(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つのポリアミドが、少なくとも85%のアミド基が2つの芳香族環に直接に結合する芳香族ポリアミドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合膜。
前記組成物A1が、フェニレンジアミン、フェニレントリアミン、シクロヘキサントリアミン、シクロヘキサンジアミン、ピペラジンおよびビピペリジンからなる群から選択される、0.5質量%〜5質量%の少なくとも1つのポリアミンモノマーと、少なくとも50質量%の水を含む少なくとも1つの溶媒S2とを含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載の前記複合膜の製造方法。
前記組成物A2が、フタロイルクロライド(1,2−ベンゼンジカルボニルクロライド)、イソフタロイルクロライド(1,3−ベンゼンジカルボニルクロライド)、テレフタロイルクロライド(TCL、1,4−ベンゼンジカルボニルクロライド)およびトリメソイルクロライド(TMC、1,3,5−ベンゼン−トリ−カルボニル−トリクロライド)からなる群から選択される、0.01質量%〜4質量%の少なくとも1つのポリアシルハライドモノマーと、少なくとも1つの炭化水素溶媒S3とを含む、請求項6〜10のいずれか1項に記載の前記複合膜の製造方法。
前記基材層(S)を工程cおよび/または工程dにおいて組成物A1および/または組成物A2と接触させることが、前記基材層(S)を前記組成物A1および/または組成物A2に浸すことによって行われる、請求項6〜11のいずれか1項に記載の前記複合膜の製造方法。
前記正浸透方法が、廃水処理、海水淡水化、医薬組成物の濃縮、食品組成物の濃縮、廃水からの水の再生利用、発電および持ち運び可能な水再使用装置のための方法から選択されている、請求項13に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン化ポリマー(例えば、スルホン化ポリアリールエーテル)に基づく基材層(S)と、ポリアミドフィルム層(F)とを含む薄型フィルム複合膜(TFC膜)に関し、さらにはその製造方法に関する。さらに、本発明は、前記膜を使用する、浸透方法、具体的には、正浸透(FO)方法に関する。
【0002】
膜技術の開発および応用(例えば、透析、膜ろ過(例えば、ナノろ過プロセス、限外ろ過プロセスおよび精密ろ過プロセス、ならびに、浸透プロセス))は、化学的、環境的および生物学的なプロセス工学において近年見られた最も著しい進歩の1つである。
【0003】
世界的な水不足、特に、干ばつが発生しやすい地域および環境汚染地域における水不足を考えると、半透過性の浸透膜を使用する浸透プロセスの最も重要な応用の1つが、廃水または海水を精製することである。相当の努力が、廃水または海水を、より少ないエネルギー消費かつ、より少ない費用で精製する新規な方法を提供することに投入されている。これに関連して、膜に基づく精製プロセスおよび分離プロセスが、蒸留プロセスと比較して、多くの注目を集めている。
【0004】
一般に、用語「浸透」は、溶媒分子が選択的透過性膜(すなわち、溶媒に対して透過性であるが、溶質に対しては透過性でない膜)を通って移動する拡散プロセスであって、溶質濃度が異なる少なくとも2つの溶液を、より溶質濃度の高い溶液に分離する拡散プロセスを表す。この拡散プロセスは、溶質濃度の平衡化を目的とする。浸透プロセスにおいて使用される選択的透過性膜は、「半透過性」膜または浸透膜とも称される。
【0005】
通常、浸透膜は分子量カットオフ(MWCO)を10Da〜500Daの範囲において示す。分子量カットオフ(MWCO)により、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の溶質分子が膜によって保持される最小分子量(単位:ダルトン)が示される。
【0006】
一般には、技術的応用において使用される2つの浸透プロセスモード、すなわち、逆浸透(RO)および正浸透(FO)があり、両浸透プロセスでは、選択的透過性膜が、水を溶存する溶質分子およびイオンから分離するために利用される。
【0007】
逆浸透(RO)では、分離の駆動力として水圧が用いられ、溶質が膜の加圧側に保持され、溶媒が膜を通って反対側に達する。正浸透(FO)では、高濃度の溶液(いわゆる「ドロー溶液」)によって生じる駆動力としての浸透圧によって、水は比較的低い塩濃度を有するいわゆる「フィード溶液」(例えば、汽水または海水)から半透過性膜を通って拡散する。
【0008】
正浸透(FO)は、逆浸透(RO)プロセスおよび熱的分離プロセスを上回る利点をいくつか提供する。例えば、正浸透(RO)は、逆浸透プロセスにおいて必要とされる高い水圧、および、蒸留において必要であり、また、フィード溶液に有害であり得る高温を用いることなく操作することができる。他の分離プロセスと比較して、FOプロセスに必要なエネルギーは少ない。正浸透はまた、広範囲の様々な混入物をかなり阻止することができ、従来の逆浸透プロセスよりも膜汚損が少ないという利点を提供する。
【0009】
様々なFO膜が、例えば、水の再使用、海水淡水化および医薬溶液の濃縮のために利用され得ることが、最新技術では知られている。今日の正浸透の使用における大きな問題は、例えば、市販されているRO膜の数が限られること、知られているRO膜の水透過性能および水分離性能が不十分であること、ならびに、浸透生成物の意図された使用に依存する望ましいドロー溶液が不足していることである。
【0010】
様々な膜が逆浸透プロセスのために設計されているが、これらの膜は多くの場合、厚くて、隙間がない支持体層のために、正浸透プロセスにおいて適用することができない。なぜなら、そのような支持体層は、逆浸透プロセスにおける高圧に耐えるために必要とされるが、FOプロセスでは、水の流束低下および大量の塩漏出を引き起こすからである。これに関して、FO膜のための効果的な支持体層(基材層)は、できる限り薄く、高有孔性でなければならず、かつ、ドロー溶液から膜の活性表面への直接的経路を提供しなければならない。
【0011】
最新技術では、正浸透に好適な、セルローストリアセタート(CTA)に基づくいくつかの平坦な数シート型膜が知られており、軍事、緊急救援およびレクレーションの目的のための水精製の用途で使用される(T.Y.Cath,A.E.Childress,M.Elimelech,"Forward osmosis:Principles,applications,and recent developments".J.Membr.Sci.281(2006)70を参照のこと)。これらのセルローストリアセタート膜は、低い純水透過性および塩阻止を示す。
【0012】
Yip他による刊行物(M.Elimelech,"High Performance thin−film composite forward osmosis membranes",Environ.Sci.Technol.44(3812)2010)は、正浸透適用のためのポリスルホン支持体を含む薄型フィルム複合膜(TFC膜)を記載する。しかしながら、前記支持体層基材は、浸透プロセス、特に、正浸透プロセスでの使用における長期プロセスで膜の一体性を低下させ得るフィンガー様の巨視的空隙からなる。
【0013】
膜(例えば、透析膜または燃料電池における膜)を製造するためのポリアリールエーテルおよびスルホン化ポリアリールエーテルの使用が最新技術において記載される。文書WO2009/030620は、透析フィルターとして使用される中空繊維膜を製造するための分岐型ポリアリールエーテルおよび親水性ポリマーのブレンドを記載する。文書WO2010/142585は、芳香族ポリアリーレンエーテルブロックコポリマー、および、燃料電池用または水処理用の高分子電解質膜の製造のためのそれらの使用を記載する。
【0014】
しかしながら、高い水流束、十分な脱塩ならびに優れた化学的抵抗性および機械的抵抗性を示す、いくつかの応用に好適な新規の、優れた正浸透膜システムが絶えず求められている。同様に、長期安定性も重要な特徴である。
【0015】
本発明の1つの目的は、最新技術の短所を克服することができる、具体的には、正浸透のための使用における優れた特性(例えば、高い水流束)を有する、特に正浸透(FO)プロセスに好適である新規な膜を提供することである。
【0016】
驚くべきことに、基材層における高含有量のスルホン化ポリマーを含む複合膜が、下記の好都合な特徴を有する構造を示すことが見出された:
相互につながった多孔性構造を伴う開放セル;
巨視的空隙がないこと;および
親水性構造。
【0017】
本発明は、下記のa)およびb)を含む(好ましくは、下記のa)およびb)から構成される)複合膜に関する:
a)下記のi)、ii)を含む(または、これらからなる)少なくとも1つの基材層(S):
i)少なくとも1つのスルホン酸基を含む繰り返し構成単位をポリマーP1の総質量に基づいて2質量%〜40質量%、好ましくは5質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜30質量%含む少なくとも1つのスルホン化ポリマーP1;
ii)少なくとも1つのポリマーP2
(ただし、スルホン化ポリマーP1およびポリマーP2は独立して、ポリアリールエーテル、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリスルホン(PSU)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリイミド(PI)、および、前記ポリマーの少なくとも2つの繰り返し構成単位から構成されるコポリマーからなる群から選択される);
b)少なくとも1つのポリアミドを含む(または、少なくとも1つのポリアミドから構成される)少なくとも1つのフィルム層(F)。
【0018】
ポリマーP1およびポリマーP2は同じポリマーでない。具体的には、ポリマーP2は非スルホン化ポリマーである。非スルホン化ポリマーは本発明に関して、スルホン酸基をその繰り返し構成単位に含まないポリマーである。
【0019】
スルホン化ポリマーP1は本発明に関して、スルホン化された繰り返し構成単位と、スルホン化されていない繰り返し構成単位とを含むポリマーであって、スルホン化された繰り返し構成単位の(コポリマーP1の質量に基づく)量が2質量%〜40質量%、好ましくは5質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜30質量%の範囲にあるポリマーである。
【0020】
上記複合膜は、正浸透プロセスにおける使用のために特に重要である下記の所望される特徴を示す:
・十分な、または大きい化学的安定性および機械的安定性(例えば、圧力遅滞浸透における使用に好適な安定性)を有する薄い膜;
・最小限の多孔性、巨視的空隙を有しない構造、および、高親水性を有する基材層(S);
・高い水流束および低下した膜汚損;
・大半の溶質を排除するための、欠陥がほぼない半透過性の活性層。
【0021】
本発明の膜(薄型フィルム複合膜(TFC膜))は正浸透適用のために特に好適である。
【0022】
この新たに開発された膜は、正浸透プロセスを介する海水淡水化、廃水からの水の再生利用、食品溶液および医薬溶液の浸透濃縮のために特に設計される。
【0023】
本発明の複合膜の、親水性で、かつ、巨視的空隙を有しない膜基材層(S)は、膜の一体性を高めることができる。さらに、膜基材層(S)における、巨視的空隙を有しない構造および高含有量のスルホン化コポリマーは、改善された水流束および低い塩漏出をもたらす点で優れている。加えて、膜汚損が、とりわけ、薄いフィルム層(F)および基材層(S)の親水性のために軽減されるであろう。
【0024】
用語「巨視的空隙」は本発明に関して、細孔サイズが10マイクロメートルを超える細孔(例えば、細長い細孔)を意味する。巨視的空隙は、転相技術により製造される非対称なポリマー膜において見出され得ることが多い。
【0025】
具体的には、本発明の複合膜は、
i)5質量%〜95質量%、好ましくは25質量%〜75質量%の少なくとも1つのスルホン化ポリマーP1、および
ii)5質量%〜95質量%、好ましくは25質量%〜75質量%の少なくとも1つのポリマーP2
を含む少なくとも1つの基材層(S)を含む。
【0026】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのスルホン化ポリマーP1および/または少なくとも1つのポリマーP2は、下記の式(1):
【化1】
[式中、
xは0.5または1である;
tおよびqはそれぞれが互いに独立して、0、1、2または3である;
Q、T、Zはそれぞれが互いに独立して、化学結合、または、−O−、−S−、−SO
2−、S=O、C=O、−N=N−、−R
aC=CR
b−および−CR
cR
d−の中から選択される基であり、これらの式において、
R
aおよびR
bはそれぞれが互いに独立して、水素原子またはC
1〜C
12−アルキル基であり、かつ
R
cおよびR
dはそれぞれが互いに独立して、水素原子、あるいは、C
1〜C
12−アルキル基、C
1〜C
12−アルコキシ基またはC
6〜C
18−アリール基であり、この場合、R
cおよびR
dは、フッ素原子および/または塩素原子によって独立して場合により置換されるか、あるいは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、1つ以上のC
1〜C
6−アルキル基によって場合により置換されるC
3〜C
12−シクロアルキル基を形成する場合があり、
ただし、T基、Q基およびZ基の少なくとも1つは−SO
2−またはC=Oであり、かつ、tおよびqがそれぞれ0であるとき、Zは−SO
2−またはC=Oである;
Ar、Ar
1はそれぞれが互いに独立して、C
1〜C
12−アルキル基、C
6〜C
18−アリール基、C
1〜C
12−アルコキシ基、ハロゲン原子およびスルホン酸基から選択される1つ以上の基によって場合により置換されるC
6〜C
18−アリーレン基である]に従う繰り返し構成単位を含む(または、そのような繰り返し構成単位から構成される)ポリアリールエーテルである。
【0027】
さらなる好ましい実施形態において、ポリマーP1および/またはポリマーP2はポリエーテルスルホン(PESU)(これは、ポリアリールエーテルスルホンとも称される)である。好ましくは、少なくとも1つのスルホン化ポリマーP1および/または少なくとも1つのポリマーP2は、下記の式(1):
【化2】
[式中、
xは0.5または1である;
tおよびqはそれぞれが互いに独立して、0、1、2または3である;
Q、T、Zはそれぞれが互いに独立して、化学結合、または、−O−、−S−、−SO
2−、S=O、C=O、−N=N−から選択される基であり、
ただし、T基、Q基およびZ基の少なくとも1つは−SO
2−であり、かつ、tおよびqが0であるならば、Zは−SO
2−である;
Ar、Ar
1はそれぞれが互いに独立して、C
1〜C
12−アルキル基、C
6〜C
18−アリール基、C
1〜C
12−アルコキシ基、ハロゲン原子およびスルホン酸基から選択される1つ以上の基によって場合により置換されるC
6〜C
18−アリーレン基である]に従う繰り返し構成単位を含む(好ましくは、そのような繰り返し構成単位から構成される)ポリエーテルスルホン(PESU)である。
【0028】
式中、xが0.5または1である;
tおよびqがそれぞれ、互いに独立して、0、1または2である;
Q、T、Zがそれぞれ、互いに独立して、化学結合、または、−O−および−SO
2−から選択される基であり、
ただし、T基、Q基およびZ基の少なくとも1つは−SO
2−であり、かつ、tおよびqが0であるならば、Zは−SO
2−である;
Ar、Ar
1が、それぞれ互いに独立して、1つ以上のスルホン酸基によって場合により置換されるC
6〜C
12−アリーレン基である
上記式(1)の繰り返し構成単位を含む(または、そのような繰り返し構成単位から構成される)ポリエーテルスルホン(PESU)の使用がさらに好ましい。
【0029】
下記の式(2):
【化3】
に従う構成単位を含む(または、そのような構成単位から構成される)ポリエーテルスルホン(PESU)の使用がさらに好ましい。
【0030】
下記の式(3)
【化4】
に従う繰り返し構成単位を含む(または、そのような繰り返し構成単位から構成される)ポリエーテルスルホン(PESU)の使用がさらに好ましい。
【0031】
さらなる実施形態において、ポリマーP1および/またはポリマーP2は、下記の式(4):
【化5】
[式中、
R
1はC=Oまたは−SO
2−である;
Arは2価の芳香族基である]に従う繰り返し構成単位を含む(または、そのような繰り返し構成単位から構成される)ポリフェニレンスルホン(PPSU)である。
【0032】
基Arはまた、本文書における一般式(2)の構造について、欧州特許出願公開EP−A−1394879において与えられるような意味を有することができる。
【0033】
R
1は好ましくは−SO
2−である。
【0034】
好ましくは、ポリマーP1および/またはポリマーP2は、下記の式(5):
【化6】
[式中、
R
1はC=Oまたは−SO
2−である;
Arは2価の芳香族基である]に従う繰り返し構成単位を含む(または、そのような繰り返し構成単位から構成される)ポリフェニレンスルホン(PPSU)である。
【0035】
芳香族基Arは好ましくは多環式芳香族基であり、好ましくは下記の一般式(6):
【化7】
のビフェニル基である。
【0036】
一般式(4)および一般式(5)のビフェニル基において、フェニル基はまた、−C(CH
3)
2−基を介して連結され得る。
【0037】
さらなる実施形態において、ポリマーP1および/またはポリマーP2は、下記の式(7):
【化8】
[式中、
R
2a、R
2bはそれぞれが互いに独立して、H、C
1〜C
6−アルキルまたは−(CH
2)
p−COOH(式中、pは0〜6の整数である)である;
Ar
2、Ar
3はそれぞれが互いに独立して、C
1〜C
12−アルキル基、C
6〜C
18−アリール基、C
1〜C
12−アルコキシ基、ハロゲン原子およびスルホン酸基から選択される1つ以上の基によって場合により置換されるC
6〜C
18−アリーレン基である;かつ
Yは−SO
2−である]に従う繰り返し構成単位を含む(または、そのような繰り返し構成単位から構成される)ポリスルホン(PSU)である。
【0038】
下記のように定義される式(7)の繰り返し構成単位が好ましい:
R
2a、R
2bはそれぞれが互いに独立して、HまたはC
1〜C
4−アルキルである;
Ar
2、Ar
3はそれぞれが互いに独立して、1つ以上のスルホン酸基によって場合により置換されるC
6〜C
12−アリーレン基である;かつ
Yは−SO
2−である。
【0039】
好ましくは、ビスフェノールAおよび4,4’−ジクロロジフェニルスルホンの重縮合から得られるポリスルホン(PSU)が本発明において使用される。好ましくは、前記ポリスルホンは、少なくとも1つのポリマーP2として使用される。
【0040】
さらなる実施形態において、ポリマーP1および/またはポリマーP2は、下記の式(8):
【化9】
に従う繰り返し構成単位を含む(または、そのような繰り返し構成単位から構成される)ポリアクリロニトリル(PAN)である。
【0041】
さらなる実施形態において、ポリマーP1および/またはポリマーP2は、3,3’,4,4’−テトラアミンジフェニレンおよびイソフタル酸の反応(重縮合)から得られるポリベンゾイミダゾール(PBI)である。
【0042】
さらなる実施形態において、ポリマーP1および/またはポリマーP2は、ビスフタル酸無水物および1,3−ジアミノベンゼン、または、N−フェニル−4−ニトロフタルイミドおよびビスフェノールAの二ナトリウム塩の反応(重縮合)から得られるポリエーテルイミド(PEI)である。
【0043】
さらなる実施形態において、ポリマーP1および/またはポリマーP2は、下記の式(9):
【化10】
に従う繰り返し構成単位を含む(または、そのような繰り返し構成単位から構成される)ポリフェニレンオキシド(PPO)(これは、ポリフェニレンエーテル(PPE)とも称される)である。
【0044】
さらなる実施形態において、ポリマーP1および/またはポリマーP2は、下記の式(10):
【化11】
に従う繰り返し構成単位を含む(または、そのような繰り返し構成単位から構成される)ポリビニリデンフルオライド(PVDF)である。
【0045】
さらなる実施形態において、ポリマーP1および/またはポリマーP2は、下記の式(11):
【化12】
[式中、Rは、脂肪族または芳香族の置換された基または非置換の基が可能である]に従う繰り返し構成単位を含む(または、そのような繰り返し構成単位から構成される)ポリイミド(PI)である。様々なポリイミドが好ましくは、二無水物(例えば、テトラカルボン酸の二無水物)およびジアミンの重縮合によって製造される。芳香族ポリイミドが好ましい。例えば、ピロメリット酸二無水物および4,4’−オキソジアニリンから製造されるポリイミドが使用される。
【0046】
スルホン化ポリマーP1の好ましい実施形態が下記に記載される。
【0047】
好ましくは、少なくとも1つのスルホン化ポリマーP1は、ポリアリールエーテル、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリスルホン(PSU)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリイミド(PI)、および、前記ポリマーの少なくとも2つの繰り返し構成単位から構成されるコポリマーからなる群から選択されるスルホン化ポリマーである(ただし、これらのポリマーは上記のように定義される)。より好ましくは、少なくとも1つのスルホン化ポリマーP1は、ポリアリールエーテル、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリスルホン(PSU)、および、前記ポリマーの少なくとも2つの繰り返し構成単位から構成されるコポリマーからなる群から選択されるスルホン化ポリマーである(ただし、これらのポリマーは上記のように定義される)。
【0048】
少なくとも1つのスルホン酸基(−SO
3H)を含む繰り返し構成単位を含むスルホン化ポリマーP1が好ましい。好ましくは、前記少なくとも1つのスルホン酸基は芳香族環に直接に結合する。本発明によれば、少なくとも1つのスルホン化ポリマーP1は典型的には、ポリマーP1の総質量に基づいて2質量%〜40質量%、好ましくは5質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜30質量%の、少なくとも1つのスルホン酸基を含む繰り返し構成単位を含む。
【0049】
当業者は、スルホン酸基が、条件に依存して、遊離型酸(−SO
3H)の形態または脱プロトン化された形態であってもよいことを理解している。
【0050】
具体的には、少なくとも1つのスルホン化ポリマーP1は、ArおよびAr
1がそれぞれ、互いに独立して、1つ以上のスルホン酸基によって置換される下記の一般式(6):
【化13】
のビフェニル基である上記で定義されるような式(1)に従う繰り返し構成単位を含む(好ましくは、そのような繰り返し構成単位から構成される)ポリアリールエーテルである。
【0051】
ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであり得る、上記で記載されるような少なくとも2つの繰り返し構成単位を含むスルホン化コポリマーがさらに好ましい。ブロックコポリマーの使用が好ましい。スルホン化ポリマーP1としての使用に好ましいコポリマーが本発明に関しては、国際公開WO2010/146052および欧州特許出願公開EP−A1394879に記載される。
【0052】
スルホン化コポリマーP1の製造を、例えば、国際公開WO2010/146052に記載されるように、モノマーにおける直接のスルホン化により、あるいは、スルホン化されていないポリマーまたはコポリマーのポストスルホン化方法により行うことができる。
【0053】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つのスルホン化ポリマーP1は、下記の式(12):
【化14】
[式中、
nは3〜1500、好ましくは5〜500の整数である;
mは3〜1500、好ましくは5〜500の整数である;
aおよびbは互いに独立して、0〜2の整数であり、
ただし、aおよびbはともに、0でない]に従う少なくとも1つのポリエーテルスルホン(PESU)セグメントおよび少なくとも1つのポリフェニレンスルホン(PPSU)セグメントを含むブロックコポリマーである。
【0054】
スルホン化ポリマーP1はまた、上記式(12)に従う繰り返し構成単位を含み、この繰り返し構成単位がランダムに分布するコポリマーであり得る。
【0055】
本発明に従って使用されるスルホン化ポリマーP1は、ポリアリールエーテル、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリスルホン(PSU)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリイミド(PI)、および、前記ポリマーの少なくとも2つの繰り返し構成単位から構成されるコポリマーから選択される上記ポリマーの少なくとも1つを(例えば、濃硫酸を使用して)スルホン化することによって得られる。スルホン化ポリマーP1は、最初にポリマー(例えば、PESU構成単位およびPPSU構成単位を含むブロックコポリマー)を製造し、続いて、濃硫酸水溶液(約98%の濃度)によって選択的にスルホン化することによって製造することができる。
【0056】
好ましくは、少なくとも1つのスルホン化コポリマーP1は、スルホン化された繰り返し構成単位と、スルホン化されていない繰り返し構成単位とを含み、ただし、この場合、スルホン化された繰り返し構成単位の(コポリマーP1の質量に基づく)量が2質量%〜40質量%、好ましくは5質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜30質量%の範囲にある。
【0057】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのスルホン化ポリマーP1は、ポリアリールエーテル、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリスルホン(PSU)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリイミド(PI)、および、前記ポリマーの少なくとも2つの繰り返し構成単位から構成されるコポリマーに基づく少なくとも1つのポリマーを含むコポリマーであり、ただし、この場合、前記ポリマーはスルホン化された繰り返し構成単位をコポリマーP1の総質量に基づいて2質量%〜40質量%、好ましくは5質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜30質量%含む。より好ましくは、少なくとも1つのスルホン化コポリマーP1は、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリスルホン(PSU)に基づく少なくとも1つのポリマーを含み、ただし、この場合、前記ポリマーはスルホン化された繰り返し構成単位をコポリマーP1の総質量に基づいて2質量%〜40質量%、好ましくは5質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜30質量%含む。
【0058】
さらなる好ましい実施形態において、スルホン化コポリマーP1は、少なくとも1つのスルホン酸基を含む繰り返し構成単位のセグメント(スルホン化セグメント、親水性セグメント)と、スルホン酸基を全く含まない繰り返し構成単位のセグメント(非スルホン化セグメント、疎水性セグメント)とを含むブロックコポリマーであり、ただし、この場合、親水性セグメントの質量比割合がブロックコポリマー全体に基づいて2質量%〜40質量%、好ましくは5質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜30質量%である。
【0059】
少なくとも1つのスルホン化コポリマーP1は多くの場合、少なくとも1つのポリエーテルスルホン(PESU)セグメントと、少なくとも1つのポリフェニレンスルホン(PPSU)セグメントとを含むスルホン化ブロックコポリマーである。好ましくは、少なくとも1つのポリフェニレンスルホン(PPSU)セグメントは、少なくとも1つのスルホン酸基を含む。
【0060】
典型的には、ポリフェニレンスルホン(PPSU)セグメントは、下記の化学式(13):
【化15】
[式中、
R
1はC=Oまたは−SO
2−である;
Arは2価の芳香族基である;かつ
mは3〜1500、好ましくは5〜500の整数である]を有する。
【0061】
基Arはまた、欧州特許出願公開EP−A−1394879における一般式(2)の構造について欧州特許出願公開EP−A−1394879において与えられるような意味を有し得る。好ましくは、芳香族基Arは、少なくとも1つのスルホン酸基(−SO
3H)により置換される。
【0062】
R
1は好ましくは−SO
2−である。
【0063】
好ましくは、ポリフェニレンスルホン(PPSU)セグメントは、下記の化学式(14):
【化16】
[式中、
R
1はC=Oまたは−SO
2−である;
Arは2価の芳香族基である;かつ
mは3〜1500、好ましくは5〜500の整数である]を有する。
【0064】
芳香族基Arは好ましくは多環式芳香族基であり、好ましくは下記の一般式(6):
【化17】
のビフェニル基である。
【0065】
一般式(6)のビフェニル基において、フェニル基はまた、−C(CH
3)
2−基を介して連結され得る。好ましくは、芳香族基Arは、少なくとも1つのスルホン酸基(−SO
3H)により置換される。
【0066】
典型的には、ポリエーテルスルホン(PESU)セグメントは下記の化学式(15):
【化18】
[式中、nは3〜1500の整数である]を有する。
【0067】
好ましくは、ポリエーテルスルホン(PESU)セグメントは下記の化学式(16):
【化19】
[式中、nは3〜1500の整数である]を有する。
【0068】
好ましくは、上記で記載されるようなブロックコポリマーは、上記で定義されたポリフェニレンスルホン(PPSU)セグメントまたはポリエーテルスルホン(PESU)セグメントを含むプレポリマーを使用して製造される。ポリマーP1を製造するためのモノマーとして使用可能な好適な芳香族ジハライドおよび二価アルコールが国際公開WO2010/146052において言及される。
【0069】
ポリマーP2の好ましい実施形態が下記に記載される。
【0070】
好ましくは、少なくとも1つのポリマーP2は、ポリアリールエーテル、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリスルホン(PSU)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリイミド(PI)、および、前記ポリマーの少なくとも2つの繰り返し構成単位から構成されるコポリマーからなる群から選択される(ただし、これらのポリマーは上記のように定義される)。より好ましくは、少なくとも1つのポリマーP2は、ポリアリールエーテル、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリスルホン(PSU)、および、前記ポリマーの少なくとも2つの繰り返し構成単位から構成されるコポリマーから選択される(ただし、これらのポリマーおよび繰り返し構成単位は上記のように定義される)。
【0071】
好ましくは、少なくとも1つのポリマーP2は、スルホン化された繰り返し構成単位(スルホン酸基を有する繰り返し構成単位)を含まない。
【0072】
好ましくは、少なくとも1つのポリマーP2は、
Ar、Ar
1がそれぞれ、互いに独立して、C
1〜C
12−アルキル基、C
6〜C
18−アリール基、C
1〜C
12−アルコキシ基およびハロゲン原子から選択される1つ以上の基によって場合により置換されるC
6〜C
18−アリーレン基である
上記で定義されるような式(I)に従うポリアリールエーテルおよび/またはポリエーテルスルホン(PESU)から選択される。
【0073】
好ましくは、少なくとも1つのポリマーP2は、下記の式(3):
【化20】
に従う繰り返し構成単位から構成されるポリエーテルスルホン(PESU)である。
【0074】
特に、本発明の複合膜は、ポリマーP1およびポリマーP2の質量に基づいて5質量%〜95質量%、好ましくは25質量%〜75質量%、より好ましくは35質量%〜55質量%の少なくとも1つのスルホン化ポリマーP1を含む。好ましくは、本発明の複合膜は、(ポリマーP1およびポリマーP2の質量に基づいて)25質量%超、特に50質量%超のスルホン化ポリマーP1を含む。好ましい実施形態において、本発明は、スルホン化ポリマーP1対ポリマーP2の質量比が0.4〜1.5、好ましくは0.4〜1、より好ましくは0.6〜1の範囲にある上記で記載されるような複合膜に関する。
【0075】
典型的には、基材層(S)は厚さが1μm〜200μm、好ましくは10μm〜100μm、より好ましくは10μm〜50μmの範囲にある。
【0076】
本発明はまた、少なくとも1つのポリアミド、好ましくは芳香族ポリアミド(アラミド)を含む(または、少なくとも1つのポリアミド、好ましくは芳香族ポリアミド(アラミド)からなる)少なくとも1つのフィルム層(F)を含む複合膜に関する。好ましくは、本発明は、少なくとも1つのポリアミドが芳香族ポリアミド(アラミド)であり、アミド基(CO−NH)の少なくとも85%が2つの芳香族環に直接に結合する上記で記載されるような複合膜に関する。好ましくは、本発明に従うポリアミドはポリ−メタフェニレンイソフタルアミド(MPIA)および/またはポリ−パラフェニレンテレフタルアミド(PPAT)である。
【0077】
フィルム層(F)は、少なくとも2つのアミン基を有する少なくとも1つのポリアミンモノマーと、少なくとも2つのアシルハライド基を有する少なくとも1つのポリアシルハライドモノマーとの、基材層の表面における反応により得られる。好適なポリアミンモノマーおよびポリアシルハライドモノマーが、複合膜を製造するための方法と併せて下記に記載される。
【0078】
フィルム層(F)は好ましくは、フィルム厚さが10nm〜500nm、好ましくは50nm〜300nm、より好ましくは70nm〜200nmの範囲にある。
【0079】
さらに、本発明は、少なくとも1つの基材層(S)および少なくとも1つのフィルム層(F)を含む本発明の複合膜を製造するための方法であって、下記の工程、
a)下記のi)〜iv)を含むポリマー組成物Pを製造する工程:
i)少なくとも1つのスルホン酸基を含む繰り返し構成単位をポリマーP1の総質量に基づいて2質量%〜40質量%含む少なくとも1つのスルホン化ポリマーP1;
ii)少なくとも1つのポリマーP2;
iii)好ましくは、N−メチルピロリドン、N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、トリエチルホスファート、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンおよびメチルエチルケトンからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒S1;
iv)エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびポリビニルピロリドンからなる群から選択される必要に応じて使用される少なくとも1つのさらなる添加物;
(ただし、スルホン化ポリマーP1およびポリマーP2は独立して、ポリアリールエーテル、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリスルホン(PSU)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリイミド(PI)、および、前記ポリマーの少なくとも2つの繰り返し構成単位から構成されるコポリマーからなる群から選択される);
b)前記ポリマーP1およびポリマーP2を前記溶媒S1から分離して、基材層(S)を形成する工程;
c)前記基材層(S)を、少なくとも2つのアミン基を有する少なくとも1つのポリアミンモノマーと、少なくとも1つの溶媒S2とを含む組成物A1と接触させる工程;
d)前記基材層(S)を、少なくとも2つのアシルハライド基を有する少なくとも1つのポリアシルハライドモノマーと、少なくとも1つの溶媒S3とを含む組成物A2と接触させて、フィルム層(F)を前記基材層(S)の上に形成させる工程であって、複合膜が得られる工程
を含む方法に関する。
【0080】
上記方法は、正浸透膜を製造するための確実かつ容易な方法を提供し、ただし、この方法では、得られた複合膜が、正浸透適用における優れた性質、具体的には、改善された水流束、および、十分な塩漏出または改善された塩漏出、および、十分な機械的安定性を示す。
【0081】
膜の基材層(S)としての、スルホン化ポリマーおよび非スルホン化ポリマーのポリマーブレンドは、膜の機械的強度を保持しながら、親水性を誘導し、かつ、巨視的空隙を有さない形態を達成することができる。スルホン化コポリマーに由来する親水性材料の高含量(例えば、ポリマー組成全体の50質量%)を、本発明の方法を使用して基材層に導入することができる。巨視的空隙を有さない形態を有する得られたTFC−FO膜は、高い水流束を正浸透において達成することができる。これに関して、開発された新しい正浸透膜は、海水淡水化、廃水処理、医薬品および果汁の濃縮、発電、同様にまた、宇宙空間における持ち運び可能な水再使用における適用に大きな潜在的可能性を示す。
【0082】
本発明の方法の工程aは、ポリマー組成物(P)の製造に関する。少なくとも1つのスルホン化ポリマーP1および少なくとも1つのポリマーP2の好ましい実施形態が、本発明の膜に関連して上記に記載される。
【0083】
少なくとも1つの溶媒S1は特に、N−メチルピロリドン、N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、トリエチルホスファート、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンおよびメチルエチルケトンからなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つの溶媒S1はN−メチルピロリドンである。
【0084】
好ましくは、本発明は、ポリマー組成物(P)が、
i)2.5質量%〜22.5質量%、好ましくは2.5質量%〜15質量%の少なくとも1つのスルホン化ポリマーP1;
ii)2.5質量%〜15質量%の少なくとも1つのポリマーP2;
iii)N−メチルピロリドン、N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、トリエチルホスファート、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンおよびメチルエチルケトンからなる群から選択される、62.5質量%〜95質量%、好ましくは70質量%〜95質量%、好ましくは50質量%〜95質量%の少なくとも1つの溶媒S1;
iv)必要な場合には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびポリビニルピロリドンからなる群から選択される、0質量%〜30質量%、好ましくは0.1質量%〜20質量%の少なくとも1つのさらなる添加物
を含む、上記で記載されるような複合膜を製造するための方法に関する。
【0085】
ポリマー組成物(P)に関連して上記で示される質量パーセントはポリマー組成物(P)全体の質量に基づく。
【0086】
好ましくは、スルホン化ポリマーP1およびポリマーP2は、0.4〜1.5、好ましくは0.4〜1、より好ましくは0.6〜1の範囲における質量比(P1/P2)で使用される。
【0087】
本発明の工程b)は、ポリマーP1およびポリマーP2を溶媒S1から分離して、基材層(S)を形成することに関する。
【0088】
好ましい実施形態において、工程bにおけるポリマーP1およびポリマーP2の溶媒S1からの分離が、
− ポリマー組成物(P)を支持体内に適用すること;
− 少なくとも1つのC
1〜C
12脂肪族アルコールおよび/または水を含む凝集組成物(C)を、基材層(S)を形成することによってポリマー組成物(P)に加えること
によって行われる。
【0089】
原理的には、複合膜の形態は様々であり得、ただし、そのような場合、膜は特に、平坦な膜の形態で存在するか、または、繊維(例えば、中空繊維)の形態で存在する。好ましくは、本発明による膜は、平坦な膜の形態である。本発明の方法が、中空繊維膜を製造するために使用されるとき、工程b)は好ましくは湿式紡糸によって行われる。
【0090】
上記方法で使用される凝集組成物は好ましくは、溶媒S1と完全に混和し得る液体であり、ただし、この場合、ポリマーP1およびポリマーP2は凝集組成物(C)において不溶性であるか、または、部分的に不溶性である。具体的には、凝集組成物は、少なくとも1つの脂肪族C
1〜C
6アルコールまたは水またはそれらの混合物を含む(あるいは、好ましくは、少なくとも1つの脂肪族C
1〜C
6アルコールまたは水またはそれらの混合物から構成される)。好ましくは、凝集組成物は、水、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも1つの液体を含む。さらなる好ましい実施形態において、水が凝集組成物(C)として使用される。
【0091】
本発明の工程c)および工程d)は、基材層(S)を、少なくとも1つのポリアミンモノマーを含む組成物A1と、そして、少なくとも1つのポリアシルハライドモノマーを含む組成物A2と接触させて、フィルム層(F)を基材層(S)の上に形成させ、複合膜を得ることに関する。
【0092】
好ましくは、本発明の方法の工程c)および工程d)は、ポリアミドフィルム層(F)が形成される場合、いわゆる界面重合によって行われる。界面重合により、高い水流束を示す極薄の活性層を形成することができる。界面重合反応は一般に、有機側で非常に速く起こり、欠陥がない極薄フィルムを界面近くでもたらす。結果、膜製造コストが大幅に削減される。
【0093】
ポリアミンモノマーは本発明に関して、少なくとも2つのアミン基(好ましくは2つまたは3つのアミン基)を有する化合物である。ポリアミンモノマーは典型的には、第一級アミン基または第二級アミン基から選択される少なくとも2つのアミン基を有する。好ましくは、少なくとも2つの第一級アミン基を有するポリアミンモノマーが本発明の方法において用いられる。
【0094】
一実施形態において、少なくとも1つのポリアミンモノマーは、フェニレンジアミン、フェニレントリアミン、シクロヘキサントリアミン、シクロヘキサンジアミン、ピペラジンおよびビペリジンからなる群から選択される。
【0095】
好ましくは、ポリアミンモノマーは、少なくとも2つのアミン基を含む芳香族ポリアミンモノマーであり、ただし、この場合、これらのアミン基は芳香族環に直接に結合する。典型的には、芳香族環は、2つ以下の芳香族環を含む芳香族環系である。好ましくは、芳香族環はフェニルである。好ましくは、少なくとも1つのポリアミンモノマーはフェニレンジアミンから選択される。好ましくは、少なくとも1つのポリアミンモノマーはメタ−フェニレンジアミン(MPD)である。
【0096】
少なくとも1つの溶媒S2は好ましくは極性溶媒である。好ましくは、少なくとも1つの溶媒S2は、水、および、水と、少なくとも1つの脂肪族C
1〜C
6アルコールとの混合物から選択される。好ましくは、ポリアミンモノマーの水溶液が本発明に従って使用され、ただし、この場合、水性溶媒は、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも70質量%、好ましくは少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも99質量%の水を含む。
【0097】
好ましい実施形態において、組成物A1は、フェニレンジアミン、フェニレントリアミン、シクロヘキサントリアミン、シクロヘキサンジアミン、ピペラジンおよびビピペリジンからなる群から選択される、0.5質量%〜5質量%の少なくとも1つのポリアミンモノマーと、少なくとも50質量%の水を含む少なくとも1つの溶媒S2とを含む。
【0098】
ポリアシルハライドモノマーは本発明に関して、少なくとも2つのアシルハライド基(これは、酸ハライド基としても知られている)を有する化合物であり、ただし、この場合、アシルハライド基は、ヒドロキシル基をハライド基によって置換することによってカルボン酸基に由来する。ハライドは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択され得る。好ましくは、ポリアシルハライドモノマーはポリアシルクロライドである。
【0099】
好ましくは、少なくとも2つのアシルハライド基(好ましくは2つまたは3つのアシルハライド基)を含む芳香族ポリアシルハライドが本発明の方法において用いられ、ただし、この場合、これらのアシルハライド基は芳香族環に直接に結合する。典型的には、芳香族環は、2つ以下の芳香族環を含む芳香族環系である。具体的には、芳香族環は、フェニル、ビフェニル、ナフチルであり、好ましくはフェニルである。好ましくは、少なくとも1つのポリアシルハライドは、芳香族ポリカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸(メタ−フタル酸)、テレフタル酸(パラ−フタル酸))に基づくアシルハライドから選択される。好ましくは、少なくとも1つのポリアシルハライドは、フタロイルクロライド(1,2−ベンゼンジカルボニルクロライド)、イソフタロイルクロライド(1,3−ベンゼンジカルボニルクロライド)、テレフタロイルクロライド(TCL、1,4−ベンゼンジカルボニルクロライド)およびトリメソイルクロライド(TMC、1,3,5−ベンゼン−トリ−カルボニル−トリクロライド)から選択される。
【0100】
少なくとも1つの溶媒S3は好ましくは炭化水素溶媒である。好ましくは、少なくとも1つの溶媒S3は、C
1〜C
12アルカン、C
6〜C
12シクロアルカン、イソパラフィン系液体(例えば、Isopar(登録商標))、C
6〜C
12アレン(例えば、ベンゼン、トルエン)からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも溶媒S3は、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンおよびベンゼンからなる群から選択される。より好ましくは、n−ヘキサンが溶媒S3として使用される。
【0101】
好ましい実施形態において、組成物A2は、フタロイルクロライド(1,2−ベンゼンジカルボニルクロライド)、イソフタロイルクロライド(1,3−ベンゼンジカルボニルクロライド)、テレフタロイルクロライド(TCL、1,4−ベンゼンジカルボニルクロライド)およびトリメソイルクロライド(TMC、1,3,5−ベンゼン−トリ−カルボニル−トリクロライド)からなる群から選択される、0.01質量%〜4質量%の少なくとも1つのポリアシルハライドモノマーと、少なくとも1つの溶媒S3、好ましくは、少なくとも1つの炭化水素溶媒S3とを含む。
【0102】
特に、本発明は、基材層(S)を工程cおよび/または工程dにおいて組成物A1および/または組成物A2と接触させることが、基材層(S)を組成物A1および/または組成物A2に浸すことによって行われる、上記で記載されるような複合膜を製造するための方法に関する。好ましくは、工程cおよび/または工程dの後における基材層(S)上の残留する組成物A1および/または組成物A2は浸漬後に拭き取られる。典型的には、組成物A1における基材層(S)の接触時間は0.1分〜30分(min)である。典型的には、組成物A2における基材層(S)の接触時間は5秒〜240秒(s)である。
【0103】
上記で述べられるような本発明の方法において、基材層(S)および/または複合膜を必要に応じて、工程bおよび/または工程dの後のコンディショニング工程において処理することができ、ただし、この場合、コンディショニング工程は、清浄化、洗浄、乾燥および架橋から選択することができる。好ましくは、工程bの後において、得られた基材層(S)は洗浄および乾燥される。好ましくは、工程dの後において、複合膜は洗浄され、および/または、30℃〜150℃、好ましくは50℃〜100℃、好ましくは50℃〜70℃で(例えば、空気中で)乾燥される。典型的には、複合膜は洗浄され、および/または、10s〜30min乾燥される。
【0104】
得られた複合膜は典型的には、使用前に水で洗浄され、水中で保持される。
【0105】
さらに、本発明は、下記の工程、
a)上記で記載される複合膜を供給する工程;
b)複合膜を複合膜の一方の側において少なくとも1つの水性ドロー溶液と接触させ、かつ、複合膜の反対側において少なくとも1つの水性フィード溶液と接触させ、水がフィード溶液からドロー溶液に輸送される工程
を含む正浸透プロセスに関する。
【0106】
用語「正浸透(FO)」は本発明に関して、駆動力としての浸透圧により、水が、いわゆるフィード溶液から、いわゆるドロー溶液にまで半透過性膜を通って拡散するプロセスを表し、ただし、この場合、フィード溶液は、ドロー溶液と比較して比較的より低い塩濃度を示す。
【0107】
さらに、本発明は、廃水処理、海水淡水化、医薬組成物の濃縮、食品組成物の濃縮、ならびに、廃水からの水の再生利用、発電および持ち運び可能な水再使用装置のための、好ましくは廃水処理および海水淡水化のための正浸透プロセスにおける本発明の複合膜の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【
図1】
図1は、50質量%のスルホン化ポリマーP1を含む基材層(S)の断面のFESEM(電界放射型走査電子顕微鏡法)画像を示す:(a)断面;(b)基材層(S)の巨視的空隙非含有スポンジ様構造(拡大画像)。
【
図2】
図2は、複合膜の試験に使用された実験室規模の循環ろ過装置の配置を概略的に示す。図中、参照番号は下記を表す:(1)クロスフロー透過セル;(2)貯蔵タンクにおけるフィード溶液;(3)貯蔵タンクにおけるドロー溶液;(4)流量計;(5)ポンプ;(6)温度および圧力の測定デバイス;(7)天秤;(8)コンピューター。
【0109】
本発明が下記の実施例によってより詳細に記載される。
【0110】
実施例1−スルホン化ポリアリールエーテルに基づく基材層(S)の製造
ポリエーテルスルホン(PESU)(ポリマーP2)と、ポリエーテルスルホン(PESU)およびポリフェニレンスルホンPPSUのスルホン化コポリマー(ポリマーP1)とからなる、前記ポリマーの比率が50/50質量%である流延溶液を製造した。
【0111】
ポリエーテルスルホン(ポリマーP2)を、モノマーのジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)およびジヒドロキシ−ジフェニルスルホン(DHDPS)を使用して製造した。これは、式(3)に従う繰り返し構成単位を含むものであった。
【0112】
スルホン化されたポリエーテルスルホン/ポリフェニレンスルホンコポリマー(ポリマーP1)は、式(12)に従う繰り返し構成単位を含むものであった(ただし、スルホン化コポリマー(ポリマーP1)はポリマーP1の質量に基づいて11.5質量%のスルホン化構成単位(スルホン化PPSU構成単位)を示す)。
【0113】
PESU(ポリマーP2)の8質量%と、PESUおよびPPSUからなるスルホン化コポリマー(ポリマーP1)の8質量%とからなる流延溶液を、16質量%のエチレングリコール(EG)の添加のもと、一致する量の前記ポリマーをN−メチルピロリドン(NMP>99.5%)に溶解して調製した。完全に溶解した後、流延溶液を、気泡を除くために、撹拌せずに一晩保った。
【0114】
その後、ポリマー溶液(P)を、60ミクロンの流延用ナイフを使用して転相法によりガラスプレート上に流延して、均質な膜基材を形成した。その後、流延されたままの膜基材層を水に漬けて、親水性の多孔性基材を形成するための溶媒交換プロセスを行った。得られた膜をさらに、水道水で1日洗浄して、残留溶媒を完全に除いた。
【0115】
流延されたままの膜基材(基材層(S))の形態を走査型電子顕微鏡法FESEMによって分析した(上部表面、底部表面および断面)。
図1aおよび
図1bは基材層(S)の断面を示す。PESUおよびスルホン化PESU/PPSUコポリマーの50/50質量%のポリマーブレンドから流延された膜の断面が、巨視的空隙を有しないスポンジ様の多孔性構造を示すことが認められた。
【0116】
加えて、純水を使用する支持体膜基材(基材層(S))の水透過性と、分子量カットオフ(MWCO)とを求めた。支持体膜基材の純水透過性(PWP)は188.63LMH(L/(m
2hr))、分子量カットオフ(MWCO)は414,829Daであった。
【0117】
実施例2−基材層(S)上への薄いフィルム層(F)の製造
実施例1で製造されるような、スルホン化ポリアリールエーテルに基づく基材(基材層(S))を使用して、薄いポリアミド層(フィルム層(F))を形成した。基材層上へのポリアミド層の形成は界面重合に基づいた。基材層を最初、脱イオン化水(DI水)における2質量%のMPD(メタ−フェニレンジアミン)に1分間漬けた。その後、ろ紙を使用して、膜表面の水滴を除いた。続いて、膜の上部表面を、n−ヘキサンにおける0.05質量%のTMC(トリメソイルクロライド)溶液と15秒間接触させた。得られた膜を60℃で1分間乾燥し、その後、空気中で2分間乾燥した。得られた膜をさらに、正浸透プロセス(FO)での使用の前に脱イオン化水において清浄化した。このプロセスの後、薄いポリアミドフィルム(フィルム層(F))を基材層(S)上に形成した。
【0118】
膜の形態を走査型電子顕微鏡法(FESEM)によって分析した。薄型フィルム層複合膜の断面および上部表面を分析した。薄いポリアミドフィルムの厚さはおよそ150nm〜200nmであった。
【0119】
この複合膜についてのRO(逆浸透)試験(50psiおよび400ppmのNaClにおいて)において、PWP(純水透過性)は0.73±0.016L/(m
2・bar・hr)、塩阻止は91±0.21%であった。
【0120】
実施例3−薄型フィルム複合膜を使用する正浸透プロセス
実施例1および実施例2で記載されるように製造された薄型フィルム複合膜を正浸透(FO)実験において試験した。
【0121】
FO実験を実験室規模の循環ろ過装置で行った。ろ過装置の概略図を
図2に示す。
【0122】
クロスフロー浸透セル(1)は、矩形流路を膜のそれぞれの側に有するプレート・フレーム設計であった。貯蔵タンクにあるフィード溶液(2)およびドロー溶液(3)を、ポンプ(5)を介して循環させた。溶液の流れを、流量計(4)を使用して調節した。FOプロセス中の溶液の流速を、フィード溶液(2)と、セル流路を並流で通過したドロー溶液(3)両方を6.4cm/sで保った。それぞれの溶液の温度および圧力を測定した(6)。フィード溶液およびドロー溶液の温度を22±0.5℃で維持した。2つの流路入り口における圧力を1.0psiで保った。
【0123】
膜を下記の2つの異なる条件のもとで試験した:
(1)緻密な選択的層(フィルム層(F))に対するドロー溶液(圧力遅滞浸透/PROモード)および
(2)緻密な選択的層(フィルム層(F))に対するフィード水側(FOモード)。
【0124】
濃度が異なるドロー溶液を塩化ナトリウム(NaCl)溶液から調製し、FOプロセスにおいて使用した。ドロー溶液の体積に対する水透過流束の比率がFOプロセス中2%未満であったので、ドロー溶液濃度の変化は無視した。
【0125】
脱イオン化水(DI水)をフィード溶液として使用した。この場合、塩漏出を、フィード溶液における電気伝導率を実験終了時に測定することによって計算することができる。コンピューター(8)に接続された天秤(7)(EK−4100i、A&D Company Ltd.、日本)により、ドロー溶液内に浸透する水の質量が、選択された期間にわたって記録された。
【0126】
その後、水透過流束をフィード水の質量変化に基づいて計算した。水透過流束J
v(単位:L・m
-2・h
-1(リットル/平方メートル・時間)、これはLMHと略記される)を、下記の式(f1)を使用してフィード溶液またはドロー溶液の体積変化から計算した:
J
v=ΔV/(A・Δt) (f1)
式中、
ΔV(単位:リットル(L))は、FOプロセスの継続期間において所定の時間Δt(単位:時間(hr))にわたって回収された透過水である;
Aは有効膜表面積(平方メートルm
2の単位で)である。
【0127】
フィード水における塩濃度を、単一塩溶液についての検量線を使用するフィード溶液における電気伝導率測定から求めた。その後、塩漏出J
s(これは、ドロー溶液からフィード溶液への塩の逆拡散である)(単位:gm
-2・h
-1(グラム/平方メートル・時間)、これはgMHと略記される)を、下記の式(f2)を使用してフィード液の電気伝導率の増大から求めた:
J
s=Δ(C
t・V
t)/(A・Δt) (f2)
式中、
C
tおよびV
tはそれぞれ、FOプロセスの終了時におけるフィード液の塩濃度および体積である。
【0128】
様々なドロー溶液濃度(NaCl濃度)によるFOモードおよびPROモードにおける水流束および塩漏出を第1表にまとめる:
【表1】
第1表:DI水をFOモードおよびPROモードにおけるフィード液として使用する場合の本発明の複合膜の水流束および塩漏出
【0129】
2MのNaClをドロー溶液として用いるPROモードについて、塩漏出は6gMH未満、水流束は33LMHに達し得ることが見出された。より高いドロー溶液濃度(すなわち、5M)では、PROモードについて、塩漏出は12.5gMH未満、水流束は57LMHにまで増大し得る。
【0130】
実施例4−海水を使用する正浸透プロセス
実施例1および実施例2で記載されるように製造された薄型フィルム複合膜を使用する正浸透プロセスを、海水を脱イオン化水の代わりにフィード溶液として使用して実施例3と同様に行った。フィード溶液濃度は3.5質量%のNaClからなり、ドロー溶液濃度(NaCl)を2M(mol/L)から5M(mol/L)まで変化させた。
【0131】
様々なドロー溶液濃度(NaCl濃度)を使用するFOモードおよびPROモードにおける水流束を第2表にまとめる:
【表2】
第2表:海水(3.5質量%のNaCl濃度)をFOモードおよびPROモードにおけるフィード液として使用する場合の本発明の複合膜の水流束
【0132】
2MのNaClをドロー溶液として使用したPROモード下での試験において、薄型フィルム複合FO膜の水流束は15LMHに達し得る。
【0133】
実施例5:
比較のために、0質量%または25質量%のスルホン化コポリマーを支持体材料(基材層(S))に有する薄いフィルムの膜を、実施例1および実施例2と同様に調製し、実施例3に従い正浸透プロセスにおいて試験した。実施例1で記載されるようなポリマーP1およびポリマーP2を使用した(11.5質量%のスルホン化構成単位を有するスルホン化PESU/PPSUコポリマー、および、非スルホン化PESU)。下記の流延溶液を使用した:
サンプル1(0質量%のスルホン化コポリマー):
16質量%の非スルホン化PESU(ポリマーP2)
16質量%のエチレングリコール(EG)
68質量%のN−メチルピロリドン(NMP)
サンプル2(25質量%のスルホン化コポリマー):
12質量%の非スルホン化PESU(ポリマーP2)
4質量%のスルホン化PESU/PPSUコポリマー(ポリマーP1)
16質量%のエチレングリコール(EG)
68質量%のN−メチルピロリドン(NMP)
サンプル3(50質量%のスルホン化ポリマー、実施例1を参照のこと):
8質量%の非スルホン化PESU(ポリマーP2)
8質量%のスルホン化PESU/PPSUコポリマー(ポリマーP1)
16質量%のエチレングリコール(EG)
68質量%のN−メチルピロリドン(NMP)
【0134】
異なるポリマー溶液からのこれらの膜支持体材料の流延手順は実施例1に従った。その後、界面重合を、実施例2で記載されるのと同じ方法で、それぞれの得られた支持体材料に対して行った。
【0135】
脱イオン化水をフィード溶液として使用し、かつ、2Mの塩化ナトリウム(NaCl)溶液をドロー溶液として使用する、実施例3で記載されるような正浸透プロセスを、前記膜を使用して行った。水流束および塩漏出に関するデータを表3にまとめる:
【表3】
第3表:DI水をFOモードおよびPROモードにおけるフィード液として使用する場合の種々の複合膜の水流束および塩漏出
【0136】
0質量%のスルホン化ポリマーを膜基材層(S)に有する薄型フィルム複合膜は、25質量%または50質量%のスルホン化含有量を基材層(S)に有する場合と比較して、より低い水流束をもたらすことが見出された。加えて、これらの複合膜を、走査型電子顕微鏡法を使用して分析した。0質量%のスルホン化ポリマー含有量を膜基材層に有する薄型フィルム複合膜は、膜断面におけるフィンガー様の巨視的空隙の形成を示した。