(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測距センサは少なくとも3つ設けられており、前記各測距センサは前記鉛直軸線を中心とする円周の異なる角度位置に配置されている、請求項1または2記載の基板処理装置。
基板を水平姿勢で保持する基板保持部と、前記基板保持部を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動機構と、前記基板保持部に保持された基板を覆うための天板と、前記天板を、前記基板保持部に保持された基板の上面に近接して当該基板を覆う第1位置と、前記第1位置よりも上方の第2位置との間で前記天板を昇降させる天板昇降機構と、前記基板保持部に保持された基板に処理液を供給する処理液供給ノズルと、前記基板保持部に保持された基板の周囲を囲むカップ体と、を備える基板処理装置における距離測定方法であって、
前記天板と前記基板との間隔を把握するために、前記天板に取り付けられた測距センサを用いて当該測距センサから測距対象物までの距離を測定する距離測定ステップを備え、
前記測距対象物は前記カップ体若しくは前記カップ体に固定された部材であり、前記基板保持部に保持された基板と前記天板との間の鉛直方向距離の変化に対応して前記測距対象物の前記測距センサからの鉛直方向距離が変化する、
基板処理装置における距離測定方法。
基板を水平姿勢で保持する基板保持部と、前記基板保持部を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動機構と、前記基板保持部に保持された基板を覆うための天板と、前記天板を、前記基板保持部に保持された基板の上面に近接して当該基板を覆う第1位置と、前記第1位置よりも上方の第2位置との間で前記天板を昇降させる天板昇降機構と、前記基板保持部に保持された基板に処理液を供給する処理液供給ノズルと、前記基板保持部に保持された基板の周囲を囲むカップ体と、を備える基板処理装置における距離測定方法であって、
前記天板と前記基板との間隔を把握するために、前記カップ体に取り付けられた測距センサを用いて当該測距センサから測距対象物までの距離を測定する距離測定ステップを備え、
前記測距対象物は前記天板若しくは前記天板に固定された部材であり、前記基板保持部に保持された基板と前記天板との間の鉛直方向距離の変化に対応して前記測距対象物の前記測距センサからの鉛直方向距離が変化する、
基板処理装置における距離測定方法。
前記測距センサによる前記距離の測定は、前記天板により基板を覆った後であってかつ前記基板を回転させる前に行われ、前記距離が許容範囲外にある場合には、天板を一旦上昇させた後に前記所定位置まで下降させて再び前記天板により基板を覆うことが行われる、請求項9または10記載の基板処理装置における距離測定方法。
前記測距センサによる前記距離の測定は、前記天板により前記基板を覆った状態で前記基板を回転させている時に行われ、前記距離が許容範囲外にある場合には、前記基板の処理が停止されるか、あるいは前記基板が不適切な状態で処理された旨が前記基板処理装置の制御手段のメモリに記録されるか若しくは異常報知部を介してオペレータに報知される、請求項9または10記載の基板処理装置における距離測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して本発明による基板処理装置の実施形態について説明する。この基板処理装置は、表面に半導体デバイスが形成される被処理基板としての半導体ウエハの裏面および側周面に付着しているSiN等の不要な膜をフッ酸溶液(以下「HF溶液」と呼ぶ)により除去する液処理を行うように構成されている。
【0014】
基板処理装置は、筐体10と、この筐体10内でウエハWを水平姿勢で保持する基板保持部20と、この基板保持部20を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動機構30とを備えている。
【0015】
筐体10の天井部には、ファンフィルタユニット(FFU)11が取り付けられており、このFFU11により筐体10の内部空間に、上部から下部へと向かう清浄空気のダウンフローが形成される。筐体10の一つの側壁には、ウエハWの搬出入口12が設けられており、搬出入口12はシャッター13により開閉することができる。筐体10の底壁には、筐体10内の雰囲気を排気するための排気路14が設けられている。
【0016】
基板保持部20は、概ね円板形状のベース板21を有している。このベース板21の上面は、基板保持部20によりウエハWが保持されたときに当該ウエハWの下面に対面する。このときのベース板21の上面とウエハWの下面との間の間隔は、回転に伴いベース板21とウエハWとの間に形成される気流(ウエハ周縁部に向かう)によって生じる負圧により、ウエハWが後述する基板支持片22Bに押し付けられる力が適当な大きさになるように、かつ、ウエハWの下面中央部に供給された処理液がウエハWの周縁部に流れるのを妨げないような適当な値、例えは1〜5mmに設定されている。ベース板21の上方には、ベース板21から鉛直方向に間隔を空けて、概ね円環形状のリング部材22が設けられている。ベース板21とリング部材22とは、複数(例えば12個)の結合部材23(例えばネジからなる)により相対移動不能に結合されている。
【0017】
リング部材22は、円環形状のガイド部22Aと、このガイド部22Aの下面の内周縁部から円環の中心に向かって張り出す複数(例えば12個)の基板支持片22Bとを有している。基板支持片22Bの上面がウエハWの下面周縁部を支持することにより、ウエハWは基板保持部20に水平姿勢で保持される。基板支持片22Bは、円周を等分した位置に設けられている。
図1では2つの基板支持片22Bのみが表示されている。基板支持片22B上にウエハWが載置されたときに、ガイド部22AはウエハWの周縁を囲み、このときガイド部22Aの内周縁とウエハWの外周縁との間に僅かな隙間が形成される。ガイド部22Aは、ウエハWに液処理が実行されているときに、ウエハWの周縁近傍を流れる流体をガイドする(詳細後述)。
【0018】
ベース板21の下面中央から、鉛直方向下向きに円筒形状の回転軸31が延びている。この回転軸31は、ベアリングを内蔵した軸受部32により回転自在に支持されている。筐体10の外部にある回転軸31の下部に、プーリ33が設けられている。このプーリ33と、回転モータ34の回転軸に設けられたプーリ35とに駆動ベルト36が巻き掛けられている。従って、回転モータ34を駆動することにより、回転軸31を介して、基板保持部20に保持されたウエハWを回転させることができる。上記の構成部品31〜36により、基板保持部20を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動機構30が構成される。
【0019】
回転軸31内には、回転軸31の全長にわたって鉛直方向に延びる円柱形の内部空間が設けられている。また、この円柱形の内部空間に連続する開口がベース板21の中央部を貫通している。これらの内部空間および開口に、円筒形状の基板リフター40が貫挿されている。基板リフター40の上端部には、複数(例えば3本)の基板支持ピン41が設けられている。基板リフター40は、回転軸31が回転しても回転軸31と一緒に回転しないように回転軸31に対して相対回転可能に、かつ、回転軸31に対して相対上下動が可能に、回転軸31内に支持されている。基板リフター40の下端部には、昇降板42を介してシリンダモータ43が接続されている。従って、シリンダモータ43を駆動することにより基板リフター40を上昇位置と下降位置との間で昇降させることができ、これにより基板支持ピン41の先端にウエハWを支持してウエハWを昇降することができる。
【0020】
基板リフター40内には、基板リフター40の軸線方向すなわち鉛直方向に延びる内部空間が設けられている。この内部空間には、基板保持部20に保持されたウエハWの下面に処理液を供給するための処理液供給路44と気体供給路45が設けられている。処理液供給路44の上端開口部44aが、ウエハWの下面に向けて処理液を吐出する処理液ノズルの吐出口となる。気体供給路45の上端開口部45aが、ウエハWの下面に向けて乾燥ガスを供給する乾燥ガスノズルの吐出口となる。処理液供給路44には、HF溶液供給機構46とDIW(DeIonized Water、純水)供給機構47とが接続されており、切替弁48を切り替えることにより、供給路44にHF溶液およびDIWのいずれか一方を供給することができる。また、気体供給路45には、乾燥ガスとしてのN
2ガス(窒素ガス)の供給機構49が接続されている。上述の各処理流体の供給機構(46、47、49(後述の供給機構52も))は、当該処理流体の供給源と、開閉弁と、流量調整弁などの構成要素により構成されている。
【0021】
基板処理装置はさらに、トッププレート(天板)50を備えている。トッププレート50は、基板保持部20により保持されたウエハWに近接してウエハWの上面のほぼ全域を覆う処理位置(
図1に示す位置)と、当該処理位置から退避した図示しない退避位置(例えば処理位置の真上の位置であって搬出入口12よりも高い位置)との間で移動することができる。本実施形態においては、トッププレート50は支持アーム51により支持されており、この支持アーム51がトッププレート昇降機構として設けられたシリンダモータ52により昇降するようになっている。すなわち、トッププレート50は処理位置と退避位置との間で昇降のみにより移動する。なお、トッププレート50を、昇降だけでなく、鉛直軸線周りに旋回できるようにし、処理位置と退避位置との間の移動が水平方向の運動および昇降運動の組み合わせにより行われるようにしてもよい。
【0022】
トッププレート50の鉛直方向位置(高さ位置)は、トッププレート移動(昇降)制御部57により制御される。具体的には、トッププレート移動制御部57は、シリンダモータ52に付設されたロータリーエンコーダ等の位置エンコーダ(図示せず)からの出力パルスに基づいてトッププレート50の鉛直方向位置を検出し、この検出された鉛直方向位置と目標鉛直方向位置(例えば処理位置における高さ位置)とが一致するように、シリンダモータ52を駆動する。
【0023】
トッププレート50の中央部には、基板保持部20により保持されたウエハWとトッププレート50との間に形成される空間内に、窒素ガスなどの不活性ガスを供給するためのガス供給口53が設けられている。このガス供給口53には、N
2ガス供給機構54が接続されている。
【0024】
一方、トッププレート50の下面には、下方に突出する円環状の突起55が周縁部に沿って形成されている。トッププレート50が処理位置にある場合、突起55の下面55aは、基板保持部20により保持されたウエハWの上面に近接する。このとき、突起55の下面55aとウエハWの上面との間に形成される狭隘隙間56の大きさ(上下方向幅)、すなわちウエハ周縁部におけるウエハWとトッププレートとの間の距離は、例えば0.5〜1.5mmである。トッププレート50の下面の中央部分57と、ウエハWの上面との間隔は比較的大きく、例えば10〜20mm程度である。トッププレート50の下面の中央部分57と突起55の下面55aとは傾斜面55bを介して接続されている。
【0025】
基板保持部20、並びに処理位置にあるトッププレート50の周囲を囲むようにカップ体60が設けられている。このカップ体60は、ウエハWの処理が実行されているときに、ウエハWから飛散した薬液等の処理流体を受け止める。カップ60の底部には排出路61が接続されている。排出路61は、図示しないミストセパレータおよびイジェクタ等を介して工場排気系/廃液系に接続されている。
図1および
図2に示すように、トッププレート50が処理位置にあるときには、トッププレート50はカップ体60の天井部に形成された上部開口部内に収容され、このとき、カップ体60の天井部に形成された上部開口部の内周面と、トッププレート50の外周面との間に小さな隙間が形成される。
【0026】
ガス供給口53からN
2ガスを吐出しているときにウエハWを回転させた時のウエハW周縁部近傍のガス流が
図2に示されている。ウエハWの回転に伴いウエハWの上面および下面の近傍には、ウエハWの周縁に向かうガス流が生じる。すなわち、トッププレート50とウエハWとの間の空間にウエハWの周縁に向かうN
2ガス流F
Nが生じ、このN
2ガス流F
Nは、狭隘隙間56から速度を増して流出する。トッププレート50に傾斜面55bが設けられていることにより、N
2ガスがスムースに狭隘隙間56に流れ込む。狭隘隙間56から流出したガスはリング部材22のガイド部22Aの上面とカップ体60の天井部下面との間の空間を通って、排出路61に向かって流れる。また、ウエハの下面とベース板21との間の空間には、ウエハWの周縁に向かうガス流F
L(空気またはN
2ガスの流れ)が生じ、このガス流F
Lはリング部材22のガイド部22Aの下面とベース板21との間の空間を通って排出路61に向かって流れる。カップ体60の内部が排出路61を介して排気されているため、カップ体60の上部開口部の内周面とトッププレート50の外周面との間の隙間から、FFUからの清浄空気のダウンフローがカップ体60内に引き込まれる。この引き込まれた清浄空気は、N
2ガス流F
Nと合流した後、リング部材22のガイド部22Aの上面とカップ体60の天井部の下面との間の空間を通って、排出路61に向かって流れる。
【0027】
ウエハWの下面とベース板21との間の空間から外方に流出するガス流F
Lによりウエハの下面とベース板21との間の空間が減圧状態となり、これによりウエハWが基板支持片22Bに向かって押し付けられ、ウエハWがしっかりと基板保持部20に保持される。なお、ウエハWの上面側の空間にはN
2ガスが供給されるため圧力がウエハWの下側の空間よりも高くなるので、ウエハWの浮き上がりは生じ難い。
【0028】
狭隘隙間56から比較的高速で流出するN
2ガス流F
Nは、ガス流F
Lと一緒にウエハWの外側に流出する処理液またはそのミストがウエハWの上面側に回り込むことを防止する。この効果を達成するには、狭隘隙間56の大きさ(上下方向幅)が適正な値となっていることが必要である。狭隘隙間56の大きさが適正範囲より大きいと、N
2ガス流F
Nが狭隘隙間56から流出する速度が遅くなり、ウエハWの下面側から流出した処理液またはそのミストが、ウエハWの上面側に周り込み、パーティクル発生の原因となりうる。一方、狭隘隙間56の大きさが適正値より小さい場合には、回転するウエハWが浮き上がった場合、あるいは上下に振動した場合には、ウエハWとトッププレート50が衝突して破損するおそれがある。
【0029】
基板処理装置はさらに、基板保持部20により保持されたウエハWとトッププレート50が衝突することを防止するための少なくとも1つ(好ましくは複数の)のメカニカルストッパ70を有している。本実施形態では、メカニカルストッパ70は、トッププレート50の上面の周縁部に設けられた支持部71、支持部71に形成された雌ネジ穴に螺合するネジ軸72及びネジ軸72に螺合するナット73と、カップ体60の上面の開口部周辺に設けられた受け部74とから構成されている。ネジ軸72を回転させることによりネジ軸72を上下動させることができ、ナット73を締め付けることによりネジ軸72を固定することができる。メカニカルストッパ70は、ウエハWとトッププレート50が衝突する寸前で、例えば前記狭隘隙間56が0.4mmになった時点でネジ軸72の下端と受け部74が衝突するように調整される。本実施形態では、複数(具体的には3つ)のメカニカルストッパ70がトッププレート50の円周方向に沿って等間隔で設けられている。
【0030】
基板処理装置はさらに、基板保持部20により保持されたウエハWとトッププレート50との間隔、具体的には前記狭隘隙間56の大きさ(上下方向幅)を測定することを目的として距離測定を行う少なくとも1つ(好ましくは複数)の測距センサ80を備えている。本実施形態では、複数(具体的には3つ)の測距センサ80がトッププレート50の円周を等分した位置に設けられている。メカニカルストッパ70と測距センサ80とが円周方向に沿って交互に設けられるのが好ましい。測距センサ80は1つだけ設けてもよいが、3つ以上設けることがトッププレート50の傾きも把握できるので好ましい。
【0031】
測距センサ80は、好ましくは光学式のセンサであり、例えばレーザ式の反射型の変位センサ(位置センサ)とすることができる。本実施形態では、測距センサ80は、トッププレート50の上面に取り付けられており、当該測距センサ80から、カップ体60の上面の開口部周辺に設定された測定点81までの距離を測定することができる。なお測定点81を設定する位置はカップ体60自体に限定されるものではなく、カップ体60に固定された別の部材上に設けてもよい。本実施形態においては、基板保持部20は昇降しないため、基板保持部20に適正に保持されたウエハWと、カップ体60との鉛直方向の位置関係は不変である。従って、測距センサ80からカップ体60上の測定点81までの鉛直方向距離を「X」とし、トッププレート50とウエハWとの間の鉛直方向距離(すなわち前記狭隘隙間56の大きさ(上下方向幅))を「Y」とすると、「Y=X+K(Kは定数)」という関係が成立する。従って、測距センサ80からカップ体60上の測定点81までの鉛直方向距離を測定することは、狭隘隙間56の大きさを測定することと等価である。
【0032】
なお、定数「K」は、測距センサ80の測定値と、トッププレート50上面とウエハW上面との間の距離とに基づき算出することが可能である。トッププレート50上面とウエハW上面との間の距離は、測距センサ80の近傍でトッププレート50の上面上に設置したダイヤルゲージ等の接触式精密計測器により測定される。ダイヤルゲージのプローブを通す貫通穴(プラグにより塞がれる)がトッププレート50に設けられているが、図示はされていない。定数「K」は、各測距センサ80に対して測定すること、すなわち各測距センサ80が設けられている角度位置においてそれぞれ測定することが望ましい。
【0033】
基板処理装置はさらに、基板保持部20によりウエハWが適切に保持されているか否かを検出するためのウエハ保持状態検出装置90を備えている。本実施形態では、ウエハ保持状態検出装置90は、光学的なセンサである反射型のレーザ式の変位センサ91を備えて構成されている。変位センサ91は筐体10の側壁に設けられた窓からウエハWの上面(上面の中心以外の適当な位置)に向けてレーザ光を照射するように設けられている。ウエハWの上面により反射されたレーザ光は、筐体10の天井部に取り付けられたミラー92により反射され、再度ウエハWの上面に入射し、変位センサ91に戻る。この場合のレーザ光の光路が参照符号93を付けた一点鎖線で示されている。ウエハWを回転させて3つ以上の異なる角度位置で停止させ、それぞれの角度位置で変位センサ91に戻ってきたレーザ光の位置が同じであるか、あるいはずれ量が所定範囲内にあるなら、ウエハWが水平姿勢で適切な状態で基板保持部20により保持されていることがわかる。ウエハWの保持状態を検出するための検出装置としては様々なものが知られており、図示したウエハ保持状態検出装置90を他の形式のものに置換することも可能である。
【0034】
基板処理装置は、その全体の動作を統括制御するコントローラ(制御部)200を有している。コントローラ200は、基板処理装置100の全ての機能部品(例えば、基板リフター40用のシリンダモータ43、トッププレート50用のシリンダモータ52、回転駆動機構30の回転モータ33、各種処理流体の供給機構等)の動作を制御する。コントローラ200は、ハードウエアとして例えば汎用コンピュータと、ソフトウエアとして当該コンピュータを動作させるためのプログラム(装置制御プログラムおよび処理レシピ等)とにより実現することができる。ソフトウエアは、コンピュータに固定的に設けられたハードディスクドライブ等の記憶媒体に格納されるか、あるいはCD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の着脱可能にコンピュータにセットされる記憶媒体に格納される。このような記憶媒体が
図1において参照符号201で示されている。プロセッサ202は必要に応じて図示しないユーザーインターフェースからの指示等に基づいて所定の処理レシピを記憶媒体201から呼び出して実行させ、これによってコントローラ200の制御の下で基板処理装置の各機能部品が動作して所定の処理が行われる。前述したトッププレート移動制御部57は、コントローラ200の一部として構成されている。コントローラ200には異常報知部203が接続されている。異常報知部203は画像ディスプレイおよびアラーム音発生器などからなり、測距センサ80の測定結果に異常が生じたときにこの基板処理装置のオペレータに画像および音声等により報知する。
【0035】
次に、上述した基板処理装置を用いて、表面に半導体デバイスが形成されたウエハWの裏面および側周面に付着しているSiN等の不要な膜をHF溶液により除去する液処理について説明する。
【0036】
トッププレート50を退避位置に位置させ、シャッター13を開いた状態で、裏面を下向きにしてウエハWを保持した図示しない搬送アームが、搬出入口12を通って筐体10内に進入し、ウエハWを基板保持部20の真上に位置させる。次に、基板リフター40を上昇させて、基板支持ピン41により図示しない搬送アームが保持しているウエハWを持ち上げて、搬送アームからウエハを受け取る。次いで、図示しない搬送アームは筐体10から退出する。次いで、ウエハWを支持している基板リフター40が
図1に示す高さ位置まで下降する。この下降の過程において、
図1に示すように、ウエハWが基板保持部20の基板支持片22Bの上に載置され、ウエハWは基板リフター40から離れる。以上によりウエハWの搬入が終了する。
【0037】
その後、ウエハ保持状態検出装置90を用いて、ウエハWが基板保持部20により適切に保持されているか否かを確認する。ウエハWが適切に保持されていない場合には、上記のウエハWの搬入操作の再試行を行う。再試行においても問題が解消されない場合には、原因の究明、並びに必要に応じて基板処理装置の調整または修理を行う。なお、ウエハ保持状態検出装置90により検出された異常は、異常報知部203により基板処理装置のオペレータに通知される。
【0038】
ウエハWが基板保持部20に適切に保持されていることが確認されると、トッププレート50を処理位置(
図1に示す位置)まで下降させる。このとき、各測距センサ80から対応するカップ体60上の測定点81までの距離が測定される。各測距センサ80の測定値に基づいて、各測距センサ80が配置された角度位置における狭隘隙間56の大きさ(上下方向幅)が許容範囲内(例えば0.5〜1.5mm)にあることが確認されたならば、ウエハWに対する一連の処理が開始される。いずれかの角度位置において狭隘隙間56の大きさが許容範囲外にあるときには、トッププレート50を一旦上昇させた後、処理位置への移動の再試行を行う。再試行においても狭隘隙間56の大きさが許容範囲に入らない場合には、原因の究明、並びに必要に応じて基板処理装置の調整または修理を行う。
【0039】
トッププレート50の位置が適切であることが確認された後、薬液処理を行う。まず、回転駆動機構30によりウエハWを回転させ、基板リフター40に設けられた処理液供給路44の上端開口部44aからHF溶液をウエハWの下面に供給する。遠心力によりウエハW下面を周縁部に向かって流れるHF溶液により、SiN等の不要な膜が除去される。このとき、先に
図2を参照して説明したように、HF溶液はガス流F
Lと一緒にウエハWの外側に流出するが、狭隘隙間56から高速で流出するN
2ガス流F
NによりHF溶液またはそのミストがウエハWの上面側に回り込むことが防止される。
【0040】
所定時間HF溶液による薬液処理を行った後に、ウエハWの回転を継続しながら、上端開口部44aからのHF溶液の吐出を停止し、上端開口部44aからDIWをウエハWの裏面に供給する。これによりウエハWのリンス処理を行う。
【0041】
所定時間DIWによるリンス処理を行った後に、ウエハWの回転を継続しながら、上端開口部44aからのDIWの吐出を停止し、気体供給路45の上部開口部45aからN
2ガスを吐出する。これにより、ウエハWのスピン乾燥処理を行う。以上により、ウエハWに対する一連の処理が終了する。
【0042】
薬液処理、リンス処理およびスピン乾燥処理の間も、測距センサ80による距離測定を継続的に行うことが好ましい。トッププレート50の位置ずれが生じ、狭隘隙間56の大きさが変化すると、前述した不具合が生じるからである。測距センサ80による距離測定に基づいて求められた狭隘隙間56の大きさ(上下方向幅)が許容範囲(0.5〜1.5mm)を外れたと判断された場合には、ウエハWが不適切な状態で処理された旨がコントローラ200のメモリ(図示せず)に記録され、コントローラ200はウエハWが不適切な状態で処理された旨を異常報知部203によりオペレータに報知する。これを受けてオペレータは、例えば以下のように対応する。狭隘隙間56が許容範囲の上限値よりやや大きくなった場合(例えば1.5〜2.0mm)すなわち第1レベルの異常の場合には、パーティクルが多くなるが、ある程度の歩留まりは維持できるため、そのまま処理を完了する。但し、例えば、この基板処理装置からウエハWが搬出された後直ちにウエハWのパーティクルチェックを行う等の対応を施す。狭隘隙間56が更に大きくなった場合(例えば2.0mm超)すなわち第2レベルの異常の場合には、ウエハW表面の多くの領域に許容できないレベルのパーティクルが生じるため、当該ウエハWは廃棄する。また、トッププレート50の下面が汚染されていることも考えられるため、必要に応じて、トッププレート50の洗浄を行う。狭隘隙間56が許容範囲の下限値よりかなり小さくなった場合(例えば0.4mm未満)には、メカニカルストッパ70が作用する前であっても、基板支持片22BからのウエハWの浮き上がりが生じた場合には、ウエハWとトッププレート50との衝突が生じるおそれがあるので、ウエハW回転の非常停止を行う。上記の許容範囲から外れたと判断された場合の対応および判断の基準値は一例であり、装置構成に起因にして変更されうるし、また、ユーザーのリスク管理ポリシーに基づいて変更されうる。上記の異常は、異常報知部203により基板処理装置のオペレータに通知される。
【0043】
ウエハWの処理が終了したら、トッププレート50を退避位置まで上昇させ、基板リフター40によりウエハWを持ち上げ、シャッター13を開く。図示しない空の搬送アームが、搬出入口12を通って筐体10内に進入し、ウエハWの真下に位置する。その後、基板リフター40が下降することにより、ウエハWが前記搬送アームに渡され、その後、前記搬送アームは筐体10から退出する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、トッププレート50とウエハWとの間の間隔を把握することができ、より確実に管理することができる。このため、ウエハWの処理不良が生じたことまたはその可能性をより早期に把握することができる。また、ウエハWとトッププレート50との衝突により、基板処理装置に損傷が生じることを未然に防止することができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、トッププレート50に測距センサ80を設けて、当該測距センサ80からカップ体60に設定した測定点81までの距離を測定したが、これには限定されない。例えば
図3に示すように、カップ体60に測距センサ80を設けて、トッププレート50またはトッププレート50に固定した部材に設定した測定点81’までの距離を測定してもよい。測定点81’は、トッププレート50の上面周縁部から半径方向外側に張り出す部材により提供することができる。この場合も、測距センサ80は、複数、好ましくは3つ以上設けることが望ましい。また、
図4に示すように、トッププレート50に設けた測距センサ80により、当該測距センサ80から、リング部材22のガイド部22Aの上面に設定された測定点81”までの距離を測定してもよい。トッププレート50に設けた測距センサ80からリング部材22までの鉛直方向距離の変化は、ウエハWとトッププレート50との間の鉛直方向距離の変化に対応している。
【0046】
また、トッププレート50に設けた測距センサ80により、当該測距センサ80からウエハW上面までの距離を直接測定してもよい。この場合の具体的な構成例を
図5に示す。この変形実施形態によれば、上記の実施形態と同様の効果に加えて、基板保持部20におけるウエハWの保持状態が悪い場合、あるいは悪化した場合に、それを確実に検出することができるという効果が達成される。具体的には、ウエハ保持状態検出装置90で検出できないような、基板支持片22B上へのウエハWの不適切な載置状態を検出することができる。また、ウエハWを回転させて処理を行っている最中にウエハの浮き上がりが生じた場合にも、それをリアルタイムで確実に検出することができるので、状況に応じてウエハの回転を非常停止させて、基板処理装置に多大な損傷が生じることを未然に防止することができる。また、この変形実施形態によれば、処理を行っている最中にウエハWが割れると、測距センサ80からウエハWまでの距離が検出できなくなるか、あるいは測距センサ80により検出される距離が大幅に変化する(例えばベース板21までの距離が検出される)。測距センサ80の検出値にこのような異常が生じた場合には、直ちに基板保持部20の回転を非常停止させることにより、基板処置装置に多大な損害が生じることを防止することができる。この場合も、測距センサ80は、複数、好ましくは3つ以上設けることが望ましい。
【0047】
また、上記の各実施形態では、測距センサ80による測距結果は、もっぱら異常の判定および警告のために用いていたが、これに限定されるものではなく、測距センサ80による測距結果を、トッププレート50の鉛直方向位置の制御のためのフィードバック信号として用いてもよい。
【0048】
また、上記の各実施形態では、測距センサ80としてレーザ式の反射型の変位センサを用いたが、これに限定されるものではなく、測距対象物までの距離を測定しうる任意の方式の測距センサを用いることができる。具体的には、例えば、近接センサ、具体的には渦電流式変位センサを用いることもできる。この場合、測距対象物が金属製でない場合(例えば樹脂製のカップである場合)には、測距対象物に金属片を取り付けて、渦電流による検出が可能となるようにする。また、測距対象物が基板(ウエハW)でない場合には、接触式変位センサを用いることもできる。
【0049】
基板処理装置の処理対象である基板は、半導体ウエハに限定されるものではなく、ガラス基板、液晶基板などであってもよい。基板の処理に用いる処理液は、上述したものに限らず、例えばSC−1液、SC−2液などの他の処理液であってもよい。また、乾燥ガスも、上述したものに限らず、例えば清浄空気、ドライエアなどであってもよい。また、基板処理装置は、上述のように基板の下面を処理するように構成されたものに限らず、天板と基板との間の距離を把握する必要のある任意の処理、例えば基板の周縁およびその近傍の基板表面および裏面(上面および下面)の不要な膜を除去するベベル洗浄処理、を行うように構成されたものであってもよい。