(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
像担持体又は記録材搬送部材である被電圧印加部材上の互いに近接した位置に当接し、設定値記憶手段内の電圧設定値に従った電圧が同時に印加される2以上の電圧印加部材と、
上記2以上の電圧印加部材それぞれを流れる電流量を検知する電流量検知手段と、
上記電流量検知手段が検知した電流量に基づいて、上記設定値記憶手段内の電圧設定値を設定変更する設定値変更手段とを備えた画像形成装置において、
上記2以上の電圧印加部材は、上記設定値記憶手段に記憶されている電圧設定値に従って、該2以上の電圧印加部材のうちの隣接する2つの電圧印加部材間に対して、互いに異なる極性で電圧差分絶対値が6kV以上である電圧が同時に印加されて、上記被電圧印加部材上に付着するトナーを静電的に付着させて該被電圧印加部材上から除去するクリーニング部材であり、
上記隣接する2つの電圧印加部材と上記被電圧印加部材との当接箇所間距離は、正極性の電圧が印加される一方の電圧印加部材に対して上記設定値記憶手段内の電圧設定値に従った電圧を印加したときに該一方の電圧印加部材から該被電圧印加部材内部へ電流が流れ込む経路の抵抗値をR1とし、該一方の電圧印加部材から該被電圧印加部材表面を流れて負極性の電圧が印加される他方の電圧印加部材へ電流が流れ込む経路の抵抗値をR2としたとき、R2/R1が100未満となるように設定されており、
上記設定値変更手段は、上記2以上の電圧印加部材のうち上記設定変更対象である電圧印加部材以外である他の電圧印加部材に対して所定電圧を印加した状態で、該設定変更対象である電圧印加部材に上記設定変更用電圧を印加し、これにより該設定変更対象である電圧印加部材と該他の電圧印加部材とを流れる電流量を上記電流量検知手段により検知し、その検知した電流量に基づいて該設定変更対象である電圧印加部材の電圧設定値を設定変更する設定値変更処理を行うことを特徴とする画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した画像形成装置の実施形態として、いわゆるタンデム型中間転写方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)について説明する。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。
図1は、本プリンタの要部を示す概略構成図である。本プリンタは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒(以下、Y、M、C、Kと記す。)のトナー像を生成するための4つのプロセスユニット6Y,6M,6C,6Kを備えている。4つのプロセスユニット6Y,6M,6C,6Kは、ドラム状の感光体1Y,1M,1C,1Kをそれぞれ有している。感光体1Y,1M,1C,1Kの回りにはそれぞれ帯電装置2Y,2M,2C,2K、現像装置5Y,C,M,K、ドラムクリーニング装置4Y,4M,4C,4K、除電装置(不図示)等を有している。プロセスユニット6Y,6M,6C,6Kは、互いに異なる色(Y、M、C、K)のトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。プロセスユニット6Y,6M,6C,6Kの上方には、感光体1Y,1M,1C,1Kの表面に対してレーザー光Lを照射して静電潜像を書き込むための図示しない光書込ユニットが配設されている。
【0019】
プロセスユニット6Y,6M,6C,6Kの下方には、ベルト部材たる無端状の中間転写ベルト8を具備するベルト装置としての転写ユニット7が配設されている。中間転写ベルト8の他、そのループ内側に配設された複数の張架ローラや、ループ外側に配設された二次転写ローラ18、テンションローラ16、ベルトクリーニング装置100などを有している。
【0020】
中間転写ベルト8のループ内側には、4つの一次転写ローラ9Y,9M,9C,9Kと、従動ローラ10と、駆動ローラ11と、二次転写対向ローラ12と、2つのクリーニング対向ローラ13,14が配設されている。これらローラはいずれも、自らの周面の一部に中間転写ベルト8を掛け回してベルト張架を行う張架ローラとして機能している。なお、クリーニング対向ローラ13,14としての必要条件として必ずしも一定の張力を付与する働きをもたなければならないということはなく、中間転写ベルト8の回転にともなって従動回転するものでもよい。中間転写ベルト8は、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転駆動される駆動ローラ11の回転により、図中時計回り方向に無端移動せしめられる。
【0021】
ベルトループ内側に配設された4つの一次転写ローラ9Y,9M,9C,9Kは、感光体1Y,1M,1C,1Kとの間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8の外周面と、感光体1Y,1M,1C,1Kとが当接するY、M、C、K用の一次転写ニップが形成されている。なお、一次転写ローラ9Y,9M,9C,9Kには、それぞれ図示しない電源によってトナーとは逆極性の一次転写バイアスが印加される。
【0022】
また、ベルトループ内側に配設された二次転写対向ローラ12は、ベルトループ外側に配設された二次転写ローラ18との間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8の外周面と、二次転写ローラ18とが当接する二次転写ニップが形成されている。なお、二次転写ローラ18には、図示しない電源によってトナーとは逆極性の二次転写バイアスが印加される。また、二次転写ローラと数本の支持ローラと駆動ローラにより紙搬送ベルトを架け渡し、二次転写ローラ18と、二次転写対向ローラ12との間に、中間転写ベルト8及び紙搬送ベルトを挟み込んだ構成としてもよい。
【0023】
また、ベルトループ内側に配設された2つのクリーニング対向ローラ13,14は、ベルトループ外側に配設されたベルトクリーニング装置100のクリーニングブラシローラ102,106との間に中間転写ベルト8を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト8の外周面と各クリーニングブラシローラ102,106とが当接するクリーニングニップ(当接箇所)が形成されている。ベルトクリーニング装置100は中間転写ベルト8と一体的に交換可能になっているが、ベルトクリーニング装置100と中間転写ベルト8とで寿命設定が異なる場合には、ベルトクリーニング装置100を中間転写ベルト8とは独立してプリンタ本体に着脱可能としてもよい。ベルトクリーニング装置100の詳細については、後述する。
【0024】
本プリンタは、記録紙Pを収容する給紙カセットや、給紙カセットから記録紙Pを給紙路に給紙する給紙ローラなどを有する図示しない給紙部を備えている。また、給紙部から送られてきた記録紙を受け入れて二次転写ニップに向けて所定のタイミングで送り出す図示しないレジストローラ対を、上述した二次転写ニップの図中右側方に備えている。また、二次転写ニップから送り出される記録紙Pを受け入れてその記録紙Pに対してトナー像の定着処理を施す図示しない定着装置を、上述した二次転写ニップの図中左側方に備えている。また、必要に応じて、現像装置5Y,5M,5C,5Kに対してY、M、C、Kトナーを補給する図示しないY、M、C、K用のトナー補給装置も備えている。
【0025】
近年、記録紙として従来広く用いられてきた普通紙に加え、デザインとして表面に凹凸を有する特殊紙やアイロンプリントなどの熱転写に用いる特殊な記録紙が用いられることが増えている。このような特殊紙を用いると、従来の普通紙の場合よりもカラートナーを重ね合わせた中間転写ベルト8上のトナー像を紙に二次転写する際に転写不良が発生し易くなる。そこで、本プリンタでは、中間転写ベルト8に硬度の低い弾性層を設け、転写ニップ部でトナー層や平滑性の悪い記録紙に対して変形できるようにしている。中間転写ベルト8に硬度の低い弾性層を設け、中間転写ベルト8に弾性をもたせることにより、中間転写ベルト8表面が局部的な凸凹に追従して変形できる。これにより、過度にトナー層に対して転写圧を高めることなく、良好な密着性が得られ、文字の転写中抜けがなく、また、平滑性の悪い用紙等に対しても転写ムラのない、均一性に優れた転写画像を得ることができる。
【0026】
本プリンタでは、中間転写ベルト8は、少なくとも基層、弾性層、表面のコート層から構成される。
【0027】
中間転写ベルト8の弾性層に用いられる材料としては、弾性材ゴム、エラストマー等の弾性部材が挙げられ、具体的には、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0028】
弾性層の厚さは、硬度及び層構成にもよるが、0.07〜0.6[mm]の範囲が好ましい。さらに好ましくは0.25〜0.6[mm]の範囲がよい。また、中間転写ベルト8の厚さが0.07[mm]以下と薄いと、二次転写ニップ部で中間転写ベルト8上のトナーに対する圧力が高くなり、転写中抜けが発生しやすくなり、さらに、トナーの転写率が低下する。
【0029】
また、弾性層の硬度は、10°≦HS≦65°(JIS−A)であることが好ましい。中間転写ベルト8の層厚によって最適な硬度は異なるものの、硬度が10°(JIS−A)より低いと転写中抜けが生じやすい。これに対して硬度が65°(JIS−A)より高いものは、ローラヘの張架が困難となり、また、長期の張架によって延伸するために耐久性が無く早期の交換が必要になる。
【0030】
中間転写ベルト8の基層は、伸びの少ない樹脂で構成している。具体的に、基層に用いられる材料としては、ポリカーボネート、フッ素樹脂(ETFE、PVDF等)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ピニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0031】
また、伸びの大きなゴム材料などからなる弾性層の伸びを防止するために、基層と弾性層との間に帆布などの材料で構成された芯体層を設けてもよい。芯体層に用いられる伸びを防止する材料としては、例えば、綿、絹、などの天然繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアセタール繊維、ポリフロロエチレン繊維、フェノール繊維などの合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維、鉄繊維、銅繊維等の金属繊維からなる群より選ばれる1種あるいは2種以上を用い、糸状あるいは織布状のものを使用することができる。もちろん、上記材料に限定されるものではない。上記の糸は1本または複数のフィラメントを撚ったもの、片撚糸、諸撚糸、双糸等、どのような撚り方であってもよい。また、例えば上記材料群から選択された材質の繊維を混紡してもよい。もちろん糸に適当な導電処理を施して使用することもできる。一方織布は、メリヤス織り等どのような織り方の織布でも使用可能であり、もちろん交織した織布も使用可能であり、導電処理を施すことも可能である。
【0032】
中間転写ベルト8表面のコート層は、弾性層の表面をコーティングするためのものであり、平滑性のよい層からなるものである。コート層に用いられる材料としては、特に制限はないが、一般的に、中間転写ベルト8表面へのトナーの付着カを小さくして二次転写性を高める材料が用いられる。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の1種類あるいは2種類以上、又は、表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料、たとえばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、酸化チタン、シリコンカーバイド等の粒子を1種類あるいは2種類以上、又は必要に応じて粒径を変えたものを分散させて使用することができる。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことで表面にフッ素層を形成させ、表面エネルギーを小さくさせたものを使用することもできる。
【0033】
また、必要に応じて、基層、弾性層又はコート層は、抵抗を調整する目的で、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等を用いることができる。ここで、導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0034】
パーソナルコンピュータ等から画像情報が送られてくると、本プリンタは、駆動ローラ11を回転駆動して、中間転写ベルト8を無端移動させる。駆動ローラ11以外の張架ローラについては、ベルトに従動回転させる。同時に、プロセスユニット6Y,6M,6C,6Kの感光体1Y,1M,1C,1Kを回転駆動する。また、感光体1Y,1M,1C,1Kの表面を帯電装置2Y,2M,2C,2Kによって一様に帯電させながら、帯電後の表面に対してレーザー光Lの照射によって静電潜像を形成する。そして、感光体1Y,1M,1C,1Kの表面に形成した静電潜像を現像装置5Y,5M,5C,5Kによって現像することで、感光体1Y,1M,1C,1K上にY、M、C、Kトナー像を得る。Y、M、C、Kトナー像は、上述したY、M、C、K用の一次転写ニップにて、中間転写ベルト8の外周面に重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト8の外周面には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0035】
一方、不図示の給紙部では、給紙ローラによって給紙カセットから記録紙Pを1枚ずつ送り出してレジストローラ対まで搬送する。そして、中間転写ベルト8上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで、レジストローラ対を駆動して記録紙Pを二次転写ニップに送り込んで、ベルト上の4色重ね合わせトナー像を記録紙Pに一括二次転写する。これにより、記録紙Pの表面にフルカラー画像を形成する。フルカラー画像形成後の記録紙Pについては、二次転写ニップから定着装置に搬送してトナー像の定着処理を施す。
【0036】
Y、M、C、Kトナー像を中間転写ベルト8に一次転写した後の感光体1Y,1M,1C,1Kについては、ドラムクリーニング装置4Y,4M,4C,4Kによって転写残トナーのクリーニング処理を施す。その後、図示しない除電ランプで除電した後、帯電装置2Y,2M,2C,2Kで一様に帯電せしめて、次の画像形成に備える。また、記録紙Pに一次転写した後の中間転写ベルト8については、ベルトクリーニング装置100によって転写残トナーのクリーニング処理を施す。
【0037】
図2は、本プリンタのベルトクリーニング装置100とその周囲とを拡大して示す拡大構成図である。
このベルトクリーニング装置100は、被電圧印加部材である像担持体としての中間転写体である中間転写ベルト8上のトナーのうち正規帯電極性である負極性トナーをクリーニングするための第1クリーニング部100aと、中間転写ベルト8上のトナーのうち正規帯電極性と逆極性である正極性トナーをクリーニングする第2クリーニング部100bとに大別できる。
【0038】
第1クリーニング部100aは、電圧印加部材としてのクリーニング部材である第1クリーニングブラシローラ102、第1クリーニングブラシローラ102に付着したトナーを回収する回収手段としての第1回収ローラ103、第1回収ローラ103に当接して第1回収ローラ表面からトナーを掻き取るトナー掻き取り部材としての第1トナー掻き取りブレード104を備えている。第1クリーニングブラシローラ102は、回転自在に支持される金属製の回転軸部材と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛(導電性繊維)からなるブラシローラ部とを具備している。
【0039】
第2クリーニング部100bは、第1クリーニング部100aよりも中間転写ベルト表面移動方向下流側に配置され、電圧印加部材としてのクリーニング部材であるクリーニングブラシローラ106、回収手段としての回収ローラ107、掻き取りブレード108を備えている。第2クリーニングブラシローラ106は、回転自在に支持される金属製の回転軸部材と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛(導電性繊維)からなるブラシローラ部とを具備している。
【0040】
また、ベルトクリーニング装置100は、第1、第2クリーニング部100a,100bで除去したトナーを、装置ケーシングの一端部に向けて搬送してベルトクリーニング装置100ケーシング外に排出する排出スクリュー109が設けられている。排出スクリュー109によってクリーニング装置から排出されたトナーは、プリンタ本体に備えられた図示しない廃トナータンク内に落下する。また、廃タンクではなく、現像装置に戻すようにしてもよい。
【0041】
また、中間転写ベルト8の表面保護のために、第2クリーニングブラシローラ106を用いて中間転写ベルト8の表面に潤滑剤を塗布してもよい。この場合、例えば、潤滑剤を固形化したものを第2クリーニングブラシローラ106に当接させ、潤滑剤を塗布するようにする。また、第2クリーニングブラシローラ106よりも中間転写ベルト表面移動方向下流側に、中間転写ベルト表面に塗布した潤滑剤を均す均しブレードを設けてもよい。また、第2クリーニングブラシローラ106とは別に潤滑剤塗布用のブラシを設けてもよい。第2クリーニングブラシローラ106とは別に潤滑剤塗布用のブラシを設けることで、第2クリーニングブラシローラ106で潤滑剤を塗布する場合、第2クリーニングブラシローラ106にはトナーが常時回収されているため、トナーと潤滑剤とが交じり合い、潤滑剤塗布時にいったん回収したトナーが、再度中間転写ベルト上に付着する場合がある。一方、第2クリーニングブラシローラ106とは別に潤滑剤塗布用のブラシを設けることで、回収されたトナーが中間転写ベルト8に再付着するのを抑制できる。
【0042】
本プリンタのベルトクリーニング装置100における具体的な構成条件の一例は、以下のとおりである。
<第1クリーニングブラシローラ102の条件>
ブラシ材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
ブラシ抵抗:1×10
7[Ω](1000[V]の電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ部長さ:320[mm]
接触ニップ幅:8[mm]
ブラシ植毛密度:10万[本/inch
2]
ブラシ繊維径:約25〜35[μm]
ブラシ直径:15[mm]
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量:1[mm]
ブラシ回転数:480[rpm]
回転方向:中間転写ベルト8に対してカウンター方向
斜毛処理:有り
【0043】
<第2クリーニングブラシローラ106の条件>
ブラシ材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル、いわゆる芯鞘構造)
ブラシ抵抗:1×10
7[Ω](1000[V]の電圧印加条件で軸線方向全域測定)
ブラシ部長さ:320[mm]
接触ニップ幅:8[mm]
ブラシ植毛密度:10万[本/inch
2]
ブラシ繊維径:約25〜35[μm]
ブラシ直径:15[mm]
中間転写ベルト8へのブラシ食い込み量:1[mm]
ブラシ回転数:480[rpm]
回転方向:中間転写ベルト8に対してカウンター方向
斜毛処理:有り
【0044】
第1、第2クリーニングブラシローラ102,106のブラシ繊維は、繊維全体としては導電性であるが、繊維表面は絶縁層で覆われているものを用いる。繊維表面に絶縁層を有することで、各クリーニングブラシローラ102,106と中間転写ベルト8とが接触する際に電流が流れ難くなり、ブラシ繊維が中間転写ベルト8からトナーを静電吸引する際に余分な電流が流れ難くなる。このため、トナーに逆極性の電荷を与えてしまうことがなく、いったんブラシ内に捕捉したトナーを中間転写ベルト8に再付着させるおそれが少なくなる。ただし、このようなブラシを使用しても、繊維表面の絶縁を破壊して電流を流すほどの電圧を回転軸に印加すると、結果として中間転写ベルト8にトナーを戻してしまうことになるので、電圧値の設定には注意を要する。
繊維の構造についてはこれに限ったものではなく電圧の設定値を調整することで、逆に絶縁層の表面に導電層が形成されたものや繊維全体に導電部材が分散されているものを用いることもできる。
【0045】
各クリーニングブラシローラ102,106は、ブラシロール状に形成後、一方向に毛を倒す斜毛処理を施すと、繊維断面に露出している導電剤を中間転写ベルト8に接触させ難くなる。これにより、トナーへの電荷注入性が低減され、クリーニング性の余裕度が向上する。繊維はナイロン、ポリエステル、アクリル等の絶縁材が一般的でいずれの材料の場合も同じ効果である。また、芯鞘構造の代表的な繊維は、例えば、特開平10−310974号公報、特開平10−131035号公報、特開平01−292116号公報、特公平07−033637号公報、特公平07−033606号公報、特公平03−064604号公報に開示されている。
【0046】
<第1回収ローラ103の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS
ローラ直径:14[mm]
回収ローラ103へのブラシ繊維食い込み量:1.5[mm]
ローラ回転数:480[rpm]
回転方向:第1クリーニングブラシローラ102に対してカウンター方向
【0047】
<第2回収ローラ107の条件>
回収ローラ芯金材質:SUS
ローラ直径:14mm
回収ローラ107へのブラシ繊維食い込み量:1.5[mm]
ローラ回転数:480[rpm]
回転方向:第2クリーニングブラシローラ106に対してカウンター方向
【0048】
各回収ローラ103,107にはSUSローラを用いた。本実施形態で用いた回収ローラ103,107のみならず、他の材質の導電性ローラまたは表面に数μm〜100μm程度の弾性チューブを被せたもの、あるいはさらにコーティングしたものを用いても良い。回収ローラ103,107の表面の材料としては、PVDFチューブ、PFAチューブ、PIチューブ、アクリルコート、シリコーンコート(例えばシリコーン粒子を含有したPC(ポリカーボネート)をコート)、セラミックス、フッ素コーティングなどがある。
【0049】
<第1掻き取りブレード104の条件>
材質:SUS
厚み:100[μm]
ブレード当接角度:20°
第1回収ローラ103へのブレード食い込み量:0.6[mm]
【0050】
<第2掻き取りブレード108の条件>
材質:SUS
厚み:100[μm]
ブレード当接角度:20°
第2回収ローラ107へのブレード食い込み量:0.6[mm]
【0051】
<中間転写ベルトの条件>
材質:弾性ベルト
層厚:560[μm]
体積抵抗:1.91×10
10[Ω・cm](100[V]印加時)
表面抵抗:1.70×10
11[Ω/□](500[V]印加時)
表面移動速度:350[mm/s]
<クリーニング対向ローラ13,14の条件>
材質:アルミ
直径:14[mm]
【0052】
以上、使用した部材の特性を記載したが、クリーニングブラシローラ102,106および中間転写ベルト8の抵抗については、ここに例示した値に限定されることはない。特に、本実施形態では、後述するように、通常動作時にクリーニングブラシローラ102,106へ印加する電圧を目標電流値が流れるように適宜設定変更するため、これらの抵抗値の設定可能範囲は、クリーニングブラシローラ102,106へ印加する電圧が固定値である場合と比較して、広い。具体的には、例えば、クリーニングブラシローラ102,106については、1×10
5.5[Ω]以上1×10
10[Ω]以下の範囲、中間転写ベルト8については、体積抵抗が1×10
8[Ω・cm]以上1×10
13[Ω・cm]以下の範囲、表面抵抗が1×10
8[Ω/□]以上1×10
14[Ω/□]以下の範囲であれば、本実施形態によるクリーニングブラシローラ102,106へ印加電圧の設定変更処理により、安定して目標電流値を流すことができる。
【0053】
図1中K用のプロセスユニット6Kの右側方には、光学センサユニット150が中間転写ベルト8の外周面に対して所定の間隙を介して対向するように配設されている。この光学センサユニット150は、
図3に示すように、中間転写ベルト8の幅方向に並ぶY光学センサ151Y、C光学センサ151C、M光学センサ151M、K光学センサ151Kを有している。これらセンサはいずれも反射型フォトセンサからなり、図示しない発光素子から発した光を中間転写ベルト8の外周面やベルト上のトナー像で反射させ、その反射光量を図示しない受光素子によって検知する。図示しない制御部は、これらセンサからの出力電圧値に基づいて、中間転写ベルト8上のトナー像を検知したり、その画像濃度(単位面積あたりのトナー付着量)を検知したりすることができる。
【0054】
本プリンタにおいては、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行う度に、適切な状態に装置を調整するためのプロセスコントロール(画質調整制御)として、各装置の動作チェック、動作条件の設定および作像した画像の光学センサの検知結果を元に画像の状態を維持するための制御を行う場合がある。画像の状態を維持する制御としては各色の画像濃度を適正化するための画像濃度制御や各色の作像位置のずれを調整する色ずれ量補正処理がある。
【0055】
画像濃度制御は、まず、
図3に示すような、各色の階調パターンSk,Sm,Sc,Syを中間転写ベルト8上における光学センサ151M,151C,151Kに対向する位置に自動形成する。各色の階調パターンは、10個の画像濃度が異なる2[cm]×1[cm]の面積のトナーパッチからなっている。各色の階調パターンSk,Sm,Sc,Syを作成するときの、感光体1Y,1M,1C,1Kの帯電電位は、プリントプロセスにおける一様なドラム帯電電位とは異なり、値を徐々に大きくする。そして、レーザー光の走査によって階調パターン像を形成するための複数のパッチ静電潜像を感光体1Y,1M,1C,1Kにそれぞれ形成せしめながら、それらをY、M、C、K用の現像装置5Y,5M,5C,5Kによって現像する。この現像の際、Y、M、C、K用の現像ローラに印加される現像バイアスの値を徐々に大きくしていく。このような現像により、感光体1Y,1M,1C,1K上にはY、M、C、Kの階調パターン像が形成される。これらは、中間転写ベルト8の主走査方向に所定の間隔で並ぶように一次転写される。このときの、各色の階調パターンにおけるトナーパッチのトナー付着量は最小で0.1[mg/cm
2]、最大で0.55[mg/cm
2]ほどあり、また、トナーQ/d分布を測定すると、ほぼ正規帯電極性にそろっている。
【0056】
中間転写ベルト8に形成された階調パターンSk,Sm,Sc,Syは、中間転写ベルト8の無端移動に伴って、光学センサ151M,151C,151Kとの対向位置を通過する。この際、光学センサ151M,151C,151Kは、各階調パターンのトナーパッチに対する単位面積あたりのトナー付着量に応じた量の光を受光する。そして、各色トナーパッチを検知したときの光学センサ151M,151C,151Kの出力電圧と、付着量変換アルゴリズムとから、各色のトナーパターンの各トナーパッチにおける付着量を算出し、算出した付着量に基づき作像条件を調整する。具体的には、トナーパッチにおけるトナー付着量を検知した結果と、各トナーパッチを作像したときの現像ポテンシャルとに基づいてその直線グラフを示す関数(y=ax+b)を回帰分析によって計算する。そして、この関数に画像濃度の目標値を代入することで適切な現像バイアス値を演算し、Y、M、C、K用の現像バイアス値を決定する。
【0057】
メモリ内には、数十通りの現像バイアス値と、それぞれに個別に対応する適切なドラム帯電電位とが予め関連付けられている作像条件データテーブルが格納されている。各プロセスユニット6Y,6M,6C,6Kについて、それぞれこの作像条件テーブルの中から、特定した現像バイアス値に最も近い現像バイアス値を選び出し、これに関連付けられたドラム帯電電位を特定する。
【0058】
色ずれ量補正処理においては、中間転写ベルト8の幅方向の一端部と他端部とにそれぞれ、
図4に示すようなシェブロンパッチと呼ばれるY、M、C、Kの各色トナー像からなる色ずれ検知用画像を形成する。シェブロンパッチは、
図4に示すように、Y、M、C、Kの各色のトナー像を主走査方向から約45[°]傾けた姿勢で、副走査方向であるベルト移動方向に所定ピッチで並べたラインパターン群である。
図4に示すパッチ全体が1セットとなり、このセットが連続して形成される。このシェブロンパッチの付着量は、0.3[mg/cm
2]ほどである。
【0059】
中間転写ベルト8の幅方向の両端部にそれぞれ形成したシェブロンパッチ内の各色トナー像を検知することで、各色トナー像における主走査方向(感光体軸線方向)の位置、副走査方向(ベルト移動方向)の位置、主走査方向の倍率誤差、主走査方向からのスキューをそれぞれ検出する。ここで言う主走査方向とは、ポリゴンミラーでの反射に伴ってレーザー光が感光体表面上で位相する方向を示している。このようなシェブロンパッチ内のY、M、Cトナー像について、Kトナー像との検知時間差を光学センサ151で読み取っていく。同図では、紙面上下方向が主走査方向に相当し、左から順に、Y、M、C、Kトナー像が並んだ後、これらとは姿勢が90[°]異なっているK、C、M、Yトナー像が更に並んでいる。基準色となるKとの検出時間差tky,tkm,tkcについての実測値と理論値との差に基づいて、各色トナー像の副走査方向のズレ量、即ちレジストズレ量を求める。そして、そのレジストズレ量に基づいて、不図示の光書込ユニットのポリゴンミラー1面おき、即ち、1走査ラインピッチを1単位として、感光体1に対する光書込開始タイミングを補正して、各色トナー像のレジストズレを低減する。また、ベルト両端部間での副走査方向ズレ量の差に基づいて、各色トナー像の主走査方向からの傾き(スキュー)を求める。そして、その結果に基づいて、光学系反射ミラーの面倒れ補正を実施して、各色トナー像のスキューズレを低減する。以上のように、シェブロンパッチ内における各トナー像を検知したタイミングに基づいて光書込開始タイミングや面倒れを補正してレジストズレやスキューズレを低減する処理が、色ずれ補正処理である。このような色ずれ補正処理により、温度変化などで各色トナー像の中間転写ベルト8に対する形成位置が経時的にずれていくことに起因する画像の色ずれの発生を抑えることができる。
【0060】
画像濃度制御や色ずれ補正処理で作像されたトナー像は紙には転写されず、そのまま未転写トナーとしてベルトクリーニング装置100によりクリーニングする必要がある。そのため、プロセスコントロール中にベルトクリーニング装置100の動作条件(印加電圧値)の設定変更を行う場合、その設定変更は、プロセスコントロールの最初または少なくともトナー画像を形成して画像濃度制御や色ずれ補正処理を行う前に実施するようにプロセスコントロールの順序を設定するのが好ましい。
【0061】
ベルトクリーニング装置100に入ってくるクリーニングの対象としては、前述の画像濃度制御や色ずれ補正処理の未転写のトナー像や、通常作像時に記録紙Pに二次転写しきれずに中間転写ベルト上に残ってしまった転写残トナーがある。
また、低画像面積の画像形成動作が続くと、現像装置内に長時間とどまりつづける古いトナーが増えてくるため、トナー帯電特性が劣化する。このような古いトナーを用いて画像形成がなされると、現像能力低下や転写性低下を引き起こし、画像品質が悪くなる。よって、本実施形態では、このような古いトナーが現像装置内に滞留しないように一定のタイミングで現像装置から感光体1Y,1M,1C,1Kの非画像領域にトナーを強制的に吐き出させ、これによりトナー濃度が低下した現像装置内の現像剤に新しいトナーを補給して現像装置内をリフレッシュするリフレッシュモードを備えている。このリフレッシュモード動作時に強制的に吐き出されるトナーも、未転写のまま、ベルトクリーニング装置100に入ってくる。
【0062】
不図示の制御部は、各現像装置5Y,5M,5C,5Kのトナー消費量と、各現像装置5Y,5M,5C,5Kの動作時間とを記憶しておき、所定のタイミングで、現像装置の所定期間の動作時間に対して、トナー消費量が閾値以下である否かを各現像装置について調べ、閾値以下の現像装置について、リフレッシュモードを実行する。リフレッシュモードが実行されると、各感光体の紙間に対応する非画像形成領域に250mm×30mmの矩形のトナー消費パターンが各色のトナー消費量に応じて作成され、各色のトナー消費パターンが重ねて中間転写ベルト8に
図5に示すように転写される。トナー消費パターンの付着量は、現像装置の所定期間の動作時間に対するトナー消費量に基づき決定され、単位面積当りの最大付着量が、1.0[mg/cm
2]ほどになることがある。また、中間転写ベルト8に転写されたトナー消費パターンのトナーQ/d分布を測定すると、ほぼ正規帯電極性に揃っている。
【0063】
このように、ベルトクリーニング装置100に入力されるトナーの量は、0.05[mg/cm
2]程度以下の少量の転写残トナーから、最大で1.0[mg/cm
2]ほどになる未転写トナーまでの広範囲にわたる。よって、ベルトクリーニング装置100は、このような広範囲のトナー付着量に対応しなければならない。ここで、ベルトクリーニング装置100によるクリーニングを最良とするクリーニング電流(クリーニングブラシローラ102,106と中間転写ベルト8との当接箇所を流れる目標電流)すなわち目標電流値は、その当接箇所に入力されるトナーの付着量によって変化し、付着量が多いときは大きい電流値となり、付着量が少ないときはそれより小さい電流値となる。
【0064】
図6は、ベルトクリーニング装置100におけるクリーニング電流に関連した等価回路を示した模式図である。
クリーニング性に寄与するクリーニング電流は、トナーが中間転写ベルト8からクリーニングブラシローラ102,106へ移動する領域を流れる電流である。具体的には、例えば第1クリーニング部100aにおいては、図中A点(クリーニングブラシローラ102と中間転写ベルト8との第1当接箇所)を流れる電流である。この電流値は、第1クリーニングブラシローラ102と第1回収ローラ103に電圧を印加する各電源121,122に搭載された電流検知手段としての電流センサでそれぞれ検知される2つの電流値IB1,IC1の和に相当する。第2クリーニング部100bにおいても、第1クリーニング部100aと基本的な考え方は共通であり、クリーニング性に寄与するクリーニング電流は、第2クリーニングブラシローラ106と第2回収ローラ107に電圧を印加する各電源123,124に搭載された電流検知手段としての電流センサでそれぞれ検知される2つの電流値IB2,IC2の和に相当する。
【0065】
表1は、ベルトクリーニング装置100における各クリーニング部100a,100bにおける目標電流値の設定テーブルの一例を示すものである。
【表1】
【0066】
第1クリーニング部100aのクリーニング対象となるトナー(正規帯電トナー)は、入力される幅広い範囲のトナー量(0.05[mg/cm
2]〜1.0[mg/cm
2])の大部分である。そのため、第1クリーニング部100aについては、幅広い範囲のトナー量のクリーニングに対応しなければならないので、本実施形態では、大量の正規帯電トナーをクリーニングする必要がある未転写時(プロセスコントロール時やリフレッシュモード時)の目標電流値と、比較的クリーニングするトナー量が少ない通常作像時の目標電流値という2種類の目標値を持っている。なお、トナー付着量に応じた目標電流値の種類を2種類としているが、種類を増やしてより細かくトナー付着量に対応してもよい。
【0067】
一方、第2クリーニング部100bについては、第1クリーニング部100bでクリーニングされた後に残った比較的少ない量のトナー(正規帯電極性とは反対極性のトナー)をクリーニングするので、クリーニング対象となるトナー量の範囲は狭い。よって、本実施形態では、第2クリーニング部100bについての目標電流値は1種類としている。
【0068】
また、ベルトクリーニング装置100によるクリーニングを最良とするクリーニング電流すなわち目標電流値は、温度や湿度によっても変化する。そのため、本実施形態においては、上記表1に示すように、高温高湿、常温常湿、低温低湿のそれぞれについて異なる目標電流値を持っている。
【0069】
本実施形態において、ベルトクリーニング装置100の印加電圧を設定変更する場合、まず、プリンタ内の温湿度センサの測定値に基づいて、上記表1に示した設定テーブルから当該測定値に対応した温湿度環境の目標電流値を読み出して使用する。本実施形態では、電源投入時あるいは所定枚数のプリントを行う度に行われるプロセスコントロール時以外にも、温湿度センサの測定値が前回の設定変更処理時に記録した温湿度の測定値と比較して所定値以上変化したときには、ベルトクリーニング装置100の印加電圧の設定変更処理を行う。例えば、温度変化が10℃以上または湿度変化が50%以上のときは、設定変更処理を実行して、現在の温湿度測定値に対応した設定テーブルの目標電流値となるように印加電圧の設定変更を行う。なお、本実施形態では、温湿度環境を3つに大別して3種類の設定値を持つ例であるが、より細かく対応するために温湿度環境をもっと細かく区分して3種類以上の設定値を持つようにしても良い。
【0070】
ベルトクリーニング装置100の印加電圧の設定変更処理は、中間転写ベルト8及びベルトクリーニング装置を駆動し、かつ、ベルトクリーニング装置100に対してトナー入力が無い状態で、第1クリーニングブラシローラ102、第1回収ローラ103、第2クリーニングブラシローラ106、第2回収ローラ107のそれぞれに接続された4つの電源121,122,123,124から所定の電圧を印加する。そして、例えば第1クリーニングブラシローラ102の印加電圧を設定変更する場合、その設定変更対象である第1クリーニングブラシローラ102と中間転写ベルト8との当接箇所を流れる電流値すなわち電源121,122を流れる電流値IB1,IC1を検出する。そして、この電流IB1,IC1の合計値(IB1+IC1)が目標電流値となるような印加電圧を特定し、第1クリーニングブラシローラ102の印加電圧の設定値を変更する。以後の動作で第1クリーニングブラシローラ102に電圧を印加する際、第1クリーニングブラシローラ102にはこの設定値が用いられる。
【0071】
第1クリーニングブラシローラ102の印加電圧についての設定変更処理の際、第1回収ローラ103に印加する電圧値は、第1クリーニングブラシローラ102との電位差が一定値(例えば400V)となるように、第1クリーニングブラシローラ102に印加する設定変更用電圧の変動に合わせて調整される。
また、第1クリーニングブラシローラ102の印加電圧についての設定変更処理の際、第2クリーニングブラシローラ106に印加する電圧値は、その第2クリーニングブラシローラ106について設定された印加電圧の設定値を用いる。ただし、第1クリーニングブラシローラ102の設定変更処理の際に第2クリーニングブラシローラ106に印加する電圧値は、設定値と異なるようにしてもよいが、なるべく通常動作時の条件と同じように設定するのが好ましく、少なくとも設定値と同じ極性の電圧値とする。
また、第1クリーニングブラシローラ102の印加電圧についての設定変更処理の際に第2回収ローラ107に印加する電圧値は、第2クリーニングブラシローラ106との電位差が一定値(例えば400V)となるように設定される。
【0072】
クリーニングブラシローラ102,106と回収ローラ103,107との間は、クリーニングブラシローラの抵抗変化に対してクリーニング性の変化の感度が鈍く、電位差が固定の設定であっても良いことが分かっている。これらの間の電位差は、0V〜800V程度の範囲でクリーニング性の変化があまり無いので、本実施形態では400Vに固定した。感度が鈍い原因は明らかではないが、回収ローラが導電性であるので回収ローラ側は電圧を一定に保てるため、クリーニングブラシローラと中間転写ベルト間の両方が抵抗体である場合より抵抗の変化に対して感度が鈍いのではないかと考えられる。クリーニングブラシローラと回収ローラとの間については、電流値IB,ICについてそれぞれ個別の目標電流値を設けて、それぞれを個別に調整してもよいが、その調整の制御が複雑になることに加え、クリーニングブラシローラと回収ローラとの間はクリーニング性への影響が少ないので、本実施形態ではクリーニングブラシローラと回収ローラとの間は電位差固定とし、目標電流値は2つの電源を流れる電流の合算値(IB+IC)に対応するものとした。
【0073】
また、本プリンタは、厚紙などの紙種に対応するために、通常線速である350mm/sの半分の速度である175mm/sで感光体や中間転写ベルトを駆動して画像形成を行う半速モードを有している。半速モードは、上記表1のように、目標電流値が通常線速の半分になっている。クリーニングが最良となる目標電流値は線速にほぼ比例するため、他の線速モードを有する場合も通常の線速の設定値に対して線速比倍した目標電流値を設定すればよい。通常線速よりも速い線速モードや、同じ構成で線速の設定で上位機種との切り替えを行うような場合も、同様に目標電流値を線速比倍することで対応できる。例えば線速700mm/sの場合は、その目標電流値は通常線速(350mm/s)の目標電流値の2倍にすればよい。
【0074】
通常線速および半速モードあるいはその他のクリーニング電流の目標電流値を有するプリンタでは、電源投入時あるいはプロセスコントロール時などのベルトクリーニング装置100の電圧設定変更処理において、すべてのモードで目標電流値が流れるように、モードごとに個別処理してもよいが、本実施形態では、いずれか1つのモードについてのみ目標電流値が流れるように電圧設定変更処理を行う。例えば、使用頻度の高い通常線速についてのみ目標電流値が流れるように電圧設定変更処理を行う。これにより、すべてのモードについて電圧設定変更処理を行う場合よりも、処理時間を短縮でき、待機時間の短縮を図ることができる。
【0075】
なお、他のモードについては、プリント動作終了後であって次のプリント命令が入力されていない時など待機時間を発生させない期間に、電圧設定変更処理を行うようにしてもよい。また、特に使用頻度が低いモードについては、そのモードのプリント命令が入力された時に電圧設定変更処理を行うようにしてもよい。各モードの動作条件設定のタイミングはユーザーの使用状況に対応して設定できるようにすることで、ユーザーに対応した待機時間の短縮が可能になる。
【0076】
このようにしてベルトクリーニング装置100の印加電圧の設定変更処理が終わり、画像調整の制御が終わると、プリントが可能な状態になる。通常の作像時、二次転写ニップを通過した転写残トナーは、第1クリーニングブラシローラ102の位置に中間転写ベルト8の回転により移送される。第1クリーニングブラシローラ102には、トナーの正規帯電極性とは反対極性(正極性)の所定のクリーニング電流値(目標電流値)となるように調整された電圧が定電圧で印加されており、アースされた第1対向ローラ13に対して、中間転写ベルト8の表面電位と第1クリーニングブラシローラ102の表面電位との電位差で形成される電界により、中間転写ベルト8上の負極性に帯電したトナーを静電的に吸着して第1クリーニングブラシローラ102へ移動させる。第1クリーニングブラシローラ102に移動した負極性のトナーは、第1クリーニングブラシローラ102よりも値が大きな正極性の電圧(クリーニングブラシローラに対して電位差400V)が印加された第1回収ローラ103との当接位置まで移送される。そして、第1クリーニングブラシローラ102の表面電位と第1回収ローラ103の表面電位との電位差で形成される電界により、第1クリーニングブラシローラ102上に移動したトナーを静電的に吸着して第1回収ローラ103上へ移動させ、第1回収ローラ103に移動した負極性のトナーは、第1掻き取りブレード104により回収ローラ表面から掻き落とされる。第1掻き取りブレード104により掻き落とされたトナーは、排出スクリュー109で装置外に排出される。
【0077】
第1クリーニングブラシローラ102により除去できなかった中間転写ベルト8上の正極性の転写残トナーは、第2クリーニングブラシローラ106の位置に移送される。第2クリーニングブラシローラ106には、トナーの正規帯電極性と同極性(負極性)の所定のクリーニング電流値(目標電流値)となるように調整された電圧が定電圧で印加されており、アースされた第2対向ローラ14に対して、中間転写ベルト8の表面電位と第2クリーニングブラシローラ106の表面電位との電位差で形成される電界により、中間転写ベルト8上の正極性に帯電したトナーを静電的に吸着して第2クリーニングブラシローラ106へ移動させる。第2クリーニングブラシローラ106に移動した正極性のトナーは、第2クリーニングブラシローラ106よりも値が大きな負極性の電圧(クリーニングブラシローラに対し電位差400V)が印加された第2回収ローラ107との当接位置まで移送される。そして、第2クリーニングブラシローラ106の表面電位と第2回収ローラ107の表面電位との電位差で形成される電界により、第2クリーニングブラシローラ106上に移動したトナーを静電的に吸着して第2回収ローラ107上へ移動させる。第2回収ローラ107に移動した正極性のトナーは、第2掻き取りブレード108により第2回収ローラ表面から掻き落とされる。第2掻き取りブレード108により掻き落とされたトナーは、排出スクリュー109で装置外に排出される。
【0078】
中間転写ベルト8に形成された各色階調パターン、シェブロンパッチ、トナー消費パターンなどの未転写トナーもベルトクリーニング装置100によって回収される。未転写トナーについてもクリーニングされるトナーの移動の流れは転写残トナーと同様であるが、第1クリーニング部100aの印加電圧は未転写パターンが作像され、そのパターンがクリーニング装置に入ってくるタイミングに合わせて、作像時の設定電圧から未転写の設定電圧に切り替えられる。
【0079】
表2は、本実施形態におけるクリーニング装置の設定電圧値の一例を示す表である。
【表2】
【0080】
低温低湿環境(10℃15%)における未転写トナーに対応する場合、表1に示したように低温低湿の未転写トナーに対する目標電流値は、第1クリーニング部100aが76[μA]、第2クリーニング部100bが−23[μA]になっている。
ここで、電源出力の公差、その他のノイズを考慮し、目標電流値よりプラス側、マイナス側にずれた電流で画像にクリーニング不良が発生するかどうかの評価を行った。例えば、第1クリーニングブラシローラ102に5100[V]、第1回収ローラ103に5500[V]、第2クリーニングブラシローラ106に−1900[V]、第2回収ローラ107に−2300[V]を印加した時、第1クリーニング部100aを流れる電流(IB1+IC1)は、68.3[μA]、第2クリーニング部100bを流れる電流(IB1+IC1)は−16.9[μA]となり、画像を評価したところクリーニング不良は発生しなかった。そのほか、目標電流値よりもプラス側あるいはマイナス側にシフトさせた目標電流値を設定しても、表2に示すように、クリーニング不良は発生しなかった。そして、本発明者らの実験によれば、目標電流値から±10%程度の範囲ではクリーニング不良が発生しないことが確認された。
【0081】
低温低湿環境(10℃15%)における未転写トナーに対応する場合、本実施形態では、第1クリーニングブラシローラ102に5400[V]、第1回収ローラ103に5800[V]、第2クリーニングブラシローラ106に−2200[V]、第2回収ローラ107に−2600[V]を印加したときに、各クリーニング部100a,100bにそれぞれ目標電流値が流れた。
【0082】
本実施形態の比較例として、第1クリーニング部100aの印加電圧の設定変更処理と第2クリーニング部100bの印加電圧の設定変更処理とを、個別に行った場合の結果を表3に示す。すなわち、表3は、一方のクリーニング部の印加電圧の設定変更処理の際に、他方のクリーニング部には電圧を印加しない場合の例である。
【表3】
【0083】
本比較例において、低温低湿環境(10℃15%)における未転写トナーに対応する場合に、第1クリーニング部100aを流れる電流(IB1+IC1)を目標電流値(76[μA])とすることができる電圧値、すなわち、第1クリーニングブラシローラ102に5400[V]、第1回収ローラ103に5800[V]を印加し、第2クリーニング部100bの電源はいずれもオフにした。このとき、第1クリーニング部100aを流れる電流(IB1+IC1)は、目標電流値(76[μA])に対してマイナス側にシフトした69.2[μA]となった。
また、低温低湿環境(10℃15%)における未転写トナーに対応する場合に、第2クリーニング部100bにおける第2クリーニングブラシローラ106に−3100[V]、第2回収ローラ107に−3500[V]を印加し、第1クリーニング部100aの電源はいずれもオフにした。このとき、第2クリーニング部100bを流れる電流(IB2+IC2)は、目標電流値(−23[μA])に対してプラス側にシフトした−19.1[μA]となった。
【0084】
ところが、このように設定した各クリーニング部100a,100bの電圧値を同時に印加した通常動作時において、第1クリーニング部100aを流れる電流(IB1+IC1)は84.6[μA]となり、第2クリーニング部100bを流れる電流(IB2+IC2)は−50.2[μA]となり、いずれも目標電流値から大きく外れた値となってしまった。この理由について検討すると、例えば第1クリーニング部100aについての印加電圧の設定変更処理時は、第1回収ローラ103および第1クリーニングブラシローラ102を通った電流は、そのほとんどが中間転写ベルト8を厚み方向へ流れて第1対向ローラ13へと流れ込んでいる。これに対し、通常動作時は、第2クリーニング部100bの第2クリーニングブラシローラ106と接触する中間転写ベルト8の第2当接箇所の電位が、設定変更処理時は約0Vであったのに、第2クリーニング部100bに電圧が印加されたことで、マイナス電位へ大きく下げられたものとなる。これにより、第1クリーニング部100aの第1クリーニングブラシローラ102と接触する中間転写ベルト8の第1当接箇所の電位が、第2当接箇所のマイナス電位によって引き下げられる。その結果、第1クリーニング部100aを流れる電流(IB1+IC1)は、設定変更処理時よりも大きい値となってしまう。第2クリーニング部についても同様に考えることができる。
【0085】
図7は、第1クリーニング部100aに印加する電圧VB1を変更したときの、第2クリーニング部100bに印加する電圧VB2,VC2と第2クリーニング部100bを流れる電流値(IB2+IC2)との関係を示したグラフである。
なお、第2回収ローラ107に印加する電圧VC2は、第2クリーニングブラシローラ106に印加する電圧VB2との電位差が400Vに固定されたものである。
このグラフから分かるように、第2クリーニング部100bに流れる電流(IB2+IC2)は、第2クリーニング部100bの電圧VB2,VC2だけでは決まらず、第1クリーニング部100aの影響を受けている。特に、第1クリーニング部100aの第1クリーニングブラシローラ102と第2クリーニング部100bの第2クリーニングブラシローラ106との間の電位差が6000[V]程度以上、より好ましくは7000[V]以上になると、第2クリーニング部100bに流れる電流(IB2+IC2)は急激に大きくなり、第1クリーニング部100aから第2クリーニング部100bへ電流が急激に流れ込むことが確認された。
【0086】
このとき、第1回収ローラ103及びクリーニングブラシローラ102を通って第1クリーニング部100aから流れ出る電流の経路は、中間転写ベルト8の内部を通過して第1対向ローラ13へと流れる第1電流経路と、中間転写ベルト8の表面を通過して第2クリーニングブラシローラ106へと流れる第2電流経路とに大別できる。第1電流経路の抵抗R1は、2×RB1+RT1となる。なお、RB1は、第1クリーニングブラシローラ102のブラシ抵抗値であり、RT1は、中間転写ベルト8の厚み方向の抵抗値である。一方、第2電流経路の抵抗R2は、2×RB1+2×RB2+RT2となる。なお、RB2は、第2クリーニングブラシローラ106のブラシ抵抗値であり、RT2は、第1クリーニング部100aが当接する第1当接箇所と第2クリーニング部100bが当接する第2当接箇所との間における中間転写ベルト8の表面抵抗値である。
【0087】
本実施形態において、第1クリーニングブラシローラ102と第2クリーニングブラシローラ106は同一構成であるため、RB1=RB2である。また、第1当接箇所と第2当接箇所との距離は9.4mmであり、各クリーニングブラシローラ102,106と中間転写ベルト8との接触ニップ幅は8mmである。このとき、第1電流経路と第2電流経路との抵抗比R2/R1=82となった。
【0088】
本発明者らの研究の結果、第1クリーニング部100aの第1クリーニングブラシローラ102と第2クリーニング部100bの第2クリーニングブラシローラ106との間の電位差が6000[V]程度以上である場合、第1電流経路と第2電流経路との抵抗比R2/R1<100の範囲内という条件が満たされると、第1クリーニング部100aからの電流が第2クリーニング部100bへ流れ込みやすくなる。そのため、各第1クリーニング部の電圧設定を個別に行うと、通常動作時に目標電流値から外れた電流が流れてしまう。よって、このような条件を満たす場合には、本実施形態のように、両クリーニング部に電圧を印加した状態で各クリーニング部に目標電流値が流れるように電圧設定を行うのが望ましい。このように設定した電圧値であれば、通常動作時にも目標電流値とほぼ同じ量の電流を流すことができる。
【0089】
以下、本実施形態における各種抵抗値の具体的な数値例を示す。
本実施形態において、各クリーニング部100a,100bのクリーニングブラシローラ102,106の接触ニップのベルト幅方向長さ(接触ニップ長)は320mmで、接触ニップのベルト表面移動方向長さ(接触ニップ幅)は8mmである。このとき、1000Vの電圧印加条件で接触ニップ全体について測定したブラシ抵抗値RB1,RB2は1×10
7[Ω]であった。
また、中間転写ベルト8の厚み方向抵抗値RT1は、中間転写ベルト8の体積抵抗率×中間転写ベルト8の厚さ/接触ニップ面積から求めることができる。本実施形態では、RT1=1.91×10
10[Ω・cm]×560×10
-4[cm]/(32[cm]×0.8[cm])=4.17×10
7[Ω]となる。
また、第1当接箇所と第2当接箇所との間における中間転写ベルト8の表面抵抗値RT2は、中間転写ベルト8の表面抵抗率×第1当接箇所と第2当接箇所との間の距離/接触ニップ長から求めることができる。本実施形態では、RT2=1.70×10
11[Ω/□]×0.94[cm]/32[cm]=5×10
9[Ω]となる。
よって、第1電流経路と第2電流経路との抵抗比R2/R1は、4×10
7+5×10
9)/(2×10
7+4.17×10
7)=5.04×10
9/6.17×10
7=82となる。
【0090】
このときの第2クリーニング部100bに流れる電流(IB2+IC2)は、第1クリーニング部100bの電圧をOFFにした状態で第2クリーニング部100bの印加電圧を設定する上記比較例の設定方法では、設定時に流れる電流値は−19.1[μA]であったのに対し、通常動作時に流れる電流値は−50.2[μA]となった。この変化分が中間転写ベルト8の表面を通って第1クリーニング部100aから第2クリーニング部100bへ流れ込む電流分と考えることができる。この電流分が第1クリーニング部を流れる全電流の約60%以上になると、上記表3に示したように、わずかではあるが画像にクリーニング不良が発生し、画像評価は「△」となる。特に、上記表3に示すように、第2クリーニング部100bを流れる電流値が大きくなる側に電圧設定をずらした例では、第2クリーニング部100bを流れる電流(IB2+IC2)が−332[μA]となり、第2クリーニング部に流れ込む電流が更に大きくなって、このときははっきりとクリーニング不良が発生しているのが確認でき、画像評価は「×」となった。
【0091】
上記比較例において詳述すると、低湿低温環境において第2クリーニング部100bの第2クリーニングブラシローラ106だけに−3100[V]を印加すると、通常線速の目標電流値である−23[μA]よりも低い側にずれた−19.1[μA]が流れる。同様に、第1クリーニング部100aの第1クリーニングブラシローラ102だけに+5400[V]を印加すると、通常線速の目標電流値である76[μA]よりも低い側にずれた69[μA]が流れる。そして、第1クリーニング部100aの第1クリーニングブラシローラ102に+5400[V]を印加するとともに、第2クリーニング部100bの第2クリーニングブラシローラ106に−3100[V]を印加すると、第1クリーニング部100aには84.6[μA]が流れ、第2クリーニング部100bには−50.2[μA]が流れ、いずれも、設定時よりも大きな電流が流れてしまった。このとき、第1クリーニング部100aから第2クリーニング部100aへ流れ込む電流の量は、−50.2[μA]−(−19.1[μA])=31.1[μA]であり、比率で見ると、31.1[μA]/50.2[μA]=62%となる。
【0092】
本発明者らは、本実施形態のプリンタとは異なる構成であるが、中間転写ベルト、クリーニングブラシローラ、回収ローラの材質、抵抗値などの特性値が同じで、第1クリーニング部100aの第1当接箇所と第2クリーニング部100bの第2当接箇所との距離だけが25[mm]と異なっている構成において、同様の評価を行った。このとき、抵抗比R2/R1=216であった。この構成において、上記比較例と同様に、第1クリーニング部100aの電源をオフにし、第2クリーニング部100bの第2クリーニングブラシローラ106に−2500[V]を印加し、第2回収ローラ107に−2900Vを印加したところ、第2クリーニング部100bを流れる電流は、IB2+IC2=−19[μA]であった。第2クリーニング部100bの電源にこの設定電圧を印加しつつ、第1クリーニングブラシローラ102に−6200[V]を印加し、第2回収ローラ103に−6600[V]を印加したところ、第2クリーニング部100bを流れる電流値(IB2+IC2)は、−27[μA]であった。このとき、第2クリーニング部100bへ流れ込む電流量は、第1クリーニング部を流れる電流全体の30%であり、このときは画像にクリーニング不良は発生しなかった。
【0093】
このように、第1当接箇所と第2当接箇所とを十分に離間していて、これらの間の抵抗値が十分に大きい場合には、隣接するクリーニング部の影響を考慮しなくても、画像に影響が出るほどの変化は無い。逆に、本実施形態のように、第1当接箇所と第2当接箇所とが近接していて、これらの間の抵抗値を十分に大きくすることができない場合には、各クリーニング部の印加電圧を設定する際には、両クリーニング部に電圧を印加した状態で印加電圧の設定変更処理を行わないと、適切な印加電圧を設定できず、クリーニング不良が発生するおそれがある。
【0094】
〔変形例〕
以上の説明では、第1、第2のクリーニング部でそれぞれ正規帯電トナー、逆帯電トナーを除去するクリーニング装置について説明してきたが、
図8に示すように、クリーニング装置に入力されるトナーを大まかに除去するプレクリーニング部100cを設けた装置に本発明を適用することもできる。
【0095】
この変形例において、プレクリーニング部100cでは、所定のクリーニング電流値となるように調整された正極性の電圧が定電圧で印加され、負極性のトナーを除去している。また、プレクリーニング部100cでは、未転写トナーと転写残トナーに対応した2段階の電流値の設定テーブルを持っている。前述の実施形態の場合とは逆で、第1クリーニング部100aでは負極性の電圧が印加され正極性のトナーを除去している。それと共に第1クリーニング部100aを通過し、第2クリーニング部100bに搬送されるトナーを負極性に揃える極性制御の役割も果たしている。第2クリーニング部100bでは正極性の電圧が印加され、極性が揃えられた負極性のトナーを除去している。
【0096】
本変形例のクリーニング装置の場合、印加電圧の設定変更時は、プレクリーニング部100cの第3クリーニングブラシローラ110と第3回収ローラ111、第1クリーニング部100aの第1クリーニングブラシローラ102と第1回収ローラ103、第2クリーニング部100bの第2クリーニングブラシローラ106と第2回収ローラ107に接続された6つの電源で同時に電圧を印加した状態で、設定テーブルで決められた目標電流値が流れるように印加電圧を調整し、調整した印加電圧を記録して、これを通常動作時に印加する電圧値としている。各クリーニング部におけるクリーニングブラシローラと回収ローラとの間の電位差は、いずれのクリーニング部も400[V]に固定している。
【0097】
次に、本プリンタに好適に使用されるトナーについて説明する。
本プリンタに好適に使用されるトナーは、600dpi以上の微少ドットを再現するために、トナーの体積平均粒径が3〜6[μm]のものが好ましい。また、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が、1.00〜1.40の範囲にあるトナーが好ましい。(Dv/Dn)が1.00に近いほど粒径分布がシャープであることを示す。このような小粒径で粒径分布の狭いトナーでは、トナーの帯電量分布が均一になり、地肌かぶりの少ない高品位な画像を得ることができ、また、静電転写方式では転写率を高くすることができる。
【0098】
トナーの形状係数SF−1は100〜180、形状係数SF−2は100〜180の範囲にあることが好ましい。
図9は、形状係数SF−1を説明するためにトナーの形状を模式的に表した図である。形状係数SF−1は、トナー形状の丸さの割合を示すものであり、下記式(1)で表される。トナーを二次元平面に投影してできる形状の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
SF−1={(MXLNG)
2/AREA}×(100π)/4 ・・・式(1)
SF−1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。
【0099】
また、
図10は、形状係数SF−2を説明するためにトナーの形状を模式的に表した図である。形状係数SF−2は、トナーの形状の凹凸の割合を示すものであり、下記式(2)で表される。トナーを二次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100/(4π)を乗じた値である。
SF−2={(PERI)
2/AREA}×100/(4π) ・・・式(2)
SF−2の値が100の場合トナー表面に凹凸が存在しなくなり、SF−2の値が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。
【0100】
形状係数の測定は、具体的には、走査型電子顕微鏡(S−800:日立製作所製)でトナーの写真を撮り、これを画像解析装置(LUSEX3:ニレコ社製)に導入して解析して計算した。トナーの形状が球形に近くなると、トナーとトナーあるいはトナーと感光体との接触状態が点接触になるために、トナー同士の吸着力は弱くなり従って流動性が高くなり、また、トナーと感光体との吸着力も弱くなって、転写率は高くなる。形状係数SF−1、SF−2のいずれかが180を超えると、転写率が低下するため好ましくない。
【0101】
また、カラープリンタに好適に使用されるトナーは、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマーと、ポリエステルと、着色剤と、離型剤とを有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系溶媒中で架橋及び/又は伸長反応させて得られるトナーである。以下に、トナーの構成材料及び製造方法について説明する。
【0102】
(ポリエステル)
ポリエステルは、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物との重縮合反応によって得られる。
多価アルコール化合物(PO)としては、2価アルコール(DIO)および3価以上の多価アルコール(TO)が挙げられ、(DIO)単独、または(DIO)と少量の(TO)との混合物が好ましい。2価アルコール(DIO)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上の多価アルコール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0103】
多価カルボン酸(PC)としては、2価カルボン酸(DIC)および3価以上の多価カルボン酸(TC)が挙げられ、(DIC)単独、および(DIC)と少量の(TC)との混合物が好ましい。2価カルボン酸(DIC)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上の多価カルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、多価カルボン酸(PC)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコール(PO)と反応させてもよい。
【0104】
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の重縮合反応は、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧しながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。ポリエステルの水酸基価は5以上であることが好ましく、ポリエステルの酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすく、さらには記録紙への定着時、記録紙とトナーの親和性がよく低温定着性が向上する。しかし、酸価が30を超えると帯電の安定性、特に環境変動に対し悪化傾向がある。また、重量平均分子量1万〜40万、好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量が1万未満では、耐オフセット性が悪化するため好ましくない。また、40万を超えると低温定着性が悪化するため好ましくない。
【0105】
ポリエステルには、上記の重縮合反応で得られる未変性ポリエステルの他に、ウレア変性のポリエステルが好ましく含有される。ウレア変性のポリエステルは、上記の重縮合反応で得られるポリエステルの末端のカルボキシル基や水酸基等と多価イソシアネート化合物(PIC)とを反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得、これとアミン類との反応により分子鎖が架橋及び/又は伸長されて得られるものである。多価イソシアネート化合物(PIC)としては、脂肪族多価イソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−イソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアネート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。多価イソシアネート化合物(PIC)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5/1を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1/1未満では、ウレア変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の多価イソシアネート化合物(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40wt%、好ましくは1〜30wt%、さらに好ましくは2〜20wt%である。0.5wt%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40wt%を超えると低温定着性が悪化する。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有されるイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0106】
次に、ポリエステルプレポリマー(A)と反応させるアミン類(B)としては、2価アミン化合物(B1)、3価以上の多価アミン化合物(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
【0107】
2価アミン化合物(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上の多価アミン化合物(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0108】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2/1超や、1/2未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0109】
また、ウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0110】
ウレア変性ポリエステルは、ワンショット法、などにより製造される。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧しながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これに多価イソシアネート(PIC)を反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得る。さらにこの(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア変性ポリエステルを得る。
【0111】
(PIC)を反応させる際、及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(PIC)に対して不活性なものが挙げられる。
【0112】
また、ポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との架橋及び/又は伸長反応には、必要により反応停止剤を用い、得られるウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0113】
ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステル等の数平均分子量は、先の未変性ポリエステルを用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。ウレア変性ポリエステルを単独で使用する場合は、その数平均分子量は、通常2000〜15000、好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー画像形成装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0114】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを併用することで、低温定着性およびフルカラー画像形成装置に用いた場合の光沢性が向上するので、ウレア変性ポリエステルを単独で使用するよりも好ましい。尚、未変性ポリエステルはウレア結合以外の化学結合で変性されたポリエステルを含んでも良い。
【0115】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは、少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは類似の組成であることが好ましい。
【0116】
また、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとの重量比は、通常20/80〜95/5、好ましくは70/30〜95/5、さらに好ましくは75/25〜95/5、特に好ましくは80/20〜93/7である。ウレア変性ポリエステルの重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0117】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを含むバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常45〜65℃、好ましくは45〜60℃である。45℃未満ではトナーの耐熱性が悪化し、65℃を超えると低温定着性が不十分となる。
【0118】
また、ウレア変性ポリエステルは、得られるトナー母体粒子の表面に存在しやすいため、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
【0119】
(着色剤)
着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR1、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0120】
着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造、またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体、あるいはこれらとビニル化合物との共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0121】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては公知のものが使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSYVP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LR1−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。このうち、特にトナーを負極性に制御する物質が好ましく使用される。
【0122】
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を超える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、荷電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
【0123】
(離型剤)
離型剤としては、融点が50〜120℃の低融点のワックスが、バインダー樹脂との分散の中でより離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これにより定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布することなく高温オフセットに対し効果を示す。このようなワックス成分としては、以下のものが挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、及びおよびパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等が挙げられる。また、これら天然ワックスの外に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられる。さらに、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド及び、低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等も用いることができる。
【0124】
荷電制御剤、離型剤はマスターバッチ、バインダー樹脂とともに溶融混練することもできるし、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えても良い。
【0125】
(外添剤)
トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤として、無機微粒子が好ましく用いられる。この無機微粒子の一次粒子径は、5×10−3〜2[μm]であることが好ましく、特に5×10−3〜0.5[μm]であることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500[m2/g]であることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5wt%であることが好ましく、特に0.01〜2.0wt%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。中でも、流動性付与剤としては、疎水性シリカ微粒子と疎水性酸化チタン微粒子を併用するのが好ましい。特に両微粒子の平均粒径が5×10−4μm以下のものを使用して攪拌混合を行った場合、トナーとの静電力、ファンデルワールス力は格段に向上することより、所望の帯電レベルを得るために行われる現像装置内部の攪拌混合によっても、トナーから流動性付与剤が脱離することなく、ホタルなどが発生しない良好な画像品質が得られて、さらに転写残トナーの低減が図られる。酸化チタン微粒子は、環境安定性、画像濃度安定性に優れている反面、帯電立ち上がり特性の悪化傾向にあることより、酸化チタン微粒子添加量がシリカ微粒子添加量よりも多くなると、この副作用の影響が大きくなることが考えられる。しかし、疎水性シリカ微粒子及び疎水性酸化チタン微粒子の添加量が0.3〜1.5wt%の範囲では、帯電立ち上がり特性が大きく損なわれず、所望の帯電立ち上がり特性が得られ、すなわち、コピーの繰り返しを行っても、安定した画像品質が得られる。
【0126】
次に、トナーの製造方法について説明する。ここでは、好ましい製造方法について示すが、これに限られるものではない。
【0127】
(トナーの製造方法)
(1)着色剤、未変性ポリエステル、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー、離型剤を有機溶媒中に分散させトナー材料液を作る。
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、トナー母体粒子形成後の除去が容易である点から好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。有機溶媒の使用量は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対し、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。
【0128】
(2)トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
水系媒体は、水単独でも良いし、アルコール(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含むものであってもよい。
【0129】
トナー材料液100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー材料液の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
【0130】
また、水系媒体中の分散を良好にするために、界面活性剤、樹脂微粒子等の分散剤を適宜加える。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0131】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0132】
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0133】
また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0134】
樹脂微粒子は、水系媒体中で形成されるトナー母体粒子を安定化させるために加えられる。このために、トナー母体粒子の表面上に存在する被覆率が10〜90%の範囲になるように加えられることが好ましい。例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子1[μm]、及び3[μm]、ポリスチレン微粒子0.5[μm]及び2[μm]、ポリ(スチレン―アクリロニトリル)微粒子1[μm]、商品名では、PB−200H(花王社製)、SGP(総研社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、SGP−3G(総研社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製)等がある。また、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機化合物分散剤も用いることができる。
【0135】
上記の樹脂微粒子、無機化合物分散剤と併用して使用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸−β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−β−ヒドロキシエチル、アクリル酸−β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの含窒素化合物、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0136】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。この中でも、分散体の粒径を2〜20[μm]にするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000[rpm]、好ましくは5000〜20000[rpm]である。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。
【0137】
(3)乳化液の作製と同時に、アミン類(B)を添加し、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)との反応を行わせる。
この反応は、分子鎖の架橋及び/又は伸長を伴う。反応時間は、ポリエステルプレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)との反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0138】
(4)反応終了後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。
有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に層流の攪拌状態で昇温し、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子が作製できる。また、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
【0139】
(5)上記で得られたトナー母体粒子に、荷電制御剤を打ち込み、ついで、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機微粒子を外添させ、トナーを得る。 荷電制御剤の打ち込み、及び無機微粒子の外添は、ミキサー等を用いた公知の方法によって行われる。
【0140】
これにより、小粒径であって、粒径分布のシャープなトナーを容易に得ることができる。さらに、有機溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、真球状からラクビーボール状の間の形状を制御することができ、さらに、表面のモフォロジーも滑らかなものから梅干形状の間で制御することができる。
【0141】
またトナーの形状は略球形状であり、以下の形状規定によって表すことができる。
図11(a),(b),(c)はトナーの形状を模式的に示す図である。
図11(a),(b),(c)において、略球形状のトナーを長軸r1、短軸r2、厚さr3(但し、r1≧r2≧r3とする。)で規定するとき、トナーは、長軸と短軸との比(r2/r1)(
図11(b)参照)が0.5〜1.0で、厚さと短軸との比(r3/r2)(
図11(c)参照)が0.7〜1.0の範囲にあることが好ましい。長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5未満では、真球形状から離れるためにドット再現性及び転写効率が劣り、高品位な画質が得られなくなる。また、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7未満では、扁平形状に近くなり、球形トナーのような高転写率は得られなくなる。特に、厚さと短軸との比(r3/r2)が1.0では、長軸を回転軸とする回転体となり、トナーの流動性を向上させることができる。
【0142】
なお、r1、r2、r3は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、視野の角度を変えて写真を撮り、観察しながら測定した。
【0143】
また、本発明のクリーニング装置は、中間転写ベルトの外周面をクリーニングするベルトクリーニング装置100に限らず、
図12に示すように、紙搬送ベルト51の搬送ベルトクリーニング装置500にも適用することができる。
図12に示すように、タンデム型直接転写方式の画像形成装置に用いられる被清掃体としての紙搬送ベルト51は、感光体1Y,1M,1C,1Kにそれぞれ接触してY、M、C、K用の一次転写ニップを形成している。そして、記録紙Pを自らの表面に保持しながら、自らの無端移動に伴って図中左側から右側に向けて搬送する過程で、記録紙PをY、M、C、K用の一次転写ニップに順次送り込む。これにより、記録紙Pには、Y、M、C、Kトナー像が重ね合わせて一次転写される。K用の一次転写ニップを通過した後の紙搬送ベルト51に付着しているトナーなどの汚れは、搬送ベルトクリーニング装置500によって除去される。また、光学センサユニット150が紙搬送ベルト51の外周面に対して所定の間隙を介して対向するように配設されている。
図12に示すプリンタにおいては、所定のタイミングで画像濃度制御や位置ずれ量補正制御を実施し、紙搬送ベルト51に所定のトナーパターン(階調パターン、シェブロンパッチ)を形成し、光学センサユニット150で上記トナーパターンを検知し、検知結果に基づいて所定の補正処理を実行する。光学センサユニット150で検知後の未転写トナー像であるトナーパターンは、搬送ベルトクリーニング装置500で除去される。このように、紙搬送ベルト51は、トナー像を担持する像担持体としての機能を備えている。この構成の場合は画像領域のトナーは紙に直接転写されるため、紙搬送ベルト51に転写残が形成されることは無いが、紙搬送ベルト51に所定のトナーパターン(階調パターン、シェブロンパッチ)を形成される。
【0144】
上記搬送ベルトクリーニング装置500に本発明のクリーニング装置を適用することによって、経時にわたり紙搬送ベルト51を良好にクリーニングすることができる。
【0145】
また、本発明のクリーニング装置は、
図13に示すように、ドラムクリーニング装置4にも適用できる。通常の作像時の転写残トナーや現像装置内をリフレッシュするリフレッシュモード実行した際のトナー消費パターンや、紙詰まりが発生した際の感光体上トナー像などの未転写トナー像が、ドラムクリーニング装置4に入力される。ドラムクリーニング装置4に本発明のクリーニング装置を適用することによってドラムクリーニング装置4に入力されたトナー像を良好に除去することができる。
【0146】
以上、本実施形態に係るプリンタは、被電圧印加部材としての像担持体である中間転写ベルト8と、中間転写ベルト上の互いに近接した位置に当接する2つの電圧印加部材としてのクリーニングブラシローラ102,106と、各クリーニングブラシローラ102,106に印加する電圧VB1,VB2の設定値を記憶する設定値記憶手段と、2つのクリーニングブラシローラ102,106に対し設定値記憶手段に記憶されている設定値に従った電圧を同時に印加する電圧印加手段としての電源121,123と、2つのクリーニングブラシローラ102,106それぞれと中間転写ベルト8との各当接箇所を流れる電流量を検知する電流量検知手段と、所定の設定変更タイミング(電源投入時やプロセスコントロール時)で、2つのクリーニングブラシローラ102,106のうちの設定変更対象である第1クリーニングブラシローラ102に所定の設定変更用電圧を印加して、第1クリーニングブラシローラ102と中間転写ベルト8との当接箇所を流れる電流量(IB1+IC1)を電流量検知手段により検知し、その検知した電流量に基づいて、設定値記憶手段に記憶されている第1クリーニングブラシローラ102の設定値を設定変更する設定値変更処理を行う設定値変更手段とを有する画像形成装置である。このプリンタにおいて、設定値変更手段は、2つのクリーニングブラシローラ102,106のうちの第2クリーニングブラシローラ106に対して所定電圧を印加した状態で、第1クリーニングブラシローラ102に設定変更用電圧を印加し、第1クリーニングブラシローラ102と中間転写ベルト8との当接箇所を流れる電流量(IB1+IC1)を電流量検知手段により検知し、その検知した電流量に基づいて設定値変更処理を行う。これにより、両クリーニング部100a,100bに電圧を同時に印加する通常動作時において、第1クリーニングブラシローラ102を流れるクリーニング電流は、第2クリーニングブラシローラ106に電圧を印加しない状態で検知した電流量に基づいて設定変更した設定値を用いる場合と比較して、目標電流量に近いものとなり、目標電流値からはずれたクリーニング電流が流れることに起因したクリーニング不良を安定して抑制できる。
また、本実施形態において、2つのクリーニングブラシローラ102,106は、中間転写ベルト上に付着するトナーを静電的に付着させて中間転写ベルト上から除去するクリーニング部材である。これにより、近年の小型化の要請を受けて、2つのクリーニング部材の位置関係を近接させても、クリーニング不良を生じさせずにすむ。
また、本実施形態において、電源121,123は、設定値記憶手段に記憶されている設定値に従って、隣接する2つのクリーニングブラシローラ102,106間に対して互いに異なる極性の電圧を同時に印加する。これにより、中間転写ベルト8上に互いに異なる極性のトナーが混在していても、いずれの極性のトナーも静電的に回収してクリーニングすることができる。ここで、このように隣接する2つのクリーニングブラシローラ102,106間に対して互いに異なる極性の電圧を同時に印加する構成において、これらのクリーニングブラシローラ102,106の位置関係を近接させると、同極性の電圧が印加されている場合よりも、他方のクリーニングブラシローラに電圧を印加しない状態で検知した電流量に基づいて設定変更した設定値を用いるときに目標電流値からはずれたクリーニング電流が流れやすい。よって、互いに異なる極性の電圧を同時に印加される2つのクリーニングブラシローラ102,106の位置関係を近接させる場合には、特に、本発明が有用となる。
また、本実施形態において、電源121,123は、設定値記憶手段に記憶されている設定値に従って、隣接する2つのクリーニングブラシローラ102,106に対し、これらに印加される電圧差分絶対値が6kV以上となる電圧を印加するものであり、これらのクリーニングブラシローラ102,106と中間転写ベルト8との当接箇所間距離は、これらのうちの正極性の電圧が印加される第1クリーニングブラシローラ102に対して設定値記憶手段に記憶されている設定値に従った電圧を印加したときに第1クリーニングブラシローラ102から中間転写ベルト内部へ電流が流れ込む経路の抵抗値をR1とし、第1クリーニングブラシローラ102から中間転写ベルト表面を流れて負極性の電圧が印加される第2クリーニングブラシローラ106へ電流が流れ込む経路の抵抗値をR2としたとき、R2/R1が100未満となるように設定されている。なお、上述した実施形態で説明したR1とR2は、それぞれ、ブラシ抵抗値RB1,RB2を含んだものとなっているが、ブラシ抵抗値RB1,RB2は、中間転写ベルト8の厚さ方向の抵抗値や中間転写ベルト8の表面方向の抵抗値と比べて、小さい値である。よって、ここで説明したR1とR2は、上述した実施形態で説明したR1とR2に相当するものである。本実施形態のように、隣接する2つのクリーニングブラシローラ102,106の電圧差分絶対値が6kV以上であって、抵抗比R2/R1が100未満であるという条件を満たすと、他方のクリーニングブラシローラに電圧を印加しない状態で検知した電流量に基づいて設定変更した設定値を用いるときに目標電流値からはずれたクリーニング電流が流れやすい。よって、このような条件を満たす場合には、特に、本発明が有用となる。
また、本実施形態においては、隣接する2つのクリーニングブラシローラ102,106と中間転写ベルト8との当接箇所間距離は、これらのうちの正極性の電圧が印加される第1クリーニングブラシローラ102に対して設定値記憶手段に記憶されている設定値に従った電圧を印加したときに流れる電流の総量の60%以上が、負極性の電圧が印加される第2クリーニングブラシローラ106へ流れ込むように設定されている。このように設定されている場合、他方のクリーニングブラシローラに電圧を印加しない状態で検知した電流量に基づいて設定変更した設定値を用いるときに目標電流値からはずれたクリーニング電流が流れやすい。よって、このような設定がなされている場合には、特に、本発明が有用となる。
また、本実施形態において、設定値変更手段は、当該プリンタの電源投入の際に設定値変更処理を行う。
また、本実施形態においては、所定の画質調整時期に画質調整制御(プロセスコントロール)を行う画質調整制御手段を有し、設定値変更手段は、画質調整制御手段が画質調整制御を行う際に設定値変更処理を行う。
このとき、設定値変更手段は、画質調整制御手段が画質調整制御を開始する前に設定値変更処理を行うのが好ましい。これにより、画質調整制御で生じる大量の不要トナーを適切にクリーニングすることができる。
また、本実施形態においては、温度及び湿度の少なくとも一方を検知する検知手段を有し、設定値変更手段は、この検知手段の検知結果が所定の温度条件又は所定の湿度条件を満たしたときに設定値変更処理を行う。
また、本実施形態においては、複数の動作モード(通常線速と半速モード)のいずれかの動作モードで画像形成動作を制御する画像形成動作制御手段を有し、設定値記憶手段は、第1クリーニングブラシローラ102,106についての設定値を動作モードごとに記憶しており、設定値変更手段は、電源投入時及び画質調整制御時に、複数の動作モードのうちの1つである特定動作モード(通常線速)のみで設定値変更処理を行って、通常線速に対応する設定値を設定変更する。これにより、電源投入時及び画質調整制御時にすべての動作モードについて設定値変更処理を行う場合よりも、電源投入時及び画質調整制御時における処理時間の短縮を図ることができる。
また、本実施形態において、上記複数の動作モードは、中間転写ベルトの表面移動速度が互いに異なる動作モードであるので、各線速に対応した適切な設定でクリーニングすることができる。
この場合、設定値変更手段は、複数の動作モードのうち上記特定動作モード(通常線速)ではない他の動作モード(半速モード)に対応する電圧設定値は、電源投入時又は画質調整制御時とは異なる別のタイミングで設定する。そして、特定動作モード(通常線速)時における中間転写ベルトの表面移動速度に対する他の動作モード(半速モード)時における中間転写ベルトの表面移動速度の比率を用いて、特定動作モードに対応する目標電流値から他の動作モードに対応する目標電流値を算出する。その後、当該別のタイミングで他の動作モードに対応する電圧設定値を設定する際には、このようにして当該比率を用いて算出した目標電流値が流れるように、他の動作モードに対応する電圧設定値を設定する。これにより、各線速に対応した適切な設定でクリーニングすることができる。
ことを特徴とする画像形成装置。