(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の赤外線ズームレンズの実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の赤外線ズームレンズ10が搭載される赤外線撮像装置1の構成を簡略化して説明する図である。赤外線撮像装置1は、赤外線ズームレンズ10と、赤外線検出器(ディテクタ)11とから主に構成される。なお、
図1では、簡略化のため、赤外線ズームレンズ10を単レンズとして図示しているが、実際は、後述するように複数のレンズ群から構成されている。
【0009】
赤外線ズームレンズ10は、被検物体等から放射される熱、すなわち赤外線を集光し、赤外線検出器11の検出器面上に結像させる。赤外線検出器11は、赤外線ズームレンズ10により被検物体等からの赤外線が集光される位置に配置され、検出器面上に複数の受光素子(CCD(電荷結合素子))を有しており、赤外線ズームレンズ10により結像された像を撮像する。
【0010】
赤外線ズームレンズ10と赤外線検出器11との間には、被写体以外から放射される不要な赤外線が赤外線検出器11に入射するのを防止するために、コールドアパーチャ12と呼ばれる開口マスクが配置されている。コールドアパーチャ12は、赤外線ズームレンズ10の開口絞りとなっており、赤外線ズームレンズ10の射出瞳と位置および大きさ(径)が一致するように設計されている。このような状態は一般に「開口整合の取れた状態」と呼ばれている。
【0011】
次に、本実施形態の赤外線ズームレンズ10について説明する。赤外線ズームレンズ10は、
図2に示すように、物体側より順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、を備える。第1レンズ群G1は、合焦機能を有し、全体として正の屈折力を有する。第2レンズ群G2は、変倍機能を有し、全体として正の屈折力を有する。第3レンズ群G3は、変倍により変動した焦点位置を補償する機能を有し、全体として正の屈折力を有する。第4レンズ群G4は、赤外線検出器11の検出器面(像面)Iに像を形成する機能を有し、全体として正の屈折力を有する。開口絞りASは、第4レンズ群G4と検出器面Iとの間に配置されている。
【0012】
被検物体から放射される熱すなわち赤外線は、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、および第4レンズ群G4を順に通過し、開口絞りASを介して検出器面I上に集光され、検出器面I上に設けられた受光素子によって受光される。赤外線ズームレンズ10は、入射した赤外線の中間像を形成し、この中間像を検出器面I上で再結像させるように設計されている。なお、赤外線ズームレンズ10では、上述したようにコールドアパーチャ12を設ける必要があり、検出器面Iの直前に開口絞りASを配置する必要があるため、中間像を形成する構成が用いられている。
【0013】
また
図2は、上から順に、望遠端状態、中間焦点距離状態、広角端状態を示しており、変倍(ズーミング)の際の各レンズ群の移動の様子を示している。赤外線ズームレンズ10では、変倍時において、第1レンズ群G1と第4レンズ群G4と開口絞りASとは固定されており、第2レンズ群G2および第3レンズ群G3が光軸上を移動する。これに伴って、中間像の結像位置(中間結像位置)も、光軸上を移動する。
【0014】
本実施形態の赤外線ズームレンズ10は、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。なお、条件式(1)において、f
1は、第1レンズ群G1の焦点距離であり、f
Tは、赤外線ズームレンズ10の望遠端における全系焦点距離である。
0.5<f
1/f
T<1.5 ・・・・・・(1)
【0015】
条件式(1)は、赤外線ズームレンズ10の良好な結像性能と小型化とを両立させるための条件式である。望遠端状態において、f
1/f
Tが条件式(1)の下限値を下回ると、中間像の大きさが小さくなり、軸外収差を補正する負担は小さくなるが、中間像のNA(開口数)が大きくなり、この高NAの光線に対する収差、すなわち軸上収差(特に球面収差)を補正する負担が大きくなってしまう。
【0016】
逆に、f
1/f
Tが条件式(1)の上限値を上回ると、中間像のNAは小さくなり、この高NAの光線に対する収差を補正する負担が小さくなるが、中間像の大きさが大きくなり、軸外収差(特に非点収差、コマ収差、倍率色収差)を補正する負担が大きくなってしまう。また、f
1/f
Tが条件式(1)の上限値を上回ると、第1レンズ群G1の焦点距離が長くなり、赤外線ズームレンズ10の全長が長くなってしまう。
【0017】
このように、f
1/f
Tが条件式(1)の下限値および上限値のいずれを超えても、軸上収差と軸外収差のバランスが大きく崩れてしまい、良好な結像性能が得られず好ましくない。そのため、条件式(1)を満足することが好ましい。さらに理想的には、0.7<f
1/f
T<1.2を満足することが望ましい。
【0018】
さらに、本実施形態の赤外線ズームレンズ10は、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。なお、条件式(2)において、f
12は、広角端における第1レンズ群G1から第2レンズ群G2までの合成焦点距離であり、f
Wは、赤外線ズームレンズ10の広角端における全系焦点距離である。
0.9<f
12/f
W<2.5 ・・・・・・(2)
【0019】
条件式(2)も、赤外線ズームレンズ10の良好な結像性能と小型化とを両立させるための条件式である。広角端状態において、f
12/f
Wが条件式(2)の下限値を下回ると、中間像の大きさが小さくなり、軸外収差を補正する負担は小さくなるが、中間像のNAが大きくなり、この高NAの光線に対する収差、すなわち軸上収差(特に球面収差)を補正する負担が大きくなってしまう。
【0020】
逆に、f
12/f
Wが条件式(2)の上限値を上回ると、中間像のNAは小さくなり、この高NAの光線に対する収差を補正する負担が小さくなるが、中間像の大きさが大きくなり、第3レンズ群G3のレンズ径が大きくなり、軸外収差(特に非点収差、コマ収差、倍率色収差)を補正する負担が大きくなってしまう。また、f
12/f
Wが条件式(2)の上限値を上回ると、第1レンズ群G1から第2レンズ群G2までの合成焦点距離が長くなり、赤外線ズームレンズ10の全長が長くなってしまう。
【0021】
このように、f
12/f
Wが条件式(2)の下限値・上限値のいずれを超えても、軸上収差と軸外収差のバランスが大きく崩れてしまい、良好な結像性能が得られず好ましくない。そのため、条件式(2)を満足することが好ましい。さらに理想的には、1.2<f
12/f
W<2.0を満足することが望ましい。
【0022】
−実施例−
次に、本実施形態に係る各実施例を説明する。ここで表1に、各実施例において赤外線ズームレンズを構成する硝材として用いた、シリコン、ゲルマニウムおよび硫化亜鉛の屈折率を示す。表1では、第1および第2実施例に対応する波長3〜5μmおよび第3実施例に対応する波長8〜12μmの赤外光に対する屈折率を示している。
【0024】
また、各実施例の赤外線ズームレンズには、非球面レンズが含まれている。この非球面レンズの形状は、次の式(3)によって表されるものとする。なお、式(3)において、yは光軸からの高さであり、Z(y)は高さyにおける各非球面の頂点の接平面から各非球面までの光軸に沿った距離(サグ量)であり、Rは頂点曲率半径であり、κは円錐係数であり、C
4,C
6は4次,6次の非球面係数である。
【数1】
【0025】
また、後述する各実施例の諸元の値を示す表において、FNoは光学系全体のFナンバーを示し、λは光学系の波長帯域を示し、fは光学系の全系焦点距離を示す。面番号は、物体側からの各光学面の番号を示し、面間隔は、光学面から次の光学面(又は像面I)までの光軸上の距離を示し、レンズ群は光学面が所属するレンズ群を示す。なお、d1〜d3は、変倍によって変化する面間隔を示す。面番号の前に*(アスタリスク)が記された光学面は、非球面形状である。表中では、この非球面形状を規定する上記式(3)の各パラメータも示している。
【0026】
焦点距離f、曲率半径、面間隔など、その他の長さの単位は、一般に「mm」が使われている。但し、光学系は、比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることなく、他の適当な単位を用いることが可能である。また、表において、曲率半径の「0.0000」は平面または開口を示している。
【0027】
また、以下の各実施例において、イメージサークル径は2y=12mmとなっている。
【0028】
(第1実施例)
図2は、第1実施例に係る赤外線ズームレンズの構成を示している。
図2では、上から順に望遠端状態、中間焦点距離状態、広角端状態を示しており、変倍の際の各レンズ群の移動の様子を示している。第1実施例に係る赤外線ズームレンズは、3〜5μmの波長域(基準波長4μm)に対応するものであり、Fナンバーが2.0となっている。
【0029】
第1実施例に係る赤外線ズームレンズでは、
図2に示すように、望遠端から広角端への変倍の際、第2レンズ群G2および第3レンズ群G3が光軸に沿って物体側へ移動する。これに伴って、中間結像位置も光軸に沿って物体側へ移動する。
【0030】
具体的に、望遠端状態では、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の前側(物体側)のレンズとによって中間像を形成し、第2レンズ群G2の後ろ側(検出器面I側)のレンズと第3レンズ群G3と第4レンズ群G4とによって中間像を再結像させている。したがって、第2レンズ群G2の前側のレンズと後ろ側のレンズとの間に中間結像位置がある。
【0031】
中間焦点距離状態では、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2とによって中間像を形成し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4とによって中間像を再結像させている。したがって、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に中間結像位置がある。すなわち、望遠端から中間焦点距離への変倍に伴って、第2レンズ群G2における後ろ側のレンズが中間結像位置をまたぐように移動している。また、望遠端から中間焦点距離への変倍に伴って、中間結像位置が若干物体側へと移動している。
【0032】
広角端状態では、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2とによって中間像を形成し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4とによって中間像を再結像させている。したがって、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に中間結像位置がある。また、中間焦点距離から広角端への変倍に伴って、中間結像位置が物体側へと移動している。
【0033】
第1実施例における赤外線ズームレンズの諸元の値を、表2〜表4に示す。なお、表2は、各光学面の詳細数値データを示し、表3は、非球面形状を規定する上記式(3)の各パラメータを示し、表4は、変倍によって変化する面間隔を示す。
【表2】
【表3】
【表4】
【0034】
また、第1実施例に係る赤外線ズームレンズでは、条件式(1)におけるf
1/f
Tは0.810である。したがって、0.5<f
1/f
T=0.810<1.5となり、本実施例は条件式(1)を満たす。さらに、条件式(2)におけるf
12/f
Wは1.328である。したがって、0.9<f
12/f
W=1.328<2.5となり、本実施例は条件式(2)も満たす。
【0035】
図3〜
図5は、第1実施例に係る赤外線ズームレンズの横収差図である。
図3は望遠端状態における横収差図、
図4は中間焦点距離状態における横収差図、
図5は広角端状態における横収差図をそれぞれ示す。なお、各収差図において、各像高毎にタンジェンシャル像面及びサジタル像面における収差曲線を示している。また、各収差図において、実線は波長5μm、点線は4μm、一点鎖線は3μmの収差曲線をそれぞれ示している。
【0036】
図3〜
図5に示す各収差図を参照すると、第1実施例の赤外線ズームレンズでは、望遠端状態、中間焦点距離状態、および広角端状態において、いずれの場合にもほぼ回折限界まで収差が補正され、良好な結像性能が確保されていることがわかる。
【0037】
(第2実施例)
図6は、第2実施例に係る赤外線ズームレンズの構成を示す図である。
図6では、上から順に望遠端状態、中間焦点距離状態、広角端状態を示しており、変倍の際の各レンズ群の移動の様子を示している。第2実施例に係る赤外線ズームレンズは、第1実施例と同様に3〜5μmの波長域(基準波長4μm)に対応するものであるが、Fナンバーは第1実施例と異なり4.0となっている。
【0038】
第2実施例に係る赤外線ズームレンズでは、
図6に示すように、望遠端から広角端への変倍の際、第2レンズ群G2および第3レンズ群G3が光軸に沿って物体側へ移動する。これに伴って、中間結像位置も光軸に沿って物体側へ移動する。
【0039】
具体的に、望遠端状態では、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の前側のレンズとによって中間像を形成し、第2レンズ群G2の後ろ側のレンズと第3レンズ群G3と第4レンズ群G4とによって中間像を再結像させている。したがって、第2レンズ群G2の前側のレンズと後ろ側のレンズとの間に中間結像位置がある。
【0040】
中間焦点距離状態では、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2とによって中間像を形成し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4とによって中間像を再結像させている。したがって、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に中間結像位置がある。すなわち、望遠端から中間焦点距離への変倍に伴って、第2レンズ群G2における後ろ側のレンズが中間結像位置をまたぐように移動している。また、望遠端から中間焦点距離への変倍に伴って、中間結像位置が物体側へと移動している。
【0041】
広角端状態では、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2とによって中間像を形成し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4とによって中間像を再結像させている。したがって、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に中間結像位置がある。また、中間焦点距離から広角端への変倍に伴って、中間結像位置が物体側へと移動している。
【0042】
第2実施例における赤外線ズームレンズの諸元の値を、表5〜表7に示す。なお、表5は、各光学面の詳細数値データを示し、表6は、非球面形状を規定する上記式(3)の各パラメータを示し、表7は、変倍によって変化する面間隔を示す。
【表5】
【表6】
【表7】
【0043】
また、第2実施例に係る赤外線ズームレンズでは、条件式(1)におけるf
1/f
Tは0.898である。したがって、0.5<f
1/f
T=0.898<1.5となり、本実施例は条件式(1)を満たす。さらに、条件式(2)におけるf
12/f
Wは1.616である。したがって、0.9<f
12/f
W=1.616<2.5となり、本実施例は条件式(2)も満たす。
【0044】
図7〜
図9は、第2実施例に係る赤外線ズームレンズの横収差図である。
図7は望遠端状態における横収差図、
図8は中間焦点距離状態における横収差図、
図9は広角端状態における横収差図をそれぞれ示す。なお、各収差図において、各像高毎にタンジェンシャル像面及びサジタル像面における収差曲線を示している。また、各収差図において、実線は波長5μm、点線は4μm、一点鎖線は3μmの収差曲線をそれぞれ示している。
【0045】
図7〜
図9に示す各収差図を参照すると、第2実施例の赤外線ズームレンズでは、望遠端状態、中間焦点距離状態、および広角端状態において、いずれの場合にもほぼ回折限界まで収差が補正され、良好な結像性能が確保されていることがわかる。
【0046】
(第3実施例)
図10は、第3実施例に係る赤外線ズームレンズの構成を示す図である。
図10では、上から順に望遠端状態、中間焦点距離状態、広角端状態を示しており、変倍の際の各レンズ群の移動の様子を示している。第3実施例に係る赤外線ズームレンズは、第1実施例と異なり8〜12μmの波長域(基準波長10μm)に対応するものであるが、Fナンバーは第1実施例と同様に2.0となっている。
【0047】
第3実施例に係る赤外線ズームレンズでは、
図10に示すように、望遠端から広角端への変倍の際、第2レンズ群G2および第3レンズ群G3が光軸に沿って物体側へ移動する。これに伴って、中間結像位置も光軸に沿って物体側へ移動する。
【0048】
具体的に、望遠端状態では、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の前側のレンズとによって中間像を形成し、第2レンズ群G2の後ろ側のレンズと第3レンズ群G3と第4レンズ群G4とによって中間像を再結像させている。したがって、第2レンズ群G2の前側のレンズと後ろ側のレンズとの間に中間結像位置がある。
【0049】
中間焦点距離状態では、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2とによって中間像を形成し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4とによって中間像を再結像させている。したがって、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に中間結像位置がある。すなわち、望遠端から中間焦点距離への変倍に伴って、第2レンズ群G2における後ろ側のレンズが中間結像位置をまたぐように移動している。また、望遠端から中間焦点距離への変倍に伴って、中間結像位置が物体側へと移動している。
【0050】
広角端状態では、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2とによって中間像を形成し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4とによって中間像を再結像させている。したがって、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に中間結像位置がある。また、中間焦点距離から広角端への変倍に伴って、中間結像位置が物体側へと移動している。
【0051】
第3実施例における赤外線ズームレンズの諸元の値を、表8〜表10に示す。なお、表8は、各光学面の詳細数値データを示し、表9は、非球面形状を規定する上記式(3)の各パラメータを示し、表10は、変倍によって変化する面間隔を示す。
【表8】
【表9】
【表10】
【0052】
また、第3実施例に係る赤外線ズームレンズでは、条件式(1)におけるf
1/f
Tは0.977である。したがって、0.5<f
1/f
T=0.977<1.5となり、本実施例は条件式(1)を満たす。さらに、条件式(2)におけるf
12/f
Wは1.824である。したがって、0.9<f
12/f
W=1.824<2.5となり、本実施例は条件式(2)も満たす。
【0053】
図11〜
図13は、第3実施例に係る赤外線ズームレンズの横収差図である。
図11は望遠端状態における横収差図、
図12は中間焦点距離状態における横収差図、
図13は広角端状態における横収差図をそれぞれ示す。なお、各収差図において、各像高毎にタンジェンシャル像面及びサジタル像面における収差曲線を示している。また、各収差図において、実線は波長12μm、点線は10μm、一点鎖線は8μmの収差曲線をそれぞれ示している。
【0054】
図11〜
図13に示す各収差図を参照すると、第3実施例の赤外線ズームレンズでは、望遠端状態、中間焦点距離状態、および広角端状態において、いずれの場合にもほぼ回折限界まで収差が補正され、良好な結像性能が確保されていることがわかる。
【0055】
(第1〜第3実施例と先行技術との比較)
ここで、上述した第1〜第3実施例に係る赤外線ズームレンズと、上述した特許文献1の実施例1に開示されている先行技術の赤外線ズームレンズとを比較する。なお、先行技術の赤外線ズームレンズと、上記第1〜第3実施例に係る赤外線ズームレンズとは、全系焦点距離およびズーム比が同一となっている。先行技術の赤外線ズームレンズは、
図14(A)に示すように、物体側から順に、合焦機能を有し正の屈折力を有する第1レンズ群G11と、変倍機能を有し負の屈折力を有する第2レンズ群G12と、焦点位置を補償する機能を有し正の屈折力を有する第3レンズ群G13と、中間像を形成するための第4レンズ群G14と、中間像を検出器面Iにリレー結像させるための第5レンズ群G15とを備え、第5レンズ群G15と検出器面Iとの間に開口絞りASが配置されている。
【0056】
図14(A)からわかるように、先行技術に記載の赤外線ズームレンズでは、第4レンズ群G14と第5レンズ群G15との間に中間結像位置があり、この中間結像位置が、変倍の際に移動しないように設計されている。このように、第4レンズ群G14と第5レンズ群G15との間で中間結像位置を固定する構成では、第1〜第4レンズ群G11〜G14として、従来から可視光のズームレンズで用いられているアフォーカル系の4群ズームレンズと同じ構成を用いることができるため、簡易にレンズ設計を行えるというメリットがある。
【0057】
しかしながら、先行技術に記載の赤外線ズームレンズでは、光学系の光軸方向の全長(第1面から結像面までの距離)が約340mmとなっているため、光軸方向の全長が長く、全体的なサイズが大きくなっている。
【0058】
そこで、本実施形態の上記第1〜第3実施例の赤外線ズームレンズは、全て正の屈折力を有する第1〜第4レンズ群G1〜G4からなり、変倍の際に中間結像位置を移動させる構成とすることで、光学系の全長の短縮を実現した。
図14(B)は、上記第1実施例に係る赤外線ズームレンズの構成を、
図14(A)と同縮尺で記載した図である。
図14(A)と
図14(B)とを比較するとわかるように、上記第1実施例に係る赤外線ズームレンズでは、先行技術に記載の赤外線ズームレンズと比較して光軸方向の全長が大幅に短くなっている。具体的に、上記第1実施例に係る赤外線ズームレンズでは、光学系の光軸方向の全長が約150mmとなっており、先行技術に記載の赤外線ズームレンズと比較して半分以下となっている。
【0059】
また上記第2実施例に係る赤外線ズームレンズでは、光学系の光軸方向の全長が約100mmとなっており、上記第3実施例に係る赤外線ズームレンズでは、光学系の光軸方向の全長約150mmとなっている。したがって、上記第2および第3実施例に係る赤外線ズームレンズにおいても、先行技術に記載の赤外線ズームレンズと比較して光学系の全長が大幅に短くなっている。
【0060】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)赤外線ズームレンズは、物体側より順に、合焦機能を有し、全体として正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、変倍時に光軸上を移動し、変倍機能を有し、全体として正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、変倍時に光軸上を移動し、変倍により変動した焦点位置を補償する機能を有し、全体として正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、検出器面Iに像を形成する機能を有し、全体として正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、を備え、中間像を形成し、中間像を検出器面Iに再結像させるように構成した。そして、変倍に伴って、中間像の結像位置を移動させるように構成した。これにより、従来と比して光学系の全長を大幅に短縮することができ、コンパクトな赤外線ズームレンズを実現することができる。
【0061】
(2)上記(1)の赤外線ズームレンズにおいて、以下の条件式(1)を満足するように構成した。
0.5<f
1/f
T<1.5 ・・・(1)
ただし、
f
1:第1レンズ群G1の焦点距離
f
T:赤外線ズームレンズの望遠端における全系焦点距離
これにより、赤外線ズームレンズの良好な結像性能と小型化とを両立させることができる。
【0062】
(3)上記(1)または(2)の赤外線ズームレンズにおいて、以下の条件式(2)を満足するように構成した。
0.9<f
12/f
W<2.5 ・・・(2)
ただし、
f
12:広角端における第1レンズ群G1から第2レンズ群G2までの合成焦点距離
f
W:赤外線ズームレンズの広角端における全系焦点距離
これにより、赤外線ズームレンズの良好な結像性能と小型化とを両立させることができる。
【0063】
(4)上記(1)〜(3)の赤外線ズームレンズにおいて、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2によって中間像を形成し、第3レンズ群G3および第4レンズ群G4によって中間像を再結像するように構成した。これにより、変倍時において、第2レンズ群G2の移動によって中間結像位置を移動させるが、第3レンズ群G3が移動することで再結像位置が検出器面Iとなるように調整することができる。
【0064】
以上の説明はあくまで一例であり、上述した構成に何ら限定されるものではなく、種々の態様を変更してもよい。例えば、各レンズ群を構成するレンズ数や、各レンズの曲率半径、面間隔、硝材等を適宜変更してもよい。
【0065】
また、上述した実施例では、中間結像位置は、望遠端において、第2レンズ群G2内に位置し、第2レンズ群の一部のレンズ(後ろ側レンズ)が、望遠端から広角端への変倍に伴って、中間結像位置をまたぐように移動する例について説明した。しかしながら、望遠端および広角端における中間結像位置は適宜変更してもよいし、変倍に伴って中間結像位置をまたぐレンズはあってもなくてもよい。
【0066】
また、上述した実施の形態は、焦点距離が連続的に変化する赤外線ズームレンズの例について説明したが、例えば、望遠端および広角端に切り替え可能な2焦点レンズや、望遠端、中間焦点距離および広角端に切り替え可能な3焦点レンズなど、多数の焦点距離に切り替え可能な赤外線多焦点レンズに本発明を適用してもよい。