特許第6035618号(P6035618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035618
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】多層フィルム及び光電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20161121BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20161121BHJP
   H01L 31/049 20140101ALI20161121BHJP
   H01L 31/056 20140101ALI20161121BHJP
【FI】
   B32B27/20 Z
   B32B27/00 N
   H01L31/04 562
   H01L31/04 624
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-515938(P2015-515938)
(86)(22)【出願日】2013年6月4日
(65)【公表番号】特表2015-520053(P2015-520053A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】KR2013004915
(87)【国際公開番号】WO2013183910
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2015年1月26日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0059972
(32)【優先日】2012年6月4日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0059971
(32)【優先日】2012年6月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・チョル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・シク・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ド・ウォン・アン
【審査官】 岸 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−101849(JP,A)
【文献】 特開昭59−041249(JP,A)
【文献】 特開平11−170462(JP,A)
【文献】 特開2013−052635(JP,A)
【文献】 特開2009−248371(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/030745(WO,A1)
【文献】 特開2011−258879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B05D 1/00− 7/26
C09D 1/00− 10/00
C09D101/00−201/10
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
H01L 31/02− 31/18
H01L 51/42− 51/48
H02S 10/00− 10/40
H02S 30/00− 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子をそれぞれ異なる層に含み、前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層が、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層より上部に位置し、
前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層は、光電池の下部に配置されることを特徴とする多層フィルム。
【請求項2】
前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層が、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層より入射光の側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層の紫外線に対する反射率が、前記バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の紫外線に対する反射率より高いことを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記多層フィルムは、280nm〜400nm波長領域の紫外線に対する反射率が10%以上であり、400nm〜1200nm波長領域の可視光線に対する反射率が60%以上であることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子は、硫酸バリウム(BaSO)、アルミニウムナイトライド(AlN)、ボロンナイトライド(BN)、ボロンアセナイド(Boron Arsenide、B12As)、ガリウムナイトライド(GaN)、亜鉛サルファイド(Zinc Sulfide)、酸化亜鉛(Zinc Oxide)及び酸化錫(Tin Oxide)よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子は、二酸化チタン(TiO)、アルミニウムアセナイド(AlAs)、ガリウムアセナイド(GaAs)、ガリウムサルファイド(GaS)、錫サルファイド(SnS)、鉛サルファイド(PbS)、シリコンカーバイド(SiC)及びバリウムチタネート(BaTiO)よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記多層フィルムは、少なくとも1つ以上の透明層をさらに含み、前記1つ以上の透明層は、それぞれ前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層の上部、前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層と前記バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の間または前記バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の下部に位置することを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層は、マトリックス樹脂を含み、前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層は前記マトリックス樹脂100重量部を基準としてバンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を10〜200重量部で含み、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層は、前記マトリックス樹脂100重量部を基準としてバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を10〜200重量部で含むことを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項9】
前記マトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂またはその混合物であることを特徴とする請求項に記載の多層フィルム。
【請求項10】
多層構造の封止材及び/または裏面シートを含み、前記封止材及び/または裏面シートが請求項1に記載の多層フィルムを含む光電池モジュール。
【請求項11】
前記封止材が、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層及び前記バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層を含む多層構造であることを特徴とする請求項10に記載の光電池モジュール。
【請求項12】
前記裏面シートが、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層及び前記バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層を含む多層構造であることを特徴とする請求項10に記載の光電池モジュール。
【請求項13】
前記封止材が、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層を含み、前記裏面シートがバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層を含むことを特徴とする請求項10に記載の光電池モジュール。
【請求項14】
前記バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の下部に基材(substrate)をさらに含むことを特徴とする請求項11または12に記載の光電池モジュール
【請求項15】
前記基材の下部にバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層をさらに含み、基材を中心にバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層が両面に形成されていることを特徴とする請求項14に記載の光電池モジュール。
【請求項16】
前記基材は、アルミニウム、鉄;またはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)の単一シート、積層シートまたは共押出物であることを特徴とする請求項14に記載の光電池モジュール。
【請求項17】
前記基材の少なくとも一面にプラズマ、コロナ、プライマー、アンカー剤、カップリング剤処理及び熱処理の中から選択された1つ以上の表面処理が形成されることを特徴とする請求項14に記載の光電池モジュール。
【請求項18】
透明前面基板、前面封止材及び光電池をさらに含み、前記光電池は、前記前面封止材と前記多層構造の封止材によって封止されていることを特徴とする請求項10に記載の光電池モジュール。
【請求項19】
前記光電池が少なくとも1つ以上が直列または並列に配置された光電池アレイを形成することを特徴とする請求項18に記載の光電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の具現例は、紫外線、可視光線及び赤外線領域に対していずれも優れた反射率を有する多層フィルム及び全体エネルギー変換効率の向上を期待することができる光電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、地球環境問題と化石燃料の枯渇などによる新再生エネルギー及び清浄エネルギーに対する関心が高まっており、そのうち太陽光エネルギーは、環境汚染問題及び化石燃料枯渇問題を解決することができる代表的な無公害エネルギー源として注目を集めている。
【0003】
太陽光発電原理が適用される光電池は、太陽光を電気エネルギーに転換させる素子であって、太陽光を容易に吸収できるように外部環境に長期間露出しなければならないので、セルを保護するための様々なパッケージングが行われ、ユニット(unit)形態で製造され、このようなユニットを光電池モジュール(Photovoltaic Modules)という。
【0004】
しかし、光電池の場合、エネルギー変換効率が比較的低いという問題が存在する。太陽光は、紫外線、可視光線及び赤外線を含む広い波長領域を有しているが、このような光が光電池モジュールに入射しても、光電池に使用される波長領域は、制限的であり、且つ光の光電池への吸収率が低いという短所を有する。
【0005】
したがって、入射光を最大限活用して、全体エネルギー変換効率の向上を期待することができる光電池モジュールが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の具現例は、紫外線領域に対して反射率を向上させて、紫外線、可視光線及び赤外線領域に対していずれも優れた反射率を有する多層フィルムを提供する。
【0007】
また、本発明の他の具現例は、光電池の下部に配置される封止材または裏面シートの紫外線領域に対して反射率を向上させて、紫外線、可視光線及び赤外線領域に対していずれも優れたエネルギー変換効率を有する光電池モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一具現例は、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子をそれぞれ異なる層に含み、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層が、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層より上部に位置する多層フィルムに関係する。
【0009】
本発明の他の具現例で、前記多層フィルムは、光電池モジュールを封止する封止材または光電池モジュール用裏面シートであってもよく、封止材と裏面シートが一体化された製品であってもよい。
【0010】
本発明の他の具現例は、多層構造の封止材及び/または裏面シートを含み、前記封止材及び/または裏面シートが前記多層フィルムを含む光電池モジュールであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の具現例は、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子をそれぞれ異なる層に含み、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層よりも、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層が、入射光の側に、すなわち入射光を基準として上部に位置する多層フィルムを提供することによって、可視光線及び赤外線領域だけでなく、紫外線領域に対する反射率をも高めることができる。したがって、入射光のうち紫外線領域が、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子によって反射し、光電池モジュールの前面部でさらに内部反射をすることができるようにして、エネルギー変換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】光電池モジュールの入射光の反射を示す概略図である。
図2】は、商業的に利用される光電池の太陽光吸収スペクトルを示す図である。
図3】本発明の具現例による光電池モジュールを示す断面図である。
図4】本発明の具現例による光電池モジュールを示す断面図である。
図5】本発明の具現例による光電池モジュールを示す断面図である。
図6】実施例及び比較例で製造された試験片に対する波長による反射率スペクトルである。
図7】実施例及び比較例で製造された試験片に対する波長による反射率スペクトルである。
図8】実施例及び比較例で製造された試験片の反射率を示すグラフである。
図9】実施例及び比較例で製造された試験片の反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明の具現例をより具体的に説明する。また、本発明を説明するに際して、関連した公知の汎用的な機能または構成に対する詳細な説明を省略する。また、添付の図面は、本発明の理解を助けるための概略的なものであって、本発明をより明確に説明するために説明と関係ない部分を省略し、図面において様々な層及び領域を明確に表現するために、厚さを拡大して示し、図面に表示された厚さ、サイズ、比率などによって本発明の範囲が制限されない。
【0014】
本発明の一具現例による多層フィルムは、少なくとも2つ以上の層を含み、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子をそれぞれ異なる層に含み、特にバンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層が、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層より上部に位置することを特徴とする。一例としては、それぞれ硫酸バリウム(BaSO)及び二酸化チタン(TiO)をそれぞれ異なる層に含み、硫酸バリウム(BaSO)を含む層が二酸化チタン(TiO)を含む層より上部に位置する多層フィルムが列挙げられる。
【0015】
前記多層フィルムにおいて、「上部」というのは、入射光を基準として上部に位置するという意味であり、入射光に近い側に位置することを意味するものである。したがって、前記多層フィルムにおいて前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層が、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層より入射光の側に配置される。バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層の紫外線に対する反射率が、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の紫外線に対する反射率より高く、これは、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子が、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子に比べて高い紫外線反射率を有するからである。バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子とは異なって、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子は、紫外線を吸収するので、紫外線に対する反射率が低い。
【0016】
入射光の透過または吸収可否は、それぞれの物質が有する固有の性質であるバンドギャップエネルギーと関連あるものであって、任意の物質のバンドギャップエネルギーよりエネルギーが大きい光が入れば、その光は吸収され、バンドギャップエネルギーより小さい光は透過する。このようなバンドギャップエネルギーは、波長の範囲と反比例する特性を有するもので、バンドギャップエネルギーが小さい物質は、バンドギャップエネルギーよりエネルギーが小さい長波長の光は透過するが、バンドギャップエネルギーよりエネルギーが大きい短波長の光は吸収し、バンドギャップエネルギーが大きい物質は、比較的エネルギーが大きい短波長の光まで透過する。
【0017】
このように任意の物質の固有のバンドギャップエネルギーによって透過される光の波長領域が決定され、透過される光は、粒子の内部を通過しつつ外部との屈折率の差異によって屈折現象が発生する。無機粒子が球形に近い形状を有しているとき、そのような屈折現象がさらに大きくなる。このような屈折現象によって特定粒子を透過する光は、粒子内部で反射が起き、このような現象は、屈折率が大きい無機粒子が、屈折率が低い高分子(樹脂)に分散しているときにもさらによく観察される。
【0018】
したがって、このようなバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子が、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層に一緒に含まれれば、前記多層フィルムの紫外線に対する反射率が低くなる。また、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層が、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層より上部に位置しても、バンドギャップエネルギー3.3eVに該当する波長である375nm以下の光である紫外線を吸収し、紫外線に対する反射率が低くなる。
【0019】
一般的に光電池セルをモジュール形態で製造するとき、封止材を用いてセルを保護し、この際、一般的に透明な封止材を使用する。最近、太陽光が入射する前面部の上部封止材としては、透明な封止材を使用し、裏面シート側の下部封止材としては、二酸化チタン(TiO)のような無機粒子を含む封止材を使用する技術が導入されたことがある。このように上部と下部封止材を区分して下部封止材として反射率が高い封止材を使用すれば、図1に示されたように、下部封止材によって反射した光が、セルの前面部(例えば、ガラスなど)によってさらに内部に反射し、セルに再入射することによって、セルの発電効率を高めることができる。
【0020】
二酸化チタン(TiO)のように、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む場合には、400nm以上の可視光線領域から赤外線領域まで高い反射率を示すが、400nm未満の紫外線領域での反射率は非常に低い。これは、二酸化チタン(ルタイル二酸化チタン)のバンドギャップエネルギーが3.02eVであって、それに該当する光の波長である410nmより短い波長を有する光(紫外線)を吸収するからである。
【0021】
しかし、図2に示されたように、商業的に利用されている多くの光電池が紫外線領域の光を利用して電気を作っている。図2は、光電池の種類による太陽光吸収スペクトルの変化を示す図であり、光電池の種類によって太陽光の吸収スペクトルに差異があり、これによってエネルギー変換効率に差異が現われることが分かる。
【0022】
本発明の具現例では、光電池モジュールのエネルギー変換効率を向上させることができるように、紫外線に対する反射率を高めた封止材、裏面シートまたは封止材と裏面シートが一体化された一体型製品を提供する。そのような封止材、裏面シート、または一体型製品に使用される多層フィルムとして、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層をさらに含み、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層より上部に位置する多層フィルムを提供し、紫外線領域での反射率を高めようとした。バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層によって、セルに入射する光の紫外線領域の反射率を高めて、追加的に紫外線領域の光を活用することによって、入射光の損失を低減し、全体エネルギー変換効率の向上を期待することができる光電池モジュールを提供することができる。
【0023】
但し、硫酸バリウム(BaSO)のようなバンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子は、紫外線領域の光に対する反射率が高いが、可視光線と赤外線領域の光に対しては低い屈折率(1.65)に起因して反射率が低くて、本発明の具現例では、二酸化チタン(TiO)のように屈折率(2.73)が高くて、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む下部封止材層または下部裏面シートをさらに含ませて、すべての領域での太陽光に対する反射率を高めてエネルギー変換効率を高めることができる。
【0024】
また、セルに再入射のために入射光を反射させるために、前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層は、光電池の下部に配置される。バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子は、入射光の特定波長領域を反射する役目をするもので、前面封止材に適していないし、下部封止材または裏面シートに適している。前面封止材としては、透明な封止材を用いて最大限太陽光がすべて入射し得るようにすることが良い。
【0025】
前述したように、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層の紫外線に対する反射率は、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の反射率より高い。具体的に、280nm〜400nm波長領域の紫外線に対するバンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層の反射率は30〜40%であるが、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の反射率は、5〜10%にとどまる。これは、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子が、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子に比べて紫外線領域に対する反射率が高いからである。
【0026】
一方、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の400nm〜1200nm波長領域の可視光線及び1200nm以上の赤外線に対する反射率は、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層の反射率より高い。
【0027】
したがって、2つの層を共に具備し、すべての領域での反射率を高めて、エネルギー変換効率を増加させようとするものである。
【0028】
本発明の具現例による多層フィルムは、280nm〜400nm波長領域の紫外線に対する反射率が10%以上であり、400nm〜1200nm波長領域の可視光線に対する反射率が60%以上である。
【0029】
前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子の例としては、硫酸バリウム(BaSO、5eV)、アルミニウムナイトライド(AlN、6.28eV)、ボロンナイトライド(BN、5.5/5.96/6.36eV)、ボロンアセナイド(BoronArsenide、B12As、3.47eV)、ガリウムナイトライド(GaN、3.46eV)、亜鉛サルファイド(Zinc Sulfide、3.54/3.91eV)、酸化亜鉛(Zinc Oxide、3.37eV)及び酸化錫(Tin Oxide、3.7eV)よりなる群から選択される1種以上が挙げられる。ボロンナイトライドのような場合には、結晶構造がナノチューブ、六角形、正六面体のように多様で、バンドギャップエネルギーで差異を示す。
【0030】
前記バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子は、二酸化チタン(TiO、3.02/2.73eV)、アルミニウムアセナイド(AlAs、2.16eV)、ガリウムアセナイド(GaAs、1.43eV)、ガリウムサルファイド(GaS、2.5eV)、錫サルファイド(SnS、1.1eV)、鉛サルファイド(PbS、0.37eV)、シリコンカーバイド(SiC、2.86eV)及びバリウムチタネート(BaTiO、3.2eV)よりなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0031】
前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子の形状は、球形であることができる。球形の粒子であるほど、透過される光の屈折現象がさらに大きく観察されるので、反射するのに有利である。
【0032】
前記多層フィルムは、必要に応じて少なくとも1つ以上の透明層をさらに含むことができる。前記1つ以上の透明層は、それぞれバンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層の上部、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層とバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の間またはバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の下部に位置することができる。そのような透明層は、入射光に対する透過度が高いことが良い。
【0033】
さらに他の具現例では、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層は、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層との間に他の層なしに直接(directly)積層されてもよい。
【0034】
前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層は、マトリックス樹脂を含み、前記マトリックス樹脂100重量部を基準としてバンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を10〜200重量部で含む。前記範囲内で、紫外線領域に対する反射率が高く、且つ可視光線と近赤外線領域でも高い反射率を提供することができる。
【0035】
また、前記バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層は、マトリックス樹脂を含み、前記マトリックス樹脂100重量部を基準としてバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を10〜200重量部で含む。前記範囲内で、可視光線及び赤外線に対する反射率が高くて、屈折率が大きいため、少量でも効果的に反射率を高めることができる。
【0036】
バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層に含まれるマトリックス樹脂は、同一であってもよく、または異なっていてもよい。前記マトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂またはその混合物であってもよい。
【0037】
前記マトリックス樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;アクリル樹脂;ポリビニルフルオライド、ポリビニリデンフルオライド、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体などのフッ素系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリアクリロニトリル;ポリスチレン、ABS樹脂などの芳香族ビニル系樹脂;シラン変性オレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂またはこれらの混合物などが挙げられる。これらは1種単独にまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
これらのうち、ポリオレフィン樹脂は、電気絶縁性に優れ、透明な特性を有し、封止材のマトリックス樹脂として適している。また、フッ素系樹脂は、耐候性に優れ、裏面シートのマトリックス樹脂として適しているが、これに制限されるものではない。
【0039】
多層フィルムにおいてバンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層の厚さは、1〜1000μmであってもよく、例えば、10〜600μmであってもよい。紫外線領域に対する反射率は、単位面積当たり粒子の量によって左右され得るので、単位平方メートル当たり20g以上のバンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含むようにすることができ、体積当たり粒子の量が同一の場合、厚さが厚いほど粒子量が多くなる。
【0040】
前記バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の厚さは、1〜1000μmであってもよく、例えば、10〜600μmであっもてよい。前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の厚さは、同一であってもよく、または異なっていてもよい。
【0041】
但し、必要に応じて、例えば、多層フィルムまたは多層フィルムのうち一部の層が裏面シートとして使用される場合には、厚さが1〜100μmまたは3〜30μmになり得る。
【0042】
前記多層フィルムは、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層のうち少なくとも1つの層が、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤及びUV安定剤よりなる群から選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0043】
前記多層フィルムは、光電池モジュールを封止する封止材または光電池モジュール用裏面シートであってもよく、封止材と裏面シートが一体化された製品であってもよい。ある製品に適用されても、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層が入射光に近いセルの側に配置されれば、紫外線に対する反射率が高い結果をもたらすことができる。
【0044】
前記多層フィルムの製造方法は、特に制限されず、鋳造法(casting method)または押出方式で製造されたシートを基材に接着剤などを用いてラミネートされる方式または溶媒にそれぞれの層を構成する成分を溶解して製造されたコーティング液を基材にコーティングする方式などによって製造され得る。
【0045】
本発明は、また、前記多層フィルムを光電池用封止材及び/または光電池用裏面シートとして含む光電池モジュールに関する。
【0046】
図3図5は、本発明の具現例による光電池モジュールを示す断面図である。
本発明の具現例では、光電池モジュールの封止材が、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層及び前記バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層を含む多層構造であることができる。図3を参照すれば、光電池モジュール1の封止材は、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子Aを含む封止材層10及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子Bを含む封止材層11を含む。すなわち、前記封止材を下部封止材10、11として含む光電池用封止材は、太陽光が入射する側から順次にバンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子Aを含む封止材層10及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子Bを含む封止材層11を含む。前記光電池モジュール1は、前記下部封止材10、11の上部に太陽光の入射方向から順に積層される透明前面基板14、前面封止材13及び光電池15を含み、下部封止材10、11の下部に裏面シート12を含むことができる。
【0047】
本発明の他の具現例では、光電池モジュールの裏面シートが、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層及び前記バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層を含む多層構造であることができる。図4を参照すれば、光電池モジュール2の裏面シートが、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子Aを含む層20及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子Bを含む層21を含み、このような裏面シートが光電池モジュール2に耐候性を付与し、外部環境から保護する役目をする。すなわち、前記裏面シートは、太陽光が入射される側から順次にバンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子Aを含む層20及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子Bを含む層21を含む。前記光電池モジュール2は、前記裏面シート20、21の上部に太陽光の入射方向から順に積層される透明前面基板24、前面封止材23、光電池25及び下部封止材22を含むことができる。
【0048】
本発明のさらに他の具現例では、光電池モジュールの封止材が、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層を含み、裏面シートが、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層を含むことができ、このように封止材と裏面シートが一体化された製品を採用することができる。図5は、一体化シートを採用した光電池モジュール3の断面図である。図5を参照すれば、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子Aを含む層30が光電池モジュール3を封止する封止材であり、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子Bを含む層31が裏面シートである。すなわち、封止材30と裏面シート31が一体化された製品を適用した光電池モジュール3である。前記一体型製品は、太陽光が入射する側から順次にバンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子Aを含む封止材30及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子Bを含む裏面シート31を含む。前記光電池モジュール3は、前記封止材30及び裏面シート31の上部に太陽光の入射方向から順に積層される透明前面基板34、前面封止材32及び光電池35を含むことができる。ここで、図示してはいないが、光電池用裏面シート31は、多層構造であることができる。
【0049】
1つの例示で、前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層及び/またはバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層が封止材として使用される場合には、それぞれの層の厚さは、10〜1000μmであることができ、または20〜600μmであることができる。紫外線領域に対する反射率は、単位面積当たり粒子の量によって左右され得るので、単位平方メートル当たり20g以上のバンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含むようにすることができ、体積当たり粒子の量が同一の場合、厚さが厚いほど粒子量が多くなる。前記バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の厚さは、同一であってもよく、または異なっていてもよい。
【0050】
また、前述したように、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層及び/またはバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層が裏面シートとして使用される場合には、それぞれの層の厚さは、1〜100μmまたは3〜30μmになり得る。
【0051】
前記光電池モジュールの封止材または裏面シートは、必要に応じて少なくとも1つ以上の透明層をさらに含むことができる。前記1つ以上の透明層は、それぞれバンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層の上部、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層とバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の間またはバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の下部に位置することができる。そのような透明層は、入射光に対する透過度が高いことが良い。
【0052】
さらに他の具現例では、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層は、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層との間に他の層なしに直接(directly)積層されてもよい。
【0053】
一例として、前記光電池モジュールの封止材または裏面シートは、基材(substrate)をさらに含む構造であることができる。この際、前記基材は、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層の下部に位置することができ、前記基材の下部にバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層をさらに含んで記載を中心にバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層が両面に形成されていてもよい。
【0054】
基材の具体的な種類は、特に制限されず、この分野で公知された多様な素材を使用することができ、要求される機能、用途などによって選択され得る。
【0055】
1つの例示で、前記基材は、各種金属または重合体シートであることができる。前記で金属の例としては、アルミニウム、鉄などが挙げられ、重合体シートの例としては、ポリエステル系シート、ポリアミド系シートまたはポリイミド系シートなどが挙げられ、このうちポリエステル系シートを使用することが一般的であるが、これに制限されるものではない。ポリエステル系シートの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)などの単一シート、積層シートまたは共押出物などが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0056】
前記基材の厚さは、約50μm〜500μmの範囲にあり得、または100〜300μmの範囲であることができる。基材の厚さを前記のように調節し、裏面シートの電気絶縁性、水分遮断性、機械的特性及び取り扱い性などを優秀に維持することができる。但し、基材の厚さが前述した範囲に制限されるものではなく、これは、必要に応じて適切に調節され得る。
【0057】
前記基材には、コロナ処理またはプラズマ処理のような高周波数のスパーク放電処理;熱処理;火炎処理;カップリング剤処理;アンカー剤処理または気相ルイス酸(例えば、BF)、硫酸または高温水酸化ナトリウムなどを使用した化学的活性化処理などが行われていてもよい。
【0058】
また、基材には、水分遮断特性などの追加的な向上の観点から、ケイ素酸化物またはアルミニウム酸化物のような無機酸化物が蒸着されていてもよい。この場合には、蒸着処理層上に接着力をさらに向上させるために前述したスパーク放電処理、火炎処理、カップリング剤処理、アンカー剤処理または化学的活性化処理が行われていてもよい。
【0059】
また、前記光電池用裏面シートは、前記基材とバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層との間に接着性向上のためのプライマー層を含むことができる。前記プライマー層は、基材上に形成され、バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層間の接着力を確保する。
【0060】
前記プライマー層は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂、エーテルスルホン系樹脂、エーテルイミン樹脂またはシリコン系樹脂などを含むことができる。
【0061】
前記プライマー層は、約10nm〜5,000nm、または50nm〜2,000nmの厚さを有することができるが、これは、目的する接着性及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層のマトリックス樹脂の種類などによって適切に変更され得る。前記光電池モジュールの封止材または裏面シートは、バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層及びバンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層のうち少なくとも1つの層に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤及びUV安定剤よりなる群から選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0062】
前記光電池モジュールの構造は、前記多層フィルムを光電池用封止材または光電池用裏面シートとして含んでいる限り、特に制限されず、この分野で公知されている多様な構造を有することができる。
【0063】
前記光電池モジュールの構造は、特に制限されず、この分野で公知されている多様な構造を有することができる。通常、光電池モジュールは、透明前面基板と、裏面シートと、前記前面基板と裏面シートとの間で封止材によって封止されている光電池とを含み、前記光電池は、前面封止材と前記多層構造の封止材によって封止され得る。前記光電池は、少なくとも1つ以上が含まれることができ、そのような光電池が直列または並列に配置された光電池アレイを形成することができる。
【0064】
前記で光電池または光電池アレイを構成する活性層の例としては、代表的に結晶質または非結晶質シリコンウェーハや、CIGSまたはCTSなどのような化合物半導体などが挙げられる。
【0065】
本発明の前記多層フィルムを含む光電池用封止材または光電池用裏面シートは、前記のような活性層を有するモジュールを含み、この分野に知られている多様な光電池モジュールに制限なしに適用されることができ、この場合、前記モジュールを構成する方式や、その他素材の種類は、特に制限されない。
【0066】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲が下記提示された実施例によって制限されるものではない。
【0067】
製造例1−マスターバッチ製造
下記表1の組成で押出器(twin extruder、Micro 27、Leistriz社)を利用して硫酸バリウム及び二酸化チタンのマスターバッチをあらかじめ製作した。
【0068】
【表1】
【0069】
製造例2−コーティング液aの製造
ジメチルホルムアミド(DMF、N、N−dimethyl formamide)431.3gに結晶化度が25%であり、溶融温度が165℃であるビニリデンフルオライド(VDF;Vinylidene fluoride)とクロロトリフルオロエチレン(CTFE;Chlorotrifluoro ethylene)の共重合体(VDF−CTFE共重合体)65g、結晶化度が24%であり、溶融温度が130℃であるVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP;Hexafluoropropylene)の共重合体(VDF−HFP共重合体)30g及びアクリル重合体(メチルメタクリレート(MMA):グリシジルメタクリレート(GMA):メチルメタクリル酸(MAA)の重量比が60:30:10)5gを溶融させて第1コーティング液を製造した。
【0070】
また、前記とは別に、DMF 25gに分散剤であるBYK−111(BYK社)0.420g及び二酸化チタン(TiPure TS6200、デュポン社)60gを添加させ、さらに直径が0.3mmのジルコニアビーズ(Zirconia bead)50gを入れた後、1,000rpmの速度で1時間撹拌させた後、ビーズを完全に除去し、ミルベイスを製造した。
【0071】
製造されたミルベイス85.42gをあらかじめ製造された第1コーティング液に添加し、さらに撹拌し、コーティング液aを準備した。
【0072】
製造例3−コーティング液bの製造
ジメチルホルムアミド(DMF)431.3gに結晶化度が25%であり、溶融温度が165℃であるビニリデンフルオライド(VDF)とクロロトリフルオロエチレン(CTFE)の共重合体(VDF−CTFE共重合体)65g、結晶化度が24%であり、溶融温度が130℃であるVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体(VDF−HFP共重合体)30g及びアクリル重合体(メチルメタクリレート(MMA):グリシジルメタクリレート(GMA):メチルメタクリル酸(MAA)の重量比が60:30:10)5gを溶融させて第1コーティング液を製造した。
【0073】
また、前記とは別に、DMF 25gに分散剤であるBYK−111(BYK社)0.420g及び硫酸バリウム(BSB−8000、(株)コーツ)60gを添加させ、さらに直径が0.3mmのジルコニアビーズ50gを入れた後、1,000rpmの速度で1時間撹拌させた後、ビーズを完全に除去し、ミルベイスを製造した。
【0074】
製造されたミルベイス85.42gをあらかじめ製造された第1コーティング液に添加し、さらに撹拌し、コーティング液bを準備した。
【0075】
実施例1−多層光電池用下部封止材の製造
硫酸バリウムを含む層と二酸化チタンを含む層を製造するために、それぞれポリエチレンエラストマ((株)LG化学、LC670)を用いて製造例1で別に製作したマスターバッチ(a)30重量部と硫酸バリウムが含まれたマスターバッチ(b)または二酸化チタンが含まれたマスターバッチ(c)70重量部を400mm幅のTダイが付着した押出器を利用してそれぞれ押出した後、冷却ローラーで接合し、最終厚さ500μmの二層光電池用下部封止材を製造した。この際、押出器のTダイ温度は、それぞれ180℃に同一に調整して押出し、Tダイで押出されたそれぞれの押出物は、冷却ローラーの速度を変化させて250μmの厚さに調節した。
【0076】
実施例2−多層光電池用裏面シートの製造
ポリエチレンテレフタレート(PET、poly(ethylene terephthalate)、厚さ:250μm、Skyrol SG00L、SKC社)フィルムに製造例2であらかじめ準備したコーティング液aをアプリケータを利用して乾燥後の厚さが約25μmとなるように間隔を調節してコーティングした後、コーティングされた基材を180℃のオーブンで約2分間乾燥し、二酸化チタンを含む層を形成した。その後、二酸化チタンを含む層の反対面に同一にコーティングを行い、PETシートの両面に二酸化チタンを含む層を形成した。
【0077】
その後、二酸化チタンを含む層のうち上部層の上に製造例3であらかじめ準備したコーティング液bをアプリケータを利用して乾燥後の厚さが約25μmとなるように間隔を調節してコーティングした後、コーティングされた基材を180℃のオーブンで約2分間乾燥して硫酸バリウムを含む層を形成し、多層光電池用裏面シートを製造した。
【0078】
実施例3−多層光電池用裏面シートの製造
ポリエチレンテレフタレート(PET、poly(ethylene terephthalate)、厚さ:250μm、Skyrol SG00L、SKC社)フィルムに製造例2であらかじめ準備したコーティング液aをアプリケータを利用して乾燥後の厚さが約25μmとなるように間隔を調節してコーティングした後、コーティングされた基材を180℃のオーブンで約2分間乾燥し、二酸化チタンを含む層を形成した。その後、二酸化チタンを含む層の反対面に製造例3であらかじめ準備したコーティング液bを利用して同一にコーティングを行い、硫酸バリウムを含む層と二酸化チタンを含む層がPETフィルムの上下部にそれぞれ形成された多層光電池用裏面シートを製造した。
【0079】
実施例4−多層光電池用一体化封止製品の製造
硫酸バリウムを含む封止材層を製造するために、ポリエチレンエラストマ((株)LG化学、LC670)を使用して製造例1で別に製作したマスターバッチ(a)30重量部と硫酸バリウムが含まれたマスターバッチ(b)70重量部を混合し、タンブラーで30分以上撹拌し、400mm幅のTダイが付着した単一押出器(single extruder、RHOMEX 252、HAAHE社)を利用して180℃にシートを成形した。シートの厚さは、Tダイから押出されて出た押出物を冷却させる冷却ローラーの速度を調節し、500μmのシートで製造した。
【0080】
製造した硫酸バリウムシートを二酸化チタンを含むフッ素系樹脂がポリエチレンテレフタレート(PET、厚さ:250μm、Skyrol SG00L、SKC社)基材の両面に乾燥後の厚さがそれぞれ25μmとなるようにコーティングされた裏面シートに150℃で10分間ラミネーションすることによって、全体厚さ800μmの多層光電池用一体化封止製品を製造した。
【0081】
比較例1
硫酸バリウムを含む単層シートを製造するために、ポリエチレンエラストマ((株)LG化学、LC670)を用いて製造例1で別に製作したマスターバッチ(a)30重量部と硫酸バリウムが含まれたマスターバッチ(b)70重量部を混合し、タンブラーで30分以上撹拌し、400mm幅のTダイが付着した単一押出器(single extruder、RHOMEX 252、HAAHE社)を利用して180℃にシートを成形した。シートの厚さは、Tダイから押出されて出た押出物を冷却させる冷却ローラーの速度を調節し、500μmのシートに製造した。
【0082】
比較例2
比較例1において硫酸バリウムマスターバッチの代わりに二酸化チタンマスターバッチを使用したことを除いて同一に実施し、二酸化チタンを含む500μmの単層シートを製造した。
【0083】
比較例3
実施例1において硫酸バリウムシートと二酸化チタンシートの順序を硫酸バリウムシートが下部に位置するように配置して接合したことを除いて同一に実施し、最終厚さ500μmの二層光電池用下部封止材を製造した。
【0084】
比較例4
硫酸バリウム及び二酸化チタンを含む単層シートを製造するために、ポリエチレンエラストマ((株)LG化学、LC670)を用いて製造例1で別に製作したマスターバッチ(a)30重量部と硫酸バリウム及び二酸化チタンが含まれたマスターバッチ(d)70重量部を混合してタンブラーで30分以上撹拌し、400mm幅のTダイが付着した単一押出器(single extruder、RHOMEX 252、HAAHE社)を利用して180℃にシートを成形した。シートの厚さは、Tダイから押出されて出た押出物を冷却させる冷却ローラーの速度を調節し、500μmのシートに製造した。
【0085】
実験例−反射率測定
前記実施例1〜4及び比較例1〜4で製造されたシートを70mm×50mmサイズにカットし、真空ラミネータ(LM−30×30−S、NPC社)を利用して150℃の下で10分間ラミネーションし、試験片を製作した。
【0086】
ラミネーションされた試験片をUV−Vis−NIRスペクトロフォトメーター(UV−3600、SHIMADSU社)を利用して200〜2500nm波長範囲で反射率を測定した。実施例1〜4の場合、ラミネーションされた試験片の硫酸バリウムを含む層を入射光方向として測定し、比較例3の場合、ラミネーションされた試験片の二酸化チタンを含む層を入射光方向として測定し、図6及び図7に示した。実施例1及び比較例1〜4の反射率スペクトルを図6に示し、実施例2〜4の反射率スペクトルを図7に示した。
【0087】
また、測定された反射率スペクトルを結晶質シリコン太陽電池に利用される一部の紫外線波長を含む紫外線区間である280〜400nmと可視光線区間である400〜1200nm範囲に区分し、各領域の面積を計算し、反射率を比較し、図8及び図9に示した。実施例1及び比較例1〜4の反射率を図8に示し、実施例2〜4の反射率を図9に示した。
【0088】
図6図9に示されたように、硫酸バリウム封止材層を入射光方向に有する多層封止材、多層裏面シートまたは一体化製品の場合(実施例1〜4)、紫外線領域で反射率が二酸化チタン封止材単層シート(比較例2)、二酸化チタン封止材層を入射光方向に有する多層シート(比較例3)及び二酸化チタンと硫酸バリウムを同時に含む単層シート(比較例4)に比べて格別に高いことを確認することができる。
【0089】
また、硫酸バリウム封止材単層シート(比較例1)の場合には、紫外線領域での反射率は高いが、可視光線及び赤外線領域での反射率が低いことを確認することができる。
【0090】
以上、本発明の例示的な実施例を参照として本発明について詳細に説明したが、これらは、ただ例示的なものに過ぎず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者ならこれから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解することができる。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は、添付の特許請求範囲の技術的思想によって定められなければならない。
【符号の説明】
【0091】
A バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子
B バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子
1 多層構造の封止材
10 バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む封止材層
11 バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む封止材層
2 多層構造の裏面シート
20 バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む層
21 バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む層
3 多層構造の一体化シート
30 バンドギャップエネルギーが3.3eV以上の無機粒子を含む封止材
31 バンドギャップエネルギーが3.3eVより小さい無機粒子を含む裏面シート
図2
図3
図4
図5
図1
図6
図7
図8
図9