特許第6033108号(P6033108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6033108バリアコーティング樹脂積層体及び該積層体を有するプラスチック容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033108
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】バリアコーティング樹脂積層体及び該積層体を有するプラスチック容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20161121BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20161121BHJP
   B65D 23/08 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B32B27/30 102
   B32B27/28 102
   B65D23/08 B
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-26105(P2013-26105)
(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公開番号】特開2014-151631(P2014-151631A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉森 友彦
(72)【発明者】
【氏名】山根 亮
(72)【発明者】
【氏名】泊 一朗
(72)【発明者】
【氏名】高田 重喜
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−061463(JP,A)
【文献】 特開2012−250771(JP,A)
【文献】 特開平07−266508(JP,A)
【文献】 特開昭56−024163(JP,A)
【文献】 国際公開第03/037969(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0061883(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 − 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α―オレフィン単位を0.1〜20モル%含有し、重合度が200〜5000であり、けん化度が90〜100モル%であり、かつ、90℃の1.5%アルカリ水溶液中で15分以内に溶解するポリビニルアルコール系樹脂からなる層と、ガラス転移温度が70℃以上103℃以下であり、かつ、水酸基含有量が18重量%以下であるポリビニルアセタール系樹脂からなる層が積層されたガスバリアコーティング樹脂積層体。
【請求項2】
請求項1に記載のガスバリアコーティング樹脂組成物を外表面に有するPETボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水及びガスバリア性が向上し、耐水性があり、さらにポリエチレンテレフタレート系(以下、PETと略す。)樹脂に塗布した場合に回収率が高く、再利用が容易なプラスチック容器用ガスバリアコーティング樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート容器(以下、PETボトルともいう。)は、一般にブロー成形と呼ばれる方法で製造されている。PETボトルは透明軽量で強く、化学的に安定で化学薬品に溶出しにくい。これはガラス製ボトルの特徴である透明で化学的に安定で水やガスの遮断性に優れ繰り返し使用に適した長所を有し、重くて衝撃に弱いガラスの短所を改善するものとして急速に浸透し、ガラス製ボトルを代替している。しかしながら、PETボトルは薄肉化が進めば進むほど水やガスの遮断性が低下し調味料、飲料容器としての機能が保たれなくなり、新たな改善が模索されている。また、西欧では既に始められている繰り返し使用可能なPETボトルの採用は、僅かな傷でも購入を避ける厳しい日本の消費者意識からか、具体化していないのが現況である。
【0003】
また、PETボトルは、その優れた簡便性が消費者に受け入れられ、高速大量生産による合理化が飲料生産を促進させ、軽量強靱性が流通を促進させるなど、急速に容器市場の採用を増やしている。その反面、使用済PETボトルの大量排出は、都市ゴミの増加に拍車をかけ、この回収と再利用(リサイクル)に関する技術的解決手段が強く求められ、多量の使用済PETボトルの処理が深刻な社会問題となっている。
【0004】
PETボトルのリサイクルには多くの工程と高度な技術が応用され、それに伴い費用が嵩む。限られた資源の有効利用を進めるためには使用済PETボトルのリサイクル費用を削減する必要がある。PETボトル1本当たりの使用樹脂量をできるだけ少なくすることは大切な手段であり、今後ともますます容器の薄肉化が図られるであろう。しかしながら、それに伴いPETボトルの水やガスの遮断性(バリア性)は低下する。
【0005】
PETボトルの水やガスのバリア性を改善するためには、ボトルを多層化し種々のバリア性樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を積層する方法や、PET樹脂に直接バリア性樹脂、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)を練り込む方法があるが、これらの方法は使用済容器の回収リサイクルの段階で選別を困難にする原因にもなる。
かかる問題を課題を解決するために種々の発明が提案されてきた。
例えば、以下の特許文献1には、PETボトルにブロー成形されるパソリンに、α―オレフィン単位を0.1〜20モル%含有し、重合度が200〜5000であり、けん化度が90〜100モル%のポリビニルアルコール(以下、PVAと略す。)系樹脂を塗布する方法が提案されている(同書請求項1、請求項5参照)。しかしながら、この方法では、該ポリビニルアルコール系樹脂に耐水性がないため、該樹脂でコーティングされたPETボトルを冷水に浸漬して冷やす場合、短時間でコーティング層が溶解、剥がれてしまう等の問題がある。尚、特許文献1では、耐水性の評価として、ボトルを20℃の水に1分間浸漬し、指でボトル表面をこすって、PVAの溶出の有無を確認しているに過ぎない(同書段落[0025]参照)。
【0006】
以下の特許文献2には、ポリビニルアルコール層上にポリビニルアセタールのトップコーティング層を少なくとも1つ設ける方法が提案されている(同書請求項1参照)。しかしながら、無変性のポリビニルアルコール層上にポリビニルアセタール層を設けても耐水性が十分でなく、水に浸漬してPETボトルを冷却する場合、ポリビニルアルコール層とポリビニルアセタール層の両方が剥がれ落ちるという問題点がある。またPETボトルを粉砕し、アルカリ洗浄する場合において、PETボトルにトップコーティング層のポリビニルアセタールが付着し、分離が出来ないという問題点がある。
【0007】
また、以下の特許文献3には、アルカリ及び/又は酸に対し安定なプラスチックからなる容器基体の必要箇所に、強アルカリ又は強酸に可溶な重合体からなるコーティング層を形成し、容器を構成した後、使用済みの該容器を回収し、該容器基体を侵すことなくコーティング層のみを溶解する強アルカリ又は強酸からなる洗浄液によって該容器を洗浄し、コーティグ層を除去し、その後、コーティング層を形成して容器を再構成して、容器を再利用する方法が開示されている。しかしながら、かかる方法は、耐水性、バリア性、及び回収容易性を同時に満たすものではない。
【0008】
以下の特許文献4には、表面に、ポリビニルアルコール系コーティング剤、塩化ビニリデン系コーティング剤、或いはエチレンビニルアルコール共重合体系コーティング剤のいずれかの単体或いはこれらの複合体からなる樹脂被膜を有することを特徴とする容器が開示されている(同書請求項1参照)。特許文献4に記載された発明においては、ブロー成型前のプリフォームにコート層を設けることにより、ラミネート方式に比べると生産コストが低く、十分なガスバリア性を有する容器を製造することができるものの、耐水性と回収性を満たすものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−349713号公報
【特許文献2】特開2012−61463号公報
【特許文献3】特開平3−247634号公報
【特許文献4】特開平8−238667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記した従来技術の問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、ガスバリア性、耐水性、及び回収性を同時に満たすことができる、PETボトルに好適に適用可能なガスバリアコーティング樹脂積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく、PETボトルにガスバリア性、耐水性、及び回収性を同時に満たすことができるガスバリアコーティングを鋭意検討し実験を重ねた結果、α―オレフィン単位を0.1〜20モル%含有し、けん化度が90〜100モル%であり、かつ、90℃の1.5%アルカリ水溶液中で15分以内に溶解するポリビニルアルコール系樹脂からなる層と、ガラス転移温度が70℃以上103℃以下であり、かつ、水酸基含有量が18重量%以下であるポリビニルアセタール系樹脂からなる層が積層されたガスバリアコーティング樹脂積層体をPETボトル上に積層した場合に、前記課題を解決しうることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]α―オレフィン単位を0.1〜20モル%含有し、重合度が200〜5000であり、けん化度が90〜100モル%であり、かつ、90℃の1.5%アルカリ水溶液中で15分以内に溶解するポリビニルアルコール系樹脂からなる層と、ガラス転移温度が70℃以上103℃以下であり、かつ、水酸基含有量が18重量%以下であるポリビニルアセタール系樹脂からなる層が積層されたガスバリアコーティング樹脂積層体。
【0013】
[2]前記[1]に記載のガスバリアコーティング樹脂組成物を外表面に有するPETボトル。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るガスバリアコーティング樹脂積層体は、ガスバリア性、耐水性、及び回収性を同時に満たすことができるため、リサイクル可能な薄肉化PETボトルに好適に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るガスバリアコーティング樹脂積層体を適用しうるプラスチック容器は、ポリエステル製ボトル、ポリオレフィン製ボトル等であることができ、特に制限はないが、好ましくは、PETボトルである。
そこで、PETボトルのリサイクル処理について説明する。
通常、PETボトルは、PETそのままのものや、ナイロンやスカベンジャーが添加されているもの等あるが、リサイクル処理においてナイロンやスカベンジャーなどは分離されず、通常、繊維や卵パック又はPETボトルにリサイクルされることなる。このように異種材料が入ったものがリサイクルされると、色がついてしまったり(例えば、ナイロンが入ると黄色っぽくなり)、繊維にリサイクルされた場合は切れやすくなったりする傾向がある。また、例えば、PVAが入ったままだと焦げたり、PVBが入ったままだと白くなったりする傾向がある。近年、ケミカルリサイクルやメカニカルリサイクルのようなボトルtoボトルの技術の実用化が開始され、今後はボトルへのリサイクル率が更に高まっていき、リサイクル材に求められる品質も向上していくと予想される。そこで、コーティング樹脂は、リサイクルの工程中に除去できることが望ましい。
【0016】
リサイクル工程では、回収された使用済みPETボトルを、回収ベールとして保管し、その後、選別し、粉砕(フレーク化)し、風力又は比重分離により異物除去し、熱アルカリ洗浄してPVAをアルカリ溶液に溶解する。次いで、水に浮遊した物質(キャップのバンドなどの比重が水よりも小さい材質の物)水比重分離により除去する。次いで、PVAの溶解によって、剥がれたPVBとPETフレークとを分離する必要があるが、PVBの比重は、PETフレークと同様、水よりも大きいので、剥がれたPVBとPETフレークの分離を水比重分離により行うことは容易ではない。しかしながら、本発明者らは、実験を重ねた結果、PBV膜がPETボトルから剥がれた際に、空気を巻き込んで固まり、比重が水より小さくなったPVB剥離塊が水に浮遊することを予想外に発見した。PVB剥離塊を水比重分離によりPETフレークから効率良く分離することができれば、異種材料を含まない回収したPETフレークからペレットを製造し、かかるペレットを原料としてPETボトルを再び製造するというリサイクル処理フローを経ることができることになる。
【0017】
かかるリサイクル処理フローにおいて再び製造されるPETボトルに異種材料が混入し、また、色がついてしまうという問題を回避するためには、PETボトルにコーティングされている材料をかかるリサイクル処理フローにおいて、きちんと剥がせるように、PVAやPVBコーティング材料を最適に選択することが必要となる。本発明者らは、PVAやPVBコーティング材料の最適化を検討した結果、PETボトルのガスバリアコーティングを以下の積層体:
α―オレフィン単位を0.1〜20モル%含有し、けん化度が90〜100モル%であり、かつ、85〜90℃の1.5%アルカリ水溶液中で15分以内に完溶するポリビニルアルコール系樹脂からなる層と、ガラス転移温度が70℃以上103℃以下であり、かつ、水酸基含有量が18重量%以下であるポリビニルアセタール系樹脂からなる層が積層されたガスバリアコーティング樹脂積層体;
により構成することによりガスバリア性、耐水性、及び回収性のすべてが満足できるものとなることを見出したものである。
【0018】
以下、本発明に係る積層体を構成するポリビニルアルコール系樹脂を説明する。
ポリビニルアルコール系樹脂は、冷水に不溶であり、耐水性が高く、かつ、90℃の1.5%アルカリ水溶液に完全に溶解する必要がある。この条件を満たすポリビニルアルコール系樹脂としては、炭素数20以下のα−オレフィン単位を0.1〜20モル%含有するものであることができる。ポリビニルアルコール系樹脂は、重合度200〜5000、けん化度90〜100モル%でることが好ましく、重合度400−3000、けん化度95〜100モル%であることがより好ましく、重合度700−2000、けん化度98〜100モル%であることがさらに好ましい。重合度が200未満では皮膜強度が不足し、5000以上では粘度が高くなり作業性が悪くなる。けん化度90モル%未満では皮膜に耐水性が不足する。炭素数20以下のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、イソブチレンが生産性の点で好ましい。エチレン変性度(α−オレフィン単位の含有量)は、0.1〜20モル%であり、好ましくは2〜15モル%、より好ましくは3〜10モル%である。α−オレフィン単位が0.1モル%未満の場合は変性の効果が発現せず、20モル%を超えると重合度にもよるが、水溶性が損なわれる。
【0019】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステル重合体を常法によりけん化することにより得られる。ビニルエステルとしては、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、酢酸ビニルが好ましい。
また、ポリビニルアルコール系樹脂はα―オレフィンを含有するが、α―オレフィンとしては公知のものが用いられ、例えば、エチレンが挙げられる。
【0020】
次に、本発明に係る積層体を構成するポリビニルアセタール系樹脂を説明する。
ポリビニルアセタール系樹脂は、ガラス転移温度が70℃以上103℃以下であることが必要である。ガラス転移温度は、好ましくは80℃以上である。ガラス転移温度が70℃より低い場合、糊のようにネチャっとなり、アルカリ洗浄においてPETフレークや撹拌装置等に付着するため回収性が損なわれ、また、103℃を超えると、耐水性が低下する。
水酸基含有量は、18重量%以下であり、好ましくは17重量%以下、より好ましくは16重量%以下である。水酸基含有量が18重量%を超える場合、回収性が損なわれる。
ポリビニルアセタール系樹脂は、公知の方法で製造される。本発明に適したポリビニルアセタールは、ポリビニルブチラール(本明細書中、PVBと略す。)、ポリビニルアセチル-ブチラール共重合体、2種以上のポリビニルブチラール、ポリビニルアセチル-ブチラール共重合体のブレンド物等からなる群から適宜選択されるが、ガラス転移温度が70℃以上103℃以下、水酸基含有量が18重量%以下であればアセタールの種類に制限はない。
【0021】
ポリビニルアルコール系樹脂は、一般に、PETボトルのプリフォームに塗布された後、ブロー成型でPETボトルに成型される。プリフォームへのPVA系樹脂溶液の塗布は公知の方法によることができる。塗布方法としては、スプレーコート、ディップコート、転写コート等が挙げられる。塗布されるポリビニルアルコール系樹脂溶液は、水溶液又は水/アルコール溶液であることができる。
プリフォームの表面の接着性を向上させる目的で、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等が好適に用いられる。
【0022】
ポリビニルアセタール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂が塗布されたプリフォーム上へ塗布される。塗布は公知の方法によることができる。塗布方法としては、スプレーコート、ディップコート、転写コート等が挙げられる。塗布されるポリビニルアセタール系樹脂溶液は、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、アセトン又はエタノール溶液であることがき、場合により、これらの溶剤に少量の水を添加してもよい。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、表に示す各種樹脂の物性は以下の方法で測定した。
【0024】
<粘度(mPa・s)>
ブルックフィールド粘度計を用い、20℃における粘度を測定した。
【0025】
<けん化度(mol%)・重合度>
常法により測定した。
【0026】
<エチレン変性度(α―オレフィン単位)(mol%)>
NMRを用いて測定した。
【0027】
<アルカリ水溶液完溶時間(分)>
1.5%NaOH水溶液を90℃に加熱し、各種樹脂10gを投入して目視により完溶時間を測定した。
【0028】
<水酸基含有量(重量%)>
常法により測定した。
【0029】
<ガラス転移温度(Tg)(℃)>
DSCを用いて測定した。
【0030】
<参考例1:ピリビニルアルコール系樹脂の調製>
ポリビニルアルコール(PVA1とPVA2)の物性を以下の表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
<参考例2:ピリビニルアセタール系樹脂の調製>
ポリビニルブチラール(PVB1〜PVB11)の物性を以下の表2に示す。
表2中、BAは、ブチルアルデヒド単位、AAは、アセトアルデヒド単位、そしてISO-BAは、イソブチルアルデヒド単位を表す。ポリビニルブチラールは、ポリビニルアルコールとBAのアセタール反応により製造され、反応に供するBAを、BAの構造異性体であるISO-BAで一部置き換えることにより種々のPVBを調製した。一般に、PVBの構造が小さくなれば、分子鎖の動くスペースが小さくなるため、ガラス転移温度(Tg)が上昇する。
【0033】
【表2】
【0034】
<実施例1、及び比較例1〜11:参考例1で調製したポリビニルアルコール系樹脂と参考例2で調製したポリビニルアセタール系樹脂を積層したプリフォーム、及びこれをブロー成形したPETボトルの調製>
500ml用PETボトル用プリフォーム(15g)に、表1に示すポリビニルアルコール系樹脂をディップコートにより塗布した。ポリビニルアルコール系樹脂を水/イソプロピルアルコール=9/1溶媒に溶解して濃度10重量%溶液を調製した。
室温でプリフォームを各種ポリビニルアルコール系樹脂溶液に浸漬(ディップ)し、50℃で1〜3時間乾燥して、ポリビニルアルコール系樹脂が塗布されたプリフォームを得た。塗布されたポリビニルアルコール系樹脂の重量、及び膜厚は以下の表3に示すとおりであった。
次に、ポリビニルアルコール系樹脂を塗布したプリフォームに、参考例2で調製したポリビニルアセタール系樹脂を塗布した。ポリビニルアセタール系樹脂をエタノール/水=90/10溶媒に溶解して濃度10重量%溶液を調製した。
室温でポリビニルアルコール系樹脂を塗布したプリフォームに各種ポリビニルアセタール系樹脂をディップし、50℃で1〜3時間乾燥して、ポリビニルアセタール系樹脂を塗布したプリフォームを得た。塗布されたポリビニルアセタール系樹脂の重量、及び膜厚は以下の表3に示すとおりであった。
ポリビニルアルコール系樹脂とポリビニルアセタール系樹脂を積層して塗布したプリフォームを、ブロー成型によりPETボトル(容量500ml)を得た。
【0035】
実施例1、及び比較例1〜11で使用したPVAとPVB、並びに最終的に得られたPETボトルのガスバリア性、耐水性、及び回収性を評価した。
【0036】
<ガスバリア性評価方法>
酸素透過率測定装置OX-TRAN2/61(Mocon社製)を使用した。測定環境としては、PETボトル内部をドライとし、PETボトル外部を23℃50%とした。酸素透過率(cc/pkg/日)に応じて以下の評価基準に従ってガスバリア性を評価した:
AA:0〜0.025(cc/pkg/日)
A:0.025〜0.05(cc/pkg/日)
B:005〜0.075(cc/pkg/日)
C0.075〜0.1(cc/pkg/日)
結果を以下の表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
コーティングのない15gプリフォームのバリア性がCであり、また、PVA2をコーティングした比較例11のバリア性がAであるのに対し、PVA1をコーティングした実施例1及び比較例1〜10のバリア性はAAであった。
【0039】
<耐水性評価方法>
水槽に水道水を入れ、得られたPETボトルを水槽に浸漬し、24時間後に水槽から取り出し、以下の評価基準に従い外観を評価した:
AA:指で擦っても全く剥がれない
A:指で強く擦ると剥がれる
B:指で軽く擦ると剥がれる
C:何もしないでも剥がれる
結果を以下の表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
比較例3〜10は、耐水性ランクCであった。
【0042】
<回収性評価方法>
得られた500mlPETボトルをハサミで切断して8mm×8mmのフレームを作製した。これをビーカー内の90℃1.5重量%の水酸化ナトリウム溶液に浸漬し、100〜200rpmで撹拌しながら、15分間洗浄し、空気を巻き込んで水酸化ナトリウム溶液に浮遊したPVB塊を回収した。但し、撹拌翼に付着したPVBは回収できないと見なして浮遊PVBから除外した。また、回収したPVB塊に付着したアルカリ溶液を洗い流し、その後水分を、100℃で1時間乾燥させ、PVBの乾燥重量を測定した。回収率を以下の式により求めた:
PVB回収率(%)=回収したPVBの重量(g)/PVB塗布重量(g)×100
以下の評価基準に従い、回収性を評価した:
A:50〜100%
B:25〜50%
C:0〜25%
結果を以下の表5に示す。
【0043】
【表5】
【0044】
比較例1、2、及び11は、回収性ランクCであり、実施例1における回収性ランクAに比較して、回収性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係るガスバリアコーティング樹脂積層体は、ガスバリア性、耐水性、及び回収性を同時に満たすことができるため、リサイクル可能な薄肉化PETボトルに好適に適用可能である。