【実施例】
【0040】
(トナー製造例)
[樹脂分散体1]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水498部を入れ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水104部に溶解させたものを加えた。15分後に、スチレンモノマー200部、n−オクタンチオール4.2部の単量体混合液を90分かけて滴下し、更に60分間80℃に保って重合反応させた。その後、冷却して体積平均粒径135nmの白色の[樹脂分散体1]を得た。この[樹脂分散体1]を2mLシャーレに取り、分散媒を蒸発させて得られた乾固物を測定したところ、数平均分子量8300、重量平均分子量16900、Tg83℃であった。
【0041】
[ポリエステル1の合成]
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物529部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下230℃で8時間反応させた。更に10〜15mmHgの減圧下で5時間反応させた後、反応槽中に無水トリメリット酸44部を添加し、常圧下180℃で2時間反応させて、[ポリエステル1]を得た。この[ポリエステル1]は、数平均分子量2,500、重量平均分子量6,700、ガラス転移温度43℃、酸価25mgKOH/gであった。
【0042】
[ポリエステル2の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物264部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物523部、テレフタル酸123部、アジピン酸173部及びジブチルチンオキサイド1部を入れ、常圧、230℃で8時間反応させ、更に10〜15mmHgの減圧下で8時聞反応させた。その後、反応容器に無水トリメリット酸26部を入れ、180℃、常圧で2時間反応させて、[ポリエステル2]を得た。[ポリエステル2]は、数平均分子量4000、重量平均分子量47000、Tg65℃、酸価12であった。
【0043】
[イソシアネート変性ポリエステル1の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で8時間反応させた。更に、10〜15mmHgの減圧下で、5時間反応させて、[中間体ポリエステル1]を得た。この[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量2,200、重量平均分子量9,700、ガラス転移温度54℃、酸価0.5mgKOH/g、水酸基価52mgKOH/gであった。
【0044】
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に[中間体ポリエステル1]410部、イソホロンジイソシアネート89部、酢酸エチル500部を入れて100℃で5時間反応させて、[イソシアネート変性ポリエステル1]を得た。
【0045】
[マスターバッチ1の作製]
カーボンブラック(キャボット社製リーガル400R)40部、結着樹脂(ポリエステル樹脂:三洋化成RS−801、酸価10、Mw20,000、Tg64℃)60部、水30部をヘンシェルミキサーで混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これをロール表面温度130℃に設定した2本ロールにより45分間混練し、パルベライザーで1mmの大きさに粉砕して、[マスターバッチ1]を得た。
【0046】
[油相の作製]
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、[ポリエステル1]545部、[パラフィンワックス(融点74℃)]181部、酢酸エチル1450部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで容器に[マスターバッチ1]500部、酢酸エチル100部を仕込み、1時間混合し[原料溶解液1]を得た。次いで、[原料溶解液1]1500部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、顔料、WAXの分散を行った。次いで、[ポリエステル2]の66%酢酸エチル溶液655部を加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料・WAX分散液1]を得た。次いで、[顔料・WAX分散液1]976部をTKホモミキサー(特殊機化製)により5,000rpmで1分間混合した後、[イソシアネート変性ポリエステル1]88部を加え、TKホモミキサー(特殊機化製)により5,000rpmで1分間混合して[油相1]を得た。得られた[油相1]の固形分を測定したところ、52.0%であり、固形分に対する酢酸エチルの量は92%であった。
【0047】
[水相の調製]
イオン交換水970部、分散安定用の有機樹脂微粒子(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の25%水性分散液40部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液95部、酢酸エチル98部を混合撹拌したところpH6.2となった。これに、10%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpH9.5に調整し、[水相1]を得た。
【0048】
[芯粒子の作製]
得られた[油相1]に[水相1]1200部を加え、ミキサーのせん断熱による温度上昇を抑えるために水浴で冷却して、液中温度を20℃〜23℃の範囲に調整しながら、TKホモミキサーにより回転数8,000〜15,000rpmで2分間混合した。次いでアンカー翼を取り付けたスリーワンモーターにより回転数130〜350rpmで10分間攪拌し、芯粒子となる油相の液滴が水相に分散された[芯粒子スラリー1]を得た。
【0049】
[突起部の形成]
[芯粒子スラリー1]をアンカー翼を取り付けたスリーワンモーターにより回転数130〜350rpmで攪拌しながら、液温が22℃の状態で、[樹脂分散体1]106部とイオン交換水71部を混合したもの(固形分濃度15%)を3分間かけて滴下した。滴下後、回転数を200〜450rpmにして30分間攪拌を続け、[複合粒子スラリー1]を得た。この[複合粒子スラリー1]を1mL取って10mLに希釈し、遠心分離したところ、上澄み液は透明であった。
【0050】
[脱溶工程]
撹拌機及び温度計をセットした容器に、[複合粒子スラリー1]を投入し、攪拌しながら30℃で8時間脱溶剤を行い、[分散スラリー1]を得た。この[分散スラリー1]を少量スライドグラス上に置き、カバーガラスを挟んで光学顕微鏡により200倍の倍率で様子を観察したところ、均一な着色粒子が観察された。また[分散スラリー1]を1mL取って10mLに希釈し、遠心分離を行ったところ、上澄み液は透明であった。
【0051】
[洗浄・乾燥工程]
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。(2):(1)の濾過ケーキにイオン交換水900部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返した。(3):(2)のリスラリー液のpHが4となるように10%塩酸を加え、そのままスリーワンモーターで30分撹拌した後、濾過した。(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返し[濾過ケーキ1]を得た。[濾過ケーキ1]を循風乾燥機により45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、[トナー母体1]を得た。得られた[トナー母体1]を走査電子顕微鏡で観察したところ、芯粒子の表面にビニル樹脂が均一に付着していた。
【0052】
前記トナー母体1に対し、クラリアント社製H20TM(外添材1)を1.2部、日本アエロジル社製RY50−N4(外添材2:シリコーンオイル処理シリカ)を3.5部加え、ヘンシェルミキサーに投入して、周速33m/sで10分間撹拌しトナー1を得た。
【0053】
次にアエロジル社製RY50−N4をアエロジル社製NX−90にした以外はトナー1と同様にしてトナー2を得た。更にアエロジル社製RY50−N4をCAB-O-SIL社製 EP-BR0403を2.0部にした以外はトナー1と同様にしてトナー3を得た。それぞれのトナー凝集度はトナー1が58%、トナー2が42%、トナー3は86%であった。
【0054】
<凝集度の測定>
トナーの凝集度は、ホソカワミクロン社製パウダーテスターを用いて、以下に記す方法により測定した。まず、下から目開き20/45/75μmのふるいを積み上げてパウダーテスターに設置し、トナー2.0gを75μmふるいに載せてパウダーテスターにより振動を1min加えて、各ふるいに残ったトナー重量を測定した。次に、以下の式に基づいて凝集度を求めた。
【0055】
凝集度=100×(75μm残トナー量+0.6×45μm残トナー量+0.2×20μm残トナー量)/2
(実施例1)
日本ゼオン社製エピクロロヒドリンゴムHydrin T3106をSUM製6φの金属シャフト上にゴム厚が3mmになるように押出成型し、その後150℃の環境で120分間保管して加硫した。その後、ローラ表面を水口製作所社製研磨機LEO600−F4L−BMEでゴムローラ表面粗さRaを1.0μmまで粗研磨後、水口製作所社製SZCにてテープ粗さ20μm、ゴムローラ回転数を800rpm、2パス研磨、テープ送り速度25mm/s、オシレーション無し、トラバース送り速度700mm/sの条件で仕上げ研磨を行い、現像ローラ用ゴム基材を得た。
【0056】
次に、表層材として酢酸エチル100重量部に三井化学ポリウレタン社製イソシアネートD170N 2.5重量部にケッチェンブラック社製ケッチェンブラックECを0.03重量部を投入し、シンマルエンタープライゼス社製ターブラミキサにて60分撹拌した。その後、アトマックス社製AM6型ノズルを用いて2パスで膜厚が2.0μmになるようにスプレー塗布し、更に150℃で1時間の焼成を行うことで実施例1の現像ローラを得た。
【0057】
得られた現像ローラ及びトナー1を用いて、下記の評価方法によりトナー固着、ベタ追従性、トナー供給性、トナーフィルミングについて評価を行った。
【0058】
(実施例2)
テープ粗さを25μmにする以外は実施例1と同様にして実施例2の現像ローラを得た。得られた現像ローラ及びトナー1を用いて、下記の評価方法により評価を行った。
【0059】
(実施例3)
テープ粗さを30μmにする以外は実施例1と同様にして実施例3の現像ローラを得た。得られた現像ローラ及びトナー1を用いて、下記の評価方法により評価を行った。
【0060】
(実施例4)
研磨におけるパス回数を1回にして1パス研磨にする以外は実施例1と同様にして実施例4の現像ローラを得た。得られた現像ローラ及びトナー1を用いて、下記の評価方法により評価を行った。
【0061】
(実施例5)
研磨におけるパス回数を3回にして3パス研磨にする以外は実施例1と同様にして実施例5の現像ローラを得た。得られた現像ローラ及びトナー1を用いて、下記の評価方法により評価を行った。
【0062】
(実施例6)
粗研磨における狙いのゴムローラ表面粗さRaを1.5μmにする以外は実施例1と同様にして実施例6の現像ローラを得た。得られた現像ローラ及びトナー1を用いて、下記の評価方法により評価を行った。
【0063】
(実施例7)
粗研磨における狙いのゴムローラ表面粗さRaを0.6μmにする以外は実施例1と同様にして実施例7の現像ローラを得た。得られた現像ローラ及びトナー1を用いて、下記の評価方法により評価を行った。
【0064】
(実施例8)
実施例1と同様にして得られた現像ローラ及びトナー3を用いて、下記の評価方法により評価を行った。
【0065】
(比較例1)
日本ゼオン社製エピクロロヒドリンゴムHydrin T3106をSUM製6φの金属シャフト上にゴム厚が3mmになるように押出成型し、その後150℃の環境で120分間保管して加硫した後、ローラ表面を水口製作所社製研磨機LEO600−F4L−BMEでゴムローラ表面粗さRaを1.0μmまで粗研磨し、現像ローラ用ゴム基材を得た。表層作成手順は実施例1と同様にして比較例1の現像ローラを得た。
【0066】
得られた現像ローラ及びトナー1を用いて、下記の評価方法により評価を行った。
【0067】
(比較例2)
研磨におけるパス回数を4回にして4パス研磨にする以外は実施例1と同様にして比較例2の現像ローラを得た。得られた現像ローラ及びトナー1を用いて、下記の評価方法により評価を行った。
【0068】
(比較例3)
実施例1と同様にして得られた現像ローラ及びトナー2を用いて、下記の評価方法により評価を行った。
【0069】
<表面粗さRaの測定>
表面粗さRaは、東京精密社製サーフコム1400Dを用いて測定速度0.3mm/s、測定長さ4.0mm、カットオフ波長0.8mm、測定倍率2.0倍、λsカットオフ比300、λsカットオフ波長2.6667μmの条件で測定した。JIS−'01規格により表面粗さRaを算出した。
【0070】
<溝部111及び段差部112の形状測定>
溝部111の長さL1及びピッチP1、段差部112の長さL2及びピッチP2は、以下の方法にて測定した。まず、日立ハイテクマニファクチャ&サービス社製走査電子顕微鏡S−4800を用いて、倍率2000倍で現像ローラの表面5箇所(軸方向両端部、中央部、両端部と中央部との中間2箇所)を撮影した。次に、5箇所の表面写真それぞれにおいて、溝部111及び段差部112を各10本抽出し、溝部111の長さL1及びピッチP1、段差部112の長さL2及びピッチP2をそれぞれ計測した。計測した値の平均値を、溝部111の長さL1,ピッチP1、段差部112の長さL2,ピッチP2を求めた。
【0071】
溝部111の深さDは、以下の方法にて測定した。まず、現像ローラを軸方向に切断した断面を、日立ハイテクマニファクチャ&サービス社製走査電子顕微鏡S−4800を用いて、倍率2000倍で現像ローラの断面5箇所(軸方向両端部、中央部、両端部と中央部との中間2箇所)で撮影した。次に、5箇所の断面写真からそれぞれ溝部111を10本抽出し、抽出した溝部111について計測した深さの平均値を、溝部111の深さDとした。
【0072】
段差部112の高さHは、以下の方法にて測定した。まず、現像ローラを軸方向に直交する方向に5箇所(軸方向両端部、中央部、両端部と中央部との中間2箇所)切断した。次に、日立ハイテクマニファクチャ&サービス社製走査電子顕微鏡S−4800を用いて、倍率2000倍で現像ローラの5箇所の断面を撮影した。撮影した5箇所の断面写真からそれぞれ段差部112を10本抽出し、抽出した段差部112について計測した高さの平均値を、段差部112の高さHとした。
【0073】
以下の表1に、各実施例及び各比較例における現像ローラの作製条件、溝部111及び段差部112の形状を示す。
【0074】
【表1】
<評価方法>
各実施例及び比較例に記載した現像ローラ及びトナーをリコー社製IPSIO−C310の現像装置にセットして下記評価方法にて、トナー固着、ベタ追従性、トナー供給性、トナーフィルミングについて評価を行った。
【0075】
トナー固着:温度30℃及び湿度80%の環境で、白紙耐久1枚間欠モードにて10K枚ランニングし、ハーフトーン画像における縦白スジの本数を確認した。発生した白スジの数が0本の場合を「○」、1本の場合を「△」、2本以上の場合を「×」として評価を行った。
【0076】
ベタ追従性:温度30℃及び湿度80%の環境で、白紙耐久1枚間欠モードにて10K枚ランニングした後、黒ベタ画像を2枚連続で出力したときの2枚目後端の黒ベタ濃度をマクベス濃度計で測定した。測定した黒ベタ濃度が1.45以上の場合を「○」、1.35以上1.45未満の場合を「△」、1.35未満の場合を「×」として評価を行った。
【0077】
トナー供給性:温度30℃及び湿度80%の環境で、白紙耐久1枚間欠モードにて10K枚ランニングし、黒ベタ画像を連続で出力したときの画像後端に向かって広がる濃度低下の有無を確認した。評価は画像後端部の黒ベタ濃度をマクベス濃度計で測定することで行い、測定した黒ベタ濃度が1.45以上の場合を「○」、1.35以上1.45未満の場合を「△」、1.35未満の場合を「×」とした。
【0078】
現像ローラフィルミング:温度30℃及び湿度80%の環境で、白紙耐久1枚間欠モードにて10K枚ランニングし、現像ローラ表面をSEMで確認。現像ローラにエアーを吹き付けた後の現像ローラ表面のトナー有無で確認した。現像ローラ表面にトナーがほぼ付着していない場合を「○」、トナーが一部取れるが現像ローラ表面形状が一部変化している場合を「△」、エアーを吹き付けてもトナーが取れず、現像ローラ表面が変化している場合を「×」とした。
【0079】
<評価結果>
各実施例及び比較例の評価結果を表2に示す。
【0080】
【表2】
表2に示す様に、実施例1〜7では、トナー固着、ベタ追従性、トナー供給性、トナーフィルミングについて良好な結果が得られた。これに対して、比較例1では、トナー固着が「△」、トナー供給性及びトナーフィルミングが「×」であった。また、比較例2では、トナー供給性が「△」、ベタ追従性が「×」であった。さらに比較例3では、ベタ追従性及びトナー供給性が「△」、トナー固着及びトナーフィルミングが何れも「×」であった。
【0081】
以上、実施形態に係る現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。