特許第6033095号(P6033095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033095
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】ファイル伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/2383 20110101AFI20161121BHJP
   H04N 21/24 20110101ALI20161121BHJP
【FI】
   H04N21/2383
   H04N21/24
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-5128(P2013-5128)
(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公開番号】特開2014-138231(P2014-138231A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月1日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】小田 周平
(72)【発明者】
【氏名】小山 智史
(72)【発明者】
【氏名】黒住 正顕
(72)【発明者】
【氏名】青木 勝典
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 洋介
【審査官】 岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−252370(JP,A)
【文献】 特開2003−069699(JP,A)
【文献】 特開2005−295003(JP,A)
【文献】 特開平08−320361(JP,A)
【文献】 特開2004−153620(JP,A)
【文献】 特開2007−266954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/2383
H04N 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエンコードレートにて符号化した映像データのファイルが保存されたファイル保存部を備え、外部の電源から電力の供給を受けて動作し、前記ファイル保存部から前記ファイルを読み出して伝送を行うファイル伝送装置において、
前記ファイル保存部から読み出したファイルの映像データに対し、所定の変調方式で変調する変調部と、
前記変調部により変調された映像データを、所定の送信電力にて送信する送信部と、
電力を蓄積する蓄電部、及び前記外部の電源から電力が供給されていない受電断を検知する受電断検知部を有する電力供給部と、
前記受電断検知部により受電断が検知されたときに、前記蓄電部の残電池容量を用いて、当該ファイル伝送装置の消費電力、送信レート、変調方式及び送信電力からなる伝送条件毎に、当該ファイル伝送装置により送信可能なデータ量を求め、前記伝送条件毎の送信可能なデータ量に基づいて伝送条件を特定し、前記特定した伝送条件における変調方式及び送信電力を、前記受電断時の変調方式及び送信電力にそれぞれ決定し、前記ファイル保存部から所定時間位置の映像データのファイルを読み出し、前記決定した変調方式にて前記映像データを変調し、前記決定した送信電力にて送信するように、前記ファイル保存部、変調部及び送信部をそれぞれ制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするファイル伝送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のファイル伝送装置において、
前記電力供給部は、さらに、前記蓄電部の消費電力を計測する消費電力計測部を備え、前記蓄電部の最大容量から、前記消費電力計測部により計測された消費電力を減算して前記蓄電部の残電池容量を求める、ことを特徴とするファイル伝送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のファイル伝送装置において、
さらに、前記伝送条件毎に、消費電力、送信レート、変調方式及び送信電力が対応して格納されたテーブルを備え、
前記制御部は、前記受電断検知部により受電断が検知されたときに、前記テーブルに格納された伝送条件毎に、前記消費電力及び送信レート並びに前記蓄電部の残電池容量に基づいて、前記送信可能なデータ量を求め、前記送信可能なデータ量が最大となる前記伝送条件の変調方式及び送信電力を、前記受電断時の変調方式及び送信電力にそれぞれ決定し、前記ファイル保存部から所定時間位置の映像データのファイルを読み出し、前記決定した変調方式にて変調し、前記決定した送信電力にて送信するように、前記ファイル保存部、変調部及び送信部をそれぞれ制御する、ことを特徴とするファイル伝送装置。
【請求項4】
請求項3に記載のファイル伝送装置において、
前記制御部は、前記送信可能なデータ量が最大となる伝送条件が複数存在する場合、前記複数の伝送条件における消費電力が最小となる伝送条件の変調方式及び送信電力を決定し、または、前記複数の伝送条件における送信レートが最大となる伝送条件の変調方式及び送信電力を決定する、ことを特徴とするファイル伝送装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のファイル伝送装置において、
さらに、前記伝送条件毎に、消費電力、送信レート、変調方式及び送信電力が対応して格納されたテーブルを備え、
前記ファイル保存部には、複数のエンコードレートで符号化されたそれぞれの映像データのファイルが保存されており、
前記制御部は、前記受電断検知部により受電断が検知されたときに、
前記ファイル保存部に保存された映像データのファイル毎に、前記受電断時に伝送される映像データのファイルの時間位置を示す指定期間におけるデータ量をエンコードデータ量として求め、
前記テーブルに格納された伝送条件毎に、前記消費電力及び送信レート並びに前記蓄電部の残電池容量に基づいて、前記送信可能なデータ量を求め、
前記送信可能なデータ量よりも小さい前記エンコードデータ量のうち、最大のエンコードデータ量を特定し、
前記特定した最大のエンコードデータ量に対応する前記送信可能なデータ量の前記伝送条件における変調方式及び送信電力を、前記受電断時の変調方式及び送信電力にそれぞれ決定し、前記ファイル保存部から前記最大のエンコードデータ量に対応する映像データのファイルについて前記指定期間の映像データのファイルを読み出し、前記決定した変調方式にて変調し、前記決定した送信電力にて送信するように、前記ファイル保存部、変調部及び送信部をそれぞれ制御する、ことを特徴とするファイル伝送装置。
【請求項6】
請求項5に記載のファイル伝送装置において、
前記制御部は、前記特定した最大のエンコードデータ量に対応する前記送信可能なデータ量の前記伝送条件が複数存在する場合、前記複数の伝送条件における消費電力が最小となる伝送条件の変調方式及び送信電力を、前記受電断時の変調方式及び送信電力にそれぞれ決定し、または、前記複数の伝送条件における送信レートが最大となる伝送条件の変調方式及び送信電力を、前記受電断時の変調方式及び送信電力にそれぞれ決定する、ことを特徴とするファイル伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電部を備えたファイル伝送装置に関し、特に、ファイル伝送装置の受電が断となった場合のファイル伝送方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像データのファイルを伝送するファイル伝送装置において、映像データを圧縮して有線または無線で送信することが一般的に行われている。データの圧縮率が高い場合、データ容量は小さくなるが、映像は低品質となる。一方、データの圧縮率が低い場合、データ容量は大きくなるが、映像は高品質となる。
【0003】
有線、無線に関わらず、送信するデータの容量が小さい場合は、伝送に必要となる消費電力は減少する。この場合、映像データのファイルを伝送するときは、短時間で伝送が終了する。
【0004】
無線伝送においては、電界強度が強く、より高いC/Nを確保することができる場合には、ファイル伝送装置は、一回の変調あたりの伝送レート(送信レート)が高い変調方式と誤り訂正方式との組み合わせにより、映像データのファイルを高速に伝送することができる。ただし、電界強度を強くするためには、送信電力を高くする必要があり、消費電力が増加する。
【0005】
一方、消費電力を抑えるために送信電力を低くすると、同じ伝送距離で考えた場合、効率が低い(送信レートが低い)変調方式と誤り訂正方式との組み合わせにより映像データのファイルを伝送することになり、送信するデータ容量は小さくなる。また、送信電力を低くした場合、同じ変調方式と誤り訂正方式との組み合わせを使用すると、伝送距離が短くなる。
【0006】
ここで、遠隔地からの映像伝送が求められるときの利用条件を考えた場合、一般に、遠隔地側の送信点は電力の供給環境が整っておらず、停電してしまう事態もあり得る。電力供給方法が太陽光、風力等の自然エネルギーに由来するものである場合は、気象条件によって供給可能な電力が変動する。このような供給電力の変動に対応するために、蓄電池を設置することが想定されるが、蓄電池の容量には限界がある。
【0007】
このように、安定した電力を確保することが困難な場合には、ファイル伝送装置は、必要とする映像データのファイルを伝送することができないことがあり得る。
【0008】
このような問題を解決するために、例えば、消費電力を最小限に抑え、可能な限り伝送を継続しようとする伝送方式が開示されている。具体的には、信号対雑音比に応じて符号化パラメータを選択することにより、送信電力レベルを最適化し、消費電力を最小にするものである(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−176303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の伝送方式は、単に、消費電力が最小となる伝送方法を制御するに過ぎないことから、安定した電力供給が得られない場合に、蓄電池の残電池容量を有効に活用し、かつ映像データのファイルを送受信するシステムの利用者の意図に沿った伝送を実現することができないという問題があった。このような場合、システムの利用者は、残電池容量の電力を利用して、例えば、大容量のファイルの伝送を実現させたり、必要とする高画質なファイルの伝送を実現させたりするという要望がある。
【0011】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、安定した電力供給が得られない場合、利用者の意図に沿った伝送を実現可能なファイル伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、請求項1のファイル伝送装置は、所定のエンコードレートにて符号化した映像データのファイルが保存されたファイル保存部を備え、外部の電源から電力の供給を受けて動作し、前記ファイル保存部から前記ファイルを読み出して伝送を行うファイル伝送装置において、前記ファイル保存部から読み出したファイルの映像データに対し、所定の変調方式で変調する変調部と、前記変調部により変調された映像データを、所定の送信電力にて送信する送信部と、電力を蓄積する蓄電部、及び前記外部の電源から電力が供給されていない受電断を検知する受電断検知部を有する電力供給部と、前記受電断検知部により受電断が検知されたときに、前記蓄電部の残電池容量を用いて、当該ファイル伝送装置の消費電力、送信レート、変調方式及び送信電力からなる伝送条件毎に、当該ファイル伝送装置により送信可能なデータ量を求め、前記伝送条件毎の送信可能なデータ量に基づいて伝送条件を特定し、前記特定した伝送条件における変調方式及び送信電力を、前記受電断時の変調方式及び送信電力にそれぞれ決定し、前記ファイル保存部から所定時間位置の映像データのファイルを読み出し、前記決定した変調方式にて前記映像データを変調し、前記決定した送信電力にて送信するように、前記ファイル保存部、変調部及び送信部をそれぞれ制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2のファイル伝送装置は、請求項1に記載のファイル伝送装置において、前記電力供給部が、さらに、前記蓄電部の消費電力を計測する消費電力計測部を備え、前記蓄電部の最大容量から、前記消費電力計測部により計測された消費電力を減算して前記蓄電部の残電池容量を求める、ことを特徴とする。
【0014】
また、請求項3のファイル伝送装置は、請求項1または2に記載のファイル伝送装置において、さらに、前記伝送条件毎に、消費電力、送信レート、変調方式及び送信電力が対応して格納されたテーブルを備え、前記制御部が、前記受電断検知部により受電断が検知されたときに、前記テーブルに格納された伝送条件毎に、前記消費電力及び送信レート並びに前記蓄電部の残電池容量に基づいて、前記送信可能なデータ量を求め、前記送信可能なデータ量が最大となる前記伝送条件の変調方式及び送信電力を、前記受電断時の変調方式及び送信電力にそれぞれ決定し、前記ファイル保存部から所定時間位置の映像データのファイルを読み出し、前記決定した変調方式にて変調し、前記決定した送信電力にて送信するように、前記ファイル保存部、変調部及び送信部をそれぞれ制御する、ことを特徴とする。
【0015】
また、請求項4のファイル伝送装置は、請求項3に記載のファイル伝送装置において、前記制御部が、前記送信可能なデータ量が最大となる伝送条件が複数存在する場合、前記複数の伝送条件における消費電力が最小となる伝送条件の変調方式及び送信電力を決定し、または、前記複数の伝送条件における送信レートが最大となる伝送条件の変調方式及び送信電力を決定する、ことを特徴とする。
【0016】
また、請求項5のファイル伝送装置は、請求項1または2に記載のファイル伝送装置において、さらに、前記伝送条件毎に、消費電力、送信レート、変調方式及び送信電力が対応して格納されたテーブルを備え、前記ファイル保存部には、複数のエンコードレートで符号化されたそれぞれの映像データのファイルが保存されており、前記制御部が、前記受電断検知部により受電断が検知されたときに、前記ファイル保存部に保存された映像データのファイル毎に、前記受電断時に伝送される映像データのファイルの時間位置を示す指定期間におけるデータ量をエンコードデータ量として求め、前記テーブルに格納された伝送条件毎に、前記消費電力及び送信レート並びに前記蓄電部の残電池容量に基づいて、前記送信可能なデータ量を求め、前記送信可能なデータ量よりも小さい前記エンコードデータ量のうち、最大のエンコードデータ量を特定し、前記特定した最大のエンコードデータ量に対応する前記送信可能なデータ量の前記伝送条件における変調方式及び送信電力を、前記受電断時の変調方式及び送信電力にそれぞれ決定し、前記ファイル保存部から前記最大のエンコードデータ量に対応する映像データのファイルについて前記指定期間の映像データのファイルを読み出し、前記決定した変調方式にて変調し、前記決定した送信電力にて送信するように、前記ファイル保存部、変調部及び送信部をそれぞれ制御する、ことを特徴とする。
【0017】
また、請求項6のファイル伝送装置は、請求項5に記載のファイル伝送装置において、前記制御部が、前記特定した最大のエンコードデータ量に対応する前記送信可能なデータ量の前記伝送条件が複数存在する場合、前記複数の伝送条件における消費電力が最小となる伝送条件の変調方式及び送信電力を、前記受電断時の変調方式及び送信電力にそれぞれ決定し、または、前記複数の伝送条件における送信レートが最大となる伝送条件の変調方式及び送信電力を、前記受電断時の変調方式及び送信電力にそれぞれ決定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、安定した電力供給が得られない場合、利用者の意図に沿った伝送を実現することができる。例えば、利用者の意図に沿うように、残電池容量の範囲内で、大容量のファイルを伝送することができ、また、高画質なファイルを伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態による送信装置及び受信装置を含む映像伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】実施例1による送信装置の構成を示すブロック図である。
図3】実施例1による送信レート制御部の処理を示すフローチャートである。
図4】テーブルの構成を示す図である。
図5】実施例2による送信装置の構成を示すブロック図である。
図6】実施例2による送信レート制御部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔システム〕
まず、本発明の実施形態による送信装置(ファイル伝送装置)及び受信装置を含む映像伝送システムについて説明する。図1は、映像伝送システムの概略構成を示すブロック図である。この映像伝送システムは、所定のエンコードレートにて符号化された映像データのファイルが記憶部に保存されており、その記憶部から映像データのファイルを読み出して変調等を行い送信する送信装置1と、送信装置1から映像データのファイルを受信して元の映像データに復号する受信装置6とを備えて構成される。以下に示す映像伝送システムは、無線伝送を想定して説明するが、いずれの実施例も有線伝送に置き換えることができる。また、この映像伝送システムによる伝送対象のデータは映像データであるが、映像データ以外の音声データ等の各種データにも適用がある。また、この映像伝送システムは、固定して設置された送信装置1及び固定して設置された受信装置6による固定送信及び受信システムだけでなく、移動可能な送信装置1及び受信装置6による移動体システムにも適用がある。
【0021】
無線伝送では、送信装置1と受信装置6との間の電波伝搬状況に応じて、所要C/Nを確保するための変調方式、送信電力及び送信レートが送信装置1により定められる。送信装置1は、エンコーダ2、ファイル保存部3、誤り訂正付加・変調部4及び送信部5等を備えている。エンコーダ2は、送信対象の映像データであるベースバンド映像信号及び音声信号を、所定のエンコードレートにて符号化して圧縮する。ファイル保存部3は、エンコーダ2により圧縮された映像データに時刻情報を付加しながら、ハードディスク等にファイルとして保存する。誤り訂正付加・変調部4は、ファイル保存部3に保存されたファイルを読み出し、読み出したファイルの映像データに対し必要に応じて誤り訂正符号を付加し、所定の変調方式にて変調する。送信部5は、誤り訂正付加・変調部4により誤り訂正符号が付加され変調された映像データを、所定の送信電力にて送信する。これにより、送信装置1から映像データのファイルが電波として送信される。
【0022】
受信装置6は、受信部7、復調・誤り訂正部8及びデコーダ9等を備えている。受信部7は、送信装置1から映像データのファイルの電波を受信する。復調・誤り訂正部8は、受信部7により受信された映像データを復調して誤り訂正を行う。デコーダ9は、復調・誤り訂正部8により復調され誤り訂正が行われた映像データの圧縮信号を復号する。これにより、受信装置6にて元の映像データのファイルが復元される。
【0023】
送信装置1の誤り訂正付加・変調部4における変調方式には、例えばPSK、QAM等が用いられ、1回の変調で送信するビット数が多い変調方式ほど、同じ周波数帯域内では、より高いビットレートでデータを送信することができ、送信レートを高くすることができる。
【0024】
現在一般に用いられているデジタル変調方式では、1回の変調で送信するビット数が1ビット増える毎に所要C/Nが約3dB増加し、約2倍の送信電力が必要となる。例えば、送信装置1が、変調方式をQPSK(2ビット)として変調を行って映像データのファイルを送信し、送信装置1と受信装置6との間の伝搬状況がちょうど所要C/Nを満たしている場合、変調方式を64QAM(6ビット)に変更すると、12dB(=16倍)の送信電力が必要となる。すなわち、変調方式の変更により、1回の変調で送信するビット数をnビット増加させて、同じ周波数帯域内で、より高いビットレートで送信するには、2倍の送信電力が必要となる。
【0025】
一般に、送信装置1は、その場所での受電が断となった場合に備え、一定容量の蓄電池を設置してそこから電力を供給できるようにすることが多い。しかし、蓄電池には容量の限界があることから、受電断の状態が継続すると、いずれ電池容量は枯渇し、送信装置1は映像データのファイルを送信することができなくなる。
【0026】
そこで、送信装置1において受電断となり、ファイル保存部3に保存された映像データのファイルを送信する場合、送信する映像データのファイル、映像伝送システムの形態、利用者の要望等に応じた利用者の意図に沿って、誤り訂正付加・変調部4の変調方式及び送信部5の送信電力を制御し、蓄電池の残電池容量を有効に利用できることが望ましい。
【0027】
以下に説明する実施例1は、受電断となった場合に、残電池容量から算出される送信可能なデータ量が最大になるように、変調方式及び送信電力を決定することで、大容量の映像データのファイルを伝送する例である。また、実施例2は、受電断となった場合に、複数のエンコードレートにて符号化され圧縮されたそれぞれの映像データのファイルのうち、当該ファイルのデータ量が、残電池容量から算出される送信可能なデータ量以下となり、かつ最も高いエンコードレートの映像データのファイルを選択するように、変調方式及び送信電力を決定することで、高画質な映像データのファイルを伝送する例である。
【0028】
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。実施例1は、前述のとおり、送信装置1において受電断となった場合に、残電池容量から算出される送信可能なデータ量が最大になるように、変調方式及び送信電力を決定することで、大容量の映像データのファイルを伝送する例である。つまり、実施例1の送信装置1は、限られた電力供給の範囲内で、可能な限り長時間の映像データのファイルを伝送する。
【0029】
図2は、実施例1による送信装置1の構成を示すブロック図である。この送信装置1−1は、エンコーダ2、ファイル保存部3−1、誤り訂正付加・変調部4、送信部5、電力供給部10及び送信レート制御部20−1を備えている。エンコーダ2、ファイル保存部3−1(ファイル保存部3)、誤り訂正付加・変調部4及び送信部5については図1にて既に説明済みであるから、ここでは説明を省略する。
【0030】
電力供給部10は、蓄電池である蓄電部11、受電断検知部12及び消費電力計測部13を備えている。電力供給部10は、蓄電部11において、通常時に、外部の電源から供給される電力を蓄えて充電しながら、エンコーダ2、ファイル保存部3−1、誤り訂正付加・変調部4及び送信部5等へ電力を供給する。受電断検知部12は、外部の電源から電力が供給されているか否かを監視し、電力が供給されていないと判定した場合、受電断を検知する。電力供給部10は、受電断検知部12が受電断を検知すると、受電断情報を送信レート制御部20−1に出力する。
【0031】
消費電力計測部13は、送信装置1−1全体がこれまでに蓄電部11から消費した電力を計測する。電力供給部10は、これまでに蓄電部11に蓄積した電力である最大容量の電力から、消費電力計測部13により計測された消費電力を減算し、蓄電部11の残電池容量を求め、残電池容量を送信レート制御部20−1に出力する。つまり、電力供給部10は、受電断検知部12が受電断を検知したときに受電断情報を送信レート制御部20−1に出力すると共に、残電池容量を送信レート制御部20−1に出力する。
【0032】
尚、電力供給部10は、残電池容量を求める代わりに、消費電力計測部13により計測された消費電力を送信レート制御部20−1に出力し、送信レート制御部20−1が、最大容量の電力から消費電力を減算して残電池容量を求めるようにしてもよい。
【0033】
ファイル保存部3−1は、エンコーダ2により符号化された映像データに時間情報を付加しながら、時間情報が付加された映像データをファイルとしてハードディスク等の記録媒体に保存する。これにより、ファイル保存部3−1には、例えば、現時点までに撮影された所定の映像データのファイルであって、エンコーダ2により複数のエンコードレートから予め選択された1つのエンコードレートにて符号化された映像データのファイルが、時間情報と共に保存される。そして、ファイル保存部3−1は、送信レート制御部20−1からの指示情報、及び記録媒体の保存された映像データに付加された時間情報に基づいて、利用者により指定された、または予め設定された時間位置以降の映像データのファイルを誤り訂正付加・変調部4に出力する。これにより、送信レート制御部20−1からの指示情報に従って、利用者により指定された、または予め設定された時間位置以降の映像データのファイルが、ファイル保存部3−1から誤り訂正付加・変調部4へ読み出される。
【0034】
送信レート制御部20−1は、外部の電源から電力の供給を受けて動作する通常時に、送信対象の映像データのファイルを特定してファイル保存部3−1から読み出すための指示情報をファイル保存部3−1に出力すると共に、所定の変調方式及び送信電力を誤り訂正付加・変調部4及び送信部5にそれぞれ出力することにより、ファイル保存部3−1、誤り訂正付加・変調部4及び送信部5を制御する。また、送信レート制御部20−1は、電力供給部10から受電断情報を入力すると、受電断時に、残電池容量により限られた電力供給の範囲内で大容量の映像データのファイルを伝送するように、利用者により指定された、または予め設定された映像データのファイルにおける所定時間位置以降の映像データを伝送するための指定期間を含む指示情報をファイル保存部3−1に出力すると共に、変調方式及び送信電力を決定し、これらを誤り訂正付加・変調部4及び送信部5にそれぞれ出力することにより、ファイル保存部3−1、誤り訂正付加・変調部4及び送信部5を制御する。
【0035】
図3は、実施例1による送信レート制御部20−1の処理を示すフローチャートである。送信レート制御部20−1は、電力供給部10から受電断情報を入力したか否かを判定し(ステップS301)、受電断情報を入力していないと判定した場合(ステップS301:N)、通常の処理を行い、所定の変調方式及び送信電力にて誤り訂正付加・変調部4及び送信部5を制御する(ステップS302)。これにより、誤り訂正付加・変調部4及び送信部5は、通常時の変調方式及び送信電力にて制御され、ファイル保存部3−1から読み出された映像データのファイルが、送信装置1−1から送信される。
【0036】
一方、送信レート制御部20−1は、ステップS301において、受電断情報を入力したと判定した場合(ステップS301:Y)、電力供給部10から残電池容量を入力し(ステップS303)、保持しているテーブルに格納された伝送条件毎に、テーブルから消費電力及び送信レートを読み出し、入力した残電池容量に対応する送信可能なデータ量(積算データ量)を以下の式により算出する(ステップS304)。
(数式1)
積算データ量=R×BL/P ・・・(1)
ここで、残電池容量をBL[Wh]、消費電力をP[W]、送信レートをR[bps]とする。
【0037】
図4は、送信レート制御部20−1に保持しているテーブルの構成を示す図である。このテーブルには、伝送条件毎に、パラメータ(変調方式、送信電力)、消費電力P及び送信レートRが格納されている。例えば、伝送条件0として、パラメータ(変調方式、送信電力)=パラメータセットA、消費電力P=10W、送信レートR=1Mbpsが格納され、伝送条件1,2等についても、対応するそれぞれのパラメータ、消費電力P及び送信レートRが格納されている。送信レートRは、消費電力P及びパラメータに対応する送信レートを示す。例えば伝送条件0では、送信レートR=1Mbpsは、消費電力Pが10Wであってパラメータ(変調方式、送信電力)がパラメータセットAのときに実現する送信レートを示す。
【0038】
ここで、パラメータ(変調方式、送信電力)に対応する(消費電力P、送信レートR)の組み合わせは、送信装置1−1と受信装置6との間の送受信間の距離及び電波伝搬状態によって変わるものである。したがって、図4に示したテーブルは、図1に示した映像伝送システムにおける送信装置1(送信装置1−1)と受信装置6との間の距離及び電波伝搬状態が予め想定された場合のテーブルである。つまり、テーブルに格納されたパラメータ(変調方式、送信電力)に対応する(消費電力P、送信レートR)の組み合わせは、予め想定した距離及び電波伝搬状態の下で設定されたデータである。
【0039】
図4に示したテーブルは、以下のようにして送信装置1−1の設計者等により予め設定される。一般に、受信電力は以下の式により算出することができる。
(数式2)
受信電力=送信電力×送信アンテナ利得×受信アンテナ利得×自由空間伝搬損失
・・・(2)
伝送時に使用する周波数及びアンテナ利得を固定とすれば、受信電力は送信電力及び距離によって定まる。すなわち、前記式(2)から算出した受信電力から、ある伝送におけるC/N比を一意に求めることができる。さらに、C/N比とBERの関係から、その伝送において取りうる変調方式、送信電力及び冗長符号化量の組み合わせで動作させたときの送信装置1−1全体の消費電力Pと、これらのパラメータにおける送信レートRとの組み合わせを求めることができる。このように、送信装置1−1と受信装置6との間の距離及び電波伝搬状態を予め想定し、前述のようにして求めた(消費電力P、送信レートR)の組み合わせが、パラメータ(変調方式、送信電力)に対応したデータとして設定され、図4に示したテーブルに予め格納される。
【0040】
このように、送信レート制御部20−1は、ステップS304において、図4に示したテーブルを参照して、当該テーブルに格納された伝送条件毎に、消費電力P及び送信レートRを読み出し、残電池容量BLに対応する積算データ量を前記式(1)により算出する。
【0041】
尚、送信レート制御部20−1は、図4に示したテーブルの代わりに、消費電力Pと送信レートRとの間の関係を含む式を用いて、伝送条件毎に、残電池容量BLに対応する積算データ量を算出するようにしてもよい。
【0042】
図3に戻って、送信レート制御部20−1は、ステップS304にて伝送条件毎に算出した積算データ量のうち、最大となる積算データ量の伝送条件を特定する(ステップS305)。
【0043】
尚、送信レート制御部20−1は、最大となる積算データ量の伝送条件が複数存在する場合には、それらの複数の伝送条件のうち消費電力Pが最小となる伝送条件を特定するようにしてもよいし、それらの複数の伝送条件のうち送信レートRが最大となる伝送条件を特定するようにしてもよい。消費電力Pが最小となる伝送条件を特定することにより、受電断の状態で電力をできる限り使用すべきでない状況において好適となり、大容量の映像データのファイルを伝送することができると共に、低消費電力にて効率的な伝送を実現することができる。また、送信レートRが最大となる伝送条件を特定することにより、短時間にて大容量の映像データのファイルを伝送することができる。
【0044】
送信レート制御部20−1は、ステップS305にて特定した伝送条件における(消費電力P、送信レートR)の組み合わせを求め、それに対応するパラメータ(変調方式、送信電力)を受電断時のパラメータとして決定する(ステップS306)。
【0045】
送信レート制御部20−1は、予め設定された映像データのファイルにおける所定時間位置以降の映像データのファイルを伝送するための指示情報をファイル保存部3−1に出力すると共に、ステップS306にて決定した変調方式及び送信電力を誤り訂正付加・変調部4及び送信部5にそれぞれ出力する(ステップS307)。これにより、受電断時に、残電池容量から算出される送信可能なデータ量である積算データ量が最大になるように、所定のファイル及び所定の時間位置を示す指示情報にてファイル保存部3−1が制御され、変調方式及び送信電力にて誤り訂正付加・変調部4及び送信部5が制御される。これにより、ファイル保存部3−1から大容量の映像データのファイルが読み出され、送信装置1−1から送信される。
【0046】
尚、送信レート制御部20−1は、ステップS307において、予め設定された指示情報をファイル保存部3−1に出力するようにしたが、この指示情報を外部から入力するようにしてもよい。この場合、送信レート制御部20−1は、後述する実施例2の送信レート制御部20−2のように制御受信部を備え、制御受信部が、受電断時にファイル保存部3−1から読み出され送信される映像データのファイル及びその時間位置を示す指示情報を、外部から電話回線または無線回線等を介して入力する。時間位置の情報は、例えば、受電断前の所定時間位置の情報をいう。
【0047】
例えば、テーブルに、図4に示した伝送条件0,1,2のデータのみが格納されている場合について具体的に説明する。送信レート制御部20−1は、ステップS304において、テーブルを参照して、伝送条件0,1,2について、残電池容量に対応する積算データ量を前記式(1)により算出する。伝送条件0の積算データ量は100×BLとなり、伝送条件1の積算データ量は200×BLとなり、伝送条件2の積算データ量は150×BLとなる。そして、送信レート制御部20−1は、ステップS305において、伝送条件0,1,2の積算データ量のうち、最大となる積算データ量200×BLの伝送条件1を特定し、ステップS306において、伝送条件1における(消費電力P、送信レートR)=(50W,10Mbps)の組み合わせを求め、それに対応するパラメータセットBを受電断時のパラメータとして決定する。
【0048】
これにより、誤り訂正付加・変調部4及び送信部5は、受電断時に、消費電力P=50W及び送信レートR=10Mbpsとなるときの変調方式及び送信電力であるパラメータセットBにて制御される。したがって、受電断時に、電力供給部10の蓄電部11に充電されていた電力を利用して、最も多くのデータ量のファイルを伝送することができる。
【0049】
以上のように、実施例1の送信装置1−1によれば、送信レート制御部20−1は、受電断となった時に、図4に示したテーブルを参照して、伝送条件毎に、残電池容量に対応する伝送可能なデータ量である積算データ量を前記式(1)により算出し、伝送条件毎の積算データ量のうち、最大となる積算データ量の伝送条件を特定し、特定した伝送条件における(消費電力P、送信レートR)の組み合わせを求め、それに対応するパラメータ(変調方式、送信電力)を受電断時のパラメータとして決定し、ファイル保存部3−1、誤り訂正付加・変調部4及び送信部5を制御するようにした。これにより、受電断となって安定した電力供給が得られない場合、利用者の意図に沿うように、残電池容量の範囲内で、必要となる大容量の映像データのファイルを伝送することができる。
【0050】
例えば、地震発生に伴って受電断となった場合、送信レート制御部20−1は、所定の映像データのファイルについて、地震発生に伴って受電断となる所定時間前(例えば10秒前)から、残電池容量の範囲内で、可能な限り長時間の伝送を実現することができる。
【0051】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。実施例2は、前述のとおり、受電断となった場合に、複数のエンコードレートにて符号化され圧縮されたそれぞれの映像データのファイルのうち、当該ファイルのデータ量が、残電池容量から算出される送信可能なデータ量以下となり、かつ最も高いエンコードレートの映像データのファイルを選択するように、変調方式及び送信電力を決定することで、高画質な映像データのファイルを伝送する例である。つまり、実施例2の送信装置1は、限られた電力供給の範囲内で、可能な限り高画質な映像データのファイルを伝送する。
【0052】
図5は、実施例2による送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置1−2は、エンコーダ2、ファイル保存部3−2、誤り訂正付加・変調部4、送信部5、電力供給部10及び送信レート制御部20−2を備えている。また、送信レート制御部20−2は、制御受信部21を備えている。図2に示した実施例1の送信装置1−1とこの送信装置1−2とを比較すると、送信装置1−2は、送信装置1−1のファイル保存部3−1及び送信レート制御部20−1とは異なるファイル保存部3−2及び送信レート制御部20−2を備えている点で相違する。また、送信装置1−2は、複数のエンコードレートにてそれぞれ符号化を行うエンコーダ2を備えている点で送信装置1−1と異なる。誤り訂正付加・変調部4、送信部5及び電力供給部10については図1及び図2にて既に説明済みであるから、ここでは説明を省略する。
【0053】
エンコーダ2は、送信対象の映像データを、予め設定された複数の異なるエンコードレートにてそれぞれ符号化して圧縮する。ファイル保存部3−2は、エンコーダ2により圧縮されたそれぞれの映像データに時刻情報を付加しながら、ファイルとしてハードディスク等の記録媒体に保存する。
【0054】
送信レート制御部20−2は、外部の電源から電力の供給を受けて動作する通常時に、送信対象の映像データのファイルを特定してファイル保存部3−2から読み出すための指示情報をファイル保存部3−2に出力すると共に、所定の変調方式及び送信電力を誤り訂正付加・変調部4及び送信部5にそれぞれ出力することにより、ファイル保存部3−2、誤り訂正付加・変調部4及び送信部5を制御する。また、送信レート制御部20−2は、電力供給部10から受電断情報を入力すると、受電断時に、複数の異なるエンコードレートにて符号化され圧縮されたそれぞれの映像データのファイルのうち、当該ファイルのデータ量が、残電池容量から算出される送信可能なデータ量以下となり、かつ最も高いエンコードレートの映像データのファイルを選択するように、外部から入力した指定期間(例えば、受電断前または受電断前後の指定期間)の時間位置を含む指示情報をファイル保存部3−2に出力すると共に、変調方式及び送信電力を決定してこれらを誤り訂正付加・変調部4及び送信部5にそれぞれ出力することにより、ファイル保存部3−2、誤り訂正付加・変調部4及び送信部5を制御する。
【0055】
図6は、実施例2による送信レート制御部20−2の処理を示すフローチャートである。尚、ファイル保存部3−2には、エンコーダ2にて複数のエンコードレートE〜Eにより符号化された映像データのファイルがそれぞれ保存されているものとする。nは、エンコーダ2にて符号化を行うエンコードレートの数(正の整数)とする。また、残電池容量をBL[Wh]、消費電力をP[W]、送信レートをR[bps]、エンコードレートをE[bps]、エンコードデータ量をF[bit]、積算データ量をS[bit]とする。通常、データ量(ファイル容量)はbyte単位で表すが、パラメータ決定時の比較処理のために、bit単位として表す。
【0056】
送信レート制御部20−2は、電力供給部10から受電断情報を入力したか否かを判定し(ステップS601)、受電断情報を入力していないと判定した場合(ステップS601:N)、通常の処理を行い、所定の変調方式及び送信電力にて誤り訂正付加・変調部4及び送信部5を制御する(ステップS602)。これにより、誤り訂正付加・変調部4及び送信部5は、通常時の変調方式及び送信電力にて制御され、ファイル保存部3−2から読み出された所定のエンコードレートにて符号化された映像データのファイルが、送信装置1−2から送信される。
【0057】
一方、送信レート制御部20−2は、ステップS601において、受電断情報を入力したと判定した場合(ステップS601:Y)、電力供給部10から残電池容量を入力すると共に、制御受信部21が、受電断時にファイル保存部3−2から読み出され送信される映像データのファイルの時間位置を示す指定期間を、外部から電話回線または無線回線等を介して入力する(ステップS603)。尚、送信レート制御部20−2は、制御受信部21が外部から指定期間を入力する代わりに、予め設定された指定期間を用いるようにしてもよい。
【0058】
送信レート制御部20−2は、ファイル保存部3−2に保存されているエンコードレートE〜Eのファイル毎に、制御受信部21が入力した指定期間についてそのデータ量(エンコードデータ量)F〜Fを求める(ステップS604)。そして、送信レート制御部20−2は、保持しているテーブル(図4に示したテーブル)に格納された伝送条件0〜m毎に、テーブルから消費電力P及び送信レートRを読み出し、入力した残電池容量BLに対応する送信可能なデータ量(積算データ量)S〜Sを前記式(1)により算出する(ステップS605)。mは正の整数である。
【0059】
尚、送信レート制御部20−2は、実施例1の送信レート制御部20−1と同様に、図4に示したテーブルの代わりに、消費電力Pと送信レートRとの間の関係を含む式を用いて、伝送条件0〜m毎に、残電池容量BLに対応する積算データ量S〜Sを算出するようにしてもよい。
【0060】
送信レート制御部20−2は、ステップS605にて算出したそれぞれの積算データ量S〜Sと、ステップS604にて求めたそれぞれのエンコードデータ量F〜Fとを比較し、以下の条件式のように、積算データ量S〜Sよりも小さいエンコードデータ量F〜Fのうち、最大のエンコードデータ量Fを特定する(ステップS606)。iは、0〜nのうちのいずれかの値を示す。
(数式3)
〜S>F〜F ・・・(3)
【0061】
送信レート制御部20−2は、ステップS606にて特定したエンコードデータ量Fにおける前記式(3)の積算データ量Sの伝送条件jを特定する(ステップS607)。
【0062】
尚、送信レート制御部20−2は、エンコードデータ量Fにおける前記式(3)の積算データ量Sの伝送条件jが複数存在する場合には、それらの複数の伝送条件jのうち消費電力Pが最小となる伝送条件jを特定するようにしてもよいし、それらの複数の伝送条件jのうち送信レートRが最大となる伝送条件jを特定するようにしてもよい。消費電力Pが最小となる伝送条件jを特定することにより、受電断の状態で電力をできる限り使用すべきでない状況において好適となり、高画質な映像データのファイルを伝送することができると共に、低消費電力にて効率的な伝送を実現することができる。また、送信レートRが最大となる伝送条件jを特定することにより、短時間にて高画質な映像データのファイルを伝送することができる。
【0063】
送信レート制御部20−2は、テーブルを参照して、ステップS607にて特定した伝送条件jにおける(消費電力P、送信レートR)の組み合わせを求め、それに対応するパラメータ(変調方式、送信電力)を受電断時のパラメータとして決定する(ステップS608)。
【0064】
送信レート制御部20−2は、ステップS606にて特定した最大のエンコードデータ量Fに対応するエンコードレートEのファイルについて、ステップS603にて制御受信部21が入力した指定期間における映像データのファイルを選択するための指示情報をファイル保存部3−2に出力すると共に、ステップS608にて決定した変調方式及び送信電力を誤り訂正付加・変調部4及び送信部5にそれぞれ出力する(ステップS609)。これにより、受電断時に、複数の異なるエンコードレートにて符号化され圧縮されたそれぞれの映像データのファイルのうち、当該ファイルのデータ量が、残電池容量から算出される送信可能なデータ量以下となり、かつ最も高いエンコードレートの映像データのファイルを選択するように、ファイルを選択するための指示情報にてファイル保存部3−2が制御され、変調方式及び送信電力にて誤り訂正付加・変調部4及び送信部5が制御される。これにより、ファイル保存部3−2から高画質な映像データのファイルが読み出され、送信装置1−2から送信される。
【0065】
例えば、ファイル保存部3−2に、エンコードレートE=1Mbps,E=5Mbps,E=10Mbpsにて符号化された3種類の映像データのファイルが常時更新され保存されており、テーブルに、図4に示した伝送条件0,1,2のデータのみが格納されている場合について具体的に説明する。エンコードレートが高い程、符号化された映像データは高画質であるから、最も高画質な映像データのファイルはエンコードレートEのファイルであり、その次に高画質な映像データのファイルはエンコードレートEのファイルであり、最も低画質な映像データのファイルはエンコードレートEのファイルである。
【0066】
この具体例では、受電断を検出したときに、受電断後の60秒間の映像データのファイルを伝送する場合を想定する。つまり、送信レート制御部20−2の制御受信部21が入力した指定期間が、受電断の時から60秒間であるとする。また、電力供給部10から入力した残電池容量が、2000Whであるとする。
【0067】
まず、送信レート制御部20−2は、ステップS604において、ファイル保存部3−2に保存されているエンコードレートE=1Mbps,E=5Mbps,E=10Mbpsにて符号化された3種類の映像データのファイル毎に、指定期間(受電断のときから60秒間)におけるエンコードデータ量F=60Mbit,F=300Mbit,F=600Mbitを求める。そして、送信レート制御部20−2は、ステップS605において、保持しているテーブル(図4に示したテーブル)に格納された伝送条件0,1,2毎に、テーブルから消費電力P及び送信レートRを読み出し、入力した残電池容量BL=2000Whに対応する送信可能なデータ量(積算データ量)S=200Mbit,S=400Mbit,S=300Mbitを前記式(1)により算出する。
【0068】
送信レート制御部20−2は、ステップS606において、ステップS605にて算出したそれぞれの積算データ量S〜Sと、ステップS604にて求めたそれぞれのエンコードデータ量F〜Fとを比較し、前記式(3)により、積算データ量S=200Mbitよりも小さいエンコードデータ量F=60Mbitを求め、積算データ量S=400Mbitよりも小さいエンコードデータ量F=60Mbit,F=300Mbitを求め、また、積算データ量S=300Mbitよりも小さいエンコードデータ量F=60Mbitを求める。そして、送信レート制御部20−2は、これらのエンコードデータ量のうち、最大のエンコードデータ量F=300Mbitを特定する。
【0069】
送信レート制御部20−2は、ステップS607において、ステップS606にて特定した最大のエンコードデータ量F=300Mbitにおける前記式(3)の積算データ量Sの伝送条件1を、テーブルを参照して特定する。そして、送信レート制御部20−2は、ステップS608において、テーブルを参照して、ステップS607にて特定した伝送条件1における(消費電力P=50W,送信レートR=10Mbps)の組み合わせを求め、それに対応するパラメータセットBを受電断時のパラメータとして決定する。
【0070】
これにより、誤り訂正付加・変調部4及び送信部5は、受電断時に、消費電力P=50W及び送信レートR=10Mbpsとなるときの変調方式及び送信電力であるパラメータセットBにて制御される。したがって、エンコードデータ量F=300Mbitのファイルは、積算データ量S〜Sである送信可能なデータ量の範囲内で最も高画質な映像データのファイルであるから、受電断時に、電力供給部10の蓄電部11に充電されていた電力を利用して、最も高画質な映像データを伝送することができる。
【0071】
以上のように、実施例2の送信装置1−2によれば、送信レート制御部20−2は、受電断となった時に、ファイル保存部3−2に保存されているエンコードレートE〜Eのファイル毎に、制御受信部21が入力した指定期間についてそのエンコードデータ量F〜Fを求め、図4に示したテーブルを参照して、伝送条件0〜m毎に、入力した残電池容量BLに対応する送信可能なデータ量(積算データ量)S〜Sを前記式(1)により算出し、算出した積算データ量S〜Sと、求めたエンコードデータ量F〜Fとを比較し、前記式(3)を満たすように、積算データ量S〜Sよりも小さいエンコードデータ量F〜Fのうち、最大のエンコードデータ量Fを特定するようにした。そして、送信レート制御部20−2は、特定したエンコードデータ量Fにおける前記式(3)の積算データ量Sの伝送条件jを特定し、テーブルを参照して、特定した伝送条件jにおける(消費電力P、送信レートR)の組み合わせを求め、それに対応するパラメータ(変調方式、送信電力)を受電断時のパラメータとして決定し、ファイル保存部3−2、誤り訂正付加・変調部4及び送信部5を制御するようにした。これにより、受電断となって安定した電力供給が得られない場合、利用者の意図に沿うように、残電池容量の範囲内で、必要とする高画質な映像データを伝送することができる。
【0072】
例えば、地震発生に伴って受電断となった場合、送信レート制御部20−2は、所定の映像データのファイルについて、地震発生に伴って受電断となる所定時間前(例えば10秒前)から一定時間長の指定期間の間、残電池容量の範囲内で、高画質な伝送を実現することができる。
【0073】
尚、実施例1の送信装置1−1及び実施例2の送信装置1−2において、外部に発電部を設けるようにしてもよい。この場合、送信装置1−1の送信レート制御部20−1及び送信装置1−2の送信レート制御部20−2は、ファイル保存部3−1,3−2に保存された、送信対象のファイルを送信するだけの電力が発電部に蓄電されたときに、当該ファイルを送信するために、ファイル保存部3−1,3−2、誤り訂正付加・変調部4及び送信部5を制御する。
【符号の説明】
【0074】
1 送信装置
2 エンコーダ
3 ファイル保存部
4 誤り訂正付加・変調部
5 送信部
6 受信装置
7 受信部
8 復調・誤り訂正部
9 デコーダ
10 電力供給部
11 蓄電部
12 受電断検知部
13 消費電力計測部
20 送信レート制御部
21 制御受信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6