特許第6036219号(P6036219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036219
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】シート処理装置および画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 45/16 20060101AFI20161121BHJP
   B65H 37/06 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B65H45/16
   B65H37/06
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-258980(P2012-258980)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-105063(P2014-105063A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】國枝 晶
(72)【発明者】
【氏名】古橋 朋裕
(72)【発明者】
【氏名】永迫 秀也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 道貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 和也
(72)【発明者】
【氏名】中田 亨育
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 賢裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 貴一郎
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−284742(JP,A)
【文献】 特開2011−057363(JP,A)
【文献】 特開昭60−236954(JP,A)
【文献】 特開2006−282326(JP,A)
【文献】 特開2009−35370(JP,A)
【文献】 特開2012−171695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/00−7/20
B65H 29/70
B65H 37/00−37/06
B65H 43/00−43/08
B65H 45/00−45/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送するために対をなし、正方向または逆方向に回転する部材を備えた第1の搬送部材と、
前記第1の搬送部材の正方向への回転時におけるシート搬送方向下流側に位置し、前記第1の搬送部材によって搬送されるシートを受け取り、搬送するために対をなし、前記第1の搬送部材の正方向への回転と同方向である正方向、または、前記第1の搬送部材の逆方向への回転と同方向である逆方向に回転する部材を備えた第2の搬送部材と、
前記第2の搬送部材と対峙してシートを挟持可能であり、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材によってシートを保持した状態から、前記第2の搬送部材を逆方向に回転させてシートを折る第3の搬送部材と、
前記第1の搬送部材の正方向への回転時のシート搬送方向上流側に配置され、シートの端部を検知する第1の検知手段と、
前記第2の搬送部材の正方向への回転時のシート搬送方向下流側に配置され、シートの端部を検知する第2の検知手段と、
前記第1の検知手段及び前記第2の検知手段によってシートが検知されたタイミングと、前記第1の検知手段と前記第2の検知手段の配置間距離から、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材に保持されたシートの撓み量を算出する算出手段と、
を備えたシート処理装置において、
前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材にシートが保持された状態で、前記算出されたシートの撓み量から前記第1の搬送部材の逆方向への搬送量を設定することを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
前記第1の搬送部材は、当該第1の搬送部材の正方向への回転時のシート搬送方向上流側に配置された装置から排出されるシートを搬送する部材であることを特徴とする請求項1記載のシート処理装置。
【請求項3】
前記第1の搬送部材は、逆方向に回転することにより、前記第2の搬送部材に挟持された状態で停止している該シートの撓みを除去することを特徴とする請求項1または2に記載のシート処理装置。
【請求項4】
前記算出手段が前記シートの撓み量を算出した時点で前記第1の搬送部材による該シートの搬送速度を該シートの搬送時の速度に対して変速する制御部を有することを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか一つに記載のシート処理装置。
【請求項5】
前記第2の搬送部材と前記第3の搬送部材とが対峙してシートを挟持する位置から、当該第2の搬送部材の逆方向への回転時におけるシート搬送方向下流側に連続する搬送路が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか一つに記載のシート処理装置。
【請求項6】
前記第1,第2の搬送部材の搬送停止により前記シートが挟持された状態から、前記第2の搬送部材が逆方向に回転されることにより、当該第2の搬送部材が前記第3の搬送部材と共に前記シートの折り加工を施すことを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか一つに記載のシート処理装置。
【請求項7】
前記第2の搬送部材は、前記シートを、正方向への回転時におけるシート搬送方向下流側に位置する後段装置へ搬送可能な部材であり、
前記第2の検知手段は、前記第2の搬送部材による該後段装置への前記シート搬送時に、該後段装置の動作開始時期を設定する部材として用いられることを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか一つに記載のシート処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一つに記載のシート処理装置と、
前記シート処理装置よりも、前記第1の搬送部材の正方向への回転時のシート搬送方向上流側に配置された画像形成装置と、
前記シート処理装置よりも、前記第2の搬送部材の正方向への回転時のシート搬送方向下流側に配置された後処理装置と、を有することを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート処理装置および画像形成システムに関し、さらに詳しくは、画像形成後の用紙等のシートを対象とした綴じ処理機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタあるいは印刷機などの画像形成装置によりプリントアウトされた用紙等のシートは、画像形成装置から排出される場合の他に、所定枚数のシートを纏めた状態で一部をステープラによる綴じ処理等の後処理を施される場合がある。このための装置として、画像形成装置の排出部に連設されたシート処理装置が用いられる。
【0003】
シート処理装置では、排出されたシートの排出方向先端隅部や片側を対象とした綴じ処理や用紙の中央を綴じる中綴じ処理だけでなく、中綴じされたシートの中綴じ部分から二つ折りして製本する折り加工処理を行う場合がある。
【0004】
折り加工を行う構成としては、折り加工の対象となるシートを搬送する搬送ローラとシート先端を衝止する堰き止め部材とを備えた構成が知られている(例えば、特許文献1)。
この構成では、堰き止め部材に先端が突き当たった状態で継続してシートが搬送される際に生じる座屈変形部を搬送ローラによって挟持搬送する際に折り畳む工程を繰り返すようになっている
【0005】
一方、折り加工を施す前の処理として、折り目を付ける工程を実行する場合がある。
折り目付け加工に用いられる構成の一つに、用紙の搬送路を挟んで凸状の歯付き部材とこれに対向する台座とを配置した構成が提案されている(例えば、特許文献2)。
この構成では、凸状の歯付き部材が台座に向けて移動することによりシートの折り目が付けられる。
【0006】
ところで、折り目を付ける場合には、その折り目加工位置が適正でないとシート毎の折り目付け位置にずれが生じる虞がある。折り目付けの位置がずれていると、二つ折りなどの折り加工を施す際にシート同士の折り位置がずれていることで折り目付けの効果が充分に得られない。また、ずれている折り目付けの位置をシート同士で合わせた場合には、折り加工後のシート端部がシート同士で揃わないという問題がある。
そこで、特許文献2に開示された構成では、折り加工部に至る前にシート搬送方向下流側に位置するシート先端側を挟持した状態でシートの搬送を停止し、シートの搬送方向上流側の搬送ローラを逆転させてシートに張力を与え、撓みをなくす構成が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示されている構成では、シートに生じる撓み量に応じた張力を与えることができないことが理由となって、次のような不具合がある。
つまり、シートは搬送方向下流側に位置するローラ対に先端が衝止されるときに撓みを生じる。このため、シートの搬送方向下流側が検知されるまでの間、搬送される際にはローラ対の挟持位置手前に撓みが生じたままとなる。この撓み量は、用紙先端の捲れ状態(カールの大きさ)や曲げ剛性によって大きく異なる。
【0008】
従って、シートに張力を生じさせるために搬送ローラを逆転した場合でも実際の撓み量とかけ離れた逆転量であると撓みが解消されないままとなることや、搬送ローラのスリップ量が増加することによる耐久性の悪化などが生じる。
【0009】
撓み量に関しては、スキュー補正を行うか行わないかのいずれかにおいても大きく異なる。 つまり、スキュー補正が行われない場合と違ってローラ対に衝止された状態で搬送方向上流側での搬送が継続されるスキュー補正時には、撓み量が多くなる。このため、撓み量に応じた矯正が正常に行われないと、折り目付けの位置が正確に割り出せなくなる虞がある。
【0010】
本発明の目的は、折り目付けの位置決めを行う際の問題に鑑み、簡単な構成により撓み量の違いに拘わらず、シートの折り目付け位置をシート同士で整合させることが可能な構成を備えたシート処理装置および画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明は、シートを搬送するために対をなし、正方向または逆方向に回転する部材を備えた第1の搬送部材と、前記第1の搬送部材の正方向への回転時におけるシート搬送方向下流側に位置し、前記第1の搬送部材によって搬送されるシートを受け取り、搬送するために対をなし、前記第1の搬送部材の正方向への回転と同方向である正方向、または、前記第1の搬送部材の逆方向への回転と同方向である逆方向に回転する部材を備えた第2の搬送部材と、前記第2の搬送部材と対峙してシートを挟持可能であり、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材によってシートを保持した状態から、前記第2の搬送部材を逆方向に回転させてシートを折る第3の搬送部材と、前記第1の搬送部材の正方向への回転時のシート搬送方向上流側に配置され、シートの端部を検知する第1の検知手段と、前記第2の搬送部材の正方向への回転時のシート搬送方向下流側に配置され、シートの端部を検知する第2の検知手段と、前記第1の検知手段及び前記第2の検知手段によってシートが検知されたタイミングと、前記第1の検知手段と前記第2の検知手段の配置間距離から、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材に保持されたシートの撓み量を算出する算出手段と、を備えたシート処理装置において、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材にシートが保持された状態で、前記算出されたシートの撓み量から前記第1の搬送部材の逆方向への搬送量を設定することを特徴とするシート処理装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1,第2のシート検知手段の配置位置を通過する基準タイミングと実際の通過タイミングとを対比することによりシートのたわみ量を割り出した結果に応じて第1の搬送手段の逆方向移動によりシートの撓みを解消できる。
特に、シートに生じている実際の撓み量に基づく制御ができるので、用紙先端の捲れ状態(カールの大きさ)や曲げ剛性に拘わらず、簡単な構成により折り目付け位置を正確に整合させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るシート処理装置の一例を用いる画像形成システムを説明するための模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るシート処理装置の一例についての構成を説明する模式図である。
図3図2に示したシート処理装置に用いられる制御部の構成を説明するためのブロック図である。
図4図2に示したシートを処理装置においてシートが第1の搬送手段により搬送される状態を示す模式図である。
図5図4に示した状態でのシート処理装置においてシートに撓みが生じる初期段階を説明するための模式図である。
図6図5に示したシートに撓みが生じた状態で第1,第2の搬送手段によりシートが搬送される状態を示す模式図である。
図7図6に示した状態でのシートが第2のシート検知手段により検知された時点の状態を示す模式図である。
図8図7に示した状態のシートにおける撓みが解消された状態を示す模式図である。
図9図3に示した制御部での作用を説明するためのフローチャートである。
図10図2に示したシート処理装置においてスキュー補正が実行される際のシートの状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す実施例により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るシート処理装置の一例を用いる画像形成システムを説明するための模式図である。
図1において、画像形成システム100は、後で説明する折り目付け位置を有するシート処理装置1に対するシート搬送方向上流側の前段装置として画像形成装置101が接続され、シート搬送方向下流側の後段装置として後処理装置102が接続されている。
【0015】
画像形成装置101は、一例として電子写真方式を用いる装置であり、後処理装置102は、折り目付けされたシート束の折り加工あるいは折り加工後のシート束を綴じるステープル装置である。なお、本実施形態では、後で説明するが、シート処理装置において折り加工が実行できる構成を備えているので、後段装置としては、後処理装置の一つであるステープル装置が該当している。
【0016】
図1(A)は、画像形成装置101のシート排出位置にシート処理装置1を接続した例を示している。そして、図1(B)は、画像形成装置101の内部におけるシート排出位置にシート処理装置1を組み込み、シート処理装置1のシート排出部に後処理装置102を接続した例を示している。
【0017】
図2は、本実施形態に係るシート処理装置1の要部を示す図である。
同図においてシート処理装置1は、複数のシート同士の折り目付けを行う装置として用いられる。
シート処理装置1は、後段装置102として用いられるステープラ装置に向けた画像形成装置101から延長された搬送路に配置されている。これにより、折り目付け処理のための専用搬送路を特別に設ける必要がない。この結果、画像形成処理システムに含まれる折り目付け搬送路が占めるスペースが大きくなるのを防止できるようになっている。
【0018】
シート処理装置1は、符号Pで示す折り目付け位置を境にして矢印で示すシートSの搬送方向上流側に位置してシートを搬送可能な第1の搬送部材2を備えている。またシート処理装置1には、シートSの搬送方向下流側にシートの搬送および挟持が可能な第2の搬送部材3が備えられている。
第1,第2の搬送部材2,3は、一対の部材、この場合にはローラが用いられている。各ローラは、シートSの搬送路を挟んで対向する位置に配置されている各ローラのうちの一方2A,3Aは、駆動モータM1,M2によって正逆方向(正逆回転)に駆動される。
搬送部材対2,3は、各ローラのうちの他方のローラ2B,3Bに配置されている弾性体4によってローラ同士がシートの保持および搬送が可能である。
【0019】
シート処理装置1では、折り目付け作業を行わないままシートSを排出する場合には、上述した第1の搬送部材2および第2の搬送部材3を用いてシートSが搬送される。
一方、折り加工のための折り目付け作業を行う場合には、第3の搬送部材が用いられる。
第3の搬送部材5は、第2の搬送部材3に連動可能である。具体的には、第2の搬送部材対に備えられた一方のローラ3Aと対峙してシートSを挟持可能なローラが用いられている。
【0020】
第3の搬送部材5を用いた折り目付け加工は、第1,第2の搬送部材2,3により保持されているシートSの搬送路停止しているシートSの一部を第2の搬送部材3の一方のローラ3Aに連動可能な第3の搬送部材5が対峙する搬送路内に押し込むことで実行される。
つまり、第1,第2の搬送部材2,3により保持されているシートSの搬送路内で、搬送方向下流側を保持されているシートは、第2の搬送部材が逆方向に回転れたときに、その一部第3の搬送手段5と対峙する位置に向け導入さる。
これにより、図2において二点鎖線で示すように、シートSの一部は、撓み変形して第2の搬送部材3のローラの一方3Aと第3の搬送手段5とが対峙する折り目付け用搬送路(図2において符号Pで示す位置)内に折り畳まれた部分が導入されて折り目が付けられる。
本実施形態では、折り目付け用搬送路Pにおいて対峙する第2の搬送部材対2および第3の搬送手段5が折り加工手段を構成する部材として用いられている。
【0021】
第2の搬送部材3のローラの一方3Aには、第3の搬送手段5とは別に排出ローラ6が対峙しており、折り目付け加工を施されるために折り目付け用搬送路P内に導入されたシートSを排出することができる。
折り目付け用搬送路内に導入されたシートSは、上述した排出ローラ6に加えて、排出補助ローラ対7が用いられて引き込みおよび排出される。
【0022】
一方、第1,第2の搬送部材2,3が配置されているシートSの搬送路には、シートの搬送方向上流側および下流側にそれぞれシートSの通過タイミングを検知可能な第1,第2のシート検知手段SN1、SN2が配置されている。
第1のシート検知手段SN1は、第1の搬送手段2よりも搬送方向上流側に位置し、第2のシート検知手段SN2は、第2の搬送部材3よりも搬送方向下流側に位置している。
【0023】
第1,第2のシート検出手段S1,S2は、図3に示す制御部200の入力側に接続されている。
制御部200は、シートの搬送制御を実行する部分であり、本実施形態では、搬送過程において生じるシートSの撓み除去およびスキュー補正を制御対象に含めている。特に制御部200は、第1の搬送部材2の正逆方向移動および第2の搬送部材の搬送停止タイミングをそれぞれ決めることが可能な部材である。
【0024】
制御部200は、入力側にシート検出手段SN1,SN2が接続される一方、出力側には、第1、第2の搬送部材2,3の駆動モータM1、M2が接続されている。なお、制御部200には、前段装置に相当する画像形成装置101からのシート排出信号が入力されるようになっている。これは、シート処理装置1の起動タイミングを決めるための信号として用いられる。
制御部200では、折り加工手段での折り目付の際に第2の搬送部材3を逆方向に移動させる指令を行うと共に、シートSに生じている撓み量を算出し、その撓み量に対応する第1の搬送部材2での逆方向の移動量決定して撓みを解消する処理が行われる。
具体的には、第1,第2のシート検知タイミングこれら第1,第2のシート検知手段SN1,SN2の配置位置間の距離を対象とした基準タイミングと対比し、基準タイミングに対する実際の検知タイミングとの差から撓み量を割り出す。
【0025】
図4乃至図8は、スキュー補正を行わない場合でのシートSに撓みが生じる過程を説明するための図である。なお、各図においてシートSの搬送速度は変化しないものとする。
図4において、シートSが第1の搬送手段2により挟持搬送されると、図5に示すように、シートSの移動方向先端が第2の搬送部材3に達した際に、先端の捲れ状態や曲げ剛性によって先端が撓む場合がある。
搬送路の空間が狭ければシートSの撓みを生じさせないことも可能であるが、摺動抵抗の増加などにより搬送性の悪化を防ぐにはある程度の空間広さが必要となる。また本実施形態では、第1,第2の搬送部材2,3の間に連続する搬送路は、折り目付け作業時にシートの搬送方向が切り換えられる際の移動抵抗を軽減させる意味で搬送路の空間が広くされているために、シートSに撓み変形が生じやすくなっている。
【0026】
撓みが生じたシートSは、図6に示すように、先端が第2の搬送手段3に挟持されて搬送される過程でも撓みが生じたまま搬送される。
シートSの移動方向後端が第1のシート検知手段SN1により検知されると、図7に示すように、シートSの搬送が停止される。
このように撓みが生じていると、その撓み量がシートの捲れ状態や曲げ剛性によって異なることから、図7に示した状態において第2の搬送部材3を逆転して折り目付を行うと、折り目付け位置が撓み量の違いによってシート同士で一致しない場合が生じる。
【0027】
本実施形態では、異なる撓み量に関係なく撓みを解消できる制御が実行される。
以下に制御内容について説明する。
第1,第2のシート検出手段SN1、SN2の配置位置間の距離をL1(mm)とし、この距離を等速(V1)で移動する場合の通過時間をT1(s)とする。
第1,第2のシート検出手段での検知タイミング(T1,T2)からシートSの実移動距離L2(mm)は、次の式で求められる。
L2=(T2−T1)×V1
シートSに撓みが生じていない場合には、基準となる距離L1と実移動距離L2とは同じとなるが、撓みが生じていると、L1<L2の関係となる。
【0028】
制御部200では、実移動距離L2と基準となる距離L1との差が撓み量(L3(mm))として算出され、その撓み量に応じた回転量を第1の搬送手段2に対して搬送方向と逆方向への移動量、つまり逆方向への移動(搬送量)決める。
これにより、第1の搬送手段2が逆転すると、図8に示すように、シートSが第2の搬送手段3により挟持された状態で第1の搬送手段2により搬送方向と逆方向に牽引されて転調し、撓みが除去されることになる。
【0029】
本実施形態は以上のような構成であるので、図9に示すフローチャートにより制御部200の作用を説明すると次の通りである。なお、図9においては、第1,第2のシート検出手段SN1,SN2をセンサと表現している。
画像形成装置101からのシート排出が行われると、第1のシート検出手段SN1は検知待機状態からシートの検知があったかどうかを判別できる状態とされる(ST1)。
第1のシート検知手段SN1によりシートSの通過が検知されるとその検知タイミングが制御部200にて記録される(ST2)。
シート検出手段SN1によるシート通過が検出されると、制御部200は、第1,第2の搬送部材2,3の駆動を開始する(ST3)。
【0030】
第1の搬送部材2によりシートSが搬送されると、第2のシート検出手段SN2は、検知待機状態からシートの検知があったかどうかを判別できる状態とされる(ST4) 。
第2のシート検知手段SN2によりシートSの通過が検知されるとその検知タイミングが制御部200にて記録される(ST5)。
【0031】
第2の搬送部材3は、第2のシート検出手段SN2からの信号に基づき、即座に停止するのではなく、シートの端部から折り目付け位置までの距離に対応するシートの送り量を以て回転を継続して停止する制御が制御部200において実行される(ST6)。これにより、第2の搬送部材3が逆転した際にシートSが折り目付け搬送路P(図2参照)内に導入されることになる。
【0032】
制御部200では、第2の搬送部材3の回転停止時期に達したかどうかを判別し(ST7)、回転停止と判別した場合には、第1,第2のシート検出手段SN1,SN2を用いたシート通過タイミングに基づきシートSの実移動距離(L2)を算出する。実移動距離(L2)が算出された結果と基準となる距離(L1)とが対比される。対比結果においてL1<L2である場合には、L2−L1=L3によって撓み量を算出する(ST8,9)。
【0033】
撓み量(L3)が生じている場合には、第1の搬送部材2に対してシートSを搬送方向と逆方向に牽引する逆転量を設定し、第1の搬送部材2がその逆転量に達した時点で停止させる(ST10)。
これにより、シートSに生じていた撓みが解消されるので、シート同士で同じ位置に折り目付け位置を位置決めすることができる。
【0034】
一方、スキュー補正を実行する場合には、予めスキュー補正のための撓み発生量が判っているので、このスキュー補正に要する撓み量を基準となる距離(L1)に追加した値と実移動距離(L2)とを対比する。
図10は、スキュー補正の際の撓み発生状態を示している。
同図においてスキュー補正時には、上述した原因によりシートに生じる撓み量よりも多くの撓みが発生する。
【0035】
そこで、制御部200においては、第1,第2のシート検出手段SN1、SN2の配置位置間の距離をL1(mm)に対してスキュー補正に要するシート繰り出し量からの撓み量(L4(mm))を基準となる距離として、シートSの実移動距離(L2)と対比する。
実移動距離(L2)が算出されると、撓み量(L3(mm))は、L3=L2−(L1+L4)によって割り出される。
撓み量(L3)が割り出されると、第1の搬送部材2が逆方向に移動すべき量(搬送量)が決定される。
【0036】
以上のようにスキュー補正が実行される場合においても、シートSに生じる撓み量が割り出されてその除去が可能となるので、スキュー補正されたシートS同士の折り目付け位置が一致した状態とされることになる。
【0037】
本実施形態では、第2のシート検出手段SN2からの検出信号を後段装置である後処理装置102の起動信号、いわゆるトリガー信号として用いるようになっている。つまり、第2のシート検出手段SN2が、第2の搬送部材3によるシート搬送時に後段装置の動作開始時期を設定する部材として用いられるようになっている。これにより、後処理装置102を常時稼働させる場合と違って、省エネルギー化が図れるようになっている。
【0038】
上述した実施形態では、シートの生じている撓みを解消する方法として、第1の搬送部材2を逆転された際に生じるシートへの牽引力を利用しているが、本実施形態では、この方法に限らなない。例えば、シート搬送時での速度に対して第1の搬送部材2側での速度を変速させること、具体的には、シートSの牽引力が生じる程度に減速させる制御を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 シート処理装置
2 第1の搬送手段
3 第2の搬送手段
5 第3の搬送手段
100 画像形成システム
101 画像形成装置
102 ステープラ装置
200 制御部
SN1 第1のシート検出手段
SN2 第2のシート検出手段
P 折り目付を行う位置を有する折り目付け搬送路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開2004−284742号公報
【特許文献2】特開2011−57363号公報
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