特許第6033849号(P6033849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033849
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】測定装置を備えた光学モジュール
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20161121BHJP
   G02B 7/185 20060101ALI20161121BHJP
   G02B 7/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   G03F7/20 501
   G03F7/20 521
   G02B7/185
   G02B7/00 D
【請求項の数】21
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-508761(P2014-508761)
(86)(22)【出願日】2012年4月30日
(65)【公表番号】特表2014-518011(P2014-518011A)
(43)【公表日】2014年7月24日
(86)【国際出願番号】EP2012057916
(87)【国際公開番号】WO2012150215
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2015年4月28日
(31)【優先権主張番号】102011075316.8
(32)【優先日】2011年5月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】アーミン シェーパッハ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヘムバッハー
(72)【発明者】
【氏名】グイド リンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】イェンス クーグラー
【審査官】 佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−021526(JP,A)
【文献】 特開2010−182867(JP,A)
【文献】 特開2002−083767(JP,A)
【文献】 特表2012−504329(JP,A)
【文献】 特開2007−317713(JP,A)
【文献】 特開2007−103657(JP,A)
【文献】 特開2007−316132(JP,A)
【文献】 特開2004−064076(JP,A)
【文献】 特開2006−310577(JP,A)
【文献】 特開2008−112756(JP,A)
【文献】 特表2012−533871(JP,A)
【文献】 国際公開第02/016992(WO,A1)
【文献】 特開2002−350699(JP,A)
【文献】 特表2007−533148(JP,A)
【文献】 特表2009−503826(JP,A)
【文献】 特開平11−281925(JP,A)
【文献】 特開2011−070052(JP,A)
【文献】 特開2013−161992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00 、 7/18 − 7/24 、
G03F 7/20 − 7/24 、 9/00 − 9/02 、
H01L21/027、21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にマイクロリソグラフィ用の光学モジュールであって、
光学素子ユニットと、
支持装置と、
変形装置と、
測定装置と
を備え、前記支持装置は前記光学素子ユニットを支持し、
前記変形装置は、前記光学素子ユニットの光学面を変形させるために、該光学面を含む前記光学素子ユニットの変形部に係合し、
前記測定装置は、少なくとも1自由度の外部基準に対する前記光学素子ユニットの位置及び/又は向きを求めるために、少なくとも1つの測定素子を備え、
該測定素子は前記光学素子ユニットの基準部に配置され、
該基準部は、前記変形装置により前記変形部に導入された前記光学素子ユニットの変形が前記測定素子の領域に実質的に伝播しないような様式で、少なくとも1つの分離部を介して前記変形部から分離される光学モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光学モジュールにおいて、
前記変形装置は、前記光学モジュールの通常動作時に、前記光学素子ユニットに対する最大力により、前記変形部において最大第1変形応力以下の力を発生させ、
前記変形装置は、少なくとも前記測定素子の領域における、特に実質的に前記基準部全体における前記最大力により、最大第2変形応力以下を発生させ、
前記基準部は、前記最大第2変形応力が前記最大1変形応力の5%以下、好ましくは前記最大第1変形応力の4%以下、より好ましくは前記最大第1変形応力の3%以下であるように、前記少なくとも1つの分離部を介して前記変形部から分離される光学モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学モジュールにおいて、
前記変形部は、特に中心軸を画定する実質的にディスク形本体として設計され、且つ/又は
前記基準部の少なくとも一部は、前記変形部上の突起の様式で形成され、特に前記測定素子は、前記変形部に面しない前記突起の端の領域に配置される光学モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の光学モジュールにおいて、
前記突起は、前記変形部のうち前記光学面に面しない側に配置され、且つ/又は
前記突起は、前記中心軸と実質的に同心に配置され、且つ/又は
前記変形部は、前記中心軸の方向に延在する長手方向に最大第1長手方向寸法を有し、前記突起は、前記長手方向に最大第2長手方向寸法を有し、該第2長手方向寸法は、前記第1長手方向寸法の80%よりも大きく、好ましくは前記第1長手方向寸法の100%よりも大きく、より好ましくは前記第1長手方向寸法の150%よりも大きく、且つ/又は
前記変形部は、前記中心軸を横切って延びる横方向に最大第1横方向寸法を有し、前記突起は、前記横方向に最大第2横方向寸法を有し、該第2横方向寸法は、前記第1横方向寸法の80%未満、好ましくは前記第1横方向寸法の60%未満、より好ましくは前記第1横方向寸法の40%未満であり、且つ/又は
前記分離部は、前記突起の領域に、特に前記変形部と前記突起との間の移行領域に配置され、前記分離部は、特に、前記横方向での前記突起の断面の少なくとも1つの狭窄により形成される光学モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学モジュールにおいて、
前記変形装置は少なくとも1つの変形素子を備え、
該変形素子は、第1端を前記変形部の第1係合点に係合させ、
前記変形素子は、第2端を前記変形部の第2係合点に係合させ、特に、前記第1係合点は、前記変形部の外周の領域に配置され、前記変形部の前記外周は、周面を画定し、前記第2係合点は、前記周面の径方向内方に配置される光学モジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学モジュールにおいて、
前記変形装置は少なくとも1つの変形素子を備え、
該変形素子は、第1端を前記変形部の第1係合点に係合させ、
前記変形素子は、第2端を前記支持装置の第2係合点に係合させる光学モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学モジュールにおいて、
前記変形装置は、前記変形部の外周の領域に係合し、
前記変形部は、前記外周の領域で、特に周方向に前記外周全体にわたって延在する少なくとも1つの凹部を有し、
該少なくとも1つの凹部は、前記変形部の指定可能な変形挙動を達成するよう設計される光学モジュール。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学モジュールにおいて、
前記変形装置は、少なくとも1つの変形素子と、該変形素子にエネルギー及び/又は制御信号を供給する供給装置とを備え、
前記供給装置は、特に、前記変形素子へのエネルギー及び/又は制御信号の非接触供給用に設計される光学モジュール。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学モジュールにおいて、
前記支持装置は、前記光学素子ユニットの位置及び/又は向きを設定するための特に能動的な位置決め装置を備え、
該位置決め装置は、特に、少なくとも1自由度で前記光学素子の前記位置及び/又は前記向きを設定するよう設計される光学モジュール。
【請求項10】
請求項9に記載の光学モジュールにおいて、
前記位置決め装置は、前記光学素子ユニット上の前記基準部の領域に係合し、且つ/又は、
前記位置決め装置は、該位置決め装置と前記光学素子ユニットとの間の寄生応力を分離するための分離装置を介して前記光学素子に係合する光学モジュール。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学モジュールにおいて、
前記光学素子ユニットはモノリシック設計であり、且つ/又は
前記光学素子ユニットは、ゼロに近い熱膨張率を有する材料から作られ、且つ/又は
前記光学面は反射面として設計される光学モジュール。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学モジュールにおいて、
前記測定装置は、前記光学面の変形を求めるよう設計され、
前記測定装置は、特に、前記光学面の前記変形を求めるために、測定光ビームを前記光学面に投影し、前記測定光ビームのうち前記光学面により偏向された部分を検出装置により検出するよう設計される光学モジュール。
【請求項13】
特にマイクロリソグラフィ用の光学モジュール用の光学素子ユニットであって、
支持装置に係合する支持部と、
前記光学素子ユニットの光学面を変形させる変形装置に係合する変形部と、
測定装置と
を備え、該測定装置は、少なくとも1自由度の外部基準に対する前記光学素子の位置及び/又は向きを求める少なくとも1つの測定素子を備え、
該測定素子は、前記光学素子ユニットの基準部に配置され、
該基準部は、前記変形装置により前記変形部に導入された前記光学素子ユニットの変形が前記測定素子の領域に実質的に伝播しないような様式で、少なくとも1つの分離部を介して前記変形部から分離される光学素子ユニット。
【請求項14】
特にマイクロリソグラフィ用の光学素子ユニットの位置及び/又は向きを求める方法であって、
前記光学素子ユニットの変形部の光学面を変形させ、
少なくとも1自由度の外部基準に対する光学素子ユニットの位置及び/又は向きを少なくとも1つの測定素子を介して検出し、
該測定素子は前記光学素子の基準部に配置され、
該基準部は、前記変形部に導入された前記光学素子ユニットの変形が前記測定素子の領域に実質的に伝播しないような様式で、少なくとも1つの分離部を介して前記変形部から分離される方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
光学モジュールの通常動作時に、前記光学素子ユニットに対する最大力により、前記変形部において最大第1変形応力以下の力を発生させ、
少なくとも前記測定素子の領域における、特に実質的に前記基準部全体における前記最大力により、最大第2変形応力以下の力を発生させ、
前記基準部は、前記最大第2変形応力が前記最大1変形応力の5%以下、好ましくは前記最大第1変形応力の4%以下、より好ましくは前記最大第1変形応力の3%以下であるように、少なくとも1つの分離部を介して前記変形部から分離される方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の方法において、
前記光学面を変形させるために、前記変形部の第1係合点において、変形素子を介して第1力を導入し、
前記光学面を変形させるために、前記変形部の第2係合点において、前記変形素子を介して第2力を導入し、
前記第1係合点は、特に、前記変形部の外周の領域に配置され、前記変形部の前記外周は、周面を画定し、前記第2係合点は、前記周面の径方向内方に配置される方法。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法において、
前記光学面を変形させるために、前記変形部の第1係合点において、変形素子を介して第1力を導入し、
前記光学面を変形させるために、前記変形部の第2係合点において、前記変形素子を介して前記光学素子ユニットの支持装置に第2力を導入する方法。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法において、
前記変形を少なくとも1つの変形素子を介して行い、
前記変形素子は、特に、エネルギー及び/又は制御信号を非接触供給される方法。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法において、
前記光学素子ユニットの位置及び/又は向きを、位置決め装置を介して設定し、
特に、前記光学素子ユニットの前記位置及び/又は前記向きを前記少なくとも1自由度で設定する方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
前記位置決め装置は、前記基準部の領域で前記光学素子ユニットに係合し、且つ/又は
前記位置決め装置は、該位置決め装置と前記光学素子ユニットとの間の寄生応力を分離するための分離装置を介して前記光学素子に係合する方法。
【請求項21】
請求項14〜20のいずれか1項に記載の方法において、
前記光学面の前記変形を求め、
前記光学面の前記変形を求めるために、測定光ビームを前記光学面に投影し、前記測定光ビームの内前記光学面により偏向された部分を検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学モジュール、当該光学モジュール用の光学素子ユニット、及び光学素子ユニットの位置及び/又は向きを求める方法に関する。本発明は、超小型電子回路の製造に用いるマイクロリソグラフィに関連して用いることができる。
【背景技術】
【0002】
特にマイクロリソグラフィの分野において、最高精度で作製したコンポーネントの使用に加えて、対応して高い画質を達成するために、特に、結像装置のコンポーネント、例えばレンズ又はミラー等の光学素子をできる限り精密に位置決めする必要がある。数ナノメートル以下程度の微視的範囲にある高い精度要件は、製造すべき超小型電子回路の小型化を推進するために、超小型電子回路の製造に用いる光学系の分解能を高めることが常に必要とされる結果として生じるところが大きい。
【0003】
高い分解能、したがって一般にそれに伴う使用光の波長の減少により、高まるのは用いる光学系の位置精度に対する要件だけではない。当然ながら、光学構成体全体の結像誤差の最小化に関する要件も増加する。
【0004】
結像誤差を最小化するために、例えば特許文献1(Watson。その全開示を参照により本明細書に援用する)及び特許文献2(Sakino他。その全開示を参照により本明細書に援用する)から、波面収差を補正するために結像系の1つ又は複数の光学素子の光学活性面を能動的に変形させることが知られている。この目的で、例えば、ミラーの設定点幾何形状又は剛体幾何形状に対するミラー表面の所望の変形を達成するために、ミラーの支持構造により支持された複数のアクチュエータが、ミラーの背面に係合して対応の力及び/又はモーメントをミラーに導入する。
【0005】
ミラー表面の変形のためのこれらの力及び/又はモーメントは、概してミラー(無限剛体とみなされる限り)の位置及び/又は向きの変化にもつながる場合があり、これをさらに補正しなければならない。光学素子の剛体位置又は剛体向きという用語が、これに関連して用いられることが多い。
【0006】
光学素子の位置及び/又は向きの補正は、特許文献1からも知られているように、少なくとも1つの基準に対する光学素子の位置及び/又は向きを測定する1つ又は複数のセンサの測定信号に通常は基づく。重要な因子は、光学素子の剛体位置又は剛体向きが変化していないか又はセンサにより捕らえられるほど変化していなくても、変形が測定点の領域の相対移動を引き起こし得ることにより、必要なくても光学素子の位置及び/又は向きの補正が行われることである。
【0007】
特許文献2で提案された解決手段の欠点は、光学素子及び変形装置が1つのユニットを形成し、さらにその位置及び/又は向きを補正しなければならないことである。剛体位置又は向きのこの補正を非常に迅速に行わなければならない場合、重いユニットは不利である。さらに、変形装置への供給を行うケーブル等により、急速な補正が妨げられる。さらに、このようなユニットはかなりの空間を要するので、好ましい制御挙動に必要となるユニットの高い共鳴振動数の達成がはるかに複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,842,277号明細書
【特許文献2】米国特許第7,443,619号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、上述の欠点がないか又は少なくともそれほど大きくなく、特に、単純な方法で、結像誤差をできる限り単純に補正できるようにする光学モジュール、当該光学モジュール用の光学素子ユニット、及び光学素子ユニットの位置及び/又は向きを求める方法を提供することである。
【0010】
本発明が達成しようとするさらに別の目的は、光学素子の剛体位置又は剛体向きのできる限り単純な判定の可能性、及び任意に極めて動的な補正の可能性を提供する光学モジュール、当該光学モジュール用の光学素子ユニット、及び光学素子ユニットの位置及び/又は向きを求める方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも1自由度の外部基準に対する光学素子の位置及び/又は向きを求める測定装置が、光学素子に導入された変形による影響を実質的に受けない光学素子ユニットの基準部に配置した少なくとも1つの測定素子を備える場合、光学素子の剛体位置又は剛体向きの単純な判定、及び任意に極めて動的な補正が可能となるという所見に基づく。これは、変形部からの基準部の対応距離及び/又は基準部の応力分離により達成することができる。これら両方のそれぞれに、変形応力(すなわち、光学素子の所望の変形をもたらす応力)が測定装置の領域に実質的に伝播せず、その位置及び/又は向きに顕著に影響しないという効果がある。したがって、有利には、光学素子の実際の剛体位置及び/又は剛体向きを、1つ又は複数の自由度(最大6自由度)で測定素子を介して捕らえることができる。
【0012】
したがって、本発明の1つの目的は、光学素子ユニットと、支持装置と、変形装置と、測定装置とを備えた、特にマイクロリソグラフィ用の光学モジュールである。支持装置が光学素子ユニットを支持する一方で、光学素子ユニットの光学面を変形させるために、変形装置が光学面を含む光学素子ユニットの変形部に係合する。少なくとも1自由度の外部基準に対する光学素子ユニットの位置及び/又は向きを求めるために、測定ユニットは少なくとも1つの測定素子を備え、測定素子は光学素子ユニットの基準部に配置される。基準部は、変形装置により変形部に導入された光学素子ユニットの変形が測定素子の領域に実質的に伝播しないような様式で、変形部から離れて配置され且つ/又は少なくとも1つの分離部を介して変形部から分離される。
【0013】
本発明の別の目的は、支持装置に係合する支持部と、光学素子ユニットの光学面を変形させる変形装置に係合する変形部と、測定装置とを備えた、特にマイクロリソグラフィ用の光学モジュール用の光学素子ユニットである。少なくとも1自由度の外部基準に対する光学素子ユニットの位置及び/又は向きを求めるために、測定装置は少なくとも1つの測定素子を備え、測定素子は光学素子ユニットの基準部に配置される。基準部は、変形装置により変形部に導入された光学素子ユニットの変形が測定素子の領域に実質的に伝播しないような様式で、変形部から離れて配置され且つ/又は少なくとも1つの分離部を介して変形部から分離される。
【0014】
本発明の別の目的は、特にマイクロリソグラフィ用の光学素子ユニットの位置及び/又は向きを求める方法であって、光学素子ユニットの変形部の光学面を変形させ、外部基準に対する光学素子ユニットの位置及び/又は向きを、少なくとも1自由度で少なくとも1つの測定素子を介して検出し、測定素子は光学素子の基準部に配置される方法である。基準部は、変形装置により変形部に導入された光学素子ユニットの変形が測定素子の領域に実質的に伝播しないような様式で、変形部から離れて配置され且つ/又は少なくとも1つの分離部を介して変形部から分離される。
【0015】
本発明のさらに他の好適な実施形態は、特許請求の範囲から、又は添付図面を参照する以下の好適な実施形態の説明から明らかとなる。開示した特徴の全ての組み合わせが、特許請求の範囲に明記されているか否かを問わず本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による方法の好適な実施形態を実行できる、本発明による光学モジュールの好適な実施形態を備えた光学結像装置の非常に概略的な図である。
図2図1からの結像装置で実行できる本発明による方法の好適な実施形態のフローチャートである。
図3】本発明による光学モジュールを備えた図1からの光学装置の一部の概略図である。
図4】本発明による光学モジュールの別の好適な実施形態の概略図である。
図5】本発明による光学モジュールの別の好適な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1実施形態
図1図3を参照して、本発明による光学素子ユニットの好適な実施形態を有する本発明による光学モジュールの好適な実施形態を備えた、マイクロリソグラフィ用の本発明による光学結像装置101の好適な実施形態を以下で説明する。以下の説明を単純にするために、xyz座標系を図に導入し、以下で参照する。
【0018】
図1は、EUV領域の(すなわち、5nm〜20nmの、通常は約13nmの波長の)第1波長の光で動作するマイクロリソグラフィ装置101の形態の光学結像装置の非常に概略的な図を示す。マイクロリソグラフィ装置101は、照明系103と、マスク装置104と、対物系105の形態の光学装置とを有する光学投影系102の形態の結像ユニットを備える。照明系103は、光学素子群106を備え、(より詳細には示さないライトガイド装置を介して)マスク装置104のマスク104.1を投影光ビーム101.1(この部分ではより詳細に示さない)で照明する。
【0019】
物体平面内のマスクテーブル104.2上に配置したマスク104.1には、投影パターンがあり、これが、投影光ビーム101.1を用いて、対物系105に配置した光学素子を介して基板装置108の基板108.1上の、例えばいわゆるウェーハの像平面に投影される。
【0020】
この目的で、対物系105は、複数の光学素子111から形成した光学素子群107を備え、光学素子111は対物系105のハウジング105.1に収容され、ハウジング105.1はさらに支持構造109で支持される。光学素子111は、投影光ビーム101.1を基板108.1に投影し、したがって投影パターンの物点を基板108.1の像点に結像する。
【0021】
図3は、光学素子111の1つの形態の光学素子を備えた本発明による光学モジュール110の好適な実施形態を示す。光学素子111は、光学モジュール110の支持装置112により支持され、支持装置112はさらに、支持構造109で(ハウジング105.1を介して)支持される。
【0022】
ウェーハ108.1への投影パターンの結像中に投影光ビーム101.1の波面収差を補正できるようにするために、光学モジュール110は、一方では変形装置113を備える。変形装置113により、投影光ビーム101.1と相互作用する光学素子111の光学面111.1を投影中に変形させて、投影光ビーム101.1の波面における望ましくないずれに対抗することができる。
【0023】
変形装置113は、この目的で、第1アクチュエータ113.1の形態の複数の変形素子を備え、これらは、本例では、光学素子111の本体111.3に設けた周方向凹部111.2内に配置され、光学素子111の全周にわたって周方向Uに延在する。
【0024】
周方向凹部111.2は、光学素子111において、周方向Uの周縁部111.4と中央ベース部111.5とを形成する。第1アクチュエータ113.1は、本例では光学素子111の径方向Rに実質的に整列し、したがって周方向Uにより画定される周面内にある。第1アクチュエータ113.1はそれぞれ、一方では周縁部111.4上の第1係合点で支持され、他方ではベース部111.5上の半径方向R内方に配置した第2係合点で支持される。
【0025】
凹部111.2は、光学素子111に意図的な構造弱化部を導入し、これは、例えば径方向Rに加わった第1アクチュエータ113.1の力によって単純な方法で、光学面111.1を備えた光学素子111の変形部111.6に規定の変形を導入することを可能にする。特に、図3に破線輪郭114で示すように、任意の空間方向の、特に周方向U及び/又は径方向Rの所望の変形に対応して、凹部111.2を、したがって光学素子111の意図的な弱化部を不均一にすることが可能である。しかしながら、光学面の実質的に対称な変形が望まれる本発明の他の変形形態では、厳密に対称な配置又は構成も選択できることが理解されるであろう。
【0026】
本発明の他の変形形態では、光学面の所望の変形を達成するために、当然ながら変形装置の任意の他の構成も選択できることが理解されるであろう。特に、第1アクチュエータの何らかの他の構成及び/又は向きを選択できる。さらに、上述の凹部を設けることは必須ではない。第1アクチュエータが外部支持構造ではなく光学素子の両側に直接位置すれば、かかる外部支持構造から光学素子への寄生応力を単純な方法で回避できるので、このようにすることが単に好ましい。
【0027】
光学面111.1の変形の制御は、本例では第1アクチュエータ113.1を制御する制御装置115を介して行われる。このために、制御装置115に接続した測定装置の第1測定ユニット116を設け、これは第1エミッタ装置116.1及び関連の第1センサ装置116.2を備える。エミッタ装置116.1は(制御装置115の制御下で)、測定光ビーム116.3を光学面111.1へ送り、測定光ビーム116.3がそこで反射されてセンサ装置116.2へ指向される。制御装置115に伝送されたセンサ装置116.2の信号に基づき、続いて制御装置115において光学面111.1の既存の変形に関する結論を下すことができる。任意に、制御装置115は、光学面111.1の変形を調整するために、続いて指定の設定値に従って第1アクチュエータ113.1を制御する。
【0028】
本発明の他の変形形態では、光学面の変形を検出するために、第1測定ユニットを異なる構成にすることもできることが理解されるであろう。特に、第1測定ユニットは、当然ながら1つ又は複数の第1エミッタ装置及び/又は複数の第1センサ装置も備えることができ、これらは検出対象の光学面の変形に対応する光学素子に割り当てられる。
【0029】
第1アクチュエータ113.1を介して光学素子に導入された力は、変形部111.6に機械的応力をもたらし、これが変形部の対応の変形につながり、したがって本願において変形応力と称する。
【0030】
光学面111.1の変形に加えて、本例では、剛体位置(すなわち、空間における3つの並進自由度での並進)及び剛体向き(すなわち、空間における3つの回転自由度)の補正も可能である。6自由度の剛体位置及び剛体向きのこれらの設定は、以下の例では位置決め装置117により達成され、これも制御装置115により制御される。
【0031】
位置決め装置117は、この目的で複数の第2アクチュエータ117.1を備え、これらは、本例ではヘキサポッド(周方向Uに均一に分配配置した3つのバイポッドから従来は構成される)の形態でパラレルキネマティック式に配置される。
【0032】
しかしながら、本発明の他の変形形態では、位置決め装置の任意の他の構成、特に第2アクチュエータの任意の他の構成及び配置も選択できることが理解されるであろう。特に、特定の結像装置の要件に応じて、光学素子の剛体位置及び/又は剛体向きの設定が6自由度未満で行われることも当然ながら想定され得る。
【0033】
位置決め装置117は、一方では支持構造112で支持され、光学素子111のうち光学面111.1に面しない背面111.7の領域で光学素子111の基準部111.8に係合する。基準部111.8は、実質的にディスク形の変形部111.6から光学素子111の背面111.7に突出した突起に形成される。
【0034】
基準部111.8は、その外周上に測定装置の第2測定ユニット118の第1測定素子118.1を担持し、第1測定素子118.1は、光学素子の剛体位置及び剛体向きを検出する役割を果たす。この目的で、支持構造112に配置した第2測定素子118.2を第1測定素子118.1に割り当てる。
【0035】
基準部111.8の円周に、第1測定素子118.1及び第2測定素子118.2からなる複数の測定素子対118.3を設けることにより、6自由度で光学素子111の剛体位置及び剛体向きを検出することを可能にする。
【0036】
測定素子対118.3の数は、検出対象の自由度数と、これに関連して任意に必要な冗長性とに応じて変わることが理解されるであろう。本発明の特定の変形形態では、任意に単一の測定素子対でさえ十分であり得る。
【0037】
本例では、第1測定素子118.1は、単純な受動基準素子であり、第2測定素子118.2に接続した制御装置115に対応の測定信号を伝送するために、能動コンポーネントとして設計した第2測定素子118.2と適当な十分に知られた方法で相互作用する。
【0038】
この測定信号及び他の測定素子対118.3の測定信号に基づき、制御装置115は、続いて光学素子111の現在の剛体位置及び剛体向きを求めることができる。結像装置101の現在の結像プロセスから生じる特定の要件に応じて、光学素子111の剛体位置及び剛体向きを所望のように制御するために、制御装置115は続いて第2アクチュエータ117.1を制御することができる。
【0039】
測定素子対は、2つの測定素子の相対位置に関する適切な情報を提供する任意の適当な動作原理に従って動作できることが理解されるであろう。例えば、干渉法により動作する測定素子対を用いることができ、その場合、第1測定素子は単純な反射体の形態である。エンコーダ原理に従って動作する測定素子対も想定することができ、その場合、第1測定素子は、例えば対応の1次元又は2次元格子等であり得る。
【0040】
さらに、第1測定素子は必ずしも受動素子である必要がないことが理解されるであろう。しかしながら、受動素子としての構成には、例えば信号リード等を介したいかなる種類の機械的接続も光学素子と支持構造との間で必要ないことにより、かかる接続を介して寄生応力が導入される危険が特に単純な方法でなくなるという利点がある。
【0041】
変形装置113は、光学モジュール110の通常動作時に、指定の最大力Fmax以下の力を光学素子111に加える。この最大力Fmaxから、最大第1変形応力DS1maxを有する変形応力が変形部111.で生じる。
【0042】
変形装置113を介して光学素子111に導入される変形が第2測定ユニット118の測定結果に影響を及ぼし、したがって第1測定素子118.1の領域における変形により光学素子111の剛体位置及び剛体向きの測定を著しく改悪するのを防止するために、第1測定素子118.1を有する基準部111.8は、変形装置113の最大力効果Fmaxから、基準部111.8において最大第2変形応力DS2maxを有する応力分布が生じるように、光学面111.1から離れて設計及び配置される。
【0043】
最大第2変形応力DS2maxは、本例では最大第1変形応力DS1maxの3%未満である。これには、結像装置101の通常動作時に、第2測定ユニット118の測定結果が顕著に改悪されないことにより、光学素子111の正確な剛体位置及び剛体向きが常に検出され、位置決め装置117を介した誤補正が起こらないという利点がある。
【0044】
本発明の他の変形形態では、基準部のより大きな変形も許すことができることが理解されるであろう。これは特に、第2測定ユニットの測定が、予想される変形に影響されやすくない場合(例えば、予想される変形が検出対象の自由度とは異なるか又は無関係な自由度で起こる場合)であり得る。
【0045】
しかしながら、好ましくは、基準部は、最大第2変形応力DS2maxが最大第1変形応力DS1maxの20%未満であるよう設計及び配置される。好ましい構成では、最大第2変形応力DS2maxは、最大第1変形応力DS1maxの10%以下、好ましくは最大第1変形応力DS1maxの3%以下である。
【0046】
本例では、一方では、基準部111.8が変形部111.6又は光学面111.1から十分に大きく離れて位置付けられることにより、変形応力が基準部111.8に達する前に大幅に低下しているので、有利なほど小さな第2変形応力DS2maxが達成される。
【0047】
他方では、基準部111.8が分離装置111.9を介して変形部111.6から、とりわけ変形装置113の接点から機械的に分離されることにより、基準部111.8への、特に第2測定ユニット118を有する領域への変形応力の直接導入が確実に防止される。
【0048】
本例における分離装置111.9は、光学素子111の本体111.3における単純な周方向凹部の形態をとる。しかしながら、本発明の他の変形形態では、光学素子の本体のこうした構成の代わりに、任意の他の機械的分離を変形部と基準部との間に設けることもできることが理解されるであろう。
【0049】
さらに、本発明の他の変形形態では、この付加的な分離を省くこともできることが理解されるであろう。その場合、基準部への変形応力の導入は、例えば、単に基準部と変形部との間の十分に大きな距離により回避することができる。
【0050】
したがって、両方の措置(距離を増加させた配置及び変形部111.6からの基準部111.8の分離)に、変形装置113を介して変形部111.6に導入された光学素子111の変形が有利なことに第1測定素子118.1の領域に実質的に伝播しないという効果がある。
【0051】
すでに上述したように、変形部111.6は、本例では中心軸111.1を画定する実質的にディスク形の形態である。
【0052】
この中心軸111.1は、例えば回転対称素子の場合にように、光学素子111の対称軸であり得る。しかしながら、こうした対称軸を有しない光学素子、例えば非球面光学素子の場合、これは、光学面の図心を通る光学面に対して垂直な軸とすることもできる。
【0053】
基準部111.8を有する突起は、本例では中心軸111.1と本質的に同心に配置される。しかしながら、本発明の他の変形形態では、これとは異なる基準部の配置も想定できることが理解されるであろう。
【0054】
本発明の好適な変形形態(図3に示す寸法設定とは異なる寸法設定を有する)では、変形部111.6が中心軸111.1方向の長手方向に最大第1長手方向寸法L1を有する一方で、この長手方向に基準部111.8を有する突起は、最大第2長手方向寸法L2を有し、第2長手方向寸法L2は第1長手方向寸法L1の80%よりも大きい。好ましくは、第2長手方向寸法L2は、第1長手方向寸法L1の100%よりも大きく、特に第1長手方向寸法L1の150%よりも大きい。このような構成には、単に基準部111.8と変形部111.6との間で得られる大きな距離により、第2測定ユニット118の測定結果を改悪し得る基準部111.8への変形の導入が確実に防止されるという利点がある。
【0055】
さらに、変形部111.6が中心軸111.1を横切って延在する横方向に最大第1横方向寸法D1を有する一方で、この横方向に基準部111.8を有する突起は、最大第2横方向寸法D2を有する。第2横方向寸法D2は、本例では第1横方向寸法D1の80%未満である。本発明のさらに好適な変形形態では、第2横方向寸法D2は、第1横方向寸法D1の60%未満、特に第1横方向寸法の40%未満である。
【0056】
分離装置を形成する凹部111.9を最大限の深さにして最大限の分離を達成すれば有利であることに、現時点で言及しておく。本発明の好適な変形形態では、本体111.3は、凹部111.9の領域で、横方向に最大第3横方向寸法D3を有し、これは第2横方向寸法D2の80%未満である。本発明のさらに好適な変形形態では、第3横方向寸法D3は、第2横方向寸法の60%未満、特に第2横方向寸法D2の40%未満である。
【0057】
光学素子又は光学素子ユニット111はそれぞれ、本例ではゼロに近い熱膨張率を有する材料のモノリシック素子として設計される。しかしながら、本発明の他の変形形態では、光学素子ユニットの多部品構成も想定できることが理解されるであろう。特に、変形部及び基準部を異なるコンポーネントから作ることができる。その場合、分離装置も1つ又は複数の別個の要素から形成することができる。
【0058】
図2は、マイクロリソグラフィプロセスの形態の結像プロセスに関連して実行される、光学素子ユニットの位置及び/又は向きを求める本発明による方法の好適な実施形態のフローチャートを示し、結像プロセスに関しては、いわゆるスキャナ原理に従って動作する図1及び図3に示すマイクロリソグラフィ装置101で実行される。
【0059】
最初に、ステップ119.1において、マイクロリソグラフィプロセスの手順を開始し、マイクロリソグラフィ装置101を図1及び図3で見られる構成で設ける。
【0060】
変形ステップ119.2において、最初に、基板108.1の照明と並行して判定ステップにおいて結像誤差を求める。求められた結像誤差に基づき、この結像誤差に対抗するために、続いて上述のように変形装置113により光学素子111の変形を行う。
【0061】
ステップ119.3において、図1及び図3に関連して上述した判定と、任意に光学素子111の剛体位置及び剛体向きの補正とを、変形ステップ119.2の後に又は変形ステップ119.2と並行して、同じく結像誤差を減らす役割を果たす位置決め装置117を介して行う。
【0062】
上述のように、光学素子111の変形と剛体位置及び剛体向きとの判定及び補正を、基板108.1の照明と並行して行う。少なくとも基板108.1の照明の終了が必要となるような結像誤差が検出されない限り、照明は、結像誤差の判定及び補正と同時に且つ無関係に行われる。
【0063】
さらなるステップ119.4において、続いてさらに別の補正作業を行うべきか否かを確認する。補正を行わない場合、手順はステップ119.5で終了する。そうでない場合はステップ119.2に戻る。
【0064】
第2実施形態
以下において、図1図2、及び図4を参照して、図1に示すマイクロリソグラフィ装置101の光学モジュール110の代わりに用いることができる本発明による光学モジュール210の別の好適な実施形態を説明する。
【0065】
光学モジュール210は、その設計及び機能について図3の光学モジュール110に基本的に対応するので、相違点のみをここでは説明する。特に、同じ種類のコンポーネントには100を足した参照符号を付けてある。これらのコンポーネントの特性に関して以下で別段の記載がない限り、第1実施形態に関連した上記説明を参照されたい。
【0066】
光学モジュール210は、光学素子211への位置決め装置217の接続が光学モジュール110とは異なる。図4から分かるように、本例では、接続が分離リング219の形態の分離装置を介して行われ、分離リング219は、分離素子219.1を介して光学素子211の本体211.3に接続される。分離素子219.1は、従来のように、一方では支持構造212から光学素子211への寄生応力の導入を少なくとも減らし、結合されたコンポーネントの異なる熱膨張を補償する役割を果たす。
【0067】
分離素子219.1は、変形部211.6の領域で光学素子211の本体211.3に係合する。これには、基準部211.8が変形装置213により光学素子211に導入される力の力束(force flux)外及び位置決め装置217により光学素子211に導入される力の力束外の両方に位置付けられるという利点がある。位置決め装置217の力効果から得られる(概して動的な)応力の導入も、このようにして少なくとも大部分が防止されることにより、上記応力及び得られる変形による第2測定ユニット218の測定結果の改悪も回避される。
【0068】
支持構造を接続するために、分離装置を必ずしも分離リングとして設計する必要がないことが理解されるであろう。正確には、支持構造への光学素子の対応の分離的接続を達成する任意の他の構成を選択することができる。さらに、本発明の他の変形形態では、上記分離装置を省くことさえでき、したがって位置決め装置が光学素子の本体に直接接続されることが理解されるであろう。
【0069】
同じく図4から分かるように、基準部211.8は、光学素子211のうち光学面211.1に面しない背面211.7における突起により形成され、その最大第2横方向寸法D2は、変形部211.6の最大第1横方向寸法D1の約40%に相当する。さらに、この場合も、第1実施形態に関連して上述した寸法を選択することができる。
【0070】
同じく図4から分かるように、本発明の特定の変形形態では、破線輪郭220で示すように、供給装置の結合装置を設けることができ、これを介して変形装置213の第1アクチュエータ213.1への制御信号及び/又は電力の非接触結合が行われる。この非接触結合装置220は、任意の適当な動作原理に従って動作し得る。例えば、誘導的動作原理を用いることができる。このような構成には、第1アクチュエータ213.1への接続線を介して行われ得る寄生応力の導入が回避されるという利点がある。
【0071】
動作時に(例えば設定の調整のために)光学素子211の大きな移動を行わなければならない場合、支持構造で支持された結合装置220の部分が、信号及び/又は電力の確実な結合を常に確保するために光学素子211に従うことが想定され得る。この目的で、結合装置のこの部分は、制御装置115により対応して制御される可動キャリア等に配置することができる。
【0072】
結像装置101で用いる光学モジュール210では、当然ながらこの場合も図2に関連して説明した方法を実行することができるので、その限りにおいて上記の説明を単に参照する。
【0073】
第3実施形態
以下では、図1図2、及び図5を参照して、図1に示すマイクロリソグラフィ装置101の光学モジュール110の代わりに用いることができる本発明による光学モジュール310の別の好適な実施形態を説明する。
【0074】
光学モジュール310は、その設計及び機能について図3の光学モジュール110に基本的に対応するので、相違点のみをここでは説明する。特に、同じ種類のコンポーネントには200を足した参照符号を付けてある。これらのコンポーネントの特性に関して以下で別段の記載がない限り、第1実施形態に関連した上記説明を参照されたい。
【0075】
光学モジュール310は、光学素子311への位置決め装置317の接続が光学モジュール110とは異なる。図5から分かるように、接続が(第2実施形態のように)分離リング319の形態の分離装置を介して行われ、分離リング319は、分離素子319.1を介して光学素子311の本体311.3に接続される。分離素子319.1は、従来のように、一方では支持構造312から光学素子311への寄生応力の導入を少なくとも減らし、結合されたコンポーネントの異なる熱膨張を補償する役割を果たす。
【0076】
分離素子319.1は、変形部311.6の領域で光学素子311の本体311.3に係合する。これには、基準部311.8が変形装置313により光学素子311に導入される力の力束外及び位置決め装置317により光学素子311に導入される力の力束外の両方に位置付けられるという利点がある。位置決め装置317の力効果から得られる(概して動的な)応力の導入も、このようにして少なくとも大部分が防止されることにより、上記応力及び得られる変形による第2測定ユニット318の測定結果の改悪も回避される。
【0077】
しかしながら、位置決め装置の対応の構成により、分離リング319を省いて、図3に示す構成のような位置決め装置を本体311.5に直接接続することも可能である。
【0078】
同じく図5から分かるように、基準部311.8は、光学素子311のうち光学面311.1に面しない背面311.7における突起により形成され、その最大第2横方向寸法D2は、変形部311.6の最大第1横方向寸法D1の約40%に相当する。さらに、この場合も、第1実施形態に関連して上述した寸法を選択することができる。
【0079】
同じく図5から分かるように、図3及び図4に示す光学モジュール110及び210との別の相違点は、変形装置313が光学素子311内のみでなく光学素子311と支持構造312との間で動作することである。この目的で、第1アクチュエータ313.1は、境界領域311.4の外周及び支持構造212の関連の突起に係合する。
【0080】
同じくこの場合も、第1アクチュエータ313.1は(少なくとも図5に示す状態で)、光学素子311の周方向Uにより画定される光学素子311の周面内で実質的に径方向Rに動作する。アクチュエータ313.1が、光学素子311に対するそれらの力作用、したがって光学面311.1の変形を変えることなく、位置決め装置317が発生させた光学素子311の運動(travel movements)に従うことができるように設計されることが理解されるであろう。この目的で、これらは、例えばフォースアクチュエータとして(例えば、いわゆるローレンツアクチュエータとして)構成することができる。
【0081】
したがって、提案した解決手段は、光学素子及び変形装置が1つのユニットを形成するという点で、最初に述べた欠点をすでに克服する。この解決手段では、移動させるユニットを非常に軽量且つより小型の設計とすることができる。これは、特に、非常に動的な制御に好ましいユニットの高い共鳴振動数に関して有利である。したがって、剛体位置及び/又は剛体向きの補正を非常に迅速に行うことができる。さらに、急速な位置補正が変形装置への供給線(ケーブル等)により妨げられない。
【0082】
光学モジュール310では、当然ながらこの場合も図2に関連して説明した手順を実行できることに、現時点で言及しておく。
【0083】
本発明は、EUV領域の波長での基板の照明と共に働く実施例に基づき上述した。しかしながら、本発明を、基板の照明又は何らかの他の種類の結像を異なる波長で行う用途に関連して用いることも当然できることを、現時点で指摘しておく。
【0084】
さらに、本発明をマイクロリソグラフィの分野からの例を用いて上述したことに留意すべきである。しかしながら、本発明を任意の他の用途又は結像プロセスに用いることもできることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5