(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034434
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】着雪防止装置、及び着雪防止装置の取付工事方法
(51)【国際特許分類】
H02G 7/00 20060101AFI20161121BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
H02G7/00
H02G1/02
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-75976(P2015-75976)
(22)【出願日】2015年4月2日
(65)【公開番号】特開2016-197937(P2016-197937A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2016年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592031318
【氏名又は名称】富士古河E&C株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】神山 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】天沼 成一
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 広二
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 智行
(72)【発明者】
【氏名】木下 保一
(72)【発明者】
【氏名】竹村 真一
【審査官】
北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−183125(JP,A)
【文献】
特開平01−243320(JP,A)
【文献】
特開2013−150384(JP,A)
【文献】
特開2014−102957(JP,A)
【文献】
特開2014−234585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に立設された支柱と、該支柱から水平方向に突設された腕金主材及び該腕金主材を吊り支える腕金吊材をもつ腕金部とを有する架空送電線鉄塔の該腕金吊材の先端部分にのみ固定される固定部材と、
前記固定部材に脱着可能に取り付けられるカバー部材と、を備え、
前記固定部材は、前記腕金吊材を把持する爪部により該腕金吊材を挟み込む挟込部と、一端が第1の締結部を介して前記挟込部と締結し、他端が第2の締結部を介して前記カバー部材と締結するアングルとから構成され、
前記カバー部材は、前記固定部材に取り付けられた状態で、前記腕金部の先端部の上方を覆うように前記腕金部の先端部よりも外方にまで延在させて前記腕金部の先端部の着雪を防止することを特徴とする着雪防止装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、板材で形成されており、該板材は平板状であることを特徴とする請求項1記載の着雪防止装置。
【請求項3】
前記カバー部材の表面には、撥水材からなる撥水層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の着雪防止装置。
【請求項4】
前記固定部材は、前記カバー部材の傾斜角度を変更可能な可変機構を有することを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項記載の着雪防止装置。
【請求項5】
前記固定部材との接続部位を支点として前記カバー部材を揺動可能な揺動機構を更に有することを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1項記載の着雪防止装置。
【請求項6】
架空送電線鉄塔を構成する腕金の腕金先端部に固定される固定部材と、
前記固定部材に脱着可能に取り付けられるカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、板材で形成されており、該板材は山形状又はドーム型形状を有し、前記固定部材に取り付けられた時に、前記腕金先端部の上方を覆うことで、前記腕金先端部の着雪を防止することを特徴とする着雪防止装置。
【請求項7】
地面に立設された支柱と、該支柱から水平方向に突設された腕金主材及び該腕金主材を吊り支える腕金吊材をもつ腕金部とを有する架空送電線鉄塔の該腕金吊材の先端部分にのみ固定部材を設けるステップと、
前記腕金部の先端部の上方を覆うように前記腕金部の先端部よりも外方にまで延在させて前記腕金部の先端部の着雪を防止するカバー部材を、前記固定部材に対して脱着可能に取り付けるステップとを有することを特徴とする着雪防止装置の取付工事方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空送電線鉄塔を構成する腕金の着雪を防止する着雪防止装置、及びその取り付け工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
架空送電線鉄塔の部材に雪が積もると、雪の重みで鉄塔部材に設計以上の荷重が加わり、例えば部材が変形する虞がある。特に、鉄塔の支柱から突設した腕金部は、部材が組み合わされた構造であり、水平面や緩斜面が多くなるため、鉄塔の構造上、最も冠雪しやすい部分となる。このため、腕金部に冠雪した雪が大きな塊となり落下した場合、線下のビニルハウスの破損や家屋に被害を加える可能性がある。また、鉄塔の腕金部の先端が冠雪した場合は、碍子表面を伝って雪が下方向に向かって積もり続け、最終的には電力線近傍まで雪が繋がる状態になる。こうした状態になると、雪が導電性であるため、電力線に加わる電圧が雪を伝わって鉄塔と地絡してしまうことになる。
【0003】
このため、架空送電線鉄塔の管理者は、降雪時には鉄塔に昇塔し、例えば絶縁棒を使用して鉄塔の腕金に冠雪した雪を落とす作業を行っている。鉄塔は数百m毎に建設されており、かつ平坦な位置ばかりに建設されていないため、雪落とし作業はかなりの人件費を要する作業となる。また、他の着雪防止対策である融雪方式では、部材表面のみを融かすため、雪の空洞化ができてしまい十分な融雪効果をえることが難しい。
【0004】
さらに他の着雪対策として、例えば、特許文献1には、落雪板上に積もった雪が所定量に達すると、当該落雪板が開口することで雪が落下する鉄塔冠雪防止装置が記載されている。また、特許文献2には、ネット状カバーのメッシュ内に雪を絡めることで落雪を防ぐ落雪防止装置が記載されている。さらに、特許文献3には、鉄塔の腕金などを構成する山形鋼の内側空間部を埋めるように、合成樹脂発泡成形体を嵌め合わせる着氷雪防止構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−121550号公報
【特許文献2】特開2001−333523号公報
【特許文献3】特開2002−276197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された鉄塔冠雪防止装置は、落雪板が開口するのと同時に落雪するため、鉄塔直下のビニルハウスの破損や家屋に被害を加える可能性があり、積もった雪が塊として凍っていると落雪板が開口しても落雪しにくくなる虞もある。
【0007】
また、上記特許文献2に記載された落雪防止装置では、メッシュ内に雪を絡めるため、碍子表面を伝って雪が下方向に向かって積もり続けて、送電線が地絡する虞がある。
【0008】
さらに、上記特許文献3では、合成樹脂発泡成形体により腕金部分が傾斜面となるため、架空送電線鉄塔の腕金で作業をする作業者にとって足場が悪く、作業性が悪くなるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、架空送電線鉄塔で作業をする作業性を損なうことなく、降雪時には腕金先端部に着雪することを確実に防止可能な、着雪防止装置、及び着雪防止装置の取付工事方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る着雪防止装置は、
地面に立設された支柱と、該支柱から水平方向に突設された腕金主材及び該腕金主材を吊り支える腕金吊材をもつ腕金部とを有する架空送電線鉄塔の該腕金吊材の先端部分にのみ固定される固定部材と、前記固定部材に脱着可能に取り付けられるカバー部材と、を備え、
前記固定部材は、前記腕金吊材を把持する爪部により該腕金吊材を挟み込む挟込部と、一端が第1の締結部を介して前記挟込部と締結し、他端が第2の締結部を介して前記カバー部材と締結するアングルとから構成され、前記カバー部材は、前記固定部材に取り付けられた
状態で、前記腕金部の先端部の上方を覆う
ように前記腕金部の先端部よりも外方にまで延在させて前記腕金部の先端部の着雪を防止することを特徴とする。
また、本発明の好ましい態様に係る着雪防止装置は、前記カバー部材は、板材で形成されており、該板材は平板状であることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、カバー部材は固定部材に対して着脱可能なので、例えば保守作業時に容易に腕金部からカバー部材を取り外すことができ、腕金先端部で作業をする作業性を損なうことがないという利点がある。さらに、本発明によれば、カバー部材が固定部材に取り付けられると、腕金先端部の上方を覆うことで腕金先端部の着雪を防止することができる。つまり、本発明によれば、例えば、保守や管理作業時には架空送電線鉄塔での作業性を損なうことなく、降雪時には腕金先端部に着雪することを確実に防止することができる。
【0012】
本発明の好ましい態様に係る着雪防止装置は、前記カバー部材の表面には、撥水材からなる撥水層が形成されていることを特徴とする。本態様によれば、カバー部材の表面に撥水機能があるため、カバー部材の表面に着雪した雪が積雪することなく、カバー部材表面の雪を鉄塔下部へ滑り落とすことで、より確実に腕金先端部の着雪を防止することができる。
【0013】
本発明の好ましい態様に係る着雪防止装置は、前記固定部材が、前記カバー部材の傾斜角度を変更可能な可変機構を有することを特徴とする。本態様によれば、カバー部材の傾斜角度を変更可能とすることで、カバー部材に着雪した雪が積雪する前に、カバー部材表面の雪を鉄塔下部へ滑り落とすことができる。
【0014】
本発明の好ましい態様に係る着雪防止装置は、前記固定部材との接続部位を支点として前記カバー部材を揺動可能な揺動機構を更に有することを特徴とする。本態様によれば、カバー部材を揺動可能とすることで、カバー部材に積もった雪を、カバー部材の揺動によって強制的に振り落とすことができる。
【0015】
また、本発明に係る着雪防止装置は、架空送電線鉄塔を構成する腕金の腕金先端部に固定される固定部材と、前記固定部材に脱着可能に取り付けられるカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、板材で形成されており、該板材は山形状又はドーム型形状を有し、前記固定部材に取り付けられた時に、前記腕金先端部の上方を覆うことで、前記腕金先端部の着雪を防止することを特徴とする。
そして、本発明は、上記態様に限らず、上記態様に係る着雪防止装置の取付工事方法としても捉えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、架空送電線鉄塔で作業をする作業性を損なうことなく、腕金先端部に着雪することを確実に防止可能な、着雪防止装置、及び着雪防止装置の取付工事方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明が適用された着雪防止装置が取り付けられる架空送電線鉄塔を示す図である。
【
図2】架空送電線鉄塔の腕金部の先端部を示す図である。
【
図3】本発明が適用された着雪防止装置の構成を示す図である。
【
図4】カバー部材を固定する固定部材の具体的な構成を説明するための図である。
【
図5】カバー部材の具体的な構造を説明するための図である。
【
図6】カバー部材の変形例について説明するための図である。
【
図7】第1変形例に係る着雪防止装置の構成を説明するための図である。
【
図8】第1変形例に係る着雪防止装置において、他の形態に係るカバー部材の構成を説明するための図である。
【
図9】第2変形例に係る着雪防止装置の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態(以下、本実施形態という。)について具体例を示して説明する。本実施形態は、架空送電線鉄塔を構成する腕金の着雪を防止する着雪防止装置、及びその取り付け工事方法に関する。
【0019】
本発明が適用された着雪防止装置の具体的な説明に先立ち、着雪防止装置が取り付けられる架空送電線鉄塔について説明する。
【0020】
図1(A)に示すように、架空送電線鉄塔1は、地面Gに立設された支柱2と、支柱2から水平方向に突設された複数の腕金部3a、3b、3c、3dとから構成されている。
図1(A)では、腕金部3a、3b、3c、3dが、地面Gから垂直方向に向かって順番に設けられているが、腕金部の数は任意であってもよい。
【0021】
腕金部3a、3b、3c(以下、総称して腕金部3ともいう。)には、その先端部30に設けられた碍子4を介して、送電線が敷設される。具体的には、腕金部3a、3b、3cは、水平方向に配置された腕金主材31と、腕金主材31を吊り支える腕金吊材32とからそれぞれ構成されている。また、腕金部3の先端部30において、腕金主材31には碍子4が取り付けられており、碍子4を介して送電線が敷設されている。
【0022】
上記のような構成の架空送電線鉄塔1は、
図1(B)に示すように、降雪時に、腕金部3、支柱2に雪Sが積もることとなる。特に、腕金部3は、腕金主材31と腕金吊材32が組み合わされた構造であり、水平面や緩斜面が多いため、
図2から明らかなように、架空送電線鉄塔1の構造上、最も冠雪しやすい部分となる。
【0023】
ここで、
図2(A)は架空送電線鉄塔1の上方から下方を視点として腕金部3の先端部30を拡大視した上面図であり、
図2(B)は腕金部3の先端部30を拡大視した側面図であり、
図2(C)は腕金部3の先端部30から支柱2側に向けて腕金部3の先端部30を拡大視した図である。
【0024】
図2(A)乃至
図2(C)に示すように、腕金主材31(31a)と腕金主材31(31b)とは、先端部30側で組み合うように配置されている。同様にして、腕金吊材32(32a)と腕金吊材32(32b)は、先端部30側で組み合うように配置されている。また、腕金主材31および腕金吊材32は、先端部30において、接合部材33とそれぞれボルト締めにより固定されるため、
図2に示す隙間Dが形成されることとなる。このような隙間Dは降雪時に雪S
が詰まりやすいため、先端部30が冠雪しやすい。また、先端部30において、腕金主材31および腕金吊材32の表面が冠雪すると、碍子4表面を伝って雪が下方向に向かって積もり続けることとなる。そして、最終的には、碍子4下部に接続された電力線5近傍まで雪Sが繋がる虞がある。こうした状態になると、雪Sは導電性であるため、電力線5に加わる電圧が雪Sを伝わって、
図2(B)に示すように架空送電線鉄塔1から地面Gと地絡してしまうことになる。
【0025】
そこで、上述した腕金部3の先端部30に着雪することを確実に防止するため、
図3に示すように、本実施形態に係る着雪防止装置100は、次のような構成を備える。
【0026】
図3(A)は腕金吊材32に取り付けた着雪防止装置100を示す上面図であり、
図3(B)は着雪防止装置100を示す側面図であり、
図3(C)は先端部30から支柱2側を視点とした着雪防止装置100を拡大視した図である。
図3(A)乃至
図3(C)に示すように、着雪防止装置100は、固定部材110とカバー部材120とを備える。
【0027】
固定部材110は、腕金3の先端部30に固定される部材、具体的には腕金吊材32に固定される部材である。例えば腕金吊材32が山形鋼である場合には、固定部材110は、
図4に示すような構成を有する。ここで、
図4(A)は、腕金吊材32の断面方向を視点として固定部材110を示した図であり、
図4(B)は、腕金吊材32の長手方向を視点として固定部材110を示した図である。
図4(A)および
図4(B)に示すように、固定部材110は、腕金吊材32を挟み込む挟込部111と、L型アングル112と、ボルトとナットを1組とする合計2組の締結部113a、113bとから構成される。挟込部111は、腕金吊材32を2つ1組の爪部111a、111bで把持することで、固定部材110を腕金吊材32に固定する。L型アングル112は、一端が締結部
113aを介して挟込部
111と締結し、他端が締結部113bを介してカバー部材120と脱着可能に締結する。
【0028】
カバー部材120は、上述した固定部材110と脱着可能に取り付けられる部材であって、具体的には
図5に示すような構成を有する。ここで、
図5(A)はカバー部材120の側面図であり、
図5(B)はカバー部材120の裏面図である。カバー部材120は、
図5(A)および
図5(B)に示すように、固定部材110と脱着可能な合計4つの取付部122a、122b、122c、122d(総称して取付部122という。)からなる。具体的に、取付部122a、122bは、それぞれ固定部材110を介して腕金吊材32a、32bの先端部30側に取り付けられる。また、取付部
122c、122dは、それぞれ固定部材110を介して腕金吊材32a、32bの支柱2側に取り付けられる。また、各々の取付部122には、上述した固定部材110の締結部
113bと締結する穴1221が形成されている。
【0029】
また、カバー部材120は、
図5(B)に示すように、その表面に、撥水材からなる撥水層121が形成されている。具体的に、撥水層121は、例えば、撥水性塗料を塗布したり、撥水性表面処理を施したり、撥水性テープを貼り付けたりすることによって形成される。
【0030】
撥水性塗料としては、カバー部材表面にエポキシあるいはウレタン塗料を下塗りした後、ポリマー粉末を含有した塗料で塗装するものを用いることができる。例えば、NTTアドバンステクンロジ社製超撥水性塗料HIRECなどを用いることができる。撥水性表面処理とは、例えば、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)をカバー部材にコーティングしたものである。また、撥水性テープとしては、例えば、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)に粘着層を設けたテープを用いることができる。破断防止のため、ガラス繊維を複合させることにより、テープの耐劣化強度を向上させたものを用いてもよい。
【0031】
以上のような構成からなる着雪防止装置100は、カバー部材120が固定部材110に対して着脱可能なので、例えば保守作業時には作業者が、固定部材110からカバー部材120を取り外すことで、腕金3の先端部30での作業性を損なうことがないという利点がある。さらに、着雪防止装置100は、固定部材110に取り付けられたカバー部材120が腕金3の先端部30の上方を覆うことで、腕金3の先端部30の着雪を防止することができる。つまり、着雪防止装置100は、例えば、保守や管理作業時には架空送電線鉄塔1で作業をする作業性を損なうことなく、降雪時には腕金3の先端部30に着雪することを確実に防止することができる。
【0032】
また、着雪防止装置100は、カバー部材120の表面に撥水機能があるため、カバー部材120の表面に着雪した雪が積雪することなく、カバー部材120表面の雪を鉄塔下部へ滑り落とすことで、より確実に腕金3の先端部30の着雪を防止することができる。
【0033】
なお、カバー部材120は、
図3(C)に示したような平面上の平板に限らず、例えば
図6(A)に示すような山型状(略逆V字状)の板材を用いたり、
図6(B)に示すようなドーム型(半円形、略逆U字状)の板材を用いてもよい。山型状またはドーム型の板材を用いることで、雪がより滑り易く、カバー部材120に着雪しにくい点で好ましい。
【0034】
次に、
図7(A)および
図7(B)を参照して、第1変形例に係る着雪防止装置100aについて説明する。着雪防止装置100aは、固定部材130とカバー部材120とを備える。
図7(B)に示すように、固定部材130は、挟込部111と、ロット長を可変可能な可変機構を有するアングル132a、132bと、ボルトとナットとを1組とする合計4組の締結部133a、133b、133c、133dとから構成される。アングル132aは、L型アングルであって、一端が締結部133aを介して挟込部111と締結し、他端が締結部133c、133dを介してアングル132bと締結する。アングル132bは、ストレート型のアングルであって、一端が締結部133c、133dを介してアングル132aと締結し、他端が締結部133bを介してカバー部材120に取り付けられる。このような構成からなる固定部材130は、締結部133cの締結位置を調整することにより、アングル132a、132b全体でのロット長を変化させることができる。このようにして腕金吊材32表面からのカバー部材120の高さを調整することで、カバー部材120の傾斜角度を変更することができる。つまり、アングル132a、132bおよび締結部133c、133dは、これら部材全体で傾斜角度可変機構13aとして機能する。
【0035】
上記構成からなる着雪防止装置100aは、傾斜角度可変機構13aにより、カバー部材120の傾斜角度を変更可能とすることで、カバー部材120を所望とする傾斜面で取り付けることができる。つまり、カバー部材120を急斜面にすることができることから、カバー部材120に着雪した雪が大量に積もる前に、カバー部材120表面から架空送電線鉄塔1の下部へ滑り落とすことができる。
【0036】
また、第1変形例に係る着雪防止装置100aでは、カバー部材120の支柱2側を立ち上げることで、傾斜角度を高くしている。このため、支柱2側において、カバー部材120と腕金吊材32と隙間D1が大きくなる。そこで、
図8に示すように、カバー部材120の支柱2側の端部1201に、当該隙間D1を埋める被覆部120aをカバー部材120に形成してもよい。カバー部材120の支柱2側の端部1201に被覆部120aを形成することにより、腕金吊材32との隙間D1を埋めることができ、支柱2から先端部30側へ降ってくる雪の浸入を防ぎ、よりいっそう先端部30での着雪を防止することができる。
【0037】
次に、
図9(A)乃至
図9(C)を参照して、第2変形例に係る着雪防止装置100bについて説明する。第2変形例に係る着雪防止装置100bは、2つの固定部材110と、固定部材110に対して脱着可能に取り付けられるカバー部材120と、固定部材110との接続部位を支点としてカバー部材を揺動させる揺動機構140とを備える。2つの固定部材110は、同一直線状に並び、それぞれ腕金吊材32a、32bに固定される。
【0038】
揺動機構140は、カバー部材120と固定部材110との接続部位に取り付けられる弾性部材(バネ部材)である。より好ましくは、揺動機構140は、固定部材110とともに、カバー部材120の腕金3の先端部30側とは少し反対側の位置に固定する。このような位置に固定部材110と揺動機構140とを取り付けることで、通常はカバー部材120の姿勢をほぼ水平状態にして、
図9(B)に示すように、カバー部材120に一定の冠雪Sが載った場合、その重さにより、揺動機構140がカバー部材120を水平に保つ力が解けることとなる。そして、カバー部材120が腕金3の先端部30方向にシーソーのように傾くことでカバー部材120表面の雪が滑り落ちることとなる。続いて、
図9(C)に示すように、カバー部材120表面の雪が落ちた後は、揺動機構140であるバネの復元力により、カバー部材120が、また元の位置に戻ることとなる。
【0039】
また、腕金吊材32には、カバー部材120の接触部に、スプリング141、142を配置することが、衝撃時の振動を加速させるとともに、各部材への損傷を軽減させる点で好ましい。
【0040】
以上のような構成からなる第2変形例に係る着雪防止装置100bは、揺動機構140によってカバー部材120を揺動させることで、カバー部材120の鉄塔支柱2側に積もった雪を、カバー部材120の腕金3の先端部30に強制的に移動させて振り落とすことができる。
【符号の説明】
【0041】
1 架空送電線鉄塔
3、3a、3b、3c、3d 腕金
30 先端部
110、130 固定部材
120 カバー部材