(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記乾燥手段は、複数の前記検出部のうちから前記タイミングに対応する検出部を選択し、選択された検出部が前記液面を検出したときに前記加熱ローラの加熱を開始する該タイミングと判断する、ことを特徴とする請求項3に記載の前処理液塗布装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
長尺の記録媒体(ウェブ)を前処理する前処理液塗布装置を用いて、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。本発明は、以後に説明する前処理液塗布装置以外でも、前処理装置、媒体処理装置及び媒体供給装置、並びに、画像形成装置、記録装置、被写機、複合機、プリンタ、スキャナ、プロッタ、ファクシミリ、ファックス及びその他記録媒体を用いるもの(装置、機器、ユニットなど)であれば、いずれのものにも用いることができる。また、本発明に係る前処理液塗布装置が前処理することができる記録媒体には、紙、用紙、薄紙、厚紙及び記録紙、並びに、OHPシート、合成樹脂フィルム、金属薄膜及びその他表面に画像を形成することができる媒体を含む。
【0013】
なお、以後の説明において、添付の全図面の記載の同一又は対応する部材又は部品には、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的としない。したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定することができる。
【0014】
本発明の一実施形態に係る前処理液塗布装置100を用いて、下記に示す順序で本発明を説明する。
【0015】
1.前処理液塗布装置の構成
2.前処理液塗布装置の動作
3.前処理液
塗布方法のプログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体
4.実施例1〜3(前処理液塗布装置、前処理液塗布装置を含む画像形成システム)
[前処理液塗布装置の構成]
図1を用いて、本発明の実施形態に係る前処理液塗布装置100の構成を説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る前処理液塗布装置100は、供給された記録媒体Wを搬入する搬入手段10と、搬入手段10が搬入した記録媒体の表面に前処理液を塗布する塗布手段20と、を有する。また、前処理液塗布装置100は、塗布手段20が記録媒体の表面に塗布した前処理液を乾燥する乾燥手段30と、前処理された記録媒体を搬出する搬出手段40と、を有する。更に、前処理液塗布装置100は、前処理液塗布装置100の外部と情報の入力及び出力を行う入力手段及び出力手段(不図示)を更に有することができる。
【0017】
ここで、前処理とは、記録媒体の表面に前処理液を塗布し、且つ、塗布された前処理液を乾燥(固定)する処理である。前処理液塗布装置100は、形成される画像のフェザリング(液滴のドットがひげ状に乱れること)又はカラーブリード(隣接する異なる色の液滴が混ざり合って色境界が不鮮明になること)などを防止するために、画像形成前に記録媒体Wの表面を前処理する。また、前処理液塗布装置100は、前処理液を用いて、記録媒体Wの両面(表面及び裏面、以下の説明では特に指定しない限り「表面」と記載する。)に画像を形成する場合に、記録媒体の表面(両面)を前処理する。
【0018】
具体的には、前処理液塗布装置100は、搬入手段10(ローラ、ガイドなど)を用いて、画像が形成される前の記録媒体Wを装置内部に搬入する。次に、前処理液塗布装置100は、塗布手段20(ローラ、ニップローラなど)を用いて、搬入された記録媒体Wの表面に前処理液を塗布する。次いで、前処理液塗布装置100は、乾燥手段30(加熱ローラなど)を用いて、記録媒体Wの表面に塗布された前処理液を乾燥(固定)する。その後、前処理液塗布装置100は、搬出手段40(ローラ、ガイドなど)を用いて、前処理液を表面に固定された記録媒体Wを装置外部に搬出する。以上により、前処理液塗布装置100は、画像を形成する前の記録媒体の表面を前処理することができる。
【0019】
搬入手段10は、記録媒体Wを移動(搬入、供給、給紙、移動、挟持、固定など)する手段である。搬入手段10は、本実施形態では、記録媒体Wを装置内部に搬入する媒体搬入部と、搬入した記録媒体Wに張力(テンション)を付加する張力付加部とを有する。なお、記録媒体Wは、前処理液塗布装置100の内部の搬送路で複数の従動ローラ1a〜1iに掛け渡されて、搬送される。
【0020】
搬入手段10は、媒体搬入部の搬入ローラ12を回転することで、記録媒体Wを装置内部に搬入する。また、搬入手段10は、記録媒体Wのシワや弛みを防止するために、張力付加部のテンションシャフト17及び搬入ダンサーユニット19等を用いて、搬入した記録媒体Wに張力を付加する。
【0021】
具体的には、媒体搬入部は、搬入ローラ12と搬入ニップローラ14との間に記録媒体Wを挟み、且つ、搬入ニップローラ14によって記録媒体Wを搬入ローラ12に押し付けながら搬入ローラ12を回転することで、記録媒体Wを搬入方向Winに搬入する。また、媒体搬入部は、記録媒体Wを所望の搬送速度で連続的に搬送(移動)すること、及び、搬送速度の変化に対応して記録媒体Wを搬送(移動)することを可能にするために、余分の媒体を装置内部に予め搬入している(図中のエアループAL)。
【0022】
張力付加部は、記録媒体Wを移動する方向(以下、「搬送方向」という。)と直交する方向に配置した2本のパスシャフト15に記録媒体WをS字状に通過させる。また、張力付加部は、記録媒体Wの幅と同程度の間隔の一対の板状エッジガイド16によって記録媒体Wの幅方向の位置を補正する。更に、張力付加部は、パスシャフト15等を通過した記録媒体Wの表面にテンションシャフト17を押圧することによって、記録媒体Wに張力を付加する。
【0023】
ここで、テンションシャフト17の下流側では、本実施形態では、搬入ダンサーユニット19を記録媒体Wに吊り下げている。また、搬入ダンサーユニット19は、錘部19aと回転自在なローラ部(緩衝ローラ部)19bとで構成され、重力方向に沿って移動可能に配置されている。すなわち、記録媒体Wは、下流側の錘部19a(搬入ダンサーユニット19)の重量に対応する引張り応力を負荷されることによって、上流側のテンションシャフト17によって張力を付与される。
【0024】
なお、一対の板状エッジガイド16は、例えば固定手段(ねじなど)によってパスシャフト15に固定されてもよい。また、一対の板状エッジガイド16は、搬送する記録媒体Wの幅に応じて、その間隔を調整可能に固定されてもよい。
【0025】
また、搬入手段10は、テンションシャフト17を通過した記録媒体Wを、インフィードローラ18とフィードニップローラ18aとの間に挟み込む。このとき、搬入手段10は、不図示の駆動源(モータなど)を用いてインフィードローラ18を回転駆動することによって、記録媒体Wを搬送方向に搬送する。また、搬入手段10は、搬入ダンサーユニット19の位置を検出し、検出した搬入ダンサーユニット19の位置に基づいてインフィードローラ18を回転する動作を制御する。
【0026】
なお、フィードニップローラ18aは、インフィードローラ18の軸方向に沿って複数配置されている。また、フィードニップローラ18aは、ばね(不図示)によってインフィードローラ18の表面に押し付けられている。
【0027】
塗布手段20は、搬入手段10が搬入した記録媒体Wの表面に前処理液を塗布する手段である。塗布手段20は、前処理液を貯留する貯留部と、貯留部に貯留された前処理液を記録媒体Wの表面に塗布する塗布部と、貯留部に貯留された前処理液の貯留量を検出する検出部と、を備える。塗布手段20は、搬入手段10の搬送方向の下流に配置されている。なお、塗布手段20は、後述する[塗布手段]で説明する。
【0028】
乾燥手段30は、塗布手段20によって記録媒体Wの表面に塗布された前処理液を乾燥(固定)する手段である。乾燥手段30は、記録媒体Wの表面に接触する加熱ローラ31a〜31j(
図3)と、加熱ローラ31a等を目標温度に加熱する発熱部32a〜32j(
図3)と、を備える。乾燥手段30は、塗布手段20の搬送方向の下流に配置されている。なお、乾燥手段30は、後述する[乾燥手段]で説明する。
【0029】
搬出手段40は、記録媒体Wを搬出(排出、排紙、移動、挟持、固定など)する手段である。搬出手段40は、本実施形態では、記録媒体Wを装置外部に搬出する媒体搬出部と、搬出する記録媒体Wに張力(テンション)を付加する張力付加部とを有する。搬出手段40は、乾燥手段30の搬送方向の下流に配置されている。
【0030】
搬出手段40は、媒体搬出部の搬出ローラ41を回転することで、搬出ローラ41と搬出ニップローラ41aとに挟まれた記録媒体Wを搬送方向に搬送する。また、搬出手段40は、前処理された記録媒体Wのシワや弛みを防止若しくは除去するために、張力付加部の搬出ダンサーユニット42を用いて、記録媒体Wに張力を付加する。その後、搬出手段40は、前処理された記録媒体Wを搬出方向Woutに搬出する。
【0031】
具体的には、媒体搬出部は、搬出ローラ41と搬出ニップローラ41aとの間に記録媒体Wを挟み、且つ、搬出ニップローラ41aによって搬出ローラ41に押し付けながら搬出ローラ41を回転することで、記録媒体Wを搬送方向に搬送する。なお、搬出ローラ41は、不図示の駆動源(モータなど)によって回転駆動される。また、搬出ニップローラ41aは、搬出ローラ41の軸方向に沿って複数配置されている。また、搬出ニップローラ41aは、ばね(不図示)によって搬出ローラ41の表面に押し付けられている。
【0032】
張力付加部は、媒体搬出部(搬出ローラ41等)の下流で搬出ダンサーユニット42を吊り下げている。ここで、搬出ダンサーユニット42は、錘部42aと回転自在な2本のローラ部(緩衝ローラ部)42b、42cとで構成され、鉛直方向に移動可能に配置されている。また、搬出ダンサーユニット42は、2本のローラ部42b、42c用いて、記録媒体WをW字状に巻き掛けている。すなわち、記録媒体Wは、錘部42a(搬出ダンサーユニット42)の重量に対応する引張り応力を負荷されることによって、張力を付加される。また、張力付加部は、本実施形態では、記録媒体Wを所定の距離まで搬送することによって、乾燥手段40によって加熱された記録媒体Wを空冷する。更に、張力付加部(搬出手段40)は、搬出ダンサーユニット42の位置を検出し、検出した搬出ダンサーユニット42の位置に基づいて搬出ローラ41を回転する動作を制御する。
【0033】
入力手段は、前処理液塗布装置100の外部から情報(例えば電気信号)の入力を行う手段である。入力手段は、前処理液塗布装置100の動作に関する情報などを外部装置(PCなど)から入力する。入力手段は、本実施形態では、「記録媒体の特性に関する情報」及び/又は「記録媒体の搬送速度に関する情報」、並びに、「前処理の条件に関する情報(塗布手段20等の動作に関する情報)」を入力することができる。
【0034】
出力手段は、前処理液塗布装置100の外部に情報(例えば電気信号)の出力を行う手段である。出力手段は、前処理液塗布装置100の動作に関する情報及び/又は前処理液塗布装置100の状態に関する情報などを外部装置(PCなど)に出力する。出力手段は、例えば塗布手段20若しくは乾燥手段30が前処理した「前処理結果」を出力することができる。
【0035】
なお、入力手段及び出力手段は、前処理液塗布装置100の外部から情報を入力される入力部(例えば操作パネルなどのユーザーインターフェース)を含んでもよい。また、入力手段及び出力手段は、前処理液塗布装置100の外部に情報を出力(表示)する出力部(例えばタッチパネルなどの表示部)を含んでもよい。
【0036】
[塗布手段]
図1及び
図2を用いて、本発明の実施形態に係る前処理液塗布装置100の塗布手段20を説明する。
【0037】
図1に示すように、塗布手段20は、本実施形態では、記録媒体Wの一の表面(例えば表面)に前処理液を塗布する表面塗布手段21と、記録媒体Wの他の表面(例えば裏面)に前処理液を塗布する裏面塗布手段22と、を備える。塗布手段20は、先ず、搬入手段10が搬入した記録媒体Wを表面塗布手段21に搬送し、記録媒体Wの一の表面に前処理液を塗布する。次に、塗布手段20は、表面塗布手段21が前処理液を塗布した記録媒体Wを略U字形状の搬送路(図中の従動ローラ1c及び1d)で搬送し、前処理液塗布装置100に対して記録媒体Wの相対的な位置を反転する。次いで、塗布手段20は、反転した記録媒体Wを裏面塗布手段22に搬送し、記録媒体Wの他の表面に前処理液を塗布する。その後、塗布手段20は、両面に前処理液を塗布された記録媒体Wを乾燥手段30(後述)に搬送する。
【0038】
なお、本発明を用いることができる塗布手段20は、記録媒体Wの一の表面のみを前処理するものであってもよい。また、以後の説明では、表面塗布手段21と裏面塗布手段22との構造は同じため、表面塗布手段21についてのみ説明し、裏面塗布手段22の説明は省略する。
【0039】
図2に示すように、本実施形態に係る表面塗布手段21(塗布手段20)は、前処理液を貯留する貯留部21Aと、貯留部21Aに貯留された前処理液を記録媒体Wの表面に塗布する塗布部21Bと、を備える。また、表面塗布手段21(塗布手段20)は、貯留部21Aに貯留された前処理液の貯留量を検出する検出部21Cを備える。更に、表面塗布手段21(塗布手段20)は、前処理液の供給源21Stと、供給源21Stの前処理液を汲み上げて貯留部21Aに供給する供給ポンプ21Spと、貯留部21Aに貯留されている前処理液を排液する排液部21Dと、を備える。
【0040】
なお、供給源21St、供給ポンプ21Sp及び貯留部21A、並びに、貯留部21A、制御弁21Dv及び排液タンク21Dtは配管21Ta及び配管21Tb、並びに、配管21Tc及び配管21Tdで接続されている。また、排液部21Dは、制御弁21Dv(例えばソレノイドを用いた電磁弁)を介して、前処理液を排液タンク21Dtに排液する。排液部21Dは、例えば水頭差を用いて、貯留部21Aの前処理液を排液してもよい。
【0041】
表面塗布手段21(塗布手段20)は、塗布部21Bを用いて、貯留部21Aに貯留している前処理液を記録媒体Wの表面に塗布する。このとき、塗布手段20は、検出部21Cを用いて、貯留している前処理液の貯留量を検出する。また、塗布手段20は、検出部21Cが検出した貯留量に基づいて、必要に応じて供給ポンプ21Spを用いて供給源21Stから前処理液を補給する。更に、塗布手段20は、排液部21Dを用いて所定の時間を経過した貯留部21Aに貯留している前処理液(例えば経時的に劣化した前処理液)を排液し、供給ポンプ21Spを用いて新たに前処理液を供給する。これにより、塗布手段20は、貯留部21Aに貯留している前処理液を更新することができる。
【0042】
貯留部21Aは、前処理液を一時的に貯留するものである。貯留部21Aは、例えば供給パン、供給槽などを用いることができる。貯留部21Aは、供給ポンプ21Spによって供給源21Stから前処理液を供給又は補給される。
【0043】
塗布部21Bは、貯留部21Aに貯留された前処理液を記録媒体Wの表面に塗布するものである。塗布部21Bは、貯留部21Aに貯留された前処理液を掬い上げるスクイーズローラ21Baと、スクイーズローラ21Baによって掬い上げられた前処理液を転移される塗布ローラ21Bbと、を有する。また、塗布部21Bは、塗布ローラ21Bbに記録媒体Wを押さえ付ける押さえローラ21Bcを有する。塗布部21Bは、スクイーズローラ21Baから塗布ローラ21Bb上に転移された前処理液を記録媒体W上に更に転移させ、記録媒体Wの表面に前処理液を塗布する。
【0044】
検出部21Cは、貯留部21Aに貯留された前処理液の貯留量を検出するものである。検出部21Cは、本実施形態では、複数の検出部21Ca、21Cb及び21Ccを備える。ここで、複数の検出部21Ca、21Cb及び21Ccは、貯留部21Aの高さ方向に並んで配置されている。検出部21Cは、複数の検出部21Ca、21Cb及び21Ccを用いて、前処理液の貯留量として、貯留部21Aの前処理液の液面の高さを検出する。なお、検出部21Cは、複数の検出部21Ca等として、例えばフォトセンサ、光学式センサ、磁気式センサ、静電式センサ、直動式センサなどの前処理液の有無を検出できるセンサを用いてもよい。
【0045】
[乾燥手段]
図1及び
図3を用いて、本発明の実施形態に係る前処理液塗布装置100の乾燥手段30を説明する。
【0046】
図1に示すように、本実施形態に係る乾燥手段30は、塗布手段20の搬送方向の下流に配置されている。また、乾燥手段30は、塗布手段20が記録媒体Wの表面に塗布した前処理液を乾燥(固定)する。更に、乾燥手段30は、乾燥した記録媒体Wを搬出手段40(後述)に搬送する。
【0047】
図3に示すように、本実施形態に係る乾燥手段30は、記録媒体Wの表面に接触する加熱ローラ31a〜31jと、加熱ローラ31a等を目標温度(例えば100度)に加熱する発熱部32a〜32jと、を備える。また、乾燥手段30は、加熱ローラ31a等の温度(加熱温度)を検出する温度検出部33a〜33jを備える。すなわち、乾燥手段30は、加熱ローラ、発熱部及び温度検出部からなる加熱ユニットを複数備える。
【0048】
乾燥手段30は、加熱ローラ31a〜31jと記録媒体Wの接触面積を増加させるために、例えば加熱ローラ31a〜31jと記録媒体Wとの接触角を100度にすることができる。また、乾燥手段30は、複数の加熱ユニットを例えば千鳥状に配置した構成とすることができる。更に、乾燥手段30は、開閉可能な構造とすることによって、記録媒体Wの乾燥時以外のときに、乾燥手段30を開いて乾燥手段30から記録媒体Wを離間させ、乾燥(加熱)による記録媒体Wの収縮を防いでもよい。
【0049】
なお、本発明を用いることができる乾燥手段30は、
図3に示すものに限定されるものではない。すなわち、本発明を用いることができる乾燥手段30は、1つ又は2つ以上の乾燥ユニット(加熱ローラ、発熱部及び温度検出部)を備えることができる。
【0050】
加熱ローラ31a〜31jは、記録媒体Wを加熱するものである。加熱ローラ31a〜31jは、発熱部32a〜32jによって夫々加熱される。また、加熱ローラ31a〜31jは、記録媒体Wの表面と接触することによって、記録媒体Wを加熱する。加熱ローラ31a〜31jは、例えば円筒形状のヒートローラを用いることができる。
【0051】
発熱部32a〜32jは、加熱ローラ31a等を加熱するものである。発熱部32a〜32jは、前処理液を乾燥できる温度(以下、「目標温度」という。)に加熱ローラ31a等を加熱する。ここで、目標温度は、前処理液の特性及び/又は塗布量、並びに、記録媒体の特性及び/又は記録媒体の搬送速度に対応する温度とする。また、目標温度は、乾燥手段30の仕様(例えば加熱ローラ31a〜31jの熱容量)に対応する温度とする。更に、目標温度を、実験又は計算等で予め定められる温度とすることができる。
【0052】
温度検出部33a〜33jは、加熱ローラ31a等の温度(加熱温度)を検出するものである。温度検出部33a〜33jは、公知の技術を用いることができる。
【0053】
図3に示すように、本実施形態に係る乾燥手段30は、コントローラ30Cを更に有する。コントローラ30Cは、乾燥手段30の各構成に動作を指示し、各構成の動作を制御する手段である。
【0054】
なお、コントローラ30Cは、公知の技術のCPU(Central Processing Unit)及びメモリ等を含む演算処理装置で構成してもよい。また、コントローラ30Cは、例えば予め記憶されているプログラム(制御プログラム、アプリケーション等)を用いて、乾燥手段30(前処理液塗布装置100)の各構成の動作を制御してもよい。更に、コントローラ30Cは、入力手段から入力された情報等に基づいて、乾燥手段30(前処理液塗布装置100)の各構成の動作を制御してもよい。
【0055】
コントローラ30Cは、例えば温度検出部33a〜33jが検出した検出結果(加熱温度)に基づいて、発熱部32a〜32jの発熱量を制御する。これにより、コントローラ30Cは、加熱ローラ31a〜31jの温度を目標温度で維持されるように制御することができる。
【0056】
また、コントローラ30Cは、本実施形態では、塗布手段20の検出部21Cが検出した検出結果(前処理液の貯留量)に基づいて、発熱部32a〜32jを用いて加熱ローラ31a〜31jの加熱を開始するタイミング(以下、「加熱開始タイミング」という。)を制御する。また、コントローラ30Cは、複数の検出部21Ca、21Cb及び21Ccのうちから加熱開始タイミングに対応する検出部を選択し、選択した検出部が液面を検出したときに加熱ローラ31a等の加熱を開始する加熱開始タイミングと判断する。更に、コントローラ30Cは、記録媒体Wの特性及び/又は記録媒体Wの搬送速度を更に用いて、加熱開始タイミングを制御してもよい。コントローラ30Cは、例えば記録媒体Wの特性と記録媒体Wの搬送速度とを組み合わせた情報を更に用いて、加熱開始タイミングを制御することができる。
【0057】
なお、乾燥手段30(コントローラ30C)が発熱部32a〜32jを用いて加熱ローラ31a〜31jの加熱開始タイミングを制御する動作は、後述する[前処理液塗布装置の動作]で説明する。
【0058】
[前処理液塗布装置の動作]
図1及び
図4を用いて、本発明の実施形態に係る前処理液塗布装置100が前処理する動作の一例を説明する。ここで、
図4は、本実施形態に係る前処理液塗布装置100の機能の一例を説明する機能ブロック図である。
【0059】
図1に示すように、本実施形態に係る前処理液塗布装置100は、記録媒体Wを前処理する動作を開始するときに、先ず、塗布手段20の検出部21Cを用いて、貯留部21A、22A(
図2)に貯留している前処理液の貯留量を検出する。また、前処理液塗布装置100は、乾燥手段30の温度検出部33a〜33jを用いて、加熱ローラ31a〜31j(
図3)の温度を検出する。
【0060】
このとき、前処理液塗布装置100は、検出部21Cの検出結果(貯留量)及び温度検出部33a〜33jの検出結果(温度)に基づいて、記録媒体Wを前処理するために必要な前処理液の貯留量及び加熱31a〜31jの加熱温度であるか否かを判断する。前処理液塗布装置100は、前処理液の貯留量が記録媒体Wを前処理するために必要な前処理液の貯留量でないと判断した場合には、供給ポンプ21Sp(
図2)を用いて、前処理液を供給源21Stから貯留部21A、22Aに補給する。また、前処理液塗布装置100は、加熱ローラ31a〜31jの温度が記録媒体Wを前処理するために必要な目標温度でないと判断した場合には、発熱部32a〜32j(
図3)を用いて、加熱ローラ31a〜31jを加熱する。ここで、前処理液塗布装置100は、加熱ローラ31a〜31jを目標温度に加熱することを開始する加熱開始タイミングを制御する。これにより、前処理液塗布装置100は、貯留部21A、22Aに前処理液を貯留するために必要な時間(以下、「供給時間」という。)と加熱ローラ31a〜31jを目標温度に加熱するために必要な時間(以下、「加熱時間」という。)との差を短縮することができる。
【0061】
前処理液塗布装置100は、例えば供給時間が加熱時間より長いときに、乾燥手段30の制御部30Caを用いて、前処理液の貯留量に基づいて、加熱ローラ31a〜31jの加熱開始タイミングを遅らせる。これにより、前処理液塗布装置100は、供給時間と加熱時間との差を短縮することができる。
【0062】
その後、前処理液塗布装置100は、記録媒体Wを前処理するために必要な前処理液の貯留量及び加熱ローラ31a〜31jの温度(目標温度)となった場合に、搬入ステップとして、搬入手段10(
図1)を用いて、記録媒体Wを搬入方向Winに搬入する。
【0063】
次に、前処理液塗布装置100は、塗布ステップとして、塗布手段20(
図2)を用いて、搬入された記録媒体Wの表面に前処理液を塗布する。具体的には、塗布手段20は、塗布部21B、22B(
図2)を用いて、貯留部21A、22Aに貯留された前処理液を記録媒体Wの表面に塗布する。このとき、塗布手段20は、検出部21Cを用いて貯留している前処理液の貯留量を検出し、検出部21Cが検出した貯留量に基づいて、必要に応じて供給ポンプ21Spを用いて供給源21Stから前処理液を補給する。
【0064】
次いで、前処理液塗布装置100は、乾燥ステップとして、乾燥手段30を用いて、記録媒体W上の前処理液を乾燥する。具体的には、乾燥手段30は、目標温度に加熱された加熱ローラ31a〜31jを用いて、記録媒体Wを加熱し、記録媒体Wの表面の前処理液を乾燥する。また、乾燥手段30は、駆動部30Cb(コントローラ30C)を用いて、温度検出部33a〜33jが検出した加熱ローラ31a〜31jの温度に基づいて、加熱ローラ31a〜31jが目標温度で維持されるように、発熱部32a〜32jの発熱する動作を制御する。
【0065】
その後、前処理液塗布装置100は、搬出ステップとして、搬出手段40を用いて、前処理液を塗布された後で、且つ、前処理液を乾燥された記録媒体Wを搬出方向Wout(
図1)に搬出する。このとき、前処理液塗布装置100は、出力ステップとして、出力手段(不図示)を用いて、記録媒体Wを前処理した前処理結果及び/又は記録媒体Wを搬出した搬出結果を出力してもよい。
【0066】
以上のとおり、前処理液塗布装置100は、前処理する動作を開始する際に供給時間と加熱時間との差を短縮し、前処理液が貯留部21A、22Aに貯留されるまでに消費する加熱ローラ31a〜31jの温度を保つために必要な電力を削減することができる。また、前処理液塗布装置100は、例えば前処理液が貯留されるまで待機している間に記録媒体Wが加熱手段30によって加熱され、記録媒体Wの水分を蒸発させ、記録媒体Wを収縮させることを防止することができる。すなわち、前処理液塗布装置100は、記録媒体Wの収縮によるしわ等が発生することを防止することができるので、その後記録媒体Wに形成される画像の品質を向上することができる。更に、前処理液塗布装置100は、加熱開始タイミングを遅らせることができるので、例えば記録媒体Wの搬送速度が高くなり、貯留部21A、22Aに貯留する前処理液の貯留量を増加させる場合でも、供給時間と加熱時間との差を短縮することができる。
【0067】
[前処理液
塗布方法のプログラム、及び、そのプログラムを記録した記録媒体]
本発明の実施形態に係る搬送方法のプログラムPrによれば、記録媒体を搬入する搬入ステップと、搬入された記録媒体の表面に前処理液を塗布する塗布ステップと、目標温度に加熱された加熱ローラを用いて記録媒体を加熱し、記録媒体の表面の前処理液を乾燥する乾燥ステップと、前処理液を塗布された後に、前処理液を乾燥された記録媒体を搬出する搬出ステップとを含み、前記塗布ステップは、貯留部に貯留された前処理液を用いて、記録媒体の表面に前処理液を塗布し、前記乾燥ステップは、前記貯留部に貯留された前処理液の貯留量に基づいて、前記加熱ローラを前記目標温度に加熱することを開始するタイミングを制御する、ことを特徴とする前処理液
塗布方法を実行する。この構成によれば、本発明の実施形態に係る前処理液塗布装置100と同等の効果が得られる。
【0068】
また、本発明は、上記プログラムPrを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体Mdとしてもよい。上記プログラムPrを記録した記録媒体Mdは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM(Compact Disk−ROM)、CD−R(CD Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)及びその他コンピュータ読み取り可能な媒体、並びに、フラッシュメモリ、RAM、ROM等の半導体メモリ、メモリカード、HDD(Hard Disc Drive)及びその他コンピュータ読み取り可能なものを用いることができる。
【0069】
以上により、本発明の実施形態に係る前処理液塗布装置100によれば、前処理液を塗布手段20に貯留するために必要な時間(供給時間)と乾燥手段30を目標温度に加熱するために必要な時間(加熱時間)との差を短縮することができる。
【実施例】
【0070】
前処理液塗布装置及び前処理液塗布装置を含む画像形成システムの実施例を用いて、本発明を説明する。
【0071】
[実施例1]
[前処理液塗布装置の構成]及び[前処理液塗布装置の動作]
本実施例に係る前処理液塗布装置の構成及び動作を
図1乃至
図4に示す。ここで、本実施例に係る前処理液塗布装置の構成等は、実施形態に係る前処理液塗布装置100の構成等と同様のため、説明を省略する。
【0072】
[実験結果]
図5に、本実施例に係る前処理液塗布装置の効果・利点を確認するために行った実験の実験結果の一例を示す。
図5(a)は、前処理液塗布装置の乾燥手段30の経過時間t(横軸)に対する加熱ローラ31a等の温度T(縦軸)を示す。
図5(b)は、前処理液塗布装置の塗布手段20の経過時間t(横軸)に対する貯留量L(縦軸)を示す。
【0073】
図5に示すように、本実施例に係る前処理液塗布装置は、経過時間t=0で塗布手段20の貯留部21A、21B(
図2)に前処理液を供給することを開始した場合に(
図5(b))、経過時間t=t
1−t
2で加熱ローラ31a等の加熱を開始する(
図5(a))。ここで、前処理液塗布装置は、塗布手段20の検出部21Cの検出結果に基づいて、貯留部21A、21Bの前処理液の液面が所定の高さL
2(例えば40mm)になったときを加熱ローラ31a等の加熱開始タイミング(t
1−t
2)とする。これにより、塗布手段20の貯留部21A、21Bに前処理液を貯留することを完了するタイミング(
図5(b)のt
1)と、乾燥手段30の加熱ローラ31a等を目標温度T
1に加熱することを完了するタイミング(
図5(a)のt
1)とを同期させることができた。なお、前処理液塗布装置は、
図5(a)及び
図5(b)に示すPrt以降で記録媒体の前処理を実施し、その後前処理された記録媒体を搬出する。
【0074】
本実施例に係る前処理液塗布装置によれば、塗布手段20の貯留部21A、21Bに前処理液を液面の高さL
1まで貯留するタイミングと、乾燥手段30の加熱ローラ31a等を常温T
0から目標温度T
1に加熱するタイミングとを同期させることができる。前処理液塗布装置は、例えば貯留部21A、21Bに前処理液を液面の高さ45mmまで貯留するタイミング(
図5(b)のt
1)と、加熱ローラ31a等を25度から目標温度100度に加熱するタイミング(
図5(a)のt
1)とを同期させることができる。すなわち、本実施例に係る前処理液塗布装置によれば、前処理液を塗布手段に貯留するために必要な時間(供給時間)と乾燥手段を目標温度に加熱するために必要な時間(加熱時間)との差を短縮することができる。また、本実施例に係る前処理液塗布装置によれば、供給時間と加熱時間との差を短縮することができるので、無駄な加熱時間(加熱するために必要な電力)を削減することができる。
【0075】
以上のとおり、本発明の実施例1に係る前処理液塗布装置によれば、実施形態に係る前処理液塗布装置100と同様の効果を得ることができる。
【0076】
[比較例1]
図6に、比較例1に係る前処理液塗布装置の実験結果を示す。
図6(a)は、本比較例に係る前処理液塗布装置の乾燥手段の経過時間t(横軸)に対する加熱ローラの温度T(縦軸)を示す。
図6(b)は、本比較例に係る前処理液塗布装置の塗布手段の経過時間t(横軸)に対する貯留量L(縦軸)を示す。
【0077】
図6に示すように、本比較例に係る前処理液塗布装置は、経過時間t=0で塗布手段の貯留部に前処理液を供給することを開始した場合に(
図6(b))、経過時間t=0で乾燥手段の加熱ローラの加熱を開始する(
図6(a))。この結果、本比較例に係る前処理液塗布装置は、塗布手段の貯留部に前処理液を貯留(供給)することを完了するタイミング(
図6(b)のt
1)と、乾燥手段の加熱ローラを目標温度に加熱することを完了するタイミング(
図6(a)のt
2)とが異なった。すなわち、本比較例に係る前処理液塗布装置では、前処理液を塗布手段に貯留するために必要な時間(供給時間)と乾燥手段を目標温度に加熱するために必要な時間(加熱時間)との差(t
1−t
2)が発生した。
【0078】
本比較例に係る前処理液塗布装置では、例えば塗布手段の貯留部に前処理液を液面の高さL
1(例えば45mm)まで貯留する時間(例えば5分間)と、乾燥手段の加熱ローラを常温T
0から目標温度T
1まで加熱する時間(例えば1分間)とである場合に、乾燥手段を目標温度に保つ時間(4分間)が発生する。
【0079】
[実施例2]
[前処理液塗布装置の構成]及び[前処理液塗布装置の動作]
本実施例に係る前処理液塗布装置の構成及び動作を
図1乃至
図3に示す。ここで、本実施例に係る前処理液塗布装置の構成等は、実施形態に係る前処理液塗布装置100の構成等と基本的に同様のため、異なる部分を主に説明する。
【0080】
図7に、本実施例に係る前処理液塗布装置の機能の一例を説明する機能ブロック図を示す。
【0081】
図7に示すように、本実施例に係る前処理液塗布装置は、記録媒体Wの特性を入力する特性入力部21Caと、記録媒体Wの搬送速度を入力する搬送速度入力部21Cbと、を更に有する。本実施例に係る前処理液塗布装置の制御部30Ca(コントローラ30C)は、特性入力部21Caによって入力された記録媒体Wの特性(例えば材質、種類)と搬送速度入力部21Cbによって入力された記録媒体Wの搬送速度とを更に用いて、加熱ローラ31a〜31j(乾燥手段30)の加熱を開始する加熱開始タイミングを制御する。
【0082】
前処理液塗布装置では、記録媒体Wの種類、搬送速度などに応じて、前処理に使用する前処理液の消費量は変化するため、貯留部21A、21Bに貯留する前処理液の貯留量(液面の高さ)も変化させる。前処理液塗布装置では、例えば記録媒体Wが前処理液を吸収しやすい場合、又は、搬送速度が高い(例えば200m/分)場合に塗布量の消費が増加する。このため、前処理液塗布装置では、前処理中に前処理液が不足することを防止するために、特性入力部21Caによって入力された記録媒体Wの特性若しくは搬送速度入力部21Cbによって入力された記録媒体Wの搬送速度、又は、記録媒体Wの特性及び記録媒体Wの搬送速度の組み合わせに基づいて、貯留部21A、21Bの液面の高さを最適な高さとなるまで予め前処理液を貯留しておく。前処理液塗布装置は、貯留部21A、21Bの液面の高さを例えば47mmとする。
【0083】
本実施例に係る前処理液塗布装置は、上記の最適な高さに対応する検出部を複数の検出部21Ca、21Cb及び21Cc(
図2)から選択する。また、本実施例に係る前処理液塗布装置は、選択した検出部(21Ca、21Cb又は21Cc)が前処理液(の液面)を検出したときを加熱手段30の加熱を開始する加熱開始タイミングとする。
【0084】
[実験結果]
図8に、本実施例に係る前処理液塗布装置の効果・利点を確認するために行った実験の実験結果の一例を示す。
図8(a)は、前処理液塗布装置の乾燥手段30の経過時間t(横軸)に対する加熱ローラ31a等の温度T(縦軸)を示す。
図8(b)は、前処理液塗布装置の塗布手段20の経過時間t(横軸)に対する貯留量L(縦軸)を示す。
【0085】
図8に示すように、本実施例に係る前処理液塗布装置は、経過時間t=0で塗布手段20の貯留部21A、21B(
図2)に前処理液を供給することを開始した場合に(
図8(b))、経過時間t=t
4−t
2で加熱ローラ31a等の加熱を開始する(
図8(a))。ここで、前処理液塗布装置は、記録媒体Wの特性及び/又は記録媒体Wの搬送速度に対応する貯留量として最適な高さL
4で前処理液を貯留する。このため、前処理液塗布装置は、予め選択した検出部が貯留部21A、21Bの前処理液の液面の高さL
4を検出したときを加熱ローラ31a等の加熱開始タイミング(t
4−t
2)とする。これにより、塗布手段20の貯留部21A、21Bに前処理液を貯留することを完了するタイミング(
図8(b)のt
4)と、乾燥手段30の加熱ローラ31a等を目標温度T
1に加熱することを完了するタイミング(
図8(a)のt
4)とを同期させることができた。
【0086】
すなわち、本実施例に係る前処理液塗布装置は、記録媒体Wの特性及び/又は記録媒体Wの搬送速度に対応する貯留量に貯留するために必要な時間(供給時間)と乾燥手段を目標温度に加熱するために必要な時間(加熱時間)との差を短縮することができる。また、本実施例に係る前処理液塗布装置は、供給時間と加熱時間との差を短縮することができるので、無駄な加熱時間(加熱するために必要な電力)を削減することができる。
【0087】
以上のとおり、本発明の実施例2に係る前処理液塗布装置によれば、実施形態に係る前処理液塗布装置100と同様の効果を得ることができる。
【0088】
[比較例2]
図9に、比較例2に係る前処理液塗布装置の実験結果を示す。
図9(a)は、本比較例に係る前処理液塗布装置の乾燥手段の経過時間t(横軸)に対する加熱ローラの温度T(縦軸)を示す。
図9(b)は、本比較例に係る前処理液塗布装置の塗布手段の経過時間t(横軸)に対する貯留量L(縦軸)を示す。
【0089】
図9に示すように、本比較例に係る前処理液塗布装置は、経過時間t=0で貯留部に前処理液を供給することを開始した場合に(
図9(b))、記録媒体Wの特性及び搬送速度を考慮されていない経過時間t=t
1−t
2で加熱ローラの加熱を開始する(
図9(a))。この結果、本比較例に係る前処理液塗布装置は、塗布手段の貯留部に前処理液を貯留(供給)することを完了するタイミング(
図9(b)のt
4)と、乾燥手段の加熱ローラを目標温度に加熱することを完了するタイミング(
図9(a)のt
1)とが異なった。すなわち、本比較例に係る前処理液塗布装置では、前処理液を塗布手段に貯留するために必要な時間(供給時間)と乾燥手段を目標温度に加熱するために必要な時間(加熱時間)との差(t
4−t
1)が発生した。
【0090】
本比較例に係る前処理液塗布装置では、例えば塗布手段の貯留部に前処理液を液面の高さL
3(例えば47mm)まで貯留する時間(例えば6分間)と、乾燥手段の加熱ローラを常温T
0から目標温度T
1まで加熱する時間(例えば5分間)とである場合に、乾燥手段を目標温度に保つ時間(1分間)が発生する。
【0091】
[実施例3]
実施形態の前処理液塗布装置100を含む実施例3に係る画像形成システム200を用いて、本発明を説明する。ここで、画像形成システムとは、本実施例では、記録媒体Wとしてロール紙Wrを用いて、ロール紙Wrの表面に画像を形成するもの(システム、装置、機器など)である。なお、本発明を用いることができる画像形成システムは、以下に説明するものに限定されるものではない。
【0092】
[画像形成システムの構成]
図10を用いて、本実施例に係る画像形成システム200の構成を説明する。なお、本実施例に係る画像形成システム200は実施形態に係る前処理液塗布装置100を含むため、異なる部分を主に説明する。
【0093】
図10に示すように、本実施例に係る画像形成システム200は、ロール紙Wrを給紙する給紙装置201と、実施形態に係る前処理装置100と、ロール紙Wrの表面に画像を形成する表面用画像形成装置202aと、を備える。また、画像形成システム200は、ロール紙Wrの裏面に画像を形成するために、ロール紙Wrを反転する反転装置203と、ロール紙Wrの裏面に画像を形成する裏面用画像形成装置202bと、を備える。
【0094】
画像形成システム200は、先ず、給紙装置201のロール管を回転することによって、ロール管に保持されたロール紙Wrを前処理装置100に供給する(図中のWin)。次に、画像形成システム200は、前処理液塗布装置100を用いて、供給されたロール紙Wrの表面(両面)に前処理液を塗布し、塗布した前処理液を乾燥させて、ロール紙Wrを前処理する。その後、画像形成システム200は、前処理されたロール紙Wrを搬出する(図中のWout)。ここで、画像形成システム200が記録媒体Wの表面を前処理する動作は実施形態に係る前処理液塗布装置100の動作と同様のため、説明を省略する。
【0095】
次いで、画像形成システム200は、表面用画像形成装置202aを用いて、ロール紙Wrの一の表面に画像を形成する。また、画像形成システム200は、反転装置203を用いて、ロール紙Wrを反転する。更に、画像形成システム200は、裏面用画像形成装置202bを用いて、反転したロール紙Wrの他の表面に画像を形成する。
【0096】
その後、画像形成システム200は、ロール紙Wrを排紙し、画像形成を終了する。
【0097】
以上の本発明の実施例3に係る画像形成システム200によれば、実施形態に係る前処理液塗布装置100と同様の効果を得ることができる。
【0098】
以上により、本発明の好ましい前処理液塗布装置、画像形成システム又は前処理液
塗布方法に係る実施形態及び実施例について説明したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されるものではない。また、本発明は、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変形又は変更することが可能である。