(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本発明の基本構成とその作用について説明する。
図1は本発明による光学部材を備えた有機EL素子の基本の層構成を示したものである。
【0009】
本発明の光学部材を備えた有機EL素子は、EL層3と、そのEL層3の背面(視認側の反対側)に設けられた反射層2と、EL層3の視認側に設けられた位相差層5と偏光板6とを備え、位相差層5とEL層3との間に、特定波長域を選択的に反射するように螺旋ピッチを調整した重合性コレステリック液晶材料の混合物を硬化させた領域4を含む本発明の光学部材が設けられている。以後、該特定波長領域を「選択反射波長域」と呼ぶことがある。
【0010】
EL層3から垂直方向に出射した光は直接、あるいは反射層2で反射した後、特定波長域を選択的に反射するように螺旋ピッチを調整した重合性コレステリック液晶材料の混合物を硬化させた領域4に入射する。このとき、EL層から出射する光は非偏光であるため、コレステリック層の選択反射波長域の光のうち、一方向に回転する円偏光(たとえば、ここでは左回りの円偏光)成分は反射し、これとは逆回りの円偏光(右回りの円偏光)は透過する。領域4を透過した選択反射波長領域の円偏光は、位相差層5の作用により直線偏光に変換され、偏光板で吸収されることなく透過して視認者に向かう。一方、領域4で反射した光は、EL層3を偏光状態をほぼ維持したまま透過し、反射層2で反射して再び領域4に向かうが、反射の際に回転方向が逆の円偏光(右回りの円偏光)となる。このため、今度は領域4を透過して位相差層5の作用により偏光板を透過する直線偏光に変更されて、偏光板を透過して視認者に向かう。この光のリサイクル機構によって、本構成の表示装置では、発光層から層平面に対して垂直に出射した光のうち、選択反射波長域の光は偏光板でほとんど吸収されることなく視認者に向かう。
【0011】
EL層から垂直方向以外、つまり斜め方向に出射した光は、コレステリック液晶材料がプラナー(水平)配向している従来技術の部材では、選択反射波長にずれが生じてしまい、目的とする波長(正面で観察される選択反射波長)の光を、偏光板で吸収されることなく、EL素子から出射させることができなくなる。これによって、斜めから見たときに明るさや色味が変化してしまう。典型的には正面から見て斜め方向に60度傾いた状態から観察すると、およそ100nm選択反射波長がずれることがわかっている。一方、本発明の光学部材ではプラナー配向している面積比率が60~90%の間で制御されているため、コレステリック螺旋の軸方向が層平面に対して垂直だけでなく、斜め方向のものも存在している。これによって、EL層から出射された光は、上述の光のリサイクル機構が作用するので、斜めから見ても明るさや色味の変化を抑制することが可能になる。
【0012】
斜めから見たときの明るさや色味の変化を抑制するためには、プラナー配向している面積比率を小さくすることが好ましいが、その面積比率が小さくなると、結果として液晶材料の配向欠陥(たとえば、オイリーストリークス等)の面積割合が増えるため、光散乱性が強くなる。適度な光散乱性は、EL層から発光する光の大部分を占める垂直方向に出射される光を斜め方法にも拡散させて、斜めから見たときの視認性を向上させる効果があるものの、表示をぼやかせる副作用もあるので留意する必要がある。プラナー配向している面積割合は、60~90%が好ましく、70~85%がさらに好ましく、75~80%が特に好ましい。この面積比率は、倍率が50~200倍程度の偏光顕微鏡で光学部材を観察した際に、何も模様のない均一な色が見えている面積を観察、もしくは画像処理することによって測定することができる。何も模様のない均一な色が見えている部分がプラナー配向状態に相当する。
【0013】
本発明の光学部材において、層の厚みも、斜めから見たときの明るさや色味の変化を抑制する因子となる。層の厚みが厚いほど、斜めから見たときの明るさや色味の変化を抑制できるものの、光散乱性が強くなるので、上述の副作用に留意する必要がある。層の厚みとしては2~20μmに設定することが好ましく、3~10μmに設定することが更に好ましく、5~8μmに設定するのが特に好ましい。
【0014】
以上を考慮した結果から、本発明の光学部材においては、プラナー配向している面積比率の他に、ヘイズ値を適切な範囲になるよう制御することが好ましい。ヘイズ値としては、4〜20%に設定することが好ましく、5〜15%に設定することが更に好ましく、6〜12%に設定することが特に好ましい。
【0015】
本発明の好ましい態様としては、例えば
図2に示すように、赤色、青色、緑色の発光に対応するEL層を別々に設けた素子においては、赤色画素においては選択反射波長領域を赤色、青色画素においては選択反射波長領域を青色、緑色画素においては選択反射波長領域を緑色に設定すれば、発光波長域の光は斜め方向への発光も含めて効率良く視認者側に送り出すことができる。さらに、
図3に示すように、白色発光EL層を持つ素子においても、赤色発光を担わせる(赤色を透過させる)画素においては選択反射波長領域を赤色、青色発光を担わせる画素においては選択反射波長領域を青色、緑色発光を担わせる画素においては選択反射波長領域を緑色に設定すれば、斜め方向への発光も含めて効率よく視認者側に送り出すことができる。更に、
図4や
図5に示すように、複数の特定波長域を選択的に反射するように螺旋ピッチを調整した重合性コレステリック液晶材料を含む混合物を硬化させた領域4間にブラックマトリクス(遮光層)を挿入してもよい。
【0016】
以下で、複数の特定波長域を選択的に反射するように螺旋ピッチを調整した重合性コレステリック液晶材料について以下で詳述する。
【0017】
重合性コレステリック液晶材料は、アキラルの重合性液晶化合物及びキラル化合物を含有する。アキラルの重合性液晶化合物としては、本技術分野で重合性液晶化合物として認識されるものであれば、特に制限無く使用することができるが、分子内に重合性官能基を1つのみ有する液晶化合物及び/又は分子内に重合性官能基を2つ有する液晶化合物が好ましい。分子内に重合性官能基を1つのみ有する液晶化合物は、組成物の液晶温度範囲として室温前後の低温を含むものを作りやすく好ましい。このような液晶化合物としては、例えば、Handbook of Liquid Crystals(D.Demus,J.W.Goodby,G.W.Gray,H.W.Spiess,V.Vill編集、Wiley−VCH社発行,1998年)、季刊化学総説No.22、液晶の化学(日本化学会編,1994年)、あるいは、特開平7−294735号公報、特開平8−3111号公報、特開平8−29618号公報、特開平11−80090号公報、特開平11−116538号公報、特開平11−148079号公報、等に記載されているような、1,4−フェニレン基1,4−シクロヘキレン基等の環構造が複数繋がったメソゲンと呼ばれる剛直な部位と、ビニル基、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基といった重合性官能基を有する棒状重合性液晶化合物、あるいは特開2004−2373号公報、特開2004−99446号公報に記載されているようなマレイミド基を有する棒状重合性液晶化合物が挙げられる。
【0018】
重合性官能基は、ビニル基、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が上げられるが、生産性の観点から、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0019】
アキラルであり、重合性官能基を1つのみ有する液晶化合物は、具体的には以下の一般式(a)で表される化合物が好ましい。
【0021】
(式中、Z
3は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、Z
4は水素原子又はメチル基を表し、W
3は単結合、-O-、-COO-又は-OCO-を表し、vは0〜18の整数を表し、uは0又は1を表し、D、E及びFはそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH
2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、又は1,4−シクロヘキセニレン基を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルカノイル基、シアノ基、又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、Y
6及びY
7はそれぞれ独立的に単結合、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、-(CH
2)
4-、-CH
2CH
2CH
2O-、-OCH
2CH
2CH
2-、-CH=CHCH
2CH
2-、-CH
2CH
2CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH
2CH
2COO-、-CH
2CH
2OCO-、-COOCH
2CH
2-、-OCOCH
2CH
2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-又は-CH=N-N=CH-を表し、Y
6及びY
7の少なくとも一つは-CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-を表し、
Y
8は単結合、-O-、-COO-、-OCO-又は-CH=CHCOO-を表す。)
一般式(a)で表される化合物は以下で示される化合物がより好ましい。
【0061】
(式中、l、m及びnはそれぞれ独立して1〜10の整数を表し、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表すが、これらの基が炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、全部が未置換であるか、又は1つ若しくは2つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい。これらの基がカルボキシル基又はカルバモイル基の場合、末端の水素原子が未置換であるか、あるいは炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい。)
これらの式において、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基又はシアノ基を表すことが好ましい。
【0062】
また、アキラルであり、重合性官能基を1つのみ有する液晶化合物は、一般式(a)で表される化合物以外にも、以下の化合物が好ましい。
【0068】
(式中、nは1〜10の整数を表す。)
これらの液晶化合物は、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
【0069】
アキラルの重合性液晶化合物として、重合性官能基を2つ有する液晶化合物は、硬化させて得られるフィルムの機械的強度を確保する観点から好ましい。このような重合性官能基を2つ有する液晶化合物としては、例えば、Handbook of Liquid Crystals(D.Demus,J.W.Goodby,G.W.Gray,H.W.Spiess,V.Vill編集、Wiley−VCH社発行,1998年)、季刊化学総説No.22、液晶の化学(日本化学会編,1994年)、あるいは、特開平4−227684号公報、特開平11−80090号公報、特開平11−116538号公報、特開平11−148079号公報、特開2000−178233号公報、特開2002−308831号公報、特開2002−145830号公報、特開2004−125842号公報等に記載されているような、1,4−フェニレン基1,4−シクロヘキレン基等の環構造が複数繋がったメソゲンと呼ばれる剛直な部位と、ビニル基、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基といった重合性官能基を有する棒状重合性液晶化合物、あるいは特開2004−2373号公報、特開2004−99446号公報に記載されているようなマレイミド基を有する棒状重合性液晶化合物が挙げられる。
【0070】
重合性官能基は、ビニル基、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が上げられるが、生産性の観点から、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0071】
アキラルであり、重合性官能基を2つ有する液晶化合物は、具体的には以下の一般式(b)で表される化合物が好ましい。
【0073】
(式中、Z
5及びZ
6はそれぞれ独立的に水素原子又はメチル基を表し、G、H及びIはそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素原子で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH
2基が酸素原子又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、又は1,4−シクロヘキセニレン基を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルカノイル基、シアノ基、又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、mは0から3の整数を表し、W
1及びW
2はそれぞれ独立的に単結合、-O-、-COO-又は-OCO-を表し、Y
1及びY
2はそれぞれ独立的に単結合、-COO-、-OCO-、-CH
2CH
2COO-、-CH
2CH
2OCO-、-COO CH
2CH
2-、-OCOCH
2CH
2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-又は単結合を表し、Y
1及びY
2のうち少なくとも一つは-CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-を表し、r及びsはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表す。)
一般式(b)で表される化合物は以下で示される化合物がより好ましい。
【0091】
(式中、m及びnはそれぞれ独立して1〜10の整数を表し、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表すが、これらの基が炭素数1〜6のアルキル基、あるいは炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、全部が未置換であるか、又は1つ若しくは2つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい。これらの基がカルボキシル基又はカルバモイル基の場合、末端の水素原子が未置換であるか、又は炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい。)
Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基又はシアノ基が好ましい。
【0092】
また、アキラルであり、重合性官能基を2つ有する液晶化合物は、一般式(b)で表される化合物以外にも、以下の化合物が好ましい。
【0095】
(式中、m及びnはそれぞれ独立して1〜10の整数を表し、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表すが、これらの基が炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、全部が未置換であるか、又は1つ若しくは2つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい。これらの基がカルボキシル基又はカルバモイル基の場合、末端の水素原子が未置換であるか、又は炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい。)
Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基又はシアノ基が好ましい。
【0096】
これらの液晶化合物は、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
【0097】
アキラルの重合性液晶化合物は、重合性コレステリック材料中に78〜96質量%含有するのが好ましく、81〜94質量%含有するのが好ましく、85〜93質量%含有するのがより好ましい。
【0098】
キラル化合物としては、重合性官能基を1つ以上有することが好ましい。このような化合物としては、例えば、特開平11−193287号公報、特開2001−158788号公報、特表2006−52669号公報、特開2007−269639号公報、特開2007−269640号公報、2009−84178号公報等に記載されているような、イソソルビド、イソマンニット、グルコシド等のキラルな糖類を含み、かつ、1,4−フェニレン基1,4−シクロヘキレン基等の剛直な部位と、ビニル基、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基、また、マレイミド基といった重合性官能基を有する重合性キラル化合物、特開平8−239666号公報に記載されているような、テルペノイド誘導体からなる重合性キラル化合物、NATURE VOL35 467〜469ページ(1995年11月30日発行)、NATURE VOL392 476〜479ページ(1998年4月2日発行)等に記載されているような、メソゲン基とキラル部位を有するスペーサーからなる重合性キラル化合物、あるいは特表2004−504285号公報、特開2007−248945号公報に記載されているような、ビナフチル基を含む重合性キラル化合物が挙げられる。中でも、らせんねじれ力(HTP)の大きなキラル化合物が好ましい。
【0099】
重合性キラル化合物としては、具体的には以下に示されるような液晶化合物が例示される。
【0124】
(式中、m及びnはそれぞれ独立して1〜10の整数を表し、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表すが、これらの基が炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、全部が未置換であるか、又は1つ若しくは2つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい。これらの基がカルボキシル基又はカルバモイル基の場合、末端の水素原子が未置換であるか、又は炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい。)
これらのキラル化合物は、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。いずれにしても、重合性コレステリック液晶材料において所望の選択反射波長域及び螺旋方向が得られるようキラル化合物の種類と添加量を調節する必要がある。
【0125】
キラル化合物の添加量としては、重合性コレステリック材料中3〜15質量%であるのが好ましく、4〜12質量%であるのが好ましく、5〜10質量%であるのがより好ましい。
【0126】
以上述べたような重合性コレステリック液晶材料には、重合性コレステリック液晶をプラナー(水平)配向させることを目的として、水平配向を促進するための化合物を添加することは好ましい。このような化合物としては一般式(II)
【0128】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の水素原子は1つ以上のハロゲン原子で置換されていても良い。)で表される繰り返し単位を有する化合物をあげることができる。
【0129】
一般式(II)で表される化合物は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、パラフィン、流動パラフィン、塩素化ポリプロピレン、塩素化パラフィン、又は塩素化流動パラフィンが挙げられる。
これ以外にも、フッ素原子が導入された化合物はムラ抑制の観点からも有効である。
【0130】
一般式(II)で表される繰り返し単位を有する化合物のうち、好適な構造として、式(II−a)〜式(II−f)
【0132】
で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。中でも、式(II−a)〜式(II−e)で表される構造がより好ましく、式(II−a)及び式(II−c)で表される構造が特に好ましい。又、式(II−a)〜式(II−f)で表される繰り返し単位を有する化合物を2種以上共重合させた共重合体も好ましい。この場合、式(II−a)及び式(II−b)を有する共重合体、式(II−a)及び式(II−c)を有する共重合体、式(II−a)及び式(II−f)を有する共重合体、及び、式(II−a)、(II−b)及び式(II−f)を有する共重合体がより好ましく、式(II−a)及び式(II−b)を有する共重合体、及び、式(II−a)、(II−b)及び式(II−f)を有する共重合体が特に好ましい。
【0133】
添加量としては、重合性コレステリック液晶材料中に、0.01〜5質量%含有することが好ましく、0.05〜2質量%含有することがより好ましく、0.1〜1質量%含有することが特に好ましい。
【0134】
更に活性エネルギー線による重合を迅速に進めることを目的として、重合性コレステリック液晶材料を含む混合物中に重合開始剤を添加することが好ましい。重合開始剤としては、活性エネルギー線によって行う場合に使用する光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては公知慣用のものが使用できる。例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1173」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア184」)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1116」)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モリホリノプロパン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア907」)。ベンジルメチルケタ−ル(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア651」)2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア369」)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア379」)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(ダロキュアTPO)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア819」)、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュアOXE01」)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュアOXE02」)。2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアDETX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製「カヤキュアEPA」)との混合物、イソプロピルチオキサントン(ワ−ドプレキンソップ社製「カンタキュア−ITX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチルとの混合物、アシルフォスフィンオキシド(BASF社製「ルシリンTPO」)、などが挙げられる。光重合開始剤の含有率は1〜10質量が好ましく、2〜7質量%が特に好ましい。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
【0135】
また、重合開始剤として熱重合開始剤を使用することも好ましい。熱重合開始剤としては、例えば、メチルアセトアセテイトパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカーボネイト、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパ−オキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、p−ペンタハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネイト、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾニトリル化合物、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオン−アミヂン)ジハイドロクロライド等のアゾアミヂン化合物、2,2’アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、2,2’アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等のアルキルアゾ化合物等を使用することができる。熱重合開始剤の含有率1〜10質量%が好ましく、2〜6質量%が特に好ましい。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
【0136】
また、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤としては、フェノール系化合物、キノン系化合物、アミン系化合物、チオエーテル系化合物、ニトロソ化合物、等が挙げられる。
【0137】
フェノール系化合物としては、p−メトキシフェノール、クレゾール、t−ブチルカテコール、3.5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2.2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2.2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4.4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4−メトキシ−1−ナフトール、4,4’−ジアルコキシ−2,2’−ビ−1−ナフトール、等が挙げられる。
キノン系化合物としては、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、tert−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニルベンゾキノン、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、アントラキノン、ジフェノキノン等が挙げられる。
アミン系化合物としては、p−フェニレンジアミン、4−アミノジフェニルアミン、N.N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−i−プロピル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1.3−ジメチルブチル)−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N.N'−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、4.4'−ジクミル−ジフェニルアミン、4.4'−ジオクチル−ジフェニルアミン等が挙げられる。
チオエーテル系化合物としては、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート等が挙げられる。
ニトロソ系化合物としては、N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルナフチルアミン、N−ニトロソジナフチルアミン、p−ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p−ニトロソジフェニルアミン、α−ニトロソ−β−ナフトール等、N、N−ジメチルp−ニトロソアニリン、p−ニトロソジフェニルアミン、p−ニトロンジメチルアミン、p−ニトロン−N、N−ジエチルアミン、N−ニトロソエタノールアミン、N−ニトロソジ−n−ブチルアミン、N−ニトロソ−N −n−ブチル−4−ブタノールアミン、N−ニトロソ−ジイソプロパノールアミン、N−ニトロソ−N−エチル−4−ブタノールアミン、5−ニトロソ−8−ヒドロキシキノリン、N−ニトロソモルホリン、N−二トロソーN−フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、二トロソベンゼン、2,4.6−トリーtert−ブチルニトロンベンゼン、N−ニトロソ−N−メチル−p−トルエンスルホンアミド、N−ニトロソ−N−エチルウレタン、N−ニトロソ−N−n−プロピルウレタン、1−ニトロソ−2−ナフトール、2−ニトロソ−1−ナフトール、1−ニトロソ−2−ナフトール−3,6−スルホン酸ナトリウム、2−ニトロソ−1−ナフトール−4−スルホン酸ナトリウム、2−ニトロソ−5−メチルアミノフェノール塩酸塩、2−ニトロソ−5−メチルアミノフェノール塩酸塩等が挙げられる。
【0138】
さらに重合性コレステリック液晶材料には、塗膜のレベリング性を確保する目的で界面活性剤を添加することが好ましい。含有することができる界面活性剤としては、アルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルリン酸塩、フルオロアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン誘導体、フルオロアルキルエチレンオキシド誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、アルキルアンモニウム塩、フルオロアルキルアンモニウム塩類、シリコーン誘導体等をあげることができるが、特にフルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルリン酸塩、フルオロアルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルエチレンオキシド誘導体などの含フッ素界面活性剤、シリコーン誘導体が好ましい。更に具体的には「MEGAFAC F−110」、「MEGAFACF−113」、「MEGAFAC F−120」、「MEGAFAC F−812」、「MEGAFAC F−142D」、「MEGAFAC F−144D」、「MEGAFAC F−150」、「MEGAFAC F−171」、「MEGAFACF−173」、「MEGAFAC F−177」、「MEGAFAC F−183」、「MEGAFAC F−195」、「MEGAFAC F−824」、「MEGAFAC F−833」、「MEGAFAC F−114」、「MEGAFAC F−410」、「MEGAFAC F−493」、「MEGAFAC F−494」、「MEGAFAC F−443」、「MEGAFAC F−444」、「MEGAFAC F−445」、「MEGAFAC F−446」、「MEGAFAC F−470」、「MEGAFAC F−471」、「MEGAFAC F−474」、「MEGAFAC F−475」、「MEGAFAC F−477」、「MEGAFAC F−478」、「MEGAFAC F−479」、「MEGAFAC F−480SF」、「MEGAFAC F−482」、「MEGAFAC F−483」、「MEGAFAC F−484」、「MEGAFAC F−486」、「MEGAFAC F−487」、「MEGAFAC F−489」、「MEGAFAC F−172D」、「MEGAFAC F−178K」、「MEGAFAC F−178RM」、「MEGAFAC R−08」、「MEGAFAC R−30」、「MEGAFAC F−472SF」、「MEGAFAC BL−20」、「MEGAFAC R−61」、「MEGAFAC R−90」、「MEGAFAC ESM−1」、「MEGAFAC MCF−350SF」(以上、DIC株式会社製)、
「フタージェント100」、「フタージェント100C」、「フタージェント110」、「フタージェント150」、「フタージェント150CH」、「フタージェントA」、「フタージェント100A-K」、「フタージェント501」、「フタージェント300」、「フタージェント310」、「フタージェント320」、「フタージェント400SW」、「FTX-400P」、「フタージェント251」、「フタージェント215M」、「フタージェント212MH」、「フタージェント250」、「フタージェント222F」、「フタージェント212D」、「FTX-218」、「FTX-209F」、「FTX-213F」、「FTX-233F」、「フタージェント245F」、「FTX-208G」、「FTX-240G」、「FTX-206D」、「FTX-220D」、「FTX-230D」、「FTX-240D」、「FTX-207S」、「FTX-211S」、「FTX-220S」、「FTX-230S」、「FTX-750FM」、「FTX-730FM」、「FTX-730FL」、「FTX-710FS」、「FTX-710FM」、「FTX-710FL」、「FTX-750LL」、「FTX-730LS」、「FTX-730LM」、「FTX-730LL」、「FTX-710LL」(以上、ネオス社製)、
「BYK−300」、「BYK−302」、「BYK−306」、「BYK−307」、「BYK−310」、「BYK−315」、「BYK−320」、「BYK−322」、「BYK−323」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−331」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−340」、「BYK−344」、「BYK−370」、「BYK−375」、「BYK−377」、「BYK−350」、「BYK−352」、「BYK−354」、「BYK−355」、「BYK−356」、「BYK−358N」、「BYK−361N」、「BYK−357」、「BYK−390」、「BYK−392」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」、「BYK−UV3570」、「BYK−Silclean3700」(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、
「TEGO Rad2100」、「TEGO Rad2200N」、「TEGO Rad2250」、「TEGO Rad2300」、「TEGO Rad2500」、「TEGO Rad2600」、「TEGO Rad2700」(以上、テゴ社製)等の例をあげることができる。
【0139】
界面活性剤の好ましい添加量は、重合性コレステリック液晶材料を含む混合物中に含有される界面活性剤以外の成分や、使用温度等によって異なるが、重合性コレステリック液晶材料を含む混合物中に0.01〜1質量%含有することが好ましく、0.02〜0.5質量%含有することがさらに好ましく、0.03〜0.1質量%含有することが特に好ましい。含有量が0.01質量%より低いときは膜厚ムラ低減効果が得にくい。一般式(II)で表される繰り返し単位を有する水平配向添加剤の含有量と界面活性剤の含有量の合計が0.02〜0.5質量%であることが好ましく、0.05〜0.4質量%含有することがさらに好ましく、0.1〜0.2質量%含有することが特に好ましい。
【0140】
次に本発明の光学部材の製造方法について説明する。本発明の光学部材は上述の重合性コレステリック液晶材料を、配向処理をしていない有機膜が設けられた基材、もしくは垂直配向膜上が設けられた基材に塗布した後、プラナー配向領域の面積比率が60〜90%にした後、活性エネルギー線を照射することにより製造することができる。
【0141】
基材としてはガラス基材、金属基材、セラミックス基材やプラスチック基材等の有機材料が挙げられる。特に基材が有機材料の場合、セルロース誘導体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ナイロン、又はポリスチレン等が挙げられる。中でもポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロース誘導体、ポリアリレート、ポリカーボネート等のプラスチック基材が好ましい。これらの基材上に、重合性コレステリック液晶材料を含む混合物中を塗布し、配向させた状態で活性エネルギーを照射して基材上に本発明の光学部材を形成しても良いし、有機EL素子上に転写して用いても良い。また、有機EL素子上の直上に設けたパッシベーション膜、もしくはパッシベーション膜上に設けられた平坦化層の上に、複数の特定波長域を選択的に反射するように螺旋ピッチを調整した重合性コレステリック液晶材料の混合物を塗布し、配向させた状態で活性エネルギー線を照射して直接、有機EL素子の上に本発明の光学素子を形成しても良い。基材の上に有機薄膜を設ける場合、薄膜材料としては、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、クマリン化合物、カルコン化合物、シンナメート化合物、フルギド化合物、アントラキノン化合物、アゾ化合物、アリールエテン化合物等の化合物が挙げられる。
【0142】
重合性コレステリック液晶材料を含む混合物を基材に塗布するための方法としては、アプリケーター法、バーコーティング法、スピンコーティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法、ダイコーティング法、キャップコーティング法、ディッピング等、公知慣用の方法を行うことができる。この際、溶剤で希釈した状態で塗布することが好ましい。使用する溶剤は、基材上に塗布した際に基材、あるいは、基材上に形成されている配向膜を溶解させないものであれば良い。また、使用する溶剤としては本発明の重合性コレステリック液晶組成物を良好に溶解性させるものが好ましい。使用することができる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、クメン、メシチレン等の芳香族系炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール等のエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、等のアミド系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン等が挙げられる。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
【0143】
溶剤の比率は、重合性コレステリック液晶材料を含む混合物の固形分と溶剤の比率が10:90〜80:20が好ましく、塗布性を考慮すると、20:80〜70:30がさらに好ましく、30:70〜60:40が特に好ましい。
【0144】
溶剤を使用した場合、60〜100℃、さらに好ましくは80〜90℃で加熱して溶剤を揮発させることが好ましい。加熱時間は5秒〜3分が好ましい。
【0145】
プラナー配向している面積比率に大きく影響を及ぼすのは、塗布する膜面である。配向処理をしていない有機膜、もしくは垂直配向膜上に塗布すれば、好ましい面積比率範囲を得ることは基本的に可能である。このほかにプラナー配向の面積比率に影響を及ぼす因子としては、重合性コレステリック液晶材料に添加する水平配向添加剤の濃度及び界面活性剤の濃度、溶剤と共に塗布した際に溶剤を揮発させるときの加熱温度、加熱を終えて冷却した後に放置する時間があげられる。所望のプラナー配向の面積比率に微調節したい場合には、これらの因子を変化させることが好ましい。水平配向剤や界面活性剤の濃度を増やすと、プラナー配向の面積比率が高くなる傾向がある。溶剤と共に塗布した際に溶剤を揮発させるときの温度は、80〜120℃に設定するとプラナー配向の面積比率が高くなる傾向があり、この温度から外れるとプラナー配向の面積比率が低くなる傾向がある。加熱を終えて冷却した後の放置時間を長くすると、プラナー配向の面積比率が高くなる傾向がある。
【0146】
重合性コレステリック液晶材料を含む混合物の重合操作については、重合性液晶組成物中の溶剤を乾燥等で除去した後、所望状態に配向した状態で一般に活性エネルギー線を照射することによって行うのが好ましい。活性エネルギー線としては紫外線、電子線を挙げることができる。装置の簡易さから、活性エネルギー線として紫外線を使用することが好ましい。重合を紫外光照射で行う場合は、具体的には390nm以下の紫外光を照射することが好ましく、250〜370nmの波長の光を照射することが最も好ましい。但し、390nm以下の紫外光により重合性液晶組成物が分解などを引き起こす場合は、390nm以上の紫外光で重合処理を行ったほうが好ましい場合もある。この光は、拡散光で、かつ偏光していない光であることが好ましい。紫外光の強度としては、1〜100mW/cm
2が好ましく、2〜50mW/cm
2が更に好ましく、5〜30mW/cm
2が特に好ましい。照射エネルギーとしては5〜200mJ/cm
2が好ましく、10〜150mJ/cm
2が更に好ましく、20〜120mJ/cm
2が特に好ましい。
【0147】
耐溶剤特性や耐熱性の向上のために、本発明の光学部材を加熱処理することもできる。その加熱温度は、基材として有機材料を使用する場合、基材のガラス転移点を越えない範囲での加熱が好ましい。
【0148】
本発明の有機EL素子において、本発明の光学部材の上に配置する、位相差層の位相差は1/4波長に設定することが好ましい。位相差層は延伸したポリマーフィルムを用いても良いが、アキラルな重合性液晶材料を含む材料を水平一軸配向させた後に活性エネルギー線を照射することによって得たものを使用するのが好ましい。延伸したポリマーフィルムで1/4波長の位相差を得ようとすると多くの場合、少なくとも50μm以上の厚みが必要であるのに対して、重合性液晶材料の複屈折率は0.04〜0.3程度と大きいため、膜厚が0.5〜3.4μm程度で済む。膜厚は、3μm以下になるよう、好ましくは2μm以下になるよう、更に好ましくは1μm以下になるよう重合性液晶材料の複屈折率を選択するのが好ましい。
【0149】
アキラルな重合性液晶材料としては上述の化合物(a)、及び/又は化合物(b)を含有するものが好ましい。更に上述の、水平配向を促進するための化合物、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤、溶媒を適宜量添加することができる。それぞれの添加量は上述に準ずる。これらの材料、及びアキラルな重合性液晶材料を含む混合物を基材に塗布したのち、溶剤を揮発させた後に水平一軸配向させ、活性エネルギー線を照射することにより位相差層を製造することができる。使用することができる溶剤、活性エネルギー線の条件についても上述に準ずる。基材としては、本発明の光学部材とすることが好ましい。また、本発明の光学部材の上には配向膜を形成することが好ましい。配向膜としてはポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアミド系材料を挙げることができる。配向処理としてはラビング、もしくは偏光紫外線照射(光配向処理)を挙げることができる。
【0150】
本発明の有機EL素子において、位相差層の上に配置する偏光板は、二色性色素とアキラルな重合性液晶材料を含む混合物を水平一軸配向させた後に活性エネルギー線を照射することによって得たものを使用することが好ましい。重合性液晶材料としてはネマチック相、もしくはスメクチックA相状態を呈するものが好ましく、ネマチック相を呈するものが特に好ましい。偏光板としては、リオトロピックの色素液晶材料を塗布したものも使用することもできる。これらの偏光板は偏光度の点では従来から多用されているポリビニルアルコールにヨウ素や色素を含浸させた後に延伸して製造する偏光板と比較すると偏光度は劣る。しかしながら、従来から多用されている偏光板の厚みが100μm程度と厚いのに対して、厚みを10μm以下、より好ましくは5μm以下にすることができる。これらのフィルムの膜厚を薄くできれば、表示素子自体の膜厚が薄くなるというメリットの他、折り曲げ性も向上するというメリットがある。液晶表示素子と異なり、原理的には有機ELは折り曲げても表示が可能であるため、液晶表示素子に対する大きな優位点となる。
【0151】
アキラルな重合性液晶材料としては上述の化合物(a)、及び/又は化合物(b)を含有するものが好ましい。また、二色性色素としては三井化学ファイン(株)のSI−486(黄)、SI−426(赤)、M−483(青)、M−412(青)、M−811(青)、S−428(黒)、M−1012(黒)、三菱化学(株)のLSY−116(黄)、LSR−401(マゼンタ)、LSR−406(赤)、LSR−426(紫)、LSB−278(青)、LSB−350(青)、LSR−426(シアン)等を挙げることができる。このような二色性色素の添加量は、二色性色素とアキラルな重合性液晶材料を含む混合物中、3〜10質量%含有するのが好ましく、4〜9質量%が含有するのが更に好ましく、5〜8質量%含有するのが特に好ましい。更に上述の、水平配向を促進するための化合物、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤、溶媒を適宜量添加することができる。それぞれの添加量は上述の記述に準ずる。これらの材料、及びアキラルな重合性液晶材料を含む混合物を基材に塗布したのち、溶剤を揮発させた後に水平一軸配向させ、活性エネルギー線を照射することにより位相差層を製造することができる。使用することができる溶剤、活性エネルギー線の条件についても上述の記述に準ずる。基材としては、位相差層とすることが好ましい。位相差層の上には配向膜を形成することが好ましい。使用することができる配向膜、配向処理については上述に準ずる。
【0152】
本発明の有機EL素子において、視認側の最表面には偏光板の保護のため、ハードコート層を形成しても良い。ハードコート層は、特に光学技術分野でハードコート層と認識されるものであれば、特に制限なく使用することができるが、活性エネルギー線によって硬化させることができる材料が製造時間の短縮に有効なので好ましい。
【実施例】
【0153】
以下に本発明を実施例及び比較例によって説明するが、もとより本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0154】
(参考例1)
式(A−1)で表される重合性液晶化合物17.7%、式(A−2)で表される重合性液晶化合物7.6%、式(B−1)で表される重合性液晶化合物27.8%、式(B−2)で表される重合性液晶化合物38.0%、式(C−1)で表される重合性キラル化合物5.9%、式(F−1)で表される光重合開始剤2.14%、式(F−2)で表される光重合開始剤0.44%、p−メトキシフェノール0.44%を混合して重合性コレステリック液晶材料を含む混合物(1)を得た。この混合物の選択反射波長の中心は680nmであり、赤領域の光を反射するものであった。また、コレステリック液晶の螺旋の向きは右向きであった。
【0155】
【化92】
【0156】
【化93】
【0157】
【化94】
【0158】
【化95】
【0159】
【化96】
【0160】
【化97】
【0161】
【化98】
【0162】
(参考例2)
調製した重合性コレステリック液晶を含む混合物(1)に、水平配向添加剤として質量平均分子量1650のポリプロピレンを0.10%添加したのち、トルエンが25%、シクロヘキサノンが25%となるように溶剤を加えて、重合性コレステリック液晶材料を含む混合物溶液(2)を調製した。
【0163】
(参考例3)
式(B−2)で表される重合性液晶化合物38.8%、式(B−3)で表される重合性液晶化合物9.7%、式(B−4)で表される重合性液晶化合物24.2%、式(B−5)で表される重合性液晶化合物24.2%、式(F−1)で表される光重合開始剤3.0%、p−メトキシフェノール0.1%を混合してアキラルの重合性ネマチック液晶材料を含む混合物(3)を得た。
【0164】
【化99】
【0165】
【化100】
【0166】
【化101】
【0167】
【化102】
【0168】
【化103】
【0169】
(参考例4)
調製したアキラルの重合性液晶材料を含む混合物(3)に、水平配向添加剤として質量平均分子量1650のポリプロピレンを0.10%添加、トルエンが40%、シクロヘキサノンが40%となるように溶剤を加えて、アキラルの重合性ネマチック液晶材料を含む混合物溶液(4)を調製した。
【0170】
(参考例5)
調製したアキラルの重合性液晶材料を含む混合物(3)に、水平配向添加剤として質量平均分子量1650のポリプロピレンを0.10%、三井化学ファイン株式会社製の二色性色素のS−428(黒)を6%添加後、さらにトルエンが40%、シクロヘキサノンが40%となるように溶剤を加えて、アキラルの重合性ネマチック液晶材料と二色性色素を含む混合物溶液(5)を調製した。
【0171】
(参考例6)
ポリビニルアルコール3%、エタノール50%、水47%からなる有機膜溶液(6)を調製した。
【0172】
(実施例1)
市販の赤色有機EL素子(円偏光板等の光学フィルムは貼合されていない)上に、参考例6で調製した有機膜溶液(6)を、スピンコーターにて1000rpmで15秒の条件で塗布後、120℃で2分間加熱乾燥することにより、厚み0.2μmのポリビニルアルコール薄膜を形成した。
【0173】
ポリビニルアルコール薄膜を形成した面に、参考例3で調製した重合性コレステリック液晶材料を含む混合物溶液(3)をスピンコーターにて400rpmで15秒の条件にて塗布後、80℃で3分加熱することにより重合性コレステリック液晶材料を含む混合物の層を形成した。3分間室温にて放置後、倍率50倍の反射型偏光顕微鏡で画像を取り込み解析したところ重合性コレステリック液晶材料のプラナー配向の面積比率は87%であった。これに窒素気流下で30mW/cm
2の紫外線40秒間照射することにより硬化させ、本発明の光学部材を得た。膜厚を測定したところ、6.0μmであった。ヘイズ値(JIS K7361)を測定したところ、11.1%であった。
【0174】
この光学部材の上に、参考例6で調製した有機膜溶液(6)を、スピンコーターにて1000rpmで15秒の条件にて塗布後、120℃で2分間加熱乾燥することにより厚み0.2μmのポリビニルアルコール薄膜を形成した。このポリビニルアルコール薄膜をレーヨン布で一方向にラビングすることにより配向処理を施した。この上に、参考例4で調製したアキラルの重合性液晶材料を含む混合物溶液(4)を、スピンコーターにて1100rpmで15秒の条件にて塗布後、80℃で3分加熱することによりアキラルな重合性ネマチック液晶材料を含む混合物の層を形成した。2分間室温にて放置すると、重合性ネマチック液晶材料がラビングした方向に水平一軸配向したのが確認できた。これに窒素気流下で30mW/cm
2の紫外線を30秒間照射することにより、重合性ネマチック液晶材料を硬化させて、位相差層を形成した。位相差層の膜厚は、0.9μmで、波長550nmにおける位相差は、138nmであった。
【0175】
更にこの上に、参考例6で調製した有機膜溶液(6)を、スピンコーターにて1000rpmで15秒の条件にて塗布後、120℃で2分間加熱乾燥することにより厚み0.2μmのポリビニルアルコール薄膜を形成した。このポリビニルアルコール薄膜をレーヨン布で一方向にラビングすることにより配向処理を施した。この上に、参考例5で調製したアキラルの重合性ネマチック液晶材料と二色性色素を含む混合物溶液(5)を、スピンコーターにて500rpmで15秒の条件にて塗布後、80℃で3分加熱することによりアキラルな重合性ネマチック液晶材料と二色性色素を含む混合物の層を形成した。5分間室温にて放置すると、重合性ネマチック液晶材料がラビングした方向に水平一軸配向したのが確認できた。これに窒素気流下で30mW/cm
2の紫外線を30秒間照射することにより、重合性ネマチック液晶材料を硬化させて、偏光板を作製した。偏光板の膜厚は2.0μであった。位相差板の遅相軸と偏光板の吸収軸のなす角度は、偏光板側から自然光が入射して位相差層を通過したとき、左回りの円偏光になるように設定した。以上のようにして本発明の有機EL素子を作製した。
【0176】
300lxの明室において、輝度計(CS−100A、コニカミノルタオプティクス株式会社)を用いて明表示の正面輝度を測定したところ、132cd/m
2であった。また、正面から50度傾いた斜め方向から輝度を測定したところ、59cd/m
2であった。
【0177】
(比較例1)
市販の白色有機EL素子(円偏光板等の光学フィルムは貼合されていない)上に、参考例6で調製した配向膜溶液(6)を、スピンコーターにて1000rpmで15秒の条件で塗布後、120℃で2分間加熱乾燥することにより、厚み0.2μmのポリビニルアルコール薄膜を形成した。このポリビニルアルコール薄膜をレーヨン布で一方向にラビングすることにより配向処理を施した。
【0178】
配向処理を施した面に、参考例3で調製した重合性コレステリック液晶材料を含む混合物溶液(3)をスピンコーターにて400rpmで15秒の条件にて塗布後、80℃で3分加熱することにより重合性コレステリック液晶材料を含む混合物の層を形成した。3分間室温にて放置後、倍率50倍の反射型偏光顕微鏡で画像を取り込み解析したところ重合性コレステリック液晶材料のプラナー配向の面積比率は97%であった。これに窒素気流下で30mW/cm
2の紫外線40秒間照射することにより硬化させた。膜厚を測定したところ、6.0μmであった。ヘイズ値(JIS K7361)を測定したところ、1.8%であった。
【0179】
この光学部材の上に、参考例6で調製した有機膜溶液(6)を、スピンコーターにて1000rpmで15秒の条件にて塗布後、120℃で2分間加熱乾燥することにより厚み0.2μmのポリビニルアルコール薄膜を形成した。このポリビニルアルコール薄膜をレーヨン布で一方向にラビングすることにより配向処理を施した。この上に、参考例4で調製したアキラルの重合性液晶材料を含む混合物溶液(4)を、スピンコーターにて1100rpmで15秒の条件にて塗布後、80℃で3分加熱することによりアキラルな重合性ネマチック液晶材料を含む混合物の層を形成した。2分間室温にて放置すると、重合性ネマチック液晶材料がラビングした方向に水平一軸配向したのが確認できた。これに窒素気流下で30mW/cm
2の紫外線を30秒間照射することにより、重合性ネマチック液晶材料を硬化させて、位相差層を形成した。位相差層の膜厚は、0.9μmで、波長550nmにおける位相差は、138nmであった。
【0180】
更にこの上に、参考例6で調製した有機膜溶液(6)を、スピンコーターにて1000rpmで15秒の条件にて塗布後、120℃で2分間加熱乾燥することにより厚み0.2μmのポリビニルアルコール薄膜を形成した。このポリビニルアルコール薄膜をレーヨン布で一方向にラビングすることにより配向処理を施した。この上に、参考例5で調製したアキラルの重合性ネマチック液晶材料と二色性色素を含む混合物溶液(5)を、スピンコーターにて500rpmで15秒の条件にて塗布後、80℃で3分加熱することによりアキラルな重合性ネマチック液晶材料と二色性色素を含む混合物の層を形成した。5分間室温にて放置すると、重合性ネマチック液晶材料がラビングした方向に水平一軸配向したのが確認できた。これに窒素気流下で30mW/cm
2の紫外線を30秒間照射することにより、重合性ネマチック液晶材料を硬化させて、偏光板を作製した。偏光板の膜厚は2.0μであった。位相差板の遅相軸と偏光板の吸収軸のなす角度は、偏光板側から自然光が入射して位相差層を通過したとき、左回りの円偏光になるように設定した。以上のようにして本発明の有機EL素子を作製した。
300lxの明室において、輝度計(CS−100A、コニカミノルタオプティクス株式会社)を用いて明表示の正面輝度を測定したところ、132cd/m
2であった。また、正面から50度傾いた斜め方向から輝度を測定したところ、37cd/m
2であった。
【0181】
以上の結果を下表にまとめた。
【0182】
【表1】
【0183】
実施例1と比較例1の比較から、本発明の光学部材を使用すると、斜めから見たときの明るさと色味の変化を抑制できることがわかる。