(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無線回線を介して複数の無線端末とそれぞれ接続可能な複数の基地局と基幹ネットワークとの間に配置された通信中継装置が、前記基幹ネットワークと前記基地局間のトラヒックを中継し、前記基地局のそれぞれからその基地局に接続している端末数の情報を受領し、前記接続している端末数の情報が所定の条件を満足したか判定し、
前記判定結果に基づき前記基地局の少なくとも一つに対して停止、起動または前記無線端末との新たな接続ができない隠蔽のいずれかを指示し、
前記通信中継装置は、いずれか1つの基地局に接続している端末数が所定の値を超えたか、または複数の基地局における接続している端末数の合計が所定の値を超えたかどうか判定し、
前記判定結果に基づき、接続している端末数が所定の値を超えた基地局または、接続している端末数の合計が所定の値を超えた場合の複数の基地局の少なくとも一つに対する隠蔽の指示を行い、隠蔽している基地局のうち接続している端末が無い基地局の少なくとも1つに対する停止の指示を行うこと
を特徴とするスリープ制御方法。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットへのアクセス手段として、無線LAN等を使用した無線通信システムが普及している。無線通信システムの構成例を
図11に示す。無線通信システムは、基地局30と、無線回線(チャネル#1)により基地局と接続されるm台(m:整数)の無線端末40−1〜40−mと、インターネット10等の基幹ネットワーク、基地局とインターネットを接続する通信中継網20及びそれを構成する通信中継装置21から構成される。無線端末40−1〜40−mは、パケットと呼ばれるデータを送受信し、インターネット10を通して情報のやり取りを行う。
【0003】
本構成例では、複数の無線端末40−1〜40−mは無線回線(チャネル#1)を共同で使用しパケットを多重して送受信を行う。無線端末40−1〜40−mがインターネット10へパケットを送信する場合、送信されたパケットは基地局30と通信中継装置21を経由してインターネット10へと届けられる。無線端末40−1〜40−mがインターネット10からパケットを受信する場合は、逆の経路をとる。
【0004】
スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、無線通信システムに接続される無線端末台数が増加している。無線LAN等の無線方式では、上述したように無線回線を共同で使用しパケット多重により送受信を行うため、基地局に接続される無線端末台数が増加すると、パケットの衝突によりスループットが低下する。このスループットの低下を防止するため、特許文献1の無線通信システムでは、
図12のように、n台(n:2以上の整数)の基地局30−1〜30−nを設置して基地局1台あたりの接続台数を削減し、各基地局に対する負荷を分散している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の複数台の基地局を設置することによりトラヒックの負荷分散を行う構成では、基地局に接続されうる無線端末台数が少ない場合、
図13のように無線端末が接続されていない基地局30−nが存在して電力を無駄に消費してしまうことになる(ケース1)。このような場合、無線端末が接続されていない基地局30−nは、一時的に停止(スリープ)して電力消費量を削減することも考えられる。
【0007】
しかしながら、
図14のように1台の基地局30−1に無線端末40−1〜40−mの接続が集中し、かつ無線端末が接続されていない基地局30−nが存在してしまう場合(ケース2)には、無線端末が接続されていない基地局30−nが停止するとトラヒックの負荷分散ができなくなってしまうという問題がある。つまり、各基地局はお互いに接続されている無線端末台数を知ることができず、ケース1とケース2を区別することができないので、無線端末が接続されていない基地局が自身の判断で勝手にスリープしてしまうと基地局#1(30−n)に負荷が集中し続けることになる。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みて発明されたものであり、複数の基地局に対するトラヒックの負荷分散をおこないつつ、無駄な電力を消費している無線基地局を停止し、無線通信システムの低消費電力化を図ること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る通信中継装置では、無線回線を介して複数の無線端末とそれぞれ接続可能な複数の基地局と基幹ネットワークとの間に配置され、前記基幹ネットワークと前記基地局間のトラヒックを中継し、前記基地局のそれぞれからその基地局に接続している端末数の情報を受信する通信中継手段と、前記接続している端末数の情報が所定の条件を満足したか判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づき前記基地局の少なくとも一つに対して停止、起動または隠蔽のいずれかを指示する指示手段とを備える。
【0010】
前記判定手段は、いずれか1つの基地局に接続している端末数が所定の値を超えたか、または複数の基地局における接続している端末数の合計が所定の値を超えたかどうか判定し、前記指示手段は、前記判定手段の判定結果に基づき、起動している基地局のうち接続している端末が無い基地局の少なくとも1つに対する停止の指示、停止あるいは隠蔽している基地局の少なくとも一つに対する起動の指示、接続している端末数が所定の値を超えた基地局または、接続している端末数の合計が所定の値を超えた場合の複数の基地局の少なくとも一つに対する隠蔽の指示のうち、少なくとも一つの指示を行うようにしてもよい。
【0011】
前記指示手段は、いずれの基地局に接続している端末数も所定の値以下の場合、または複数の基地局における接続している端末数の合計が所定の値以下の場合に、起動している基地局のうち接続している端末が無い基地局の少なくとも1つに対して停止の指示を行うようにしてもよい。
【0012】
前記通信中継手段は、前記基地局のそれぞれからその基地局におけるトラヒック量の情報を受信し、または前記基地局における基地局毎のトラヒック量を測定し、前記判定手段は、前記トラヒック量が所定の条件を満足したか判定し、前記指示手段は、前記判定手段の判定結果に基づき前記複数の基地局の少なくとも一つに対して停止、起動または隠蔽のいずれかを指示するようにしてもよい。
【0013】
前記判定手段は、いずれか1つの基地局のトラヒック量が所定の値を超えたか、または複数の基地局におけるトラヒック量の合計が所定の値を超えたかどうか判定し、前記指示手段は、前記判定手段の判定結果に基づき、起動している基地局のうち接続している端末が無い基地局の少なくとも1つに対する停止の指示、停止あるいは隠蔽している基地局の少なくとも一つに対する起動の指示、トラヒック量が所定の値を超えた基地局または、トラヒック量の合計が所定の値を超えた場合の複数の基地局の少なくとも一つに対する隠蔽の指示のうち、少なくとも一つの指示を行うようにしてもよい。
【0014】
前記指示手段は、いずれの基地局のトラヒック量も所定の値以下の場合、または複数の基地局におけるトラヒック量の合計が所定の値以下の場合に、起動している基地局のうち接続している端末が無い基地局の少なくとも1つに対して停止の指示を行うようにしてもよい。
【0015】
また、本発明に係るスリープ制御方法では、無線回線を介して複数の無線端末とそれぞれ接続可能な複数の基地局と基幹ネットワークとの間に配置された通信中継装置が、前記基幹ネットワークと前記基地局間のトラヒックを中継し、前記基地局のそれぞれからその基地局に接続している端末数の情報を受領し、前記接続している端末数の情報が所定の条件を満足したか判定し、前記判定結果に基づき前記基地局の少なくとも一つに対して停止、起動または隠蔽のいずれかを指示する。
【0016】
前記通信中継装置は、いずれか1つの基地局に接続している端末数が所定の値を超えたか、または複数の基地局における接続している端末数の合計が所定の値を超えたかどうか判定し、前記判定結果に基づき、起動している基地局のうち接続している端末が無い基地局の少なくとも1つに対する停止の指示、停止あるいは隠蔽している基地局の少なくとも一つに対する起動の指示、接続している端末数が所定の値を超えた基地局または、接続している端末数の合計が所定の値を超えた場合の複数の基地局の少なくとも一つに対する隠蔽の指示のうち、少なくとも一つの指示を行うようにしてもよい。
【0017】
前記通信中継装置は、いずれの基地局に接続している端末数も所定の値以下の場合、または複数の基地局における接続している端末数の合計が所定の値以下の場合に、起動している基地局のうち接続している端末が無い基地局の少なくとも1つに対して停止の指示を行うようにしてもよい。
【0018】
前記通信中継装置は、前記基地局のそれぞれからその基地局におけるトラヒック量の情報を受信し、または前記基地局における基地局毎のトラヒック量を測定し、前記トラヒック量が所定の条件を満足したか判定し、前記判定結果に基づき前記複数の基地局の少なくとも一つに対して停止、起動または隠蔽のいずれかを指示するようにしてもよい。
【0019】
前記通信中継装置は、いずれか1つの基地局のトラヒック量が所定の値を超えたか、または複数の基地局におけるトラヒック量の合計が所定の値を超えたかどうか判定し、前判定結果に基づき、起動している基地局のうち接続している端末が無い基地局の少なくとも1つに対する停止の指示、停止あるいは隠蔽している基地局の少なくとも一つに対する起動の指示、トラヒック量が所定の値を超えた基地局または、トラヒック量の合計が所定の値を超えた場合の複数の基地局の少なくとも一つに対する隠蔽の指示のうち、少なくとも一つの指示を行うようにしてもよい。
【0020】
前記通信中継装置は、いずれの基地局のトラヒック量も所定の値以下の場合、または複数の基地局におけるトラヒック量の合計が所定の値以下の場合に、起動している基地局のうち接続している端末が無い基地局の少なくとも1つに対して停止の指示を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の基地局に対するトラヒックの負荷分散を行いつつ、無駄な電力を消費している無線端末を停止し、無線通信システムの低消費電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムの全体構成を表す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る通信中継装置の構成例を表す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る基地局を停止または起動すべきか否かを判定する際の判定基準例を表す表である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信システムの全体構成を表す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る基地局の動作の概要を表す図である。
【
図6】
図6は、隠蔽モードがない場合の基地局の動作の概要を表す図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る隠蔽モードがある場合の基地局の動作の概要を表す図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る基地局の制御手順を表すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る基地局の制御手順における基地局の状態を表す図である。
【
図10】
図10は、本発明の無線通信システムの通信中継網にPONシステムを用いた場合の構成例を表す図である。
【
図11】
図11は、従来の無線通信システムの構成例を表す図である。
【
図12】
図12は、従来の無線通信システムの構成例を表す図である。
【
図13】
図13は、従来の無線通信システムの構成例を表す図である。
【
図14】
図14は、従来の無線通信システムの構成例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムの全体構成を表す図である。
【0025】
図1の無線通信システムは、n台(n:整数)の基地局30−1〜30−nと、無線回線(チャネル#1から#n)により基地局と接続されるm台(m:整数)の無線端末40−1〜40−mと、インターネット10等の基幹ネットワーク、基地局とインターネットを接続する通信中継網20及びそれを構成する通信中継装置21から構成される。
【0026】
ここで、基地局は、「停止」と「起動」の二つの動作モードを有する。「停止」とは基地局の電源がオフの状態をいうが、通信中継装置から「起動」の指示を受けた際に再起動できる最低限の電力を消費している状態である。一方、「起動」とは基地局の電源がオンの状態であり、無線端末及びインターネットと通信可能な状態をいう。通信中継装置21が制御パケットを用いて各基地局30−1〜30−nに接続している無線端末の台数の情報を収集し、得られた接続している端末数の情報に基づき、各基地局基地局30−1〜30−nを停止あるいは起動すべきか判定し、各基地局基地局30−1〜30−nに対して制御パケットを用いて停止、起動を指示することが特徴である。
【0027】
通信中継装置21としては、例えば、スイッチ、サーバー、ルータなど、基地局に「直接」接続された装置が基地局のスリープを制御する構成が考えられる
【0028】
本構成例では、まず、各基地局30−1〜30−nが自身に接続されている無線端末の台数を、一定期間ごとに制御パケットを用いて通信中継装置21に報告する。報告を受けた通信中継装置21は、あらかじめ基地局を停止するか起動するかを判定するための接続端末数に関する条件を定めておき、各基地局30−1〜30−nに接続されている無線端末台数に基づき各基地局30−1〜30−nが停止あるいは起動すべきか否かを判定し、制御パケットを各基地局30−1〜30−nに送信して停止あるいは起動を指示する。この制御パケットには、「停止」状態に遷移する場合には「停止」の指示が記載され、「起動」状態に遷移する場合には「起動」の指示が記載される。各基地局30−1〜30−nは、受信した制御パケットの指示に従い、停止あるいは起動の処理を行う。
【0029】
本実施の形態における通信中継装置の構成例を
図2に示す。通信中継装置21は、基地局とインターネット間の通信を中継し、基地局と制御パケットの送受信を行う通信中継部22と、スリープ制御部23から構成されている。このスリープ制御部23は、インタフェース部において通信中継手段22から制御パケットを受信して、各基地局に接続している端末数の情報を収集する。そして、判定部においてその情報に基づき各基地局を停止あるいは起動すべきか判定し、指示部においてはその判定結果に基づき基地局に対して停止あるいは起動の指示を行う。本構成例では、インタフェース部と判定部、指示部は信号バスで接続され、判定部及び指示部はCPUを搭載したコンピュータである。判定処理や停止あるいは起動の指示処理はコンピュータに読み込まれたソフトウェアにより実行される。
【0030】
スリープ制御部23において、各基地局30−1〜30−nが停止あるいは起動すべきかを判定する判定基準の一例を
図3に示す。ここでは、番号n(#n)の基地局に指示を出す場合を例として説明する。通信中継装置は、基地局#nに接続されている端末数が0であり、かつ、基地局#nが「起動」中の場合、基地局#nは停止すべきであると判定し、「停止」の指示を記載した制御パケットを基地局#nに送信する。一方、基地局#n以外の基地局(#1〜#n−1)のうちどれか1つの基地局に接続されている無線端末台数が事前に設定した閾値(Th1)を超えており、かつ、基地局#nが「停止」中の場合、基地局#nは起動すべきであると判定し、「起動」の指示を記載した制御パケットを基地局#nに送信する。
【0031】
このように、接続されている無線端末数が0の基地局に対しては原則として停止すべきであると判定して、「停止」の指示を行い、無用な電力を消費している基地局を停止して消費電力の削減を図る。一方、他の基地局のいずれか1つの基地局に接続されている無線端末数が事前に設定した閾値(Th1)を超えている場合には停止中の基地局に対して、起動の指示を行いトラヒックの負荷分散を優先するように制御する。
【0032】
また、停止すべき基地局と起動すべき基地局が複数存在する場合には、消費電力の削減と複数基地局におけるトラヒックの負荷分散のトレードオフを判断し、停止あるいは起動する基地局を適宜決定するようにすればよい。この停止あるいは起動の制御は一定間隔で行うことが考えられる。その場合、1つの基地局について1つの制御スパンの間に停止すべき条件と起動すべき条件の両方が成立することがありえるが、本実施の形態では、起動の指示を優先する。
【0033】
また、1つの制御スパンの間に両方の条件が成立しないように、起動中の基地局に接続されている端末数が0であり、かつ他のいずれの基地局に接続されている無線端末数も事前に設定した閾値(Th1)以下の場合に停止を指示するようにしてもよい。
【0034】
本実施の形態では、一定期間ごとに通信中継装置と基地局が制御パケットをやり取りする例を示したが、制御パケットをやり取りするタイミングはこれのみに限るわけではない。たとえば、基地局に接続されている端末数に変化があった場合のみ制御パケットをやり取りする構成でもよい。他の実施の形態でも同様である。
【0035】
本実施の形態では、通信中継装置が各基地局に「停止」や「起動」の制御パケットを送信する判定基準の一例を示したが、判定基準はこれに限られない。たとえば、「停止」の制御パケットを送信する判定基準の例としては、全基地局または複数の基地局に接続されている無線端末の合計値が事前に設定した基準(Th2)以下になった場合に、接続されている無線端末がない基地局に「停止」の制御パケットを送信する例が考えられる。一方、「起動」の制御パケットを送信する判定基準の例としては、全基地局または複数の基地局に接続されている無線端末数の合計値が事前に設定した基準(Th3)を超えた場合に、停止中の基地局に「起動」の制御パケットを送信する例も考えられる。
【0036】
また、本実施の形態では、通信中継装置が各基地局から接続している端末数の情報を受信しその情報に基づき各基地局を停止あるいは起動すべきか判定する例を説明したが、各基地局から接続されている全端末のトラヒック量例えば送受信しているパケット数の情報を受信し、その情報に基づき停止あるいは起動すべきか判断するようにしてもよい。
【0037】
例えば、基地局#nに接続されている端末数が0であり、かつ、基地局#nが「起動」中の場合、基地局#nは停止すべきであると判定するのは上記と同じであるが、基地局#n以外の基地局(#1〜#n−1)のうちどれか1つの基地局のパケット数が事前に設定した閾値を超えており、かつ、基地局#nが「停止」中の場合、基地局#nは起動すべきであると判定し、「起動」の指示を記載した制御パケットを基地局#nに送信する。
【0038】
また、トラヒック量を用いた場合でも、全基地局または複数の基地局のトラヒック量の合計値が事前に設定した基準以下になった場合に、接続されている無線端末がない基地局に「停止」の制御パケットを送信するようにしてもよいし、全基地局または複数の基地局に接続されている無線端末数の合計値が事前に設定した基準を超えた場合に、停止中の基地局に「起動」の制御パケットを送信するようにしてもよい。
【0039】
尚、このトラヒック量(パケット数)の情報は基地局が測定して通信中継装置に送信してもよいし、通信中継装置の通信中継部において自ら測定するようにしてもよい。
【0040】
以上のように、通信中継装置が各基地局に接続されている端末数やトラヒック量の情報を収集することにより、無線端末が接続されていない基地局が存在して電力を無駄に消費してしまう場合(ケース1)と、無線端末が接続されていない基地局が存在しても、特定の基地局に無線端末の接続が集中している場合(ケース2)を識別し、この情報に基づき基地局を停止すべきか起動すべきかを判定する本発明により、トラヒックの負荷分散を考慮しつつ、無駄な電力を消費している無線端末を停止することが可能となり、無線通信システムの低消費電力化が可能となる。
【0041】
さらに、本実施の形態によれば、低消費電力化や通信中継装置の集中管理による運用コストの削減効果や、基地局が停止するべきかどうかを判定することはないことによる機能の簡易化、作り安さの向上、低コスト化などの効果もある。
【0042】
本実施の形態では、通信中継装置が各基地局と制御パケットをやり取りしてスリープを制御する例を示したが、たとえば専用の信号線を使用してもよい。他の実施の形態でも同様である。
【0043】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る無線システムの全体構成を表す図である。第1の実施の形態との差分は、各基地局は「隠蔽」の動作モードを有し、通信中継装置が各基地局に「隠蔽」を指示する制御パケットを送信する点である。
【0044】
第1の実施の形態において、基地局は「停止」と「起動」の2つの動作モードを有していた。さらに、基地局に「停止」の指示を出すタイミングは、該当基地局に接続されている無線端末台数が0の場合であった。これは、無線端末が一台でも接続されている基地局は「停止」することができないからである。無線端末は、自身が接続する基地局を接続可能な基地局から自由に選択することができる。第1の実施の形態では偶発的に接続されている無線端末台数が0となっている基地局が存在したときのみ、該当基地局を停止して消費電力を削減することができるが、接続端末が多数の場合等には接続端末数が0の基地局の存在確率は低い場合がある。第2の実施の形態は、スリープによる低消費電力効果を向上させるため、接続されている無線端末数が0となる基地局を確率的に多く存在させる方法に関するものである。
【0045】
本実施の形態では、各基地局は第3の動作モードとして「隠蔽」を有し、通信中継装置が各基地局に「隠蔽」を指示することを特徴とする。各基地局は、「隠蔽」を指示されるとビーコンと呼ばれる新規接続のための信号発信を停止し、無線端末と新規に接続を確立することができなくなる。この場合、隠蔽中の基地局では、接続されている無線端末が通信の終了に伴い自発的に接続を切断することで徐々に接続台数が減っていき、最終的に接続されている無線端末数が0となり動作モードを「停止」にできる状態となる。
【0046】
図5を用いて第2の実施の形態について説明する。
図5は、本実施の形態における基地局の動作概要を示したものである。まず、起動中の基地局は、自身に接続されている無線端末数が事前に設定されている閾値(Th)を超えると、通信中継装置の指示により「隠蔽」の動作モードに遷移する。その後、この基地局に接続されている無線端末は徐々に切断されていき最終的に接続されている無線端末数が0となると、通信中継装置の指示により「停止」の動作モードとなる。そして、他の基地局に接続されている無線端末数が多くなってくると、当該他の基地局に対して通信中継装置が「隠蔽」の指示を出し、停止していた基地局に対しては「起動」指示を出して再び「起動」の動作モードへと遷移する。
【0047】
以上のような「隠蔽」モードを用いた動作を
図6と
図7を用いて説明する。
図6は、「隠蔽」モードがない場合の例で、
図7は「隠蔽」モードがある場合の例である。
図6および
図7において、基地局は2つ(基地局#1、#2)とし、接続されている無線端末数が閾値(Th=9)を超えると起動中の基地局を「隠蔽」モードへと遷移させ、あるいは「停止」中の基地局を起動させることとする。
【0048】
まず、時刻T1において、基地局#1は「停止」し、基地局#2は「起動」しており、2つの基地局に接続されている無線端末は0であるとする。ここで、T1からT2へと時刻が経過することにより、10台の無線端末が基地局#2に接続される。ここで、閾値(Th)は9であるため、
図6では基地局#2が「起動」状態のまま基地局#1も「起動」される。一方、
図7では、基地局#2が「隠蔽」モードへと遷移するとともに基地局#1が「起動」される。
【0049】
次に、時刻がT2からT3へと経過すると、
図6と7の両方において、基地局#1に4台の無線端末が新規に接続され、基地局#2から8台の無線端末が切断される。その後、時刻がT3からT4へと経過すると、
図6では2台の無線端末が基地局#2へと新規に接続を行い、
図7では基地局#2が「隠蔽」モードで、接続を希望する無線端末から存在が見えないため2台の無線端末は基地局#1と新規に接続を行う。
【0050】
そして、時刻がT4からT5へと経過すると、
図6と
図7の両方で、基地局#1に新規に無線端末が3台接続し、基地局#2から2台の無線端末が接続を切断したとする。この場合、時刻T5において基地局#1と基地局#2に接続されている合計の無線端末台数は
図6と
図7でともに9台であるが、
図6では接続台数が0である基地局は存在しないが、
図7では基地局#2の接続台数が0になる。
【0051】
このように、基地局の動作モードに「隠蔽」モードを導入することにより、新規に接続する無線端末の接続先を限定し、接続台数が0の基地局が存在する確率を向上させ、スリープによる低消費電力効果を高めることが可能となる。
【0052】
本実施の形態において、各基地局の接続台数を基に通信中継装置が各基地局に「停止」、「起動」、「隠蔽」の指示を出す手順の一例を
図8に示す。本手順は、
図9のように、通信中継装置21に接続されているn台の基地局30−1〜30−nのうち1台だけを「起動」状態とし、残りのn−1台は「停止」状態か「隠蔽」状態とするための手順例である。
【0053】
まず初めに、通信中継装置21は、基地局#n(30−n)のみを起動させる(S1)。次に、通信中継装置21は、接続台数が0でかつ隠蔽中の基地局がないかを、各基地局30−1〜30−nから報告されてくる制御パケットにより確認する(S2)。該当する基地局が有る場合、通信中継装置21は該当基地局に「停止」の指示を記載した制御パケットを送信し(S3)、S2に戻る。
【0054】
該当する基地局がない場合、通信中継装置21は各基地局30−1〜30−nから送信されてくる接続された端末数の情報から、起動中の基地局の接続端末数が事前に設定した閾値(Th)より大きいかどうかを判定する(S4)。該当する基地局がない場合、S2の手順へ戻る。該当する基地局が有る場合は、該当基地局に「隠蔽」を指示する制御パケットを送信する(S5)。そして、「停止」状態の基地局があるかを確認し(S6)、該当する基地局が有る場合は、該当基地局の少なくとも1つに「起動」の指示を記載した制御パケットを送信してからS2に戻り(S7)、該当する基地局がない場合は何もせずにS2へと戻る。
【0055】
本実施の形態では、「隠蔽」状態の基地局が「停止」状態を経て「起動」状態へと遷移する例を示したが、構成はこれのみに限らない。たとえば、「隠蔽」状態の基地局が「起動」状態へと遷移するように、通信中継装置が指示を出してもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、接続台数が事前に設定された閾値を超えた基地局に対して「隠蔽」の指示を記載した制御パケットを送信する例を示したが、「隠蔽」の指示を出す判定基準はこれに限られない。たとえば、複数の基地局の接続台数の合計値が事前に設定された閾値を超えた場合に、接続されている台数が最も多い基地局に対して「隠蔽」の指示を出すようにしてもよい。
【0057】
本実施の形態では、通信中継装置が各基地局から接続している端末数の情報を受信しその情報に基づき各基地局を停止、起動あるいは隠蔽すべきか判定する例を説明したが、各基地局から接続されている全端末のトラヒック量例えば送受信しているパケット数の情報を受信し、その情報に基づき停止、起動あるいは隠蔽すべきか判断するようにしてもよい。
【0058】
例えば、上述した手順例では、起動中の基地局の接続端末数が事前に設定した閾値(Th)より大きい場合は、該当基地局に「隠蔽」を指示する制御パケットを送信し、停止中の基地局に「起動」を指示する制御パケットを送信したが、トラヒック量を用いた場合は、起動中の基地局のトラヒック量例えばパケット量が事前に設定した閾値(Th)より大きい場合は、該当基地局に「隠蔽」を指示する制御パケットを送信するとともに、停止中の基地局に「起動」を指示する制御パケットを送信する例が考えられる。
【0059】
また、トラヒック量を用いた場合でも、複数の基地局におけるトラヒック量の合計が事前に設定された閾値を超えた場合に、トラヒック量が最も多い基地局に対して「隠蔽」の指示を出すようにしてもよい。
【0060】
尚、このトラヒック量(パケット数)の情報は基地局が測定して通信中継装置に送信してもよいし、通信中継装置の通信中継部において自ら測定するようにしてもよい。
【0061】
(第3の実施の形態)
図10は、本発明の無線通信システムにおける通信中継網にPON(Passive Optical Network)システムを用いた場合の構成例を表す図である。
【0062】
上記、第1、第2の実施の形態では、スイッチ、サーバー、ルータなど、基地局に「直接」接続された通信中継装置が基地局のスリープを制御する構成例であった。しかしながら、本発明において基地局のスリープを制御する装置は、基地局に直接接続された装置に限られるわけではなく、基地局とインターネット等の基幹ネットワークの間の通信中継網に属する装置であればどの装置が行ってもよい。本実施の形態では、インターネットと基地局間を接続する通信中継網として、PONシステムを利用する場合の構成例を説明する。
【0063】
図10は無線通信システムの通信中継網としてPONシステムを利用した場合の構成例を示すたものである。PONシステムは、OLT(Optical Line Terminal)24と、複数(x)個のONU(Optocal Network Unit)と、OLT24と複数個のONUを1:xに接続する光ファイバ27および光スプリッタ26とにより構成される。本構成例では、OLT24に接続されるONUは2台(ONU#1、ONU#2)(25−1〜25−2)とする。OLT24にはインターネット等の基幹ネットワークが接続され、各ONUにはn台の基地局が接続される。
【0064】
本実施の形態において、各基地局のスリープを制御するのは、OLTでも各ONUでもよい。各ONUが制御する場合、第1の実施の形態や第2の実施の形態と同様の構成により制御が可能であるが、各ONUは自身に直接に接続された基地局に対してしかスリープの制御を行うことができない。つまり、各ONUが制御する場合は、各ONUに接続されたn台の基地局の消費電力を最適化する観点でしかスリープを制御することができない。一方、OLTが制御する場合には、自身の配下の複数のONUに接続された複数の基地局(2×n台)を同時に制御することが可能となる。
【0065】
これにより、OLT24配下の無線システム全体の消費電力を最適化するようにスリープを制御することが可能になり、第1の実施の形態や第2の実施の形態に比べて更なる低消費電力化を実現することが可能となる。OLTが全基地局のスリープを制御する場合には、各ONUは基地局から送信されてくる接続している端末数を通知する制御パケットをOLTへと転送し、一方、OLTからの停止、起動等を指示する制御パケットを宛先となっている基地局へと転送する。
【0066】
尚、第1及び第2の実施の形態と同様に、本実施の形態でも、各基地局から接続されている全端末のトラヒック量例えば送受信しているパケット数の情報を受信し、その情報に基づき停止、起動あるいは隠蔽すべきか判断するようにしてもよく、トラヒック量(パケット数)の情報は基地局が測定してOLTあるいはONUに送信してもよいし、OLTあるいはONUにおいて自ら測定するようにしてもよい。
【0067】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、複数の基地局における接続している端末数やトラヒック量等の状況を考慮しつつ、各基地局を停止、起動あるいは隠蔽すべきか判定できるので、複数の基地局に対するトラヒックの負荷分散をおこないつつ、無駄な電力を消費している無線基地局を停止し、無線通信システムの低消費電力化を図ることができる。