特許第6033981号(P6033981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6033981
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20161121BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20161121BHJP
   A61F 13/513 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   A61F13/15 144
   A61F13/15 145
   A61F13/511 110
   A61F13/511 200
   A61F13/513 100
【請求項の数】8
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-150757(P2016-150757)
(22)【出願日】2016年7月29日
【審査請求日】2016年8月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】深山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】宇田 匡志
(72)【発明者】
【氏名】坂口 智
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−068955(JP,A)
【文献】 特開2001−095845(JP,A)
【文献】 特許第5829326(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有する表面シートと、吸収体とを備えた吸収性物品であって、
前記表面シートは、基部と、当該基部から前記吸収性物品の肌対向面側に向かって突出する凸部と、を有する不織布からなり、
前記基部は、前記吸収性物品の非肌対向面側に向かって窪む、周壁部及び底部を備えた凹部を有し、
前記凹部は、前記周壁部が前記吸収体と接合されておらず、前記底部の前記第2面が前記吸収体と接合されており、
前記凸部は、頂部と、側壁部とを有するとともに、前記頂部及び前記側壁部において弱酸性化剤を含み、
前記側壁部の繊維密度が前記頂部の繊維密度よりも小さい、
前記吸収性物品。
【請求項2】
前記凸部が、中空の内部構造を有する、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記基部は、前記側壁部よりも繊維密度が高い高密度部を含む、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記基部が、前記弱酸性化剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記凸部が、所定の第1方向に連続的に延び且つ前記第1方向と交差する第2方向に並ぶ複数の第1方向畝部からなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記凸部が、所定の第1方向に連続的に延び且つ前記第1方向と交差する第2方向に並ぶ複数の第1方向畝部と、
前記第2方向に隣り合う2つの前記第1方向畝部の間において前記第2方向に連続的に延び且つ前記第1方向に並ぶ複数の第2方向畝部とからなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記弱酸性化剤が植物由来成分のみからなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記不織布は、コットン繊維を35質量%以下の含有量で含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつや生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品において、着用者の皮膚に生じるかぶれ(皮膚炎)を改善するために、着用者の肌に直に接触し得る表面シートの表面を弱酸性にすることが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、所定の透水性能を有し、且つ表面層のpHが4.0以上6.5以下であり、単位面積あたり20mL透水後の表面層のpHが4.0以上6.8以下である、弱酸性の透水性不織布が開示されている。この特許文献1に開示された透水性不織布は、酸性透水剤(処理剤)が尿や汗などの水分によって流され難いため、使い捨てオムツ、失禁パッド及び生理用ナプキン等の吸収性物品の弱酸性トップシートとして好適に用いることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−091899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示された透水性不織布は、表面が平坦な構造を有しているため、このような透水性不織布を吸収性物品の表面シートとして用いると、吸収性物品の着用時における折れ曲がりや着用者の動作に伴う変形などによって、表面シートの肌対向面側の表面と着用者の肌面との間に接触ムラが生じ易く、表面シートの肌対向面側の表面に含まれる処理剤(弱酸性化剤)を着用者の肌に十分に移行させることができない虞があった。
さらに、この特許文献1に開示された透水性不織布は、20mL透水後の表面層のpHが4.0以上6.8以下であり、処理剤が尿や汗などの水分によって流され難いとされているものの、処理剤を流され難くするための不織布(表面シート)の構造については何ら考慮されていないため、かかる不織布の構造によっては、繰り返し供給される尿などの排泄液(特に、着用者が横たわっている状態で繰り返し供給される排泄液)により流れ落ちてしまい、表面シートの表面におけるpHを弱酸性に維持することができない虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、弱酸性化剤を着用者の肌に十分に移行させることができ、且つ、尿などの排泄液が繰り返し供給されるような場合でも、肌対向面側の表面におけるpHを弱酸性に維持することのできる表面シートを備えた、吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様(態様1)は、表面シートを備えた吸収性物品であって、前記表面シートは、基部と、当該基部から前記吸収性物品の肌対向面側に向かって突出する凸部と、を有する不織布からなり、前記凸部は、頂部と、側壁部とを有するとともに、前記頂部及び前記側壁部において弱酸性化剤を含み、前記側壁部の繊維密度が前記頂部の繊維密度よりも小さい、前記吸収性物品である。
【0008】
本態様の吸収性物品は、着用者の肌に直に接触し易い表面シートの凸部の頂部及び側壁部が弱酸性化剤を含んでいるため、当該弱酸性化剤を着用者の肌面に接触させ易く、かかる弱酸性化剤を着用者の肌に十分に移行させることができる。さらに、本態様の吸収性物品は、凸部の側壁部における繊維密度が頂部の繊維密度よりも小さいため、着用者から尿などの排泄液が表面シートの表面に供給されたときに当該排泄液中に上述の頂部及び側壁部に含まれる弱酸性化剤が溶出したとしても、上述の弱酸性化剤を含む排泄液が表面シートの肌対向面側から非肌対向面側へ透過する際に、一定量の排泄液が繊維密度の小さい側壁部に残留液として残留し易く、かかる残留液に含まれる弱酸性化剤によって、前記凸部のpHを弱酸性に維持することができる。これにより、本態様の吸収性物品は、着用者から尿などの排泄液が繰り返し供給されるような場合でも、常に一定の弱酸性化剤を含む排泄液が残留液として上述の側壁部に残留し易くなっているため、凸部のpHを弱酸性に維持することができる。
以上により、本態様の吸収性物品は、弱酸性化剤を着用者の肌に十分に移行させることができ、且つ、尿などの排泄液が繰り返し供給されるような場合でも、表面シートの肌対向面側の表面におけるpHを弱酸性に維持することができる。
なお、本明細書においては、表面シートの肌対向面側の表面を、単に「表面シートの表面」ということがある。
【0009】
本発明の別の態様(態様2)の吸収性物品では、前記態様1の吸収性物品において、前記凸部が、中空の内部構造を有している。
【0010】
本態様の吸収性物品は、表面シートの凸部が中空の内部構造を有しているため、上述の溶出した弱酸性化剤を含む排泄液が、前記凸部において着用者の肌に近い肌対向面側の表層部分(より具体的には、前記凸部の側壁部における表層部分)に残留し易く、弱酸性化剤を着用者の肌により接触させ易くすることができ、当該弱酸性化剤をより確実に着用者の肌に移行させることができる。
【0011】
本発明の更に別の態様(態様3)の吸収性物品では、前記態様1又は2の吸収性物品において、前記基部は、前記側壁部よりも繊維密度が高い高密度部を含んでいる。
【0012】
本態様の吸収性物品は、表面シートの基部が前記凸部の側壁部よりも繊維密度の高い高密度部を含んでいるため、上述の弱酸性化剤を含む排泄液が前記基部よりも相対的に繊維密度の低い凸部の側壁部に残留し易く、上述の態様1の作用効果(すなわち、「弱酸性化剤を着用者の肌に十分に移行させることができ、且つ、尿などの排泄液が繰り返し供給されるような場合でも、表面シートの肌対向面側の表面におけるpHを弱酸性に維持することができる」という作用効果)を、より確実に且つより効率的に発揮することができる。
なお、本明細書においては、上述の態様1の作用効果を、「弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果」ということがある。
【0013】
本発明の更に別の態様(態様4)の吸収性物品では、前記態様1〜3のいずれかの吸収性物品において、前記基部が、前記弱酸性化剤を含んでいる。
【0014】
本態様の吸収性物品は、着用者から供給される排泄液が一時的に溜まり易い表面シートの基部においても、上述の弱酸性化剤を含んでいるため、かかる基部に含まれる弱酸性化剤が、表面シートの基部上に一時的に溜まる排泄液中に溶出し、当該排泄液が表面シートの肌対向面側から非肌対向面側へ透過するときに前記凸部の側壁部に残留する排泄液(以下、側壁部に残留する排泄液を、単に「残留液」ということがある。)に含まれる弱酸性化剤の量(すなわち、濃度)を相対的に増大させることができる。その結果、本態様の吸収性物品は、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より良好に且つより確実に発揮することができる。
【0015】
本発明の更に別の態様(態様5)の吸収性物品では、前記態様1〜4のいずれかの吸収性物品において、前記基部が、前記吸収性物品の非肌対向面側に向かって窪む凹部を有している。
【0016】
本態様の吸収性物品は、表面シートの基部が吸収性物品の非肌対向面側に向かって窪む凹部を有しているため、かかる凹部によって、表面シートの凸部における側壁部と表面シートの非肌対向面側に配置される吸収体とをより確実に離間させることができ、表面シートの凸部が着用者の体圧等によって潰れてしまうような場合でも、上述の側壁部に残留する排泄液(残留液)を非肌対向面側に引き込まれ難くすることができる。これにより、本態様の吸収性物品は、溶出した弱酸性化剤を含む排泄液が凸部の側壁部に更に残留し易くなっているため、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果をより確実に発揮することができる。
【0017】
本発明の更に別の態様(態様6)の吸収性物品では、前記態様1〜5のいずれかの吸収性物品において、前記凸部が、所定の第1方向に連続的に延び且つ前記第1方向と交差する第2方向に並ぶ複数の第1方向畝部からなる。
【0018】
本態様の吸収性物品は、表面シートの凸部が所定の第1方向に連続的に延び且つ前記第1方向と交差する第2方向に並ぶ複数の第1方向畝部によって構成されているため、表面シートの表面に供給された排泄液を、上述の第1方向に拡散させつつ、第2方向に隣り合う凸部の間(すなわち、第2方向に隣り合う第1方向畝部の間)に一時的に溜め易くすることができる。これにより、本態様の吸収性物品は、上述の溶出した弱酸性化剤を含む排泄液がより広範囲の側壁部(具体的には、第1方向の広範囲にわたる側壁部)に接触し易く、当該弱酸性化剤を含む排泄液をより広範囲の側壁部に残留させることができるため、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、表面シートのより広範囲の領域において発揮することができる。
【0019】
本発明の更に別の態様(態様7)の吸収性物品では、前記態様1〜5のいずれかの吸収性物品において、前記凸部が、所定の第1方向に連続的に延び且つ前記第1方向と交差する第2方向に並ぶ複数の第1方向畝部と、前記第2方向に隣り合う2つの前記第1方向畝部の間において前記第2方向に連続的に延び且つ前記第1方向に並ぶ複数の第2方向畝部とからなる。
【0020】
本態様の吸収性物品は、表面シートの凸部が所定の第1方向に連続的に延び且つ前記第1方向と交差する第2方向に並ぶ複数の第1方向畝部と、前記第2方向に隣り合う2つの前記第1方向畝部の間において前記第2方向に連続的に延び且つ前記第1方向に並ぶ複数の第2方向畝部と、によって構成されているため、表面シートの表面に供給された排泄液を、上記各方向に隣り合う各凸部の間(すなわち、第2方向に隣り合う2つの第1方向畝部と、当該隣り合う2つの第1方向畝部の間において第1方向に隣り合う2つの第2方向畝部と、の間)に、より溜め易くすることができる上、一定数以上の側壁部を確保することができる。
したがって、本態様の吸収性物品は、上述の溶出した弱酸性化剤を含む排泄液が側壁部(より具体的には、第1方向畝部の側壁部及び第2方向畝部の側壁部の各々)に更に接触し易く、当該弱酸性化剤を含む排泄液をより確実に凸部の側壁部に残留させることができるとともに、当該弱酸性化剤を含む排泄液を第1方向畝部の側壁部及び第2方向畝部の側壁部の各々に残留させることができる(すなわち、上述の弱酸性化剤を含む排泄液が凸部の側壁部に残留する量を、一定以上確保することができる)ため、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より確実に且つより顕著に発揮することができる。
【0021】
本発明の更に別の態様(態様8)の吸収性物品では、前記態様1〜7のいずれかの吸収性物品において、前記弱酸性化剤が植物由来成分のみからなる。
【0022】
本態様の吸収性物品は、上述の弱酸性化剤が植物由来成分のみからなるため、吸収性物品の着用者や使用者(例えば、介護者等)など(以下、単に「着用者等」ということがある。)に対して、弱酸性化剤として植物由来成分のみを使用していることによる安心感を醸成することができる。そして、このような安心感は、心理的に吸収性物品の長期着用を促し得るため、本態様の吸収性物品は、その長期着用によって、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果をより着実に発揮することができる上、かかる作用効果を着用者等に認識させ易くすることができる。
【0023】
本発明の更に別の態様(態様9)の吸収性物品では、前記不織布は、コットン繊維を35質量%以下の含有量で含んでいる。
【0024】
本態様の吸収性物品は、表面シートを構成する不織布が親水性を有するコットン繊維を35質量%以下の含有量で含んでいるため、かかる不織布において、上記凸部及び基部を有する構造や繊維密度の関係を維持しつつも、上述の弱酸性化剤が溶出した排泄液を更に保持し易くなっており(特に、側壁部において保持し易くなっており)、結果的に上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、更に確実に且つ良好に発揮することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、弱酸性化剤を着用者の肌に十分に移行させることができ、且つ、尿などの排泄液が繰り返し供給されるような場合でも、肌対向面側の表面におけるpHを弱酸性に維持することのできる表面シートを備えた、吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る使い捨ておむつの平面図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る使い捨ておむつの図1に示すII−II線に沿った拡大断面図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態に係る使い捨ておむつの表面シートを構成する不織布の斜視図である。
図4図4は、本発明の第一実施形態に係る使い捨ておむつの表面シートの要部拡大平面図である。
図5図5は、本発明の第一実施形態に係る使い捨ておむつの図4に示すV−V線に沿った拡大断面図である。
図6図6は、本発明の第一実施形態に係る使い捨ておむつの図4に示すVI−VI線に沿った拡大断面図である。
図7図7(a)は、図6に示す使い捨ておむつの表面シートにおける凸部の要部拡大断面図であり、図7(b)は、図7(a)に示す使い捨ておむつに排泄液が供給された直後の状態を模式的に示す要部拡大断面図であり、図7(c)は、図7(b)に示す状態から排泄液が表面シートの非肌対向面側へ移行した後の状態を模式的に示す要部拡大断面図である。
図8図8は、本発明の第一実施形態に係る使い捨ておむつの図4に示すVIII−VIII線に沿った拡大断面図である。
図9図9は、本発明の第二実施形態に係る使い捨ておむつの表面シートを構成する不織布の斜視図である。
図10図10は、図9に示す不織布の要部拡大平面図である。
図11図11は、図10に示す不織布のXI−XI線に沿った拡大断面図である。
図12図12は、図10に示す不織布のXII−XII線に沿った拡大断面図である。
図13図13は、本発明の第三実施形態に係る使い捨ておむつの表面シートを構成する不織布の斜視図である。
図14図14は、図13に示す不織布のXIV−XIV線に沿った拡大断面図である。
図15図15は、本発明の第四実施形態に係る使い捨ておむつの表面シートを構成する不織布の斜視図である。
図16図16は、本発明の第五実施形態に係る使い捨ておむつの表面シートを構成する不織布の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の吸収性物品の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、「展開した状態で水平面上に置いた対象物(例えば、吸収性物品、表面シート(不織布)、吸収体等)を、垂直方向の上方側から対象物の厚さ方向に見ること」を「平面視」という。特に、対象物が吸収性物品の場合は、吸収性物品を展開した状態で表面シート側から厚さ方向に見ることを、単に「平面視」ということがある。
【0028】
本明細書において用いる各種方向等については、特に断りのない限り、以下のとおりである。
本明細書において、「長手方向」は「平面視における縦長の対象物の長さの長い方向」を指し、「幅方向」は「平面視における縦長の対象物の長さの短い方向(短手方向)」を指し、「厚さ方向」は「展開した状態で水平面上に置いた対象物に対して垂直方向」を指す。これらの長手方向、幅方向及び厚さ方向は、それぞれ互いに直交する関係にある。
さらに、本明細書では、「縦長の対象物(例えば、吸収性物品、表面シート(不織布)、吸収体等)の幅方向において、長手方向に延びる幅方向中央軸線に対して相対的に近位側」を「幅方向の内方側」といい、「前記縦長の対象物の幅方向において、前記幅方向中央軸線に対して相対的に遠位側」を「幅方向の外方側」という。なお、長手方向の内方側及び外方側も同様である。
そして、本明細書では、特に断りのない限り、吸収性物品の厚さ方向において、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に近位側」を「肌対向面側」といい、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に遠位側」を「非肌対向面側」という。
なお、本明細書において、「着用時」とは、着用者が吸収性物品を着用した時点(すなわち、使用可能な状態を形成した時点)から、その状態を維持している間(着用している間)を意味し、「着用中」も同義である。
【0029】
<第一実施形態>
図1図2図4図8は、本発明の第一実施形態に係る使い捨ておむつ1(吸収性物品)を模式的に示す図であり、図3は、使い捨ておむつ1の表面シート2を構成する不織布を模式的に示す斜視図である。なお、図1の使い捨ておむつ1において、図面の上方側の領域が、使い捨ておむつ1の着用時に着用者の背部に対して近位となる背部側領域に相当し、図面の下方側の領域が、使い捨ておむつ1の着用時に着用者の腹部に対して近位となる腹部側領域に相当する。
【0030】
本発明の第一実施形態に係る使い捨ておむつ1は、図1図2図4図8に示すように、互いに直交する長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有しており、厚さ方向Tにおいて、着用者の肌対向面側に位置し且つ後述する第1方向畝部11(凸部)及び基部12を有する液透過性の表面シート2と、着用者の非肌対向面側に位置する液不透過性の裏面シート3と、これら両シートの間に位置する吸収体4と、を基本構成として備えている。
なお、使い捨ておむつ1は、図1及び図2に示すように、幅方向Wの内方側における端縁が起立して防漏壁部を形成し得る一対の側部シート5、5と、吸収体4に対して幅方向Wの外方側に位置し且つ着用者の大腿部に当接する左右の脚周り部をそれぞれ長手方向Lに伸縮させるためのゴム等からなる伸縮部材6と、着用時に使い捨ておむつ1の腹部側領域と背部側領域を連結するため連結テープ7と、裏面シート3の非肌対向面側に配置された外装シート(不図示)と、を更に備えている。
【0031】
本実施形態において裏面シート3は、図2に示すように、使い捨ておむつ1の非肌対向面側(図2における吸収体4の下方側)において、少なくとも吸収体4の非肌対向面側の表面を覆うように配置され、着用者から排出された尿などの排泄液の透過を防止して、かかる排泄液が外部に漏出するのを防ぐ、液不透過性シート部材によって構成されている。なお、この裏面シート3は、平面視にて、使い捨ておむつ1の長手方向Lに沿って長く形成された縦長の外形形状を有し、上述の腹部側領域から背部側領域に亘って延在するように配置されている。
【0032】
本発明において、裏面シートを構成する液不透過性シート部材は、吸収性物品の裏面シートとして用い得る諸特性(例えば、液不透過性や通気性、柔軟性等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、通気性を有するポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂フィルム、該樹脂フィルムに不織布を貼り合わせた積層体などの任意の液不透過性シート部材を用いることができる。
【0033】
中でも、裏面シートは、排泄液等の液体を透過しないものの、所定の通気性を有する液不透過性シート部材を用いることが好ましい。裏面シートがこのような通気性を有していると、尿などの排泄液を吸収した吸収体から放出される湿気を、裏面シートを介して外部に放出させることができ、吸収性物品内に或いは吸収性物品と着用者の肌との間に留まる湿気の量を低減することができる。
なお、一般に、着用者の肌(皮膚)が尿などの排泄液やその湿気によって濡れた状態に保たれると、着用者の皮膚がふやけてしまい、化学的刺激や物理的刺激に対する耐性を維持し難くなる(すなわち、皮膚の各種刺激に対する防御機能が低下する)ため、尿などの排泄液に由来するアンモニア成分によってアルカリ性の化学的刺激を受けたり、表面シートとの摩擦等によって物理的刺激を受けたりしたときに、皮膚がこれらの刺激に耐えきれずにかぶれ(皮膚炎)などを引き起こし易くなるが、裏面シートが上述のような通気性を有する液不透過性シート部材によって構成されていると、上述のように、吸収性物品内に或いは吸収性物品と着用者の肌との間に留まる湿気の量を低減することができるため、着用者の肌が濡れた状態になり難く(すなわち、着用者の皮膚がふやけ難く)、結果的に、皮膚のかぶれなどをより引き起こし難くすることができる。
【0034】
また、本発明において、裏面シートの寸法形状は、排泄液の漏出を防止し得るものであれば特に制限されず、吸収性物品の着用対象者の大きさや性別、用途などに応じた任意の寸法形状を採用することができる。また、裏面シートの厚みについても、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、0.001mm〜5.0mmの範囲内の厚みを採用することができるが、液不透過性や柔軟性、通気性などの点から0.003mm〜3.0mmの範囲内の厚みが好ましい。
【0035】
本発明の第一実施形態における吸収体4は、図2に示すように、使い捨ておむつ1の厚さ方向Tにおいて、表面シート2と裏面シート3との間に配置されて、表面シート2を透過してきた尿などの排泄液を吸収して保持する機能を有する吸収性部材によって構成されている。この吸収体4は、図1に示すように、平面視にて、使い捨ておむつ1の長手方向Lに沿って長く形成されているとともに、長手方向Lの略中央部分が幅方向Wの内方側に窪んだ略砂時計形の外形形状を有し、使い捨ておむつ1の長手方向Lに延びる幅方向中央軸線(不図示)を含む中央領域において、上述の腹部側領域から背部側領域に亘って延在するように配置されている。また、吸収体4は、表面シート2側(すなわち、肌対向面側)の面及び裏面シート3側(すなわち、非肌対向面側)の面がいずれも略平坦に形成されており、吸収体4の全体に亘って略一定の厚さを有している。
なお、本発明において、吸収体は上述の態様のものに限定されず、吸収体は、長方形、長円形等の任意の外形形状を有していても、吸収性物品の長手方向の前方寄り又は後方寄りの位置に偏って配置されていてもよく、また、部分的に異なる厚さを有していてもよい。
【0036】
本発明において、吸収体を構成する吸収性部材は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、当分野において公知の任意の吸収性部材を用いることができる。そのような吸収性部材としては、例えば、パルプ等の吸水性繊維及び高吸収性ポリマーの少なくとも一方を含む吸収性材料を、少なくとも1枚のティッシュ等の液透過性被覆シートによって覆ったものなどが挙げられる。
【0037】
吸収体の厚みや坪量等も、特に制限されず、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収体が備えるべき諸特性(例えば、吸収性、強度、柔軟性等)に応じて適宜調整することができる。例えば、吸収体の厚みは、0.1〜15mmの範囲内、好ましくは1〜10mmの範囲内であり、吸収体の坪量は、20〜1000g/m2の範囲内、好ましくは50〜800g/m2の範囲内である。なお、吸収体の厚みや坪量等は、吸収体全体に亘って一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。
【0038】
なお、本実施形態においては、吸収体4は、肌対向面側の面において表面シート2と、非肌対向面側の面において裏面シート3と、それぞれホットメルト型接着剤等の接着剤によって接合されている。
【0039】
本発明の第一実施形態における表面シート2は、図1及び図2に示すように、着用者の肌に直に接触し得る使い捨ておむつ1の肌対向面側(図2における吸収体4の上方側)において、少なくとも吸収体4の肌対向面側の表面を覆うように配置され、着用者から排出された尿などの排泄液を透過させつつ、吸収体4に吸収及び保持された排泄液が着用者の肌に接触するのを防ぐ、液透過性の不織布によって構成されている。この表面シート2は、図1に示すように、平面視にて、使い捨ておむつ1の長手方向Lに沿って長く形成された縦長の外形形状を有し、上述の腹部側領域から背部側領域に亘って延在するように配置されている。
【0040】
そして、本実施形態において、表面シート2は、図3図8に示すように、使い捨ておむつ1の長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tとそれぞれ平行の関係にある第1方向、第2方向及び第3方向を有するとともに、使い捨ておむつ1の肌対向面側の表面を形成する第1面2aと、非肌対向面側の表面を形成する第2面2bと、を有する不織布からなる。かかる不織布は、図3図8に示すように、表面シート2の第3方向(厚さ方向T)における基準位置に位置する基部12と、前記第1方向(長手方向L)に延び且つ前記第2方向(幅方向W)に所定間隔で並ぶように形成された、前記基部12から使い捨ておむつ1の肌対向面側に向かって突出する複数の第1方向畝部11と、を有している。なお、この第1方向畝部11は、本発明における「凸部」の一例である。
【0041】
本実施形態において、基部12は、図3図6図8に示すように、表面シート2における第3方向(厚さ方向T)の基準面となる第1底部22を備えた第1基部21と、この第1基部21内において前記第1方向(長手方向L)に沿って間欠的に形成された、前記第1底部22の第1面2aに開口する窪み状の構造を有する複数の凹部26(第2基部)と、を備えている。さらに、この凹部26は、図3図5及び図8に示すように、上記第1底部22から吸収体4側(すなわち、非肌対向面側)に向かって延びる周壁部27と、該周壁部27の非肌対向面側の端部において該端部を塞ぐように形成された第2底部28と、を備えている。
【0042】
本実施形態において、第1方向畝部11は、図3図8に示すように、表面シート2において最も肌対向面側に位置する頂部13と、該頂部13と上記第1底部22との間において前記第1方向(長手方向L)に延在する側壁部15と、を備えており、さらに、前記第1方向畝部11は、表面シート2の非肌対向面側に、表面シート2(不織布)の第2面2bが面する空隙部14を備えている。この空隙部14を備えていることによって、表面シート2の第1方向畝部11は、中空の内部構造を有している。
なお、本明細書において、第1方向畝部11等の凸部における「頂部」は、凸部において最も肌対向面側に位置する頂点(なお、凸部が複数種類の畝部からなる場合は、各畝部において最も肌対向面側に位置する頂点)を含む部分であって、該頂点から凸部の高さ(すなわち、基部の第1面(本実施形態においては、第1基部21の第1底部22における第1面2a)から凸部の頂点までの距離)の70%の位置(ここで、凸部の高さの70%の位置とは、基部の第1面を起点として凸部の全高さの70%の高さの位置を指す。)までの部分を指す。
【0043】
そして、本実施形態において、第1方向畝部11は、頂部13及び側壁部15において弱酸性化剤を含んでおり、さらに、図7(a)に示すように、側壁部15の繊維密度が頂部13の繊維密度よりも小さくなるように構成されている。
本実施形態における使い捨ておむつ1は、着用者の肌に直に接触し得る表面シート2の第1方向畝部11(凸部)の頂部13及び側壁部15が弱酸性化剤を含んでいるため、当該弱酸性化剤を着用者の肌に接触させ易く、かかる弱酸性化剤を着用者の肌に十分に移行させることができる。さらに、使い捨ておむつ1は、図7(a)に示すように、第1方向畝部11の側壁部15における繊維密度が頂部13の繊維密度よりも小さいため、図7(b)に示すように、着用者から尿などの排泄液Uが表面シート2上に供給されたときに当該排泄液U中に上述の頂部13及び側壁部15に含まれる弱酸性化剤が溶出したとしても、上述の弱酸性化剤を含む排泄液Uが表面シート2の肌対向面側から非肌対向面側へ透過する際に、一定量の排泄液が繊維密度の小さい側壁部15に(より具体的には、側壁部15を形成する構成繊維の繊維間に)残留液Rとして残留し易く(図7(c)を参照)、かかる残留液Rに含まれる弱酸性化剤によって、上述の第1方向畝部11のpHを弱酸性に維持することができる。
これにより、本実施形態における使い捨ておむつ1は、着用者から尿などの排泄液Uが繰り返し供給されるような場合であっても、常に一定の弱酸性化剤を含む排泄液が残留液Rとして上述の側壁部15に残留し易くなっているため、上述の第1方向畝部11のpHを弱酸性に維持することができる。
さらに、その結果として、使い捨ておむつ1は、弱酸性化剤による作用効果(すなわち、着用者の肌を弱酸性化してアルカリ性に変化し難くし、化学的刺激に起因する皮膚のかぶれを引き起こし難くするという作用効果)を持続的に発揮することができる。
また、表面シート2が上述のような第1方向畝部11(凸部)を有していると、着用者の肌が、排泄液を保持した吸収体4と離間し易く、当該吸収体4からの排泄液の液戻りによって着用者の肌が濡れた状態になるようなことが起こり難くなるため、着用者の皮膚がふやけ難く(すなわち、着用者の皮膚の各種刺激に対する防御機能が低下し難く)、結果的に、皮膚のかぶれなどをより引き起こし難くすることができる。
【0044】
ここで、不織布の各部分(頂部、側壁部等)における繊維密度の大小の判断は、繊維密度の大小を比較する対象部分(例えば、1mm×1mmのサイズ)のそれぞれを走査型電子顕微鏡等により20倍〜100倍程度の倍率で拡大観察し、一定面積当たりの繊維の本数等から目視で判断することができる。
【0045】
なお、表面シートの凸部が本実施形態のような畝部であることは、本発明の吸収性物品においては必須の構成要件ではないものの、凸部は、本実施形態のように、所定の第1方向に連続的に延び且つ前記第1方向と交差する第2方向に並ぶ複数の第1方向畝部からなるものが好ましい。表面シートの凸部が、所定の第1方向に連続的に延び且つ前記第1方向と交差する第2方向に並ぶ複数の第1方向畝部によって構成されていると、表面シートの表面に供給された排泄液を、上述の第1方向に拡散させつつ、第2方向に隣り合う凸部の間(すなわち、第2方向に隣り合う2つの第1方向畝部の間)に一時的に溜め易くすることができるため(図7(b)を参照)、上述の溶出した弱酸性化剤を含む排泄液がより広範囲の側壁部(具体的には、第1方向の広範囲にわたる側壁部)に接触し易く、当該弱酸性化剤を含む排泄液をより広範囲の側壁部に残留させることができる。これにより、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、表面シートのより広範囲の領域において発揮することができる。
【0046】
また、上述のとおり、本実施形態においては、表面シート2の第1方向及び第2方向は、使い捨ておむつ1の長手方向L及び幅方向Wとそれぞれ平行の関係にあるが、本発明においては、表面シートの第1方向及び第2方向は、同一平面上(すなわち、表面シート上)において互いに交差する方向であれば本実施形態の態様に限定されず、それぞれ任意の方向を採用することができる。
なお、本明細書において、「第1方向に交差する第2方向」とは、同一平面上(表面シート上)において第1方向とのなす角度が45°以上、90°以下の範囲内となるように第1方向と交差する第2方向を意味する。
【0047】
本発明の吸収性物品に用い得る弱酸性化剤としては、少なくとも表面シートの肌対向面側の表面(具体的には、少なくとも表面シートの凸部(すなわち、頂部及び側壁部))及び着用者の肌を弱酸性化し得るものであれば特に制限されず、例えば、脂肪酸等の有機酸、植物由来油脂等の油類などが挙げられる。上記有機酸としては、コハク酸、乳酸等の飽和脂肪酸;フマル酸、オレイン酸、ウンデシレン酸等の不飽和脂肪酸などの脂肪酸が挙げられ、また、上記油類としては、ヤシ油、パーム核油、パーム油等の飽和脂肪酸を主成分とする植物由来油脂;ヒマシ油、トール油、オリーブ油等の不飽和脂肪酸を主成分とする植物由来油脂などが挙げられる。なお、上述の脂肪酸は、当該脂肪酸のナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩を適量含むものであってもよい。
これらの中でも、酸化分解し難く、着用者から排出される排泄液の温度で作用し易いという点から、融点が40℃以下の不飽和脂肪酸又は油類を用いることが好ましく、融点が30℃以下の不飽和脂肪酸又は油類を用いることが更に好ましい。
更にこれらの中でも、植物由来成分のみからなるものが特に好ましい。弱酸性化剤が植物由来成分のみからなるものであると、吸収性物品の着用者等に対して、弱酸性化剤として植物由来成分のみを使用していることによる安心感を醸成することができる。このような安心感は、心理的に吸収性物品の長期着用を促し得るため、本発明の吸収性物品は、その長期着用によって上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果をより着実に発揮することができる上、かかる作用効果を着用者等に認識させ易くすることができる。
【0048】
なお、上述の有機酸及び油類は、それぞれ単独で用いても、2種類以上を併用してもよく、また、任意の添加剤(例えば、酸化防止剤、エモリエント剤、着色剤、香料等)を含んでいてもよい。
また、上述の有機酸及び油類以外の弱酸性化剤としては、例えば、特開2014−109078号公報や特開2014−231666号公報に開示されている透水性付与剤などが挙げられる。この透水性付与剤は、不織布に耐久性のある透水性も付与することができるため、本発明の弱酸性化剤として好適に用いることができる。
【0049】
なお、本明細書において、「弱酸性化」とは、対象物(例えば、表面シート(不織布)、着用者の肌等)が弱酸性を呈するようにpHを変化させることを意味する。さらに、本明細書において、「弱酸性」とは、pHが3.0〜6.0の範囲内であることを意味する。ここで、対象物が弱酸性であるか否かの評価は、対象物が不織布の場合は、以下の<弱酸性評価法>或いは市販のpH測定器で不織布表面のpHを測定することにより行うことができ、また、対象物が着用者の肌の場合は、市販のpH測定器で肌表面のpHを測定することにより行うことができる。
【0050】
<弱酸性評価法>
(1)ブロモチモールブルー溶液(BTB溶液)を中性緩衝液により希釈して、弱酸性評価用のpH指示薬を調製する。
(2)測定する不織布の表面に、上記pH指示薬を1滴スポイトで滴下するか、或いは霧吹きで噴霧する。
(3)上記pH指示薬が付着した不織布の表面を、ガラス棒で軽く押さえて、不織布を構成する繊維と上記pH指示薬とを馴染ませる。
(4)上記pH指示薬を付着させてから10秒経過後の不織布の表面の色を目視にて確認し、予め作製しておいた各pH毎の色見本と色を対比することにより、上記不織布の表面のpHを判定する。
なお、上述の各pH毎の色見本は、次のようにして作製する。
(i) 予めpHが判明している複数種類(例えば、pHが1.0ずつ又は0.5ずつ異なる等のpHの異なる複数種類)の溶液(例えば、異なるpHを有する複数種類のpH緩衝溶液又は該pH緩衝溶液の希釈溶液等)を、色見本用標準液として用意する。
(ii) 用意したそれぞれ色見本用標準液に、上記pH指示薬を適量滴下して呈色させることにより、各pH毎の色見本を作製する。
【0051】
また、本発明において、弱酸性化剤を表面シート(不織布)に付着させる位置は、少なくとも凸部の頂部及び側壁部に弱酸性化剤が付着していれば特に制限されず、上述の頂部及び側壁部のみに付着させても、凸部及び基部の両方を含む不織布全体に付着させてもよい。上述の凸部(特に、頂部)は、基部と比べて尿などの排泄液との接触機会が少なく、接触時間も短いため、このような凸部に弱酸性化剤が付着していると、少なくとも凸部においては、弱酸性化剤が排泄液とともに流れて表面シートから流出してしまうようなことが起こり難く、仮に、弱酸性化剤が排泄液とともに流れたとしても、本発明においては、凸部の側壁部における繊維密度が相対的に小さく構成されているため、一定の弱酸性化剤を含む排泄液が残留液として側壁部に残留し易く(図7(b)及び図7(c)を参照)、上記凸部のpHを弱酸性に維持することができる。その結果、本発明の吸収性物品は、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より良好に且つより確実に発揮することができる。
【0052】
なお、本発明の吸収性物品においては、表面シートの基部にも、上述の弱酸性化剤が含まれていることが好ましい。表面シートの基部は、着用者から供給される排泄液が一時的に溜まり易い部分であるため、このような基部にも上述の弱酸性化剤が含まれていると、かかる基部に含まれる弱酸性化剤が、表面シートの基部上に一時的に溜まる排泄液中に溶出し、当該排泄液が表面シートの肌対向面側から非肌対向面側へ透過するときに上述の側壁部に残留する排泄液に含まれる弱酸性化剤の量(すなわち、濃度)を相対的に増大させることができる。その結果、本発明の吸収性物品は、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より良好に且つより確実に発揮することができる。
【0053】
表面シート(不織布)の表面に弱酸性化剤を塗工する場合、その塗工方法は、特に制限されず、例えば、吐出ノズルを備えた押出装置;スパイラルコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ディップコーター等の非接触式のコーター;接触式のコーターなどの任意の塗工装置を用いることができる。また、表面シートの全体に弱酸性化剤を付着させる場合は、表面シートを構成する不織布を、弱酸性化剤を含む溶液に含浸させる含浸法や不織布の構成繊維を予め弱酸性化剤で被覆する方法などを採用することもできる。なお、表面シート(不織布)に弱酸性化剤を付着させる量は、本発明の効果を奏し得る限り特に制限されず、例えば、0.01〜30g/mの範囲内の任意の量を採用することができる。
【0054】
次に、本発明の第一実施形態に係る使い捨ておむつ1の表面シート2の構造(すなわち、第1方向畝部11及び基部12を有する構造)について、更に詳細に説明する。
【0055】
本実施形態において表面シート2は、図5図6及び図8に示すように、第1方向畝部11における第2面2bが吸収体4に接合されておらず、基部12における第1基部21の第1底部22の第2面2bの一部と、凹部26(第2基部)の第2底部28の第2面2bとが、吸収体4の表面シート2側(すなわち、肌対向面側)の表面に接着剤層8により接合されている。なお、本実施形態においては、第1方向畝部11が、前記長手方向L(第1方向)において、吸収体4の両方の端縁を超えて延設されているが、本発明においては、このような態様に限定されず、第1方向畝部は、吸収性物品の長手方向において、吸収体の少なくとも一方の端縁まで又は一方の端縁を超えて延設されていてもよい。第1方向畝部がこのように延設されていると、吸収体に保持された排泄液が吸収体から液戻りしたとしても、排泄液が着用者の肌に接触し難く、着用者の肌が濡れた状態になるようなことが起こり難くなるため、着用者の皮膚がふやけ難く(すなわち、着用者の皮膚の各種刺激に対する防御機能が低下し難く)、結果的に、皮膚のかぶれなどをより引き起こし難くすることができる。
なお、第1方向畝部が延びる方向も上述の吸収性物品の長手方向に限定されず、第1方向畝部は、吸収性物品の幅方向等の任意の方向に延びていてもよい。
【0056】
また、本実施形態において、隣り合う第1方向畝部11の間の間隔は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、0.25〜5.0mmの範囲内であり、好ましくは0.5〜3.0mmの範囲内である。ここで、「隣り合う第1方向畝部の間の間隔」とは、各第1方向畝部における幅方向の略中央位置(実質的に第1方向畝部における頂部の頂点)の間の距離を指す。隣り合う第1方向畝部の間の間隔が上記の範囲内にあると、表面シート(不織布)の表面の肌触りが良好になり、着用者の皮膚に物理的刺激を与え難くなるため、結果的に、皮膚のかぶれなどをより引き起こし難くすることができる。
【0057】
第1方向畝部の高さは、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、0.25〜5.0mmの範囲内であり、好ましくは0.5〜3.0mmの範囲内である。この第1方向畝部の高さが0.25mm以上であると、側壁部の面積を一定以上確保することができるため、上述の弱酸性化剤を含む排泄液をより確実に側壁部に残留させることができる。一方、第1方向畝部の高さが5.0mm以下であると、第1方向畝部の突出が大きくなり過ぎず、鋭利な構造にならないため、着用者の皮膚に物理的刺激を与え難く、結果的に、皮膚のかぶれなどをより引き起こし難くすることができる。
【0058】
本実施形態において、第1方向畝部11は、表面シート2の第2面2bが面する空隙部14を備えた、中空の内部構造を有している。表面シートの凸部(第1方向畝部)がこのような中空の内部構造を有することは、本発明の吸収性物品においては必須の構成要件ではないものの(すなわち、表面シートの凸部は、中実の内部構造を有していてもよいものの)、表面シートの凸部は、本実施形態の第1方向畝部11のように中空の内部構造を有していることが好ましい。表面シートの凸部がこのような中空の内部構造を有していると、上述の溶出した弱酸性化剤を含む排泄液が、上記凸部において着用者の肌に近い肌対向面側の表層部分(より具体的には、凸部の側壁部における表層部分)に残留し易く、弱酸性化剤を着用者の肌により接触させ易くすることができるため、かかる弱酸性化剤をより確実に着用者の肌に移行させることができる。
【0059】
また、本実施形態において、第1方向畝部11は、図3図6に示すように、使い捨ておむつ1の幅方向Wにおいて基部12における第1基部21と一体に形成されている。なお、この第1基部21は、図3図6に示すように、前記幅方向Wにおいて、各第1方向畝部11を間に挟む形で複数列形成されており、いずれの第1方向畝部も、相互に平行且つ同幅に形成されている。
【0060】
さらに、この第1基部21は、第1底部22の繊維密度が第1方向畝部11(すなわち、頂部13及び側壁部15)の繊維密度よりも大きくなるように構成されている。なお、この第1底部22は、本発明における「側壁部よりも繊維密度が高い高密度部」の一例である。表面シートの基部が、このような凸部(第1方向畝部)の側壁部よりも繊維密度の高い高密度部を含んでいると、上述の弱酸性化剤を含む排泄液が、上記基部よりも繊維密度の低い凸部の側壁部に、より一層残留し易くなるため、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より確実に且つより効率的に発揮することができる。
【0061】
また、この第1基部21の第1底部22には、図3及び図4に示すように、平面視にて略矩形状の開口を有し且つ全体として表面シート2の非肌対向面側に向かって突出した略直方体状の内部空間を備えた、複数の凹部26(第2基部)が形成されている。この複数の凹部26は、図4に示すように、前記幅方向Wに並ぶ複数の第1底部22の各々において、一定の間隔で前記長手方向Lに沿って間欠的に形成されており、平面視にて千鳥状の配置形態で配置されている。
【0062】
この凹部26は、図3図5及び図8に示すように、上述の第1底部22から非肌対向面側に向かって延びる周壁部27と、該周壁部27の非肌対向面側の端部において該端部を塞ぐように形成された第2底部28と、を備えており、さらに、上記周壁部27は、表面シート2の前記長手方向Lに沿うように形成された、対向する一対の第1周壁部29、29と、表面シート2の前記幅方向Wに沿うように形成された、対向する一対の第2周壁部30、30と、を備えている。また、第2底部28は、表面シート2を構成する不織布が第1面2aから第2面2bの方向に向かって圧縮されることにより形成されたものであるため、表面シート2を構成する不織布の中で最も高い繊維密度を有している。なお、この第2底部28も、本発明における「側壁部よりも繊維密度が高い高密度部」の一例である。
【0063】
表面シートの基部がこのような凹部を備えることは、本発明の吸収性物品においては必須の構成要件ではないものの、表面シートの基部がこのような凹部を有していると、かかる凹部によって、表面シートの凸部における側壁部と表面シートの非肌対向面側に配置される吸収体とをより確実に離間させることができるため、表面シートの凸部が着用者の体圧等によって潰れてしまうような場合でも、上述の側壁部に残留する排泄液(残留液)を非肌対向面側に引き込まれ難くすることができる。これにより、上述の弱酸性化剤を含む排泄液が凸部の側壁部に更に残留し易くなるため、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より確実に発揮することができる。さらに、表面シートの基部がこのような凹部を備えていると、表面シートの肌対向面側から着用者の体圧等の圧力が掛かったときに、上述の第1基部が凹部を支点として非肌対向面側に撓むことによって、上述の圧力を緩衝することができるため、着用者の皮膚に物理的刺激を与え難く、結果的に、皮膚のかぶれなどをより引き起こし難くすることができる。
【0064】
また、凹部の深さ(すなわち、第1基部の第1底部における第1面から凹部の第2底部における第1面までの距離)は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、0.05〜2.0mmの範囲内であり、好ましくは0.075〜1.5mmの範囲内である。凹部の深さがこのような範囲内にあると、上述の凹部によって奏される作用効果をより良好に発揮することができる。
さらに、凹部の第1方向(長手方向)の長さは、特に制限されず、例えば、0.25〜5.0mmの範囲内であり、好ましくは0.5〜3.0mmの範囲内である。同様に、凹部の第2方向(幅方向)の長さも、特に制限されず、例えば、0.25〜5.0mmの範囲内であり、好ましくは0.5〜3.0mmの範囲内である。凹部の第1方向及び第2方向の各長さが、それぞれ上記範囲内にあると、上述の凹部によって奏される作用効果をより良好に発揮することができる。
【0065】
また、本実施形態において、凹部26を構成する周壁部27の、上記一対の第1周壁部29、29の各々には、図3及び図8に示すように、凹部26の内部空間から表面シート2の第2面2bに通じる孔部31が形成されている。かかる孔部31は、一対の第1周壁部29、29の各々に1つずつ設けられており、それらの孔部31は、第1周壁部29において、厚さ方向Tの第2底部28寄りの位置に形成されている。一方、一対の第2周壁部30、30には、孔部31に相当するものは存在せず、各第2周壁部30は、非肌対向面側に位置する端部の全部が第2底部28と連結している。凹部にこのような孔部が形成されていると、孔部が設けられている基部と隣り合う凸部(第1方向畝部)の繊維の引張力を解放して、凸部全体或いは凸部を形成する繊維が移動する自由度を向上させることができるため、凸部における表面シートの厚さ方向及び面方向の柔軟性が向上し、滑らかな感触の肌触りを得ることができる。したがって、このような孔部が形成された凹部を含む表面シートは、着用者の肌と擦れた際の摩擦等による物理的刺激を低減することができるため、かかる物理的刺激に起因する肌のかぶれも引き起こし難くすることができる。
【0066】
なお、本実施形態において、孔部31は、表面シート2(不織布)の構成繊維を溶融することなく、その構成繊維を破断することにより形成されており、かかる孔部31の周縁には、図8に示すように、その構成繊維の破断端部が含まれている。この破断端部は、繊維を溶融して破断した端部のように、繊維の端部が溶けて丸くなって繊維径が大きくなっているようなものではなく、繊維が千切れることによって先細りになった構造或いは繊維径の変化が殆ど生じていない構造を有している。これにより、着用者の肌が孔部31の周縁に触れたとしても、溶融により硬化した熱可塑性樹脂繊維が存在しないため、着用者の皮膚に物理的刺激を与え難く、結果的に、皮膚のかぶれなどをより引き起こし難くすることができる。
【0067】
また、図7に示すように、孔部31の内部空間には、表面シート2(不織布)の一部の構成繊維が架け渡されている一方、一部の構成繊維の破断端部が孔部31の内部空間に延出しており、孔部31の内部空間は、完全に開放された空間とはなっていない。これにより、着用者の肌が孔部31に触れたとしても、上述の内部空間内の構成繊維によって、孔部31と、凹部26の第1周壁部29や第2底部28との間の段差が低減されるため、着用者の皮膚に物理的刺激を与え難く、結果的に、皮膚のかぶれなどを更に引き起こし難くすることができる。
【0068】
なお、表面シートの凹部にこのような孔部が形成されていることは、本発明の吸収性物品においては必須の構成要件ではないため、表面シートの凹部にはこのような孔部が形成されていなくてもよい。
【0069】
本実施形態における表面シート2の上記構造、すなわち、第1方向畝部11及び基部12を有する構造は、任意の凹凸賦形加工方法(例えば、特許第5829349号公報や特許第5829326号公報等に開示されているような、平坦な不織布をピンや凸条を備えた一対の賦形ロールで挟み込む凹凸賦形方法)などを用いて形成することができる。なお、表面シート(不織布)の繊維密度の関係(頂部と側壁部の繊維密度の関係等)などは、賦形ロールのピンや凸条の配置、高さ等を適宜調節することで得ることができる。
【0070】
本発明において、表面シートを構成する不織布は、吸収性物品の表面シートとして用い得る諸特性(例えば、液透過性や柔軟性、肌触り等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、コットン等のセルロース系繊維や親水化処理を施した熱可塑性樹脂繊維等の任意の親水性繊維を用いて形成された、スパンレース不織布やエアスルー不織布等の任意の不織布を用いることができる。
そのような中でも、表面シートを構成する不織布は、コットン繊維を35質量%以下の含有量で含むものを用いることが好ましい。このような不織布は、コットン繊維の親水性によって、上述の弱酸性化剤が溶出した排泄液を更に保持し易く(特に、側壁部において保持し易く)、さらに、当該コットン繊維を35質量%以下の含有量(なお、含有量の下限は、特に制限されず、例えば、0.1質量%である。)で含むことによって、かかる不織布が、比較的剛性が高く、熱可塑性樹脂繊維等と溶融結合し難いコットン繊維を含むものであっても、当該不織布における上述の凸部及び基部を有する構造や繊維密度の関係を十分に維持することができる。したがって、このような不織布を表面シートとして備えた吸収性物品は、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、更に確実に且つ良好に発揮することができる。
なお、本明細書において、コットン繊維の含有量は、弱酸性化剤を除いた不織布全体の質量(すなわち、不織布における構成繊維の総質量)に対するコットン繊維の質量の割合(質量%)を指す。
【0071】
また、表面シートを構成する不織布は、単層の繊維層により構成されていても、2層以上の繊維層からなる繊維積層体により構成されていてもよい。例えば、表面シートの第2面(非肌対向面側の表面)が、尿などの排泄液を吸収して保持することの可能なコットンからなる繊維層(第1繊維層)により形成され、且つ表面シートの第1面(肌対向面側の表面)が、コットンや親水性繊維等を含まない繊維層(第2繊維層)により形成されていると、吸収体から排泄液の液戻りが生じたときに、かかる液戻りした排泄液を第1繊維層により吸収・保持することができる上、第2繊維層が介在することによって、排泄液が着用者の肌に接触し難くなるため、着用者の肌(皮膚)が濡れた状態となってふやけるようなことが生じ難く(すなわち、着用者の皮膚の各種刺激に対する防御機能が低下し難く)、結果的に、皮膚のかぶれなどをより引き起こし難くすることができる。
【0072】
また、表面シートを構成する不織布の坪量は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されないが、不織布の強度や柔軟性、吸収性などの点から、好ましくは10〜100g/m2の範囲内であり、更に好ましくは15〜75g/m2の範囲内である。さらに、不織布の厚みも、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されないが、不織布の強度や柔軟性、吸収性などの点から、好ましくは0.1〜5.0mmの範囲内であり、更に好ましくは0.5〜3.0mmの範囲内である。
【0073】
なお、本発明において、表面シートの凸部及び基部を含む構造は、本発明の効果を奏し得るものであれば上述の第一実施形態の構造に限定されず、凸部及び基部を含む任意の構造を採用することができる。
【0074】
以下、上述の第一実施形態とは表面シートの凸部及び基部を含む構造のみが異なる、本発明の別の実施形態(第二実施形態〜第五実施形態)について、図面を参照しながら説明する。なお、第一実施形態と異なる構成以外の構成(名称のみが異なる構成も含む。)は、基本的に上述の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0075】
<第二実施形態>
図9図12は、本発明の第二実施形態に係る使い捨ておむつ(吸収性物品)の表面シート200を構成する不織布を、模式的に示す図である。
本第二実施形態において、表面シート200は、上述の第一実施形態と同様に、使い捨ておむつの長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tとそれぞれ平行の関係にある第1方向、第2方向及び第3方向を有するとともに、使い捨ておむつの肌対向面側の表面を形成する第1面200aと、非肌対向面側の表面を形成する第2面200bと、を有する不織布からなる。かかる不織布は、図9図12に示すように、表面シート200の第3方向(厚さ方向T)における基準位置に位置する基部212と、前記第1方向(長手方向L)に延び且つ前記第2方向(幅方向W)に所定間隔で並ぶように形成された、前記基部212から使い捨ておむつの肌対向面側に向かって突出する複数の第1方向畝部211と、前記幅方向Wに隣り合う2つの第1方向畝部211の間において前記幅方向Wに延び且つ前記長手方向Lに所定間隔で並ぶように形成された、前記基部212から使い捨ておむつの肌対向面側に向かって突出する複数の第2方向畝部216と、を有している。なお、これらの第1方向畝部211及び第2方向畝部216は、本発明における「凸部」の一例である。
【0076】
本第二実施形態において、基部212は、図9図12に示すように、表面シート200における第3方向(厚さ方向T)の基準面となる第1底部222を備えた第1基部221と、前記第2方向(幅方向W)に隣り合う2つの第1方向畝部211及び前記第1方向(長手方向L)に隣り合う2つの第2方向畝部216によって囲まれた前記第1基部221内の領域において、前記長手方向L及び前記幅方向Wに間欠的に形成され、前記第1底部222の第1面200aに開口する窪み状の構造を有する6個の凹部226(第2基部)と、を備えている。さらに、この凹部226は、図9に示すように、上記第1底部222から非肌対向面側に向かって延びる周壁部227と、該周壁部227の非肌対向面側の端部において該端部を塞ぐように形成された第2底部228と、を備えている。なお、本第二実施形態において、第2底部228は、図9図12に示すように、平面視にて第2底部228の略中央部分に、表面シート200の第1面200aから第2面200bに貫通する孔部231を備えている。
【0077】
本第二実施形態において、第1方向畝部211は、図9及び図11に示すように、表面シート200において最も肌対向面側に位置する頂部213と、該頂部213と上記第1底部222との間において前記長手方向Lに延在する側壁部215と、を備えており、さらに、前記第1方向畝部211は、表面シート200の非肌対向面側に、表面シート200(不織布)の第2面200bが面する空隙部214を備えている。この空隙部214を備えていることによって、表面シート200の第1方向畝部211は、中空の内部構造を有している。なお、上述のとおり、表面シートの第1方向畝部(凸部)が中空の内部構造を有することは、本発明の吸収性物品においては必須の構成要件ではないため、かかる第1方向畝部は、中実の内部構造を有していてもよい。
【0078】
本第二実施形態において、第2方向畝部216は、図9及び図12に示すように、表面シート200において上述の第1方向畝部211の頂部213の次に肌対向面側に位置する頂部217と、該頂部217と上記第1底部222との間において前記幅方向Wに延在する側壁部219と、を備えており、さらに、第2方向畝部216は、表面シート200の非肌対向面側に、表面シート200(不織布)の第2面200bが面する空隙部218を備えている。この空隙部218を備えていることによって、表面シート200の第2方向畝部216も、中空の内部構造を有している。なお、上述のとおり、この第2方向畝部(凸部)が中空の内部構造を有することも、本発明の吸収性物品においては必須の構成要件ではないため、かかる第2方向畝部は、中実の内部構造を有していてもよい。
【0079】
そして、本第二実施形態において、表面シート200の第1方向畝部211と第2方向畝部216は、上述の第一実施形態と同様に、第1方向畝部211の頂部213及び側壁部215と、第2方向畝部216の頂部217及び側壁部219とがそれぞれ弱酸性化剤を含んでおり、さらに、第1方向畝部211の側壁部215における繊維密度が頂部213の繊維密度よりも小さく、第2方向畝部216の側壁部219における繊維密度が頂部217よりも小さくなるように、それぞれ構成されている。
したがって、本第二実施形態に係る使い捨ておむつ(吸収性物品)も、上述の第一実施形態と同様の作用効果が得られることに加え、さらに、本第二実施形態に係る使い捨ておむつにおいては、表面シート200の凸部が、所定の第1方向(長手方向L)に連続的に延び且つ前記第1方向と交差する第2方向(幅方向W)に並ぶ複数の第1方向畝部211と、前記第2方向に隣り合う2つの前記第1方向畝部211の間において前記第2方向に連続的に延び且つ前記第1方向に並ぶ複数の第2方向畝部216と、によって構成されているため、表面シート200の表面に供給された排泄液を、上述の各方向に隣り合う各凸部の間(すなわち、前記第2方向に隣り合う第1方向畝部211と、当該隣り合う第1方向畝部211の間において前記第1方向に隣り合う第2方向畝部216との間)に、より溜め易くすることができる上、一定数以上の側壁部を確保することができる。
その結果、本第二実施形態に係る使い捨ておむつは、上述の溶出した弱酸性化剤を含む排泄液が側壁部(具体的には、第1方向畝部211の側壁部215及び第2方向畝部216の側壁部219の各々)に更に接触し易く、当該弱酸性化剤を含む排泄液をより確実に凸部の側壁部に残留させることができるとともに、当該弱酸性化剤を含む排泄液を第1方向畝部211の側壁部215及び第2方向畝部216の側壁部219の各々に残留させることができる(すなわち、上述の弱酸性化剤を含む排泄液が凸部の側壁部に残留する量を、一定以上確保することができる)ため、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より確実に且つより顕著に発揮することができる。
【0080】
以下、本第二実施形態における表面シート200の構造(すなわち、第1方向畝部211、第2方向畝部216及び基部212を有する構造)について、更に詳細に説明する。
【0081】
本第二実施形態において、第1方向畝部211の高さは、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、0.25〜5.0mmの範囲内であり、好ましくは0.5〜3.0mmの範囲内である。また、第1方向畝部211の幅(幅方向Wの長さ)も、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、0.3〜2.5mmの範囲内であり、好ましくは0.5〜1.5mmの範囲内である。第1方向畝部の高さ及び幅が、これらの各範囲内にあると、側壁部の面積を一定以上確保することができ、上述の弱酸性化剤を含む排泄液をより確実に側壁部に残留させることができる上、第1方向畝部の突出が大きくなり過ぎず、着用者の皮膚に物理的刺激を与え難くすることができ、結果的に、皮膚のかぶれなどをより一層引き起こし難くすることができる。さらに、第1方向畝部の高さ及び幅が、これらの各範囲内にあると、第1方向畝部が潰れ難くなるため、かかる第1方向畝部を備えることによって奏される上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より確実に発揮することができる。
【0082】
また、第2方向(幅方向W)に隣り合う第1方向畝部の間の間隔も、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、1.0〜5.0mmの範囲内であり、好ましくは2.0〜4.0mmの範囲内である。第2方向に隣り合う第1方向畝部の間の間隔がこのような範囲内にあると、側壁部の数(面積)を一定以上確保することができ、上述の弱酸性化剤を含む排泄液をより確実に側壁部に残留させることができる上、後述する尿などの排泄液を一時的に溜める貯留空間を確保し易く、かかる貯留空間に溜まっている排泄液を着用者の肌に接触し難くすることができ、結果的に、皮膚のかぶれなどをより一層引き起こし難くすることができる。
【0083】
本第二実施形態において、第2方向畝部216の高さは、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、0.3〜3.0mmの範囲内であり、好ましくは0.5〜2.5mmの範囲内である。また、第2方向畝部216の幅(長手方向Lの長さ)も、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、0.6〜5.0mmの範囲内であり、好ましくは1.0〜4.0mmの範囲内である。第2方向畝部の高さ及び幅が、これらの各範囲内にあると、側壁部の面積を一定以上確保することができ、上述の弱酸性化剤を含む排泄液をより確実に側壁部に残留させることができる上、第2方向畝部の突出が大きくなり過ぎず、着用者の皮膚に物理的刺激を与え難くすることができ、結果的に、皮膚のかぶれなどをより一層引き起こし難くすることができる。さらに、第2方向畝部の高さ及び幅が、これらの各範囲内にあると、第2方向畝部だけでなく第1方向畝部も潰れ難くなるため、かかる第1方向畝部及び第2方向畝部を備えることによって奏される上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、更に確実に発揮することができる。
【0084】
また、第1方向(長手方向L)に隣り合う第2方向畝部の間の間隔も、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、1.0〜10.0mmの範囲内であり、好ましくは2.0〜6.0mmの範囲内である。第1方向に隣り合う第2方向畝部の間の間隔がこのような範囲内にあると、側壁部の数(面積)を一定以上確保することができ、上述の弱酸性化剤を含む排泄液をより確実に側壁部に残留させることができる上、第2方向畝部だけでなく第1方向畝部も潰れ難くすることができるため、かかる第1方向畝部及び第2方向畝部を備えることによって奏される上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、更に確実に発揮することができる。
【0085】
さらに、本第二実施形態において、第2方向畝部216は、その高さが第1方向畝部211よりも低く形成されている。このような構成は、本発明の吸収性物品においては必須の構成要件ではないものの、第2方向畝部の高さが第1方向畝部の高さよりも低くなるように構成されていると、高さの低い第2方向畝部は、着用者の体圧等の影響を受け難く、潰れ難いため、かかる第2方向畝部が第2方向側(幅方向W側)から支持する第1方向畝部をより潰れ難くすることができる。これにより、このような構成を備えた表面シートは、第1方向畝部及び第2方向畝部を備えることによって奏される上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より確実に発揮することができる。
また、このような構成を備えた表面シートは、上述の第1底部と、第2方向(幅方向W)に隣り合う2つの第1方向畝部と、第1方向(長手方向L)に隣り合う2つの第2方向畝部と、によって囲まれた後述の貯留空間に溜まる排泄液を、第1方向に隣接する別の貯留空間に受け渡すことができるため、表面シートの表面に供給された排泄液を、各凸部の間(すなわち、第2方向に隣り合う2つの第1方向畝部と、第1方向に隣り合う2つの第2方向畝部との間)に一時的に溜め易くしつつも、上述の第1方向に拡散させることができる。その結果、このような構成を備えた表面シートを有する吸収性物品は、上述の溶出した弱酸性化剤を含む排泄液がより広範囲の側壁部(より具体的には、第1方向畝部及び第2方向畝部の各々の側壁部)に接触し易く、当該排泄液をより広範囲の側壁部に残留させることができるため、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より確実に且つより顕著に発揮することができる。
【0086】
本第二実施形態において、複数の第2方向畝部216の各々は、図9及び10に示すように、第2方向(幅方向W)に隣り合う2つの第1方向畝部211の間において前記幅方向Wに延び且つ第1方向(長手方向L)に所定間隔で並ぶように形成されており、さらに、前記複数の第2方向畝部216の各々は、前記幅方向Wにおける両方の端部が前記幅方向Wに隣り合う2つの第1方向畝部211と連結するように形成されている。これにより、本第二実施形態における表面シート200は、図10に示すように、前記幅方向Wに隣り合う2つの第1方向畝部211と、前記長手方向Lに隣り合う2つの第2方向畝部216とによって囲まれた格子ユニットAを最小構成単位として、該格子ユニットAが前記長手方向L及び前記幅方向Wにそれぞれ複数個ずつ並んだ格子状の凸部構造を有している。
【0087】
本第二実施形態において、格子ユニットAは、図10に示すように、第1底部222を中心として、当該第1底部222と前記幅方向Wに隣接する2つの第1方向畝部211における頂部213の頂点を通り且つ厚さ方向Tに延びる2つの仮想面(不図示)と、前記第1底部222と前記長手方向Lに隣接する2つの第2方向畝部216における頂部217の頂点を通り且つ厚さ方向Tに延びる2つの仮想面(不図示)と、によって区画され、第1底部222と、前記幅方向Wに隣り合う2つの第1方向畝部211と、前記長手方向Lに隣り合う2つの第2方向畝部216と、によって囲まれた、尿などの排泄液を一時的に溜める貯留空間が形成されている。
【0088】
なお、本第二実施形態において、第2方向畝部216は、前記幅方向Wにおける両方の端部が前記幅方向Wに隣り合う2つの第1方向畝部211と連結するように形成されているが、本発明においては、このような態様に限定されず、第2方向畝部は、第2方向(幅方向W)の一方の端部のみが第1方向畝部と連結する一方、第2方向の他方の端部が第1方向畝部と連結しないように形成されていてもよい。第2方向畝部をこのように形成することで、上述の貯留空間に一時的に溜まる排泄液を、第1方向に隣接する別の貯留空間に受け渡し易くなるため、表面シートの表面に供給された排泄液を、各畝部の間(すなわち、貯留空間)に一時的に溜めつつも、上述の第1方向に素早く拡散させることができる。これにより、排泄液をより広範囲の側壁部に残留させることができるようになるため、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、良好に発揮することができる。このような効果は、第2方向畝部が、第2方向に間欠的に延びている態様(例えば、第2方向畝部の高さが部分的に低くなっている態様等)でも、同様に奏することができる。
なお、本第二実施形態のように、第2方向畝部の第2方向における両方の端部が、第2方向に隣り合う2つの第1方向畝部と連結するように形成されている態様では、表面シートの表面に供給された排泄液を、各畝部の間(すなわち、貯留空間)に、より確実に溜めることができるため、かかる排泄液を各畝部(凸部)の側壁部に、更に確実に残留させることができ、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より確実に発揮することができる。
【0089】
本第二実施形態において、格子ユニットAの貯留空間の底部を形成する第1底部222は、その繊維密度が第1方向畝部211(すなわち、頂部213及び側壁部215)及び第2方向畝部216(すなわち、頂部217及び側壁部219)のいずれの繊維密度よりも大きくなるように構成されている。なお、この第1底部222は、本発明における「側壁部よりも繊維密度が高い高密度部」の一例である。表面シートの基部が、このような凸部(第1方向畝部及び第2方向畝部)の側壁部よりも繊維密度の高い高密度部を含んでいると、上述の弱酸性化剤を含む排泄液が、上記基部よりも相対的に繊維密度の低い凸部の側壁部により一層残留し易くなるため、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より確実に且つより効率的に発揮することができる。
【0090】
また、本第二実施形態において、格子ユニットAは、図9図12に示すように、平面視にて略円形状の開口を有し且つ全体として表面シート200の非肌対向面側に向かって突出した略円柱状の内部空間を備えた、6個の凹部226(第2基部)が第1底部222に形成されている。この6個の凹部226は、図9及び図10に示すように、平面視にて格子ユニットの周縁部に沿うようにして(すなわち、第1方向畝部及び第2方向畝部に沿うようにして)、前記長手方向L及び前記幅方向にそれぞれ所定の間隔を空けて配置されている。
【0091】
この凹部226は、図9図11及び図12に示すように、上述の第1底部222から非肌対向面側に向かって延びる略筒状の周壁部227と、該周壁部227の非肌対向面側の端部において該端部を塞ぐように形成された略円形状の第2底部228と、を備えており、さらに、上記第2底部228は、表面シート200の第1面200aから第2面200bに貫通する孔部231を備えている。また、第2底部228は、表面シート200を構成する不織布が第1面200aから第2面200bの方向に向かって圧縮されることにより形成されたものであるため、表面シート200を構成する不織布の中で最も高い繊維密度を有している。なお、この第2底部228も、本発明における「側壁部よりも繊維密度が高い高密度部」の一例である。
【0092】
なお、本第二実施形態においては、凹部226が、第2底部228において表面シート200の第1面200aから第2面200bに貫通する孔部231を備えているため、表面シート200の表面に供給された排泄液を各畝部の間(すなわち、貯留空間)に一時的に溜めつつも、一定量の排泄液を、上述の孔部231によって表面シート200の非肌対向面側に移行させることができる。これにより、本第二実施態様における表面シート200は、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を良好に発揮しつつも、一定の液透過性を確保することができる。
【0093】
なお、格子ユニットA内における凹部の個数や平面視形状、サイズ等は、本第二実施形態の態様に限定されず、排泄液の貯留性や液透過性等を考慮して、それぞれ任意に設定することができる。また、凹部が上述の孔部を有することも、本発明の吸収性物品においては、必須の構成要件ではないため、凹部は、上述のような孔部を有していなくてもよい。
【0094】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、上述の各実施形態と異なる構成以外の構成(名称のみが異なる構成も含む。)は、基本的に上述の各実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0095】
図13及び図14は、本発明の第三実施形態に係る使い捨ておむつ(吸収性物品)の表面シート200を構成する不織布を、模式的に示す図である。
本第三実施形態における表面シート200は、図13及び図14に示すように、後述する第1方向小畝部232を備えていること以外は、上述の第二実施形態と同様の構造を有している。
【0096】
本第三実施形態における表面シート200は、図13及び図14に示すように、上述の格子ユニット(不図示)の各々において、第1方向(長手方向L)に延び且つ第1底部222から肌対向面側に向かって突出する第1方向小畝部232を備えている。なお、本第三実施形態における第1方向畝部211、第2方向畝部216及び第1方向小畝部232は、本発明における「凸部」の一例である。
【0097】
本第三実施形態において、第1方向小畝部232は、図13及び図14に示すように、表面シート200において上述の第2方向畝部216の頂部217の次に肌対向面側に位置する頂部233と、該頂部233と上記第1底部222との間において第1方向(長手方向L)に延在する側壁部235と、を備えており、さらに、第1方向小畝部232は、表面シート200の非肌対向面側に、表面シート200(不織布)の第2面200bが面する空隙部234を備えている。この空隙部234を備えていることによって、第1方向小畝部232も、中空の内部構造を有している。なお、上述のとおり、この第1方向小畝部232が中空の内部構造を有することも、本発明の吸収性物品においては必須の構成要件ではないため、かかる第1方向小畝部は、中実の内部構造を有していてもよい。
【0098】
そして、この第1方向小畝部232も、第1方向畝部211及び第2方向畝部216と同様に、頂部233及び側壁部235が弱酸性化剤を含んでおり、さらに、側壁部235における繊維密度が頂部233の繊維密度よりも小さくなるように構成されている。
したがって、本第三実施形態に係る使い捨ておむつ(吸収性物品)は、上述の第二実施形態よりも畝部(凸部)の数をより多く確保することができるため、上述の第二実施形態の作用効果を、より有利に得ることができる。
【0099】
また、本第三実施形態において、第1方向小畝部232は、第1方向(長手方向L)の両方の端部がそれぞれ第1方向に隣り合う2つの第2方向畝部216と連結するように形成されているとともに、第1方向小畝部232の高さH3が、第1方向畝部211の高さH1及び第2方向畝部216の高さ(不図示)よりも低くなるように形成されている。さらに、本第三実施形態においては、第1方向畝部211の高さH1が、第2方向(幅方向W)に隣り合う第1方向畝部211及び第1方向小畝部232の間の間隔PI1よりも大きくなるように、表面シート200が構成されている。これより、第1方向畝部211が、着用者の体圧等によって第2方向に倒れたとしても、第1方向畝部211が第1方向小畝部232に寄り掛かる状態となって、当該第1方向畝部211を第1方向小畝部232によって支えることができるため、当該第1方向畝部211が元の位置に戻り易く、かかる第1方向畝部211を備えることによって奏される上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より有利に且つ確実に発揮することができる。
【0100】
なお、本発明において、第1方向小畝部の延びる方向は、特に制限はない(すなわち、第2方向小畝部であってもよい)が、第1方向小畝部は、上述の第三実施形態のように、第1方向に沿って延びていることが好ましい。第1方向小畝部が第1方向に沿って延びていると、表面シートにおいて高さの最も高い第1方向畝部が第2方向に倒れたとしても、上述のように当該第1方向畝部を元の位置に戻り易くすることができるため、かかる第1方向畝部を備えることによって奏される上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より有利に且つ確実に発揮することができる。
【0101】
本第三実施形態において、第1方向小畝部232の高さは、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、0.1〜2.5mmの範囲内であり、好ましくは0.25〜2.0mmの範囲内である。第1方向小畝部の高さがこのような範囲内にあると、側壁部の面積を一定以上確保することができ、上述の弱酸性化剤を含む排泄液を、より確実に側壁部に残留させることができる上、第1方向畝部もより倒れ難くなるため、かかる第1方向畝部を備えることによって奏される上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を、より一層有利に且つ確実に発揮することができる。
なお、第1方向小畝部は、その高さが部分的に低い部分を有していてもよい。
【0102】
また、第2方向(幅方向W)に隣り合う第1方向畝部211及び第1方向小畝部232の間の間隔は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、0.5〜2.5mmの範囲内であり、好ましくは1.0〜2.0mmの範囲内である。なお、この間隔は、上述のとおり、第1方向畝部211の高さよりも小さいことが好ましい。
【0103】
<第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、上述の各実施形態と異なる構成以外の構成(名称のみが異なる構成も含む。)は、基本的に上述の各実施形態と同様であるため、説明を省略する。
図15は、本発明の第四実施形態に係る使い捨ておむつの表面シート200を構成する不織布の斜視図である。
【0104】
この第四実施形態に係る表面シート200は、図15に示すように、上述の格子ユニット(不図示)の各々において、平面視にて略円形状の開口を有し且つ全体として表面シート200の非肌対向面側に向かって突出した略円柱状の内部空間を備えた、4個の凹部226(第2基部)が第1底部222に形成されているとともに、第1方向小畝部232の頂部233の第1方向(長手方向L)における略中央部分に、表面シート200の非肌対向面側に向かって窪む窪み部236が形成されている。
本第四実施形態においては、第1方向小畝部232が、上述の窪み部236を備えていることで、着用者の体圧等によって潰れ難いため、上述の第三実施形態の作用効果を、より有利に且つ確実に発揮することができる。
【0105】
<第五実施形態>
次に、本発明の第五実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、上述の各実施形態と異なる構成以外の構成(名称のみが異なる構成も含む。)は、基本的に上述の各実施形態と同様であるため、説明を省略する。
図16は、本発明の第五実施形態に係る使い捨ておむつの表面シートを構成する不織布の斜視図である。
【0106】
この第五実施形態に係る表面シート200は、図16に示すように、凹部が存在していないこと以外は、上述の第二実施形態と同様の構造を有している。
本第五実施形態においても、上記特定の第1方向畝部211及び第2方向畝部216を備えているため、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を十分に発揮することができる上、凹部が存在しないことで、表面シート200と吸収体との接触面積(具体的には、第1底部222の第2面200bと吸収体の肌対向面側の表面との接触面積)を一定以上確保することができるため、表面シート200の表面に供給された尿などの排泄液を、第1底部222を通じて素早く吸収体に移行させることができ、着用者の肌が濡れた状態になるようなことが、更に起こり難くなっている。
【0107】
なお、上述の第二実施形態から第五実施形態における表面シート200の上記構造、すなわち、少なくとも第1方向畝部211、第2方向畝部216及び基部212を有する構造は、上述の第一実施形態と同様に、任意の凹凸賦形加工方法(例えば、平坦な不織布をピンや凸条を備えた一対の賦形ロールで挟み込む凹凸賦形方法、或いはこのような凹凸賦形方法を段階的に複数回行う賦形方法等)などを用いて形成することができる。なお、表面シート(不織布)の繊維密度の関係(頂部と側壁部の繊維密度の関係等)などは、賦形ロールのピンや凸条の配置、高さ等を適宜調節することで得ることができる。
【0108】
また、本発明の吸収性物品において、表面シートの凸部及び基部を含む構造は、上述の各実施形態のように表面シートの全体に形成されていても、表面シートの一部(例えば、着用者の排泄口に対応する領域や臀部に対応する領域等)のみに形成されていてもよい。
そして、本発明において、表面シートの凸部及び基部を含む構造は、本発明の効果を奏し得るものであれば上述の各実施形態(すなわち、凸部が畝部である形態等)に限定されず、任意の構造を採用することができる。例えば、表面シートの凸部は、基部から肌対向面側に向かってに突出する略筒状の周面部(側壁部)と、該周面部の肌対向面側の端部において該端部を塞ぐように形成され且つ平面形状が略円形である頂面部(頂部)とを備えた、略円柱状の立体形状により構成されていてもよく、楕円柱状や多角柱状等の柱状、円錐台状や角錐台状等の截頭錐状、略半球状などの任意の立体形状により構成されていてもよい。このような構造を有する凸部においても、凸部の頂部及び側壁部が弱酸性化剤を含み、且つ、側壁部の繊維密度が頂部の繊維密度よりも小さくなるように構成されていれば、上述の弱酸性化剤の移行性及び耐久性に係る作用効果を奏することができる。
【0109】
なお、本発明の吸収性物品は、上述の各実施形態に限定されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや代替、変更等が可能である。
また、本発明は、上述の各実施形態のようなテープ型の使い捨ておむつのほかに、例えば、パンツ型の使い捨ておむつや生理用ナプキン、パンティライナー、(軽)失禁パッド等の様々な吸収性物品に適用することができる。
なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数は、当該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。
【符号の説明】
【0110】
1 使い捨ておむつ(吸収性物品)
2、200 表面シート
2a、200a 第1面
2b、200b 第2面
3 裏面シート
4 吸収体
8 接着剤層
11、211 第1方向畝部(凸部)
12、212 基部
13、213 頂部
14、214 空隙部
15、215 側壁部
21、221 第1基部
22、222 第1底部
26、226 凹部(第2基部)
27、227 周壁部
28、228 第2底部
29 第1周壁部
30 第2周壁部
31、231 孔部
216 第2方向畝部(凸部)
217 頂部
218 空隙部
219 側壁部
232 第1方向小畝部
233 頂部
234 空隙部
235 側壁部
236 窪み部
【要約】
【課題】本発明は、弱酸性化剤を着用者の肌に十分に移行させることができ、且つ、尿などの排泄液が繰り返し供給されるような場合でも、肌対向面側の表面におけるpHを弱酸性に維持することのできる表面シートを備えた、吸収性物品を提供するものである。
【解決手段】本発明の吸収性物品は、表面シートを備え、前記表面シートは、基部と、当該基部から前記吸収性物品の肌対向面側に向かって突出する凸部と、を有する不織布からなり、前記凸部は、頂部と、側壁部とを有するとともに、前記頂部及び前記側壁部において弱酸性化剤を含み、前記側壁部の繊維密度が前記頂部の繊維密度よりも小さい、吸収性物品である。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図15
図16