実施例4の作用)
前記構成を備えた実施例4の魚型ロボット51では、周期的に圧電素子32が伸縮した場合、図5B図5Cに示す状態を繰り返す。したがって、魚型ロボット51の尾びれ53側が、先端部、すなわち、魚の頭部に相当する部位に対して、相対的に左右に振動する。よって、実施例4の魚型ロボット51は、体をくねらせるように前方に向けて泳ぐように進むことが可能である。
【0037】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H03)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、左右どちらに撓んだ形状にも対応可能な対称翼の形状とすることが好ましいが、撓む方向が予め決まっている場合等の場合には、非対称翼の形態とすることも可能である。
【0038】
(H02)前記実施例において、可撓翼として、船尾舵4や硬帆42、魚型ロボット51に適用する場合を例示したが、これに限定されず、翼型を使用可能な任意の部位、部材、装置に適用可能である。例えば、航空機の翼に適用したり、自動車の空力パーツ、地上における蛇型ロボット等、任意の構成に適用可能である。
(H03)前記実施例において、ロッド28とフレーム22,24との成す角は90°であることが望ましいが、これに限定されず、90°以外の角度とすることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1,41…船舶、
4…舵、
7…軸、
13…可撓翼、
14a〜14f…翼片、
22a〜22d…第1の連結部、
24c〜24f…第2の連結部、
27a〜27e…回転部、
28a〜28d…連結部材、
42…帆、
43…回転軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7