(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
結晶性ポリエステル樹脂(A)と、非結晶性樹脂(B)と、縮重合系樹脂ユニット及び付加重合系樹脂ユニットを含む複合樹脂(C)と、を含む電子写真画像形成用トナーであって、
THF可溶分により求められたGPCによる分子量分布が1000〜10000の間にメインピークを有し、該メインピークの半値幅は15000以下であり、
クロロホルム不溶分を含有し、
当該電子写真画像形成用トナーを45℃で12時間保存した後にフーリエ変換赤外分光分析測定装置を用いて全反射法により測定したとき、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)に由来する特徴的なスペクトルのピーク高さをCとし、前記非結晶性樹脂(B)に由来する特徴的なスペクトルのピーク高さをRとして、ピーク高さ比(C/R)が0.03〜0.55であり、
母体表面に外添剤として無機微粒子を有し、該無機微粒子として少なくとも一次粒子が複数個合着して二次粒子を形成した無機微粒子(A)を有しており、かつ、該無機微粒子(A)のFE−SEMにより観測される二次粒子径Dbの小粒子側から計測した50%目の平均粒子径をDb50、小粒子側から計測した10%目の平均粒子径をDb10としたとき、Db50/Db10が1.20以下である
ことを特徴とする電子写真画像形成用トナー。
示唆走査熱量計による吸熱ピーク測定において、90〜130℃の範囲に吸熱ピークを有し、該吸熱ピークの吸熱量が1〜15J/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
前記非結晶性樹脂(B−2)は、THF可溶分により求められたGPCによる分子量分布が1000〜10000の間にメインピークを有し、該メインピークの半値幅が15000以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)は、分子主鎖中に下記一般式(1)で表されるエステル結合を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
[−OCO−R−COO−(CH2)n−] ・・・一般式(1)
(一般式(1)中、Rは炭素数2〜20の直鎖状不飽和脂肪族2価カルボン酸残基を示し、nは2〜20の整数を示す。)
前記複合樹脂(C)は、ポリエステルの縮重合系樹脂ユニットと、ビニル系樹脂の付加重合系ユニットと、を有する複合樹脂であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
前記無機微粒子(A)の外添剤の一次粒子径をDaとし、合着度G=Db/Daとしたとき、合着度Gの平均値が1.5〜4.0であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
前記結着樹脂成分として少なくとも結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂を少なくとも1種以上含んでいることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
像担持体と、該像担持体上に形成された静電潜像を電子写真画像形成用トナー及びキャリアを含む現像剤により可視像とする現像手段と、を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱可能に備えられるプロセスカートリッジであって、
前記電子写真画像形成用トナーは、請求項1〜15のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナーであることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る電子写真画像形成用トナーは、
結晶性ポリエステル樹脂(A)と、非結晶性樹脂(B)と、縮重合系樹脂ユニット及び付加重合系樹脂ユニットを含む複合樹脂(C)とを含み、THF可溶分により求められたGPCによる分子量分布が1000〜10000の間にメインピークを有し、該メインピークの半値幅は15000以下であり、クロロホルム不溶分を含有し、当該電子写真画像形成用トナーを45℃で12時間保存した後にフーリエ変換赤外分光分析測定装置を用いて全反射法により測定したとき、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)に由来する特徴的なスペクトルのピーク高さをCとし、前記非結晶性樹脂(B)に由来する特徴的なスペクトルのピーク高さをRとして、ピーク高さ比(C/R)が0.03〜0.55であることを特徴とする。
【0021】
次に、本発明に係る電子写真画像形成用トナー、その製造方法、画像形成方法及びプロセスカートリッジについてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0022】
近年、電子写真において電子写真画像形成用トナー(以下、単にトナーとも称する場合もある。)の低温定着化が求められている。これは、定着に要するエネルギーを少なくすることによる省エネルギー化はもとより、電子写真画像形成装置の高速化、高画質化の要求にも起因しており、電子写真画像形成装置の使用目的が多様化していることも相まって、要求が高まってきている。
【0023】
単にトナーを低温定着化とさせるためには、トナーの軟化温度(T1/2)を低いものにすればよい。しかし、軟化温度を低くするとガラス転移温度も低下し、耐熱保存性が悪化する。また、画像品質に問題の発生しない定着可能な温度の下限(定着下限温度)の低下と共に定着可能な温度の上限(定着上限温度)も低下してしまうため、耐ホットオフセット性も損ねてしまう。そのため、低温定着性と耐熱保存性、耐ホットオフセット性の三者を両立させることは電子写真画像形成用トナーの設計者にとって非常に難しい命題であった。
【0024】
本発明者らは、上記命題に対し、鋭意検討を行なった。その結果、以下の技術構想を見出し、上記課題を解決するに至った。
【0025】
電子写真画像形成用トナーに用いる結着樹脂に結晶性ポリエステル樹脂(A)を用いると、そのシャープメルト性により、トナーに低温定着性及び耐熱保存性を付与することができる。
しかし、結着樹脂として結晶性ポリエステル樹脂(A)を単体で使用したのでは、耐ホットオフセット性が非常に悪くなるため、定着温度幅が非常に狭くなり実用に耐えられない。
そこで、本発明者らは、結晶性ポリエステル樹脂(A)と共に、クロロホルム不溶分を含む非結晶性樹脂(B)を用いることで、耐ホットオフセット性が向上し、定着可能な温度に幅を持たせることができると考えた。
【0026】
しかし、結晶性ポリエステル樹脂(A)と非結晶性樹脂(B)だけを処方した場合、非結晶性樹脂(B)が多すぎると低温定着性が薄れてしまう。結晶性ポリエステル樹脂(A)が多いと、製造工程において溶融混練を施した際に非結晶性樹脂(B)のクロロホルム不溶分以外の成分と相溶してしまい、非結晶性樹脂(B)のガラス転移温度を著しく低下させてしまうため、耐熱保存性が極端に悪化する。
【0027】
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、THF可溶分により求められたGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography)によるトナーの分子量分布が1000〜10000の間にメインピークを有し、かつ、該メインピークの半値幅を15000以下とすることで、低分子量分の絶対量が多く、かつ、シャープな分子量分布となり、結晶性ポリエステル樹脂(A)の配分を少なくして相溶を抑制させ、かつ、結晶性ポリエステル樹脂(A)の低温定着性を補助しつつ、クロロホルム不溶分を含む非結晶性樹脂の耐ホットオフセット性も阻害しないことを本発明者らは見出した。
【0028】
しかし、この場合でも、耐熱保存性へのリスクは完全には消滅しない。結晶性ポリエステル樹脂(A)の相溶が抑制され、結着樹脂のガラス転移温度の低下が抑えられても、分散径が大きいまま結晶性ポリエステル樹脂(A)が存在すると、結晶性ポリエステル樹脂(A)がトナー表面に過剰に現れやすくなる。結晶性ポリエステル樹脂(A)はシャープメルトな材料であるため、トナー粒子内部に存在する場合は前記のように優れた耐熱保存性を発揮するが、ガラス転移温度以下の温度でも僅かに融解するため、トナー粒子表面に存在する場合、僅かに融解した結晶性ポリエステル樹脂(A)がトナー粒子間でバインダーとして働き、結果としてトナーの耐熱保存性を悪化させる。この現象は、特に、結晶化度の低い結晶性ポリエステル樹脂で顕著となる。
加えて、トナー表面に結晶性ポリエステル樹脂(A)が過剰に存在すると、作像時にOPCへのフィルミングが発生しやすくなり、画像品質に対するリスクも高くなる。
【0029】
また、トナーの電気特性の観点でも、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)と非結晶性樹脂を組み合わせた処方のトナーでは懸念が生じる。結晶性を有するポリエステル樹脂は比較的電気抵抗が低いため、分散径が大きいままトナー中に存在するとトナーの電気抵抗が低くなる傾向がある。電気抵抗が低くなり、許容範囲を超えると、画像形成時に転写工程において転写不良の原因となる。特に、前記のように低温定着性の維持を目的として結晶性ポリエステル樹脂(A)の相溶を抑制した場合、結晶性ポリエステル樹脂(A)は分散径の大きい状態を維持しやすくなり、結晶性ポリエステル樹脂(A)の電気特性がトナー中で支配的になりやすいため、電気抵抗が低下しやすい。
【0030】
また、後述のように抵抗調整剤を含有させた場合、抵抗調整剤は結晶性ポリエステル樹脂(A)の構成しているドメイン内に入り込めないため、結着樹脂(ここで言う結着樹脂とは、結晶性ポリエステル樹脂(A)を除く結着樹脂を意味する。)の中に比較的濃度の高い状態で存在することになる。そのため、凝集体のままトナー中に閉じ込められやすくなり、抵抗が過剰に低下しやすくなる。抵抗調整剤を、単に抵抗を下げる目的だけのために用いているのであれば、抵抗調整剤の処方量を調整することにより解決できる場合もあるが、例えばカーボンブラックのように抵抗調整剤と着色剤を兼ねている場合は、着色力の観点から処方量を少なくすることができない場合があり、最適な電気抵抗に調整できないことがある。
【0031】
本発明者らはこれら技術課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、上記結晶性ポリエステル樹脂(A)、非結晶性樹脂(B)を組み合わせた処方に対して、縮重合系樹脂ユニット及び付加重合系樹脂ユニットを含む複合樹脂(C)を更に処方し、上記結晶性ポリエステル樹脂(A)、非結晶性樹脂(B)を組み合わせた際に特徴的に発現する耐熱保存性低下の懸念と電気抵抗低下の懸念を同時に解決することが可能であるという効果を見出した。
【0032】
複合樹脂(C)を処方すると、離型剤の分散が向上することは従来知られているが、上記結晶性ポリエステル樹脂(A)と、非結晶性樹脂(B)とを併用して溶融混練を施した場合、樹脂の粘度が著しく低下するため、原材料にシェアがかかりにくくなり、結晶性ポリエステル樹脂(A)の分散径はより大きくなる傾向がある。そこで結晶性ポリエステル樹脂(A)及び非結晶性樹脂(B)と共に複合樹脂(C)を加えて溶融混練を施すと、適度にシェアが掛かるようになるため、結晶性ポリエステル樹脂(A)の微分散化が促される。
【0033】
結晶性ポリエステル樹脂(A)が微分散状態となると、粉砕時に結晶性ポリエステル樹脂(A)がトナー表面に現れる頻度が少なくなり、耐熱保存性が劇的に向上する。また、結晶性ポリエステル樹脂(A)が微分散となるため、適度な電気抵抗を維持することが可能となる。
【0034】
更に、複合樹脂(C)は、比較的低い分子量領域に分子量分布のピークを有する非結晶樹脂(B)よりも硬いため、粉砕時に界面になりやすい。そのため、比較的トナー表面に存在しやすく、軟化温度の低い非結晶性樹脂(B−2)がトナー表面へ表れる確率を低減させる効果もあり、耐熱保存性の向上に貢献する。
加えて、トナー表面の硬度を高めることができるため、トナーに物理的なストレスが掛かったときのトナー劣化が少ない。特に、外添剤が過剰に埋め込まれる現象が改善されるため、ストレス付与前後での帯電特性の変化が少なくなり、長期に渡って安定した画質を提供することが可能となる。
【0035】
ところが、上記の結晶性ポリエステル樹脂(A)、非結晶性樹脂(B)、複合樹脂(C)を併用しても、粉砕トナー製造工程においては溶融混練を行なうと、原材料樹脂の熱特性に起因する各長所が発揮されない場合がある。これは、溶融混練工程においては、樹脂の分子の繋がりが切断され、分子量が変化してしまうことが主要因である。特に、非結晶樹脂に含有されるクロロホルム不溶分の分子の繋がりが切断されると、トナー全体の分子量分布がブロードになり、低温定着性が損ねられてしまう。
【0036】
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、例えば、後述するように、適度に温度を掛けて溶融混練を行なうことで原材料樹脂にかかるシェアを最適なものにしつつ、結晶性ポリエステル樹脂(A)を冷却工程にて再結晶させるような手法をとることで、THF可溶分により求められたGPCによるトナーの分子量分布が1000〜10000の間にメインピークを有し、かつ、該メインピークの半値幅を15000以下とすることで、低分子量分の絶対量が多く、かつ、シャープな分子量分布となり、上記結晶性ポリエステル樹脂(A)、非結晶性樹脂(B)、複合樹脂(C)のそれぞれの特徴を活かした、低温定着かつ耐熱保存性、耐ホットオフセット性の優れたトナーを提供することができるという知見を見出した。
【0037】
特に、結晶性ポリエステル樹脂(A)の効果及び副作用はトナー表面の結晶性ポリエステル樹脂(A)の存在量が大きく寄与するため、結晶性ポリエステル樹脂(A)の処方量や、複合樹脂(C)に起因する結晶性ポリエステル樹脂(A)の分散度、また、混練工程での工法等にてバランスを取り、トナー表面の結晶性ポリエステル樹脂(A)の存在割合を最適化することで、低温定着性を確保しつつ耐熱保存性を非常に良好に保つことができ、加えて、作像時のOPC(Organic Photo Conductor:有機電子写真感光体)へのフィルミングも抑制することができる。
【0038】
トナー表面の結晶性ポリエステル樹脂(A)の存在割合は、フーリエ変換赤外分光分析測定装置(FT−IR)を用いた全反射法(ATR法)によるスペクトルのピーク高さ比で示すことができる。耐熱保存性を考慮し、本発明者らが検討を行なった結果、45℃で12時間保管した後のスペクトルのピーク高さが、船舶輸送を想定した高温保管(高温保存)後の状態と相関があり、45℃で12時間保管した後の結晶性ポリエステル樹脂(A)の特徴的なスペクトルのピーク高さCと、非結晶性樹脂(B)の特徴的なスペクトルのピーク高さRの比(C/R)が0.03〜0.55の範囲となるようにすることで、低温定着性を確保しつつ、耐熱保存性を非常に良好に保つことができ、加えて、作像時のOPCへのフィルミングも抑制することができることを本発明者らは見出した。
【0039】
前記ピーク高さ比(C/R)が0.55より高いと、トナー表面の結晶性ポリエステル樹脂(A)が過剰になり、耐熱保存性及び耐フィルミング性が悪くなる。また、0.03未満であると、トナー表面の結晶性ポリエステル樹脂(A)の存在量が少なすぎるため、低温定着に対する効率が悪くなってしまう。
【0040】
前述のように、トナー表面の結晶性ポリエステル樹脂(A)の存在割合:ピーク高さ比(C/R)は、結晶性ポリエステル樹脂(A)の処方量や、分散度、また、混練工程での工法等によって制御することができる。例えば、結晶性ポリエステル樹脂(A)の処方量を増やすとC/Rは高くなる。複合樹脂(C)を増量して分散性を向上させるとC/Rは低くなる。また、混練工程にて冷却時間を長くすると再結晶が促されるためC/Rは高くなる。C/Rの制御方法はこれらに限定されるものではなく、C/Rを0.03〜0.55の範囲とするならば、いかなる方法を用いてもよい。
【0041】
結晶性ポリエステル樹脂の特徴的なスペクトルのピーク高さCと、非結晶性ポリエステル樹脂の特徴的なスペクトルのピーク高さRとのピーク高さ比(C/R)は、FT−IR(フーリエ変換赤外分光分析測定装置「Avatar370(Thermo Electron社製)」)を用いてATR法(全反射法)でのATRスペクトルから求めた。また、ATR法では平滑面での測定が必要となるため、トナーを加圧成型し、ペレット化して測定を行なった。加圧成型は、トナー0.6gに対して1000kgfを30秒間荷重し、直径20mmのペレットを作製した。
【0042】
図1は、結晶性ポリエステル樹脂の赤外吸収スペクトルの一例を示したものである。
結晶性ポリエステル樹脂の赤外吸収スペクトルは、
図1に示すように、波数1130cm
−1〜1220cm
−1の間に、吸光度が1番目に小さくなる立ち下がりピーク点(以下「第1立ち下がりピーク点Fp1」という。)と、吸光度が2番目に小さくなる立ち下がりピーク点(以下「第2立ち下がりピーク点Fp2」という。)との間に、吸光度が最大となる最大立ち上がりピーク点Mpがある。第1立ち下がりピーク点Fp1と第2立ち下がりピーク点Fp2とを結ぶ線分をベースラインとする。そして、最大立ち上がりピーク点Mpから横軸に向けて垂線を引き、ベースラインとの交点における吸光度と、最大立ち上がりピーク点Mpにおける吸光度との差分の絶対値を、最大立ち上がりピーク点Mpの高さCとする。
なお、
図1に示す例では、Fp1は1201cm
−1、Fp2は1158cm
−1(即ち、ベースラインは1158cm
−1〜1201cm
−1)であり、Mpは1183cm
−1である。
【0043】
図2は、非結晶性ポリエステル樹脂の赤外吸収スペクトルの一例を示したものである。
非結晶性ポリエステル樹脂の赤外吸収スペクトルは、
図2に示すように、波数780cm
−1〜900cm
−1の間に、最大立ち上がりピーク点Mpと、吸光度が最小となる第1立ち下がりピーク点Fp1と、吸光度が2番目に小さくなる第2立ち下がりピーク点Fp2があり、最大立ち上がりピーク点Mpが第1立ち下がりピーク点Fp1と第2立ち下がりピーク点Fp2との間に位置している。第1立ち下がりピーク点Fp1と第2立ち下がりピーク点Fp2とを結ぶ線分をベースラインとする。そして、最大立ち上がりピーク点Mpから横軸に向けて垂線を引き、このベースラインとの交点における吸光度と、最大立ち上がりピーク点Mpにおける吸光度との差分の絶対値を、最大立ち上がりピーク点Mpの高さRとする。また、C/Rをピーク比(C/R値)とする。
なお、
図2に示す例では、889cm
−1、Fp2は784cm
−1(即ち、ベースラインは784cm
−1〜889cm
−1)であり、Mpは829cm
−1である。
【0044】
図3は、非結晶性スチレン−アクリル系樹脂の赤外吸収スペクトルの一例を示したものである。
非結晶性スチレン−アクリル系樹脂の赤外吸収スペクトルは、
図3に示すように、波数660cm
−1〜720cm
−1の間に、最大立ち上がりピーク点Mpと、吸光度が最小となる第1立ち下がりピーク点Fp1と、吸光度が2番目に小さくなる第2立ち下がりピーク点Fp2があり、最大立ち上がりピーク点Mpが第1立ち下がりピーク点Fp1と第2立ち下がりピーク点Fp2との間に位置している。第1立ち下がりピーク点Fp1と第2立ち下がりピーク点Fp2とを結ぶ線分をベースラインとする。そして、最大立ち上がりピーク点Mpから横軸に向けて垂線を引き、このベースラインとの交点における吸光度と、最大立ち上がりピーク点Mpにおける吸光度との差分の絶対値を、最大立ち上がりピーク点Mpの高さRとする。また、C/Rをピーク比(C/R値)とする。
なお、
図3に示す例では、Fp1は670cm
−1、Fp2は714cm
−1(即ち、ベースラインは670m
−1〜714cm
−1)であり、Mpは699cm
−1である。
【0045】
非結晶性樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性スチレン−アクリル系樹脂の両方を用いている場合は、波数780cm
−1〜900cm
−1の間の最大立ち上がりピーク点Mpから求めたR値と、波数660cm
−1〜720cm
−1の間の最大立ち上がりピーク点Mpから求めたR値を比較して、強度の強い方を採用して、ピーク比(C/R値)とする。
【0046】
トナーにおける前記結晶性ポリエステル樹脂(A)の含有量は、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。前記非結晶性樹脂(B−1)の含有量は10〜40質量%が好ましく、前記非結晶性樹脂(B−2)の含有量は50〜90質量%が好ましく、前記複合樹脂(C)の含有量は3〜20質量%が好ましい。
【0047】
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)は次のようにして測定される。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6質量%に調製した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。
試料の分子量測定に当たっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により、作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.あるいは東洋ソーダ工業社製の分子量が6×10
2、2.1×10
3、4×10
3、1.75×10
4、5.1×10
4、1.1×10
5、3.9×10
5、8.6×10
5、2×10
6、4.48×10
6のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0048】
非結晶性樹脂(B)は非結晶性樹脂(B−1)と、非結晶性樹脂(B−2)と、の2種を含有し、非結晶性樹脂(B−1)は、前記非結晶性樹脂(B−2)よりも軟化温度(T1/2)が25℃以上高いものを使用することが好ましい。前記非結晶性樹脂(B−1)および前記非結晶性樹脂(B−2)の2種を使用することで、結晶性ポリエステル樹脂(A)の配分を少なくして相溶を抑制させ、かつ、結晶性ポリエステル樹脂(A)の低温定着性を非結晶性樹脂(B−2)が補助しつつ、非結晶性樹脂(B−1)の持つクロロホルム不溶分に起因する耐ホットオフセット性も阻害しないため好ましい。
【0049】
結着樹脂の軟化温度(T1/2)は、高架式フローテスターCFT−500(島津製作所製)を用い、ダイス穴径1mm、加圧20kgf/cm
2、昇温速度6℃/minの条件下で1cm
2の試料を溶融流出させたときの流出開始点から流出終了点までの1/2に相当する温度により測定される。
【0050】
<結晶性ポリエステル樹脂(A)>
本発明における結晶性ポリエステル樹脂(A)は従来公知のものを使用することが可能ではあるが、より好ましくはその分子主鎖中に下記一般式(1)で表わされるエステル結合を含有することが好ましい。
[−OCO−R−COO−(CH
2)
n−] 一般式(1)
(式中、Rは炭素数2〜20の直鎖状不飽和脂肪族2価カルボン酸残基を示し、nは2〜20の整数を示す。)
一般式(1)の構造の存在は固体C13NMRにより確認することができる。
【0051】
前記直鎖状不飽和脂肪族基の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、1,3−n−プロペンジカルボン酸、1,4−n−ブテンジカルボン酸等の直鎖状不飽和2価カルボン酸由来の直鎖状不飽和脂肪族基が挙げられる。
【0052】
前記一般式(1)において、(CH
2)
nは直鎖状脂肪族2価アルコール残基を示す。この場合の直鎖状脂肪族2価アルコール残基の具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の直鎖状脂肪族2価アルコールから誘導されたものが挙げられる。
【0053】
結晶性ポリエステル樹脂(A)は、その酸成分として、直鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることで、芳香族ジカルボン酸を用いた場合よりも結晶構造を形成し易いという利点があり、結晶性ポリエステル樹脂の機能をより効果的に発揮させることができる。
【0054】
結晶性ポリエステル樹脂(A)は、例えば、(i)直鎖状不飽和脂肪族2価カルボン酸またはその反応性誘導体(酸無水物、炭素数1〜4の低級アルキルエステル、酸ハライド等)からなる多価カルボン酸成分と、(ii)直鎖状脂肪族ジオールからなる多価アルコール成分とを、重縮合反応をさせることによって製造することができる。この場合、多価カルボン酸成分には、必要に応じ、少量の他の多価カルボン酸を添加してもよい。
【0055】
その場合、多価カルボン酸には、(i)分岐鎖を有する不飽和脂肪族二価カルボン酸、(ii)飽和脂肪族2価カルボン酸や、飽和脂肪族3価カルボン酸等の飽和脂肪族多価カルボン酸、(iii)芳香族2価カルボン酸や芳香族3価カルボン酸等の芳香族多価カルボン酸等が包含される。
【0056】
これらの多価カルボン酸の添加量は、全カルボン酸に対して、通常、30モル%以下、好ましくは10モル%以下であり、得られるポリエステルが結晶性を有する範囲内で適宜添加される。
【0057】
必要に応じて添加することのできる多価カルボン酸の具体例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シトラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の2価カルボン酸;無水トリメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の3価以上の多価カルボン酸等が挙げられる。
【0058】
前記多価アルコール成分には、必要に応じ、少量の脂肪族系の分岐鎖2価アルコールや環状2価アルコールの他、3価以上の多価アルコールを添加してもよい。
その添加量は、全アルコールに対して、30モル%以下、好ましくは10モル%以下であり、得られるポリエステルが結晶性を有する範囲内で適宜添加される。
【0059】
必要に応じて添加される多価アルコールを例示すると、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ポリエチレングリコール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、グリセリン等が挙げられる。
【0060】
結晶性ポリエステル樹脂(A)において、その分子量分布は、低温定着性の観点からシャープであることが好ましく、また、その分子量は、比較的低分子量であることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂(A)の分子量は、o−ジクロルベンゼン可溶分のGPCによる分子量分布において、重量平均分子量(Mw)が5500〜6500、数平均分子量(Mn)が1300〜1500およびMw/Mn比が2〜5であることが好ましい。
【0061】
結晶性ポリエステル樹脂(A)についての前記分子量分布は、横軸をlog(M:分子量)とし、縦軸を質量%とする分子量分布図に基づくものである。本発明で用いる結晶性ポリエステル樹脂(A)の場合、この分子量分布図において、3.5〜4.0(質量%)の範囲に分子量ピークを有することが好ましく、また、そのピークの半値幅が1.5以下であることが好ましい。
【0062】
結晶性ポリエステル樹脂(A)において、そのガラス転移温度(Tg)および軟化温度(T1/2)は、トナーの耐熱保存性が悪化しない範囲で低いことが望ましいが、一般的には、そのTgは80〜130℃、好ましくは80〜125℃であり、そのT1/2は80〜130℃、好ましくは80〜125℃である。TgおよびT1/2が前記範囲内であることにより、トナーの定着下限温度が高くなることがなく、低温定着性が悪化することがない。TgおよびT1/2が前記範囲内であることによりトナーの耐熱保存性が悪化することがない。
【0063】
本発明における結晶性ポリエステル樹脂(A)が結晶性を有するか否かは、粉末X線回折装置によるX線回折パターンにピークが存在するかどうかで確認できる。
【0064】
本発明で用いる結晶性ポリエステル樹脂(A)は、その回折パターンにおいて、2θが19°〜25°の位置に少なくとも1つの回折ピークが存在すること、より好ましくは2θが(i)19°〜20°、(ii)21°〜22°、(iii)23°〜25°および(iv)29°〜31°の位置に回折ピークが存在することが好ましい。トナー化後にも、2θ=19°〜25°の位置に回折ピークが存在すると、即ちそれは、結晶性ポリエステル樹脂(A)が結晶性を維持していることを示しており、結晶性ポリエステル樹脂(A)の機能を確実に発揮させることができるため好ましい。
【0065】
粉末X線回折測定は、理学電機RINT1100を用い、管球をCu、管電圧−電流を50kV〜30mAの条件で広角ゴニオメーターを用いて測定した。
図4に、実施例で用いた結晶性ポリエステル樹脂a6(詳細は後述する)のX線回折結果を、
図5に実施例30のトナーのX線回折結果を示す。
【0066】
<非結晶性樹脂(B)>
本発明に用いる非結晶性樹脂(B)はクロロホルム不溶分を含有していることが好ましく、前記非結晶性樹脂(B)が非結晶性樹脂(B−1)および非結晶性樹脂(B−2)を含有してなり、該非結晶性樹脂(B−1)がクロロホルム不溶分を含有していることがより好ましい。特に、前記非結晶性樹脂(B−1)がクロロホルム不溶分を5〜40質量%含有していると耐ホットオフセット性が発現しやすくなるため好ましい。また、トナー化後に、トナー中のクロロホルム不溶分が1〜30質量%となるようにすると、耐ホットオフセット性を維持しつつ、非結晶性樹脂(B−1)以外の樹脂の配分も確保できるため好ましい。トナー中のクロロホルム不溶分が1質量%より少なくなると、クロロホルム不溶分に起因する耐ホットオフセット性が希薄になり、30質量%よりも多くなると、低温定着性に寄与する分の結着樹脂の配分が相対的に少なくなるため、低温定着性が悪化する。
【0067】
クロロホルム不溶分は以下のように測定される。
トナー(もしくは結着樹脂)約1.0gを秤量し、これにクロロホルムを約50g加える。十分に溶解させた溶液を遠心分離で分け、JIS規格(P3801)5種Cの定性濾紙を用いて常温で濾過する。濾紙残渣が不溶分であり、用いたトナー質量と濾紙残渣質量の比(質量%)でクロロホルム不溶分の含有量を表わす。
なお、トナーとしたときのクロロホルム不溶分を測定する場合には、トナー約1.0gを秤量して結着樹脂と同様の方法で行なうが、濾紙残渣の中には顔料などの固形物が存在するので、熱分析により別途求める。
【0068】
本発明に用いる非結晶性樹脂(B−1)は非結晶性樹脂(B−2)よりも軟化温度(T1/2)が25℃以上高いことが好ましい。これは、非結晶性樹脂(B−2)には結晶性ポリエステル樹脂(A)の低温定着性を補助させるべく定着下限に寄与する機能、非結晶性樹脂(B−1)にはクロロホルム不溶分に起因する耐ホットオフセット性、つまり定着上限に寄与する機能というように、非結晶性樹脂(B−1)と非結晶性樹脂(B−2)で役割を分け、機能分離をさせているためである。
【0069】
非結晶性樹脂(B−2)は、THF可溶分により求められたGPCによる分子量分布が1000〜10000の間にメインピークを有し、該メインピークの半値幅が15000以下であることが好ましい。このような非結晶性樹脂(B−2)は非常に良好な低温定着性を示すため、トナーに処方した際に結晶性ポリエステル樹脂(A)を減量しても十分に低温定着性を補助することができる。また、逆説的ではあるが、上記の分子量分布を持つ非結晶性樹脂(B−2)を用いても、トナーの分子量分布が1000〜10000の間にメインピークを有し、半値幅が15000以下となるのであれば、トナーを構成する結着樹脂のうち非結晶性樹脂(B−2)の占める割合は高くなる。
【0070】
本発明者らが検討を重ねた結果、結晶性ポリエステル樹脂(A)、非結晶性樹脂(B−1)、非結晶性樹脂(B−2)、複合樹脂(C)を組み合わせた処方でトナーを製造すると、非結晶性樹脂(B−2)の割合を高めた場合が最もバランスがよく、過剰な結晶性ポリエステル樹脂や過剰なTHF不溶分による副作用や、複合樹脂(C)による定着下限への悪影響が顕在化せず、それぞれの樹脂の機能が有効に発揮され、低温定着性、耐熱保存性、耐ホットオフセット性が良好になるということを見出した。
【0071】
したがって、本発明に係る電子写真画像形成用トナーは、THF可溶分により求められたGPCによる分子量分布が1000〜10000の間にメインピークを有し、該メインピークの半値幅が15000以下であることが好ましい。
【0072】
本発明において、非結晶性樹脂(B−1)、非結晶性樹脂(B−2)としては、前述のように、非結晶性樹脂(B−1)のクロロホルム不溶分の含有、非結晶性樹脂(B−2)の適切な分子量分布、非結晶性樹脂(B−1)と非結晶性樹脂(B−2)の軟化温度の大小関係が満たされていることが好ましく、それら樹脂には従来公知の材料を用いることができる。例えば、以下に示すような樹脂を用いることが可能である。これらの樹脂は単独使用に限らず、二種以上併用することも可能である。
【0073】
ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、スチレン/クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/塩化ビニル共重合体、スチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体(スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン/メタクリル酸エステル共重合体(スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン/α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単独重合体又は共重合体)、塩化ビニル樹脂、スチレン/酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン/エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等、石油系樹脂、水素添加された石油系樹脂等が例として挙げられる。
これらの樹脂の製造法は、特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合のいずれも利用できる。
【0074】
本発明に用いられる非結晶性樹脂(B)は、低温定着性の観点からポリエステル樹脂であることがより好ましい。例えば、アルコールとカルボン酸との縮重合によって通常得られるものも使用可能である。
【0075】
該アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、1.4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、及びビスフェノールA等のエチル化ビスフェノール類、その他二価のアルコール単量体、三価以上の多価アルコール単量体を挙げることができる。
【0076】
また、カルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マロン酸等の二価の有機酸単量体、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸単量体を挙げることができる。
特に、ポリエステル樹脂としては、熱保存性の関係から、ガラス転位温度Tgが55℃以上のものが好ましく、さらに60℃以上のものがより好ましい。
前記非結晶性樹脂(B)のトナー中の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60質量%〜95質量%が好ましく、75質量%〜90質量%がより好ましい。
【0077】
<複合樹脂(C)>
前記複合樹脂(C)は、縮重合系モノマーと付加重合系モノマーとが化学的に結合した樹脂(ハイブリッド樹脂と称することもある)である。
即ち、前記複合樹脂(C)は、縮重合系樹脂ユニットと、付加重合系樹脂ユニットとを有している。
【0078】
前記複合樹脂(C)は、原料となる縮重合系モノマーと付加重合系モノマーを含む混合物を、同一反応容器中で縮重合反応と付加重合反応を同時に並行反応して行うか、縮重合反応と付加重合反応、又は付加重合反応と縮重合反応を順次行うことによって得ることができる。即ち、複合樹脂(C)は、縮重合系ユニットと付加重合系ユニットとを含む樹脂である。
【0079】
前記複合樹脂(C)における縮重合系モノマーとしては、ポリエステル樹脂ユニットを形成する多価アルコールと多価カルボン酸、ポリアミド樹脂ユニットもしくはポリエステル−ポリアミド樹脂ユニットを形成する多価カルボン酸とアミン、又はアミノ酸が挙げられる。
【0080】
2価のアルコール成分としては、例えば1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素添加ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオールなどが挙げられる。
【0081】
3価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、などが挙げられる。
【0082】
これらの中でも、水素添加ビスフェノールA、又はビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール等のビスフェノールA骨格を有するアルコール成分は、樹脂に耐熱保存性や機械的強度を付与するので好適に用いることができる。
【0083】
カルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、などが挙げられる。
【0084】
3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル、などが挙げられる。
これらの中でも、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の芳香族多価カルボン酸化合物が、樹脂の耐熱保存性、機械的強度の観点から好適に用いられる。
【0085】
アミン成分もしくはアミノ酸成分としては、例えば、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
【0086】
前記ジアミン(B1)としては、例えば芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等)、脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等)、脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)などが挙げられる。
前記3価以上のポリアミン(B2)としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
前記アミノアルコール(B3)としては、例えばエタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
前記アミノメルカプタン(B4)としては、例えばアミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
前記アミノ酸(B5)としては、例えばアミノプロピオン酸、アミノカプロン酸、ε−カプロラクタムなどが挙げられる。
【0087】
前記(B1)〜(B5)のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記(B1)〜(B5)のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。
【0088】
前記複合樹脂(C)中における縮重合系モノマー成分のモル比率は、5モル%〜40モル%であることが好ましく、10モル%〜25モル%がより好ましい。
前記モル比率が、5モル%未満であると、ポリエステル系樹脂との分散性が悪化し、50モル%を超えると、離型剤の分散が悪化する傾向が現れる。
また、縮重合反応を行う際にはエステル化触媒等を使用してもよく、周知慣用の触媒を全て用いることが可能である。
【0089】
前記複合樹脂(C)における付加重合系モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ビニル系モノマーが代表的である。
【0090】
該ビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン系ビニルモノマー;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸等のアクリル系モノマー;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸系ビニルモノマー;その他のビニルモノマー又は共重合体を形成する他のモノマー、などが挙げられる。
【0091】
前記その他のビニルモノマー又は共重合体を形成する他のモノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステル等の不飽和二塩基酸のモノエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸等の不飽和二塩基酸エステル;クロトン酸、ケイヒ酸等のα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物等のα,β−不飽和酸無水物;該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物又はこれらのモノエステル等のカルボキシル基を有するモノマー;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレン等のヒドロキシ基を有するモノマー、などが挙げられる。
【0092】
これらの中でも、スチレン、アクリル酸、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等が好適に用いられ、少なくともスチレンとアクリル酸を含む組合せで用いると、離型剤の分散性が極めて良好であるので特に好ましい。
【0093】
更に必要に応じて付加重合系モノマーの架橋剤を添加することができる。
該架橋剤としては、例えば、芳香族ジビニル化合物として、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、などが挙げられる。
【0094】
アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
【0095】
エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
【0096】
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。
ポリエステル型ジアクリレート類として、例えば、商品名MANDA(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0097】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0098】
前記架橋剤の添加量は、使用される付加重合系モノマー100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部が好ましく、0.03質量部〜5質量部がより好ましい。
【0099】
付加重合系モノマーを重合させる際に用いられる重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤;メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、n−ブチル−4,4−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)バレレート等の過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
これらは、樹脂の分子量及び分子量分布を調節する目的で二種類以上を混合して用いることが可能である。
前記重合開始剤の添加量は、使用される付加重合系モノマー100質量部に対して、0.01質量部〜15質量部が好ましく、0.1質量部〜10質量部がより好ましい。
【0100】
縮重合系樹脂ユニットと、付加重合系樹脂ユニットとを化学的に結合するには、例えば、縮重合と付加重合のいずれでも反応可能なモノマー(両反応性モノマー)を用いる。
このような両反応性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物;ヒドロキシ基を有するビニル系モノマーなどが挙げられる。
前記両反応性モノマーの添加量は、使用される付加重合系モノマー100質量部に対して、1質量部〜25質量部が好ましく、2質量部〜20質量部がより好ましい。
【0101】
前記複合樹脂(C)は、同一反応容器内であれば、縮重合反応と付加重合反応の両反応の進行及び/又は完了を同時に行う他、それぞれの反応温度、時間を選択して、独立に反応の進行を完了することができる。
【0102】
例えば、反応容器中に縮重合系モノマーの混合物中に、付加重合系モノマー及び重合開始剤からなる混合物を滴下してあらかじめ混合し、最初にラジカル重合反応により付加重合を完了させ、次いで反応温度を上昇させることにより縮重合を行う方法がある。
このように、反応容器中で独立した二つの反応を進行させることにより、二種の樹脂ユニットを効果的に分散、結合させることが可能である。
【0103】
複合樹脂(C)が、ポリエステルの縮重合系樹脂ユニットとビニル系樹脂の付加重合系ユニットを有する複合樹脂であることが好ましく、複合樹脂(C)の機能をより効果的に発揮させることができる。
【0104】
前記複合樹脂(C)の軟化温度(T1/2)としては、90℃〜130℃が好ましく、100℃〜120℃がより好ましい。
前記軟化温度(T1/2)が、90℃以上であることにより、耐熱保存性、耐オフセット性が悪化することがなく、130℃以下であることにより、低温定着性が悪化することがない。
また、前記複合樹脂(C)のガラス転移温度は、定着性、保存性及び耐久性の観点から、45℃〜80℃が好ましく、50℃〜70℃がより好ましく、53℃〜65℃が更に好ましい。
【0105】
前記複合樹脂(C)の酸価は、帯電性と環境安定性の観点から、5mgKOH/g〜80mgKOH/gが好ましく、15mgKOH/g〜40mgKOH/gがより好ましい。
複合樹脂(C)のトナー中の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3質量%〜20質量%が好ましい。
【0106】
本発明のトナーは、必要に応じて帯電制御剤を配合することも可能である。
帯電制御剤としては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、ホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類、有機金属錯体、キレート化合物、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体、第四級アンモニウム塩、サリチル酸金属化合物等がある。他にも、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類等があり、これら従来公知のいかなる帯電制御剤(極性制御剤)も、単独あるいは混合して使用できる。
これらの帯電制御剤の使用量は、トナー樹脂成分に対し、0.1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。
【0107】
これら帯電制御剤の中でも、サリチル酸金属化合物を含有させると、同時に耐ホットオフセット性を改良できるため好ましい。特に、6配位の構成を取りうる3価以上の金属を有する錯体は、樹脂とワックスの反応性が高い部分と反応し、軽度の架橋構造を作るため、耐ホットオフセットへの効果が大きい。また、複合樹脂(C)と併用することで分散性が向上し、帯電極性制御の機能をより有効に発揮させることができる。
ここで、3価以上の金属の例としては、Al,Fe,Cr,Zr等が挙げられる。
また、サリチル酸金属化合物としては、下式で表される化合物を用いることができ、Mが亜鉛である金属錯体としてボントロンE−84 オリエント化学工業(株)製を挙げることができる。
【0109】
(式中、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して水素原子、直鎖又は分枝鎖状の炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基、Mはクロム、亜鉛、カルシウム、ジルコニウム又はアルミニウム、mは2以上の整数、nは1以上の整数を示す)
【0110】
本発明における電子写真画像形成用トナーは、DSC(Differential scanning calorimetry;示差走査熱量測定)によるトナーの吸熱ピーク測定にて、90〜130℃の範囲に結晶性ポリエステル樹脂(A)に起因する吸熱ピークを有することが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂(A)に起因する吸熱ピークが90〜130℃の範囲に存在すると、結晶性ポリエステル樹脂が常温では溶融せず、かつ、比較的低温な定着温度領域でトナーが溶融し、記録媒体に定着できるため、耐熱保存性と低温定着性をより効果的に発現させることができる。
【0111】
また、吸熱ピークの吸熱量が1J/g以上、15J/g以下であることが好ましい。
吸熱量が1J/g未満であると、トナー中で有効にはたらく結晶性ポリエステル樹脂の量が少なすぎるため、結晶性ポリエステル樹脂の機能が十分に発揮されない。吸熱量が15J/gより多いと、トナー中で有効な結晶性ポリエステル樹脂の量が過剰であるため、非結晶性ポリエステル樹脂と相溶する絶対量が多くなり、トナーのガラス転移温度が低下し、耐熱保存性の低下を招く。
【0112】
本発明におけるDSC測定(吸熱ピーク、ガラス転移温度Tg)は、示差走査熱量計(「DSC−60」;島津製作所製)を用い、10℃/分で20〜150℃まで昇温して測定する。
【0113】
本発明では結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピークは、結晶性ポリエステル樹脂の融点である80〜130℃付近に存在するものであり、吸熱量はベースラインと吸熱曲線で囲まれた範囲の面積から求められる。一般的に、DSC測定における吸熱量は温度上昇を二度行って測定を行なうことが多いが、本発明における吸熱ピーク及びガラス転移温度の測定は一度目の昇温の際の吸熱曲線を用いて導き出す。
【0114】
結晶性ポリエステル樹脂(A)由来の吸熱ピークがワックスの吸熱ピークと重なる場合には、重なったピークの吸熱量からワックス分の吸熱量を減算する。ワックス分の吸熱量は、ワックス単独の吸熱量とトナー中のワックス含有量から計算される。
【0115】
本発明のトナーは、脂肪酸アミド化合物を含有することが好ましい。
トナー製造時に溶融混練工程を含む粉砕トナーに対し、結晶性ポリエステル樹脂(A)と共に脂肪酸アミド化合物を配合すると、混練時に溶融していた結晶性ポリエステル樹脂(A)が冷却される際の混練物中での再結晶が促進されるため、樹脂との相溶が少なくなり、トナーのガラス転移温度の低下を抑えることができるため、耐熱保存性を改善することができる。また、離型剤と併用した場合には、離型剤を定着画像表面に留めることが可能となるため、擦れに強く(耐スミア性の向上)なる。
トナーにおける脂肪酸アミド化合物の含有量は、0.5〜10質量%が好ましい。
【0116】
脂肪酸アミド化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(I)で表される化合物などが挙げられる。
R
10−CO−NR
12R
13 一般式(I)
R
10は炭素数10〜30の脂肪族炭化水素基であり、R
12、R
13は各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数7〜10のアラルキル基である。ここで、R
12、R
13のアルキル基、アリール基、アラルキル基は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基等の通常不活性な置換基で置換されていても良い。より好ましくは無置換のものである。
【0117】
好ましい化合物としては、ステアリン酸アミド、ステアリン酸メチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミド、ステアリン酸ベンジルアミド、ステアリン酸フェニルアミド、ベヘン酸アミド、ベヘン酸ジメチルアミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド等が挙げられる。
【0118】
本発明では、上記脂肪酸アミド化合物としては、中でも、アルキレンビス脂肪酸アミドが特に好適に用いられる。
アルキレンビス脂肪酸アミドは、下記の一般式(II)で示される化合物である。
R
14−CO−NH−R
15−NH−CO−R
16 一般式(II)
(一般式(II)中、R
14、R
16は炭素数5〜21のアルキル基またはアルケニル基、R
15は炭素数1〜20のアルキレン基を示す。)
【0119】
上記一般式(II)で示されるアルキレンビス飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサエチレンビスパルミチン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド等を挙げることができる。これらのうちでは、エチレンビスステアリン酸アミドが最も好ましい。
これら脂肪酸アミド化合物は、軟化温度(T1/2)が、定着時の定着部材表面の温度より低いと、定着部材表面で離型剤としての効果も果たすことができる。
【0120】
上記の他に使用できるアルキレンビス脂肪酸アミド系の化合物として、具体的には、プロピレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、プロピレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、プロピレンビスラウリン酸アミド、ブチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、プロピレンビスミリスチン酸アミド、ブチレンビスミリスチン酸アミド、プロピレンビスパルミチン酸アミド、ブチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスパルミトレイン酸アミド、エチレンビスパルミトレイン酸アミド、プロピレンビスパルミトレイン酸アミド、ブチレンビスパルミトレイン酸アミド、メチレンビスアラキジン酸アミド、エチレンビスアラキジン酸アミド、プロピレンビスアラキジン酸アミド、ブチレンビスアラキジン酸アミド、メチレンビスエイコセン酸アミド、エチレンビスエイコセン酸アミド、プロピレンビスエイコセン酸アミド、ブチレンビスエイコセン酸アミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、プロピレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、プロピレンビスエルカ酸アミド、ブチレンビスエルカ酸アミド等の、飽和または1〜2価の不飽和の脂肪酸のアルキレンビス脂肪酸アミド系の化合物を挙げることができる。
【0121】
<着色剤>
本発明のトナーに用いる着色剤としては、例えばカーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料等の染顔料など、従来公知のいかなる染顔料をも単独あるいは混合して使用することが可能であり、ブラックトナーとしてもフルカラートナーとしても使用できる。
【0122】
特に、カーボンブラックは良好な黒色着色力を持つ。しかし、同時に、良好な導電性材料でもあるため、使用量が多かったり、トナー中で凝集状態で存在したりすると電気抵抗が低下し、転写工程において転写不良を招く原因になる。特に、結晶性ポリエステル樹脂(A)と併用した場合、カーボンブラック粒子は結晶性ポリエステル樹脂(A)のドメイン中に入り込めないため、結晶性ポリエステル樹脂(A)が大きな分散径をもってトナー中に存在した場合、結晶性ポリエステル樹脂(A)以外の樹脂中に比較的濃度の高い状態で存在することになる。そのため、凝集体のままトナー中に閉じ込められやすくなり、抵抗が過剰に低下しやすくなる。
【0123】
本発明の場合、複合樹脂(C)と併用するため、カーボンの分散も良好となり、上記のリスクは軽減することができる。また、カーボンブラックを含有すると、記録媒体へトナーを定着する際に、溶融したトナーの粘性を高いものにすることができるため、非結晶性樹脂(B−1)を多く処方した場合に、粘性低下に起因して発生するホットオフセットを抑制できるという効果も付与することができる。
これらの着色剤の使用量はトナー樹脂成分に対して、通常1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%である。
【0124】
<離型剤>
本発明のトナーの離型剤には従来公知のものが使用できる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等の低分子量ポリオレフィンワックスやフィッシャー・トロプシュワックス等の合成炭化水素系ワックスや蜜ロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モンタンワックス等の天然ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス類、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸及び高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸アミド、合成エステルワックス等及びこれらの各種変性ワックスが挙げられる。
【0125】
これら離型剤の中でも、カルナウバワックス及びその変性ワックスやポリエチレンワックス、合成エステル系ワックスが好適に用いられる。特にカルナウバワックスは、ポリエステル樹脂やポリオール樹脂に対して適度に微分散し、耐ホットオフセット性と転写性・耐久性ともに優れたトナーとすることが容易なため非常に好適である。また、脂肪酸アミド化合物と併用した場合、定着画像表面に留まる効果が非常に強くなり、耐スミア性が更に向上する。
【0126】
これら離型剤は、1種又は2種以上を併用して用いることができる。また、これらの離型剤の使用量は、トナーに対して2〜15重量%が好適である。2重量%未満ではホットオフセット防止効果が不十分であり、15重量%を超えると転写性、耐久性が低下する。
【0127】
離型剤の融点は70〜150℃であることが好ましい。70℃より低いとトナーの耐熱保存性が低下する。150℃より高いと離型性が十分に果たせない。
【0128】
本発明のトナーの粒径については、細線再現性等に優れた高画質を得るためには、体積平均粒径が4〜10μmであることが好ましい。
4μmより小さいと現像工程におけるクリーニング性、転写工程における転写効率に支障をきたし、画像品質が低下する。10μmより大きいと、画像の細線再現性が低下する。
ここで、トナー体積平均粒径の測定は、種々の方法によって測定可能であるが、本発明では米国コールター・エレクトロニクス社製のコールターカウンターTAIIが用いられる。
【0129】
本発明のトナーは、製造工程に少なくとも溶融混練工程を含む、所謂粉砕法を用いて製造された粉砕トナーであると、ピーク比C/Rを制御できるため好ましい。
粉砕法は、結晶性ポリエステル樹脂(A)、非結晶性樹脂(B)、複合樹脂(C)を少なくとも含有し、必要に応じて着色剤及び離型剤、並びに帯電制御剤等のその他の材料を含むトナー材料を乾式混合し、混練機にて溶融混練し、粉砕して粉砕トナーを得る方法である。
【0130】
まず溶融混練工程では、トナー材料を混合し、該混合物を溶融混練機に仕込んで溶融混練する。該溶融混練機としては、例えば、一軸の連続混練機、二軸の連続混練機、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。具体的な例としては、神戸製鋼所社製KTK型二軸押出機、東芝機械社製TEM型押出機、ケイシーケイ社製二軸押出機、池貝鉄工所社製PCM型二軸押出機、ブス社製コニーダー等が好適に用いられる。
【0131】
溶融混練は、結着樹脂(バインダー樹脂)の分子鎖の切断を招来しないような適正な条件で行うことが好ましい。具体的には、溶融混練温度は結着樹脂の軟化点を参考にして行われ、該軟化点より高温過ぎると切断が激しく、低温すぎると分散が進まないことがある。
【0132】
粉砕工程では、前記混練で得られた混練物を粉砕する。この粉砕においては、まず、混練物を粗粉砕し、次いで微粉砕することが好ましい。この際ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕したり、ジェット気流中で粒子同士を衝突させて粉砕したり、機械的に回転するローターとステーターの狭いギャップで粉砕する方式が好ましく用いられる。
【0133】
分級工程では、前記粉砕工程にて得られた粉砕物を分級し、所定粒径の粒子に調整する。分級は、例えば、サイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができる。
【0134】
前記粉砕及び分級が終了した後に、粉砕物を遠心力などで気流中にて分級し、所定の粒径のトナー(トナー母体粒子)を製造する。
【0135】
本発明のトナーは、製造工程において溶融混練工程を経る粉砕トナーであることが好ましいが、原材料を溶融混練させた後の冷却工程にて、混練物の厚さを2.5mm以上にすると、混練物の冷却速度が遅くなり、混練物中で溶融している結晶性ポリエステル樹脂(A)の再結晶が行なわれる時間が長くなるため、再結晶が促進され、結晶性ポリエステル樹脂(A)の機能をより効果的に発揮させることができる。再結晶を促進させるには前述のように脂肪酸アミドを配合するのも有効な手段ではあるが、このように製造工程を調整することでも効果が得られる。混練物の厚さに上限はないが、8mmより厚くすると、粉砕工程において効率が著しく低下すること、また、ピーク比C/Rが高くなるため、8mm以下の厚さに留めることが好ましい。
【0136】
なお、溶融混練工程後の混練物はそのままでは塊状として排出され、冷却に著しく過剰な時間を要し、また粉砕工程においても効率が著しく低くなるため、一般的には圧延工程により混練物を薄い板状とする。そして本発明では、(圧延工程によって得られた薄い板状となったものなどの)混練物の厚さを2.5mm以上とすることで、急冷とならず徐冷を可能とし、結晶性ポリエステル樹脂(A)の再結晶化を促進することができるため好ましい。
【0137】
トナーの流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、上記のようにして製造されたトナー母体粒子に更に疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。
【0138】
(無機微粒子)
無機微粒子は、トナー粒子に流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤として使用する。この無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0139】
−無機微粒子(A)−
本発明の電子写真画像形成用トナーは母体表面に外添剤として無機微粒子を有しており、該無機微粒子として少なくとも一次粒子が複数個合着して二次粒子を形成した無機微粒子(A)を有している。この該無機微粒子(A)は、FE−SEMにより観測される二次粒子径Dbの小粒子側から計測した50%目の平均粒子径をDb50、小粒子側から計測した10%目の平均粒子径をDb10としたとき、Db50/Db10が1.20以下である。
一次粒子が複数個合着して二次粒子を形成した無機微粒子(A)としてはシリカの合着粒子が好ましい。
本発明においては、平均二次粒子径Dbの粒度分布においてDb50/Db10が1.20以下であることが必要であり、特に1.15以下が好ましい。Db50/Db10は、二次粒子径の小粒子と中心径粒子の割合を示しており、この値が大きくなることは二次粒子径の小さい粒子が多いことを表している。すなわち、合着が進んでいない一次粒子の状態で存在している粒子Aか、あるいは合着は進んでいるが、一次粒子自体が小さな粒子径である粒子Bが多いかのどちらか、あるいは両方であることを意味する。このような粒子AあるいはBはそれぞれ十分な機能を有さない。粒子Aについては異形添加剤としての機能が果たしきれず、耐埋没性に劣るため、異常画像発生の懸念があり、一方のBはスペーサー効果の機能を果たすことができず、外部ストレスによる埋没を抑制できない可能性が高い。これらの粒子を低減する、すなわち、Db10は大きいことが望ましい。Db50/Db10が1.2を超えると、上記の粒子AおよびBが多すぎるため、埋没抑制のために特徴づけている異形添加剤としての機能を果たしにくい。
【0140】
合着シリカはシリカおよび/または溶融シリカの1次粒子同士を処理剤を用いて化学結合させることにより、2次凝集させたシリカのことをいう。
本発明で用いる合着シリカは、結晶シリカおよび/または溶融シリカの1次粒子同士を処理剤を用いて化学結合させることにより調製するが、上記処理剤としては、アルコキシシラン類、シラン系カツプリング剤、クロロシラン類、シラザン類などのシラン系処理剤または液状エポキシ樹脂などのエポキシ系処理剤が好ましく用いられる。
【0141】
アルコキシシラン類、シラン系カツプリング剤などのシラン系処理剤を用いてシリカ1次粒子を処理した場合には、シリカ1次粒子に結合するシラノール基とシラン系処理剤に結合するアルコキシ基が反応し、脱アルコールにより新たなSi−O−Si結合を形成する。
すなわち下式に示すようにシリカ1次粒子はシラン系処理剤を介して、化学結合により2次凝集する。
【0143】
クロロシラン類を用いてシリカ1次粒子を処理した場合には、クロロシラン類のクロル基とシリカ1次粒子に結合するシラノール基が脱塩化水素反応により新たなSi−O−Si結合を、また系が水に共存する場合には、まずクロロシラン類が水に加水分解してシラノール基を生成し、該シラノール基とシリカ1次粒子に結合するシラノール基が脱水反応によりそれぞれ新たなSi−O−Si結合を生成して2次凝集する。
またシラザン類はアミノ基とシリカ1次粒子に結合するシラノール基が脱アンモニアすることにより、新たなSi−O−Si結合を生成して2次凝集する。
【0144】
一方、エポキシ系処理剤を用いてシリカ1次粒子を処理した場合には、シリカ1次粒子に結合するシラノール基が、エポキシ系処理剤のエポキシ基酸素原子およびエポキシ基に結合する炭素原子を付加し、新たなSi−O−C結合を形成する。
すなわち下式に示すようにシリカ1次粒子はエポキシ系処理剤を介して、化学結合により2次凝集する。
【0146】
本発明で用いる合着シリカは、1次粒子であるシリカを調製後に、該シリカを上記のシラン系処理剤またはエポキシ系処理剤を用いた処理により合着シリカを調製してエポキシ樹脂の充填剤として用いてもよいが、例えばゾルゲル法でシリカを合成する際に、上記のシラン系処理剤またはエポキシ系処理剤を共存させて、一段反応にて合着シリカを調製してもよい。
【0147】
また処理剤としての使用は、生成するSi−O−Si結合の方がSi−O−C結合よりも熱に対して安定であるため、シラン系処理剤の方がエポキシ系処理剤よりも望ましい。 上記のシラン系処理剤であるアルコキシシラン類としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0148】
また、上記のシラン系処理剤であるシラン系カツプリング剤としては、具体的には、γ−アミノプロピルトルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0149】
さらに、上記のアルコキシシラン類またはシラン系カツプリング剤以外のシラン系処理剤としては、具体的にビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、メチルフエニルジクロロシラン、フエニルトリクロロシラン、N, N′−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N, O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ヘキサメチルジシラザン、サイクリツクシラザン混合物などが挙げられる。
【0150】
上記のエポキシ系処理剤としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
本発明で用いる合着シリカは、結晶シリカおよび/または溶融シリカの1次粒子を、上記の処理剤を用いて化学結合させて調製するが、その処理は、まずシリカ1次粒子と処理剤を重量比で100:0.01〜100:50にて公知の混合機、たとえばスプレードライヤーなど用いて混合する。
その際、処理助剤として、たとえば水または1%酢酸水溶液などを適宜加えてもよい。
【0151】
シリカ1次粒子と処理剤の混合物を、次いで焼成するが、その焼成温度は100〜2500℃の温度範囲から選ばれる。 また焼成時間は0.5〜30時間でよい。
【0152】
シリカの合着度(合着度の定義については後述する)は、一次粒子径の調整、処理剤の種類および量並びに処理条件によって任意に制御できる。
すなわち、凝集力はエポキシ系処理剤よりもシラン系処理剤を用いた方が、また処理剤の量をシリカ1次粒子に対して増加させた方が、また、焼成温度が高い方がそれぞれ強くすることができ、合着度が高くなる傾向にある。一方で、焼成時間を延ばすことで非合着粒子の割合を低減することができる。しかしながら、過剰な時間延長は合着粒子同士の凝集を助長し、トナーへの付着性に問題が出る恐れが生じる。
【0153】
(合着度の測定)
本発明における合着度は以下のように定義される。
合着度の測定は画像観察によって得られる。合着シリカを適切な溶媒(THFなど)に分散させた後、基板上で溶媒を除去し乾固させたサンプルをFE−SEMにて観察する。加速電圧5〜8kV、観察倍率8k〜10k倍にて視野中のシリカについて二次粒子径を測定する。
二次粒子系は凝集した粒子の最長長さを計測する。
図6(a)に例を示す。観察するシリカ個数は100個以上の粒子を計測する。
【0154】
一次粒子径も同様にFE−SEMにて観察する。合着しているシリカの外枠から、埋め込まれている全体像を予測し、全体像の最長長さを計測する。
図6(b)に例を示す。それらの平均値を一次粒子径とする。観察するシリカ個数は100個以上の粒子を計測する。
図6(a)における矢印の長さを二次粒子径(Db)とし、
図6(b)における矢印の長さの平均を一次粒子径(Da)とするとき、合着度は以下のように定義される。
合着度=Db/Da
上述した測定法にて、合着度を算出し、さらにDb50、およびDb10を算出する。
合着度Gの平均値は1.5〜4.0の範囲にあることが好ましく、特に2.0〜3.0の範囲が好ましい。これが1.5より小さい場合には外添剤が母体へ埋没しやすく、外添剤が凹部へ転がりやすいなどにより高い転写性を維持する機能がわずかに劣りやすい。また4.0より大きい場合にはトナーから外添剤が剥れやすく、キャリア汚染や感光体に対して傷つけやすくなったりするため、経時での劣化にやや弱い。
また、上述した合着度Gが1.3未満となる無機微粒子が10個数%以下であることが好ましい。合着度Gは製造上、分布を有しており、合着度が1.3未満の粒子は合着が進行していない粒子であり、ほぼ球形に近い状態として存在している。そのため、埋没抑制のために特徴づけている異形添加剤としての機能を果たしにくい。
また、合着しているシリカの二次粒子径は80nm〜200nmの範囲にあることが好ましく、特に100nm〜160nmの範囲が好ましい。80nm未満であると、スペーサー効果の機能を果たしにくく、外部ストレスによる埋没を抑制しにくい。一方で、200nmを超えると、トナーからの遊離が発生しやすく、感光体フィルミングを引き起こしやすくなる。
【0155】
このような添加剤の混合は、一般の粉体の混合機が用いられるがジャケット等装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。添加剤に与える負荷の履歴を変えるには、例えば、途中又は漸次に添加剤を加えていけばよい。
【0156】
混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを適宜変化させてもよい。また、初めに強い負荷を与え、次いで、比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。
外添剤混合工程に使用できる混合設備としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。
混合工程を施した後に、250メッシュ以上の篩を通過させ、粗大粒子や凝集粒子を除去してもよい。
【0157】
本発明のトナーを現像剤として使用する際は、トナーのみにて構成される一成分現像剤として用いても、キャリアと混合して二成分現像剤として用いてもよく、特に限定はされないが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の観点から、二成分現像剤として用いることが好ましい。
【0158】
本発明における電子写真現像装置の一例を
図7に示す。なお、本発明に係る画像形成方法は、この電子写真現像装置(画像形成装置)により実施することができる。
【0159】
図7の符号101Aは駆動ローラ、101Bは従動ローラ、102は感光体ベルト(像担持体)、103は帯電器(帯電手段)、104はレーザー書き込み系ユニット(露光手段)、105A〜105Dはそれぞれイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの各色のトナーを収容する現像ユニット(現像手段)、106は給紙カセット、107は中間転写ベルト、107Aは中間転写ベルト駆動用の駆動軸ローラ、107Bは中間転写ベルトを支持する従動軸ローラ(以上、107,107A,107Bで中間転写手段)、108はクリーニング装置(クリーニング手段)、109は定着ローラ(定着手段)、109Aは加圧ローラ(定着手段)、110は排紙トレイ、113は紙転写ローラ(転写手段)を示している。
【0160】
このカラー画像形成装置では、可撓性の中間転写ベルト107が使用されており、該中間転写体たる中間転写ベルト107は駆動軸ローラ107Aと一対の従動軸ローラ107Bに張架されて時計方向に循環搬送されていて、一対の従動軸ローラ107B間のベルト面を駆動ローラ101Aの外周の感光体ベルト102に対して水平方向から当接させた状態としている。
【0161】
通常のカラー画像出力時は、感光体ベルト102上に形成される各色のトナー像は、形成の都度前記中間転写ベルト107に転写されて、カラーのトナー像を合成し、これを給紙カセット106から搬送される転写紙に対し紙転写ローラ113によって一括転写し、転写後の転写紙は定着装置の定着ローラ109と加圧ローラ109Aの間へと搬送され、定着ローラ109と加圧ローラ109Aによる定着後、排紙トレイ110に排紙される。
【0162】
105A〜105Dの現像ユニットがトナーを現像すると、現像ユニットに収容されている現像剤のトナー濃度が低下する。現像剤のトナー濃度の低下はトナー濃度センサ(図示せず)により検知される。トナー濃度の低下が検知されると、各現像ユニットにそれぞれ接続されているトナー補給装置(図示せず)が稼動し、トナーを補給してトナー濃度を上昇させる。このとき、補給されるトナーは、現像ユニットに現像剤排出機構が備わっていれば、キャリアとトナーが混合されている所謂トリクル現像方式用現像剤であってもよい。
【0163】
図7では中間転写ベルト上にトナー像を重ねて画像を形成しているが、中間転写ベルトを用いることなく像担持体から直接に記録媒体へ転写を行なうシステムにおいても、同様に本発明の電子写真画像形成装置とすることができる。
【0164】
図8は、本発明で用いられる現像装置の一例を示す図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図8において、潜像担持体である感光体(20)に対向して配設された現像手段である現像装置(40)は、現像剤担持体としての現像スリーブ(41)、現像剤収容部材(42)、規制部材としてのドクターブレード(43)、支持ケース(44)等から主に構成されている。
【0165】
感光体(20)側に開口を有する支持ケース(44)には、内部にトナー(21)を収容するトナー収容部としてのトナーホッパー(45)が接合されている。トナーホッパー(45)に隣接した、トナー(21)と、キャリア(23)からなる現像剤を収容する現像剤収容部(46)には、トナー(21)とキャリア(23)を撹拌し、トナー(21)に摩擦/剥離電荷を付与するための、現像剤撹拌機構(47)が設けられている。
【0166】
トナーホッパー(45)の内部には、図示しない駆動手段によって回動されるトナー供給手段としてのトナーアジテータ(48)及びトナー補給機構(49)が配設されている。トナーアジテータ(48)及びトナー補給機構(49)は、トナーホッパー(45)内のトナー(21)を現像剤収容部(46)に向けて撹拌しながら送り出す。
【0167】
感光体(20)とトナーホッパー(45)との間の空間には、現像スリーブ(41)が配設されている。図示しない駆動手段で図の矢印方向に回転駆動される現像スリーブ(41)は、キャリア(23)による磁気ブラシを形成するために、その内部に現像装置(40)に対して相対位置不変に配設された、磁界発生手段としての図示しない磁石を有する。
【0168】
現像剤収容部材(42)の、支持ケース(44)に取り付けられた側と対向する側には、ドクターブレード(43)が一体的に取り付けられている。ドクターブレード(43)は、この例では、その先端と現像スリーブ(41)の外周面との間に一定の隙間を保った状態で配設されている。
【0169】
このような装置を非限定的に用い、本発明の画像形成方法は、次のように遂行される。即ち、上記構成により、トナーホッパー(45)の内部からトナーアジテータ(48)、トナー補給機構(49)によって送り出されたトナー(21)は、現像剤収容部(46)へ運ばれ、現像剤撹拌機構(47)で撹拌されることによって、所望の摩擦/剥離電荷が付与され、キャリア(23)と共に現像剤として、現像スリーブ(41)に担持されて感光体(20)の外周面と対向する位置まで搬送され、トナー(21)のみが感光体(20)上に形成された静電潜像と静電的に結合することにより、感光体(20)上にトナー像が形成される。
【0170】
図9は、
図8の現像装置を有する画像形成装置の一例を示す図である。ドラム状の感光体(20)の周囲に、帯電部材(32)、像露光系(33)、現像装置(40)、転写装置(50)、クリーニング装置(60)、除電ランプ(70)が配置されている。この例の場合、帯電部材(32)の表面は、感光体(20)の表面とは約0.2mmの間隙を置いて非接触状態にあり、帯電部材(32)により感光体(20)に帯電を施す際、帯電部材(32)に図示してない電圧印加手段によって直流成分に交流成分を重畳した電界により、感光体(20)を帯電させることにより、帯電ムラを低減することが可能であり、効果的である。現像方法を含む画像形成方法は、以下の動作で行われる。
【0171】
画像形成の一連のプロセスは、ネガ−ポジプロセスで説明を行うことができる。有機光導電層を有する感光体(OPC)に代表される感光体(20)は、除電ランプ(70)で除電され、帯電チャージャ、帯電ローラ等の帯電部材(32)で均一にマイナスに帯電され、レーザー光学系等の像露光系(33)から照射されるレーザー光で潜像形成(この例では、露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行われる。
【0172】
レーザー光は、半導体レーザーから発せられて、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等により、感光体(20)の表面を、感光体(20)の回転軸方向に走査する。このようにして形成された潜像が、現像装置(40)にある現像剤担持体である現像スリーブ(41)上に供給されたトナー及びキャリアの混合物からなる現像剤により現像され、トナー像が形成される。潜像の現像時には、電圧印加機構(図示せず)から現像スリーブ(41)に、感光体(20)の露光部と非露光部の間に、ある適当な大きさの直流電圧又はこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
【0173】
一方、転写媒体(例えば紙)(80)が、給紙機構(図示せず)から給送され、上下一対のレジストローラ(図示せず)で画像先端と同期をとって、感光体(20)と転写装置(50)との間に給送され、トナー像が転写される。このとき、転写装置(50)には、転写バイアスとして、トナー帯電の極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。その後、転写媒体(80)は、感光体(20)より分離され、転写像が得られる。
【0174】
また、感光体(20)上に残存するトナーは、クリーニング部材としてのクリーニングブレード(61)により、クリーニング装置(60)内のトナー回収室(62)に回収される。
回収されたトナーは、トナーリサイクル手段(図示せず)により現像剤収容部(46)及び/又はトナーホッパー(45)に搬送され、再使用されてもよい。
画像形成装置は、上述の現像装置を複数配置し、記録媒体(転写媒体)上へトナー像を順次転写した後、定着機構へ送り、熱等によってトナーを定着する装置であってもよく、一端中間転写媒体上へ複数のトナー像を転写し、これを一括して記録媒体に転写後同様の定着を行う装置であってもよい。
【0175】
図10には、本発明で用いられる画像形成装置の他の例を示す。感光体(20)は、導電性支持体上に少なくとも感光層が設けられており、駆動ローラ(24a)、(24b)により駆動され、帯電部材(32)による帯電、像露光系(33)による像露光、現像装置(40)による現像、転写装置(50)を用いる転写、クリーニング前露光光源(26)によるクリーニング前露光、ブラシ状クリーニング手段(64)及びクリーニングブレード(61)によるクリーニング、除電ランプ(70)による除電が繰り返し行われる。
図10においては、感光体(20)(勿論この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光が行われる。
【0176】
図11には、本発明のプロセスカートリッジの一例が示される。このプロセスカートリッジは、本発明のトナーを含む現像剤を使用し、感光体(20)と、近接型のブラシ状接触帯電手段(32)、本発明のトナーを含む現像剤を収納せる現像手段(40)、クリーニング手段としてのクリーニングブレード(61)を少なくとも有するクリーニング手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジである。本発明においては、上述の各構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成することができる。
【0177】
本発明の画像形成装置は、静電潜像形成工程(帯電工程と露光工程)と、現像工程と、転写工程と、定着工程と、クリーニング工程を有し、必要に応じて、除電工程、リサイクル工程、制御工程等の工程をさらに有してもよい。
【0178】
静電潜像形成工程は、像担持体上に静電潜像を形成する工程である。像担持体の材質、形状、構造、大きさ等は、公知のものの中から適宜選択することができる。材質は、アモルファスシリコン、セレン等の無機物質、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機物質等が挙げられるが、長寿命であることからアモルファスシリコンが好ましい。また、形状は、ドラム状であることが好ましい。静電潜像は、像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより形成することができ、静電潜像形成手段により行うことができる。
【0179】
静電潜像形成手段は、像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器(帯電手段)と、像担持体の表面を露光する露光器(露光手段)を有することが好ましい。
帯電は、帯電器を用いて像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。帯電器は、目的に応じて適宜選択することができるが、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えた公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等が挙げられる。
【0180】
露光は、露光器を用いて像担持体の表面を露光することにより行うことができる。露光器は、目的に応じて適宜選択することができるが、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光器を用いることができる。なお、像担持体の裏面側から露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0181】
現像工程は、静電潜像を、本発明のトナーを用いて現像することにより、可視像を形成する工程である。可視像は、現像手段を用いて形成することができる。現像手段は、公知のものの中から適宜選択することができ、本発明のトナーを収容し、静電潜像にトナーを接触又は非接触的に付与可能な現像器を有することが好ましい。現像器は、乾式現像方式であってもよいし、湿式現像方式であってもよい。また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよい。具体的には、現像剤を摩擦攪拌することにより帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラを有する現像器等が挙げられる。現像器に収容される現像剤は、本発明のトナーを用いた現像剤であるが、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。
【0182】
二成分現像剤を有する現像器内では、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、像担持体の近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって像担持体の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて像担持体の表面にトナーによる可視像が形成される。
【0183】
転写工程は、可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、中間転写体上に可視像を一次転写した後、可視像を記録媒体上に二次転写することが好ましい。このとき、用いられるトナーは、通常、二色以上であり、フルカラートナーを用いることが好ましい。このため、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程を有することがより好ましい。
転写は、転写手段を用いて像担持体を帯電することにより行うことができる。転写手段は、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段を有することが好ましい。なお、中間転写体は、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、転写ベルト等を用いることができる。
【0184】
転写手段は、像担持体上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を有することが好ましい。転写手段は、一つであってもよいし、複数であってもよい。転写器の具体例としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器等が挙げられる。なお、記録媒体は、公知の記録媒体の中から適宜選択することができ、記録紙等を用いることができる
【0185】
定着工程は、定着手段を用いて記録媒体に転写された可視像を定着させる工程であり、各色のトナーが記録媒体に転写される毎に定着してもよいし、各色のトナーを積層した状態で一度に定着してもよい。定着手段は、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段を用いることができる。加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトの組み合わせ等が挙げられる。加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃であることが好ましい。なお、目的に応じて、定着手段と共に、又は、これらに代えて、公知の光定着器を用いてもよい。
除電工程は、像担持体に除電バイアスを印加することにより除電する工程であり、除電手段を用いて行うことができる。除電手段は、公知の除電器の中から適宜選択することができ、除電ランプ等を用いることができる。
【0186】
クリーニング工程は、像担持体上に残留するトナーを除去する工程であり、クリーニング手段を用いて行うことができる。クリーニング手段は、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等を用いることができる。ブレードクリーナを用いることが好ましい。
【0187】
リサイクル工程は、クリーニング工程により除去したトナーを現像手段でリサイクルする工程であり、リサイクル手段を用いて行うことができる。リサイクル手段は、目的に応じて適宜選択することができ、公知の搬送手段等を用いることができる。
制御工程は、各工程を制御する工程であり、制御手段を用いて行うことができる。制御手段は、目的に応じて適宜選択することができ、シークエンサー、コンピュータ等の機器を用いることができる。
【0188】
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の画像形成装置に用いるものであり、像担持体と、少なくとも帯電手段、現像手段、クリーニング手段より選ばれる一つの手段を一体に支持し、本発明の画像形成装置本体に着脱自在である。
【実施例】
【0189】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて説明する。なお、本発明はここに例示される実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」は質量部を表す。
【0190】
(実施例1)
[粉砕トナーの作製]
<粉砕トナー1処方>
結晶性ポリエステル樹脂:a−1 4部
非結晶性樹脂:b1−1 35部
非結晶性樹脂:b2−1 55部
複合樹脂:c−1 10部
着色剤:p−1 14部
離型剤:カルナウバワックス(融点:81℃) 6部
帯電制御剤:モノアゾ金属錯体 2部
(クロム系錯塩染料(ボントロンS−34 オリエント化学工業(株)製)
【0191】
下記表1〜5に記載の原材料と、上記離型剤、帯電制御剤によるトナー原材料を、上記の処方に従いへンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製、FM20B)を用いて予備混合した後、二軸混練機(株式会社池貝製、PCM−30)で100〜130℃の温度で溶融、混練した。得られた混練物はローラにて2.7mmの厚さに圧延した後にベルトクーラーにて室温まで冷却し、ハンマーミルにて200〜300μmに粗粉砕した。次いで、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業株式会社製、MDS−I)で重量平均粒径が6.9±0.2μmとなるようにルーバー開度を適宜調整しながら分級し、トナー母体粒子を得た。
【0192】
次いで、トナー母体粒子100質量部に対し、添加剤(HDK−2000、クラリアント株式会社製)0.8部と、表9における分級した合着シリカaを2.0重量部、をヘンシェルミキサーで撹拌混合し、粉砕トナー1を作製した。
作製した粉砕トナー1を5質量%と、コーティングフェライトキャリア95質量%を、ターブラーミキサー(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製)を用いて48rpmで5分間均一混合し、粉砕トナー現像剤1を作製した。
【0193】
(実施例2〜30、比較例1〜8)
以下、下記表1〜5に記載の原材料と表6に記載の離型剤、帯電制御剤、圧延厚さ、また、製造例によっては脂肪酸アミドを表6に記載の部にて実施例1と同様に混合、混練、粉砕、添加剤混合を施し、トナー2〜38を作成し、現像剤を作製した。
ただし、トナー33においては、樹脂中での顔料の分散が悪いため、他の原材料と混合する前に、非結晶性樹脂b2−3と純水を用いて予備混練を行い、マスターバッチ化を行って着色剤p−2を用いたトナーを作製した。トナー化にあたっては、マスターバッチ中に含有されている非結晶性樹脂b2−3の量から逆算し、最終的に配合される原材料比率が表6の分量となるように調整した。
(実施例31〜39、比較例9〜16)
実施例1において、合着シリカを、表9に記載した組み合わせの合着シリカに変更した以外は実施例1と同様に操作してトナー39〜トナー55を得た。
【0194】
<粉砕トナー33のマスターバッチ作製>
非結晶性樹脂:b2−3 100部
着色剤:p−2 50部
純水 50部
【0195】
無論、本発明において、マスターバッチの作製方法は上記に限定されるものではない。
なお、実施例28〜30で用いた帯電制御剤のサリチル酸金属化合物は、サリチル酸亜鉛化合物である金属錯体(ボントロンE−84 オリエント化学工業(株)製)を使用した。
【0196】
【表1】
【0197】
上記結晶性ポリエステル樹脂a−1〜a−6は、アルコール成分として1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールから選択される化合物を、カルボン酸成分としてフマル酸、マレイン酸、テレフタル酸から選択される化合物を用いて得られた樹脂である。
具体的には、表1に示すアルコール成分及びカルボン酸成分の単量体を、常圧下、170〜260℃、無触媒の条件でエステル化反応せしめた後、反応系に全カルボン酸成分に対し400ppmの3酸化アンチモンを加え3Torrの真空下でグリコールを系外へ除去しながら250℃で重縮合を行い、結晶性の樹脂を得た。尚、架橋反応は撹拌トルクが10kg・cm(100ppm)となるまで実施し、反応は反応系の減圧状態を解除して停止させた。
また、上記結晶性ポリエステル樹脂a−1〜a−6は、粉末X線回折装置によるX線回折パターンにおいて、2θ=19°〜25°の位置に少なくとも1つの回折ピークが存在し、結晶性ポリエステル樹脂であることを確認した。結晶性ポリエステル樹脂a−6のX線回折結果を
図4に示す。
【0198】
【表2】
【0199】
【表3】
【0200】
上記非結晶性樹脂b1−1〜b1−6、b2−1〜b2−3は以下のようにして得られた樹脂である。
芳香族ジオール成分及びエチレングリコール、グリセリン、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、イタコン酸より選ばれた単量体を、常圧下、170〜260℃、無触媒の条件でエステル化反応せしめた後、反応系に全カルボン酸成分に対し400ppmの3酸化アンチモンを加え3Torrの真空下でグリコールを系外へ除去しながら250℃で重縮合を行い樹脂を得た。尚、架橋反応は撹拌トルクが10kg・cm(100ppm)となるまで実施し、反応は反応系の減圧状態を解除して停止させた。
上記非結晶性樹脂b1−1〜b1−6、b2−1〜b2−3はX線回折パターンにより、回折ピークが存在せず、非結晶性であることを確認した。
また、上記非結晶性樹脂b2−1〜b2−3はクロロホルムに完全に溶解し、クロロホルム不溶分を含有しないものであることを確認した。
【0201】
【表4】
【0202】
上記複合樹脂c−1、c−2は以下のようにして作製した。
・複合樹脂c−1
縮重合系モノマーである、テレフタル酸0.8mol、フマル酸0.6mol、無水トリメリット酸0.8mol、ビスフェノールA(2,2)プロピレンオキサイド1.1mol、ビスフェノールA(2,2)エチレンオキサイド0.5mol、及びエステル化触媒としてジブチル錫オキシド9.5molを、窒素導入管、脱水管、攪拌器、滴下ロート、及び熱電対を装備した5リットル容器の四つ口フラスコ内に入れ、窒素雰囲気下、135℃まで加熱した。
撹拌を行いながら、さらに付加重合系モノマーである、スチレン10.5mol、アクリル酸3mol、2-エチルヘキシルアクリレート1.5mol、重合開始剤としてt-ブチルハイドロパーオキサイド0.24molを滴下ロートに入れ、混合物を5時間かけて滴下し、6時間反応を行った。
続けて、210℃まで3時間かけて昇温を行い、210℃、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、複合樹脂c−1を合成した。
得られた複合樹脂c1の軟化温度は115℃、ガラス転移温度は58℃、酸価は25mgKOH/gであった。
【0203】
・複合樹脂c−2
縮重合系モノマーとしてヘキサメチレンジアミン、ε−カプロラクタム、付加重合系モノマーとしてスチレン、アクリル酸、2−エチルヘキシルアクリレートを用いること以外は複合樹脂c−1と同様にして複合樹脂c−2を合成した。
【0204】
【表5】
【0205】
【表6】
【0206】
作製した粉砕トナーの分子量メインピーク、分子量分布のメインピークの半値幅、前述のフーリエ変換赤外分光分析測定装置(FT−IR)を用いたATR法による45℃の環境で12時間保管した後のスペクトルのピーク高さの比(C/R)、結晶性ポリエステル樹脂(A)に起因する90〜130℃の範囲におけるDSCピーク温度・吸熱量、体積平均粒径を表7に示す。
【0207】
【表7】
【0208】
粉砕トナー現像剤1〜38を
図6の現像ユニット105D内に収容した。現像ユニット105A〜Cは使用しなかった。
【0209】
<低温定着性、耐ホットオフセット性、細線再現性(初期)>
上記画像形成装置を用いて粉砕トナー現像剤1〜38の画像出力を行なった。付着量0.4mg/cm
2のベタ画像を、露光、現像、転写工程を経ることで紙(リコー製 Type6200)上に出力した。定着の線速は180mm/秒とした。定着温度を5℃刻みで順次出力し、コールドオフセットが発生しない下限温度(定着下限温度:低温定着性)と、ホットオフセットが発生しない上限温度(定着上限温度:耐ホットオフセット性)を測定した。定着装置のNIP幅は11mmであった。また、別途、定着下限温度+20℃の定着温度にて粉砕トナーによる画像面積率5%の文字チャート(1文字の大きさが2mm×2mm程度)を出力し、目視による判定を行なうことで細線再現性評価とした。
【0210】
◆低温定着性評価基準
◎:130℃未満
○:130℃以上140℃未満
□:140℃以上150℃未満
△:150℃以上160℃未満
×:160℃以上
【0211】
◆耐ホットオフセット性評価基準
◎:200℃以上
○:190℃以上200℃未満
□:180℃以上190℃未満
△:170℃以上180℃未満
×:170℃未満
【0212】
◆細線再現性評価基準
◎:非常に良好
○:良好
□:一般的な水準
△:実用上は問題ない
×:許容できない
【0213】
<耐スミア性>
定着下限温度にて、紙(リコー製 Type6200紙)上に0.40±0.1mg/cm
2のトナー付着量で画像面積率が60%であるハーフトーン画像を出力し、定着画像部をクロックメータを用いて白綿布(JIS L0803 綿3号)で10回摺擦し、布に付着した汚れのID(以後スミアIDと呼ぶ)を測定した。スミアIDは、測色計(X−Rite938)で測定した。粉砕トナー33はシアンで測色し、それ以外のトナーはブラックで測色した。
【0214】
◆耐スミア性評価基準
◎:スミアIDが0.20以下
○:スミアIDが0.21〜0.35
△:スミアIDが0.36〜0.55
×:スミアIDが0.56以上
【0215】
<細線再現性(経時)>
初期の細線再現性を評価した後、トナーを補給しながら画像面積率5%のチャートを100k枚連続で出力し、その後、再度、定着下限温度+20℃の定着温度にて粉砕トナーによる画像面積率5%の文字チャート(1文字の大きさが2mm×2mm程度)を出力し、目視による判定を行なうことで、経時での細線再現性評価とした。判定基準は初期の細線再現性評価と同じとした。
【0216】
<耐熱保存性>
それぞれのトナー10gを30mlのスクリューバイアル瓶に入れ、タッピングマシンで100回タッピングした後、50℃環境の恒温槽で24時間保管し、室温に戻した後、針入度試験機で針入度を測定し、耐熱保存評価とした。
【0217】
◆耐熱保存性評価基準
◎:貫通
○:20mm以上
□:15mm以上20mm未満
△:10mm以上15mm未満
×:10mm未満
【0218】
(転写安定性)
画像面積率20%チャートを感光体から紙に転写後、クリーニングの直前における感光体上の転写残トナーをスコッチテープ(住友スリーエム株式会社製)で白紙に移し、それをマクベス反射濃度計RD514型で測定し、下記基準により評価した。
【0219】
〔評価基準〕
◎:ブランクとの差が0.005未満である。
○:ブランクとの差が0.005〜0.010である。
△:ブランクとの差が0.011〜0.02である。
×:ブランクとの差が0.02を超える。
【0220】
(フィルミング性)
トナーのフィルミング性は以下のようにして評価した。
1.評価に用いるトナー、装置を全て25[℃]、50%環境室に1日放置。
2.複写機100のPCUのトナーを全て除去し、現像装置61中にキャリアのみを残す。
3.キャリアのみになった現像装置61中に、サンプルとなるブラックトナーを28[g]投入し、トナー濃度7[%]の現像剤を400[g]作成する。
4.複写機100本体に、現像装置61を装着し、現像スリーブ(現像ローラ61aの表面を形成するスリーブ)線速300[mm/s]で、現像装置61のみを5[分間]空回しさせる。
5.現像スリーブ、感光体10ともに狙いの線速でトレーリングで回転させ、感光体10上のトナー0.4±0.05[mg/cm
2]となるように帯電電位、現像バイアスを調整する。
6.上記現像条件において、転写率が96±2[%]となるよう、転写電流を調整。
7.全面ベタ画像を連続10000[枚]出力した。
8.出力した画像の画質を官能評価し、フィルミングによる白抜け数をカウントした。
【0221】
◆フィルミング性評価基準
フィルミング性の評価判断基準は以下のとおりとした。
◎:白抜け画像部分が少なくかなり優れる
○:白抜け部分が普通
×:白抜け部分が非常に多い
各評価の結果を表8に示す。
【0222】
【表8】
【0223】
【表9】
【0224】
以上示したように本発明によれば、非常に優れた低温定着性と、高い耐ホットオフセット特性と、良好な保存安定性を両立し、長期的にも高品質な画像を形成することができる電子写真画像形成用トナー、画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供することができることがわかった。