(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035470
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】液剤自動混合装置
(51)【国際特許分類】
B01F 15/04 20060101AFI20161121BHJP
B01F 3/08 20060101ALI20161121BHJP
B01F 5/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
B01F15/04 C
B01F3/08 Z
B01F5/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-72550(P2012-72550)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-202466(P2013-202466A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】村上 則幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳士
(72)【発明者】
【氏名】田畑 洋一
【審査官】
西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−299781(JP,A)
【文献】
特開2004−275890(JP,A)
【文献】
特表平11−500373(JP,A)
【文献】
特開2004−024954(JP,A)
【文献】
特開2012−020245(JP,A)
【文献】
実公平05−019074(JP,Y2)
【文献】
特開2003−038999(JP,A)
【文献】
特開平02−004697(JP,A)
【文献】
実開平01−141467(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 3/08
B01F 5/00
B01F 15/02 − 15/04
B01J 4/00 − 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
清水が圧送される清水圧送流路に液剤を混合する液剤自動混合装置であって、
液剤を貯留する液剤タンクと、
前記液剤タンク内の液剤を前記清水圧送流路に供給する液剤供給流路と、
平行配置され、同方向の一端で前記液剤供給流路に接続される第1のシリンジ及び第2のシリンジを備えると共に、前記第1のシリンジの第1ピストンと前記第2のシリンジの第2ピストンを互いに逆方向に移動させるピストン駆動部を備え、前記液剤供給流路を経由して前記液剤タンク内の液剤を吸入して前記清水圧送流路に圧送する液剤圧送手段と、
前記液剤供給流路における前記液剤タンクと前記第1のシリンジとを連通する第1吸入流路と、前記液剤タンクと前記第2のシリンジとを連通する第2吸入流路を、一方が開の時に他方を閉にするように切り替える吸入流路切り替え手段と、
前記ピストン駆動部と前記吸入流路切り替え手段を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1のシリンジが吸入行程時には前記第1吸入流路を開にして前記第2吸入流路を閉にし、前記第2のシリンジが吸入行程時には前記第2吸入流路を開にして前記第1吸入流路を閉にし、
前記ピストン駆動部は、
前記第1ピストンに一端が接続された第1ピストン棒と、
前記第2ピストンに一端が接続された第2ピストン棒と、
前記第1ピストン棒の周囲に形成されたネジ部に螺合する内ネジ部を備え、前記第1シリンジ上に軸支される第1歯車と、
前記第2ピストン棒の周囲に形成されたネジ部に螺合する内ネジ部を備え、前記第2シリンジ上に軸支されて前記第1歯車と噛み合う第2歯車と、
前記第1歯車と前記第2歯車の一方に噛み合う駆動歯車と、
前記駆動歯車を駆動する駆動モータとを備え、
前記制御部は、前記第1ピストン又は前記第2ピストンのストローク端を検知して前記駆動モータを逆転駆動することを特徴とする液剤自動混合装置。
【請求項2】
前記液剤供給流路は、
前記第1吸入流路から分岐した第1圧送流路と、前記第2吸入流路から分岐した第2圧送流路と、前記第1圧送流路と前記第2圧送流路を合流させて前記清水圧送流路に接続する合流流路を備え、
前記第1圧送流路及び前記第2圧送流路、又は前記合流流路に逆止弁を設けていることを特徴とする請求項1記載の液剤自動混合装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記清水圧送流路に設けた圧送状態検知手段の検知出力に基づいて、前記ピストン駆動部のピストン移動速度を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の液剤自動混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と液剤を自動混合する液剤自動混合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液剤散布装置は、予め水で所定の濃度に希釈された液剤をタンクに貯留し、散布用ポンプによってこのタンクから吸入した液剤を散布ノズルに圧送して噴霧するものが知られている。このような液剤散布装置において効率的な散布作業を行うためには、大きなタンク容量が必要になり、タンク容量が大きくなると、余剰液剤の処理やタンク洗浄水の処理が問題になる。この問題を解消するために、水タンクと液剤タンクを分けて配備し、水タンクから散布ノズルに至る流路に液剤タンクからの液剤供給流路を合流させ、散布水のみに必要な量の液剤を混合させて散布する液剤混合散布装置が近年普及している。
【0003】
このような液剤混合散布装置には、チューブポンプ式やダイヤフラムポンプ式などの液剤供給ポンプを用いる液剤混合装置が用いられている。また、下記特許文献1には、複数本のシリンダ・ピストンポンプを用いた液剤混合装置が用いられている。
【0004】
特許文献1に記載の従来技術は、液剤容器に充填した液剤を、噴霧用ポンプにより加圧された清水管路中に注入して所定の濃度に混合・希釈する液剤注入・混合装置であり、複数本のシリンダ内のピストンを同方向に移動させ、一つのシリンダの両端に吸・排出口を設け、一つのシリンダ内を移動するピストンの一方側に清水タンクを接続し、同ピストンの他方側に薬液などの液剤タンクを接続したものである。これによると、清水の散布圧を利用してピストンの移動補助を行い、一つのシリンダにおけるピストンの一方側へ清水を吸入する行程でピストンの他方側の液剤を排出し、このピストンの他方側へ液剤を吸入する行程でピストンの一方側の清水を清水タンクに戻している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−2997821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来技術によると、一つのシリンダ内の行程で清水を吸入する行程と薬液などの液剤を吸入する行程があるので、薬液などの液剤によって汚されたシリンダ内に清水が吸入されることになって、シリンダ内に吸入された清水には若干ではあるが薬液などの液剤が混合されることになる。そして、シリンダ内の清水は、次の行程で清水タンクに戻されることになるので、薬液などの液剤が混合した清水によって清水タングが汚染されることになる。また、シリンダと清水タンクとを繋ぐ配管系にも薬液などの液剤が僅かに混合された清水が流れることになるので、この配管系も液剤によって汚染されることになる。
【0007】
これによって、従来技術の装置は、メンテナンス時には清水タンクや、清水タンクとシリンダとを繋ぐ配管系を清掃することが必要になり、メンテナンスに多大な労力を要すると共に、薬液などの液剤で汚染されたメンテナンス時の清掃水の処理が問題になる。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、液剤の供給流路を清水の圧送流路と明確に区分することでメンテナンス性の改善を図ること、メンテナンス時に発生する液剤で汚染された清掃水処理問題を解消すること、清水流路の流量検出と合わせて精度の高い液剤の希釈濃度を実現することができること、既存の動力散布装置に簡易に組み込みこんで精度の高い液剤混合を行うことができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明による液剤自動混合装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0010】
清水が圧送される清水圧送流路に液剤を混合する液剤自動混合装置であって、液剤を貯留する液剤タンクと、前記液剤タンク内の液剤を前記清水圧送流路に供給する液剤供給流路と、平行配置され、同方向の一端で前記液剤供給流路に接続される第1のシリンジ及び第2のシリンジを備えると共に、前記第1のシリンジの第1ピストンと前記第2のシリンジの第2ピストンを互いに逆方向に移動させるピストン駆動部を備え、前記液剤供給流路を経由して前記液剤タンク内の液剤を吸入して前記清水圧送流路に圧送する液剤圧送手段と、前記液剤供給流路における前記液剤タンクと前記第1のシリンジとを連通する第1吸入流路と、前記液剤タンクと前記第2のシリンジとを連通する第2吸入流路を、一方が開の時に他方を閉にするように切り替える吸入流路切り替え手段と、前記ピストン駆動部と前記吸入流路切り替え手段を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記第1のシリンジが吸入行程時には前記第1吸入流路を開にして前記第2吸入流路を閉にし、前記第2のシリンジが吸入行程時には前記第2吸入流路を開にして前記第1吸入流路を閉に
し、前記ピストン駆動部は、前記第1ピストンに一端が接続された第1ピストン棒と、前記第2ピストンに一端が接続された第2ピストン棒と、前記第1ピストン棒の周囲に形成されたネジ部に螺合する内ネジ部を備え、前記第1シリンジ上に軸支される第1歯車と、前記第2ピストン棒の周囲に形成されたネジ部に螺合する内ネジ部を備え、前記第2シリンジ上に軸支されて前記第1歯車と噛み合う第2歯車と、前記第1歯車と前記第2歯車の一方に噛み合う駆動歯車と、前記駆動歯車を駆動する駆動モータとを備え、前記制御部は、前記第1ピストン又は前記第2ピストンのストローク端を検知して前記駆動モータを逆転駆動することを特徴とする液剤自動混合装置。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を備える本発明の液剤自動混合装置は、前述した特徴を備えることで、以下の効果を得ることができる。
液剤の供給流路を清水の圧送流路と明確に区分することができメンテナンス性の改善を図ることができる。また、清水のタンクに液剤を混入させないことでメンテナンス時の清掃水処理の問題を解消することができる。清水流路の流量検出などと合わせて精度の高い液剤の希釈濃度を実現することができる。既存の動力散布装置に簡易に組み込むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液剤自動混合装置、この液剤自動混合装置が適用された液剤混合散布装置を示した説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る液剤自動混合装置において、ピストン駆動部の一部の構成を具体的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る液剤自動混合装置、この液剤自動混合装置が適用された液剤混合散布装置を示した説明図である。ここでの液剤とは、農薬などの液体薬剤、液体肥料などを含むものである。
【0014】
液剤自動混合装置1は、液剤混合散布装置2の清水圧送流路21に液剤を適正量供給するための装置である。液剤自動混合装置1は、液剤タンク10、液剤供給流路3、液剤圧送手段4、吸入流路切り替え手段5、制御部6を備えている。
【0015】
液剤タンク10は、薬液などの液剤を貯留する容器であり、比較的小容量の容器を用いることができる。市販の薬液容器をそのまま液剤タンク10として用いることもできる。液剤供給流路3は、液剤タンク10内の液剤を清水圧送流路21に供給する流路である。
【0016】
液剤圧送手段4は、ピストン駆動部40、第1のシリンジ4A、第2のシリンジ4Bを備えている。第1のシリンジ4Aと第2のシリンジ4Bは平行配置されており、それぞれが同方向の一端で液剤供給流路3に接続されている。第1のシリンジ4A内には第1ピストン4A1が備えられ、第2のシリンジ4B内には第2ピストン4B1が備えられている。
【0017】
ピストン駆動部40は、第1ピストン4A1と第2ピストン4B1を互いに逆方向に移動させるものである。具体的には、ピストン駆動部40は、第1ピストン4A1に一端が接続された第1ピストン棒41と、第2ピストン4B1に一端が接続された第2ピストン棒42と、第1歯車43と、第2歯車44と、駆動歯車45と、駆動モータ46を備えている。
【0018】
図2は、ピストン駆動部40の一部の構成を具体的に示した説明図である。第1のシリンジ4A(又は第2のシリンジ4B)内の第1ピストン4A1(又は第2ピストン4B1)に一端が接続された第1ピストン棒41(又は第2ピストン棒42)は、その周囲に台形ネジなどのネジ部41aが形成されている。第1のシリンジ4A(又は第2のシリンジ4B)上に軸支された第1歯車43(又は第2歯車44)は、第1ピストン棒41(又は第2ピストン棒42)のネジ部41aに螺合する内ネジ部43aを備えており、第1歯車43(又は第2歯車44)が回転駆動されると、スラストベアリング41b,41cで支持部材41eに摺動自在に支持された第1ピストン棒41(又は第2ピストン棒42)が矢印に示した軸方向に摺動するようになっている。
【0019】
また、第1歯車43(又は第2歯車44)は、駆動歯車45と噛み合っており、駆動モータ46が回転駆動すると、駆動歯車45が回転駆動し、駆動歯車45に噛み合った第1歯車43(又は第2歯車44)が回転駆動され、前述したように、第1ピストン棒41(又は第2ピストン棒42)が軸方向に摺動する。第1ピストン棒41(又は第2ピストン棒42)の一端には軸受41dを介して第1ピストン4A1(又は第2ピストン4B1)が接続されており、第1ピストン棒41(又は第2ピストン棒42)の摺動によって第1ピストン4A1(又は第2ピストン4B1)が第1のシリンジ4A(又は第2のシリンジ4B)内を移動する。
【0020】
この際、第1のシリンジ4A上に軸支された第1歯車43と第2のシリンジ4B上に軸支された第2歯車44は互いに噛み合っており、駆動歯車45の一方向の回転に対して、第1歯車43と第2歯車44は互いに逆方向に回転することになる。これによって、第1ピストン4A1と第2ピストン4B1は互いに逆方向に移動することになる。
【0021】
液剤供給流路3は、液剤タンク10と第1のシリンジ4Aとを連通する第1吸入流路31と液剤タンク10と第2のシリンジ4Bとを連通する第2吸入流路32を備えている。また、液剤供給流路3は、第1吸入流路31から分岐した第1圧送流路33と、第2吸入流路32から分岐した第2圧送流路34と、第1圧送流路33と第2圧送流路34を合流させて清水圧送流路21に接続する合流流路30を備えている。図示の例では、第1圧送流路33と第2圧送流路34には逆止弁33A,34Aをそれぞれ設けている。この逆止弁33A,34Aに換えて合流流路30に一つの逆止弁を設けてもよい。
【0022】
吸入流路切り替え手段5は、液剤タンク10と第1のシリンジ4Aとを連通する第1吸入流路31と、液剤タンク10と第2のシリンジ4Bとを連通する第2吸入流路32を、一方が開の時に他方を閉にするように切り替えるものである。具体的には、吸入流路切り替え手段5は、第1吸入流路31に設けられる第1開閉弁51、第2吸入流路32に設けられる第2開閉弁52、これらを駆動する駆動モータ50、駆動モータ50の動力を第1開閉弁51及び第2開閉弁52に伝達する切り替え機構53を備えている。
【0023】
次に、制御部6の機能を説明する。制御部6の一つの機能は、ピストン駆動部40における第1ピストン4A1と第2ピストン4B1の移動を継続的に行うことにある。これを実行するために、第1ピストン4A1と第2ピストン4B1の移動端の一方又は両方、或いは、第1ピストン棒41又は第2ピストン棒42の移動端の一方又は両方に、第1ピストン4A1又は第2ピストン4B1のストローク端を検知する検知手段61A,61Bを設けている。そして、制御部6は、この検知手段61A,61Bが第1ピストン4A1又は第2ピストン4B1のストローク端を検知すると、駆動モータ46を逆転駆動して、第1ピストン4A1と第2ピストン4B1の移動方向を反転させ、継続的に第1ピストン4A1と第2ピストン4B1を移動させる。
【0024】
制御部6の他の機能は、ピストン駆動部40と吸入流路切り替え手段5の動作を連動制御することにあり、第1のシリンジ4Aが吸入行程時には第1吸入流路31を開にして第2吸入流路32を閉にし、第2のシリンジ4Bが吸入行程時には第2吸入流路32を開にして第1吸入流路31を閉にする。具体的には、制御部6は、第1のシリンジ4Aの吸入行程の終了時を検知手段61Aの検知出力によって認識し、第2のシリンジ4Bの吸入行程の終了時を検知手段61Bの検知出力によって認識する。そして、第2のシリンジ4Bの吸入行程の終了時が第1のシリンジ4Aの吸入行程の開始時になるので、検知手段61Bの検知出力に基づいて、駆動モータ50を駆動させて第1開閉弁51を開にして第2開閉弁52を閉にし、第1のシリンジ4Aの吸入行程の終了時が第2のシリンジ4Bの吸入行程の開始時になるので、検知手段61Aの検知出力に基づいて、駆動モータ50を駆動させて第2開閉弁52を開にして第1開閉弁51を閉にする。
【0025】
また、制御部6の他の機能は、清水圧送流路21に供給する液剤の供給量を制御することにある。このために、制御部6は清水圧送流路21に設けた圧送状態検知手段22の検知出力に基づいて、ピストン駆動部40のピストン移動速度を制御する。ピストン移動速度は駆動モータ46の回転速度によって制御される。液剤の供給量を多くするには駆動モータ46の回転数を上げてピストン移動速度を速くし、液剤の供給量を少なくするには駆動モータ46の回転数を下げてピストン移動速度を遅くする。圧送状態検知手段22は、流量センサ又は圧力センサによって構成することができる。制御部6は、圧送状態検知手段22の出力に基づいて清水圧送流路21を流れる清水の流量を認識し、設定された希釈濃度を得るための液剤供給量を求める。そして、求めた液剤供給量に対応するようにピストン移動速度を制御する。
【0026】
液剤混合散布装置2は、液剤自動混合装置1を除いた部分では既知の動力散布装置の構成を備えるものであり、清水タンク20、散布用ポンプ23、圧力調整弁24、散布ノズル25などを備えている。散布用ポンプ23の圧力で清水が圧送される清水圧送流路21には、前述したように圧送状態検知手段22が設けられ、その上流には逆止弁26が必要に応じて設けられる。
【0027】
液剤自動混合装置1の合流流路30は、清水圧送流路21における圧送状態検知手段22の下流側に接続される。合流流路30の接続点21Aと圧送状態検知手段22の設置位置とは近接していた方が好ましい。接続点21Aと圧送状態検知手段22の設置位置とを近づけることで、圧送状態検知手段22の検知出力が接続点21Aにおける値に近くなり、より高精度に設定された希釈濃度を実現することが可能になる。
【0028】
前述した制御部6の機能に基づく液剤自動混合装置1の動作を説明する。制御部6は一つの行程では、第1のシリンジ4Aにおける第1ピストン4A1を上昇させ、第2のシリンジ4Bにおける第2ピストン4B1を下降させて、第1のシリンジ4Aにおいては吸入行程を実行し、第2のシリンジ4Bにおいては圧送行程を実行する。その際には、吸入流路切り替え手段5によって第1開閉弁51が開になり、第2開閉弁52が閉になるので、液剤供給流路3においては、第1吸入流路31を介して液剤タンク10から液剤が第1シリンジ4A内に吸入され、第2シリンジ4B内に前工程で吸入されていた液剤が第2圧送流路34を介して合流流路30に送られ、清水圧送流路21に液剤が混入される。
【0029】
その後、第1ピストン4A1がストローク端に達すると、駆動モータ46の回転が逆転され、第2のシリンジ4Bにおける第2ピストン4B1を上昇させ、第1のシリンジ4Aにおける第1ピストン4A1を下降させて、第2のシリンジ4Bにおいては吸入行程を実行し、第1のシリンジ4Aにおいては圧送行程を実行する。その際には、吸入流路切り替え手段5によって第2開閉弁52が開になり、第1開閉弁51が閉になるので、液剤供給流路3においては、第2吸入流路32を介して液剤タンク10から液剤が第2シリンジ4B内に吸入され、第1シリンジ4A内に前工程で吸入されていた液剤が第1圧送流路33を介して合流流路30に送られ、清水圧送流路21に液剤が混入される。このような行程を繰り返すことで、連続的に液剤を清水圧送流路21に供給することができる。
【0030】
また、制御部6は、清水圧送流路21における圧送状態検知手段22の検知出力に基づいて、第1ピストン4A1及び第2ピストン4B1の移動速度を制御し、清水圧送流路21内の流量に対して設定された希釈濃度が得られるように液剤の供給量を制御する。これによって、散布流量を変化させた場合であっても常に設定された液剤の希釈濃度を得ることができる。
【0031】
以上説明した、液剤自動混合装置1の特徴を列挙すると以下のとおりになる。
【0032】
液剤自動混合装置1は、合流流路30を清水圧送流路21に接続するだけで精度の高い液剤混合散布を行うことができる。これにより、既存の動力散布機に後付けすることで、高精度の液剤混合散布を行うことが可能になる。
【0033】
液剤自動混合装置1は、液剤の供給量を第1ピストン4A1,第2ピストン4B1の移動速度で容易に規定できるので、液剤供給流路3に流量センサを設けることなく、精度の高い液剤供給量の制御が可能になる。
【0034】
液剤自動混合装置1は、清水圧送流路21における任意の位置に合流流路30を接続することができるので、清水圧送流路21における圧送状態検知手段(流量センサ又は圧力センサ)22の下流近傍に合流流路30を接続することで、接続点21Aでの清水の圧送流量の計測値に近い値で液剤の供給量を制御することができ、精度の高い希釈濃度を得ることができる。
【0035】
液剤自動混合装置1を用いると、液剤の流路が液剤供給流路3に限定されるので、液剤混合散布装置2における接続点21Aより上流側が液剤によって汚染されることがない。これによって、清水タンク20や清水圧送流路21のメンテナンスが容易になる。また、メンテナンス時においては液剤で汚染された清掃水を極力少なくすることができる。
【0036】
液剤自動混合装置1のピストン駆動部40は、第1ピストン棒41,第2ピストン棒42のネジ部41aによって第1歯車43,第2歯車44の回転運動を直線運動に変換するので、高い減速比を得ることができる。これによって、高精度な速度制御によって液剤供給量の精度が向上する。また、2本以上のシリンジを連結する場合に、第1歯車43,第2歯車44への歯車の連結のみによって簡易にシリンジ数を増やすことが可能になるので、多種の液剤を簡易に混合することが可能になる。
【符号の説明】
【0037】
1:液剤自動混合装置,10:液剤タンク,
2:液剤混合散布装置,20:清水タンク,
21:清水圧送流路,21A:接続点
22:圧送状態検知手段,23:散布用ポンプ,
24:圧力調整弁,25:散布ノズル,26:逆止弁,
3:液剤供給流路,30:合流流路,
31:第1吸入流路,32:第2吸入流路,
33:第1圧送流路,34:第2圧送流路,
33A,34A:逆止弁,
4:液剤圧送手段,
4A:第1のシリンジ,4A1:第1ピストン,
4B:第2のシリンジ,4B1:第2ピストン,
40:ピストン駆動部,41:第1ピストン棒,41a:ネジ部,
41b,41c:スラストベアリング,41d:軸受,
42:第2ピストン棒,43:第1歯車,43a:内ネジ部,
44:第2歯車,45:駆動歯車,46:駆動モータ,
5:吸入流路切り替え手段,50:駆動モータ,
51:第1開閉弁,52:第2開閉弁,53:切り替え機構,
6:制御部,61A,61B:検知手段