(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の面で加圧したときに前記所定の面の形状に基づいて表層部の平滑性が変化する温度が相対的に低い第1のトナー像と、前記平滑性が変化する温度が相対的に高い第2のトナー像とを有するトナー像が定着された記録媒体に対し、前記第1のトナー像の前記平滑性が変化する温度以上であって、前記第2のトナー像の前記平滑性が変化する温度より低い温度に前記トナー像を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程によって加熱された前記トナー像を前記所定の面で加圧する加圧工程とを有することを特徴とする記録媒体処理方法。
前記平滑性が変化する温度は、温度を上昇させたときに、前記所定の面の形状に基づいて前記トナー像の表層部の平滑性が変化し始める温度であることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体処理方法。
所定の面で加圧したときに前記所定の面の形状に基づいて表層部の平滑性が変化する温度が相対的に低い第1のトナー像と、前記平滑性が変化する温度が相対的に高い第2のトナー像とを有するトナー像を記録媒体上に形成する像形成工程と、
前記像形成工程によって形成された前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着工程と、
前記定着工程で定着させた前記トナー像を、前記第1のトナー像の前記平滑性が変化する温度以上であって、前記第2のトナー像の前記平滑性が変化する温度より低い温度に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程によって加熱された前記トナー像を前記所定の面で加圧する加圧工程とを有することを特徴とする画像形成方法。
所定の面で加圧したときに前記所定の面の形状に基づいて表層部の平滑性が変化する温度が相対的に低い第1のトナー像と、前記平滑性が変化する温度が相対的に高い第2のトナー像とを有するトナー像を記録媒体上に形成する像形成手段と、
前記像形成手段によって形成された前記トナー像を加熱して前記記録媒体に定着させる定着手段と、
前記定着手段で定着させた前記トナー像を、前記第1のトナー像の前記平滑性が変化する温度以上であって、前記第2のトナー像の前記平滑性が変化する温度より低い温度に加熱する加熱手段と、
前記加熱手段によって加熱された前記トナー像を前記所定の面で加圧する加圧手段とを備えたことを特徴とする画像形成システム。
前記定着手段と前記加熱手段との間の前記記録媒体の搬送経路上に設置され、前記定着手段によって前記トナー像を定着させた前記記録媒体を加熱して、前記トナー像が所定の温度範囲に保たれるよう保温する保温手段を備えたことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの模式図である。まず、
図1を用いて、本実施形態の全体構成を説明する。
【0009】
<<実施形態の全体構成>>
本実施形態の画像形成システム1は、
図1に示すように、画像形成装置10と、光沢発生装置20とを備えている。なお、
図1では、画像形成装置10が複写機である例を示しているが、トナーを用いて画像を形成するものであれば制限はなく、ファクシミリやプリンターであっても良い。画像形成装置10は、記録媒体の一例としての用紙にトナー像を定着させることにより画像を形成する。光沢発生装置20は、画像形成装置10によって形成された画像に光沢差を発生させる。
【0010】
<画像形成装置の構成>
画像形成装置10は、
図1に示すように画像読取部11、作像部12、給紙部13、転写部14、定着部15、排紙部16、及び、表示・操作ボタン17を有している。
【0011】
〔画像読取部〕
画像読取部11は、コンタクトガラス111および読取センサ112を備えている。読取センサ112は、CCD(Charge Coupled Devices)、または、CIS(Contact Image Sensor)等によって構成され、コンタクトガラス111上の原稿に記録された画像を光学的に読み取ることにより、画像情報を生成する。具体的には、原稿に光を当てたときの反射光を読取センサで受光することによって画像情報を読み取る。なお、画像読取部11で読み取られる画像情報は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色を示す電気的な色分解画像信号を用いて示される。
【0012】
〔作像部〕
作像部12は、画像読取部11によって読み取られた画像情報等に基づいて、各色のトナー像を、転写部14の中間転写ベルト143の表面に形成する。このため、作像部12は、シアン(C)色、マゼンタ(M)色、イエロー(Y)色、および、ブラック(K)色の各有色トナー、あるいは、クリア(T)トナーを用いて各トナー像を形成する各画像形成ユニット(120C,120M,120Y,120K,120T)を備えている。
【0013】
以後、画像形成ユニット(120C,120M,120Y,120K,120T)のうち任意の画像形成ユニットを「画像形成ユニット120」と表す。各有色トナーは、顔料や染料等の色材を含有した帯電性をもった樹脂粒子である。また、クリアトナーとは、有色トナー上に付着させた場合にはその有色トナーを、用紙上に付着させた場合にはその用紙を視認できるように構成された樹脂粒子である。なお、クリアトナーは、有色トナーまたは用紙を視認できる程度の量であれば、色材を含んでいてもよい。クリアトナーは、たとえば、低分子量のポリエステル樹脂に二酸化ケイ素(SiO
2)や二酸化チタン(TiO
2)を外添することによって生成させても良い。
【0014】
画像形成ユニット120Cは、トナーカートリッジ121C、感光体ドラム122C、帯電器123C、露光器124C、現像装置125C、除電器126C、および清掃器127Cを備えている。
【0015】
トナーカートリッジ121Cは、C色のトナーを収容する。トナーカートリッジ121Cに収容されているトナーは、トナーカートリッジ121C内の搬送スクリューが駆動することによって所定の量だけ現像装置125Cに供給される。感光体ドラム122Cは、
図1において反時計周りに回転可能に設けられ、その表面には静電潜像またはC色のトナートナー像が形成される。帯電器123Cは、感光体ドラム122Cの表面を一様に帯電させる。露光器124Cは、帯電器123Cによって帯電された感光体ドラム122Cの表面に、光を照射して静電潜像を形成する。現像装置125Cは、露光器124Cによって感光体ドラム122Cの表面に形成された静電潜像に対してトナーカートリッジ121Cに収容されているC色のトナーを付着させることによって現像し、トナー像を形成する。
【0016】
除電器126Cは、中間転写ベルト143に画像が転写された後の感光体ドラム122Cの表面を除電する。清掃器127Cは、除電器126Cによって除電された感光体ドラム122Cの表面に残った転写残トナーを除去する。
【0017】
画像形成ユニット(120M,120Y,120K,120T)は、それぞれ、トナーカートリッジ(121M,121Y,121K,121T)、感光体ドラム(122M,122Y,122K,122T)、帯電器(123M,123Y,123K,123T)、露光器(124M,124Y,124K,124T)、現像装置(125M,125Y,125K,125T)、除電器(126M,126Y,126K,126T)、および清掃器(127M,127Y,127K,127T)を備えている。トナーカートリッジ(121M,121Y,121K,121T)は、それぞれM色,Y色,K色のトナー,クリアトナーを収容している。感光体ドラム(122M,122Y,122K,122T)、帯電器(123M,123Y,123K,123T)、露光器(124M,124Y,124K,124T)、現像装置(125M,125Y,125K,125T)、除電器(126M,126Y,126K,126T)、清掃器(127M,127Y,127K,127T)は、それぞれ感光体ドラム122C、帯電器123C、露光器124C、現像装置125C、除電器126C、清掃器127Cと同様の機能であるため、それらの説明を省略する。
【0018】
なお、以後、トナーカートリッジ(121C,121M,121Y,121K,121T)のうち任意の現像剤収容部を「トナーカートリッジ121」と表す。また、感光体ドラム(122C,122M,122Y,122K,122T)のうち任意の感光体ドラムを「感光体ドラム122」と表す。また、帯電器(123C,123M,123Y,123K,123T)のうち任意の帯電器を「帯電器123」と表す。また、露光器(124C,124M,124Y,124K,124T)のうち任意の露光器を「露光器124」と表す。また、現像装置(125C,125M,125Y,125K,125T)のうち任意の現像装置を「現像装置125」と表す。また、除電器(126C,126M,126Y,126K,126T)のうち任意の除電器を「除電器126」と表す。また、清掃器(127C,127M,127Y,127K,127T)のうち任意の清掃器を「清掃器127」と表す。
【0019】
〔給紙部〕
給紙部13は、給紙トレイ131、給紙ローラ132、給紙ベルト133、およびレジストローラ134を備えている。給紙トレイ131は、記録媒体の一例としての用紙を収容する。給紙ローラ132は、給紙トレイ131に収容された用紙を一枚ずつ取り出し、給紙ベルト133の方へ移動させるために回転するように設けられている。給紙ベルト133は、給紙ローラ132によって給紙された用紙を転写部14に搬送する。レジストローラ134は、給紙ベルト133によって搬送された用紙を、所定のタイミングで転写部14に送り出す。
【0020】
〔転写部〕
転写部14は、駆動ローラ141、従動ローラ142、中間転写ベルト143、一次転写ローラ(144C,144M,144Y,144K,144T)、二次転写ローラ145、二次対向ローラ146を備えている。以後、一次転写ローラ(144C,144M,144Y,144K,144T)のうち任意の一次転写ローラを「一次転写ローラ144」と表す。
【0021】
駆動ローラ141は、従動ローラ142とともに中間転写ベルト143を掛け渡すものである。駆動ローラ141が駆動し回転することによって、中間転写ベルト143は、感光体ドラム122に接しながら、
図1における時計回りに移動する。従動ローラ142は、駆動ローラ141が回転し、中間転写ベルト143が移動するとともに回転する。一次転写ローラ144は、中間転写ベルト143を挟んで、感光体ドラム122と対向して備えられている。
【0022】
一次転写ローラ144と、感光体ドラム122Cによって挟み込まれることで、中間転写ベルト143の表面には、感光体ドラム122に形成されたトナー像が転写(一次転写)される。像形成手段の一例としての二次転写ローラ145は、二次対向ローラ146との間に中間転写ベルト143とレジストローラ134から所定のタイミングで送り出された用紙とを挟みこんで回転する。これにより、用紙の表面には、中間転写ベルト143上に形成されたトナー像が転写(二次転写)される。
【0023】
〔定着部〕
定着部15は、定着手段の一例であって、定着用加熱ローラ151、保温用加熱ローラ152、搬送ベルト153、加圧ローラ154を有している。なお、定着とは、トナーに熱と圧力とを加えることによってトナーの樹脂成分を用紙に溶着させることである。トナー像に定着処理が行われることによって、用紙上のトナーの状態は安定したものとなる。
【0024】
定着用加熱ローラ151は、例えば、電熱ヒータにより構成されるヒータ151aを内部に有し、ヒータ151aの発した熱を、搬送ベルト153を介して用紙に伝達することでトナー像を加熱する。
【0025】
加圧ローラ154は、搬送ベルト153を挟んで、定着用加熱ローラ151に対向して設けられ、トナー像の転写された用紙を挟みこんで回転する。これにより、定着用加熱ローラ151及び加圧ローラ154によってトナー像に所定の熱と圧力とが加えられ、トナー像が用紙に定着する。
【0026】
保温手段の一例としての保温用加熱ローラ152は、例えば電熱ヒータにより構成されるヒータ152aを内部に有し、ヒータ152aの発した熱を、搬送ベルト153を介して用紙に伝達することで用紙に定着したトナー像を加熱する。これにより、トナー像は所定の温度範囲に保温される。
【0027】
搬送ベルト153は、定着用加熱ローラ151および保温用加熱ローラ152に掛け渡され、定着用加熱ローラ151の回転とともに加圧ローラ154に接しながら、
図1における反時計回りに移動するものである。
【0028】
〔排紙部〕
排紙部16は、定着部15でトナー像が定着された用紙を画像形成装置10から排出するものであり、排紙ベルト161、排紙ローラ162、および排紙口163を有している。排紙ベルト161は、定着部15によって定着処理された用紙を排紙口163に向けて搬送する。排紙ローラ162は、排紙ベルト161によって搬送された用紙を排紙口163から排出する。
【0029】
〔表示・操作ボタン〕
表示・操作ボタン17は、パネル表示部171および操作ボタン172を有している。パネル表示部171は、画像形成処理あるいは光沢発生処理の条件の設定値や選択画面等を表示するディスプレイとしての機能と、操作者からの入力を受け付けるタッチパネルとしての機能とを有する。操作ボタン172は、画像形成にかかる諸条件を受け付けるテンキー、複写開始指示を受け付けるスタートキー等を有する。
【0030】
(ハードウェア構成)
続いて、
図2を用いて画像形成装置10のハードウェア構成について説明する。
図2は、画像形成装置10のハードウェア構成図である。画像形成装置10は、
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)1011、メインメモリ(MEM-P)1012、ノースブリッジ(NB)1013、サウスブリッジ(SB)1014、AGP(Accelerated Graphics Port)バス1015、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)1016、ローカルメモリ(MEM-C)1017、HD(Hard Disk)1018、HDD(Hard Disk Drive)1019、ネットワークI/F102を有している。
【0031】
CPU1011は、メインメモリ1012に記憶されたプログラムに従って、データを加工・演算したり、画像読取部11、作像部12、給紙部13、転写部14、定着部15、排紙部16の動作を制御したりする。メインメモリ1012は、記憶領域であり、ROM(Read Only Memory)1012a、RAM(Random Access Memory)1012bを有している。ROM1012aは、画像形成装置10の各機能を実現させるプログラムやデータの格納用メモリである。ROM1012aに記憶されているプログラムは、例えば、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、FD、CD−R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体により提供される。
【0032】
RAM1012bは、プログラムやデータの展開、及びメモリ印刷時の描画用メモリなどとして用いられる。NB1013は、CPU1011と、MEM−P1012、SB1014、及びAGPバス1015とを接続するためのブリッジである。SB1014は、NB1013とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。AGPバス1015は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースである。
【0033】
ASIC1016は、画像データの処理などを行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)からなる。このASIC1016は、PCIバスを介してUSB(Universal Serial Bus)のインターフェースや、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers)のインターフェースに接続されている。
【0034】
MEM−C1017は、コピー用画像バッファ及び符号バッファとして用いるローカルメモリである。HD1018は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。HDD1019は、CPU1011の制御にしたがってHD1018に対するデータの読み出し又は書き込みを制御する。ネットワークI/F102は、通信ネットワークを介して情報処理装置等の外部機器と情報を送受信する。
【0035】
<搬送ベルト>
本実施形態では画像形成装置10から排出された用紙は、光沢発生装置20の挿入口20aへ搬送される。このために、
図1に示されるように、画像形成装置10の排紙口163から光沢発生装置20の挿入口20aにかけて搬送ベルト4が設置される。搬送ベルト4は画像形成装置10の排紙口163より排出された用紙を光沢発生装置20の方向へ搬送する。そして、光沢発生装置20の挿入口20aへ用紙の先端が到達すると、用紙は挿入口20aから光沢発生装置20に挿入される。
【0036】
<光沢発生装置の構成>
次に、
図1を用いて光沢発生装置20の構成を説明する。光沢発生装置20は、用紙に定着されたトナー像に熱を加えて溶融させ、溶融させたトナー像を表面が平滑なベルトに押し当てることによってトナー像の表面を平滑化し、画像に光沢を発生させる装置である。光沢発生装置20は、グロッサベルト201、ローラ202、ローラ203、ローラ204、加圧ローラ205、加熱ローラ206、冷却器207、排紙口208、および、排紙トレイ209を有している。
【0037】
グロッサベルト201は、ローラ202、ローラ203、ローラ204によって掛け渡され循環する無端状のベルトである。グロッサベルト201は、ローラ202、ローラ203、ローラ204の回転に伴い、加圧ローラ205と加熱ローラ206との間から冷却器207の順に用紙を搬送しながら移動する。また、グロッサベルト201の用紙と接する側の表面(所定の面)は、画像形成装置10の加圧ローラ154の用紙と接する側の表面と比較して平滑である。なお、本実施形態において平滑性は、JIS規格やISO規格等の表面粗さの評価に基づいて判断される。即ち、表面粗さが大きい場合には平滑性が低く、表面粗さが小さい場合には平滑性が高いとすることができる。一方、グロッサベルト201のローラ202、ローラ203、ローラ204と接する側の面(裏面)の摩擦係数は所定の値より大きいことが好ましい。グロッサベルト201を掛け渡しているローラ202、ローラ203、ローラ204との間に摩擦力が発生することによって、グロッサベルト201が滑ってしまうのを防ぐためである。
【0038】
加熱手段の一例としての加熱ローラ206は、ヒータ206aを内部に有し、グロッサベルト201を挟んで加圧ローラ205と対向するよう設置される。これにより、加熱ローラ206は、加圧ローラ205とグロッサベルトの間に用紙を挟み込み、用紙上のトナー像に熱を加えて、可塑化させる。加圧手段の一例としての加圧ローラ205は、グロッサベルト201との間に用紙とを挟み込み、用紙上のトナー像に圧力を加える。これにより可塑化したトナー像は、平滑なグロッサベルト201に押し当てられることによって、表面が平滑になる。
【0039】
冷却器207は、加熱ローラ206によって加熱されたトナー像を冷却する。これにより、トナー像はグロッサベルト201に押し当てられた状態でガラス転移点以下の温度に冷却され、表面の平滑性が保持されたまま硬化する。冷却器207は、ファンによる空冷方式、液体ジャケット、ラジエータおよびファンを用いる液冷方式、冷媒、ヒートポンプを用いるヒートポンプ方式のいずれのものでもよい。冷却器207で冷却された用紙はグロッサベルト201から分離して、排紙口208から排紙トレイ209に向けて排出される。
【0040】
続いて、
図3を用いて光沢発生装置20のハードウェア構成について説明する。
図3は、光沢発生装置20のハードウェア構成図である。光沢発生装置20は、
図3に示されるように光沢発生装置20全体の動作を制御するCPU211、光沢発生装置用プログラムを記憶したROM212、CPU211のワークエリアとして使用されるRAM213、各種データを記憶するHD(Hard Disk)214、CPU211の制御にしたがってHD214に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御するHDD(Hard Disk Drive)215、通信ネットワークを利用してデータ伝送をするためのネットワークI/F(Interface)216、および上記各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等のバスライン217を備えている。なお、ネットワークI/F216は、画像形成装置10と通信ネットワークを介してインライン接続されている。
【0041】
<情報処理装置>
本実施形態の画像形成システム1は、情報処理装置から通信ネットワークを介して画像データを受信し、受信した画像データに基づいて画像形成することもできる。この画像データの送信元としての情報処理装置のハードウェア構成について、
図4を用いて説明する。
図4は、情報処理装置のハードウェア構成図である。
【0042】
情報処理装置3は、情報処理装置3全体の動作を制御するCPU301、情報処理プログラムを記憶したROM302、CPU301のワークエリアとして使用されるRAM303、各種データを記憶するHD(Hard Disk)304、CPU301の制御にしたがってHD304に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御するHDD(Hard Disk Drive)305、フラッシュメモリ等の記憶メディア306に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御するメディアドライブ307、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、画像などの各種情報をディスプレイに表示させるためのディスプレイI/F(Interface)308、通信ネットワークを利用してデータ伝送をするためのネットワークI/F309、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えたキーボードを制御するためのキーボードI/F310、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行うマウスを制御するためのマウスI/F311、着脱可能な記憶媒体の一例としてのCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)312に対するデータの読み出し又は書き込みを制御するCD−ROMドライブ313、及び、上記各構成要素を
図4に示されているように電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等のバスライン314を備えている。
【0043】
なお、上記情報処理プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで、上記記憶メディア306やCD−ROM313等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録して流通させるようにしてもよい。
【0044】
<<本実施形態の機能構成>>
続いて、本実施形態における画像形成装置10、光沢発生装置20、情報処理装置3の機能構成について
図5乃至
図10を用いて説明する。
図5は、画像形成装置10の機能構成図である。
図6は、光沢発生装置20の機能構成図である。
図7は、グロッサベルト201の表面温度の変化を示す概念図である。
図8は、情報処理装置3の機能構成図である。
図9は、印刷する画像の一例を示す概念図である。
図10は、光沢領域情報を説明するための概念図である。
【0045】
<画像形成装置の機能構成>
本実施形態における画像形成装置10の機能構成について
図5を用いて説明する。画像形成装置10は、
図5に示されるように、送受信部181、入力受付部182、読取画像受付部183、網点面積率決定部184、及び、記憶・読出処理部189を有している。これら各部は、
図2に示されている構成要素のいずれかがROM1012aに記憶されているプログラムに従ったCPU1011からの命令によって動作することで実現される機能又は手段である。また、画像形成装置10は、
図2に示されているROM1012a、またはHD1018によって構築される記憶部1800を有している。
【0046】
送受信部181は、
図2に示されているネットワークI/F102によって実現され、通信ネットワークを介して情報処理装置3と画像情報等の各種情報を送受信する。画像情報とは、用紙等の記録媒体に形成させる画像を表す情報であり、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色を示す電気的な色分解画像信号を用いて示されたものである。また、送受信部181は通信ネットワークを介して光沢発生装置20と各種情報を送受信する。
【0047】
入力受付部182は、
図1に示されている表示・操作ボタン17からユーザによって入力された各種情報を受け付ける。読取画像受付部183は、画像読取部11が原稿に記録されている画像を光学的に読み取ることにより生成した画像情報を受け付ける。
【0048】
網点面積率決定部184は、入力受付部182によって受け付けられた各種情報、送受信部181によって受信された画像情報等に基づいて画素ごとの網点面積率を決定する。なお、網点面積率とは、用紙上の一画素をなす面積のうち各色のトナーによって網点が形成される面積の割合である。網点面積率決定部184は、網点面積率を決定する際に、画像情報に対して、色空間変換処理、下色除去処理、色補正処理、空間周波数補正処理、ガンマ補正、シェーディング補正、位置ズレ補正等の公知の画像処理を施しても良い。なお、下色除去処理とは、C色、M色、Y色の3種類のトナーに対応する各網点面積率を、C色、M色、Y色、およびK色の4種類のトナーに対応する網点面積率に変換することを意味する。下色除去処理により、C色、M色、Y色が重なることによって形成される黒色をK色のトナーを付着させることによって再現させることができるようになる。
【0049】
記憶・読出処理部189は、記憶部1800に対して各種情報を記憶したり、記憶部1800に記憶されている各種情報を読み出したりするものである。
【0050】
<光沢発生装置の機能構成>
次に、
図6を用いて光沢発生装置20の機能構成を説明する。
図6に示されるように、光沢発生装置20は、送受信部231、搬送制御部232、加熱制御部233および冷却制御部234を有している。送受信部231、搬送制御部232、加熱制御部233および冷却制御部234は、
図3に示されるROM212に記憶されているプログラムに従ったCPU211からの命令によって動作することで実現される機能又は手段である。
【0051】
送受信部231は、
図3に示されているネットワークI/F216によって実現され、通信ネットワークを介して各種情報を受け付ける。搬送制御部232はローラ202、ローラ203、ローラ204を制御して回転させることにより、グロッサベルト201を循環するように移動させ、グロッサベルト201の表面に接した用紙の搬送を制御する。
【0052】
加熱制御部233は、加熱ローラ206の内部に備えられているヒータ206aの出力を制御する。冷却制御部234は冷却器207の出力を制御する。
【0053】
ここで、加熱制御部233によるヒータ206aの出力の制御方法について説明する。光沢発生装置20の加熱ローラ206と冷却器207との間には、グロッサベルト201の表面の温度を計測する計測手段の一例としての非接触式の赤外線センサ206bが設けられている。加熱制御部233は、赤外線センサ206bによる測定温度と、予め設定された設定温度とに基づいて、ヒータ206aの出力を制御する。この場合、加熱制御部は、公知の制御方法を用いることが可能である。以下、制御方法の一例を示す。
比例(P:Proportional)制御:設定温度と測定温度との偏差に基づいて、出力のオン/オフを繰り返して制御する方法。
比例−積分(PI:Proportional Integral)制御:設定温度と測定温度との偏差を時間的に累積して、ある大きさになった時点で制御量を増やす方法。
比例−積分−微分(PID:Proportional Integral Differential)制御:PI制御に加えて、急激に発生する外乱に対して偏差を見て、その大小によって制御量を可変する方法。
なお、加熱制御部233は、P制御、PI制御、PID制御のいずれか一つを用いる必要はなく、例えば、P制御とD制御(急激に発生する外乱に対して偏差を見て、その大小によって制御量を可変する方法)とを組み合わせて使用することもできる。
【0054】
上記の制御を行うことにより、グロッサベルト201の表面温度は、ヒータ206aの電源投入後の室温から始まって、オーバーシュートを繰り返しながら設定温度に到達し、略一定温度に保たれる。光沢発生処理開始後に用紙がグロッサベルト201を通過すると、用紙によってグロッサベルト201の熱が奪われて、表面温度が一時的に低下する。その後、オーバーシュートを繰り返しながら設定温度に制御される。本実施形態では、適切な熱特性の印刷用のトナーを選択するために、印刷開始前に、光沢発生処理に伴うグロッサベルト201の表面温度のばらつき(最高値T
max、および、最定値T
min)を測定しておくことが好ましい。
【0055】
グロッサベルト201の表面温度のばらつきを測定するときの、実験条件の一例を以下に示す。
装置:
図1の光沢発生装置20(試作機)。なお、
図1において赤外線温度測定手段としての赤外線センサ206bはサーモパイルであり、これには株式会社キーエンス社製のFT−H10を用いた。これは応答性が10msと極めて高いものである。また実験的には赤外線を用いた非接触による温度測定の精度向上のため、赤外線の反射板を用いた。反射板は赤外線の反射率が高いドイツのアラノッド社製の「MIRO」を用いた。MIROは、アルミ基板上に増反射金属酸化物層を蒸着により形成したもので、5μmまでの赤外線領域でも87%以上の反射率を示す。
設定温度:165℃
実験室温度:25℃
用紙:王子製紙製PODグロスコート128g/m
2
温度測定箇所:グロッサベルト201の加熱中央部
【0056】
<情報処理装置の機能構成>
次に、情報処理装置3の機能構成を説明する。
図8に示されるように、情報処理装置3は、送信部321、操作入力受付部323、光沢領域情報生成部324、および画像情報記憶部3000を有している。送信部321、操作入力受付部323、および光沢領域情報生成部324は、
図4に示されているROM302に記憶されているプログラムに従ったCPU301からの命令によって動作することで実現される機能又は手段である。画像情報記憶部3000は、
図4に示されるHD304等により構築されている。
【0057】
送信部321は、
図4に示されているネットワークI/F309によって実現され、通信ネットワークを介して画像形成装置10に各種情報を送信するものである。操作入力受付部323は、
図4に示されているキーボードI/F310、マウスI/F311によって実現され、ユーザが操作入力する各種情報を受け付ける。例えば、
図9に示された画像332を印刷する場合に、操作入力受付部323は、キーボードI/F310、マウスI/F311によって入力された情報に基づいて、選択的に光沢を発生させる光沢領域332a、及び、非光沢領域332bの設定を受け付ける。なお、
図9の例では、写真画像の領域が光沢領域332aとして設定され、文字等の記された残りの部分が非光沢領域332bとして設定されている。
【0058】
光沢領域情報生成部324は、操作入力受付部323によって受け付けられた情報に基づいて、光沢発生装置20が光沢を発生させる光沢領域332a、および光沢発生装置20が光沢を発生させない非光沢領域332bを示す光沢領域情報を生成する。具体的には、光沢領域情報生成部324は、
図10に示されるように光沢画像内の光沢領域332aを構成する各部分x1に対して光沢領域であることを示す光沢フラグ「1」を対応付ける。また、光沢領域情報生成部324は、
図10に示されるように非光沢領域332bを構成する各部分x2に対して光沢フラグ「0」を対応付ける。このようにして、光沢領域情報生成部324は、画像内の各部分に光沢フラグ「0」または「1」が対応付けられている光沢領域情報を生成する。
【0059】
画像情報記憶部3000は、用紙に形成する画像を表す画像情報を記憶しているものである。
【0060】
<<本実施形態の処理・動作>>
続いて、
図11乃至
図15を用いて、本実施形態に係る画像形成および光沢発生にかかる処理を説明する。
図11は、温度と表面粗さの関係を示した模式図である。
図12は温度と光沢度との関係を示した模式図である。
図13は、画像形成装置が実行する処理を示した処理フロー図である。
図14は、光沢発生装置が実行する処理を示した処理フロー図である。
図15(A)は、トナー像が定着した用紙の縦断面図である。
図15(B)は、トナー像に光沢発生処理を施した用紙の縦断面図である。
【0061】
本実施形態では、画像形成装置10は、グロッサベルト201の接触面(所定の面)で加圧したときに平滑性が変化する温度が相対的に低い第1のトナー像と、平滑性が変化する温度が相対的に高い第2のトナー像とを有するトナー像を用紙上に形成する。まず、平滑性が変化する温度について説明する。
【0062】
<平滑性が変化する温度>
本実施形態において、平滑性が変化するとは、可塑化したトナー像の表層部を所定の面で加圧することにより、所定の面の形状に基づいてトナー像の平滑性が変化することを意味する。本実施形態において、平滑性が変化する温度とは、平滑性が変化するときのトナー像の温度、あるいは、これに相関する温度を意味する。相関する温度としては、トナー像の定着した用紙の温度、加熱ローラ205の表面温度、グロッサベルト201の表面温度などが挙げられる。
【0063】
第1のトナー像の平滑性が変化する温度が相対的に低いとは、第1のトナー像の表層部を構成する第1のトナーの平滑性が変化する温度が、第2のトナー像の表層部を構成する第2のトナーの平滑性が変化する温度よりも低いことを意味する。なお、第2のトナーの平滑性が変化する温度と、第1のトナーの平滑性が変化する温度との差が小さいと、グロッサベルト201の表面温度の変動(T
max〜T
min)により(
図7参照)、第1のトナーの平滑性を選択的に変化させることが困難になる場合がある。このため、第2のトナーの平滑性が変化する温度と、第1トナーの平滑性が変化する温度との差は、グロッサベルト201の表面温度の変動幅(T
max−T
min)よりも大きくすることが好ましい。なお、トナーの平滑性が変化する温度を変える方法としては、例えば、トナーを構成する樹脂の分子量を変えたり、添加剤を加えたりするなど、樹脂の可塑化する温度を変えるための公知の方法が用いられる。
【0064】
平滑性が変化する温度としては、特に制限されないが、例えば、温度を上昇させたときにトナー像の平滑性が変化し始める温度が挙げられる。平滑性が変化する温度は、特に限定されないが、トナー像の表面粗さの測定あるいは光沢度の測定に基づいて決定することができる。以下、表面粗さの測定および光沢度の測定について説明する。
【0065】
(表面粗さの測定)
入射角・反射角・入射光の波長・屈折率が決定されている条件下では、画像の光沢は画像表面の平滑性と相関があり、画像表面が平滑であるほど光沢度が高くなることが知られている(フレネルの法則)。このため、画像の表面粗さに基づいて画像の光沢を評価することが可能である。
【0066】
以下、温度を上昇させたときにトナー像の平滑性が変化し始める温度の一例として、表面粗さの変化し始める温度(平滑化開始温度)の測定方法について説明する。トナーの平滑化開始温度の測定は、画像形成システム1を用いて行う。測定するトナーを画像形成ユニット120にセットし、画像形成装置10で所定の評価画像を所定の評価用紙上に形成する。評価画像としては、特に限定されないが、ソリッド(べた)画像が好ましい。なお、ソリッド画像とは、二値化や多値化などの画像処理を行っていないベタ画像のことを指す。ソリッド画像の濃淡はトナー付着量にて可変でき、トナー現像プロセスにおける現像ポテンシャルにて変更できる。このようにして作られたソリッド画像はアナログハーフトーンとも呼ばれる。ソリッド画像は1次色、2次色、3次色でも良いし、中間調はアナログハーフトーン(付着量を少なくしたソリッド画像)でも良い。評価用紙としては、特に限定されないが、紙の凹凸が画像の表面性に大きく影響を与える場合には平滑化開始温度の判断困難となるため、表面の平滑性が高い用紙が好ましい。つまり、上質紙などの非塗工印刷用紙よりもアート紙やキャストコート紙などの塗工印刷用紙を用いることが好ましい。画像形成装置10の作像部12、給紙部13、転写部14、定着部15、および排紙部16の処理条件は、上記の点を除き、光沢発生処理条件の決定後に実際に印刷を行うときと同じ条件ととする。
【0067】
平滑化開始温度は、光沢発生装置20のヒータ206aの出力を変えて、画像形成システム1によって複数回トナー画像を形成し、それぞれの画像形成物の表面粗さを評価することにより決定される。加圧ローラ205と加熱ローラ206と挟み込まれる幅(ニップ幅)や、加圧ローラ205と加熱ローラ206とによって用紙に加える圧力(ニップ圧)や、用紙がニップ幅を通過する時間等の光沢発生装置20のその他の処理条件は、光沢発生処理条件の決定後に印刷を行うときと同じ条件とする。
【0068】
なお、光沢発生処理条件の決定後の印刷で、画像形成装置10による処理と光沢発生装置20による処理とを連続して行う場合には、平滑化開始温度の測定試験においても画像形成装置10による処理と光沢発生装置20による処理とを連続して行う。この場合、平滑化開始温度は、定着部15で溶融させたトナーを用紙の搬送時間経過後に加熱ローラ206で再加熱させたときの熱特性に基づくこととなる。
【0069】
平滑化開始温度を決定するために、画像形成後の画像の表面粗さを評価する方法について説明する。測定装置としては、市販の表面粗さの測定装置が用いられ、例えば東京精密製粗さ測定機surfcom(登録商標、以下同じ)ERS01Aやキーエンス製3次元形状測定顕微鏡VK−9500などが挙げられる。SurfcomERS01Aを用いて測定する場合、測定条件の一例としては、針先端径2μm、押し付け圧0.08g、測定長3mm、測定速度0.3mm/s、カットオフ0.8mmである。この条件にて測定対象物を測定プローブである金属針に接触させて表面形状を測定する。SurfcomERS01Aでの測定結果は1次元データとなるが、必要であれば同じ箇所を測定する方向を変えて複数回測定するか、測定箇所を変えて複数回測定しても良い。
【0070】
画像表面の形状は、グラフや3D画像で表しても良いし、JIS規格やISO規格に則って表しても良い。JIS規格やISO規格を用いる場合、例えば粗さ評価手順や粗さRパラメータ測定条件(JIS B0633(2001年),ISO 4288(1996年))や、触針と位相補償フィルタによる輪郭曲線(JIS B0601(2001年),ISO 4287(1997年))などが用いられる。これらの規格に則り、表面粗さはRa(算術平均粗さ)やRy(最大高さ粗さ)やRz(十点平均粗さ)などのパラメータで表される。
【0071】
続いて平滑化開始温度の決定方法について説明する。
図11に示されるように、トナーの温度と画像の表面粗さとの関係は2つの変曲点を有する曲線で表される。例えば、光沢発生装置20のヒータ206aがトナー像へ加える熱量を増加させていくと、トナーが可塑化しグロッサベルト201によって延展されてトナー像の平滑性が向上し始める温度に達する(第1の変曲点)。また、ヒータ206aがトナー像へ加える熱量をさらに増加させていくと、トナー像の平滑化の進行は鈍り始める温度に達する(第2の変曲点)。本実施形態において、平滑化開始温度は、2つの変曲点のうち低温側の変曲点(第1の変曲点)によって定義することができる。なお、平滑化開始温度の測定試験において、第1の変曲点は、温度と表面粗さの関係を示すデータを公知の方法に従って解析することにより決定される。第1の変曲点を決定する方法の一例としては、温度(ヒータ206aの設定温度であっても良い)と表面粗さの関係を示すデータを最小二乗法により曲線回帰して、積分計算して決定する方法が挙げられる。
【0072】
以下、測定条件の具体例を示す。
画像形成装置:リコー製imagioNeoC650
光沢発生装置:
図1の光沢発生装置20
光沢発生処理条件:ヒータ206aの設定温度を100℃から250℃まで10℃毎に
変えて処理を実行
評価用紙 :王子製紙製PODグロスコート128g/m
2
平滑性測定機:キーエンス製VK−9500
平滑性 :Ra(算術平均粗さ/JIS B 0601(2001年)/単位μm)
または、画像の最も粗い表面と最も平らな表面のRaの割合
平滑化開始温度の決定:ヒータ206aの設定温度(℃)に対する平滑性(Ra)の
測定結果を曲線回帰し積分計算により決定
【0073】
(光沢度の測定)
続いて、温度を上昇させたときにトナー像の平滑性が変化し始める温度の一例として、光沢度の変化し始める温度(光沢上昇開始温度)の測定方法について説明する。本実施形態において、光沢とは、表面の選択的な方向特性によって、物体の明るい反射がその表面に写り込んで見える見え方である。上記の通り、画像の光沢は画像表面の平滑性と相関があるため、平滑性が変化し始める温度の決定を、光沢度の測定に基づいて行うことが可能である。
【0074】
光沢上昇開始温度を決定する場合、上記の平滑化開始温度を決定する場合と同様にして、各温度条件にて用紙に光沢度測定用の評価画像を形成する。続いて、鏡面光沢度測定方法(JIS Z8741−1997)、75度鏡面光沢度の測定方法(JIS P8142:紙及び板紙)、あるいは、光沢の変化による評価(JIS P8142:顔料試験方法第5部分散性の評価方法第3節)等のJIS規格に則って評価画像の光沢度を測定する。
【0075】
以下、測定条件の具体例を示す。
評価用紙 :王子製紙製PODグロスコート128g/m
2
光沢計:GM−268(コニカミノルタ社製)
光沢度:60度光沢。なお、光沢度は、60度光沢そのものでも良いし、その画像の最も高い光沢と最も低い光沢の割合として表しても良い。
【0076】
図12に示されるように、トナーの温度と画像の光沢度との関係は2つの変曲点を有する曲線で表される。例えば、光沢発生装置20のヒータ206aがトナー像へ加える熱量を増加させていくと、トナーが可塑化しグロッサベルト201によって延展されてトナー像の光沢度が向上し始める温度に達する(第3の変曲点)。また、ヒータ206aがトナー像へ加える熱量をさらに増加させていくと、トナー像の光沢度の上昇は鈍り始める温度に達する(第4の変曲点)。本実施形態において、光沢上昇開始温度は、2つの変曲点のうち低温側の変曲点(第3の変曲点)によって定義することができる。なお、光沢上昇開始温度の測定試験において、第3の変曲点は、温度と光沢度との関係を示すデータを公知の方法に従って解析することにより決定される。第3の変曲点を決定する方法の一例としては、温度(ヒータ206aの設定温度であっても良い)と光沢度との関係を示すデータを最小二乗法により曲線回帰して、積分計算して決定する方法が挙げられる。
【0077】
なお、光沢計により光沢度を測定した場合、測定する範囲が小領域に限られる。一方、トナー画像には、短周期および長周期のうねりやエッジ部を有するなど、表面が均一でなく各小領域の形状が画像光沢に与える影響は大きくなる。このため、光沢度計で画像全体の光沢を評価するためには、表面粗さを測定する場合と比較して、測定数を多くすることが必要となる。
【0078】
<画像形成装置の処理>
上記の光沢の変化する温度の実験結果に基づいて印刷用のトナーを決定したら、画像形成装置10による画像形成処理を開始する。本実施形態では、光沢の変化する温度が相対的に低い第1のトナーとしてはクリアトナーが用いられ、光沢の変化する温度が相対的に高い第2のトナーとしては有色トナーが用いられる。
【0079】
〔画像情報受信処理〕
図13に示すように、画像形成装置10の送受信部181は、ネットワーク経由で情報処理装置3から送信された画像情報と、光沢領域情報とを受信する(ステップS21)。画像情報は、印刷する画像(
図9参照)が、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色を示す電気的な色分解画像信号によって示されたものである。また、光沢領域情報は、印刷する画像において光沢を発生させる光沢領域332aと光沢を発生させない非光沢領域332bとを示すものである(
図10参照)。
【0080】
〔網点面積率決定処理〕
送受信部181が、画像情報と、光沢領域情報とを受信すると、網点面積率決定部184は、受信された画像情報と、光沢領域情報とに基づいて、C色、M色、Y色、K色の有色トナー、およびクリアトナーによって形成される網点の網点面積率Rc、Rm、Ry、Rk、Rtを決定する(ステップS22)。
【0081】
この場合、網点面積率決定部184は、画像情報に含まれるR、G、Bの各色を示す電気的な色分解画像信号を、C色、M色、Y色、K色のトナーによって形成される網点の網点面積率Rc、Rm、Ry、Rkに変換する。また、網点面積率決定部184は、送受信部181によって受信された光沢領域情報に基づいてクリアトナーを付着させることによって形成する網点の網点面積率Rtを算出する。具体的には、網点面積率決定部184は、光沢領域332aに対応する各網点について、網点面積率Rc、Rm、Ry、Rk、Rtの総量が一定の値となるように、網点面積率Rtを決定する。
【0082】
〔給紙処理〕
有色トナーによって形成される網点の網点面積率Rc、Rm、Ry、Rk、およびクリアトナーの網点面積率Rtが決定されると、給紙部13が給紙処理を行う(ステップS23)。具体的には、給紙部13の給紙ローラ132が給紙トレイ131に収容されている用紙を1枚ずつ取り出し、給紙ベルト133に給紙する。給紙ベルト133は、移動することによって給紙された用紙を転写部14の方向へ搬送する。搬送された用紙がレジストローラ134まで到達すると、中間転写ベルト143に形成されたトナー像が転写部14に到達するまでレジストローラ134が用紙を挟み込んで待機させる。そして、中間転写ベルト143に形成されたトナー像に達するタイミングで、レジストローラ134は二次転写ローラ145と二次対向ローラ146の間に用紙を送り込む。
【0083】
〔作像処理〕
一方、作像部12の各画像形成ユニット120は、網点面積率決定部184によって決定された網点面積率Rc、Rm、Ry、Rk、およびクリアトナーの網点面積率Rtに基づいて、感光体ドラム122に各トナーを付着させることによって画像を形成する作像処理を行う(ステップS24)。
【0084】
具体的には、まず、帯電器123が、回転する各感光体ドラム122の表面を一様に帯電させる。そして、各露光器124が、各帯電器123によって帯電された各感光体ドラム122の表面に、画素ごとに網点面積率決定部184によって決定された各網点面積率(Rc,Rm,Ry,Rk,Rt)に基づいてレーザ光を照射する。これによって、感光体ドラム122の表面には各網点面積率の画素で構成される画像の静電潜像が形成される。
【0085】
各感光体ドラム122の表面に静電潜像が形成されると、各現像装置125は各トナーカートリッジ121に収容されているトナーを用いて各帯電器123および各露光器124によって形成された静電潜像を現像する。このようにしてC色・M色・Y色・K色・T色のトナー像が作像される。
【0086】
〔転写処理〕
各感光体ドラム122の表面に各色のトナー像が作像されると、転写部14が転写処理を行う(ステップS25)。具体的には、まず、一次転写ローラ144が中間転写ベルト143に、感光体ドラム122の表面に帯電されている静電荷とは逆の電荷(一次転写バイアス)をかける。すると、中間転写ベルト143に各感光体ドラム122の表面のトナー像が転写される(一次転写)。これにより、中間転写ベルト143には、クリアトナー、C色、M色、Y色、K色の有色トナーの順にトナーが転写されることになる(
図1参照)。
【0087】
トナー像が転写された中間転写ベルト143は、駆動ローラ141の回転に伴い、二次転写ローラ145の方向へ移動する。中間転写ベルト143のトナー像が転写された部分が二次転写ローラ145に到達するタイミングで、レジストローラ134が待機させている用紙を送り出す。レジストローラ134によって用紙が送り出されると、二次転写ローラ145が、二次対向ローラとの間で用紙と中間転写ベルト143を挟み込み、中間転写ベルト143の表面に帯電されている静電荷とは逆の電荷(二次転写バイアス)をかける。すると、中間転写ベルト143の表面に形成されているトナー像が用紙に転写される(二次転写)。
【0088】
これにより、用紙の光沢領域332aには表層部がクリアトナーによって構成されるトナー像が形成され、非光沢領域332aには表層部がC色、M色、Y色、K色のいずれかの有色トナーによって構成されるトナー像が形成される。本実施形態では、用紙に形成されたトナー像のうち、表層部がクリアトナーによって構成されるトナー像を、第1のトナー像といい、表層部が有色トナーによって構成されるトナー像を、第2のトナー像という。すなわち、2次転写ローラ145の転写によって、第1のトナー像と、第2のトナー像とが用紙上に転写されて、形成されることとなる(像形成工程)。この場合、表層部がクリアトナーによって構成される第1のトナー像は、表層部が有色トナーによって構成される第2のトナー像よりも、平滑性が変化する温度が高くなる。
【0089】
〔定着処理〕
トナー像が転写された用紙が搬送されて定着部15に到達すると、定着用加熱ローラ151と加圧ローラ154とが搬送ベルト153上の用紙を挟み込み、トナー像を用紙に定着させる(ステップS26)。このとき、用紙に転写されたトナー像は、定着用加熱ローラ151のヒータ151aによって、所定の定着温度に加熱されて、溶融する。さらに、溶融したトナー像は、定着用加熱ローラ151と加圧ローラ154との間で加圧されることによりトナーの樹脂成分が用紙に溶着する。このように定着処理を行うことで、転写後、不安定であった用紙上のトナーが安定することになる。
【0090】
トナー像が定着した用紙の状態を
図15(A)を用いて説明する。
図15(A)に示された用紙Sには、有色トナー301上にクリアトナー302の表層部が形成された第1のトナー像I1と、表層部が有色トナー301によって構成される第2のトナー像I2と、が定着している。第1のトナー像I1の表面、第2のトナー像I2の表面は、加圧ローラ154の表面の形状に基づいて共に凹凸形状を有している。
【0091】
定着処理が施された用紙は、搬送ベルト153によって搬送される。この搬送経路上には、保温用加熱ローラ152が設置されている。光沢発生装置20に搬送されるまでの間、用紙は、保温用加熱ローラ152内部のヒータ152aによって所定の温度範囲に保温される。所定の温度範囲としては、クリアトナーの平滑性が変化する温度以上であって有色トナーの平滑性が変化する温度未満とすることができる。これにより、有色トナーによって形成された第2のトナー像の表面P5の平滑化を防ぎながら、用紙の局所的な冷却を抑制できるので、光沢発生装置20の加熱ローラ206がトナー像の全体を正確に再加熱することが可能となる。
【0092】
〔排紙処理〕
トナーが用紙に定着すると、排紙部16が排紙処理を行う(ステップS27)。具体的には、排紙部16の排紙ベルト161が用紙を排紙口163の方向に搬送し、搬送された用紙は排紙口163から排出される。ステップS27で、画像形成装置10の排紙口163から排出された用紙は搬送ベルト4によって光沢発生装置20の方向へ搬送される。そして、光沢発生装置20の挿入口20aに搬送された用紙の先端が到達すると、用紙は挿入口20aから光沢発生装置20に挿入される。
【0093】
<光沢発生装置の処理>
〔光沢発生処理〕
用紙が光沢発生装置20に挿入されると、光沢発生装置20が、用紙に定着されたトナー像のうち、第1のトナー像に対して選択的に光沢を発生させる処理を行う。この光沢発生処理の詳細について
図14を用いて説明する。
【0094】
光沢発生装置20に挿入された用紙はグロッサベルト201によって搬送される。搬送された用紙の先端が加圧ローラ205および加熱ローラ206の位置に到達すると、加圧ローラ205および加熱ローラ206が、グロッサベルト201を介して用紙を挟みこんで加熱しながら加圧する。挟みこまれた用紙は、加熱ローラ206のヒータ206aによって、第1のトナー像の平滑性が変化する温度以上であって、第2のトナー像の平滑性が変化する温度より低い温度にトナー像を加熱される(加熱工程)(ステップS31)。これにより、第1のトナー像の表層部を構成するクリアトナーは可塑化する。一方、第2のトナー像の表層部を構成する有色トナーは可塑化しない。
【0095】
また、加圧ローラ205および加熱ローラ206によって挟み込まれた用紙は、グロッサベルト201の平滑な接触面で加圧される(加圧工程)(ステップS32)。これにより、第1のトナー像のクリアトナーによって構成された表層部は平滑化して、第1のトナー像に光沢が発生する。一方、第2のトナー像の有色トナーによって構成された表層部は平滑化せず、光沢は変化しない。これにより、第1のトナー像の光沢を選択的に変化させることができる。
【0096】
加熱・加圧された用紙はグロッサベルト201によって搬送され、冷却器207によって冷却される(ステップS33)。これによって、用紙の表面で溶融していたクリアトナーは硬化して、平滑化されたトナー表面が安定して保持される。冷却器207によって冷却された用紙は光沢発生装置20の外へ排出される(ステップS34)。
【0097】
光沢発生処理後の用紙の状態を
図15(B)を用いて説明する。光沢発生処理後の用紙にSおいて、クリアトナー302によって構成される第1のトナー像I1の表面には、グロッサベルト201の表面の形状に基づいて、平滑な面が形成さている。この場合、グロッサベルト201の表面を鏡面仕上げにすることで、第1のトナー像I1の表面を写真光沢(Gs(60°)80℃以上)とすることができる。一方、光沢発生処理後の用紙Sにおいて、有色トナー301によって構成される第2のトナー像I2の表面には、平滑な面は形成されない。第2のトナー像I2の表面における光沢度は、画像形成装置10の加圧ローラ154の表面形状に基づいて、一般的にGS(60°)70℃が上限となる。このように、クリアトナーによって形成されたトナー像I1の表面が選択的に平滑化されることで光沢度の差の大きな画像が得られる。
【0098】
<<実施形態の補足>>
上記本実施形態において、画像形成システム1は画像形成装置10と光沢発生装置20とを備えた構成としたが、必ずしもこのような態様に限定されない。画像形成システム1は、画像形成装置10の上記の各機能および光沢発生装置20の上記の各機能を実現するための各手段を同一の筐体内に有していても良い。
【0099】
上記実施形態において、画像形成装置10はクリアトナーと有色トナーとを用いて画像を形成したが、必ずしもこのような態様に限定されない。画像形成装置10は、例えば、平滑化開始温度の相対的に低いトナー(C,M,Y)と、平滑化開始温度の相対的に高いトナーKとを用いて画像を形成しても良い。この場合、画像形成システム1によってトナーの種類を変えた以外は上記と同様の処理を行うことで、トナー(C,M,Y)で形成されたフルカラー画像の光沢度を、トナーKで形成されたモノクロ画像の光沢度より高くすることができる。
【0100】
上記実施形態において画像形成装置10の加圧ローラ154のトナー像と接する表面の平滑性は、グロッサベルト201のトナー像と接する表面の平滑性よりも低いものであったが、必ずしもこのような態様に限定されない。画像形成装置10の加圧ローラ154のトナー像と接する表面の平滑性を、グロッサベルト201のトナー像と接する表面の平滑性より高くしても良い。この場合、表面の平滑性を変更した以外は上記と同様の処理を行うことで、有色トナーによって形成されたトナー像の表面の光沢度をクリアトナーによって形成されたトナー像の表面の光沢度より高くすることができる。
【0101】
<<実施形態の主な効果>>
以上説明したように本実施形態によれば、画像形成装置10は、平滑化開始温度が相対的に低いクリアトナーの表層部と、平滑化開始温度が相対的に高い有色トナーの表層部とを有するトナー像を用紙上に形成して定着させる。さらに、光沢発生装置20は、定着させたトナー像を、クリアトナーの平滑性が変化する温度以上であって、有色トナーの平滑性が変化する温度より低い温度に加熱し、グロッサベルト201で加圧する。これにより、クリアトナーからなる表層部がグロッサベルト201の表面の形状(粗さ)に基づいて平滑になるので、光沢度の差の大きい画像が得られるという効果を奏する。
【0102】
また、本実施形態によれば、画像形成装置10は、有色トナーからなる有色トナー像上の一部にクリアトナーからなるクリアトナー像を形成する。これにより、有色トナーにより形成される画像について部分的に光沢度の異なる画像が得られるという効果を奏する。
【0103】
また、本実施形態によれば、画像形成装置10の加圧ローラ154のトナー像と接する表面の平滑性が、グロッサベルト201のトナー像と接する表面の平滑性よりも低い。これにより、光沢発生処理によって、クリアトナーからなる表層部を有するトナー像の光沢度を有色トナーからなる表層部を有するトナー像の光沢度より高くすることができるという効果を奏する。
【0104】
また、本実施形態によれば、画像形成装置10の定着用加熱ローラ151と光沢発生装置20の加熱ローラ206との間の搬送経路上に、トナー像を定着させた用紙を加熱する保温用加熱ローラ152が設置されている。これにより、有色トナーによって形成されたトナー像の表面P5の平滑化を防ぎながら、用紙の局所的な冷却を抑制できるので、光沢発生装置20の加熱ローラ206がトナー像の全体を所定の温度範囲に正確に再加熱することが可能となる。