特許第6034233号(P6034233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6034233光半導体装置用リードフレームとその製造方法、および光半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034233
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】光半導体装置用リードフレームとその製造方法、および光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20161121BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   H01L33/62
   H01L23/48 Y
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-80827(P2013-80827)
(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公開番号】特開2014-204046(P2014-204046A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100131288
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 尚祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 良聡
(72)【発明者】
【氏名】中津川 達也
【審査官】 吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−71471(JP,A)
【文献】 特開2012−28757(JP,A)
【文献】 特開2011−176260(JP,A)
【文献】 特開2012−227327(JP,A)
【文献】 特開2011−222680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体上の最表面に銀または銀合金からなる反射層が被覆された光半導体装置用リードフレームであって、
導電性基体と前記反射層との間に1層以上の中間層が形成されており、
かつ前記中間層は、断面観察において平面方向に測定した結晶粒径が0.5μm以上であることを特徴とする、光半導体装置用リードフレーム。
【請求項2】
前記導電性基体は、銅または銅合金、鉄または鉄合金、あるいはアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることを特徴とする、請求項1に記載の光半導体装置用リードフレーム。
【請求項3】
前記中間層は、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金のうちいずれかで形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の光半導体装置用リードフレーム。
【請求項4】
前記中間層の厚さは、0.001〜1μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の光半導体装置用リードフレーム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置用リードフレームを製造する方法であって、
導電性基体上に、少なくとも1層以上の中間層を、電気めっき法で電流密度8A/dm以上で形成し、さらにその表面に銀または銀合金からなる反射層を形成した後、前記中間層および反射層を減面加工することを特徴とする、光半導体装置用リードフレームの製造方法。
【請求項6】
前記請求項5記載の半導体装置用リードフレームを製造する方法であって、さらにその後50〜150℃で、0.08〜3時間焼鈍処理することを特徴とする、光半導体装置用リードフレームの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置用リードフレームを製造する方法であって、
導電性基体上に、少なくとも1層以上の中間層を、電気めっき法で電流密度8A/dm以上で形成した後、前記中間層を減面加工し、さらにその表面に銀または銀合金からなる反射層を形成することを特徴とする、光半導体装置用リードフレームの製造方法。
【請求項8】
前記請求項7記載の半導体装置用リードフレームを製造する方法であって、さらにその後50〜150℃で、0.08〜3時間焼鈍処理し、さらにその表面に銀または銀合金からなる反射層を形成することを特徴とする、光半導体装置用リードフレームの製造方法。
【請求項9】
前記減面加工の加工率は、30〜80%であることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の光半導体装置用リードフレームの製造方法。
【請求項10】
前記減面加工は、圧延加工もしくはプレス加工により形成することを特徴とする、請求項5〜9のいずれかに記載の光半導体装置用リードフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置用リードフレームとその製造方法、および光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体装置用リードフレームは、例えばLED(Light Emitting Diode)素子等の光半導体素子である発光素子を光源に利用した各種表示用・照明用光源の構成部材として広く利用されている。その光半導体装置は、例えば基板にリードフレームを配し、そのリードフレーム上に発光素子を搭載した後、熱、湿気、酸化等の外部要因による発光素子やその周辺部位の劣化を防止するため、発光素子とその周囲を樹脂で封止している。
【0003】
ところで、LED素子を照明用光源として用いる場合、リードフレームの反射材には可視光波長(例えば400〜800nm)の全領域において反射率が高い(例えば硫酸バリウムや酸化アルミニウムなどの基準物質に対する反射率が80%以上)ことが求められる。
【0004】
このような要求に応じて、LED素子が実装されるリードフレーム上には、特に可視光域の光反射率(以下、反射率という)の向上を目的として、銀または銀合金からなる層(皮膜)が形成されているものが多い。銀の皮膜は、可視光域における反射率が高いことが知られており、具体的には、銀めっき層を反射面に形成すること(特許文献1)や、銀または銀合金皮膜形成後に200℃以上で30秒以上の熱処理を施し、当該皮膜の結晶粒径を0.5μm〜30μmとすること(特許文献2)等が知られている。
【0005】
上記公知技術の特許文献1では、銀またはその合金皮膜を単純に形成しただけの場合、波長400nm〜800nmで75%以上、特に450nmの反射率は85%程度(後述の従来例1では85%であった)と高水準である。しかしながら、近年の光半導体装置、特にLEDのリードフレームに求められる反射率は、チップの発光効率がいまだ数10%程度であることから、これを極力効率的に活用すべく、より一層高い反射率レベル(例えば波長450nm以上で90%以上)ものが求められてきている。
【0006】
そこで、特許文献2のように、銀または銀合金の皮膜の結晶粒径を0.5μm〜30μmとすることで、可視光域の反射率を90%以上に高められた発明が開示されており、めっき厚の規定や粗度の規定、および結晶粒径を規定範囲に収めるために熱処理を施す等の手法が取られている。しかし、この手法を用いた場合、材料に熱処理が施されるため、銀表面の酸化が進行することで反射率の低下が懸念される。また熱処理によって下地が銀表面にまで拡散して反射率の低下やワイヤボンディング性を劣化させる場合があった。
【0007】
また、銀めっきを行う前に、拡散防止金属めっきとしてNi下地めっき上にPd、Rh、Pt、Ru、Ir等の貴金属や高融点金属を形成する技術が知られている(特許文献3)。
【0008】
特許文献3においては、Ni下地めっき上に新たに貴金属や高融点金属を被覆してNi添加剤中の成分拡散を防止することが効果的とされているが、Ni下地めっきを形成した後にさらに貴金属を被覆するので、より一層コスト高になる可能性が高い。
【0009】
とりわけ、近年の貴金属相場の高騰により銀の価格変動も大きく上昇している。そのため、LED用リードフレームに使用する銀使用量(被覆厚)を低減したいというニーズが大きい。しかしながら、銀厚を薄くすると基材成分が拡散により容易に表面に到達し、変色して輝度の維持(長期信頼性)が難しいという問題点が生じる。そこで銀厚を薄くしても従来品と同等以上の長期信頼性を得る技術開発が望まれている。
【0010】
特許文献4には、本発明らの発明である、銀または銀合金からなる反射層を形成した後に、塑性加工を施すことで、反射率が優れた光半導体装置用リードフレームが記載されている。この発明により、耐熱性を付与するため、基体の上に金属層を形成することで、耐熱性及び反射率を兼ね備えた光半導体装置用リードフレームが提供される。しかしこの方法ではニッケルからなる中間層を設けることの記載はあるが、ニッケル層中の結晶形成とその制御については記載がない。また、近年はより高出力LEDの開発が進んでおり、例えば150℃〜200℃で120時間程度の耐熱性が求められるようになり、本文件技術を展開しただけでは長期耐熱性はまだ満足できるものとは言えない場合があることが分かった。
【0011】
ところで、中間層のニッケルめっきの結晶粒径について、特許文献5が知られており、ニッケルの結晶粒径を0.3μm以下とすることで良好な外観を得られる光沢ニッケルめっきが提供できるとされている。しかしながら、本ニッケルめっきを中間層として形成した後に光沢銀めっきを形成して光半導体装置用リードフレームとして検討しても、光沢は得られるが耐熱性に関しての詳細な記載は無く、また試作検討の結果、高温長時間の耐熱試験では反射率の維持には不十分であることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭61−148883号公報
【特許文献2】特許第4367457号公報
【特許文献3】特開2007−258514号公報
【特許文献4】特開2012−28757号公報
【特許文献5】特開2011−214066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、LED・フォトカプラ・フォトインタラプタなどに使用される光半導体装置用リードフレームであって、可視光域(波長400〜800nm)において反射層厚が従来よりも薄い皮膜でも反射率が高く、特に長期信頼性(耐熱性)が高いリードフレームおよびその製造方法、さらにはこのリードフレームを用いた光半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題に鑑み誠意検討を進めた結果、導電性基体上の最表面に光の反射層が形成される光半導体装置用リードフレームにおいて、導電性基体と前記反射層との間に、少なくとも中間層が1層以上形成されており、かつその中間層の結晶粒径を0.5μm以上に形成することによりリードフレームが、長時間にわたって高温の熱が加わっても基体成分の拡散を十分に防止できること、それに伴い反射層厚を従来以上に薄く形成でき、上記課題を解決できることを見出した。本発明はこの知見に基づき為されるに至った。
【0015】
すなわち、上記課題は以下の手段により解決される。
(1)導電性基体上の最表面に銀または銀合金からなる反射層が被覆された光半導体装置用リードフレームであって、導電性基体と前記反射層との間に1層以上の中間層が形成されており、かつその中間層は、断面観察において平面方向に測定した平均結晶粒径が0.5μm以上であることを特徴とする、光半導体装置用リードフレーム。
(2)前記導電性基体は、銅または銅合金、鉄または鉄合金、あるいはアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることを特徴とする、(1)に記載の光半導体装置用リードフレーム。
(3)前記中間層は、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金のうちいずれかで形成されていることを特徴とする、(1)または(2)に記載の光半導体装置用リードフレーム。
(4)前記中間層の厚さは、0.001〜1μmであることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の光半導体装置用リードフレーム。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の半導体装置用リードフレームを製造する方法であって、導電性基体上に、少なくとも1層以上の中間層を、電気めっき法で電流密度8A/dm以上で形成し、さらにその表面に銀または銀合金からなる反射層を形成した後、前記中間層および反射層を減面加工することを特徴とする、光半導体装置用リードフレームの製造方法。
(6)前記(5)記載の半導体装置用リードフレームを製造する方法であって、さらにその後50〜150℃で、0.08〜3時間焼鈍処理することを特徴とする、光半導体装置用リードフレームの製造方法。
(7)(1)〜(4)のいずれかに記載の半導体装置用リードフレームを製造する方法であって、導電性基体上に、少なくとも1層以上の中間層を、電気めっき法で電流密度8A/dm以上で形成した後、前記中間層を減面加工し、さらにその表面に銀または銀合金からなる反射層を形成することを特徴とする、光半導体装置用リードフレームの製造方法。
(8)前記(7)記載の半導体装置用リードフレームを製造する方法であって、さらにその後50〜150℃で、0.08〜3時間焼鈍処理し、さらにその表面に銀または銀合金からなる反射層を形成することを特徴とする、光半導体装置用リードフレームの製造方法。
(9)前記減面加工の加工率は、30〜80%であることを特徴とする(5)〜(8)のいずれかに記載の光半導体装置用リードフレームの製造方法。
(10)前記減面加工は、圧延加工もしくはプレス加工により形成することを特徴とする、(5)〜(9)のいずれかに記載の光半導体装置用リードフレームの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光半導体装置用リードフレームは、LED・フォトカプラ・フォトインタラプタなどに使用され、可視光域(波長400〜800nm)において反射層厚が従来よりも薄い皮膜でも反射率が高く、特に長期信頼性(耐熱性)が高いという優れた作用効果を奏する。本発明の製造方法によればこの優れた性能を示す光半導体装置用リードフレームを製造でき、これを用いた光半導体装置を提供することができる。
また、中間層に貴金属を使用することなく、かつ被覆厚を1μm以下で形成しても、曲げ加工を行った際に下地めっきに亀裂が進展しづらい。これにより、安価で成形性に富む光半導体装置用リードフレームが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る光半導体装置用リードフレームの第1の実施形態の概略断面図である。
図2】本発明に係る光半導体装置用リードフレームの第2の実施形態の概略断面図である。
図3】本発明に係る光半導体装置用リードフレームの第3の実施形態の概略断面図である。
図4】本発明に係る光半導体装置用リードフレームの第4の実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によれば、導電性基体上の最表面に銀または銀合金からなる反射層が被覆された光半導体装置用リードフレームにおいて、導電性基体と前記反射層との間に少なくとも1層の中間層が形成されており、かつその中間層は、断面観察において平面方向に測定した結晶粒径が0.5μm以上であることにより、基体成分が最も拡散しやすい結晶粒界が少なくなるため、反射層にまで基体成分が拡散するのを抑制することができる。従来、中間層として用いられるNiめっき層では、結晶粒径は0.3μm以下で形成されるのが一般的であった。本発明では、中間層を電気めっき法にて電流密度8A/dm以上で形成し、さらにその層に塑性加工を行うことで再結晶駆動力を増大させ、常温放置や比較的低温での熱処理により再結晶化させて粒径を大きく出来ることを見出した。その結果、被覆厚が薄くても、また高価な貴金属を使用しなくても、耐熱性に優れた中間層を形成でき、長期に亘って反射率を維持できる光半導体装置用リードフレームを提供できるものである。耐熱性の効果は、中間層の結晶粒径が0.5μm以上であれば効果的であるが、さらに0.8μm以上がより好ましく、1μm以上が最も好ましい。上限についての制限はなく、平面に渡って結晶粒界の見られない、ほぼ単結晶状態が最も理想形態となる。
【0019】
なお、本発明における結晶粒径の測定は、断面観察により判定する。対象となる光半導体装置用リードフレームにおいて、圧延平行断面をFIBにて切断することで、断面を露出した後、倍率を8000〜15000倍としてその断面をSIM観察する。次いで、得られた画像において、形成されている中間層部分の厚さ方向の中央部から基体平面方向に5μmの長さを線引きし、その線を中間層の結晶粒界が何本交差するかを観察し、5μmをその数で割ることにより結晶粒径と定義する。これを1視野当り任意箇所を3回測定し、合計で3視野、9箇所について行い数平均する。さらに中間層が複数層ある場合は、それぞれの層について測定を行い、その結晶粒径がいずれかの層が満足していればよい。これは、基体成分の拡散については結晶粒界が粗大であることが拡散防止に効果的であることによる。従って結晶粒界が粗大である層が中間層として一層以上形成されていることが必要である。
【0020】
以下本発明の光半導体装置用リードフレームの構成層と加工処理について説明する。
(金属基体)
本発明で、使用する金属基体成分としては、銅または銅合金、鉄または鉄合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金等が好ましく、中でも導電率の良い銅または銅合金が好ましい。例えば銅合金の一例として、CDA(Copper Development Association)掲載合金である「C14410(Cu−0.15Sn、古河電気工業(株)製、表品名:EFTEC−3)」、「C19400(Cu−Fe系合金材料、Cu−2.3Fe−0.15Zn−0.03P)」、および「C18045(Cu−0.3Cr−0.25Sn−0.5Zn、古河電気工業(株)製、表品名:EFTEC−64T)」等を用いることができる。なお、各元素の前の数字の単位は質量%である。これら基体はそれぞれ導電率や強度が異なるため、適宜要求特性により選定されて使用されるが、光半導体装置用リードフレームの放熱性を向上させるという観点からは、導電率が50%IACS以上の銅合金の条材とすることが好ましい。
また、鉄もしくは鉄合金としては、例えば、42アロイ(Fe−42mass%Ni)やステンレスなどが用いられる。
基体の厚さには特に制限はないが、通常、0.05mm〜1mmであり、好ましくは、0.1mm〜0.8mmである。
【0021】
(中間層)
本発明における中間層は、基体成分の拡散を防止できる耐熱性を付与するものであれば特に制限はないが、例えばニッケルまたはニッケル合金、コバルトまたはコバルト合金、パラジウムまたはパラジウム合金、ロジウムまたはロジウム合金、ルテニウムまたはルテニウム合金、イリジウムまたはイリジウム合金、銅または銅合金などが好ましく、特に安価で被覆の容易なニッケルまたはニッケル合金、コバルトまたはコバルト合金のうちいずれかからなる中間層が形成されていることが好ましい。これら金属からなる中間層は、密着性向上および基材成分の拡散防止に効果的である。中間層の形成は、電気めっき(湿式めっき)、スパッタリング、蒸着法などによるが、特に生産性の観点から電気めっき法が好ましい。中間層は1層以上で形成されていればよく、例えば銅層形成後にニッケル層を形成したり、さらに別の例ではニッケル層形成後にパラジウム層を形成したりするなど、2層以上で形成されていても良いが、生産性やコストを考慮して3層以内とするのが望ましい。
【0022】
さらに、電気めっき法にて中間層を形成する際は、陰極電流密度を8A/dm以上、好ましくは10A/dm以上で形成するのが好ましい。これは、電流密度を高くすることで、めっきに導入される空孔や転位、不純物などの欠陥箇所を合えて多く導入し、再結晶に必要な格子欠陥を多く持たせることを特徴としている。この結果、減面加工による塑性加工で再結晶駆動力が増大し、中間層の結晶粒径をより大きく形成することが出来る。なお、電流密度の上限は特に設けないが、35A/dm以上になるとヤケめっきと呼ばれる粗なめっきが形成されるため、好ましくない。
【0023】
さらに本発明において、中間層が厚さ0.001〜1μmで形成されていることで、密着性及び耐熱性をより効果的に改善できる。この中間層は、厚みが厚くなると基体の平滑性を損なう可能性があることと、曲げ加工性を考慮して、最大でも1μmまでで形成することが好ましい。一方の下限値は、耐熱性改善効果を考慮し、0.001μm以上が適当である。従来の中間層めっき厚は、例えば0.2〜2μm程度が特に好ましいとされるが、本発明は、中間層の結晶粒径の粗大化効果により被覆厚をより一層薄くできるので、好ましくは0.01〜0.2μmであり、この被覆厚でも基体成分の拡散が従来品と同等以上に防止できる。
【0024】
(反射層)
また、本発明の光半導体装置用リードフレームにおける最表層である反射層を形成する銀または銀合金は、銀、銀−錫合金、銀−インジウム合金、銀−ロジウム合金、銀−ルテニウム合金、銀−金合金、銀−パラジウム合金、銀−ニッケル合金、銀−セレン合金、銀−アンチモン合金、及び銀−白金合金からなる群から選ばれた材料を用いることにより、反射率が良好で生産性の良い光半導体装置用リードフレームが得られる。特に銀、銀−錫合金、銀−インジウム合金、銀−パラジウム合金、銀−セレン合金、または銀−アンチモン合金が反射率向上の観点から、反射層の材料としてより好ましい。この反射層は、スパッタ法や蒸着法、湿式めっき法などで形成できるが、生産性を考慮すれば特に湿式めっき法を利用するのが好ましく、例えば湿式めっき後の塑性加工や、高光沢めっきにより好適に形成されるのがより好ましい。
【0025】
本発明において、耐熱性に優れた中間層を導入した効果として、従来被覆されていた反射層厚よりも薄い反射層で被覆しても、導電性基体の成分が表層まで拡散してくるのが遅いため、長期信頼性に優れる。その結果、従来の被覆厚でももちろんのこと、反射層厚が0.05〜2μmという従来の2/3以下の被覆厚でもよく、低コストで環境負荷の小さい光半導体装置用リードフレームを得ることが出来る。上記範囲で形成すれば耐熱性に関しては十分であるが、より長期信頼性を向上させるには反射層厚は0.2〜1μmがさらに好ましい。
【0026】
また、反射層は光の反射率に優れた層であり、前記成分からなる反射層を形成されていればよいが、反射率が波長450nmにおいて硫酸バリウム試験片を100%とした際に90%以上であることが好ましく、さらに好ましくは95%以上である。その結果、光半導体装置に組み込んだ際の光の取り出し効率が良くなり、光半導体装置の輝度が高められる。また、反射率の低下率が耐熱性の高温加速試験(200℃で120時間保持で行う。)後で10%以内であることが大変好ましい。
【0027】
(減面加工処理)
さらに本発明によれば、中間層のみ形成後や中間層および反射層形成後に減面加工を行うことで、中間層に再結晶駆動力を導入して再結晶化しやすくすることができる。この場合の減面加工は、圧延加工やプレス加工等の塑性加工で行うことが好ましい。(ここで、圧延加工とプレス加工を併せて圧延加工等と略記する。)この場合、圧延加工等の塑性加工時の加工率(または減面率)が、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。加工率が高いほど中間層に塑性加工が施されるため、塑性変形による欠陥エネルギーが蓄えられるので、これを解放することにより再結晶化が促進される。しかし加工率が高すぎると中間層に大きな亀裂が進展し、基体と反射層が接する面積が増えるため、逆に拡散しやすくなる。なお、反射層形成後に圧延加工等の塑性加工を加えると、反射層表面の反射特性が向上するが、その加工率は、80%を超えると反射特性向上の効果が飽和するだけでなく、加工時の割れやクラックが生じやすくなることや、エネルギー負荷(圧延やプレスに必要な電力など)も増加する。加工率は、好ましくは80%以下である。
【0028】
なお本発明で規定する「加工率」(または減面率)とは、「(加工前の板厚−加工完了後の板厚)×100/(加工前の板厚)」で示される割合(%)のことを示すものである。
【0029】
また減面加工を施す場合は、例えば圧延加工の場合、圧延工程を何回経ても構わないが、圧延回数が増えると生産性が悪くなるため、圧延回数は少ない方が好ましい。なお圧延機に関しては、例えば冷間圧延機によって行う。圧延加工機は、2段ロール、4段ロール、6段ロール、12段ロール、20段ロール等があるが、いずれの圧延加工機でも使用することができる。
圧延加工に用いる圧延ロールは、ロール目の転写によって形成されるリードフレーム側の反射率を向上させることを考慮すると、表面粗度の算術平均(Ra)で0.1μm未満であることが好ましい。
ここでは、塑性加工の代表例として、冷間圧延加工について説明したが、プレス加工(例えば、コイニング)の場合には、冷間圧延加工の場合と同様にして、塑性加工を施すことができる。プレス加工法の場合は、プレス圧力を0.1N/mm以上で圧力調整によって加工率を調整して塑性変形させることで達成できる。
【0030】
(塑性加工後の熱処理)
次いで、要求される機械特性を制御し、中間層結晶粒径の粗大化を促進するため、圧延加工等の塑性加工の後にバッチ型あるいは走間型などの手法によって熱処理(調質又は低温焼鈍ともいう)を施すことで、調質するとともに、中間層を再結晶化させることができるが、反射率を低下させない程度の熱処理に留める必要がある。
このような圧延加工等の塑性加工の後に施される熱処理の条件は、上記の中間層の結晶粒径を0.5μm以上とするように定められる。具体的には、好ましくは50〜150℃、より好ましくは50〜100℃で、好ましくは0.08〜3時間、より好ましくは0.25〜1時間の熱処理を行う。この熱処理の温度が高すぎたり時間が長すぎたりすると熱履歴が過剰となり、反射率が低下してしまう。上記の熱処理の条件により、目的の中間層の再結晶化を行うことができる。
【0031】
また、本発明における銀または銀合金からなる反射層は、少なくとも光の反射に寄与する部分(つまり、少なくとも光半導体素子が発する光を反射する領域)の最表面に形成されていればよい。他の部分においては、反射層を設ける必要はなく、また反射層以外の層が形成されていても、反射率の点からは特に問題はない。
【0032】
さらには、銀または銀合金からなる反射層は部分的に形成されていてもよく、片面めっきや、ストライプめっき、スポットめっきなどの部分めっきで形成し、その後圧延加工等の塑性加工により形成してもよい。反射層が部分的に形成されるリードフレームを製造することは、反射層が不要となる部分の金属使用量を削減できるので、環境負荷が少ないリードフレームを得ることができ、その結果環境負荷が少ない光半導体装置を得ることができる。
【0033】
本発明の光半導体装置用リードフレームの実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームの第1の実施形態の概略断面図である。本実施形態のリードフレームは、基体1上に銀または銀合金からなる反射層2が形成され、反射層2の一部の表面上に光半導体素子3が搭載されている。基体1と反射層2との間には、中間層4が形成されている。さらにボンディングワイヤ7によって、破断部9(図中折れ線形状の領域として省略的に示している。)にて絶縁された他方のリードフレームと、光半導体素子3とが、電気的に接続されて回路が形成されている。本発明において、本実施形態のリードフレームは、反射層2は例えば電気めっきで形成された後、圧延加工等の塑性加工により塑性変形を生じており、近紫外域及び可視光領域(波長340nm〜800nm)の反射特性に優れた光半導体装置用リードフレームとなる。
【0034】
図2は、光半導体素子が搭載される側の片面のみに例えば中間層4と電気めっき後に圧延加工等の塑性加工が施された反射層2を配置した第2の実施形態の概略断面図である。
【0035】
図3は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームの第3の実施形態の概略断面図である。図3は、モールド樹脂5および封止樹脂6によって光半導体モジュールが形成されている様子を便宜的に示しており、光半導体素子3が搭載される部分と、その近傍である反射現象を起こす箇所と、モールド樹脂5の内部とにのみ反射層2が形成されている。本実施形態において、中間層4は基体1の全面に形成されているが、基体1と反射層2との間に介在する形態であれば、部分的に形成されていてもよい。また、モールド樹脂5の下部の途中まで反射層2が形成されているが、反射現象に寄与する部分である領域が覆われていれば良く、モールド樹脂5の外側まであるいはモールド樹脂内部のみが覆われている状態でもよい。
本発明においては、このように、光反射に寄与する部分にのみに銀または銀合金からなる反射層2を形成することも可能である。
【0036】
図4は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームの第4の実施形態の概略断面図である。図4は、図3同様、モールド樹脂5および封止樹脂6によって光半導体モジュールが形成されている様子を便宜的に示している。図4の実施形態が図3と異なる点は、基体1の光半導体素子3が配置される面にのみ中間層4が設けられていることと、反射層2が基体1の全面に設けられていることである。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
実施例1として、厚さ0.5mm、幅180mmの表1に示す導電性基体に以下に示す前処理を行った後、表に示す表面処理を施した。その後、中間層に再結晶駆動力を導入させる手段として、加工率50%の圧延加工(日立製作所製6段圧延機使用、ワークロールの算術平均粗さRa≒0.03μm)により本発明例および比較例のリードフレームを作製した。なお、圧延回数は2回とし、1回目に厚さ0.4mm(中間加工率(0.5−0.4)/0.5=20%)までの圧延加工を行った後、2回目に同じワークロールを用いて0.25mm(仕上加工率(0.4−0.25)/0.4=37.5%、トータル加工率50%)に仕上加工を行った。
【0039】
また、従来例のめっき上がり品については、板厚0.25mm、幅180mmの表1に示す導電性基体に以下に示す前処理を行った後、表1に示す電気めっき処理を施すことで、リードフレームを作製した。なお、従来例1は、特許文献5として記載した特開2011−214066号公報の実施例1(段落0027)を模擬して形成しためっき上がり品であり、また従来例2は、特許文献2を模擬し、作製しためっき材に熱処理を残留酸素濃度500ppm以下の窒素雰囲気にて、300℃で5分熱処理を行ったリードフレームを準備し、結晶粒径を熱処理によって調整したものを準備した。
さらに比較例1は、特許文献4の発明例3について調査を行ったデータを表1に明記した。
【0040】
なお、各被覆厚は蛍光X線膜厚測定装置(SFT−9400:SII社製)を使用し、コリメータ径0.5mmを使用して任意の箇所10点を測定し、その平均値を算出することで被覆厚とした。さらに中間層の結晶粒径を判定するため、FIBにより圧延方向平行断面試料を3視野作製後、SIM像観察を行って、中間層の面方向における長さ5μmを横切る粒界の数を1視野当り3箇所について数え、それをもとに合計9箇所の粒径を算出し、その平均値を示した。
【0041】
導電性基体として用いられた材料のうち、「C14410(EFTEC−3)」「C18045(EFTEC−64T、Cu−Cr−Sn−Zn系合金材料:Cu−0.3Cr−0.25Sn−0.5Zn)」、「C19400(Cu−Fe系合金材料:Cu−2.3Fe−0.15Zn−0.03P)」、「C52100(リン青銅:Cu−8Sn−P)」は銅または銅合金の基体を表し、Cの後の数値はCDA(Copper Development Association)規格による種類を示す。なお、「C14410(EFTEC−3)」および「C18045(EFTEC−64T)」は、古河電気工業株式会社製の銅合金である。
なお、各基体に対して電解脱脂・酸洗の工程を経た前処理を行った。また、それぞれ銀めっきを行う前は、銀ストライクめっきを行った。
【0042】
(前処理条件)
[カソード電解脱脂]
脱脂液:NaOH 60g/リットル
脱脂条件:2.5A/dm、温度60℃、脱脂時間60秒
[酸洗]
酸洗液:10%硫酸
酸洗条件:30秒 浸漬、室温
[Agストライクめっき]
めっき液:KAg(CN) 4.45g/リットル、KCN 60g/リットル
めっき条件:電流密度 5A/dm、温度 25℃
【0043】
(中間層めっき条件)
[Niめっき]添加剤フリー浴
めっき液:Ni(SONH・4HO 500g/リットル、NiCl 30g/リットル、HBO 30g/リットル
めっき条件:電流密度 10A/dm、温度 50℃
[Coめっき]添加剤フリー浴
めっき液:Co(SONH・4HO 500g/リットル、CoCl 30g/リットル、HBO 30g/リットル
めっき条件:電流密度 10A/dm、温度 50℃
【0044】
(銀めっき条件)
[無光沢Agめっき]
めっき液:AgCN 50g/リットル、KCN 100g/リットル、KCO 30g/リットル
めっき条件:電流密度 1A/dm、温度 30℃
[Ag−Seめっき]
めっき液:AgCN 75g/リットル、KCN 120g/リットル、KCO 15g/リットル、添加剤(AG−20:メタローテクノロジーズジャパン社)20ミリリットル/リットル
めっき条件:電流密度 6A/dm、温度 30℃
【0045】
(1A)反射率測定:分光光度計(V660(商品名、日本分光(株)製))において、皮膜形成後の全反射率を300nm〜800nmにかけて連続測定を実施した。このうち、450nmおよび600nmにおける全反射率(%)を表1に示す。それぞれ波長450nmでの全反射率を90%以上、波長600nmでの全反射率を95%以上であることを要求特性とした。
(1B)耐熱性:200℃の温度で120時間、大気中にて熱処理を行った後、上記反射率測定を実施した。その結果、波長450nmおよび波長600nmの全反射率を表1に示し、120時間後の全反射率の低下率が10%以内であることで、耐熱性が特に優れるレベルとして表1に示した。なお、低下率=(初期の反射率−加熱後の反射率)/初期の反射率×100(%)で示すものとする。
(1C)曲げ加工性:各試料について、曲げ加工半径0.25mmにてV曲げ試験を圧延筋に対して直角方向に実施後、その頂上部をマイクロスコープ(VHX200;キーエンス社製)にて観察倍率200倍で観察を行い、割れが認められなかったものを「優」として「○」を示し、軽微な割れが生じているものを「可」として「△」を示し、比較的大きな割れが生じたものを「不可」として「×」で表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例2として、厚さ0.5mm、幅180mmのEFTEC−3(古河電気工業社製銅合金)の導電性基体において、中間層についてはNiめっきを最終品の厚さが0.1μmの被覆厚になるよう形成し、銀ストライクめっきを実施後、反射層については最終品の厚さが1μmになるように被覆した発明例を作製した。また、製造方法として、表2記載の手順にて形成した。
【0048】
(中間層めっき条件)
[Niめっき]添加剤フリー浴
めっき液:Ni(SONH・4HO 500g/リットル、NiCl 30g/リットル、HBO 30g/リットル
めっき条件:電流密度 8〜30A/dm、温度 50℃
【0049】
(反射層めっき条件)
[無光沢Agめっき]
めっき液:AgCN 50g/リットル、KCN 100g/リットル、KCO 30g/リットル
めっき条件:電流密度 1A/dm、温度 30℃
[Ag−Seめっき]
めっき液:AgCN 75g/リットル、KCN 120g/リットル、KCO 15g/リットル、添加剤(AG−20:メタローテクノロジーズジャパン社)20ミリリットル/リットル
めっき条件:電流密度 6A/dm、温度 30℃
【0050】
【表2】
【符号の説明】
【0051】
1 基体
2 反射層(圧延加工された層)
3 光半導体素子
4 中間層
5 モールド樹脂
6 封止樹脂
7 ボンディングワイヤ
8 半田付け改善層(Ag、Au、Sn、それらの合金など)
9 破断部
図1
図2
図3
図4