(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方,これらのチーズやパンのような食品類の間に添加物質を挟むためには,食品類を2つに切断する工程を行うことが必要である。しかしながら,食品類自体は軟らかいものであるため,機械的に切断すると,食品類が変形して切断加工後の製品の外観が損なわれる恐れがあり,食品類の形状を保ちながら,食品類を機械的に切断することは困難であった。このため,以前から,食品類を切断する作業は,人手によって行わざるを得ないものであったが,この作業を人手によって行う場合,長時間連続的に大量の食品類を切断し続けることや,切断する作業を衛生環境の保たれた状態で行うことが非常に困難となっていた。
【0006】
さらに,例えば,人手によって食品類を水平に切断し,その間に添加物質を添加する場合,切断された食品類の上部と下部の位置を正確に重ね合わせる作業を効率的に行うことが困難であった。例えば,食品類を水平に切断する作業,添加物質を添加する作業,及び切断した食品類を重ね合わせる作業を,すべて人手によって行うこととすると,生産効率の低下を招く恐れがあった。また,例えば,人手によって食品類を水平に切断する作業を行った後,加工機械を利用して,添加物質を添加する工程と,切断した食品類を重ね合わせる工程を行う場合,食品類の上部と下部に位置ずれが生じ,良品出荷率の低下を招く恐れがあった。
【0007】
このため,現在では,食品類の外観を損なうことなく,食品類を機械的に切断し,切断した食品類の間に添加物質を効率的に添加することのできる切断加工装置,及び食品類の製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで,本発明の発明者は,上記の従来発明の問題点を解決する手段について鋭意検討した結果,食品類の左部と右部を,それぞれ別個のチャック部によって保持した状態で,ワイヤなどの切断部により垂直に切断することにより,食品類の外観を損なうことなく,食品類を機械的に切断することができるという知見を得た。さらに,食品類の切断後,食品類の左部及び/又は右部の切断面に添加物質を塗布し,その後に,左右のチャック部の位置合わせを行なって,食品類の左部と右部を重ね合わせることにより,切断した食品類の間に添加物質を効率的に添加することができるという知見を得た。そして,本発明の発明者は,上記の知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。
具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0009】
本発明の第1の側面は,食品類を切断して加工する切断加工装置に関する。
本発明の切断加工装置は,食品類の切断点よりも左部を保持する左方チャック部3と,食品類の切断点よりも右部を保持する右方チャック部4と,食品類を切断する切断部6と,食品類に対して添加物質を添加する添加部7と,食品類の切断面を合わせる合せ部8と,を有する。
切断部6は,食品類が左方チャック部3及び右方チャック部4によって保持された状態で,食品類を左部と右部とに垂直に切断する。
添加部7は,左方チャック部3により保持されている食品類の左部,及び右方チャック部4により保持されている食品類の右部の両方,又はいずれか一方の切断面に対して添加物質を添加する。
合せ部8は,食品類の切断面に前記添加物質が添加された後,左方チャック部3に保持されている食品類の左部の切断面と,右方チャック部4に保持されている食品類の右部の切断面とを合わせる。
【0010】
上記の構成のように,本発明の切断加工装置は,食品類を切断し,切断面に添加物質を添加することで,添加物質が挟まれた食品類を得ることができる。また,本発明の切断加工装置は,食品類の左部と右部を,右方チャック部3と左方チャック部4のそれぞれによって保持した状態で,切断部6によって切断するものであるため,例えば,表面熟成軟質チーズのような軟らかい食品類であっても,その外観を崩すことなく切断することができる。
特に,本発明では,切断部6によって,食品類に対して垂直方向の切れ目を入れて,食品類を左右に分割する。このように,例えば,切断部6がワイヤである場合のように,ワイヤを垂直方向に張設することにより,水平方向に張設するよりも,ワイヤに生じる歪みをなくすことができる。すなわち,ワイヤを水平方向に張設した場合,重力の影響によって,その中央付近に弛みが生じてワイヤ全体として緩やかな円弧状を形成し易いが,ワイヤを垂直方向に張設することにより,ワイヤに弛みが生じることを防止し,ワイヤ全体をほぼ直線状とすることができる。従って,本発明のように,切断部6によって食品類を垂直に切断することにより,食品類の切断面が美麗なものとなる。
【0011】
本発明の切断加工装置において,左方チャック部3及び右方チャック部4の移動を制御する移動制御手段5を,さらに有することが好ましい。
この場合,移動制御手段5は,食品類を保持する左方チャック部3及び右方チャック部4を,切断部6が位置する方向に移動させる。
切断部6は,移動制御手段5により移動される左方チャック部3及び右方チャック部4に保持された食品類が押し付けられることにより,切断点において食品類を左部と右部とに切断する。
移動制御手段5は,切断部6により食品類が切断された後,左方チャック部3及び右方チャック部4を移動させて,左方チャック部3により保持されている食品類の左部の切断面と,右方チャック部4により保持されている食品類の右部の切断面とを分離すると共に,左方チャック部3及び右方チャック部4を添加部7が存在する方向に移動させる。
添加部7は,移動制御手段5により移動された左方チャック部3により保持されている食品類の左部,及び右方チャック部4により保持されている食品類の右部の両方,又はいずれか一方の切断面に対して添加物質を添加する。
合せ部8は,食品類の切断面に対して添加物質が添加された後,左方チャック部3により保持されている食品類の左部の切断面と,右方チャック部4により保持されている食品類の右部の切断面とを対面させて,食品類の左部の切断面と前記右方チャック部4に保持されている食品類の右部の切断面とを合わせる。
【0012】
上記の構成のように,左方チャック部3と右方チャック部4とで食品類の左右を保持したまま,ワイヤやブレードなどの切断部6に食品類を押し付けて切断することで,例えば,表面熟成軟質チーズのような軟らかい食品類であっても,その外観を崩すことなく容易に切断することができる。また,食品類を左右に切断した後,食品類の左部及び/又は右部の切断面に対して添加物質が添加することで,食品類の切断工程と添加物質の添加工程を一連の流れで行うことができる。従って,本発明によれば,左部と右部とに分断された食品類の間に,効率的に(流れ作業的に)添加物質を添加することができる。
【0013】
本発明の切断加工装置において,左方チャック部3及び右方チャック部4は,食品類の左部及び/又は右部に当接する複数の爪部材31,41を有し,複数の爪部材31,41を食品類の左部及び/又は右部の外表面に当接させることにより,食品類の左部及び/又は右部を保持することが好ましい。
【0014】
上記の構成のように,複数の爪部材31,41によって食品類を保持することにより,軟らかく崩れやすい食品類であっても,その形状を崩すことのない適切な押圧力で保持することができる。また,複数の爪部材31,41で食品類の外表面を保持することで,食品類を左方チャック部3及び右方チャック部4から取り外す際に,食品類の外表面が左方チャック部3や右方チャック部4に結着し,剥がれ難くなるような事態を防止できる。
【0015】
本発明の切断加工装置において,左方チャック部3及び右方チャック部4は,爪部材31,41と,ベース部材32,42と,チャック駆動機構33,43を有するものであることが好ましい。ベース部材32,42は,食品類が挿入される中央孔32a,42aと,中央孔32a,42aの周囲に形成された長細の複数のスライド孔32b,42bが形成された形状となっている。この長細のスライド孔32b,42bのそれぞれは,ベース部材32,42の中心に対して,所定角度傾斜して設けられている。また,爪部材31,41は,ベース部材32,42のスライド孔32b,42bのそれぞれに挿通されたスライドピン31a,41aを有し,このスライドピン31a,41aを介して,ベース部材32,42に連結されている。このため,爪部材31,41は,スライドピン31a,41aがスライド孔32b,42bを進退することにより,食品類の外表面に対して,当接又は離間する。また,チャック駆動機構33,43は,爪部材31,41のスライドピン31a,41aが,ベース部材32,42のスライド孔32b,42bを進退するように,ベース部材32,42を駆動させる。例えば,チャック駆動機構33,43は,爪部材31,41のスライドピン31a,41aが,ベース部材32,42に設けられたスライド孔32b,42bの一端から他端までスライドするように,ベース部材32,42を一定角度で回動させる。
【0016】
上記の構成のように,左方チャック部3及び右方チャック部4が,ベース部材32,42の駆動により,爪部材31,41を進退させて食品類を保持することにより,爪部材による押圧力を適切なものに調整し易くなる。このため,軟らかい食品類であっても,その外形を崩すことなく適切に保持することができる。
【0017】
本発明の第2の側面は,添加物質が添加された食品類の製造方法に関する。
本発明の製造方法は,まず,食品類の切断点よりも左部を保持する左方チャック部3と,食品類の切断点よりも右部を保持する右方チャック部4とにより,食品類を保持する工程を行う。続いて,食品類が左方チャック部3及び右方チャック部4によって保持された状態で,切断部6により食品類を左部と右部に垂直に切断する工程を行う。また,食品類を左部と右部に切断した後,添加部7により,左方チャック部3により保持されている食品類の左部,及び右方チャック部4により保持されている食品類の右部の両方,又はいずれか一方の切断面に対して添加物質を添加する工程を行う。そして,添加物質が添加された後,左方チャック部3に保持されている食品類の左部の切断面と,右方チャック部4に保持されている食品類の右部の切断面とを合わせる工程を行う。
【0018】
上記の製造方法は,食品類の左部と右部をそれぞれ保持した状態で食品類を切断し,その切断面に添加物質を添加するものであるため,製造された食品類は,その外観が損なわれず,またその切断面も美麗なものとなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は,食品類の左部と右部を,左方チャック部と右方チャック部のそれぞれによって保持した状態で,切断部により切断するものであるため,例えば,表面熟成軟質チーズのような軟らかい食品類であっても,その外観を崩すことなく切断することができる。
【0020】
本発明は,食品類を左右に切断した後,食品類の左部及び/又は右部の切断面に対して添加物質が添加することで,食品類の切断工程と添加物質の添加工程を一連の流れで行うことができる。従って,本発明によれば,左部と右部とに分断された食品類の間に,効率的に添加物質を添加することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下,図面を用いて本発明を実施するための好ましい形態について説明する。ただし,本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0023】
(1.切断加工装置の全体構成について)
まず,本発明に係る食品類の切断加工装置100の全体構成について説明する。
切断加工装置100により切断加工される「食品類」は,特に限定されるものでない。「食品類」の例は,カビによる表面熟成軟質チーズ,パン,饅頭,米菓子,餅菓子,チョコレート,ケーキ,アップルパイ,ハム,ソーセージ,又はかまぼこである。特に,切断加工装置の切断加工対象である食品類は,表面熟成軟質チーズであることが好ましい。表面熟成軟質チーズの例としては,カマンベール,ブリー,ブルソー,カプリス・デ・デュー,及びシュプレムが挙げられる。
【0024】
図1は,本発明に係る切断加工装置100の好ましい形態を示す平面図である。
図2は,
図1におけるX−X線における断面図を示している。
図1及び
図2では,左方チャック部3と右方チャック部4の動作態様を示すために,両チャック部3,4が,供給部1に位置している状態と展開部2に位置している状態とを併せて概念的に描画している。なお,図において,立体空間における方向を理解し易くするために,直交座標X,Y,Zを設定した。
図1及び
図2に示されるように,本実施形態に係る切断加工装置100は,供給部1,展開部2,左方チャック部3,右方チャック部4,移動制御手段5,切断部6,添加部7,合せ部8,及び押え部9を有している。
【0025】
供給部1は,装置上流に位置し,加工装置内の衛生環境を保つ衛生空間を形成するための外枠ケース101の外部から,その内部に対して食品類を供給することが可能な部分である。
図1及び
図2に示されるように,供給部1において,左方チャック部3及び右方チャック部4は,食品類の左部と右部とをそれぞれ保持できるように,合掌状態で起立している。すなわち,左方チャック部3及び右方チャック部4のそれぞれは,装置の進行方向(X方向)が長手となる略板状に形成されており,その長手方向に沿って食品類を挿入するための開口(中央孔)が複数並べて形成されている。また,左方チャック部3及び右方チャック部4それぞれは,供給部1に位置しているときには,その短手方向が,装置の垂直方向(Z方向)と一致するように起立している。また,左方チャック部3及び右方チャック部4それぞれは,食品類を挿入するための開口(中央孔)が連通して,各開口に1つの食品類を挿入することが出来るようになっている。このように,左方チャック部3及び右方チャック部4は,供給部1に位置しているときに,垂直に起立した状態となっている。左方チャック部3及び右方チャック部4によって形成された開口には,切断加工の対象である食品類が,例えば人手によって挿入される。
図1に示されるように,外枠ケース101には食品類の供給口11が形成されており,この供給口11を介して,食品類を外枠ケース101内に入れることができる。これにより,食品類は,左方チャック部3によって左部が保持され,右方チャック部4によって右部が保持される。本実施形態において,切断加工装置100は,一度に3個の食品類を切断加工することが可能である。このため,左方チャック部3及び右方チャック部4には,それぞれ3箇所ずつ開口が形成されている。ただし,切断加工装置100によって一度に切断加工可能な食品類の個数は,1個であってもよいし,2〜10個,又は4〜8個であってもよい。左方チャック部3及び右方チャック部4によって所定個数の食品類が保持されると,左方チャック部3及び右方チャック部4は,移載用ロッドレスシリンダ12の直線運動機構によって,供給用レール13を摺動しながら,搬送方向(X方向正方向)に移動される。
【0026】
上記した左方チャック部3と右方チャック部4は,食品類を保持するための保持機構を持つ。切断加工対象の食品類が複数である場合,左方チャック部3と右方チャック部4は,複数個の食品類を同時に保持する。左方チャック部3と右方チャック部4のそれぞれは,食品類の外形が崩れない程度の押圧力によって食品類を外周面から押圧する。食品類の垂直方向(Z方向)の切断線を境とすると,左方チャック部3は食品類の左部を保持し,右方チャック部4は食品類の右部を保持するものである。左方チャック部3と右方チャック部4のそれぞれは,移動制御手段5によって,X方向への移動が制御されている。右方チャック部3と右方チャック部4が食品類の左部及び右部を保持すると,移動制御手段5は,左方チャック部3と右方チャック部4を連動して,搬送方向(X方向正方向)に移動させる。
【0027】
供給部1の装置下流側には,切断部6が位置する。切断部6の例は,垂直方向(高さ方向:Z方向)にテンションを掛けて張設されたピアノ線などのワイヤ61を含む。なお,本願明細書において,切断部6に関し,「垂直」又は「垂直方向」というときは,食品類を左右に分断可能な方向を意味し,設置面に対して完全に垂直となっている場合だけでなく,食品類を左右に分断可能な範囲で傾斜している場合も含まれる。右方チャック部3と左方チャック部4は,食品類の左部と右部をそれぞれ保持した状態で,移動制御手段5によって,切断部6が存在する方向に移動される。このため,右方チャック部3と左方チャック部4によって保持された食品類が,右方チャック部3と左方チャック部4の間の切断点において,切断部6に当接する。そして,食品類は,切断部6に当接したまま押し込まれて,左方チャック部3により保持される左部と,右方チャック部4によって保持される右部とに,垂直に分断される。このように,食品類は,その左部と右部とを保持された状態で,左部と右部の境に相当する切断点において垂直に切断される。このため,食品類が例えば,表面熟成軟質チーズのように軟らかいものであっても,その外形を損なうことなく,美麗な切断面を形成することができる。移動制御手段5は,左方チャック部3と右方チャック部4とを,切断部6を超える位置まで,搬送方向(X方向正方向)へ移動させる。これにより,左方チャック部3と右方チャック部4により保持されている食品類は,順次,切断部6(ワイヤ61)に当接し,1つずつ切断されていく。このように,切断部6のワイヤ61に対し,一度の複数個の食品類を当接するのではなく,1つずつ当接させていくことにより,ワイヤ61の歪みを軽減でき,食品類の切断面を美麗なものとすることが可能である。
【0028】
ただし,切断部6は,左方チャック部3と右方チャック部4の間において食品類を切断可能なものであれば,ワイヤに限定されず,例えば,薄刃のブレードなどを採用することもできる。この場合,ブレードの刃体と食品類の接触面積を小さくすることにより,食品類がカッターに付着することを抑えることができる。ブレードの切断刃の形状には制限はないが,特開2008−200814号公報で開示されているような大きさと形状を採り入れることで,チーズを始めとする食品類の切断が容易となる。例えば,切断刃は,切断刃によって切断された食品類相互の切断面の接触を遮断する形状の刃体からなり,当該刃体の一方の端に当該刃体を切断装置の本体部に固定する取付部を備えていると共に,当該取付部から当該取付部に対向する側にあたる先端部までの当該刃体の長手方向の上側部に切断部を備えている構造とすればよい。
【0029】
なお,本発明において,食品類を切断する方法は,上記の構成のように,左方チャック部3及び右方チャック部4を,静止している切断部6が存在する方向に向かって移動させて,食品類を切断部6に押し付けて切断する方法に限定されない。例えば,左方チャック3及び右方チャック部を静止させておき,これらのチャック部が存在する位置に向かって,切断部6を移動させて,食品類を切断することもできる。また,両チャック部3,4を切断部6の方向に移動させつつ,切断部6をチャック部3,4の方向に移動させて,両者の交わる点において食品類を切断する方法も採用し得る。
【0030】
切断部6の装置下流側には,展開部2が設けられている。移動制御手段5は,左方チャック部3と右方チャック部4が切断部6を超えた後,両チャック部3,4を,展開部2において一旦停止させる。
図1及び
図2に示されるように,この展開部2において,左方チャック部3と右方チャック部4は,食品類の左部の切断面及び右部の切断面が上方を向くように,展開するようになっている。すなわち,起立した状態における左方チャック部3と右方チャック部4それぞれの下端部分は,両チャック部3,4の移動範囲において,装置上流から下流側に沿って設けられた長軸の左方チャック部用シャフト53,及び右方チャック部用シャフト54に連結されている。各シャフト53,54には,その長軸方向に沿って,両チャック部3,4の下端部分が嵌り込む溝が形成されており,両チャック部3,4は,各シャフト53,54に形成された溝に沿ってスライドする。他方,各シャフト53,54が長軸を回転軸として回転すると,両チャック部3,4は,各シャフト53,34の回転に伴って回動するようになっている。このため,両チャック部3,4は,起立状態のまま切断部6を越えて展開部2に到達すると,一旦停止する。そして,左方チャック部用シャフト53及び右方チャック部用シャフト54が,左方チャック部3及び右方チャック部4を開く方向に約90度で回転すると,左方チャック部3に保持されている食品類の左部の切断面と,右方チャック部4に保持されている食品類の右方の切断面が,上方を向くようになる。
図1及び
図2においては,展開部2において,左方チャック部3及び右方チャック部4が展開した状態が示されている。左方チャック部3及び右方チャック部4の展開動作が完了すると,移動制御手段5は,再度,左方チャック部3及び右方チャック部4を装置下流側に向かって搬送方向(X方向正方向)へと移動させる。
【0031】
展開部2の装置下流側には,添加部7が位置している。添加部7は,左方チャック部3により保持されている食品類の左部の切断面,及び右方チャック部4により保持されている食品類の右部の切断面の両方,又はいずれか一方に対して添加物質を添加する。食品類に添加される「添加物質」は,切断加工対象である食品類以外の可食物であればよい。添加物質としては,バジルやオレガノ等のハーブ類およびペッパーやシナモン,ガーリック等のスパイス類といった香辛料をはじめとした風味物資を使用することができる。また,添加物質としては,調味料,果実調製品や,野菜類,ナッツ類,又はハム等の獣肉製品などの食品を使用することもできる。さらに,添加物質としては,乳酸菌,アミノ酸,アミノコラーゲン(登録商標),ビフィズス菌,プロフェック(登録商標),又は香料などの食品添加物も使用することができる。また,例えば,加工切断の対象の食品類が白カビチーズである場合に,その中に添加される添加物質を青カビなどの菌類とすることも可能である。これにより,表面に白カビが育成し,内部に青カビが育成したチーズ製品(例えば,ブール・ド・ネージュと呼ばれるチーズ製品)を製造することができる。さらに,添加物質には,上記の可食物に加え,結着剤が含まれていても良い。結着剤としては,例えば,デキストリン,澱粉,加工澱粉,卵白,卵白粉,ゼラチン,寒天,増粘多糖類,カゼイン,プロセスチーズ,軟質チーズ,ホエイ粉,ホエイたんぱく質濃縮物,ホエイたんぱく質分離物,大豆たんぱく質,及びグルテンのいずれか一種以上を用いることができる。例えば,食品類としてチーズが選択された場合において,チーズの左部と右部の間に結着剤を添加して,両者の結合を強固にすることで,左部と右部とを再度結着させたチーズをポーションカットし易くなる。これらの添加物質は,1種類,あるいは2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0032】
左方チャック部3及び右方チャック部4は,移動制御手段5により,添加部7が存在する位置に向かって移動される。添加部7は,左方チャック部3及び右方チャック部4が水平移動する搬送レベルよりも上方に位置する。このため,左方チャック部3及び右方チャック部4は水平移動することにより,添加部7の垂直方向(Z方向)の下方に進行する。移動制御手段5は,左方チャック部3及び右方チャック部4が添加部7の下方に位置した段階で,両チャック部3,4の移動を停止させる。添加部7は,左方チャック部3及び右方チャック部4との平面方向(XY面方向)の相対位置が一致すると,例えば,左方チャック部3により保持されている食品類の左部の切断面,及び右方チャック部4により保持されている食品類の右部の切断面の両方に対して添加物質を添加する。添加部7が添加物質を添加する方法は,特に限定されず,例えば,食品類の切断面の全体に対して添加物質を均一に散布,塗布,又は噴霧するものであってもよいし,食品類の切断面に対して添加物質を局所的に注入,挿入,又は載置するものであってもよい。添加部7によって添加物質の添加が完了した後,移動制御手段5は,再度,左方チャック部3及び右方チャック部4を装置下流側に向かって搬送方向(X方向正方向)へと移動させる。
【0033】
添加部7の装置下流側には,合せ部8が位置している。合せ部8は,左方チャック部3により保持されている食品類の左部の切断面と,右方チャック部4により保持されている食品類の右部の切断面とを対面させて,食品類の左部の切断面と右方チャック部4に保持されている食品類の右部の切断面とを合わせる。
図1及び
図2に示された実施形態において,右方チャック部4が,左方チャック部3の上方に重なるように回動される。これにより,左方チャック部3に保持されている食品類の左部の上方に,右方チャック部4に保持されている食品類の右部が重なる。すなわち,右方チャック部4は,左方チャック部3寄りの端部が右方チャック部用シャフト54に連結されており,この右方チャック部用シャフト54が,左方チャック部3が存在する方向に向かって約180度で回転する。これにより,右方チャック部用シャフト54の回転に伴って右方チャック部3が回動し,左方チャック部3の上方に重なるようになる。このようにして,左方チャック部3により保持されている食品類の左部の切断面と,右方チャック部4により保持されている食品類の右部の切断面とが対面する。
【0034】
本実施形態において,合せ部8は,左方チャック部3の搬送経路側の位置に,左方チャック部3を挟んで,装置の高さ方向(Z方向)に互いに対向する位置に,上部の合せ用シリンダ81と下部の合せ用シリンダ82とを有する。また,合せ部8は,左方チャック部3の搬送経路側に,丸ベルトコンベア83を有する。この丸ベルトコンベア83は,装置の高さ方向(Z方向)において,上部の合せ用シリンダ81と下部の合せ用シリンダ82の間であって,左方チャック部3が位置する搬送レベルよりも下方の位置に,複数の丸ベルト83aを有する。各丸ベルト83aは,装置の搬送方向(X方向)の両端に位置するヘッドプーリ83b及びテールプーリ83cを通ってエンドレスに周回して掛けられており,丸ベルトコンベア駆動モータ83dにより周回駆動される。
【0035】
まず,合せ部8においては,上述したように,右方チャック部4が左方チャック部3の上方に重なるように回動され,左方チャック部3により保持されている食品類の左部の切断面と,右方チャック部4により保持されている食品類の右部の切断面とが対面する。この段階において,食品類の右部は,食品類の上部となり,食品類の左部は,食品類の下部となっているともいえる。食品類の左部と右部の切断面が対面すると,上部の合せ用シリンダ81と下部の合せ用シリンダ82が作動する。すなわち,上部の合せ用シリンダ81が作動するとピストンロッド81aが下降し,下部の合せ用シリンダ82が作動するとピストンロッド82aが上昇する。上部の合せ用シリンダ81のピストンロッド81aは,右方チャック部4に保持された食品類の右部(上部)に当接する。また,下部の合せ用シリンダ82のピストンロッド82aは,食品類の数に応じた本数の合せ用ロッド部材82bを支持する支持プレート82cを押圧する。合せ用ロッド部材82bは,複数の丸ベルト83aの間を挿通して,左方チャック部3に保持された食品類の左部(下部)に当接する。これにより,食品類は,上部の合せ用シリンダ81のピストンロッド81aと,合せ用ロッド部材82bによって,上下方向から挟持される。上部の合せ用シリンダ81と下部の合せ用シリンダ82を介して食品類が挟持された段階で,左方チャック部3と右方チャック部4は,食品類の保持を解除する。左方チャック部3と右方チャック部4により保持が解除された後,下部の合せ用シリンダ82のピストンロッド82aが下降し,食品類は,丸ベルトコンベア83における丸ベルト83aの搬送面上に載置される。その後,丸ベルトコンベア83は,丸ベルトコンベア駆動モータ83dを駆動させて,丸ベルト83aを周回させ,左部(下部)と右部(上部)が重ね合わされた食品類を搬送方向(X方向)に,搬出する。食品類は,丸ベルトコンベア83によって搬出されることにより,排出口を介して,外枠ケース101の外部へと排出される。
【0036】
丸ベルトコンベア83に搬送排出方向(X方向正方向)の下流側には押え部9が位置する。押え部9は,平ベルトコンベア91を有し,丸ベルトコンベア83により搬出された食品類が連続的に平ベルトコンベア91の搬送面上に供給される。平ベルトコンベア91の高さ方向上方(Z方向正方向)には,切断加工される食品類の数に応じた数の押え用シリンダ92が位置する。切断加工された食品類が平ベルトコンベア91の搬送面上に揃った段階で,平ベルトコンベア91は一旦停止し,各押え用シリンダ92が作動する。押え用シリンダ92が作動すると,ピストンロッド92aが下降し,ピストンロッド92aと平ベルトコンベア91の搬送面との間で食品類を上下方向に押圧する。これにより,食品類の左部(下部)と右部(上部)の結着強度を向上させることができる。その後,再度,平ベルトコンベア91が駆動して,各食品類が,図示しない回収台へと移送される。回収台へと移送された食品類は,例えば,人手によって回収される。
【0037】
(2.切断加工装置の各部構成について)
続いて,好ましい形態に係る切断加工装置の各部の構成について説明する。
【0038】
(2−1.供給部)
図1及び
図2に示されるように,供給部1から合せ部8に掛けて延びるように,左方チャック部用シャフト53及び右方チャック部用シャフト54が近接した状態で配置されている。左方チャック部用シャフト53及び右方チャック部用シャフト54には,その長軸方向に沿って,両チャック部3,4の下端部分が嵌り込む溝が形成されている。この各シャフト53,54に形成された溝には,左方チャック部3と右方チャック部4の起立状態における下端部分が嵌り込むようになっている。このため,左方チャック部用シャフト53及び右方チャック部用シャフト54の回転を制御することにより,これに連結された左方チャック部3と右方チャック部4を回動させることができる。
図1及び
図2に示されるように,左方チャック部3と右方チャック部4は,供給部1に位置している段階において,食品類の左部と右部とをそれぞれ保持できるように,合掌状態で起立している。すなわち,左方チャック部3及び右方チャック部4のそれぞれは,装置の進行方向(X方向)が長手となる略板状に形成されており,その長手方向に沿って食品類を挿入するための開口(中央孔)が複数並べて形成されている。また,左方チャック部3及び右方チャック部4それぞれは,供給部1に位置しているときには,その短手方向が,装置の垂直方向(Z方向)と一致するように起立している。
【0039】
また,切断加工装置100の基礎架台102には,加工装置内の衛生環境を保つ衛生空間を形成するための外枠ケース101が取り付けられる。外枠ケース101の内部には,供給部1,展開部2,左方チャック部3,右方チャック部4,移動制御手段5,切断部6,添加部7,及び合せ部8が配置され,外部からの塵埃が内部に侵入しないようするになっている。また,外枠ケース101は,食品類の供給口と排出口を除き,例えば,透明プラスチック板によって閉じられている。供給部1では,この外枠ケース101の供給口11を介して,合掌状態で立設した左方チャック部3及び右方チャック部4に対し,所定個数の食品類が,例えば人手によって受け渡される。
【0040】
(2−3.左方チャック部,右方チャック部)
図3及び
図4は,左方チャック部3及び右方チャック部4の構成を説明するための図である。
図3(a)は,閉じられた状態の左方チャック部の平面図,及びその左側面図を並べて示している。また,
図3(b)は,開かれた状態の右方チャック部の平面図,その左側面図,及び背面図を並べて示している。また,
図4は,食品類を保持するための保持要素を拡大した拡大平面図であり,
図4(a)は閉じられた状態,
図4(b)は開かれた状態を,それぞれ示している。
【0041】
図3及び
図4に示されるように,左方チャック部3及び右方チャック部4は,切断加工する食品類の数に応じて設けられた複数の保持要素30,40と,複数の保持要素30,40を連動して開閉駆動させるためのチャック駆動機構33,43と,複数の保持要素30,40とチャック駆動機構33,43の基板となる基板部材34,44を備える。
【0042】
各保持要素30,40は,複数の爪部材31,41と,ベース部材32,42を有する。
まず,ベース部材32,42は,食品類を挿入可能な直径を持つ円形の中央孔32a,42aと,中央孔32a,42aの周囲に形成された長細の複数のスライド孔32b,42bを有する形状となっている。ベース部材32,42の中央孔32a,42aが形成された位置においては,基板部材34,44にも中央孔32a,42aと同径又は大径の開口が形成されている。また,各スライド孔32b,42bは,中央孔32a,42aの中心に対して傾斜して形成され,各スライド孔32b,42bの一端から中央孔32a,42aの中心までの距離と,各スライド孔32b,42bの他端から中央孔32a,42aの中心までの距離は異なっている。以下,中央孔32a,42aの中心までの距離が近い各スライド孔32b,42bの一端を近端部といい,中央孔32a,42aの中心までの距離が遠い各スライド孔32b,42bの他端を遠端部ともいう。複数のスライド孔32b,42bそれぞれは,中央孔32a,42aの中心に対する傾斜角が等しい。また,複数のスライド孔32b,42bそれぞれは,近端部から中心までの距離,及び遠端部から中心までの距離も等しくなっている。また,ベース部材32,42は,180度反対の位置に突出部32c,42cを有し,この突出部32c,42cには,連結ピン用孔32d,42dが形成されている。
【0043】
また,各保持要素30,40は,ベース部材32,42の中央孔32a,42aの中心に向かって延びる複数の爪部材31,41を有する。爪部材31,41の数は,2本以上であればよく,3〜6本であってもよい。爪部材31,41の数は,本実施形態のように4本であることが好ましい。各爪部材31,41は,ベース部材32,42の持つスライド孔32b,42bのそれぞれに挿通されたスライドピン31a,41aを有する。スライドピン31a,41aは,各爪部材31,41に固着されており,各爪部材31,41は,スライドピン31a,41aを介してベース部材32,42に連結されている。また,各爪部材31,41は,ガイド枠体35,45内に収納されることで進退方向が制御されている。ガイド枠体35,45は,複数設けられた爪部材31,41のすべてを収納する一体的に形成された枠体であり,爪部材31,41の数に応じた間隔(例えば,本実施形態では90度間隔)で,ガイド部35a,45aを有している。各爪部材31,41は,ガイド枠体35,45のガイド部35a,45aに摺動自在に係合されている。各爪部材31,41は,スライドピン31a,41aがベース部材32,42のスライド孔32b,42bをスライドすると,ガイド部35a,45aの延在方向に従って摺動し,ベース部材32,42の中央孔32a,42aの中心に向かって進退する。さらに,各爪部材31,41の先端には,食品類の外表面に対する当接面積の広がった面当接部31b,41bが形成されていることが好ましい。複数の爪部材31,41の面当接部31b,41bによって,食品類の周側面全体が保持されるものであることが好ましい。これにより,食品類の外形を変形させることを防止しつつ,確実に食品類の左部及び右部を保持することができる。
【0044】
次に,チャック駆動機構33,43は,前後一対の長軸部材33a,43aと,左右一対の短軸部材33b,43bを有する。
図3に示されるように,一対の長軸部材33a,43aは,装置幅方向(Y方向)を長手とし,一対の短軸部材33b,43bは,搬送方向(X方向)を長手としている。一対の長軸部材33a,43aの両端部と,一対の短軸部材33b,43bの両端部を四隅ピン33c,43cによって回動可能に連結することにより,矩形の領域が形成される。この矩形の領域内には,複数の保持要素30,40が配置され,各保持要素30,40は,ベース部材32,42の突出部32c,42cに形成された連結ピン用孔32d,42dに,連結ピン33d,43dが差し込まれることにより,前後一対の長軸部材33a,43aの両方に対して,回動可能に連結されている。また,左右一対の短軸部材33b,43bは,その長手方向中心において,支点ピン33e,43eが差し込まれることにより,基板部材34,44に対して,回動可能に連結されている。さらに,一対の短軸部材33b,43bのいずれか一方には,長軸部材33a,43aとの連結点よりも突出した駆動起点部33f,43fが形成されている。この駆動起点部33f,43fは,基板部材34,44に固定されたチャック駆動用シリンダ33g,43gのピストンロッド35h,45hの先端部分に対して,起点ピン33i,43iを介して,回動可能に連結されている。例えば,チャック駆動用シリンダ33g,43gには,エアシリンダを採用することが好ましい。チャック駆動用シリンダ33g,43gが作動することにより,装置幅方向(Y方向)に向かって,ピストンロッド33h,43hが進退する。
【0045】
左方チャック部3において,チャック駆動用シリンダ33gのピストンロッド33hを延伸した状態が,
図3(a)に示されている。他方,右方チャック部4において,チャック駆動用シリンダ43gのピストンロッド43hを収縮した状態が,
図3(b)に示されている。これらの図を参照して,左方チャック部3と右方チャック部4の保持機構の動作について説明する。
保持機構の駆動源であるチャック駆動用シリンダ33g,43gが作動し,例えば,シリンダ内の空気圧が高まることにより,ピストンロッド33h,43hが延伸する。ピストンロッド33h,43hが延伸すると,その先端に連結された短軸部材33b,43bの駆動起点部33f,43fが押圧されて,駆動起点部33f,43fを持つ短軸部材33b,43bが,支点ピン33e,43eを支点として,所定量回動する。これにより,短軸部材33b,43bの一端に連結された長軸部材33a,43aと,他端に連結された長軸部材33a,43aが,Y方向の正負反対方向にスライドする。一対の長軸部材33a,43aがスライドすると,一対の長軸部材33a,43aに連結されたベース部材32,42が,そのスライド量に応じて回動する。ベース部材32,42が回動すると,ベース部材32,42のスライド孔32b,42bに挿通されたスライドピン31a,41aが,スライド孔32b,42bの遠端部から近端部に向かってスライドする。スライドピン31a,41aがスライド孔32b,42bをスライドすることで,各爪部材31,41は,ガイド枠体35,45におけるガイド部35a,45aの延在方向に従って摺動し,ベース部材32,42の中央孔32a,42aの中心に向かって進行する。このとき,ベース部材32,42の中央孔32a,42aには,食品類が挿入されているため,各爪部材31,41の先端に形成されたた面当接部31b,41bが,食品類の周側面全体に当接し,食品類に適度な押圧力を掛けて,これを保持する。
他方,左方チャック部3と右方チャック部4による食品類の保持を解除する際には,チャック駆動用シリンダ33g,43gのピストンロッド33h,43hを収縮させる。これにより,上記した動作と逆の動作によって,食品類の周側面から各爪部材31,41の先端が離間して,食品類が解放される。
【0046】
上記構成のように,左方チャック部3と右方チャック部4は,複数個の食品類を同時に保持することができ,しかも,各食品類を保持するための押圧力を均一なものとすることができる。また,各食品類を保持するにあたり,その外形が変形しない程度の押圧力に調整をすることが容易となるため,軟らかい各食品類であっても外観を損なうことなく,保持搬送することができる。
【0047】
(2−4.移動制御手段)
左方チャック部3及び右方チャック部4は,それぞれ移動制御手段5により,移動制御されている。
図2に示されるように,切断加工装置100の供給部1において,基礎架台102には,移載用ロッドレスシリンダ12が設けられている。移載用ロッドレスシリンダ12は,供給用レール13とリニアガイド14を有し,リニアガイド14は,起立した状態の左方チャック部3及び右方チャック部4を,搬送方向に向けて付勢する。リニアガイド14は,供給用レール13上をスライドするものであり,移載用ロッドレスシリンダ12によって左方チャック部3及び右方チャック部4を供給用レール13に沿って往復移動させる場合のガイド機構として機能する。供給用レール13は,左方チャック部3及び右方チャック部4が,切断部6を越えて,展開部2に至る位置まで設けられている。移載用ロッドレスシリンダ12の機構としては公知のものを採用することができ,例えば,移載用ロッドレスシリンダ12は,ボールねじの回動により,基礎架台102に固定された供給用レール13に沿って,リニアガイド14を往復動させる。これにより,左方チャック部3及び右方チャック部4は,移載用ロッドレスシリンダ12を駆動源として,供給用レール13が配設された範囲において,水平方向に移動可能となる。
【0048】
また,
図1及び
図2に示されるように,切断加工装置100の基礎架台102には,供給部1から合せ部8に掛けて延びるように,左方チャック部用シャフト53及び右方チャック部用シャフト54が,切断部6のワイヤ61の左右両側に近接した状態で配置されている。左方チャック部3及び右方チャック部4は,展開部2に位置している状態において,搬送方向Xと直交する方向Yの一端側が,左方チャック部用シャフト53及び右方チャック部用シャフト54に連結される。他方,展開部2において左方チャック部3及び右方チャック部4が展開すると,両チャック部3,4は,搬送方向Xと直交する方向Yの他端側が,リニアガイド(図示省略)と連結する。また,基礎架台102には,断面略コ字形のレール(図示省略)が,搬送方向(X方向)に向かって,展開部2から合せ部8が存在する位置まで敷設されている。両チャック部3,4が連結したリニアガイドは,レールに対してスライド可能に係合され,例えば,ボールねじの回動によりレールに沿って往復移動する。基礎架台102の両側面部のそれぞれには,搬送方向(X方向)の前端部に位置する駆動タイミングプーリ51c,52cと,搬送方向(X方向)の後端部に位置する従動タイミングプーリ51d,52dと,駆動タイミングプーリと従動タイミングプーリの間に掛け渡されたタイミングベルト51e,52eと,チャック駆動用サーボモータ51f,52fが設けられる。左方チャック部3用の駆動タイミングプーリ51cと,右方チャック部4用の駆動タイミングプーリ52cは,例えば減速機を介して,左方チャック部3駆動用のサーボモータ51fの回転軸又は右方チャック部4駆動用のサーボモータ52fの回転軸に連結された状態で配置されている。このため,駆動用タイミングプーリ51c,52cは,チャック駆動用サーボモータ51f,52fの回転を,タイミングベルト51e,52eに伝達できる。チャック駆動用サーボモータ51f,52fの回転トルクが,タイミングベルト51e,52eを介して,左方チャック部3及び右方チャック部4に連結したリニアガイドのボールねじに伝達されると,両チャック部3,4は,基礎架台102に設けられたレール,及びシャフト53,54のスライド溝に沿って,水平に往復移動する。
【0049】
左方チャック部3駆動用のサーボモータ51fと右方チャック部4駆動用のサーボモータ52fの回転は,制御装置(図示省略)によって同期するように制御されており,例えば,これらのサーボモータ51f,52fは,左方チャック部3及び右方チャック部4が,展開部2から合せ部8に至るまでの間,左方チャック部3と右方チャック部4を等速で水平移動させるように回転する。
【0050】
(2−5.切断部)
図1及び
図2に示されるように,供給部1の装置下流側には,切断部6が位置し,食品類を保持する左方チャック部3及び右方チャック部4が,移動制御手段5によって,切断部6に向かって移動される。本実施形態において,切断部6には,極細で強靱なワイヤ61が用いられる。ワイヤ61の例は,ピアノ線や鋼線である。ワイヤ61の直径は,100μm〜130μm程度であることが好ましい。本発明において,このワイヤ61は,垂直方向(Z方向)に延びるように張設されている。すなわち,切断部6において,基礎架台102には,ワイヤ張設用架台62が設けられており,このワイヤ張設用架台62によって,ワイヤ上端保持部63が,左方チャック部3及び右方チャック部4の搬送レベルの上方に配置される。また,切断部6において,ワイヤ上端保持部63の真下には,ワイヤテンション用シリンダ64が配置されている。ワイヤ61は,その上端部がワイヤ上端保持部63に固定され,その下端部がワイヤテンション用シリンダ64に固定されている。ワイヤテンション用シリンダ64は,垂直方向の上下に進退することにより,ワイヤ61に対してテンションが負荷して,ワイヤ61が弛まぬように維持する。ワイヤ61は,ワイヤ上端保持部63とワイヤテンション用シリンダ64とによって,左方チャック部3が保持する食品類の左部と右方チャック部4が保持する食品類の右部と境界である切断点において,食品類を切断可能な位置に張架されている。
【0051】
供給部1において,左方チャック部3と右方チャック部4に対して食品類が供給されると,移動制御手段5における移載用ロッドレスシリンダ12が稼働し,左方チャック部3と右方チャック部4とを搬送方向(X方向正方向)に向かって等速で移動させる。移動制御された左方チャック部3と右方チャック部4は,食品類の左部と右部を保持したまま,供給部1の下流に位置する切断部6のワイヤ61対して,食品類を押し付ける。これにより,食品類は,切断点を境として,右部と左部とに垂直に分断される。
【0052】
(2−6.添加部)
図1及び
図2に示されるように,本実施形態において,添加部7は,展開部2の搬送方向(X方向)の下流側に位置する。添加部7は,切断部6のワイヤ61によって水平に切断された食品類の左部及び右部の切断面の両方又はいずれか一方の切断面に対して,添加物質を添加する機能を持つ。本実施形態において,添加部7は,添加物質を添加するためのホッパー71が,基礎架台102の幅方向(Y方向)渡って取り付けられたホッパー用架台72上に設けられている。このためホッパー71は,左方チャック部3及び右方チャック部4の搬送レベルよりも上方に位置し,ホッパー71から食品類の左部及び/又は右部の切断面に対して,重力に従って添加物質を添加できるようになっている。
【0053】
本実施形態において,ホッパー71は,左方チャック部3と右方チャック部4により保持された食品類の切断面の全てに対し,同時に添加物を添加できるように,一度に切断加工可能な食品類の数と同数だけ設けられている。各ホッパー71は,添加物質が格納されるストック部71aと,添加物質を攪拌するためのアジテーター71bと,一度に塗布する量に応じた添加物質を収容できる溝を持つドラム71cと,ドラム71cの溝に収容された量の添加物質が落下する導出路71dと,導出路71dの出口付近に設けられたメッシュ(図示省略)を有する。また,アジテーター71bとドラム71cは,ストック部71aの外部に設けられたホッパー駆動モータ71eにより回転される。アジテーター71bは複数の突起を備えて回転する。これにより,ストック部71a内に格納された添加物質は,アジテーター71bにより攪拌されて,固着しないようになっている。また,ドラム71cには,複数の溝が設けられている。ドラム71cが回転して,ドラム71cに設けられた溝が上方を向くと,ストック部71a内の添加物質が,この溝に落ちて収容される。また,溝に添加物質が収納された後,さらにドラム71cが回転して溝が下方を向くと,溝に収容された添加物質が,導出路71d内に落下する。導出路71dは,例えば,ドラム71cから導出路71dへの添加物質の受渡し時に,添加物質が外部へ漏れないよう,入口が大径となり出口が小径となったラッパ管状に形成されている。導出路71dの出口付近には,着脱式のメッシュが張られており,このメッシュは,その網目よりも大きい粒径の添加物質が落下することを阻止している。ホッパー駆動モータ71eは,食品類を保持した左方チャック部3及び右方チャック部4が,ホッパー71の下方に位置したときに,ドラム71cを一回転させる。これにより,ホッパー71は,ストック部71a内に格納されている添加物質を,食品類の左部の切断面と右部の切断面とに対して添加できる。
【0054】
また,添加部7は,
図1及び
図2に示されるように,食品類の切断面に添加物質が適切に添加されたことを確認するための色面積センサ73を備えることが好ましい。例えば,色面積センサ73は,ホッパー用架台72に,装置下方を向いて取り付けられており,添加物質の添加後において,食品類の切断面を撮像することにより,切断面に添加された添加物質の色と面積から,食品類に添加物質が過不足なく添加されたか否かを検出する。色面積センサ73は,切断加工対象である食品類の数に応じて設けられる。このように,添加部7において添加物質の添加した後,合せ部8において食品類の左部と右部を合わせる前に,色面積センサ73によって,添加物質の添加量が適切であるかどうかを検出することにより,例えば,添加物質が適切に添加されていない食品類を製造して出荷してしまうような事態を防止できる。
【0055】
なお,添加部7の構成は,上記した実施形態のものに限られず,特に限定されず,例えば,食品類の切断面の全体に対して添加物質を均一に散布,塗布,又は噴霧するものであってもよいし,食品類の切断面に対して添加物質を局所的に注入,挿入,又は載置するものであってもよい。
【0056】
(2−7.合せ部)
図1及び
図2に示されるように,本実施形態において,合せ部8は,添加部7の搬送方向下流側に位置する。合せ部8は,左方チャック部3により保持されている食品類の左部の切断面と,右方チャック部4により保持されている食品類の右部の切断面とを対面させて,食品類の左部の切断面と右方チャック部4に保持されている食品類の右部の切断面とを合わせる。
図1及び
図2に示された実施形態において,右方チャック部4が,左方チャック部3の上方に重なるように回動される。これにより,左方チャック部3に保持されている食品類の左部の上方に,右方チャック部4に保持されている食品類の右部が重なる。すなわち,右方チャック部4は,左方チャック部3寄りの端部が右方チャック部用シャフト54に連結されており,この右方チャック部用シャフト54が,左方チャック部3が存在する方向に向かって約180度で回転する。これにより,右方チャック部用シャフト54の回転に伴って右方チャック部3が回動し,左方チャック部3の上方に重なるようになる。このようにして,左方チャック部3により保持されている食品類の左部の切断面と,右方チャック部4により保持されている食品類の右部の切断面とが対面する。
【0057】
本実施形態において,合せ部8は,左方チャック部3の搬送経路側の位置に,左方チャック部3を挟んで,装置の高さ方向(Z方向)に互いに対向する位置に,上部の合せ用シリンダ81と下部の合せ用シリンダ82とを有する。上部の合せ用シリンダ81は,基礎架台102に取り付けられた上部の合せ用シリンダ架台81b上に備えられている。
図2に示されるように,上部の合せ用シリンダ架台81bは,上部の合せ用シリンダ81を,重ね合わされた左方チャック部3及び右方チャック部4よりも上方に配置させるように,支柱部から延びる腕部において,上部の合せ用シリンダ81を支えている。上部の合せ用シリンダ81は,切断加工対象である食品類の数に応じて複数箇所に設けられ,本実施形態において,上部の合せ用シリンダ81は,上部の合せ用シリンダ架台81bに並んで,3箇所に位置している。各上部の合せ用シリンダ81は,ピストンロッド81aを備え,各上部の合せ用シリンダ81を作動させることで,ピストンロッド81aは装置下方に向かって延伸する。上部の合せ用シリンダ81のピストンロッド81aは,右方チャック部4の基板部材44に設けられた開口と,ベース部材42の中央孔42aを通って,食品類の右部(上部)に当接するようになっている。
【0058】
また,下部の合せ用シリンダ82はピストンロッド82aを備え,このピストンロッドaによって,食品類の数に応じた本数の合せ用ロッド部材82bを支持する支持プレート82cを押圧する。支持プレート82cは,装置搬送方向(X方向)を長手とする板状部材であり,支持プレート82cの長手方向両端部は,基礎架台102に固定された下部の合せ用シリンダ82のピストンロッド82aのそれぞれに架けて固定されている。合せ用ロッド部材82bそれぞれは,各上部の合せ用シリンダ81のピストンロッド81aと対向する位置に設けられ,装置の高さ方向に直立し,支持プレート82cによって支持固定されている。各合せ用ロッド部材82bは,その先端が,丸ベルトコンベア83が備える複数本の丸ベルト83aの間を挿通して,一つの食品類の左部(下部)に当接する。このため,複数本の丸ベルト83aの間を挿通しつつ,食品類を下方から安定的に支持するために,各合せ用ロッド部材82bの先端部分は,櫛状に形成されて,複数点において食品類の左部(下部)に当接するものであることが好ましい。下部の合せ用シリンダ82が作動すると,ピストンロッド82aが,装置上方に向かって延伸する。ピストンロッド82aが延伸することにより,支持プレート82cが押圧され,合せ用ロッド部材82bが上昇する。各合せ用ロッド部材82bは,丸ベルトコンベア83が備える複数本の丸ベルト83aの間を挿通して上昇する。また,各合せ用ロッド部材82bの先端部は,左方チャック部3の基板部材34に設けられた開口と,ベース部材32の中央孔32aを通って,食品類の左部(下部)に当接するようになっている。
【0059】
上記のように,上部の合せ用シリンダ81のピストンロッド81aを食品類の右部(上部)に当接させ,各合せ用ロッド部材82bを食品類の左部(下部)に当接に当接させて,食品類を上下から挟み込むことにより,食品類の左部(下部)と右部(上部)とが合わされる。
【0060】
また,合せ部8は,上記の上部の合せ用シリンダ81及び下部の合せ用シリンダ82を介して重ね合わされた食品類を,外枠ケース101の外部へと排出するための丸ベルトコンベア83を有する。丸ベルトコンベア83による排出方向は,切断加工装置100の搬送方向(X方向)である。丸ベルトコンベア83は,基礎架台102の搬送方向(X方向)の一端部にヘッドプーリ83bが設けられ,他端部にテールプーリ83cが設けられている。
図3に示されるように,ヘッドプーリ83bは,外枠ケース101の内部に設けられており,他方,テールプーリ83cは,外枠ケース101の排出口を介して,外枠ケース101の外部に設けられる。テールプーリ83cとヘッドプーリ83bには,複数本の丸ベルト83aが所定の間隔を空けて,掛け止められている。ここにいう,複数本の丸ベルト83aの「所定の間隔」とは,各合せ用ロッド部材82bが各丸ベルト83aの間を挿通できる程度の間隔であって,かつ,複数本の丸ベルト83aによって形成される搬送面上に食品類を載置したときに,食品類が丸ベルト83aの間から落下せずに,安定して搬送できる程度の間隔である。本実施形態において,ヘッドプーリ83bは,丸ベルトコンベア駆動モータ83dにより回転駆動される。
【0061】
図3に示されるように,丸ベルトコンベア83が持つ複数本の丸ベルト83aによって形成される搬送面は,上部の合せ用シリンダ81と下部の合せ用シリンダ82がピストンロッドを収縮させている状態において,上部の合せ用シリンダ81のピストンロッド81aと,合せ用ロッド部材82bの間であって,かつ,左方チャック部3と右方チャック部4が連動して移動するレベルの下方に位置する。食品類の左部(下部)と右部(上部)とを重ね合わせる際,上部の合せ用シリンダ81のピストンロッド81aは,左方チャック部3と右方チャック部4が位置する切断加工レベルまで下降し,合せ用ロッド部材82bも,丸ベルトコンベア83の搬送面を越えて,左方チャック部3と右方チャック部4が位置する切断レベルまで上昇される。
【0062】
上部の合せ用シリンダ81のピストンロッド81aと,各合せ用ロッド部材82bによって,食品類の左部(下部)と右部(上部)とが重ね合わされると,下部の合せ用シリンダ82はピストンロッド82aを下降させる。これにより,左部(下部)と右部(上部)が重ね合わされた食品類が,各合せ用ロッド部材82bの先端に支持されたまま下降し,丸ベルトコンベア83が持つ複数本の丸ベルト83aによって形成される搬送面上に載置される。その後,丸ベルトコンベア83は,丸ベルトコンベア駆動モータ83dを駆動させて丸ベルト83aを周回させ,左部(下部)と右部(上部)が重ね合わされた食品類を搬送方向(X方向)に従って搬出する。食品類は,丸ベルトコンベア83によって搬出されることにより,排出口を介して,外枠ケース101の外部へと排出される。
【0063】
なお,合せ部8は,上述した実施形態に限られず,他の形態とすることもできる。例えば,左方チャック部3と右方チャック部4が合せ部8に到達した段階で,右方チャック部用シャフト53と左方チャック部用シャフト54の両方を,装置内側に向かって約90度で回転させて,左方チャック部3と右方チャック部4とが合掌状態となるように起立させることで,食品類の左部の切断面と右部の切断面とを対面させて合わせることもできる。この場合,左部と右部が合わさった食品類を,左方チャック部3と右方チャック部4から,例えば人手によって取り外すこととしてもよい。
【0064】
(2−8.押え部)
図1及び
図2に示されるように,押え部9は,丸ベルトコンベア83による排出方向(X方向正方向)の下流側に位置する。
押え部9は,平ベルトコンベア91と複数の押え用シリンダ92を有し,これらの平ベルトコンベア91と複数の押え用シリンダ92は,押え部用架台93に備えられている。押え部用架台93には,平ベルトコンベア91の上方の位置に,複数の押え用シリンダ92が取り付けられている。
【0065】
平ベルトコンベア91の搬送面上には,丸ベルトコンベア83により搬出された食品類が連続的に供給される。平ベルトコンベア91は,コンベアフレーム91aを有し,このコンベアフレーム91aは,その高さが,丸ベルトコンベア83の搬送面の高さと一致しするように,押え部用架台93に固定されている。また,コンベアフレーム91aの表面は平滑面であり,平ベルト91bが巻きつけられる。平ベルト91bは,コンベアフレーム91aによって支持されており,コンベアフレーム91aに沿って周回する。また,押え部用架台93には,コンベアフレーム91aの長手方向両端に,平ベルト91bが周回して掛けられた一対の従動プーリ91cが設けられる。また,押え部用架台93には,コンベアフレーム91aの下方に,平ベルト91bを周回駆動させる駆動プーリ91dと,平ベルト91bを緊張させるテークアッププーリ91eが支持されている。駆動プーリ91dは,押え部用架台93に備えられた平ベルトコンベア駆動用モータ91fにより回転駆動される。
【0066】
また,平ベルトコンベア91の搬送面の高さ方向上方(Z方向正方向)には,複数の押え用シリンダ92が位置する。複数の押え用シリンダ92は,切断加工対象である食品類の数に応じて複数箇所に設けられ,押え部用架台93に取り付けられている。各押え用シリンダ92は,ピストンロッド92aを備え,各押え用シリンダ92を作動させることで,ピストンロッド92aは下方に向かって延伸する。切断加工された食品類が平ベルトコンベア91の搬送面上に揃った段階で,平ベルトコンベア91は一旦停止し,各押え用シリンダ92が作動する。押え用シリンダ92が作動すると,ピストンロッド92aが下降し,ピストンロッド92aと平ベルトコンベア91の搬送面との間で食品類を上下方向に押圧する。これにより,食品類の左部(下部)と右部(上部)の結着強度を向上させることができる。
【0067】
以上,本発明に係る切断加工装置の好ましい形態を例に挙げて説明を行った。ただし,本発明の切断加工装置は,上記した実施形態に限定されるものではなく,上記した実施形態に基づいて当業者が自明な範囲で適宜修正や改変を行うことができる。
【0068】
(3.食品類の切断加工方法及び製造方法)
続いて,上記切断加工装置を用いた食品類の切断加工方法及びその製造方法について,食品類が,カビによる表面熟成軟質チーズ(以下,単にチーズという)である場合を例に説明する。
図5は,切断加工されるチーズの各工程における状態を概念的に示したものである。
図5(a)は,切断加工装置に供給される前のチーズCの状態を示している。本発明によって切断加工されるチーズCの例は,カマンベールチーズ及びブリーチーズである。チーズCは,公知の製造工程に従って得たものであればよく,カードからホエーが排出されてある程度固まり,熟成途中で白カビが生育した状態のチーズを用いればよい。本発明において,チーズCは,円柱状に形成されていることが好ましい。このように,チーズCが円柱状であることにより,左方チャック部3及び右方チャック部4によって保持搬送する際に,その外形が崩れにくくなる。また,チーズCは,機械的に切断されて,その間に添加物質Fが挟み込まれるものであるため,一定以上の直径Dと厚さTを有するものであることが好ましい。例えば,チーズCの直径D(平均値)は,40mm〜300mm,又は50mm〜200mmであることが好ましく,一般消費者が食べ易い大きさとすることを考慮すると,60mm〜100mm,又は80mmであることが特に好ましい。また,チーズCの厚さT(平均値)は,15mm〜100mmとすればよく,特に20mm〜30mmであることが好ましい。
【0069】
本実施形態において,上記のチーズCは,例えば人手によって,切断加工装置100の供給部1において,合掌状態で起立した左方チャック部3と右方チャック部4の中央孔32a,42aに挿入される。左方チャック部3と右方チャック部4は,チーズCが挿入されると,チャック駆動機構33,43を作動させて,複数の爪部材31,41により,チーズCの左部と右部をそれぞれ保持する。切断加工装置100は,複数個(例えば,2〜10個)チーズCを同時に切断加工することができるため,左方チャック部3と右方チャック部4よって複数個のチーズCが保持される。所定個数のチーズCが保持された後,移載用ロッドレスシリンダ12が作動して,左方チャック部3と右方チャック部4が,供給用レール13に沿って,装置下流側に位置する切断部6まで,移動する。
【0070】
供給部1の下流には切断部6が位置しており,左方チャック部3と右方チャック部4の間に位置するように,ワイヤ61が垂直方向に張設されている。左方チャック部3と右方チャック部4は,チーズCをワイヤ61に押し付けながら,ワイヤ61を越えて移動することにより,チーズCの左部と右部とに垂直に分断する。
【0071】
図5(b)は,ワイヤ61によって切断された後のチーズCの状態を示している。チーズCは,垂直に形成された切断点(点線)を境として,左部Lと右部Rとに二分されている。ここで,
図5(b)において,符号T1は,チーズCの左部Lの厚さを示し,符号T2は,チーズCの右部Rの厚さを示している。本発明において,チーズCの右部Rの厚さT2(平均値)は,左部Lの厚さT2(平均値)に対して,比較的厚く設けられるものであることが好ましい(T2>T1)。例えば,切断前のチーズCの厚さTを100%とした場合に,右部Rの厚さT2は,53%〜70%,又は55%〜60%とすることが好ましい。本実施形態において,右方チャック部4は,合せ部8において左方チャック部3の上方に重ね合わされる動作をするため,右方チャック4によって保持されるチーズCの右部Rの厚さT2を比較的厚く形成することにより,右方チャック部4が反転するときに,チーズCの右部Rが変形したり,外形が崩れたりする恐れを解消できる。ただし,本発明において,チーズCを切断するにあたり,左部Lの厚さT2と右部Rの厚さT2を等しいものとしてもよい。
【0072】
ワイヤ61によるチーズCの切断後,左方チャック部3と右方チャック部4が,切断部6の下流側に位置する展開部2に移動した段階で,移動制御部5は,両チャック部3,4の移動を一旦停止させる。そして,左方チャック部3と右方チャック部4が停止すると,左方チャック部用シャフト53及び右方チャック部用シャフト54のそれぞれが,装置外側に向かって約90度で回転し,チーズCの左部Lと右部Rの切断面が上方を向くように,左方チャック部3と右方チャック部4を展開させる。
【0073】
その後,チャック駆動用サーボモータ51f,52fが駆動され,左方チャック部3と右方チャック部4は,装置下流側に位置する添加部7まで移動させる。添加部7の下方に左方チャック部3と右方チャック部4が移動すると,添加部7は,ホッパー71のホッパー駆動モータ71eによってドラム71cを回転させ,導出路71dとメッシュ71eを介して,左方チャック部3が保持するチーズCの左部Lの切断面,及び右方チャック部4が保持するチーズCの右部Rの切断面に対して添加物質Fを所定量添加する。
【0074】
図5(c)は,添加物質Fが,添加部7によって,チーズCの左部L及び右部Rの切断面に添加された状態を示している。符号Sは,添加物質Fが添加された円領域の直径を示している。添加物質Fが塗布される領域の直径S(平均値)は,例えば,チーズCの直径D(平均値)に対して,50%〜100%,又は55%〜80%,60%〜70%であることが好ましい。
【0075】
添加部7によって添加物質Fが添加された後,チャック駆動用サーボモータ51f,52fの駆動によって,左方チャック部3と右方チャック部4を合せ部8まで移動させる。このとき,添加部7と合せ部8の間には,色面積センサ73が位置しており,チーズCの左部L及び右部Rの切断面に,過不足なく添加物質Fが添加されているか否かを検出する。左方チャック部3と右方チャック部4が,合せ部8まで移動されると,両チャック部の移動が停止される。その後,右方チャック部4と連結した右方チャック部用シャフト54が,装置内方に向かって約180度で回転する。これにより,右方チャック部4が,左方チャック部3側に向かって回動し,右方チャック部4が左方チャック部3の上方に重ね合わされるようになる。このような状態となると,左方チャック部3により保持されているチーズCの左部Lの切断面と,右方チャック部4により保持されているチーズCの右部Rの切断面とが対面する。この時のチーズCの状態は,
図5(d)に示されている。
【0076】
右方チャック部4が左方チャック部3の上方に重ね合わされると,複数の上部の合せ用シリンダ81が作動して,ピストンロッド81aを下方に向かって延伸させる。複数の上部の合せ用シリンダ81のピストンロッド81aは,右方チャック部4により保持されたチーズCの右部Rを,上方から下方に向かって押圧する。また,下部の合せ用シリンダ82が作動して,ピストンロッド82aを上方に向かって延伸させることにより,支持プレート82cに支持された複数の合せ用ロッド部材82bを上昇させる。複数の合せ用ロッド部材82bは,丸ベルトコンベア83の丸ベルト83aの間を挿通して,左方チャック部3に保持されたチーズCの左部Lを,下方から上方に向かって押圧する。これにより,チーズCは,上部の合せ用シリンダ81のピストンロッド81aと,合せ用ロッド部材82bによって,上下方向から挟持されて密着する。左方チャック部3と右方チャック部4は,上部の合せ用シリンダ81と下部の合せ用シリンダ82を介して食品類が挟持された段階で,チャック駆動機構33,43を逆駆動させて,チーズCの保持を解除する。左方チャック部3と右方チャック部4により保持が解除された後,下部の合せ用シリンダ82のピストンロッド82aが下降し,チーズCは,丸ベルトコンベア83における丸ベルト83aの搬送面上に載置される。その後,丸ベルトコンベア83は,丸ベルトコンベア駆動モータ83dを駆動させて丸ベルト83aを周回させ,左部Lと右部Rが重ね合わされたチーズCを搬送方向(X方向)に搬出する。チーズCは,丸ベルトコンベア83によって搬出されることにより,排出口を介して,外枠ケース101の外部へと排出される。この時のチーズCの状態は,
図5(e)に示されている。
【0077】
丸ベルトコンベア83による排出方向の下流側には,押え部9が位置する。押え部9は,平ベルトコンベア91を有し,丸ベルトコンベア83により搬出されたチーズCが連続的に平ベルトコンベア91の搬送面上に供給される。平ベルトコンベア91の高さ方向上方(Z方向正方向)には,切断加工される食品類の数に応じた数の押え用シリンダ92が位置する。切断加工されたチーズCが平ベルトコンベア91の搬送面上に揃った段階で,平ベルトコンベア91は一旦停止し,各押え用シリンダ92が作動する。押え用シリンダ92が作動すると,ピストンロッド92aが下降し,ピストンロッド92aと平ベルトコンベア91の搬送面との間でチーズCを上下方向に押圧して,さらに密着させる。これにより,チーズCの左部Lと右部Rの結着強度が向上する。その後,再度,平ベルトコンベア91が駆動して,各チーズCは,図示しない回収台へと移送される。回収台へと移送されたチーズCは,例えば,人手によって回収される。
【実施例】
【0078】
以下,実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが,本発明は,これにより限定されるものではない。
【0079】
(実施例1)
一般的なカマンベールチーズの製造方法に従って製造して,熟成途中で白カビが生育したチーズを用意し,切断点を基準に左部と右部のそれぞれを,左方チャック部及び右方チャック部に合わせた。その後,チーズカードを同じタイミングで左方チャック部及び右方チャック部の4つの爪部材を内側に押し込むことで保持した。左方チャック部及び右方チャック部の駆動はエアシリンダで行った。保持後に水平に搬送し,切断点と同レベルの高さで且つ搬送方向と水平に張ったワイヤに当てることで略水平方向に切断することができた。切断後のカマンベールチーズカードの保持による傷跡はわずかであり,更なる熟成によりその傷跡は全く目立たないものであった。
【0080】
(実施例2)
実施例1で略水平方向に切断されたカマンベールチーズの切断後のチーズカードの左部と右部とをさらに搬送し,加水後に滅菌されたブラックペッパーを無菌的に充填したホッパーよりブラックペッパー0.5g相当となる量を機械的に均一に散布した。散布後に当該チーズカードの左部と右部とを更に搬送し,両者を合わせて,ブラックペッパーを挟んだカマンベールチーズカードを製造した。当該カマンベールチーズカードを1日間で熟成し,その後6等分となるようポーションカットを行い,個包装されたチーズ片をポリプロピレンのカップに入れ,追加熟成を行った。追加熟成の終了後にレトルト加熱殺菌処理を施した後に冷蔵温度まで冷却し,製品とした。
製品の形状を確認すると,チーズカード保持による傷跡は熟成により全く目立たないものとなった。また,ポーションカット時および個包装時にチーズの漏れや変形などが生じることはなく,通常のポーションカット品と同様に機械によりカット及び個包装することが可能であった。さらに,得られた製品は,加熱殺菌時にチーズ及び/又はペッパーが個包装フィルムから漏れ出すことなく,またチーズの形状が変形することもなかった。
【0081】
このように,本発明によれば,カビによる表面熟成軟質チーズの形状を損なうことなく,また保持による傷跡も殆どない状態で機械的に切断することができた。また,切断後に添加物質を散布する装置及び左右カードを合わせる装置も同時に搭載することで,これまで手作業が主体であった添加物質を挟んだカビによる表面熟成軟質チーズの連続生産が可能となった。