(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034592
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】表面電位測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 29/12 20060101AFI20161121BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20161121BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
G01R29/12 Z
G01N27/00 Z
G01N27/22 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-107301(P2012-107301)
(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-234907(P2013-234907A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年3月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佳詞
【審査官】
續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−060984(JP,A)
【文献】
特開2008−057985(JP,A)
【文献】
特開2010−066688(JP,A)
【文献】
特開2001−217301(JP,A)
【文献】
特開2007−047015(JP,A)
【文献】
特開平09−145764(JP,A)
【文献】
特開2005−241375(JP,A)
【文献】
特開平05−243362(JP,A)
【文献】
特開平08−129043(JP,A)
【文献】
特開昭61−235755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/12
G01N 27/00
G01N 27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空隔壁に設けられる、電界によって誘電分極する絶縁性部材と、前記絶縁性部材を介して、前記真空隔壁内側に存する測定対象物に対峙するセンサ部を有する表面電位計とを備え、前記センサ部により測定対象物の表面電位を測定するとき、絶縁性部材表面の帯電を無効にするキャンセル手段を更に備え、前記キャンセル手段は、前記測定対象物の表面電位の測定に先立って、前記絶縁性部材表面を除電する除電装置であることを特徴とする表面電位測定装置。
【請求項2】
真空隔壁に設けられる、電界によって誘電分極する絶縁性部材と、前記絶縁性部材を介して、前記真空隔壁内側に存する測定対象物に対峙するセンサ部を有する表面電位計とを備え、前記センサ部により測定対象物の表面電位を測定するとき、絶縁性部材表面の帯電を無効にするキャンセル手段を更に備え、前記キャンセル手段は、前記測定対象物を前記センサ部に向けて所定速度でかつ所定距離で近接移動させたときの移動前後の測定値の差から前記絶縁部材表面の帯電量を求めることで前記絶縁性部材表面の帯電が前記表面電位の測定に影響することを無効にすることを特徴とする表面電位測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の表面電位測定装置であって、前記センサ部が振動容量式のものであり、前記真空隔壁に着脱自在に装着されているものにおいて、
前記真空隔壁の振動を測定する振動測定装置を備え、前記振動測定装置で測定した測定値が所定の範囲を超えると、表面電位の測定を無効するように構成したことを特徴とする表面電位測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面電位測定装置に関し、より詳しくは、真空隔壁越しにこの真空隔壁内側に存する測定対象物の表面電位を測定することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、シリコンウエハ等の処理すべき基板に対して成膜処理やエッチング処理などの各種の処理を真空雰囲気で一貫して行うことがある。このような処理を行う真空処理装置として、搬送ロボットを配置した中央の搬送室を囲うようにして、基板の搬出、搬入を行うロードロック室と複数の処理室とを配置し、搬送ロボットによりロードロック室に投入した基板を各処理室にまたは各処理室の相互間で基板を搬送するように構成したもの(所謂、クラスターツール)が知られている。
【0003】
ここで、上記真空処理装置を用いて基板に各種処理を施す際、各処理室内で行われる処理によって基板自体が帯電したり、また、搬送ロボットのロボットハンド等の装置の構成部品が帯電する場合があり、基板が帯電すると、基板の円滑な搬送を妨げたり、基板自体にダメージを与えたりすることがある。例えば、基板や搬送ロボットのロボットハンドの帯電により基板がロボットハンドに貼り付くことがある。基板の貼り付きに起因して搬送異常が発生(基板の割れ等)すると、真空処理装置での生産を停止し、メンテナンス(基板の回収、処理室内のクリーニング)する必要が生じ、量産性を著しく損なう。このため、基板や構成部品の表面電位が、上記搬送異常に至る電位となっていないかを常に監視し、如何に搬送異常の発生を未然に防ぐかが重要となる。
【0004】
以上のことから、表面電位計を用いて、帯電し得る基板や構成部品の電位を常に測定しておくことが考えられる(例えば、特許文献1参照)。然し、このような表面電位計のセンサ部を、放出ガスの影響を受ける真空雰囲気中の処理室内や、処理によっては高温になったり、または、プラズマ放電させたりしている処理室内に設置することは事実上できない。そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ね、測定対象物と表面電位計のセンサ部との間のインピーダンスを大気雰囲気で校正し、測定対象物とセンサ部間にガラスなどの電界によって誘電分極する高抵抗の絶縁性部材を介在させて測定すれば、表面電位計での測定値は変化するものの、表面電位の有無が測定できることの知見を得た。そして、測定値は、ガラスの表面電位のからの電界が複合した形でセンサ部に到達することで変化、つまり、絶縁性部材の帯電の影響で変化することを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−97121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、真空中に存する測定対象物の表面電位を効果的に測定することができるようにした表面電位測定装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の表面電位測定装置は、真空隔壁に設けられる、電界によって誘電分極する絶縁性部材と、前記絶縁性部材を介して、前記真空隔壁内側に存する測定対象物に対峙するセンサ部を有する表面電位計とを備え、前記センサ部により測定対象物の表面電位を測定するとき、
絶縁性部材表面の帯電を無効にするキャンセル手段を更に備えるものにおいて、前記キャンセル手段は、前記測定対象物の表面電位の測定に先立って、前記絶縁性部材表面を除電する除電装置であることを特徴とする。
また、前記キャンセル手段は、前記測定対象物を前記センサ部に向けて所定速度でかつ所定距離で近接移動させたときの移動前後の測定値の差から前記絶縁部材表面の帯電量を求めることで前記絶縁性部材表面の帯電が前記表面電位の測定に影響することを無効にすることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、真空隔壁に設けた絶縁性部材の外側(大気側)に表面電位計のセンサ部を配置し、このセンサ部に対峙する真空隔壁内側(例えば、真空雰囲気中)に測定対象物を位置させる。そして、表面電位計により測定対象物表面の帯電電位を測定する。このとき、キャンセル手段により絶縁性部材表面の帯電(の影響)を無効にするため、測定対象物の表面電位を効果的に測定することが可能になる。ここで、大気から10
−2Paまでの圧力領域において、基板や構成部品などの帯電が問題になる場合、その帯電量によらず、例えばイオナイザーを絶えず稼働させて除電することができるため、表面電位計にて基板や構成部品などの表面電位を常時監視する必要性は乏しい。それに対して、従来、効果的な除電方法が確立されていない10
−2Paより低い圧力では、本発明を適用して、基板や構成部品などの帯電を監視すれば、帯電量が所定の量を超えるプロセスや基板においては、搬送トラブルに至る前にその可能性を予測することができる。そして、所定の帯電量を超える場合には所定の帯電量以下になるまで搬送を停止したり、既知の除電処理を実施して所定の帯電量以下になっていることを確認することができ、有利である。
また、キャンセル手段は、測定対象物の表面電位の測定に先立って、絶縁性部材表面を除電する除電装置とし、測定対象物の電界のみを選択的に測定する構成とすれば、絶縁性部材表面の帯電を物理的に無効にした状態で表面電位の測定が可能となる。
【0009】
本発明において、
前記キャンセル手段は、
前記測定対象物が存在しない状態で
前記絶縁性部材越しに電界を測定したときの比較値と、
前記測定対象物が存する状態で
前記絶縁性部材越しに電界を測定したときの実測値との差から
前記絶縁性部材表面の帯電量を求めることで前記絶縁性部材表面の帯電
が前記表面電位の測定に影響することを無効にするものであれば、測定対象物の電界のみを選択的に測定できる。
【0011】
更に、本発明において、
真空隔壁に設けられる、電界によって誘電分極する絶縁性部材と、前記絶縁性部材を介して、前記真空隔壁内側に存する測定対象物に対峙するセンサ部を有する表面電位計とを備え、前記センサ部により測定対象物の表面電位を測定するとき、絶縁性部材表面の帯電を無効にするキャンセル手段を更に備え、前記キャンセル手段は
、前記測定対象物を
前記センサ部に向けて
所定速度でかつ所定距離で近接
移動させたときの
移動前後の測定値の差から前記絶縁部材表面の帯電量を求めることで前記絶縁性部材表面の帯電が前記表面電位の測定に影響することを無効に
することが好ましい。ここで、ガラスなどの表面電位は、その高抵抗な特性によって表面電位の低下が遅いため、ガラスの表面電位の変化に対して、
速い速度で
測定対象物を前記センサ部に向けて近接移動させて測定値の差分値を取れば、ガラスの表面電位の変化の影響をなくして表面電位
を測定
できる。
【0012】
なお、センサ部が振動容量式のものであり、真空隔壁に着脱自在に装着されている場合、真空隔壁の振動を測定する振動測定装置を備え、この振動測定装置で測定した測定値が所定の範囲を超えると、表面電位の測定を無効するように構成することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(A)及び(B)は、本発明の表面電位測定装置を組み込んだ真空処理装置の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、測定対象物をロボットハンドまたはガラスやシリコンウエハ等の基板とし、この測定対象物が真空処理装置内に存する状態でその表面電位を測定する場合を例に基板電位測定装置の実施形態について説明する。なお、以下において、
図1(B)を基準に、上、下等の方向を示す用語を用いるものとする。
【0015】
図1を参照して、Mは、真空処理装置であり、真空処理装置Mは、公知の構造を有する搬送ロボット1を備えた中央の搬送室TCを備え、この搬送室TCを囲うようにして、測定対象物たる基板Wの搬出、搬入を行うロードロック室L1,L2と4個の処理室A〜DとがゲートバルブGVを介して配置されている。搬送室TC、ロードロック室L1,L2及び4個の処理室A〜Dには、図外の真空ポンプが接続され、その内部を所定圧力に減圧、保持できるようにしている。また、ロードロック室L1,L2及び各処理室A〜Dの内部には、基板Wの受け渡しを行う基板ステージStが夫々設けられている。
【0016】
搬送ロボット1は、例えば、フロッグレッグ式のものであり、図外のモータで夫々回転駆動される、同心に配置された回転軸11a,11bと、両回転軸11a,11bに夫々連結されたロボットアーム12a,12bと、両ロボットアーム12a、12bの先端に図示省略のギアボックスを介して連結されたロボットハンド13とで構成され、両回転軸11a,11bの回転角を適宜選択することで、ロボットアーム12a,12bが旋回または伸縮する。また、回転軸11a,11bには昇降機構14が設けられ、ロボットハンド13を搬送室TCまたは処理室A〜D内で上下動させることができるようにしている。ロボットハンド13としては、基板Wを載置して保持することができるものであれば、特に制限されるものではなく、例えばアルミナ製で平面視フォーク状の輪郭を持つフィンガー部を有するものが利用できる。なお、本実施形態では、旋回方向に180度の間隔で2個のロボットハンド13を備えたものを例としているが、搬送ロボット1は上記に限定されるものではなく、例えばスカラ型のものでもよい。そして、搬送ロボット1及びゲートバルブGVの作動、真空ポンプの作動や、処理室等内に存する構成部品の作動が、CPUやメモリー等を備えた制御手段2により統括して制御されるようにしている。
【0017】
ところで、上記真空処理装置Mを用いて基板Wに各種処理を施す際、処理室A〜D内で行われる処理によって基板W自体が帯電したり、また、アルミナ製のロボットハンド13が帯電する場合があり、基板Wやロボットハンド13が帯電すると、基板Wとロボットハンド13とが貼り付き、搬送異常が発生することがある。このため、基板Wやロボットハンド13の表面電位が、搬送異常に至る電位となっていないかを常に監視することが好ましい。
【0018】
そこで、搬送室TCのロードロック室L1,L2及び各処理室A〜Dとの連結箇所付近であって、搬送室TCを画成する上隔壁TC1に、電界によって誘電分極する絶縁性部材3を設けると共に、絶縁性部材3の上方に表面電位計4のセンサ部41を配置することとした。絶縁性部材3としては、ガラス、石英またはアルミナ等のセラミックス製のものを用いることができ、本実施形態では、絶縁性部材3として、透明なガラス製のものを用い、上隔壁TC1に開設した透孔の段差部TC2にOリング5を介してセットした後、その上方から上隔壁TC1にねじBによりねじ止めされる金属製で平面視環状の押え板6で固定され、絶縁性部材3が覗き窓としての役割も果たすようにしている。なお、絶縁性部材3の位置は、上記に限定されるものではなく、測定対象物W,13がセンサ部41直下を横切る箇所であればよい。
【0019】
表面電位計4は、絶縁性部材3上面及び下面、並びに、基板Wまたはロボットハンド13のセンサ部41との対向面たる上側表面の電荷によって生ずる電界を検出してその表面電位を測定するものである。表面電位計4のセンサ部41は、絶縁性部材3からの距離が一定になるように押え板6で保持させたフレーム7に取り付けられている。この場合、センサ部41の下端が、押え板6の内径と比較して、センサ部41の下端と絶縁性部材3上面との間の距離より小さくなる範囲であり、かつ、センサ部41の下端と絶縁性部材3との間の距離が、押え板6の内径の2倍よりも小さくなるように設置され、これにより、効果的に電荷によって生ずる電界を検出することができる。なお、表面電位計4としては、振動容量式のもの等、公知の構造を備えるものが利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、表面電位計4にて電位を測定するのに先立っては、例えば測定対象物W,13に既知の電圧を適宜与えて正確な電位検出が可能になるように予め校正が行われる。以下、測定対象物をロボットハンド13とした場合の表面電位計4による電位測定を説明する。
【0020】
先ず、搬送室TCを所定真空度に真空引きした後、絶縁性部材3を臨むセンサ部41直下の位置にロボットハンド13が存在しない状態で、絶縁性部材3越しにこの絶縁性部材3を透過する電界を測定する。この測定した値を制御手段2に出力し、比較値とする。次に、絶縁性部材3を臨むセンサ部41直下の位置にロボットハンド13を水平移動してこのセンサ部41に対峙させ、ロボットハンド13が存する状態で絶縁性部材3越しに測定対象物表面と絶縁性部材表面との電界が複合したものを測定し、この測定した値を制御手段2に出力し、実測値とする。そして、制御手段2により比較値と実測値との差を求め、この差が実質的にロボットハンド13の電界のみの値となり、この値からロボットハンド13の表面電位が測定され、例えば制御手段2に付設した図外のディスプレイ等に表示できるようになっている。この場合、制御手段2により比較値と実測値との差を求める処理が本実施形態のキャンセル手段を構成し、絶縁性部材3表面の帯電を実質的に無効にして表面電位の測定が可能となる。
【0021】
上記実施形態によれば、キャンセル手段により絶縁性部材3表面の帯電を無効にしてロボットハンド13の電界のみを選択的に測定することで、ロボットハンド13の表面電位を効果的に測定することが可能になる。なお、測定した表面電位が、基板Wの貼り付き等の搬送異常が発生し得る表面電位であった場合、公知の方法で除電すれば、搬送異常の発生を未然に防止できる。このような除電としては、例えば、搬送室TCに図外の除電室を連結しておき、例えば、基板Wの除電に際しては、除電室に基板Wを一旦搬送し、この除電室に所定ガスを導入して室内圧力を10
−2Pa以上にした後、基板Wに対してUV照射して基板Wの除電を行うことが挙げられる。
【0022】
次に、本発明の効果を確認するために次の実験を行った。表面電位計4としてSMC社製のものを用い、センサ部41を、ガラス製の絶縁性部材3の中心線上に位置させ、その下端と絶縁性部材3との間隔を10mmに設定して配置した。なお、表面電位計4は、予め大気中で適宜校正した。そして、搬送室TCの圧力が10
−4Paの状態で、センサ部41を臨む絶縁性部材3直下に対してロボットハンド13を進退させ、センサ部41直下の位置を絶縁性部材3越しにその表面電位を測定し、その結果を
図3に示す。
【0023】
これによれば、絶縁性部材3を臨むセンサ部41直下の位置にロボットハンド13が存在しない状態では、約10V程度の電位であり、これが絶縁性部材3表面の電位である。そして、センサ部41直下の位置までロボットハンド13を移動すると、約25Vまで表面電位が上昇し、次第に真空雰囲気下で放電することで電圧降下する。次に、ロボットハンド13をセンサ部41直下の位置から退避させると、更に約5Vまで電圧降下し、これが、そのときの絶縁性部材3の表面電位となる。そして、センサ部41直下の位置にロボットハンド13を再度移動すると、約20Vまで表面電位が上昇する。以上より、センサ部41直下の位置でのロボットハンド13の有無による電位差(d1、d2)がロボットハンド13の電位を示すことが確認される。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。上記実施形態では、所謂クラスターツールの真空処理装置Mにて基板Wやロボットハンド13の表面電位を測定する場合を例に説明したが、測定対象物や真空処理装置の形態は上記のものに限定されるものではなく、例えばインライン式の真空処理装置において基板を搬送するキャリアの表面電位を測定するような場合に本発明を適用することができる。また、上記真空処理装置Mでは、例えばゲートバルブGVの開閉を行うような場合には装置の振動が大きい。このため、センサ部41が振動容量式のものであり、真空隔壁に着脱自在に装着されている場合、真空隔壁の振動を測定する、加速度センサ等の振動測定装置を設け、この振動測定装置で測定した測定値が所定の範囲を超えると、表面電位の測定を無効にしたり、ゲートバルブGV等の振動発生部品が静止した状態で測定するように構成することが好ましい。
【0025】
また、上記実施形態では、キャンセル手段として制御手段2で処理を行うものを例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、キャンセル手段を、測定対象物W,13の表面電位の測定に先立って、絶縁性部材3表面を除電する除電装置とし、この除電装置により絶縁性部材2表面の帯電を物理的に無効にした状態で表面電位を測定するようにしてもよい。この場合、除電装置としては、公知の構造を有するイオナイザーを用いることができ、
図2中に仮想線で示すように、イオナイザー8を押え板6で保持させたフレーム81に取り付けておけばよい。なお、除電装置としては、定期的にアルコールをスプレーする塗布装置や、紫外線を照射する紫外線照射装置などを用いることもできる。
【0026】
また、測定対象物たるロボットハンド13とセンサ部41との距離を、装置設計上のセンサ位置とロボットハンド13の位置情報から求め、予め上記距離とロボットハンド13の電位の関係を求めた関係式に代入することによって、1条件目の表面電位を求めた後、ロボットハンド13を高さ方向に動作させて同様に高さ情報を関係式に代入することで、2条件目の表面電位を求め、発生した差分値からガラスの帯電量としてもよい。この場合、センサ部41に対してロボットハンド13を絶縁性部材3に対して近接または離間するように移動させる昇降手段(移動手段)14がキャンセル手段の一部をなし、ロボットハンド13をセンサ部41に向けて近接させたときの測定値の変化から絶縁性部材3表面の帯電が実質的に無効にできる。なお、ガラスなどの表面電位は、その高抵抗な特性によって表面電位の低下が遅いため、ガラスの表面電位の変化に対して、速い速度で上記可動部を動作させて測定値の差分値を取れば、ガラスの表面電位の変化の影響をなくして表面電位の測定が可能となる。
【符号の説明】
【0027】
W…基板(測定対象物)、13…ロボットハンド(測定対象物)、14…昇降手段(キャンセル手段)、2…制御手段(キャンセル手段)、3…絶縁性部材(ガラス窓)、4…表面電位計、8…イオナイザー(キャンセル手段)、M…真空処理装置、TC…搬送室、TC1…上隔壁(真空隔壁)。