(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料ガスを採取したバイアルビン中のガスについてシリンジへの吸引、搬送、ガスクロマトグラフへの注入を行うガス自動注入装置において、任意の段数のスロープを備えたバイアルビンラックと、バイアルビンを保持可能なスリットが設けられた回転盤とを有し、バイアルビンラックに装填されたバイアルビンがスロープから落下して回転盤のスリットに横向きに保持され、その後回転盤の回転により直立に保持されて、バイアルビン内のガスがシリンジに吸引されることを特徴とするガス自動注入装置。
前記バイアルビンのキャップにICチップが貼付され、試料ガス採取の際にICチップに入力された所用の情報が、回転盤の側辺部外に取り付けられたICチップリーダーによって読み取られ、試料ガスの分析結果等と併せた情報処理を可能とする請求項1に記載のガス自動注入装置。
前記バイアルビン内のガスのシリンジへの吸引、搬送、ガスクロマトグラフへの注入が、シリンジのバレルを保持したバレル駆動部の下降によりニードルが直立に保持されたバイアルビンのキャップを通過すると、プランジャを保持したプランジャ駆動部が上昇してバレル内へガスを吸引し、その後バレル駆動部とプランジャ駆動部が一体となって上昇し、その後シリンジ輸送機構の駆動によりガスクロマトグラフの注入口へバレル駆動部とプランジャ駆動部が移動して、バレル駆動部とプランジャ駆動部が一体となって下降し、ニードルが注入口を通過するとプランジャ駆動部が下降してガスを注入口へ注入する請求項1又は請求項2に記載のガス自動注入装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のクロマトグラフ用ガス自動注入装置は、ガスクロマトマトグラフ本体に隣接して設けられるバイアルビンラック、バイアルビン回転機構、ICタグリーダー、シリンジユニットにより構成される。以下本発明の実施の態様について詳説する。
【0011】
本発明のガス自動注入装置の全体斜視図を
図1に示した。
図1に示すように本発明のガス自動注入装置は、ガスクロマトグラフ10の一側面に配置され、操作パネルケース81上に設置されたバイアルビンラック20、バイアルビンラック20のバイアルビン進行方向に直交して回転盤が回転するように設けられるバイアルビン回転機構30、バイアルビン回転機構30に隣接して設けられるICタグリーダー40、バイアルビン回転機構30の上方とガスクロマトグラフ注入口を移動可能に設けられるシリンジユニット50、及び操作パネルケース81に格納される操作パネルにより構成される。以下本発明について各構成の機構を説明する。
【0012】
<バイアルビン>
本発明のバイアルビン12は、底面を有する円筒形状であり、例えば直径27mm、高さ55mm、容量15mlの市販のガスクログラフ用バイアルビンを用いることができる。該バイアルビンの上面の開口部には、中央部に穴を有するメラミン樹脂製のキャップが取り付けられ、該キャップの内部にブチルゴム製の中栓が挿入・固定される。該中栓をシリンジのニードルが通過することにより、分析対象試料ガスをバイアルビンに封入・吸出することができる。
【0013】
前記バイアルビンのキャップの径は、バイアルビンを横置したときにバイアルビンが直進回転するように、バイアルビン本体の径以下であることが好ましい。
【0014】
前記バイアルビンのキャップの上面内部側面に後記のICタグが貼付され、前記中栓により固定される。
【0015】
前記バイアルビンへの試料ガスの封入は、任意の方法で行うことができる。野外におけるガスの封入としては、先に本発明者等が提示した、「ガス採取装置(特許4831583号公報)」等が効率的に利用できる。
【0016】
前記ICタグは、恒久的に作動し、安価に生産でき、電池を内蔵する必要がないパッシブタグが好ましく、具体的にはISO15693に準拠したパッシブタグがより好ましく、例えばトッパン印刷社製の5mm×4mmの角型チップが特に好ましい。
【0017】
前記ICタグには、試料が採取された時刻、場所、気温、湿度等の分析目的に応じた所用のデータが、試料ガス封入時に入力される。
【0018】
<バイアルビンラック>
図2にバイアルビンラック20の斜視図を示した。
図2に示すように、バイアルビンラックは筺体で構成され、正面は開閉可能な扉となっている。該バイアルビンラック20は、操作パネルケース81の上面に、バイアルビン装填の際に取外し可能に固定される。
【0019】
前記バイアルビンラックの内部には、横向きに装填されたバイアルビン12が自然落下するようなスロープ21が、任意の段数、任意の傾斜をつけて設けられる。該スロープ21の最終部には、該バイアルビンがバイアルビンラックの下部側面から後記バイアルビン回転機構の回転盤のスリット36へ落下する開口部23が設けられている。
【0020】
前記バイアルビンラック、及びスロープは、外部から観察可能な透明体によることが好ましく、中でもアクリル樹脂製がより好ましい。
【0021】
前記バイアルビンの装填は、バイアルビンラックの正面の扉を開き、手動によりバイアルビンを横向きに前記スロープに装填する。
【0022】
<バイアルビン回転機構>
図1に示すように前記バイアルビンラックに接続して、バイアルビンの落下方向と直角に回転盤が回転するようにバイアルビン回転機構30が設けられる。該バイアルビン回転機構30の斜視模式図を
図3に示す。
図3に示される通り、バイアルビン回転機構は、回転盤ホルダー33と、回転盤ホルダーにより保持される回転軸35と、回転軸を回転する回転盤31とにより構成される。またバイアルビン回転機構30の側部には、後記のICタグリーダー40が設けられ、回転盤ホルダーの上部には後記の試料採取用ガイド45が設けられる。
【0023】
前記回転盤31は、前記回転軸35で回転盤ホルダーに固定され、該回転軸35はステッピングモータ38の動力をタイミングベルト39で連結することにより駆動し、前記回転盤を回転させる。
【0024】
前記回転盤31には、円形盤の一の面に、1個のバイアルビンを嵌込み可能な大きさのスリット36が設けられている。前記回転盤の回転は、該スリットが4点の定位置で静止するように制御される。
【0025】
前記4点の定位置は、バイアルビンラックからの時計の文字盤で表示すると概ね、(a)9時位置(バイアルビン装填)、(b)10時位置(ICタグリーダー読み取り)、(c)12時位置(試料ガス抽出)、(d)5時位置(バイアルビン排出)である。
【0026】
前記回転盤31は、前記スリット36が9時位置において、前記バイアルビンラックの開口部23より落下したバイアルビンを該スリット36に、該バイアルビンを横向きの状態でバイアルビンのキャップが回転盤の周部分となるように受け入れる。その後回転盤が回転すると、バイアルビンは前記バイアルビンラックの側面と該スリットにより保持される。
【0027】
<ICタグリーダー>
前記回転盤は、前記バイアルビン12をスリット36に保持した後に回転して、概ねスリットが10時位置で停止する。該スリットが10時位置の回転盤の側辺部外に、
図3に示すようにICチップリーダー40が、ICタグが貼付されたバイアルビンのキャップから5〜10mm離れて取り付けられており、前記バイアルビンキャップに貼付されたICタグの情報を読み取る。
【0028】
前記ICタグリーダーは、分析目的のサンプル情報だけを的確に読み取ることが可能な、通信可能距離が短いICタグリーダーを用いることができる。中でも電波利用の許可を必要としない13.56MHzの周波数を利用し、非接触で1cm以下の範囲のチップ情報を読み取ることができ、かつ繰り返し情報を上書きして使用ができるICタグリーダーが好ましく、例えばRF-IDリーダー(タカヤ製TR3-C201)が特に好ましい。
【0029】
<試料採取用ガイド>
前記ICタグリーダーによりICタグに予め入力された情報が読み取られた後に、前記回転盤は更に回転し、バイアルビン回転盤30のスリットが12時の位置で停止し、バイアルビンがキャップを上に直立した状態に保持される。スリットが12時の位置の真上には、試料採取用ガイド45が回転盤ホルダーに固設される。
【0030】
前記シリンジ試料採取用ガイド45は、中央に円錐状のガイド穴を設けた構造を持ち、ガスタイトシリンジのニードルが前記バイアルビンキャップの中央に正確に挿入されることを担保する。また該ニードルがバイアルビンから引き抜かれる際に、バイアルビンのストッパーの役割も果たす。
【0031】
<シリンジユニット>
シリンジユニットは、バイアルビンの試料ガスを自動的にシリンジに吸引し、該シリンジをガスクロマトグラフ注入口へ自動搬送して、ガスクロマトグラフ注入口へ自動的に注入するもので、斯かる機能を有するものであればいかなる形態のものも用いることができる。以下本発明において用いられた一実施の形態を以下に説明する。
【0032】
本発明に用いられるシリンジユニットは、バレル駆動部、プランジャ駆動部、及びシリンジ搬送機構とよりなる。
図4にバレル駆動部51とプランジャ駆動部60の構成説明図を、
図5にシリンジ搬送機構70の構成説明図を示す。
【0033】
本発明に用いられるシリンジは、市販のガスタイトシリンジを使用することができ、中でもVICI Pressure-Lock Precision Analytical Syringe, Series A の2mlのガスタイトシリンジが好ましい。該ガスタイトシリンジは、ニードル57a、バレル57b、プランジャ57cにより構成される。
【0034】
前記バレル駆動部51は、
図4に示す通り、バレルホルダー52、バレルホルダー駆動アーム53及びバレル駆動エアシリンダー55よりなる。バレルホルダー52はバレルホルダー駆動アーム53と固定され、バレルホルダー駆動アーム53はシリンジユニット支持ポール71とスライド可能に固定されている。バレルホルダー駆動アームの上端部にエアシリンダー55が設けられ、図に示さないエアコンプレッサーからのエアーが配線・配管内包チューブ79に格納されるエアーホースを経由してエアシリンダー55を駆動することにより、バレルホルダー駆動アーム53、及びバレルホルダー51が垂直に上下する。
【0035】
前記バレルホルダー52は、その一部がシリンジのバレル57bを内包、固定し、該バレルの下部にニードル57aがバレルホルダーから延伸している。シリンジからの試料ガス採取時においては、該バレル駆動部は、ニードルが前記シリンジ試料採取用ガイド45のガイド穴を通過して、バイアルビンのキャップ中央部に挿入されるように、該ニードルが該ガイド穴の直上に設定される。
【0036】
前記バレルホルダー駆動アーム53の下降に伴い、ニードルがバイアルビンのキャップ内に挿入され所定位置で停止して、後記プランジャ駆動部の作動により、シリンジのバレル内に試料ガスが吸引されると、バレルホルダー駆動スライドが上昇して、ニードルがバイアルビンから引き抜かれる。
【0037】
前記プランジャ駆動部60は、
図4に示す通り、プランジャホルダー63、プランジャホルダー駆動アーム65及びプランジャ駆動サーボモータ67よりなる。プランジャホルダー63はシリンジのプランジャ57c先端部を固定し、該プランジャ57cの他端は前記バレル57b内に挿入されている。
【0038】
前記プランジャホルダー駆動アーム65は前記バレルホルダー駆動アーム53に固定され、前記プランジャホルダー63をスライド可能に保持する。またプランジャホルダー駆動アーム65の上部にプランジャ駆動サーボモータ67が設けられ、プランジャ駆動サーボモータ67の動力によりプランジャホルダー63が垂直に上下する。
【0039】
前記プランジャ駆動部は、前記バレル駆動部の上下の動きと一体となって上下に動き、前記ニードルがバイアルビンのキャップ内に挿入されたところで、プランジャ駆動サーボモータ67が作動してプランジャホルダー63が所定の位置まで上昇し、それに伴いプランジャ57cが垂直に上方移動して、バレル内に試料ガスを吸引する。
【0040】
前記バレル内に所定量の試料ガスが吸引されると、前記バレル駆動部は前記プランジャ駆動部と一体となって上昇して、バレル内に試料ガスが吸引されたシリンジごと上方に移動して、所定の位置で停止する。
【0041】
前記バレル内に試料ガスが吸引され、前記バレル駆動部と前記プランジャ駆動部が一体となって上方に動き所定位置で停止すると、シリンジ搬送機構70が駆動する。シリンジ搬送機構は、シリンジ搬送ガイド、シリンジ搬送サーボモータ、電動スライダー、シリンジユニット支持ポールよりなる。シリンジ搬送機構の構成説明図を
図5に示す。
【0042】
図5において、71はシリンジユニット支持ポールを、73はシリンジ搬送ガイドを、75はシリンジ搬送サーボモータを、79は配線・配管内包チューブをそれぞれ示し、またシリンジユニット支持ポールの背面下部に電動スライダー77がシリンジ搬送ガイド73に噛み合って設けられる。
【0043】
前記シリンジ搬送機構は、シリンジ搬送サーボモータ75の動力により電動スライダー77が駆動すると、シリンジユニット支持ポール71が、シリンジ搬送ガイドに沿って横移動して、前記ニードル57aが前記シリンジ試料採取用ガイド45とガスクロマトグラフ試料注入口11の間を移動し、所定位置で停止する。
【0044】
前記バレル内に試料ガスが吸引され、前記バレル駆動部と前記プランジャ駆動部が一体となって上昇し、停止すると、前記シリンジ搬送サーボモータ75が駆動して、シリンジユニット支持ポール71が横移動し、前記ニードル57aがガスクロマトグラフ試料注入口11の真上の位置で停止する。
【0045】
前記ニードル57aがガスクロマトグラフ試料注入口の真上の位置で停止すると、前記バレル駆動部とプランジャ駆動部が、前記シリンジへのガスの吸引とは逆の動作を行い、ガスクロマトグラフへ試料を注入する。
【0046】
即ち前記ニードル57aがガスクロマトグラフ試料注入口の真上の位置で停止すると、前記バレル駆動エアシリンダー55が駆動して、バレルホルダー駆動アーム53がプランジャホルダー駆動アーム65と一体となって下降して、ニードルがガスクロマトグラフ試料注入口を貫通する。該ニードルがガスクロマトグラフ試料注入口を貫通すると、プランジャ駆動サーボモータ67が駆動してプランジャを下方に押し下げ、試料ガスをガスクロマトグラフ内へ注入する。
【0047】
前記試料ガスをガスクロマトグラフ内へ注入すると、前記バレル駆動部と前記プランジャ駆動部が一体となって上昇し、停止する。その後前記シリンジ搬送機構が駆動して、シリンジユニット支持ポール70が前記シリンジ試料採取用ガイド方向に横移動し、前記ニードル57aがシリンジ試料採取用ガイドの真上の位置で停止して、次のバイアルビンに対応する。
【0048】
一方、前記バレル内に試料ガスが吸引され、前記バレル駆動部と前記プランジャ駆動部が一体となって上昇し、停止すると、前記シリンジ搬送機構が駆動するとともに、前記回転盤が回転して回転盤は5時の位置で静止し、バイアルビン回収トレー27へ排出する。その後回転盤は更に回転して、9時の位置で静止して、新たなバイアルビンを受け入れる。
【0049】
前記回転盤の回転及び4点の定位置での静止、並びに前記バレル駆動部、プランジャ駆動部及びシリンジ搬送機構の駆動及び停止は、操作パネルケース81に格納される操作パネルにより制御される。
【0050】
また分析対象ガス試料について、想定される試料濃度が大気濃度レベルと比較して著しく高い等の場合には、当該試料のシリンジからの排出後次の試料吸引前に、シリンジ内を大気により洗浄する必要が生じる。そのため、あらかじめ高濃度試料を取り扱うことがわかっている場合には、試料吸引前に、一回ないし数回のプランジャ部の上下往復動作(いわゆる空打ち動作)をプログラムに加える。
【0051】
<試料ガスの測定>
前記試料ガスのガスクロマトグラフ内への注入後に、前記シリンジ搬送機構の駆動とともに、注入された試料の分析スタート信号がガスクロマトグラフへ送信される。
【0052】
ガスクロマトグラフ内に注入された試料ガスは、ガスクロマトグラフィーの所定の分析方法により分析され、分析結果はICタグで読み込んだ情報とともにガスクロマトグラフ計測システム上に保存される。