特許第6035869号(P6035869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035869
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】印刷システム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/02 20060101AFI20161121BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   G03G21/02 394
   G03G21/14
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-117549(P2012-117549)
(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公開番号】特開2013-246195(P2013-246195A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】水野 雅弘
【審査官】 齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−052158(JP,A)
【文献】 特開2005−096081(JP,A)
【文献】 特開2012−048207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/23
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
B41J 3/54
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブの一方の面に画像を印刷する第1印刷装置と、前記第1印刷装置の後段に設けられ前記ウェブの他方の面に画像を印刷する第2印刷装置とを備える印刷システムであって、
前記第1印刷装置は、
前記ウェブに画像が印刷されるページごとに位置合わせマークを形成するマーク形成手段を備え、
前記第2印刷装置は、
前記ウェブに形成されている前記位置合わせマークを検出するマーク検出手段と、
前記マーク検出手段による前記位置合わせマークの検出間隔に基づいて求められる前記ウェブ上の前記位置合わせマーク間の距離を、前記第2印刷装置における印刷開始後の前記ページごとに記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記ページごとの前記位置合わせマーク間の距離に基づいて、前記ページごとに前記ウェブの搬送速度を補正する搬送速度補正手段と、を備え、
前記搬送速度補正手段は、前記記憶手段に記憶されている前記位置合わせマーク間の距離の平均値と、前記ページごとの前記位置合わせマーク間の距離との差に基づいて、前記ページごとに前記ウェブの搬送速度を補正する
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
ウェブの一方の面に画像を印刷する第1印刷装置と、前記第1印刷装置の後段に設けられ前記ウェブの他方の面に画像を印刷する第2印刷装置とを備える印刷システムであって、
前記第1印刷装置は、
前記ウェブに画像が印刷されるページごとに位置合わせマークを形成するマーク形成手段を備え、
前記第2印刷装置は、
前記ウェブに形成されている前記位置合わせマークを検出するマーク検出手段と、
前記マーク検出手段による前記位置合わせマークの検出間隔に基づいて求められる前記ウェブ上の前記位置合わせマーク間の距離を、前記第2印刷装置における印刷開始後の前記ページごとに記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記ページごとの前記位置合わせマーク間の距離に基づいて、前記ページごとに前記ウェブの搬送速度を補正する搬送速度補正手段と、を備え、
前記搬送速度補正手段は、前記記憶手段に記憶されている前記位置合わせマーク間の距離の平均値と、前記ページごとの前記位置合わせマーク間の距離との差の絶対値が所定の値以上の場合に、前記ページごとに前記ウェブの搬送速度を補正する
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記位置合わせマーク間の距離を前記ウェブの種類に応じて前記ページごとに記憶する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブの両面に画像を形成する印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
長尺状記録媒体(以下、「ウェブ」という)の一方の面に画像を形成する第1印刷装置と、第1印刷装置の後段に設けられてウェブの他方の面に画像を形成する第2印刷装置とを備え、ウェブの両面に印刷を行う印刷システムが実用化されている。
【0003】
この様な印刷システムとして、送り孔が設けられているウェブ及び送り孔が設けられていないウェブの両方に対応可能な印刷システムが普及しつつある。しかしながら、送り孔が設けられていないウェブに両面印刷を行う場合に、ウェブが加熱等されて収縮して変形することにより、ウェブの表面と裏面に形成する画像の位置合わせが困難になる場合がある。
【0004】
例えば電子写真方式の印刷装置により画像を形成する場合、ウェブ上に転写された画像(トナー像)を溶融定着させるための熱定着工程において、ウェブに熱収縮が生じる場合がある。印刷システムの第1印刷装置において熱収縮が生じると、第2印刷装置では収縮したウェブ上に画像を形成することになる。この様な場合には、表面印刷時と裏面印刷時とでウェブのページ長に差異が生じ、ウェブ上に形成された表面側の画像位置と裏面側の画像位置とが揃わなくなる場合がある。
【0005】
そこで、例えば前段の印刷装置でウェブの所定位置に位置合わせマークを形成し、後段の印刷装置で予め設定された周期毎に発生させるウェブ送り制御信号の発生タイミングと、前記位置合せマーク検出信号の発生タイミングとの位相を整合させて表面側と裏面側との画像位置を揃える印刷システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る印刷システムでは、位置合わせマークの検出タイミングと両面位置合わせのための制御タイミングとの差のみによってウェブ搬送速度の補正を行っている。したがって、例えばウェブが大きく熱収縮変形したページの画像形成時には、ウェブの搬送速度を急激に加減速する必要があり、搬送速度の制御をウェブへの画像形成タイミングに追従させることができず、ウェブの表面と裏面の画像位置を正確に合わせることが困難な場合がある。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、ウェブの両面に印刷する画像位置を合わせることが可能な印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の印刷システムによれば、ウェブの一方の面に画像を印刷する第1印刷装置と、前記第1印刷装置の後段に設けられ前記ウェブの他方の面に画像を印刷する第2印刷装置とを備える印刷システムであって、前記第1印刷装置は、前記ウェブに画像が印刷されるページごとに位置合わせマークを形成するマーク形成手段を備え、前記第2印刷装置は、前記ウェブに形成されている前記位置合わせマークを検出するマーク検出手段と、前記マーク検出手段による前記位置合わせマークの検出間隔に基づいて求められる前記ウェブ上の前記位置合わせマーク間の距離を、前記第2印刷装置における印刷開始後の前記ページごとに記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている前記ページごとの前記位置合わせマーク間の距離に基づいて、前記ページごとに前記ウェブの搬送速度を補正する搬送速度補正手段と、を備え、前記搬送速度補正手段は、前記記憶手段に記憶されている前記位置合わせマーク間の距離の平均値と、前記ページごとの前記位置合わせマーク間の距離との差に基づいて、前記ページごとに前記ウェブの搬送速度を補正する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、ウェブの両面に印刷する画像位置を合わせることが可能な印刷システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る印刷装置の概略構成を例示する図である。
図2】実施形態に係る印刷システムの概略構成を例示する図である。
図3】実施形態に係る印刷システムにおいてウェブWに形成された位置合わせマークを例示する図である。
図4】実施形態に係る第2印刷装置における画像の位置合わせ制御について説明する図である。
図5】実施形態に係る第2印刷装置における制御信号と動作タイミングを説明する図である。
図6】実施形態に係るウェブ搬送モータの制御パルスを例示する図である。
図7】実施形態に係る第1印刷装置において印刷を待機するウェブを説明する図である。
図8】実施形態に係る記憶手段に記憶されるデータを例示する図である。
図9】実施形態に係る記憶手段に記憶されている位置合わせマーク間の距離を例示するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
<印刷装置の構成及びウェブへの印刷プロセス>
図1は、本実施形態に係る印刷装置Pの概略構成を例示する図である。
【0013】
図1に示す様に、ウェブWは、給送装置(図示せず)から印刷装置Pの内部に送り込まれ、ガイドローラ1に案内されてウェブバッファ機構2に搬送される。なお、ウェブWとしては、紙やプラスティックフィルム等の印刷装置Pによって印刷可能な記録媒体を用いることが可能である。
【0014】
ウェブバッファ機構2は、搬送されるウェブWを一時的に蓄える蓄積部2aと、ウェブWの弛み量(バッファ量)を検出する複数の光学的センサ2d,2e,2f,2gと、ウェブ搬送方向の上流部に設けられた一対のローラ2b,2cとを備えている。ローラ2cには、ローラ2bへの圧接力を調節するための調節機構が装備されている。本実施形態に係る印刷装置Pでは、ローラ2cの一端から突出する軸2hに錘2iを摺動可能に設け、錘2iの位置を変えることにより、いわゆるてこの原理でローラ2cのローラ2bに対する圧接力を調節している。
【0015】
ガイド部材3を通過したウェブWは、次に異物除去機構4に送り込まれる。異物除去機構4には、シャフト4a,4b,4c,4dが固定して設けられている。シャフト4aと4bは、予め設定された極めて狭い間隔をなして設けられており、異物の侵入を阻止する。
【0016】
ウェブWは、次に張力付与機構5に搬送される。張力付与機構5は、駆動源を持たないドラム5aと、ドラム5aに圧接して設けられるローラ5bと、ウェブ搬送経路上において移動可能に支持されるドラム5cとを備える。ドラム5aは、回動可能に指示されるアーム5dの自由端に固定されており、バネ5eによってウェブWの面に付勢されている。張力付与機構5によって、ウェブWの張力は一定に保たれる。
【0017】
張力付与機構5を通過したウェブWは、ガイドシャフト6、ガイド板7を経て、搬送ローラ8,9によって印写部10に搬送される。なお、本実施形態における印写部10は、電子写真方式によりウェブWに画像を形成するが、例えばインクジェット方式等によってウェブWに画像を形成しても良い。
【0018】
印写部10の像担持体の一例としての感光体ドラム101が回転を開始すると、コロナ帯電器102に高電圧が印加されることで、感光体ドラム101の表面が一様に帯電する。次に、例えば半導体レーザや発光ダイオード等で構成される光源103が、感光体ドラム101の表面を露光して静電潜像を形成する。感光体ドラム101の表面に形成された静電潜像が現像装置104に対向する位置に到達すると、静電潜像にトナー等の現像剤が供給され、感光体ドラム101上にトナー像が形成される。
【0019】
感光体ドラム101上に形成されたトナー像は、ウェブWの背面側にトナー像と逆極性の電荷を付与する転写器105の作用によってウェブW上に転写される。トナー像がウェブWに転写された感光体ドラム101は、清掃装置106によって転写残トナーが清掃され、次の印刷動作に備えられる。
【0020】
上記のプロセスを経て印写部10によってトナー像が転写されたウェブWは、搬送ベルト11によって後段へと搬送される。搬送ローラ8は、駆動源を持つ駆動ローラとして設けられており、制御された搬送速度でウェブWを搬送する。搬送ローラ9は、バネ9aの弾性力によってウェブWを介して搬送ローラ8に圧接される従動ローラとして設けられている。また、搬送ベルト11は、駆動ローラ11aと従動ローラ11bに掛け渡して支持されるとともに、吸引装置(図示せず)を備えた構成となっており、ウェブWの背面を搬送ベルト11表面に吸着させた状態で搬送する。
【0021】
搬送ベルト11から送り出されたウェブWは、バッファプレート12を経て熱定着装置13に搬送される。熱定着装置13に到達したウェブWは、プレヒータ13aで予熱された後、加熱ロール13bと加圧ロール13cとからなる一対の定着ローラによって形成されるニップ部において加熱及び加圧されながら挟持搬送され、トナー像が溶融定着される。なお、センサ13dはウェブWの蛇行を検出するセンサである。
【0022】
加熱ロール13bと加圧ロール13cとによって送り出されたウェブWは、送り出しローラ14を経て、スイングフィン15の振り子動作によって交互に折り分けられ、印刷装置P内に折り畳まれて積み重ねられる。または、ウェブWは送り出しローラ14を経て印刷装置Pの外部へと排出され、後段に設けられている印刷装置に向けて搬送される。
【0023】
<印刷システムの構成>
図2は、本実施形態に係る印刷システム100の概略構成を例示する図である。
【0024】
図2に示す様に、本実施形態に係る印刷システム100は、ウェブWの一方の面に画像を形成する第1印刷装置P1と、ウェブWの他方の面に画像を形成する第2印刷装置P2と、第1印刷装置P1及び第2印刷装置P2に接続するコントローラ17とを備える。
【0025】
第1印刷装置P1及び第2印刷装置P2の構成は、図1に示す印刷装置Pと同様であり、第1印刷装置P1で一方の面に画像が形成されて送り出されたウェブWは、反転装置Tによって表裏反転された後、第2印刷装置P2に搬送されてウェブWの他方の面に画像が形成される。
【0026】
第1印刷装置P1は、ウェブWの搬送方向に所定の長さで区画される単位領域(ページ)に対応する位置合わせマークを形成するマーク形成手段を備える。本実施形態に係る印刷システム100において、第1印刷装置P1のマーク形成手段は図1に示す印刷装置Pの印写部10であり、ウェブWの表面に画像の印刷を行う際に、例えばページ先頭位置に合わせて位置合わせマークを印刷する。なお、印写部10とは別にウェブWに位置合わせマークを形成する手段を設けても良い。
【0027】
また、後段の第2印刷装置P2は、位置合わせマークを検出するマーク検出手段と、ウェブWの搬送速度を補正する速度補正手段18と、速度補正手段18が搬送速度を補正する為に必要となるデータを記憶する記憶手段19とを備えている。
【0028】
第2印刷装置P2のマーク検出手段は、図1に示すマークセンサ16であり、第1印刷装置P1のマーク形成手段としての印写部10によってウェブW上に形成された位置合わせマークを検出する。マークセンサ16は、例えばウェブWの表面に形成されている位置合わせマークに光を照射し、反射光を受光することで位置合わせマークを検出する光学センサ等を用いることができる。
【0029】
印刷システム100における画像印刷時において、第1印刷装置P1及び第2印刷装置P2の画像データを制御する制御装置としてのコントローラ17は、第1印刷装置P1と第2印刷装置P2との間に存在するウェブWのページ数を把握する。コントローラ17は、第2印刷装置P2に対して、第1印刷装置P1の画像転写ポイントTPから第2印刷装置P2の画像転写ポイントTPとの間にあるウェブWのページ数を出力する。
【0030】
また、ウェブWを無駄なく使用するため、印刷が停止した場合には、第1印刷装置P1と第2印刷装置P2において印刷最終ページの画像がウェブWに印刷された時に搬送が停止された後、次の印刷開始に備えるために「戻し搬送」が行なわれる。
【0031】
戻し搬送とは、印刷最終ページの後端と同じ位置にある次の印刷における先頭位置を、転写位置よりも助走距離の分だけ上流側にシフトした場所にウェブWを配置する様に、ウェブWを画像印刷時における搬送方向とは逆方向に搬送することである。
【0032】
<ウェブに形成される位置合わせマーク>
図3は、本実施形態に係る印刷システムにおいてウェブWに形成された位置合わせマークを例示する図である。図3は、ウェブ搬送方向に搬送されるウェブWに画像Imが形成されたページ40〜43を例示している。
【0033】
図3に示す様に、第1印刷装置P1においてウェブW上には印刷データに基づく画像Imが印刷されると共に、画像Imが印刷される各ページのウェブ搬送方向先端部に位置合わせマークRmが印刷される。本実施形態では、印写部10において画像Imと同時に位置合わせマークRmがウェブW上に形成される。なお、位置合わせマークRmの位置は、図3に示す位置に限るものではなく、ウェブWに画像が形成されるページごとに予め指定された位置に形成できる。
【0034】
第1印刷装置P1によって画像Im及び位置合わせマークRmが印刷されて排出されたウェブWは、反転装置Tによって表裏が反転され、位置合わせマークRmを保持した側のウェブ面が、第2印刷装置P2のマークセンサ16の検出面と対向する様に搬送される。また、第1印刷装置P1によって画像が印刷された面とは反対側の面が第2印刷装置P2の感光体ドラム101表面と対向する様に搬送される。
【0035】
<マークセンサ信号と制御タイミングに基づくウェブ搬送速度制御>
第1印刷装置P1の光源103により、感光体ドラム101上に位置合わせマークRmに対応する静電潜像が形成されると、位置合わせマークRmの静電潜像形成タイミングに同期したウェブ搬送制御信号(CPF−N信号)がコントローラ17から発信される。同様に、第1印刷装置P1とは独立したタイミングで、第2印刷装置P2の光源103により画像データに対応した静電潜像が形成されると、第2印刷装置P2における静電潜像形成タイミングに同期したCPF−N信号がコントローラ17から発信される。
【0036】
コントローラ17から発信されるウェブCPF−N信号は、それぞれ第1印刷装置P1及び第2印刷装置P2に送られ、当該CPF−N信号に基づいてウェブWの搬送速度を制御するモータの制御信号が生成される。
【0037】
図4に、本実施形態に係る第2印刷装置P2における画像の位置合わせ制御を説明する図を示し、図5に制御信号と動作タイミングを説明する図を示す。
【0038】
図4において、感光ドラム101上の位置EPが露光ポイントであり、位置EPで静電潜像が形成される。光源103によりページの搬送方向先頭(以下、単に「ページ先頭」という)に相当する静電潜像が形成される度に、図5に示すCPF−N信号がコントローラ17から発信される。
【0039】
感光体ドラム101は、通常予め設定されたプロセス速度で定速回転する様に制御されているため、感光体ドラム101上におけるページ先頭は、CPF−N信号の一周期ごと、すなわち図5に示す「CPF長」ごとに転写ポイントTPに到達する。なお、このCPF長の時間であるCPF時間は、印刷装置Pのプロセス速度をvpとした場合、次の様に表すことができる。
【0040】
CPF時間=ページ長/vp ・・・ 式(1)
ここで、第2印刷装置P2においてコントローラ17からのCPF−N信号の発信タイミングと、マークセンサ16が位置合わせマークRmを検出するタイミングとの位相差が一定になる様にウェブ搬送速度を制御する。この様な制御により、感光体ドラム101上のページ先頭とウェブWのページ先頭とを、転写ポイントTPで高精度に一致させることが可能となる。
【0041】
図4に示す様に、本実施形態における転写器105による転写ポイントTPから露光ポイントEPまでの感光体ドラム101表面上での距離を「L1」、転写ポイントTPからマークセンサ16による検出ポイントDPまでのウェブWの搬送経路上における距離を「L2」とする。
【0042】
ここで、感光体ドラム101上に仮想的に設定されるページ先頭PPと、ウェブWのページ先頭を表す位置合わせマークRmとが転写ポイントTPで一致する様にウェブWが搬送されている状態における、位置合わせマークRmの検出タイミングを「制御タイミング」と定義する。ウェブWの両面に形成される画像位置を合わせるということは、マークセンサ16が位置合わせマークRmを検出するタイミング、すなわち図5に示す「マークセンサ信号」を常に「制御タイミング」と一致する様に制御することである。
【0043】
なお、印刷開始時の最初のページ(第1ページ目)の裏面印刷に関しては、通常オペレータが予めウェブWを第2印刷装置P2の所定位置に装填して印刷を開始するため、ウェブWの表面のページ先頭位置と裏面のページ先頭位置とは一致する。
【0044】
第1ページ目の印刷データが感光体ドラム101上に形成し終わるタイミングになると、コントローラ17は、図5に示す様に第1回目のCPF_LEG−P信号を発信する。第2印刷装置P2がCPF_LEG−P信号を受信すると、制御タイミングの算出が実行される。
【0045】
制御タイミングは、感光体ドラム101上の第2ページ目のページ先頭が、図4に示す転写ポイントTPからL2の位置に来る時であり、マークセンサ16によって位置合わせマークRmが検出されるマークセンサ信号が制御タイミングに一致する必要がある。
【0046】
CPF−N信号を受信してから制御タイミングまでの時間をt1、第2印刷装置P2のプロセス速度をvpとし、L1>L2の関係にある場合に時間t1は以下の式(2)にて表される。
【0047】
t1=(L1−L2)/vp ・・・ 式(2)
L1<L2の関係にある場合には、時間t1は以下の式(3)で表される。
【0048】
t1=(L1−L2+L2÷ページ長の商×ページ長)/vp ・・・ 式(3)
最初にCPF−N信号を受信してから制御タイミングまでの時間t1を求めた後は、感光体ドラム101上の静電潜像のページ先頭がCPF時間ごとに転写ポイントTPに到達することから、以降の制御タイミングはCPF時間ごととなる。
【0049】
この制御タイミングに対するマークセンサ16によって位置合わせマークが検出されたことを示すマークセンサ信号とのずれ時間から、ウェブWの表面のページ先頭に対して裏面に印刷するページ先頭がどの程度ずれているかを把握できる。したがって、第2印刷装置P2の搬送速度補正手段18は、マークセンサ信号が制御タイミングよりも遅い場合にはウェブ搬送速度を加速させ、マークセンサ信号が制御タイミングよりも早い場合にはウェブ搬送速度を減速させる様に、ウェブWの搬送速度を補正する。すなわち、搬送速度補正手段18は、マークセンサ16が位置合わせマークRmを検出するタイミングが制御タイミングと一致する様にウェブWの搬送速度を補正する。
【0050】
この場合において、ウェブ搬送速度は、例えば図6に示す様に、ウェブ搬送モータから出力されるエンコーダパルス(WFモータエンコーダパルス)を基準パルス(WF基準パルス)に追従させることによって制御できる。
【0051】
また、第2印刷装置P2は、マークセンサ16が位置合わせマークRmを検出する度に、CPF−N信号を受信してからマークセンサ信号が発信されるまでの時間(マーク時間)を記憶手段19に記憶させても良い。マークセンサ16により位置合わせマークRmが検出される度に、速度補正手段18が検出されたマーク時間tと記憶手段19に記憶されている前回のマーク時間tn−1との差Δtを以下の式(4)により算出する。
【0052】
Δt=t−tn−1 ・・・ 式(4)
速度補正手段18は、CPF長に対するΔtの割合に応じて、その時点でのウェブ搬送速度を加速又は減速させる制御を行う。前回の位置合わせマークRm検出後から今回の位置合わせマークRm検出までの間の平均ウェブ搬送速度をVWとすると、補正速度Δvは以下の式(5)により求められる。
【0053】
Δv=(Δt/CPF時間)×VW ・・・ 式(5)
速度補正手段18が、式(5)により算出された補正速度Δvを位置合わせマークRmの検出時点におけるウェブ搬送速度VWに加算することにより、マークセンサ16により位置合わせマークRmが検出されるタイミングと制御タイミングとを一致させることができる。
【0054】
この様に、ウェブ搬送速度を補正することによって、第1印刷装置P1の表面印刷時における定着熱の影響等により熱収縮したウェブWが後段の第2印刷装置P2に送り込まれたとしても、各ページの表面の画像位置に対して裏面の画像位置を一致させることが可能となり、例えば送り孔を持たないウェブWに対する印刷品質を向上させることができる。
【0055】
<位置合わせマーク間隔に基づくウェブ搬送速度制御>
ここで、例えば印刷データが展開されるまでに時間がかかる場合や、消耗品が無くなった場合等、印刷動作が一時的に停止状態になる場合がある。この様な場合には、次の印刷に備えて、印刷再開時に必要な感光体ドラム101の助走距離の分だけ、次回の先頭ページの先端を転写位置よりも上流側に戻す、戻し搬送を実施する。
【0056】
第2印刷装置P2における印刷動作が停止し、戻し搬送後に待機している間に、ウェブWは第1印刷装置P1の定着予備加熱プレート13a、加熱ロール13b等によって加熱され続けることになり、ウェブWが部分的に大きく熱収縮変形する場合がある。
【0057】
図7に示す様に、印刷を待機する間に第1印刷装置P1の加熱ロール13b付近にある位置合わせマークRm33から転写器105付近にある位置合わせマークRm38までのウェブWは、戻し搬送による移動の影響を含めて大きく熱収縮変形する可能性がある。したがって、ウェブWの位置合わせマークRm33からRm38までの間の位置合わせマーク間の距離は、熱収縮変形によって予め設定されている距離から大きなずれが生じる場合がある。
【0058】
そこで、第2印刷装置P2における印刷中に停止してウェブWが部分的に大きく熱収縮変形した場合においても、ウェブWの表面の画像印刷位置と裏面の画像印刷位置とを整合させる方法について以下で説明する。
【0059】
まず、位置合わせマークRmの間隔を計測する方法について、図3に基づいて説明する。ウェブWのページ40における位置合わせマークRm40からRm41までの検出時間間隔をS40、平均搬送速度をvp40とすると、位置合わせマークRm40とRm41との距離PL40(ページ40の搬送方向の距離)は、以下の式(6)で求めることができる。
【0060】
PL40=S40×vp40 ・・・ 式(6)
同様に、速度補正手段18が他の位置合わせマーク間の距離を算出し、算出した位置合わせマーク間の距離のデータを、記憶手段19に保存する。ここで、記憶手段19は、第2印刷装置P2における印刷動作の停止時に、第2印刷装置P2による印刷再開位置から第1印刷装置P1のマーク形成手段としての印写部10の画像形成位置(転写ポイントTP)までの間のウェブWに形成されている位置合わせマーク間の距離をページごとに記憶する。また、記憶手段19は、記憶した位置合わせマーク間の距離の平均値PLav、ウェブWの種類情報、予め設定される位置合わせマーク間の距離情報を併せて記憶する。
【0061】
図8は、記憶手段19に記憶されるデータを例示する図である。
【0062】
図8に示す様に、記憶手段19には、例えば使用されたウェブWの種類Aと、予め設定された位置合わせマーク間の距離PLaに対応させて、マークセンサ16の検出結果に基づいて求められる位置合わせマーク間の距離をページごとにA−PLa1,A−PLa2,・・・,A−PLa39,A−PLa40といった様に記憶されている。予め設定された位置合わせマーク間の距離が異なる場合や、ウェブ種類が異なる場合についても同様である。なお、第2印刷装置P2において印刷が停止して戻し搬送が行われた後において、第2印刷装置P2における印刷再開時の最初のページをページ1とし、以降印刷順にページ2、ページ3、・・・という様にカウントし、記憶手段19はこの様にカウントされる各ページ番号(位置合わせマーク番号)に対応させて位置合わせマーク間の距離を記憶する。
【0063】
また、記憶手段19には、各条件における位置合わせマーク間の距離の平均値PLavがそれぞれ記憶されている。なお、図中に示す位置合わせマーク間の設定距離PLb,PLcは、設定距離PLaよりも長く、第2印刷装置P2における印刷再開位置から第1印刷装置P1の画像形成位置までの間のページ数が少ないため、記憶手段19に記憶される位置合わせマーク間距離の数も少なくなっている。
【0064】
また、記憶手段19には、ウェブWの種類及び位置合わせマーク間の設定距離が同一の条件で求められたページごとの位置合わせマーク間の距離を累積して記憶させても良い。速度補正手段18は、記憶手段19に記憶されている同一条件下で求められた各ページにおける位置合わせマーク間の距離の平均値に基づいてウェブWの搬送速度を補正することで、より高精度な速度補正が可能になる。
【0065】
例えば、速度補正手段18は、記憶手段19に記憶されている同一条件下で求められたページごとの位置合わせマーク間距離の所定の回数分(例えば5回分)の平均値を用いることができる。なお、この場合には、記憶手段19には、同一条件下で求められた直近における所定の回数分のページごとの位置合わせマーク間距離を記憶させ、古いデータは随時消去することがデータ容量削減のために好ましい。
【0066】
また、第2印刷装置P2における印刷停止時に第1印刷装置P1の画像形成位置にあったウェブWが、印刷再開後に第2印刷装置P2の画像形成位置まで到達しなかった場合には、位置合わせマーク間の距離の算出及び記憶手段19への記憶は実施しない。
【0067】
図9は、記憶手段18に記憶されている位置合わせマーク間の距離を例示するグラフ図である。図9は、記憶手段19に記憶されているデータを、横軸が第2印刷装置P2の印刷開始後のページ数、縦軸が位置合わせマーク間の距離PLaのグラフとして表したものである。
【0068】
速度補正手段18は、位置合わせマーク間距離PLaと、平均位置合わせマーク間距離PLavとに基づいて、ウェブWの搬送速度を補正する。
【0069】
例えば、図9において位置合わせマーク間距離PLaと平均位置合わせマーク間距離PLavとの差が大きい位置合わせマークRm35における位置合わせマーク間距離をA_PLa35とした時に、速度補正手段18は以下の式(7)に基づいて補正速度ΔVz35を算出する。
【0070】
ΔVz35=(PLav−A_PLa35)/CPF時間
=(PLav−A_PLa35)/PLa×vp ・・・ 式(7)
次に、ウェブWの搬送速度VWに、上記した式(5)により算出される補正速度Δv及び式(7)により算出される補正速度ΔVz35を加算した以下の式(8)により、ウェブWのページ35の搬送速度を算出する。
【0071】
VW'=VW+Δv+ΔVz35 ・・・ 式(8)
この様に、速度補正手段18が、記憶手段19に記憶されている位置合わせマーク間の距離に基づいて、ウェブWのページごとに搬送速度VWを補正することで、熱収縮変形等によってウェブWが部分的に大きく伸縮した場合であっても、ウェブWの両面に形成する画像位置を整合させることが可能になる。
【0072】
なお、速度補正手段18は、位置合わせマーク間距離PLaと平均位置合わせマーク間距離PLavとの差の絶対値が所定の値以上となったページに対して速度補正を行い、当該差の絶対値が所定の値以下となったページに対しては速度補正を行わない様にしても良い。
【0073】
例えば、位置合わせマーク間距離PLaと平均位置合わせマーク間距離PLavとの差の絶対値が0.4mmを超える場合に速度補正手段18がウェブWの搬送速度を補正するものとする。この様な場合、例えば図9に示す例では、Rm33,Rm34,Rm35,Rm38が平均位置合わせマーク間距離PLavとの差の絶対値が0.4mmを超えるため、ページ33,34,35,38に対して速度補正手段18による速度補正が行われる。なお、速度補正手段18が速度補正を行う上記所定の値は、評価等により適宜設定することが可能であり、さらに可変に設定しても良い。
【0074】
以上で説明した様に、本実施形態に係る印刷システム100によれば、速度補正手段18が記憶手段19に記憶されているページごとの位置合わせマーク間の距離に基づいて、ウェブWのページごとに前記ウェブの搬送速度を補正する。したがって、例えば第2印刷装置P2における印刷動作の停止時に、第1印刷装置P1内のウェブWに大きな熱収縮変形が生じたとしても、速度補正手段18によって補正された搬送速度でウェブWが搬送されるため、ウェブWの両面に印刷される画像位置を整合させることが可能である。
【0075】
なお、本実施態様に係る印刷システム100では、電子写真方式の印刷装置P1,P2を適用した構成について説明したが、印刷装置としては、例えばインクジェット方式によりウェブWに画像を印刷しても良い。インクジェット方式による印刷の場合には、ウェブWは、例えばインクの乾燥を促進させるために加熱されることで、熱収縮が生じる可能性がある。そこで、第2印刷装置P2において速度補正手段18によってウェブWの搬送速度を補正することで、第2印刷装置P2による印刷位置を第1印刷装置P1による印刷位置に正確に整合させることができる。
【0076】
また、本実施形態に係る印刷システム100では反転装置Tを用いて両面印刷を行う構成としたが、例えば、第1印刷装置P1及び第2印刷装置P2が同一面に印刷するスポットカラー印刷システムとしても良い。この場合には、第2印刷装置P2のマークセンサ16を、ウェブの印刷面を検出できる様に搬送ウェブに対して本実施形態とは反対側(例えば図1のガイド板7側)に設ける。
【0077】
また、第1印刷装置P1では、マーク形成手段を印写部10とは別構成としてウェブの裏面に位置合わせマークを印刷する構成としても良い。この場合には、第2印刷装置P2のマークセンサ16は、図1に示す位置で構わない。
【0078】
以上、実施形態に係る印刷システムについて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 印写部(マーク形成手段)
16 マークセンサ(マーク検出手段)
18 速度補正手段(搬送速度補正手段)
19 記憶手段
100 印刷システム
P1 第1印刷装置
P2 第2印刷装置
Rm 位置合わせマーク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開2002−187660号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9