【実施例】
【0074】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0075】
<I:化合物の合成>
[I-1:KOK3017の合成]
【化7】
【0076】
2-ヒドロキシ-3-(6-メトキシナフタレン-2-イル)プロパン酸メチル(100 mg, 0.384 mmol)をメタノール(2 ml)に溶解させた。得られた溶液に2 N水酸化ナトリウム水溶液(1 ml)を加え、該混合物を室温で4時間撹拌した。前記反応液に2 N塩酸を加えてpH 1にし、該反応液を減圧下で濃縮した。得られた固体を水に懸濁させ、濾取した。濾取された残渣を減圧下で乾燥し、表題化合物(白色結晶87 mg,92%)を得た。
1H-NMR (DMSO, 270 MHz) δppm: 2.89 (1H, dd, J = 13.8, 8.2 Hz), 3.10 (1H, dd, J = 13.8, 4.5 Hz), 3.85 (3H, s), 4.19 (1H, dd, J = 8.2, 4.5 Hz), 7.09-7.38 (3H, m), 7.64 (1H, s), 7.72 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.74 (1H, d, J = 8.6 Hz).
【0077】
[I-2:KOK3016の合成]
【化8】
【0078】
2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(ナフタレン-2-イル)プロピオン酸メチル(100 mg,0.409 mmol)をメタノールに溶解させた。得られた溶液に2 N水酸化ナトリウム水溶液(1 ml)を加え、該混合物を室温で4時間撹拌した。反応液を、減圧下で濃縮し、2 N塩酸を用いてpH 1に調整した。析出した固体を濾取した。濾取された残渣を減圧下で乾燥し、表題化合物(白色結晶68 mg,72%)を得た。
1H-NMR (DMSO, 270 MHz) δppm: 1.28 (3H, s), 3.00 (1H, d, J = 13.4 Hz), 3.10 (1H, d, J = 13.4 Hz) 7.40-7.50 (3H, m), 7.70 (1H, s), 7.77-7.87 (3H, m).
【0079】
[I-3:KOK3096の合成]
【化9】
【0080】
3-(4-ブロモフェニル)-2-ヒドロキシプロピオン酸メチル(500 mg,1.93 mmol)、3,5-ジクロロフェニルボロン酸(442 mg,2.32 mmol)、[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II), ジクロロメタン付加体 (79 mg)、炭酸カリウム(400 mg,2.90 mmol)及びジオキサン(10 ml)を、窒素雰囲気下、150℃で3時間撹拌した。反応液を減圧下で濃縮し、そのままシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製した。これにより、表題化合物(黄色油状物441 mg,70%)を得た。
【0081】
1H-NMR (CDCl
3, 270 MHz) δppm: 2.76 (1H, d, J = 5.8 Hz), 3.01 (1H, dd, J = 14.0, 6.9 Hz), 3.19 (1H, dd, J = 14.0, 4.3 Hz), 3.80 (3H, s), 4.45-4.53 (1H, m), 7.27-7.34 (3H, m), 7.43-7.50 (4H, m).
【0082】
[I-4:KOK3098の合成]
【化10】
【0083】
水素化ナトリウム(60%)(255 mg,6.38 mmol)に、テトラヒドロフラン(5 ml)を加え撹拌した。得られた混合物に、5-フェニルチオフェン-2-カルボアルデヒド(1.00 g,5.31 mmol)、クロロ酢酸メチル(692 mg,6.38 mmol)及びテトラヒドロフラン(10 ml)の混合液を滴下し、室温で一晩撹拌した。反応液を氷冷し、1 M硫酸で中和後、ジクロロメタンで3回抽出した。得られた抽出物のジクロロメタン溶液を、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。前記溶液を濾過して、減圧下で濃縮した。得られた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、表題化合物(茶色結晶462 mg,33%)を得た。
【0084】
1H-NMR (CDCl
3, 270 MHz) δppm: 3.91 (3H, s), 6.38 (1H, d, J = 1.7 Hz), 6.81 (1H, d, J = 1.7 Hz), 7.22-7.31 (3H, m), 7.33-7.42 (2H, m), 7.60-7.66 (2H, m).
【0085】
[I-5:KOK3099の合成]
【化11】
【0086】
文献(Organic Letters, 2003年, 第5巻, 第24号, p. 4665-4668)に記載の方法にしたがって、表題化合物を合成した。
【0087】
前記反応で得られたKOK3098(434 mg,1.67 mmol)及びPd
0-EnCat(登録商標)(0.4 mmol/g)(208 mg)を、酢酸エチル(10 ml)に溶解させた。得られた溶液に、トリエチルアミン(0.92 ml,6.67 mmol)、蟻酸(0.25 ml,6.67 mmol)を加えた。得られた反応液を、アルゴン雰囲気下、室温で一晩撹拌後、該反応液を濾過した。得られた濾液を、減圧下で濃縮した。その後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、表題化合物(黄色結晶178 mg,41%)を得た。
1H-NMR (CDCl
3, 270 MHz) δppm: 3.05-3.35 (3H, m), 3.76 (3H, s), 4.45 (1H, dd, J = 5.8, 4.3 Hz), 6.81 (1H, dt, J = 3.5, 0.8 Hz), 7.11 (1H, d, J = 3.5 Hz), 7.18-7.26 (1H, m), 7.28-7.37 (2H, m), 7.50-7.56 (2H, m).
【0088】
[I-6:KOK3083の合成]
【化12】
【0089】
水素化ナトリウム(60%)(105 mg,2.63 mmol)及びTHF(6 ml)の溶液に、3-(ナフタレン-2-イル)アクリルアルデヒド(400 mg, 2.120 mmol)、クロロ酢酸メチル(286 mg, 2.63 mmol)及びTHF(4 ml)の溶液を滴下した。得られた溶液を、室温で1日間撹拌した。得られた溶液に水を加え、酢酸エチルで3回抽出した。得られた有機相を、水で3回洗浄後、飽和食塩水で1回洗浄して、該有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。得られた混合物を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。その後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、表題化合物(黄色結晶190 mg,46%)を得た。
1H-NMR (CDCl
3, 270 MHz) δppm: 3.54 (1H, d, J = 1.8 Hz), 3.82 (4H, m), 5.98 (1H, dd, J = 16.0, 8.0 Hz), 6.99 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.42-7.55 (4H, m), 7.72-7.84 (3H, m).
【0090】
[I-7:KOK2174の合成]
【化13】
【0091】
炭酸カリウム(959 mg,6.94 mmol)及び1-ナフトール(1.00 g, 6.94 mmol)を、アセトン(20 ml)に懸濁させた。得られた懸濁液を、0℃で15分間撹拌した。前記懸濁液を0℃で撹拌したまま、該懸濁液に、アセトン(20 ml)に溶解した4-ブロモクロトン酸メチル(85%)(1.46 g,6.94 mmol)を滴下し、2時間撹拌した。その後、前記懸濁液を、室温に戻して4時間撹拌した。得られた反応液を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。その後、残渣にジエチルエーテルを加え、2 N水酸化ナトリウム水溶液及び水で洗浄して、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。得られた混合物を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。その後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、表題化合物(黄色油状物 1.257 g,75%)を得た。
【0092】
1H-NMR (CDCl
3, 270 MHz) δppm: 3.76 (3H, s), 4.83 (2H, dd, J = 4.0, 2.1 Hz), 6.33 (1H, dt, J = 15.7, 2.1 Hz), 6.74 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.18 (1H, dt, J = 15.8, 4.0 Hz), 7.33 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.47-7.50 (3H, m), 7.77-7.81 (1H, m), 8.28-8.31 (1H, m).
【0093】
[I-8:KOK3024の合成]
【化14】
【0094】
KOK2174(900 mg,3.72 mmol)及び炭酸カリウム(1.027 g,7.43 mmol)にアセトン(20 ml)を加えた。得られた混合物を、8時間還流した。反応液を、減圧下で濃縮した。その後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、表題化合物(cis:無色油状物274 mg,30%,trans:黄色油状物27 mg,3%)を得た。
1H-NMR (CDCl
3, 270 MHz) δppm(cis): 3.43 (2H, dd, J = 7.1, 1.7 Hz), 3.73 (3H, s), 5.16 (1H, dt, J = 7.1, 6.1 Hz), 6.69 (1H, dt, J = 6.1, 1.7 Hz), 6.97 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.37 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.48-7.56 (3H, m), 7.79-7.85 (1H, m), 8.21-8.25 (1H, m).
1H-NMR (CDCl
3, 270 MHz) δppm(trans): 3.11 (2H, dd, J = 7.8, 1.2 Hz), 3.72 (3H, s), 5.58 (1H, dt, J = 12.2, 7.8 Hz), 6.69 (1H, dt, J = 12.2, 1.2 Hz), 6.97 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.37 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.45-7.58 (3H, m), 7.76-7.85 (1H, m), 8.18-8.26 (1H, m).
【0095】
[I-9:KOK2098の合成]
【化15】
【0096】
窒素雰囲気下、(2-(ナフタレン-2-イル)-2-オキソエチル)ホスホン酸ジメチル(163 mg,0.586 mmol)をジクロロメタン(6 ml)に加えた。得られた混合物に、ブロモトリメチルシラン(0.61 ml,4.69 mmol)を滴下した。その後、前記混合物を、室温で21時間撹拌した。得られた反応液に窒素ガスを吹き付けることにより、該反応液を濃縮した。前記濃縮物に、水及びジクロロメタンを加えた。前記処理によって析出した結晶を濾取した。濾取された結晶を、エタノールに溶解させた。得られた溶液に含まれる不溶物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。これにより、表題化合物(白色結晶97 mg,66%)を得た。
1H-NMR (DMSO, 270 MHz) δppm: 3.62 (1H, s), 3.70 (1H, s), 7.59-7.71 (2H, m), 7.98-8.12 (4H, m), 8.71 (1H, s).
【0097】
[I-10:KOK2068の合成]
【化16】
【0098】
2-ナフタレン酢酸(300 mg,1.61 mmol)及びN-ヒドロキシフタルイミド(263 mg,1.61 mmol)を、ジオキサン(10 ml)中で撹拌した。得られた混合物に、ジオキサン(10 ml)に懸濁させたWSCI(309 mg,1.61 mmol)を滴下した。その後、前記混合物を、2時間撹拌した。反応液を、減圧下で濃縮した。得られた残渣に、酢酸エチルを加え、水及び飽和食塩水で洗浄した後、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。得られた混合物を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、表題化合物(白色結晶173 mg,32%)を得た。
1H-NMR (CDCl
3, 270 MHz) δppm: 4.14 (2H, s), 7.43-7.50 (3H, m), 7.68-7.80 (2H, m), 7.82-7.87 (6H, m).
【0099】
[I-11:KOK3007の合成]
【化17】
【0100】
インドール(400 mg,3.41 mmol)及び水酸化カリウム(211 mg,3.76 mmol)を、ジメチルスルホキシド(5 ml)中で氷冷下撹拌した。得られた混合物に、2-(ブロモメチル)アクリル酸メチル(672 mg,3.76 mmol)を滴下した。滴下後、前記混合物を、室温に戻して4日間撹拌した。得られた反応液に、酢酸エチルを加え、水及び飽和食塩水で洗浄した後、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。得られた混合物を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。その後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、表題化合物(無色油状,20%)を得た。
1H-NMR (CDCl
3, 270 MHz) δppm: 3.80 (3H, s), 4.98 (2H, s), 5.15 (1H, s), 6.23 (1H, s), 6.54 (1H, d, J = 3.1 Hz), 7.08-7.27 (4H, m), 7.63 (1H, d, J =7.5 Hz).
【0101】
[I-12:KOK1128の合成]
【化18】
【0102】
窒素雰囲気下、カリウムtert-ブトキシド(345 mg,3.07 mmol)にジクロロメタン(10 ml)を加えた。得られた混合物を-70℃で撹拌しながら、該混合物に、2-(アセチルアミノ)-ジメチルホスホノ酢酸メチル(735 mg,3.07 mmol)のジクロロメタン(10 ml)溶液を滴下した。その後、前記混合物を、-70℃のまま45分間撹拌した。得られた混合物に、2-(ナフタレン-1-イルオキシ)アセトアルデヒド(345 mg,3.07 mmol)のジクロロメタン(10 ml)溶液を滴下した。その後、前記混合物を、-70℃で2時間撹拌し、室温に戻した後、さらに5日間撹拌した。得られた反応液に水を加え、酢酸エチルで3回抽出した。前記抽出物の酢酸エチル溶液を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。得られた混合物を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。得られた結晶を、ジクロロメタンで懸濁させながら洗浄した。その後、洗浄された結晶を濾取し、表題化合物(白色結晶673 mg,73%)を得た。
【0103】
1H-NMR (CDCl
3, 270 MHz) δppm: 2.19 (3H, s), 4.83 (3H, s), 4.87 (2H, d, J = 5.6 Hz), 6.80 (1H, d, J = 7.6 Hz), 6.92 (1H, t, J = 5.6 Hz), 7.20-7.53 (4H, m), 7.75-7.83 (1H, m), 8.22-8.31 (1H, m).
【0104】
<II:使用例>
[II-1:試験化合物]
以下の使用例では、下記の試験化合物を使用した。
(1)乳酸型化合物:化合物KOK3017、KOK3016、KOK3096、KOK3099、KOK2052BP、KOK2099、KOK2166、KOK3026、KOK3035、KOK3045及びKOK3033;
(2)ビニルエーテル型化合物:化合物KOK2174、KOK3024cis及びKOK3024trans;
(3)アクリル酸型化合物:化合物KOK3083、KOK3098、KOK2052BP2、KOK2103、KOK2169BP、KOK2073、KOK3009、KOK3012、KOK3019及びKOK3025;
(4)その他の型の化合物:化合物KOK2098、KOK3007、KOK1128、KOK2068、KOK2071、KOK2074、KOK2194、KOK2195、KOK3041、KOK2202、KOK2097、KOK3028及びKOK2140。
【0105】
[II-2:内性IAA量の定量試験]
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana L., Col-0)の種子を、培養プレートに調製した固体培地(0.8%寒天で固化させた1/2 MS培地、1.0%スクロースを含む)上に播種した。前記培養プレートを平置きで静置し、シロイヌナズナを連続白色光下、22℃で6日間栽培した。得られた幼植物体を、遠心チューブに調製した液体培地(1/2 MS培地、1.0%スクロースを含む)中で、連続白色光下、22℃で24時間振盪培養した。次いで、試験化合物(各30μM)を前記液体培地に添加し、連続白色光下、22℃で3時間振盪培養した。その後、幼植物体を回収し、該幼植物体中の内性IAA量を定量した。内性IAA量の定量は、添野らの文献(Plant Cell Physiol., 2010年, 第51巻, p. 524-536)に記載の方法に従い、LC-MS/MSを用いて行った。結果を
図1に示す。
【0106】
図1に示すように、本発明の化合物のうち、乳酸型の化合物は、いずれもシロイヌナズナの内性IAA量を低下させた。同様の傾向は、ビニルエーテル型の化合物でも確認された。一方、アクリル酸型及びその他の型の化合物のうち、一部の化合物は、シロイヌナズナの内性IAA量に影響を与えなかった。
【0107】
[II-3:シロイヌナズナの生育試験]
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana L., Col-0)の種子を、培養プレートに調製した固体培地(0.8%寒天で固化させた1/2 MS培地、1.5%スクロース及び30μM各試験化合物を含む)上に播種した。前記培養プレートを縦置きで静置し、シロイヌナズナを連続白色光下、22℃で8日間栽培した。その後、シロイヌナズナの形態を目視で観察した。対照区は、試験化合物に代えてジメチルスルホキシド(DMSO)を同量添加した。対照区のシロイヌナズナ幼植物体の形態と比較して、生育阻害が観察された化合物を表1に示す。表中、「◎」は、対照区のシロイヌナズナ幼植物体と比較して、主根の伸長が80%以上阻害された試験区を、「○」は主根の伸長が50%〜80%阻害された試験区を、「△」は主根伸長の阻害が50%以下であった試験区を、「※」は、オーキシン過剰様の形態が観察された試験区を、それぞれ示す。また、対照区及び各試験区の形態を
図2-1〜2-9に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
表1に示すように、本発明の化合物は、シロイヌナズナ幼植物体に対して、主根の伸長抑制及び/又は子葉の生育抑制のような顕著な生育阻害効果を示した。また、化合物KOK3033、KOK3009、KOK3012、KOK3019、KOK3025、KOK2068、KOK2071、KOK2074、KOK2202及びKOK2140は、主根の顕著な伸長抑制及び側根の形成促進のようなオーキシン過剰様の生育阻害効果を示した。
【0110】
[II-4:イネの生育試験]
イネ(Oryza sativa L., 品種:日本晴)の籾摺りした種子を、培養プレートに調製した固体培地(0.3%Gelriteで固化させた1/2 MS培地、1.5%スクロース及び100μM各試験化合物を含む)上に播種した。前記培養プレートを縦置きで静置し、イネを連続白色光下、30℃で6日間栽培した。その後、イネの形態を目視で観察した。対照区は、試験化合物に代えてジメチルスルホキシド(DMSO)を同量添加した。対照区のイネ幼植物体の形態と比較して、生育阻害が観察された化合物を表2に示す。表中、「◎」は、対照区のイネ幼植物体と比較して、種子根の伸長が80%以上阻害された試験区を、「○」は種子根の伸長が50%〜80%阻害された試験区を、「△」は種子根伸長の阻害が50%以下であった試験区を示す。また、対照区及び各試験区の形態を
図3-1〜3-8に示す。
【0111】
【表2】
【0112】
表2に示すように、本発明の化合物は、イネ幼植物体に対して、種子根及び/又は子葉鞘の伸長抑制のような顕著な生育阻害効果を示した。
【0113】
[II-5:本発明の化合物と従来技術の化合物とのオーキシン生合成阻害活性の比較]
前記II-3の使用例に記載のシロイヌナズナの生育試験を用いて、本発明の実施例化合物と従来技術の化合物(参考例1)とのオーキシン生合成阻害活性を比較した。なお、実施例化合物は、乳酸型化合物KOK3099及びアクリル酸型化合物KOK3098を、参考例1の化合物は、特許文献2に記載のアミノオキシ基を有する化合物KOK1169を、それぞれ用いた。化合物KOK1169の構造を以下に示す。
【0114】
【化19】
【0115】
実施例化合物及び参考例1の化合物の、シロイヌナズナの生育試験結果を
図4に示す。
図4に示すように、参考例1の化合物の場合、100μM処理区においても、対照区(化合物濃度:0μM)のシロイヌナズナ幼植物体と比較した主根伸長の阻害は、約42%であった。これに対し、乳酸型の実施例化合物である化合物KOK3099の場合、主根伸長の阻害は、10μM処理区で約87%に達した。また、アクリル酸型の実施例化合物である化合物KOK3098の場合、主根伸長の阻害は、30μM処理区で約64%に達した。前記の結果から、本発明の化合物は、特許文献2に記載のアミノオキシ基を有する化合物のような従来技術のオーキシン生合成阻害剤と比較して、より高いオーキシン生合成阻害活性を有することが示唆される。