特許第6036984号(P6036984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6036984-酸窒化物半導体薄膜 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036984
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】酸窒化物半導体薄膜
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20161121BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20161121BHJP
   C01G 15/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 627F
   C01G15/00 B
   C01G15/00 Z
   H01L29/78 618Z
【請求項の数】10
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-504404(P2015-504404)
(86)(22)【出願日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】JP2014055875
(87)【国際公開番号】WO2014136916
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2015年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-47315(P2013-47315)
(32)【優先日】2013年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 徳行
(72)【発明者】
【氏名】井藁 正史
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−058012(JP,A)
【文献】 特開2009−275236(JP,A)
【文献】 特開2013−016866(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/058248(WO,A1)
【文献】 特開2011−181591(JP,A)
【文献】 特開2011−058011(JP,A)
【文献】 特開2010−106291(JP,A)
【文献】 特表2010−535431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
In、OおよびNを含有する結晶質の酸窒化物半導体からなり、
前記酸窒化物半導体の結晶構造が、ビックスバイト型構造のIn23によって構成され、かつ、N原子がIn23相に固溶しており、および、
キャリア濃度が1×1017cm-3以下で、キャリア移動度が5cm2/Vsec以上である、酸窒化物半導体薄膜。
【請求項2】
In、O、Nおよび添加元素M(Mは、Zn、Ga、Ti、Si、Ge、Sn、W、Mg、Al、Yおよび希土類元素から選ばれる1種以上の元素)を含有する結晶質の酸窒化物半導体からなり、
前記酸窒化物半導体の結晶構造が、ビックスバイト型構造のIn23によって構成され、かつ、N原子がIn23相に固溶しており、および、
キャリア濃度が1×1017cm-3以下で、キャリア移動度が5cm2/Vsec以上である、酸窒化物半導体薄膜。
【請求項3】
前記酸窒化物半導体におけるNの含有量は、3×1020atom/cm-3以上1×1022atom/cm-3未満である、請求項1または2に記載の酸窒化物半導体薄膜。
【請求項4】
前記添加元素Mの含有量が、M/(In+M)原子数比で0を超えて0.20以下である、請求項2または請求項2を引用する請求項3に記載の酸窒化物半導体薄膜。
【請求項5】
前記キャリア移動度が15cm2/Vsec以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の酸窒化物半導体薄膜。
【請求項6】
前記キャリア移動度が25cm2/Vsec以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の酸窒化物半導体薄膜。
【請求項7】
膜厚が15nm〜200nmである、請求項1〜6のいずれかに記載の酸窒化物半導体薄膜。
【請求項8】
膜厚が40nm〜100nmである、請求項1〜6のいずれかに記載の酸窒化物半導体薄膜。
【請求項9】
In、OおよびNを含有する非晶質の酸窒化物半導体薄膜、または、In、O、Nおよび添加元素M(Mは、Zn、Ga、Ti、Si、Ge、Sn、W、Mg、Al、Yおよび希土類元素から選ばれる1種以上の元素)を含有する非晶質の酸窒化物半導体薄膜を、加熱温度を200℃以上、加熱時間を1分〜120分としてアニール処理することにより、結晶質の酸窒化物半導体薄膜を得る、請求項1〜8のいずれかに記載の酸窒化物半導体薄膜の製造方法。
【請求項10】
ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、チャネル層およびゲート絶縁膜を備える薄膜トランジスタであって、前記チャネル層が請求項1〜8のいずれかに記載の酸窒化物半導体薄膜により構成されている、薄膜トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ、特に、そのチャネル層材料である酸窒化物半導体薄膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(ThinFilm Transistor:TFT)は、電界効果トランジスタ(Field
EffectTransistor:FET)の1種である。TFTは、基本構成として、ゲート端子、ソース端子、およびドレイン端子を備えた3端子素子であり、基板上に成膜した半導体薄膜を、電子またはホールが移動するチャネル層として用い、ゲート端子に電圧を印加して、チャネル層に流れる電流を制御し、ソース端子とドレイン端子間の電流をスイッチングする機能を有するアクテイブ素子である。現在、TFTのチャネル層として、多結晶シリコン膜やアモルファスシリコン膜が広く使用されている。
【0003】
このうち、アモルファスシリコン膜は、大面積の第10世代ガラス基板への均一成膜が可能であり、液晶パネル用TFTのチャネル層として広く利用されている。しかしながら、キャリアである電子の移動度(キャリア移動度)が1cm2/Vsec以下と低く、高精細パネル用TFTへの適用が困難になりつつある。すなわち、液晶の高精細化に伴い、TFTの高速駆動が要求されており、このようなTFTの高速駆動を実現するためには、アモルファスシリコン膜のキャリア移動度である1cm2/Vsecよりも高いキャリア移動度を示す半導体薄膜をチャネル層に用いる必要がある。
【0004】
これに対して、多結晶シリコン膜は、100cm22/Vsec程度の高いキャリア移動度を示すことから、高精細パネル用TFT向けのチャネル層材料として十分な特性を有している。しかしながら、多結晶シリコン膜は、結晶粒界でキャリア移動度が低下するため、基板の面内均一性に乏しく、TFTの特性にばらつきが生じるという問題がある。また、多結晶シリコン膜の製造工程では、300℃以下の比較的低温でアモルファスシリコン膜を形成した後、この膜をアニール処理工程によって結晶化させている。このアニール処理工程は、エキシマレーザアニールなどを適用する特殊なものであるため、高いランニングコストが必要とされる。加えて、対応できるガラス基板の大きさも第5世代程度に留まっていることから、コストの低減に限界があり、製品展開も限られたものとなっている。
【0005】
このように、TFTのチャネル層の材料として、現在、アモルファスシリコン膜と多結晶シリコン膜の優れた特性を兼ね備え、かつ、低コストで得られる材料が要求されている。たとえば、特開2010−219538号公報では、気相成膜法で成膜され、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)およびO(酸素)から構成され、不純物イオンを添加することなしに、キャリア移動度が1cm2/Vsecより高く、かつ、キャリア濃度が1016/cm3以下である透明アモルファス酸化物薄膜(a−IGZO膜)が提案されている。
【0006】
しかしながら、特開2010−219538号公報で提案されている、スパッタリング法やパルスレーザ蒸着法といった気相成膜法で成膜されるa−IGZO膜は、おおむね1cm2/Vsec〜10cm2/Vsecの範囲の比較的高いキャリア移動度を示すものの、アモルファス酸化物薄膜が本来的に酸素欠損を生成しやすいこと、および、熱など外的因子に対してキャリアである電子の振る舞いが必ずしも安定でないことに起因して、TFTなどのデバイスの動作がしばしば不安定になることが問題となっている。
【0007】
さらには、アモルファス膜に特有である、可視光照射下でTFT素子に負バイアスを連続的に印加すると、しきい電圧が負側にシフトする現象(光負バイアス劣化現象)の発生が、液晶などのディスプレイ用途では深刻な問題となることが指摘されている。
【0008】
一方、特開2008−192721号公報では、高温のプロセスを要することなく高分子基材への素子作製が可能であり、低コストで高性能かつ高信頼性を達成することができる薄膜トランジスタを得ることを目的として、Sn(スズ)、Ti(チタン)、W(タングステン)のいずれかをドープしたIn23(酸化インジウム)膜や、WとZnおよび/またはSnとをドープしたIn23膜が提案されている。特開2008−192721号公報によれば、これらのアモルファスIn23膜をチャネル層に適用することで、TFT素子のキャリア移動度を5cm2/Vsec以上とすることが可能になるとされている。
【0009】
また、特開2010−251604号公報では、Sn、Ti、WおよびZnの1種または2種以上をドープしたIn23の焼結体をターゲットとして、無加熱のスパッタリング法で成膜した後、150℃〜300℃で、10分〜120分の熱処理を行うことにより得られるアモルファスIn23膜が提案されている。特開2010−251604号公報によれば、このような熱処理により、高いキャリア移動度とアモルファス性を兼備するという特徴を維持したまま、比較的容易な制御により、安定性に優れたIn23膜を得ることができるとされている。
【0010】
同様に、特開2011−58012号公報では、In、Ga、Zn、OおよびN(窒素)を含み、Nの濃度が1×1020atom/cc以上1×1022atom/cc以下に制御され、安定性に優れたアモルファスIn23膜が提案されている。
【0011】
しかしながら、これらの文献に記載のIn23膜は、いずれもアモルファス膜であるため、酸素欠損を生成しやすく、熱など外的因子に対して不安定であるという問題や、光負バイアス劣化現象が発生するという問題を、根本的に解決することはできない。また、高精細パネル用TFT向けのチャネル層材料としての使用を考慮した場合、より高いキャリア移動度の達成が望まれている。
【0012】
これに対して、非特許文献1では、GaをドープしたIn23の焼結体をターゲットとして、スパッタリング法でアモルファス膜を成膜した後、300℃で、1時間の熱処理をし、結晶化させることによって得られる、GaをドープしたIn23膜が提案されている。この膜は、高いキャリア移動度を有するものの、酸素欠損の制御が難しく、キャリア濃度が1×1017cm-3台と高くなってしまうことから、安定した特性を有するTFT素子を得ることは難しい。
【0013】
また、特開2009−275236号公報では、Znと、InやGaなどの添加元素を含み、N/(N+O)で表されるNの原子組成比率が7原子%以上100原子%未満である、酸窒化物半導体薄膜が提案されている。この酸窒化物半導体薄膜は、気相中にN(窒素)原子を含む原料ガスを導入またはラジカル源を用いてNラジカルを照射した、スパッタリング法や蒸着法で成膜することによって、あるいは、成膜後に、任意的に150℃〜450℃の温度で熱処理することによって、形成することができる。特開2009−275236号公報によれば、この酸窒化物半導体薄膜は、六方晶構造で、10cm2/Vsec〜30cm2/Vsecという高いキャリア移動度と優れた安定性を有するとされている。ただし、キャリア濃度は、約1×1018cm-3程度と高いものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−219538号公報
【特許文献2】特開2008−192721号公報
【特許文献3】特開2010−251604号公報
【特許文献4】特開2011−58012号公報
【特許文献5】特開2009−275236号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Applied Physics Express5(2012)011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、シリコン半導体薄膜や酸化物半導体薄膜が有する問題を解消し、低いキャリア濃度および高いキャリア移動度を備え、薄膜トランジスタ(TFT)のチャネル層材料として好適な半導体薄膜を、酸窒化物結晶質薄膜により提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の酸窒化物半導体薄膜は、In、OおよびNを含有する結晶質の酸窒化物半導体からなり、または、In、O、Nおよび添加元素M(Mは、Zn、Ga、Ti、Si、Ge、Sn、W、Mg、Al、Yおよび希土類元素から選ばれる1種以上の元素)を含有する結晶質の酸窒化物半導体からなり、キャリア濃度が1×1017cm-3以下で、キャリア移動度が5cm2/Vsec以上であることを特徴とする。
【0018】
前記酸窒化物半導体におけるNの含有量は、3×1020atom/cm-3以上1×1022atom/cm-3未満であることが好ましい。
【0019】
前記酸窒化物半導体の結晶構造は、ビックスバイト型構造のIn23によって構成されており、かつ、N原子がIn23相に固溶していることが好ましい。
【0020】
前記添加元素Mの含有量が、M/(In+M)原子数比で0を超えて0.20以下であることが好ましい。
【0021】
前記キャリア移動度が15cm2/Vsec以上であることが好ましく、25cm2/Vsec以上であることがより好ましい。
【0022】
酸窒化物半導体の膜厚は、15nm〜200nmであることが好ましく、40nm〜100nmであることがより好ましい。
【0023】
このような結晶質の酸窒化物半導体薄膜は、In、OおよびNを含有する非晶質の酸窒化物半導体薄膜、または、In、O、Nおよび添加元素M(Mは、Zn、Ga、Ti、Si、Ge、Sn、W、Mg、Al、Yおよび希土類元素から選ばれる1種以上の元素)を含有する非晶質の酸窒化物半導体薄膜を、加熱温度を200℃以上、加熱時間を1分〜120分としてアニール処理することにより得ることができる。
【0024】
また、本発明の薄膜トランジスタは、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、チャネル層およびゲート絶縁膜を備える薄膜トランジスタであって、チャンネル層が、本発明の酸窒化物半導体薄膜により構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の酸窒化物半導体薄膜は、酸窒化物結晶質薄膜であり、1×1017cm-3以下という低いキャリ濃度と、5cm2/Vsec以上という高いキャリア移動を有する。加えて、本発明の酸窒化物半導体薄膜は、従来の酸化物半導体薄膜、特にアモルファス酸化物半導体薄膜で問題となっていた、酸素欠損の生成しやすい、熱などの外的因子に対して不安定である、あるいは、光負バイアス劣化現象が発生しやすいといった欠陥を有していない。
【0026】
また、本発明によれば、所定の組成の酸窒化物からなる非晶質の薄膜を、400℃以下のアニール処理によって、高い結晶性を有する結晶質の酸窒化物薄膜に転換することが可能である。
【0027】
さらに、本発明の酸窒化物半導体薄膜をチャネル層材料として用いることにより、TFTの特性向上を低コストで実現することができる。このため、本発明は、工業的にきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明のTFT素子の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者らは、酸化物半導体薄膜の代替材料について鋭意検討を行った。具体的には、スパッタリング法によって得られる、Inを主成分とする酸窒化物半導体薄膜に対して、アニール処理を施すことにより、結晶質の酸窒化物半導体薄膜を形成する実験を重ねた。その際、結晶質の酸窒化物半導体薄膜が、キャリア濃度を抑制しつつ、高いキャリア移動度を発現する条件について、詳細な検討を行った。この結果、本発明者らは、In、OおよびN、または、これらに所定の添加元素を加えた非晶質の酸窒化物半導体薄膜に対して、所定条件のアニール処理を行うことにより得られる結晶質の酸窒化物半導体薄膜が、5cm2/Vsec以上という高いキャリア濃度を有しながらも、1×1017cm-3という低いキャリア濃度を示し、薄膜トランジスタ(TFT)のチャンネル材料として好適に用いることができるとの知見を得た。本発明は、この知見に基づき完成するに至ったものである。
【0030】
以下、本発明の酸窒化物半導体薄膜、および、この酸窒化物半導体薄膜をチャネル層材料として用いた薄膜トランジスタ(TFT)について、詳細に説明する。
【0031】
1.酸窒化物半導体薄膜
(1)組成
本発明の酸窒化物半導体は、In、OおよびN、または、これらに加えて、所定の添加元素Mを含有する酸窒化物半導体からなる。
【0032】
一般的に、Inを主成分とする結晶質の酸化物半導体薄膜は、酸素欠損が生じやすく、この酸素欠損を主なキャリア源とするため、キャリア濃度が高くなる傾向にある。しかしながら、本発明では、Nを添加することにより酸窒化物半導体薄膜を形成しており、アクセプタとして振る舞うNによって生成したホールが、酸素欠損により生じたキャリアとなる電子を中和するため、結果として、キャリア濃度を抑制することが可能となっている。
【0033】
酸窒化物半導体薄膜中におけるNの含有量は、3×1020atom/cm-3以上1×1022atom/cm-3未満、好ましくは5×1020atom/cm-3以上8×1021atom/cm-3以下、より好ましくは8×1020atom/cm-3以上6×1021atom/cm-3以下とする。Nの含有量が3×1020atom/cm-3未満では、上記効果を十分に得ることができない。一方、Nの含有量を1×1022atom/cm-3以上としても、それ以上の効果を期待できない。また、結晶化温度が高くなりすぎるため、400℃以上の高温でアニール処理を行っても、結晶質の酸窒化物半導体薄膜を得ることが困難となる。
【0034】
本発明の酸窒化物半導体薄膜は、In、OおよびNに加えて、添加元素Mとして、キャリア移動度の低下を抑えつつ、キャリア源としてキャリア濃度を必要以上に高めることなく、酸素欠損の発生を抑制する作用が支配的になる添加元素を含有することができる。具体的には、Zn、Ga、Ti、Si(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)、Sn、W、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、Y(イットリウム)、並びに、La(ランタン)やSc(スカンジウム)に代表される希土類元素から選ばれる1種以上の元素を含有することができる。なお、希土類元素については、LaやScなどに代表される3価の元素が、イオン化不純物散乱因子になりにくく、添加元素として好適に使用することができる。
【0035】
添加元素Mを含有する場合、その含有量は、M/(In+M)原子数比で、好ましくは0を超えて0.20以下、より好ましくは0.05以上0.15以下、さらに好ましくは0.08以上0.12以下とする。Mの含有量が、M/(In+M)原子数比で、0.20を超えると、酸窒化物半導体薄膜中のInの比率が低下し、キャリア移動度を5cm2/Vsec以上とすることができない。ただし、添加元素MとしてZnを使用する場合は、結晶構造が六方晶構造になりやすいため、その含有量を、好ましくは0.10以下、より好ましくは0.05以下とする。
【0036】
(2)結晶構造
本発明の酸窒化物半導体薄膜では、結晶質である限り、結晶構造については特に制限されることはないが、ビックスバイト型構造のIn23相によって構成されており、かつ、N原子が、In23相に固溶していることが好ましい。特に、In23相の酸素サイトに、N原子の全部もしくは一部が置換している、またはIn23相の結晶格子間に、N原子の全部もしくは一部が侵入していることが好ましい。ビックスバイト型構造のIn23相では、InとOからなるInO6八面体構造が形成されており、隣り合うInO6八面体構造が稜共有していることに起因して、In−In間の距離が短くなり、キャリアとなる電子の軌道の重なりが大きくなる。このため、酸窒化物半導体薄膜を、このような結晶構造を備えたものとすることで、キャリア移動度を向上させることができる。
【0037】
ここで、ビックスバイト型構造のIn23相によって構成されているとは、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されている場合ばかりでなく、ビックスバイト型構造のIn23相のほかに、この結晶構造が崩れない範囲で異相が存在する場合も含まれる。なお、酸窒化物半導体薄膜の結晶構造は、X線回折測定によって特定することができる。
【0038】
(3)膜厚
本発明の酸窒化物半導体薄膜の膜厚は、好ましくは15nm〜200nm、より好ましくは30nm〜150nm、さらに好ましくは40nm〜100nmの範囲に制御される。なお、膜厚は、表面形状測定装置により測定することができる。
【0039】
一般に、半導体薄膜は、ガラス基板上に形成されることが多い。すなわち、非晶質の基板上に、結晶質の酸窒化物半導体薄膜が形成されることになる。したがって、本発明の酸窒化物半導体薄膜において、膜厚が15nm未満の場合には、基板の影響によって400℃程度の高温でアニール処理を行っても、前駆体である酸窒化物アモルファス薄膜が結晶化しない場合がある。仮に、この酸窒化アモルファス薄膜を結晶化させることができても、その結晶性を十分なものとすることは困難である。基板が非晶質であることによる酸窒化物半導体の結晶性への影響は、膜厚を30nm以上とすることで、より軽減することができるが、40nm以上とすることで、安定的にその影響を排除すること可能となる。ただし、コスト面を考慮すると、膜厚の上限値は、200nm以下とすることが好ましく、150nm以下とすることがより好ましく、100nm以下とすることがさらに好ましい。
【0040】
また、膜厚を100nm近傍に制御することにより、酸窒化物半導体薄膜が、ガラス基板上に形成された場合、光学的な干渉によって、青色光の透過率の向上が期待できる。したがって、本発明の酸窒化物半導体薄膜を、透明TFTへ適用する場合には、膜厚を100nm近傍に調整することが好ましい。
【0041】
(4)特性
本発明の酸窒化物半導体薄膜は、In、OおよびN、または、これらに所定の添加元素Mを加えた酸窒化物からなり、結晶質で構成されている。このため、本発明の酸窒化物半導体薄膜を適用したTFT素子は、熱などの外的因子に対して高い安定性を有しており、かつ、光負バイアス劣化現象が発生するという欠陥を有しない。
【0042】
本発明の酸窒化物半導体薄膜では、キャリア濃度は1×1017cm-3以下、好ましくは8×1016cm-3以下、より好ましくは5×1016cm-3以下に制御することが必要となる。キャリア濃度が1×1017cm-3を超えると、高いon/off比を実現することが困難となるため、高速駆動が要求されるTFTのチャンネル層の材料として適用することができない。ここで、on/off比とは通電状態と遮断状態における電流値の比を意味する。
【0043】
一方、キャリア移動度は5cm2/Vsec以上に制御することが必要となる。キャリア移動度が5cm2/Vsec未満では、TFTの高い画素制御性能を確保することが困難となる。特に、高精細液晶パネル用TFTへの適用を考慮すれば、キャリア移動度を、好ましくは15cm2/Vsec以上、より好ましくは25cm2/Vsec以上に制御することが必要となる。
【0044】
なお、キャリア濃度およびキャリア移動度は、ホール効果測定装置により、酸窒化物半導体薄膜のホール効果を測定することにより求めることができる。
【0045】
このように本発明の酸窒化物半導体薄膜は、キャリア濃度およびキャリア移動度が、上記範囲となるように制御されているため、酸化物透明導電膜よりも2桁〜4桁も低いキャリア濃度が要求されるチャネル層の材料として好適に用いることができるばかりでなく、その高いキャリア移動度により、TFTの高い画素制御性能を確保することが可能となっている。
【0046】
また、本発明の酸窒化物半導体薄膜は、ウェットエッチングあるいはドライエッチングによって、TFTなどの用途で必要な微細加工を容易にすることができる。たとえば、最初に非晶質膜を形成し、その後、結晶化温度以上でアニール処理して酸窒化物半導体薄膜を結晶化させることにより、本発明の酸窒化物半導体薄膜を製造する場合、非晶質膜の形成後に弱酸を用いたウェットエッチングによる加工を行うことができる。この場合、弱酸であれば、特に限定されることなく使用できるが、蓚酸を主成分とする弱酸が好ましい。具体的には、関東化学株式会社製の透明導電膜エッチング液(ITO−06N)などを使用することができる。一方、ドライエッチングの場合は、酸窒化物半導体薄膜に対して、適切なエッチングガスを用いて加工することができる。
【0047】
2.酸窒化物半導体薄膜の製造方法
上述したように、本発明の酸窒化物半導体薄膜は、結晶質であることが必要とされる。このような結晶質薄膜を得る方法としては、成膜時の基板温度を結晶化温度以上として成膜する方法、および、結晶化温度未満でアモルファス膜を成膜した後、アニール処理などにより結晶化する方法が挙げられる。本発明では、いずれの方法も採用することができるが、アモルファス膜に対してアニール処理をすることにより、効率よく酸素欠損を消失することできるため、低いキャリア濃度を得る観点から、後者の方法を採用することが有利である。このため、以下では、後者の方法によって、本発明の酸窒化物半導体薄膜を製造方法について説明する。
【0048】
(1)成膜工程
(基板)
本発明の酸窒化物半銅薄膜を成膜する基板としては、ガラス基板やSi(ケイ素)などの半導体デバイス用基板を用いることができる。また、これら以外の基板であっても、成膜時あるいはアニール処理時の温度に耐え得るものであれば、樹脂板や樹脂フィルムなども使用することができる。
【0049】
(原材料)
原材料としては、酸化物焼結体または酸窒化物焼結体を使用することができる。ただし、原材料に酸化物焼結体を使用する場合は、後述する成膜時の雰囲気に、Nを含有することが必要となる。
【0050】
原材料となる酸化物焼結体または酸窒化物焼結体の金属元素の組成比は、成膜条件に応じて適宜設定することが可能であるが、通常、目的とする酸窒化物半導体薄膜を構成する金属元素の組成比と同様とすることが好ましい。
【0051】
(成膜方法)
本発明の酸窒化物半導体薄膜を成膜するための方法は、特に限定されることはなく、スパッタリング法、イオンプレーティング法またはエピタキシャル成長法などを用いることができる。これらの中で、成膜時の熱影響が少なく、高速成膜が可能な直流スパッタリング法を用いることが好ましい。
【0052】
たとえば、スパッタリング法により、酸窒化物半導体薄膜を成膜する場合、スパッタリング装置のチャンバ内の圧力を、真空排気することにより2×10-4Pa以下とした後、Ar(アルゴン)、O2およびN2からなる混合ガスを導入し、ガス圧を0.1Pa〜1Pa、好ましくは0.2Pa〜0.8Pa、より好ましくは0.2Pa〜0.5Paに調整するとともに、ターゲット−基板間距離を10mm〜100mm、好ましくは40mm〜70mmの範囲に調整する。次に、ターゲットの面積に対する直流電力、すなわち直流電力密度が1W/cm2〜3W/cm2程度の範囲となるよう直流電力を印加して、直流プラズマを発生させ、プリスパッタリングを5分間〜30分間行った後、必要により基板位置を修正した上で、同様の条件で、スパッタリングを行う。
【0053】
成膜時の基板温度は、膜厚が15nm〜70nmの範囲であれば、200℃以下とし、膜厚が70nm〜200nmの範囲であれば、100℃以下とすることが好ましい。いずれの場合も、室温から100℃までの範囲とすることがより好ましい。
【0054】
スパッタリングガスとしては、酸窒化物焼結体をターゲットとする場合は、不活性ガスとO2からなる混合ガス、好ましくはArとO2からなる混合ガスを使用する。これに対して、酸化物焼結体をターゲットとする場合、不活性ガス、O2およびN2からなる混合ガス、好ましくはAr、O2およびN2からなる混合ガスを使用する。
【0055】
スパッタリングガス中のO2濃度は、スパッタリング条件、特に、直流電力密度に応じて適宜調整することが必要となる。たとえば、直流電力密度を1W/cm2〜3W/cm2の範囲に制御してスパッタリングを行う場合、O2濃度は、好ましくは0.1体積%〜10体積%、より好ましくは0.5体積%〜8.0体積%、さらに好ましくは1.0体積%〜5.0体積%の範囲に制御する。O2濃度が0.1体積%未満では、酸素欠損が生じ、キャリア濃度が高くなる可能性がある。一方、10体積%を超えると、成膜速度が大幅に低下してしまう。
【0056】
なお、スパッタリングガスとして、不活性ガス、O2およびN2からなる混合ガスを使用する場合、スパッタリングガス中のN2濃度も、同様に、直流電力などのスパッタリング条件に応じて適宜調整することが必要となる。たとえば、直流電力密度を上記範囲に制御してスパッタリングを行う場合、N2濃度を、好ましくは0.4体積%以上6.0体積%未満、より好ましくは0.5体積%以上5.7体積%以下、さらに好ましくは1.0体積%以上5.0体積%以下に制御する。N2濃度が0.4体積%未満では、十分な量のNが固溶した酸窒化物半導体薄膜を得ることができないおそれがある。一方、N2濃度が6.0体積%以上では、成膜速度が大幅に低下するばかりでなく、酸窒化物半導体薄膜におけるNの含有量が増加することで結晶化温度が高温となり、400℃以上のアニール処理でも結晶質の酸窒化物半導体薄膜を得ることが困難となる。
【0057】
(2)アニール工程
上述したように、本発明の酸窒化半導体薄膜の製造方法では、非晶質の酸窒化半導体薄膜を成膜した後に、アニール処理を行うことにより、この酸窒化半導体薄膜を結晶化させることが必要となる。
【0058】
アニール処理時の加熱温度は200℃以上、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上とする必要がある。加熱温度が200℃未満では、酸窒化物半導体薄膜を十分に結晶化することができない。なお、加熱温度の上限は、特に制限されるべきものではないが、生産性を考慮すると、400℃以下とすることが好ましい。
【0059】
処理時間は、1分〜120分、好ましくは5分〜60分とする。処理時間が1分未満では、得られる酸窒化物半導体薄膜を十分に結晶化せることができない。一方、処理時間が120分を超えても、それ以上の効果は望めず、生産性が悪化してしまう。
【0060】
アニール処理の雰囲気については制限されることはないが、結晶化させることに加えて、キャリア濃度を低減させることを目的とする場合、O2を含む雰囲気が好ましく、O2濃度を20体積%以上とすることがより好ましく、大気中で行うことがさらに好ましい。
【0061】
これらの条件は、アニール処理に使用するアニール炉の性能に応じて、適宜調整することが好ましく、予備試験を行った上で適宜調整することがより好ましい。
【0062】
なお、特開2010−251604号公報では、上述したように、チャネル層などを、無加熱スパッタリング法により成膜した後、大気中、150℃〜300℃で、10分〜120分の条件でアニール処理をすることにより、アモルファス性を保ったまま、アモルファス膜中の過剰な欠陥を減少させる技術が記載されている。また、その実施例では、無加熱で成膜したIn−W−Zn−O膜(W=1wt%〜10wt%)に対して、大気中、150℃で30分間のアニール処理を行っている。すなわち、特開2010−251604号公報に記載の技術は、In23相に固溶して結晶化温度を高めることが可能な元素を、相当量添加することで、上記温度範囲のアニール処理において、酸化物半導体薄膜のアモルファス性を保持することを可能とする技術であり、この点において本発明とは相違するものである。
【0063】
また、特開2009−275236号公報では、スパッタリング法や蒸着法によって得られたアモルファスの酸窒化物半導体薄膜を、150℃〜450℃の温度でアニール処理することにより、膜厚と同程度の結晶粒径を有する、六方晶構造の結晶質酸窒化物半導体薄膜に転換している。このように特開2009−275236号公報に記載の酸窒化物半導体薄膜は、六方晶構造を基本としているため、結晶構造が複雑な薄膜の形成過程において酸素欠損が生成しやすく、キャリア濃度の抑制効果が小さいという点で、本発明とは相違するものである。
【0064】
3.TFT素子
本発明の薄膜トランジスタ(TFT)は、チャネル層材料に、本発明の酸窒化物半導体薄膜を適用している点に特徴がある。TFTの構造は限定されないが、たとえば、図1に示した構成のTFT素子を例示することができる。
【0065】
図1のTFT素子は、熱酸化によってSiO2膜が表面に形成されたSiO2/Si基板上に、本発明の酸窒化物半導体薄膜、およびAu/Ti積層電極によって構成される。この構成において、ゲート電極1はSi基板、ゲート絶縁層2はSiO2膜、チャネル層3は本発明の酸窒化物半導体薄膜、ソース電極4およびドレイン電極5はAu/Ti積層電極により構成される。
【0066】
図1のTFT素子では、SiO2/Si基板を用いたが、基板はこれに限定されるものではなく、従来から薄膜トランジスタを含む電子デバイスの基板として使用されているものを用いることもできる。たとえば、SiO2/Si基板やSi基板のほかに、無アルカリガラス、石英ガラスなどのガラス基板を用いることができる。また、各種の金属基板やプラスチック基板、ポリイミドなどの不透明の耐熱性高分子フィルム基板などを用いることもできる。
【0067】
ゲート電極1は、図1のTFT素子ではSi基板により構成されているが、これに限定されることはない。たとえば、Mo(モリブデン)、Al、Ta(タンタル)、Ti、Au(金)、Pt(白金)などの金属薄膜、これら金属の導電性酸化物、窒化物薄膜または酸窒化物薄膜、あるいは各種の導電性高分子材料を用いることができる。透明TFTの場合には、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電膜を用いることができる。さらに、本発明の酸窒化物半導体薄膜と同様の金属元素組成を有する酸窒化物半導体薄膜をゲート電極1として用いることもできる。いずれの材料を用いる場合であっても、ゲート電極1には、良好な導電性が求められる。具体的には、ゲート電極1の比抵抗は、1×10-6Ω・cm〜1×10-1Ω・cmの範囲にあることが好ましく、1×10-6Ω・cm〜1×10-3Ω・cmの範囲にあることがより好ましい。
【0068】
また、ゲート絶縁層2は、SiO2、Y23、Ta25、Hf酸化物などの金属酸化物薄膜やSiNxなどの金属窒化物薄膜、あるいはポリイミドをはじめとする絶縁性の高分子材料などの公知の材料を用いることができる。ゲート絶縁層2の比抵抗は、1×106Ω・cm〜1×1015Ω・cmの範囲であることが好ましく、1×1010Ω・cm〜1×1015Ω・cmであればより好ましい。
【0069】
チャネル層3の比抵抗は、特に制限されるものではないが、10-1Ω・cm〜106Ω・cmに制御されることが好ましく、1Ω・cm〜103Ω・cmに制御されることがより好ましい。なお、本発明の酸窒化物半導体薄膜では、スパッタリング法あるいはイオンプレーティング法における成膜条件や結晶化のアニール処理の条件の選択によって、酸素欠損の生成量が調整可能であることから、比較的容易に、比抵抗を制御することができる。
【0070】
ソース電極4およびドレイン電極5としては、ゲート電極1と同様に、Mo、Al、Ta、Ti、Au、Ptなどの金属薄膜もしくはこれらの金属の合金薄膜、これら金属の導電性酸化物、窒化物薄膜または酸窒化物薄膜、あるいは各種の導電性高分子材料を用いることができる。透明TFTの場合には、ITOなどの透明導電膜を用いることができる。さらに、これらの薄膜を積層化したものを用いてもよい。このソース電極4やドレイン電極5には良好な導電性が求められる。具体的には、ソース電極4およびドレイン電極4の比抵抗は、10-6Ω・cm〜10-1Ω・cmの範囲にあることが好ましく、10-6Ω・cm〜10-3Ω・cmの範囲にあることがより好ましい。
【0071】
4.TFT素子の製造方法
本発明のTFT素子の製造方法について、酸窒化物半導体薄膜の形成に際し、低温成膜後にアニール処理をする方法を例に挙げて説明する。
【0072】
初めに、高ドープのn型Siウエハ基板の表面に、熱酸化によってSiO2膜を形成し、SiO2/Si基板とする。この基板を100℃以下に保持したまま、SiO2膜上に、直流マグネトロンスパッタリング法により、所定の膜厚を有する非晶質の酸窒化物半導体薄膜を形成する。なお、この際の成膜条件については、「2.酸窒化物半導体薄膜の製造方法」で説明した条件と同様であるため、ここでの説明は省略する。また、この非晶質薄膜の形成時に、マスキングをした上で成膜を行うことにより、あるいは、非晶質薄膜の形成後に、フォトリソグラフィ技術などを利用してエッチングすることにより、所望のチャネル長および/またはチャネル幅を有する酸窒化物半導体薄膜を形成することができる。
【0073】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、アニール処理を行うことにより、結晶質の酸窒化物半導体薄膜とする。このアニール処理の条件についても、「2.酸窒化物半導体薄膜の製造方法」で説明した条件と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0074】
その後、得られた結晶質の酸窒化物半導体薄膜(チャネル層)上に、マスキングを施した上で膜厚5nmのTi薄膜および膜厚100nmのAu薄膜を順次積層して、ソース電極およびドレイン電極を形成することにより、本発明のTFT素子を得ることができる。なお、ソース電極およびドレイン電極の形成については、チャネル層の形成と同様に、Ti薄膜およびAu薄膜の形成後に、フォトリソグラフィ技術などを利用してエッチングをする方法を採用してもよい。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の実施例を用いて、さらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
In23相のみによって構成されるIn23からなる酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとして使用し、酸窒化物半導体薄膜の成膜を実施した。
【0077】
初めに、このスパッタリングターゲットを、アーキング抑制機能のない直流マグネトロンスパッタリング装置(トッキ株式会社製、SPK503)の非磁性体ターゲット用カソードに取り付けた。また、基板には、無アルカリのガラス基板(コーニング社製、EAGLE XG)を使用した。ターゲット−基板間距離を60mmに固定し、2×10-4Pa以下まで真空排気後、Ar、O2およびN2からなる混合ガスを、O2濃度が1.5体積%、N2濃度が1.5体積%になるように導入し、ガス圧を0.6Paに調整した。
【0078】
その後、直流電力300W(1.64W/cm2)を印加して直流プラズマを発生させ、成膜を実施した。具体的には、10分間のプリスパッタリング後、スパッタリングターゲットの静止対向位置に基板を配置し、基板を加熱せずにスパッタリングを実施した。これにより、膜厚50nmの酸窒化物半導体薄膜を成膜した。得られた酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製、SPS3520UV)を用いてICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜の結晶構造を、X線回折装置(パナリティカル社製、X´PertPRO MPD)を用いて、X線回折により測定した結果、この酸窒化物半導体薄膜は非晶質であることが確認された。
【0079】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、大気中、300℃、30分間の条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析装置(アルバック・ファイ株式会社製、PHI ADEPT1010)を用いて、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを8×1020atom/cm-3程度含有していることが確認された。なお、2次イオン質量分析測定はIn23薄膜にNをイオン注入した標準試料を用いて定量した。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0080】
その後、表面形状測定装置(ケーエルエー・テンコール株式会社製、Alpha−Step IQ)を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置(株式会社東陽テクニカ製、ResiTest8400)を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜のホール効果を測定した結果、キャリア濃度は5×1016cm-3であり、キャリア移動度は29cm2/Vsecであることが確認された。
【0081】
(実施例2)
大気中、400℃で30分間のアニール処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0082】
アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを8×1020atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0083】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は2×1016cm-3であり、キャリア移動度は30cm2/Vsecであることが確認された。
【0084】
(実施例3)
スパッタリングガス中のO2濃度を1.4体積%、N2濃度を5.7体積%としたこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0085】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0086】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例1と同じ条件でアニール処理を実施した。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを5×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0087】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は8×1015cm-3であり、キャリア移動度は27cm2/Vsecであることが確認された。
【0088】
(実施例4)
スパッタリングガス中のO2濃度を1.4体積%、N2濃度を5.7体積%としたこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0089】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0090】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を実施した。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを5×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0091】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は4×1015cm-3であり、キャリア移動度は30cm2/Vsecであることが確認された。
【0092】
(実施例5)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0093】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0094】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例1と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを1×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0095】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は7×1014cm-3であり、キャリア移動度は28cm2/Vsecであることが確認された。
【0096】
(実施例6)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0097】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0098】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを1×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0099】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は4×1014cm-3であり、キャリア移動度は30cm2/Vsecであることが確認された。
【0100】
(実施例7)
スパッタリングガス中のO2濃度を1.5体積%、N2濃度を0.5体積%としたこと以外は、実施例5と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0101】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0102】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を実施した。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを4×1020atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0103】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は1×1015cm-3であり、キャリア移動度は28cm2/Vsecであることが確認された。
【0104】
(実施例8)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0105】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0106】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、熱処理時間を120分にしたこと以外は実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを1×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0107】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は2×1014cm-3であり、キャリア移動度は20cm2/Vsecであることが確認された。
【0108】
(実施例9)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0109】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0110】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、熱処理時間を60分にしたこと以外は実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを1×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0111】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は3×1014cm-3であり、キャリア移動度は27cm2/Vsecであることが確認された。
【0112】
(実施例10)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0113】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0114】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、熱処理時間を5分にしたこと以外は実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを1×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0115】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は6×1014cm-3であり、キャリア移動度は30cm2/Vsecであることが確認された。
【0116】
(実施例11)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0117】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0118】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、熱処理時間を1分にしたこと以外は実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを1×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0119】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は1×1015cm-3であり、キャリア移動度は30cm2/Vsecであることが確認された。
【0120】
(実施例12)
スパッタリングガス中のO2濃度を1.4体積%、N2濃度を5.7体積%としたこと以外は、実施例5と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0121】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0122】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例1と同じ条件でアニール処理を実施した。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを8×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0123】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は6×1014cm-3であり、キャリア移動度は26cm2/Vsecであることが確認された。
【0124】
(実施例13)
スパッタリングガス中のO2濃度を1.4体積%、N2濃度を5.7体積%としたこと以外は、実施例5と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0125】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0126】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を実施した。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを8×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0127】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は3×1014cm-3であり、キャリア移動度は28cm2/Vsecであることが確認された。
【0128】
(実施例14)
膜厚を15nmとしたこと以外は、実施例5と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0129】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0130】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を実施した。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを3×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0131】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、15nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は6×1014cm-3であり、キャリア移動度は26cm2/Vsecであることが確認された。
【0132】
(実施例15)
膜厚を200nmとしたこと以外は、実施例5と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0133】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0134】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を実施した。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを8×1020atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0135】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、200nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は3×1014cm-3であり、キャリア移動度は29cm2/Vsecであることが確認された。
【0136】
(実施例16)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga+Y)原子数比で0.10とYを、Y/(In+Ga+Y)原子数比で0.05含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0137】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0138】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを4×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0139】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は3×1014cm-3であり、キャリア移動度は27cm2/Vsecであることが確認された。
【0140】
(実施例17)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga+La)原子数比で0.10とLaを、La/(In+Ga+La)原子数比で0.05含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0141】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0142】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを2×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0143】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は2×1014cm-3であり、キャリア移動度は26cm2/Vsecであることが確認された。
【0144】
(実施例18)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga)原子数比で0.05含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0145】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0146】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを8×1020atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0147】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は7×1014cm-3であり、キャリア移動度は29cm2/Vsecであることが確認された。
【0148】
(実施例19)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga)原子数比で0.08含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0149】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0150】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを9×1020atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0151】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は5×1014cm-3であり、キャリア移動度は29cm2/Vsecであることが確認された。
【0152】
(実施例20)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga)原子数比で0.12含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0153】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0154】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを2×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0155】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は3×1014cm-3であり、キャリア移動度は27cm2/Vsecであることが確認された。
【0156】
(実施例21)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga)原子数比で0.15含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0157】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0158】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを3×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0159】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を表面形状測定装置で測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は2×1014cm-3であり、キャリア移動度は26cm2/Vsecであることが確認された。
【0160】
(実施例22)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga)原子数比で0.20含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0161】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0162】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを4×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0163】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は1×1014cm-3であり、キャリア移動度は25cm2/Vsecであることが確認された。
【0164】
(実施例23)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Znを、Zn/(In+Zn)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0165】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0166】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを9×1020atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0167】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は2×1015cm-3であり、キャリア移動度は12cm2/Vsecであることが確認された。
【0168】
(実施例24)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Tiを、Ti/(In+Ti)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0169】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0170】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを2×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0171】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は6×1014cm-3であり、キャリア移動度は8cm2/Vsecであることが確認された。
【0172】
(実施例25)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Wを、W/(In+W)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0173】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0174】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを9×1020atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0175】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は7×1014cm-3であり、キャリア移動度は10cm2/Vsecであることが確認された。
【0176】
(実施例26)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Mgを、Mg/(In+Mg)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0177】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0178】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを9×1020atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0179】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は1×1015-3であり、キャリア移動度は8cm2/Vsecであることが確認された。
【0180】
(実施例27)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Alを、Al/(In+Al)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0181】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0182】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを3×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0183】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は8×1014cm-3であり、キャリア移動度は22cm2/Vsecであることが確認された。
【0184】
(実施例28)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Yを、Y/(In+Y)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0185】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0186】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを3×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0187】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は3×1015cm-3であり、キャリア移動度は20cm2/Vsecであることが確認された。
【0188】
(実施例29)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Laを、La/(In+La)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0189】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0190】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを2×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0191】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は1×1015cm-3であり、キャリア移動度は18cm2/Vsecであることが確認された。
【0192】
(実施例30)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Scを、Sc/(In+Sc)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0193】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0194】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを2×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0195】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は6×1015cm-3であり、キャリア移動度は17cm2/Vsecであることが確認された。
【0196】
(実施例31)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Siを、Si/(In+Si)原子数比で0.05含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0197】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0198】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを4×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0199】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は8×1016cm-3であり、キャリア移動度は29cm2/Vsecであることが確認された。
【0200】
(実施例32)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Geを、Ge/(In+Ge)原子数比で0.05含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0201】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0202】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを2×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0203】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は7×1016cm-3であり、キャリア移動度は31cm2/Vsecであることが確認された。
【0204】
(実施例33)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Snを、Sn/(In+Sn)原子数比で0.05含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0205】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0206】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを2×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0207】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は9×1016cm-3であり、キャリア移動度は35cm2/Vsecであることが確認された。
【0208】
(実施例34)
大気中、200℃で30分間のアニール処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0209】
アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを8×1020atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0210】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は9×1016cm-3であり、キャリア移動度は6cm2/Vsecであることが確認された。
【0211】
(実施例35)
大気中、200℃で30分間のアニール処理を行ったこと以外は、実施例5と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0212】
アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを1×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本実施例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0213】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は1×1015cm-3であり、キャリア移動度は7cm2/Vsecであることが確認された。
【0214】
(比較例1)
スパッタリングガスとして、ArとO2からなる混合ガスを、O2濃度が1.5体積%になるように導入したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0215】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0216】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例1と同じ条件でアニール処理を実施した。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを2×1020atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本比較例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0217】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は2×1019cm-3であり、キャリア移動度は22cm2/Vsecであることが確認された。
【0218】
(比較例2)
スパッタリングガスとして、ArとO2からなる混合ガスを、O2濃度が1.5体積%になるように導入したこと以外は、実施例5と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0219】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0220】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例1と同じ条件でアニール処理を実施した。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを2×1020atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本比較例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0221】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は3×1017cm-3であり、キャリア移動度は14cm2/Vsecであることが確認された。
【0222】
(比較例3)
大気中、180℃で30分間のアニール処理を行ったこと以外は、実施例5と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0223】
アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は非晶質であることが確認された。その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。
【0224】
なお、比較例3の酸窒化物半導体薄膜は上述のように結晶化していなかったため、2次イオン質量分析測定およびホール効果測定は実施しなかった。
【0225】
(比較例4)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga)原子数比で0.25含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0226】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0227】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを1×1021atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本比較例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0228】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は2×1014cm-3であり、キャリア移動度は4cm2/Vsecであることが確認された。
【0229】
(比較例5)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0230】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0231】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、熱処理時間を0.5分としたこと以外は実施例2と同じ条件でアニール処理を行った。
【0232】
アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は非晶質であることが確認された。その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。
【0233】
なお、比較例5の酸窒化物半導体薄膜は上述のように結晶化していなかったため、2次イオン質量分析測定およびホール効果測定は実施しなかった。
【0234】
(比較例6)
スパッタリングガス中のO2濃度を1.5体積%、N2濃度を0.3体積%としたこと以外は、実施例5と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0235】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により測定した結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0236】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を実施した。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ビックスバイト型構造のIn23相のみによって構成されていることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを3×1020atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本比較例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0237】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は1×1019cm-3であり、キャリア移動度は24cm2/Vsecであることが確認された。
【0238】
(比較例7)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Znを、Zn/(In+Zn)原子数比で0.65含有する酸化物焼結体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0239】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により調べた結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0240】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例1と同じ条件でアニール処理を実施した。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は結晶化しており、ウルツ鉱型構造のZnO相を有していることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを8×1020atom/cm-3程度含有していることが確認された。これらの結果から、本比較例の酸窒化物半導体薄膜では、NはIn23相中に固溶していると理解される。
【0241】
その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、ホール効果測定装置を用いて、ホール効果を測定した結果、キャリア濃度は6×1019cm-3であり、キャリア移動度は26cm2/Vsecであることが確認された。
【0242】
(比較例8)
スパッタリングガス中のO2濃度を1.5体積%、N2濃度を6.0体積%としたこと以外は、実施例5と同様にして、酸窒化物半導体薄膜を得た。
【0243】
この酸窒化物半導体薄膜に含まれる金属成分の組成を、ICP発光分光分析法により調べた結果、酸化物焼結体の組成とほぼ同じであることが確認された。また、この酸窒化物半導体薄膜に対して、X線回折測定を行った結果、非晶質であることが確認された。
【0244】
次に、この酸窒化物半導体薄膜に対して、実施例2と同じ条件でアニール処理を実施した。アニール処理後の酸窒化物半導体薄膜に対して、同様に、X線回折測定を行った結果、酸窒化物半導体薄膜は非晶質であることが確認された。その後、表面形状測定装置を用いて、得られた酸窒化物半導体薄膜の膜厚を測定した結果、50nmであることが確認された。また、2次イオン質量分析測定を行った結果、この酸窒化物半導体薄膜は、Nを2×1022atom/cm-3程度含有していることが確認された。
【0245】
なお、比較例8の酸窒化物半導体薄膜は上述のように結晶化していなかったため、ホール効果測定は実施しなかった。
【0246】
【表1】
【0247】
[TFT素子の特性評価]
(実施例36)
スパッタリングターゲットとして、In23に、Gaを、Ga/(In+Ga)原子数比で0.10含有する酸化物焼結体を用いて、熱酸化によってSiO2膜が形成された、厚さ300nmのSiウエハ基板のSiO2膜上に、膜厚が50nmとなるように、非晶質の酸窒化物半導体薄膜の成膜を実施した。
【0248】
得られた非晶質の酸窒化物半導体薄膜を、大気中、300℃、30分間の条件でアニール処理することにより結晶化させ、これにより、上記のSi基板、SiO2膜ならびに結晶質の酸窒化物半導体薄膜を、それぞれゲート電極、ゲート絶縁層およびチャネル層とした。
【0249】
その後、前記チャネル層の表面に、直流マグネトロンスパッタ法によって、厚さ5nmのTi膜、および、厚さ100nmのAu膜を順次成膜して、Au/Ti積層膜からなるソース電極およびドレイン電極を形成し、図1に示す構成の薄膜トランジスタ(TFT素子)を得た。なお、ソース電極およびドレイン電極の成膜条件は、スパッタガスをArのみとし、直流電力を50Wに変更したこと以外は、酸窒化物半導体薄膜の成膜条件と同様とした。
【0250】
さらに、ソース電極およびドレイン電極に対して、メタルマスクを用いてパターニングを行い、チャネル長100μm、チャネル幅450μmのTFT素子を得た。
【0251】
このTFT素子の動作特性を、半導体パラメータアナライザ(株式会社TFTケースレーインスツルメンツ社製、4200SCS)を用いて調べた結果、TFT素子としての動作特性が確認できた。
【符号の説明】
【0252】
1 ゲート電極
2 ゲート絶縁膜
3 チャネル層
4 ソース電極
5 ドレイン電極
図1