(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
尚、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。また、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
以下の説明においては、必要に応じてXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。本実施形態においては、光学表示部品である液晶パネルの搬送方向をX方向としており、液晶パネルの面内においてX方向に直交する方向(液晶パネルの幅方向)をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向としている。
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る光学部材貼合体の製造装置であるフィルム貼合システム1について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のフィルム貼合システム1の概略構成を示す図である。
フィルム貼合システム1は、例えば液晶パネルや有機ELパネルといったパネル状の光学表示部品に、偏光フィルムや反射防止フィルム、光拡散フィルムといったフィルム状の光学部材を貼合するものである。
【0018】
尚、本実施形態では、前記光学表示部品として液晶パネルPを例示し、光学部材貼合体として、液晶パネルPの表裏両面に貼合シートF5を貼合してなる両面貼合パネルP12を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のフィルム貼合システム1は、液晶パネルPの製造ラインの一工程として設けられている。フィルム貼合システム1の各部は、電子制御装置としての制御部40により統括制御される。
【0020】
図2は、
図1のA矢視図である。
図2に示すように、本実施形態のフィルム貼合システム1は、液晶パネルPの搬送方向に対して、液晶パネルPの姿勢を途中で90°反転する。フィルム貼合システム1は、液晶パネルPの表裏面に、互いに偏光軸を直交する方向に向けた偏光フィルムF1を貼り合わせる。
【0021】
図3は、液晶パネルPをその液晶層P3の厚さ方向から見た平面図である。液晶パネルPは、平面視で長方形状をなす第1基板P1と、第1基板P1に対向して配置される比較的小形の長方形状をなす第2基板P2と、第1基板P1と第2基板P2との間に封入された液晶層P3とを備える。液晶パネルPは、平面視で第1基板P1の外形状に沿う長方形状をなし、平面視で液晶層P3の外周の内側に収まる領域を表示領域P4とする。
【0022】
図4は、液晶パネルPに貼合する光学部材F1を含む光学シートFの断面図である。尚、
図4においては、便宜上、断面図の各層のハッチングを省略している。
図4に示すように、光学シートFは、フィルム状の光学部材F1と、光学部材F1の一方の面(図では上面)に設けられた粘着層F2と、粘着層F2を介して光学部材F1の一方の面に分離可能に積層されたセパレータF3と、光学部材F1の他方の面(図では下面)に積層された表面保護フィルムF4とを有する。光学部材F1は偏光板として機能し、液晶パネルPの表示領域P4の全域とその周辺領域とにわたって貼合される。
【0023】
光学部材F1は、その一方の面に粘着層F2を残しつつセパレータF3を分離した状態で、液晶パネルPに粘着層F2を介して貼合される。以下、光学シートFからセパレータF3を除いた部分を貼合シートF5という。
【0024】
セパレータF3は、粘着層F2から分離されるまでの間に粘着層F2及び光学部材F1を保護する。表面保護フィルムF4は、光学部材F1とともに液晶パネルPに貼合される。表面保護フィルムF4は、光学部材F1に対して液晶パネルPと反対側に配置されて光学部材F1を保護すると共に、所定のタイミングで光学部材F1から分離される。尚、光学シートFが表面保護フィルムF4を含まない構成であったり、表面保護フィルムF4が光学部材F1から分離されない構成であったりしてもよい。
【0025】
光学部材F1は、シート状の偏光子F6と、偏光子F6の一方の面に接着剤等で接合される第1フィルムF7と、偏光子F6の他方の面に接着剤等で接合される第2フィルムF8とを有する。第1フィルムF7及び第2フィルムF8は、例えば偏光子F6を保護する保護フィルムである。
【0026】
尚、光学部材F1は、一層の光学層からなる単層構造でもよく、複数の光学層が互いに積層された積層構造でもよい。光学層は、偏光子F6の他に、位相差フィルムや輝度向上フィルム等でもよい。第1フィルムF7と第2フィルムF8の少なくとも一方は、液晶表示素子の最外面を保護するハードコート処理やアンチグレア処理を含む防眩などの効果が得られる表面処理が施されてもよい。光学部材F1は、第1フィルムF7と第2フィルムF8の少なくとも一方を含まなくてもよい。例えば第1フィルムF7を省略した場合、セパレータF3を光学部材F1の一方の面に粘着層F2を介して貼り合わせてもよい。
【0027】
次に、本実施形態のフィルム貼合システム1について、詳しく説明する。
図1に示すように、本実施形態のフィルム貼合システム1は、図中右側の液晶パネルPの搬送方向上流側(+X方向側)から図中左側の液晶パネルPの搬送方向下流側(−X方向側)に至り、液晶パネルPを水平状態で搬送する駆動式のローラコンベア5を備えている。
【0028】
ローラコンベア5は、後述する反転装置15を境に、上流側コンベア6と下流側コンベア7とに分かれる。
図2に示すように、上流側コンベア6では、液晶パネルPは表示領域P4の短辺を搬送方向に沿うようにして搬送される。一方、下流側コンベア7では、液晶パネルPは表示領域P4の長辺を搬送方向に沿うようにして搬送される。この液晶パネルPの表裏面に対して、帯状の前記光学シートFから所定長さに切り出した貼合シートF5が貼合される。
【0029】
尚、上流側コンベア6は、後述する第1吸着装置11では、下流側に独立したフリーローラコンベア24を備えている。一方、下流側コンベア7は、後述する第2吸着装置20では、下流側に独立したフリーローラコンベア24を備えている。
【0030】
本実施形態のフィルム貼合システム1は、第1吸着装置11、第1集塵装置12、第1貼合装置13、第1イオナイザー31、第1カバー33、第1検査装置14、反転装置15、第2集塵装置16、第2貼合装置17、第2イオナイザー32、第2カバー34、第2検査装置18、及び制御部40を備えている。
【0031】
第1吸着装置11は、液晶パネルPを吸着して上流側コンベア6に搬送すると共に液晶パネルPのアライメント(位置決め)を行う。第1吸着装置11は、パネル保持部11aと、アライメントカメラ11bと、レールRと、を有する。
【0032】
パネル保持部11aは、上流側コンベア6により下流側のストッパSに当接した液晶パネルPを上下方向及び水平方向に移動可能に保持すると共に液晶パネルPのアライメントを行う。パネル保持部11aは、ストッパSに当接した液晶パネルPの上面を真空吸着によって吸着保持する。パネル保持部11aは、液晶パネルPを吸着保持した状態でレールR上を移動して液晶パネルPを搬送する。パネル保持部11aは、搬送が終わると吸着保持を解除して液晶パネルPをフリーローラコンベア24に受け渡す。
【0033】
アライメントカメラ11bは、ストッパSに当接した液晶パネルPをパネル保持部11aが保持し、上昇した状態で液晶パネルPのアライメントマークや先端形状等を撮像する。アライメントカメラ11bによる撮像データは制御部40に送信され、この撮像データに基づき、パネル保持部11aが作動して搬送先のフリーローラコンベア24に対する液晶パネルPのアライメントがなされる。つまり、液晶パネルPは、フリーローラコンベア24に対する搬送方向、搬送方向と直交する方向、及び液晶パネルPの垂直軸回りの旋回方向でのズレ分を加味した状態でフリーローラコンベア24に搬送される。
ここで、パネル保持部11aによりレールR上を搬送された液晶パネルPは吸着パッド26に吸着された状態で後述する貼合シートF5と共に先端部を挟圧ロール23に挟持される。
【0034】
第1集塵装置12は、第1貼合装置13の貼合位置である挟圧ロール23の、液晶パネルPの搬送上流側に設けられている。第1集塵装置12は、貼合位置に導入される前の液晶パネルPの周辺の塵埃、特に下面側の塵埃を除去するため、静電気の除去及び集塵を行う。
【0035】
第1貼合装置13は、第1吸着装置11よりもパネル搬送下流側に設けられている。第1貼合装置13は、貼合位置に導入された液晶パネルPの下面に対して、所定サイズにカットした貼合シートF5の貼合を行う。
【0036】
第1貼合装置13は、搬送装置22と、挟圧ロール23とを備えている。
【0037】
搬送装置22は、光学シートFが巻回された原反ロールR1から光学シートFを巻き出しつつ光学シートFをその長手方向に沿って搬送する。搬送装置22は、セパレータF3をキャリアとして貼合シートF5を搬送する。搬送装置22は、ロール保持部22aと、複数のガイドローラ22bと、切断装置22cと、ナイフエッジ22dと、巻き取り部22eと、を有する。ここで、ロール保持部22a及び複数のガイドローラ22bは、特許請求の範囲に記載の搬送部に相当する。切断装置22c及びナイフエッジ22dは、特許請求の範囲に記載の分離部に相当する。
【0038】
ロール保持部22aは、帯状の光学シートFを巻回した原反ロールR1を保持すると共に光学シートFをその長手方向に沿って繰り出す。
複数のガイドローラ22bは、原反ロールR1から巻き出した光学シートFを所定の搬送経路に沿って案内するべく光学シートFを巻きかける。
切断装置22cは、搬送経路上の光学シートFにハーフカットを施す。
ナイフエッジ22dは、ハーフカットを施した光学シートFを鋭角に巻きかけてセパレータF3から貼合シートF5を分離させつつこの貼合シートF5を貼合位置に供給する。
巻き取り部22eは、ナイフエッジ22dを経て単独となったセパレータF3を巻き取るセパレータロールR2を保持する。
【0039】
搬送装置22の始点に位置するロール保持部22aと搬送装置22の終点に位置する巻き取り部22eとは、例えば互いに同期して駆動する。これにより、ロール保持部22aが光学シートFをその搬送方向へ繰り出しつつ、巻き取り部22eがナイフエッジ22dを経たセパレータF3を巻き取る。以下、搬送装置22における光学シートF(セパレータF3)の搬送方向上流側をシート搬送上流側、搬送方向下流側をシート搬送下流側という。
【0040】
各ガイドローラ22bは、搬送中の光学シートFの進行方向を搬送経路に沿って変化させると共に、複数のガイドローラ22bの少なくとも一部が搬送中の光学シートFのテンションを調整するべく可動する。
【0041】
尚、ロール保持部22aと切断装置22cとの間には、図示しないダンサローラが配置されていてもよい。ダンサローラは、光学シートFが切断装置22cで切断される間に、ロール保持部22aから搬送される光学シートFの繰り出し量を吸収する。
【0042】
図5は、本実施形態の切断装置22cの動作を示す図である。
図5に示すように、切断装置22cは、光学シートFが所定長さ繰り出された際、光学シートFの長手方向と直交する幅方向の全幅にわたって、光学シートFの厚さ方向の一部を切断するハーフカットを行う。本実施形態の切断装置22cは、光学シートFに対してセパレータF3とは反対側から光学シートFに向かって進退可能に設けられている。
【0043】
切断装置22cは、光学シートFの搬送中に働くテンションによって光学シートF(セパレータF3)が破断しないように(所定の厚さがセパレータF3に残るように)、切断刃の進退位置を調整し、粘着層F2とセパレータF3との界面の近傍までハーフカットを施す。尚、切断刃に代わるレーザー装置を用いてもよい。
【0044】
ハーフカット後の光学シートFには、その厚さ方向で光学部材F1及び表面保護フィルムF4が切断されることにより、光学シートFの幅方向の全幅にわたる切込線L1,L2が形成される。切込線L1,L2は、帯状の光学シートFの長手方向で複数並ぶように形成される。例えば同一サイズの液晶パネルPを搬送する貼合工程の場合、複数の切込線L1,L2は光学シートFの長手方向で等間隔に形成される。光学シートFは、複数の切込線L1,L2によって長手方向で複数の区画に分けられる。光学シートFにおける長手方向で隣り合う一対の切込線L1,L2に挟まれる区画は、それぞれ貼合シートF5における一つのシート片とされる。
【0045】
図1に戻り、ナイフエッジ22dは、上流側コンベア6の下方に配置されて光学シートFの幅方向で少なくともその全幅にわたって延在する。ナイフエッジ22dは、ハーフカット後の光学シートFのセパレータF3側に摺接するようにこれを巻きかける。
【0046】
ナイフエッジ22dは、光学シートFの幅方向(上流側コンベア6の幅方向)から見て伏せた姿勢に配置される第1面と、第1面の上方で光学シートFの幅方向から見て第1面に対して鋭角に配置される第2面と、第1面及び第2面が交わる先端部とを有する。
【0047】
ナイフエッジ22dは、その先端部に光学シートFを鋭角に巻きかける。光学シートFは、ナイフエッジ22dの先端部で鋭角に折り返す際、セパレータF3から貼合シートF5のシート片を分離させる。ナイフエッジ22dの先端部は、挟圧ロール23のパネル搬送下流側に近接して配置される。ナイフエッジ22dによりセパレータF3から分離した貼合シートF5は、第1吸着装置11に吸着された状態の液晶パネルPの下面に重なりつつ、挟圧ロール23の一対の貼合ローラ23a間に導入される。
【0048】
一方、ナイフエッジ22dにより、貼合シートF5と分離されたセパレータF3は巻き取り部22eに向かう。巻き取り部22eは、貼合シートF5と分離されたセパレータF3を巻き取り。回収する。
【0049】
挟圧ロール23は、搬送装置22が光学シートFから分離させた所定長さの貼合シートF5を上流側コンベア6により搬送される液晶パネルPの下面に貼合する。ここで、挟圧ロール23は、特許請求の範囲に記載の貼合部に相当する。挟圧ロール23は、互いに軸方向を平行にして配置された一対の貼合ローラ23a,23aを有する(上の貼合ローラ23aは上下する)。一対の貼合ローラ23a,23a間には所定の間隙が形成され、この間隙内が第1貼合装置13の貼合位置となる。前記間隙内には、液晶パネルP及び貼合シートF5が重なり合って導入される。これら液晶パネルP及び貼合シートF5が、各貼合ローラ23aに挟圧されつつ上流側コンベア6のパネル搬送下流側に送り出される。これにより、液晶パネルPの下面に貼合シートF5が一体的に貼合される。以下、この貼合後のパネルを片面貼合パネルP11という。
【0050】
第1イオナイザー31は、光学シートFの搬送経路上に配置されている。第1イオナイザー31は、セパレータF3から分離した貼合シートF5の表面に軟X線を照射する。ここで、軟X線とは、約0.1keV〜2keVの範囲の照射エネルギーを有するX線を意味する。軟X線の照射エネルギーにより、帯電した貼合シートF5の周辺の雰囲気をイオン化させ、静電気を中和させることができる。
【0051】
光学シートFの搬送経路上には、第1イオナイザー31から照射される軟X線を遮蔽するための第1カバー33が設けられている。第1カバー33は、第1イオナイザー31を概ね中心として、第1吸着装置11、第1貼合装置13の一部(分離部及び挟圧ロール23)、第1検査装置14等を覆うように設けられている。第1カバー33の形成材料としては、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、塩化ビニール等を用いることができる。
【0052】
図6は、第1イオナイザー31と第1カバー33との配置関係を示す平面図である。
図7は、第1イオナイザー31と第1カバー33との配置関係を示す側面図である。
図6に示すように、第1イオナイザー31からは、軟X線が扇形状に等方的に射出される。軟X線の射出角度θ(中心角)は、120°程度に設定されている。これにより、貼合シートF5の表面には、貼合シートF5の幅方向の全幅にわたって軟X線が照射される。
【0053】
第1カバー33の平面形状は、
図6に示すように、第1イオナイザー31を概ね中心として、2つの長方形(X方向に長い長方形とY方向に長い長方形)が互いに直交して配置されたX字状となっている。第1カバー33の側面形状は、
図7に示すように、第1イオナイザー31を概ね中心として、2つの長方形(X方向に長い長方形とZ方向に長い長方形)が互いに直交して配置されたT字状となっている。これにより、第1イオナイザー31から照射される軟X線を、外部に漏れないように遮蔽することができる。
【0054】
図1に戻り、第1検査装置14は、第1貼合装置13よりもパネル搬送下流側に設けられている。第1検査装置14は、片面貼合パネルP11において、液晶パネルPに対する貼合シートF5の位置が適正か否か(位置ズレが公差範囲内にあるか否か)を検査する。第1検査装置14は、例えば片面貼合パネルP11のパネル搬送上流側及び下流側における貼合シートF5の端縁を撮像する一対のカメラ14a,14aを有する。各カメラ14aによる撮像データは制御部40に送信され、この撮像データに基づき貼合シートF5及び液晶パネルPの相対位置が適正か否かが判定される。前記相対位置が適正ではないと判定された片面貼合パネルP11は、不図示の払い出し手段によりシステム外に排出される。
【0055】
反転装置15は、第1検査装置14よりもパネル搬送下流側に設けられて上流側コンベア6の終着位置に達した液晶パネルPを下流側コンベア7の始発位置まで搬送する。反転装置15は、例えば液晶パネルPの搬送方向に対して平面視で45°に傾斜した回動軸15aと、回動軸15aを介して上流側コンベア6の終着位置及び下流側コンベア7の始発位置の間に支持される反転アーム15bとを有する。
【0056】
反転アーム15bは、第1検査装置14を経て上流側コンベア6の終着位置に達した片面貼合パネルP11を吸着や挟持等により保持する。反転アーム15bは、回動軸15a回りに180°回動することで、片面貼合パネルP11の表裏を反転させる。反転アーム15bは、例えば前記表示領域P4の短辺と平行に搬送されていた片面貼合パネルP11を表示領域P4の長辺と平行に搬送されるように方向転換させる。
【0057】
反転は、液晶パネルPの表裏面に貼合する各光学部材F1が偏光軸方向を互いに直角に配置するような場合になされる。上流側コンベア6及び下流側コンベア7は、共に図の右側から左側へ向う方向を液晶パネルPの搬送方向とするが、反転装置15を経由することで、上流側コンベア6及び下流側コンベア7が平面視で所定量オフセットする。
【0058】
尚、単に液晶パネルPの表裏を反転させる場合には、例えば搬送方向と平行な回動軸を有する反転アームを有する反転装置を用いればよい。この場合、第1貼合装置13のシート搬送方向と第2貼合装置17のシート搬送方向とを平面視で互いに直角にして配置すれば、液晶パネルPの表裏面に互いに偏光軸方向を直角にした光学部材F1を貼合できる。
【0059】
反転アーム15bは、前記第1吸着装置11のパネル保持部11aと同様のアライメント機能を有する。反転装置15には、前記第1吸着装置11のアライメントカメラ11bと同様のアライメントカメラ15cが設けられている。
【0060】
第2吸着装置20は、第1吸着装置11と同様の構成を備えているため同一部分に同一符号を付して説明する。第2吸着装置20は、片面貼合パネルP11を吸着して下流側コンベア7に搬送すると共に片面貼合パネルP11のアライメント(位置決め)を行う。第2吸着装置20は、パネル保持部11aと、アライメントカメラ11bと、レールRと、を有する。
【0061】
パネル保持部11aは、下流側コンベア7により下流側のストッパSに当接した片面貼合パネルP11を上下方向及び水平方向に移動可能に保持すると共に片面貼合パネルP11のアライメントを行う。パネル保持部11aは、ストッパSに当接した片面貼合パネルP11の上面を真空吸着によって吸着保持する。パネル保持部11aは、片面貼合パネルP11を吸着保持した状態でレールR上を移動して片面貼合パネルP11を搬送する。パネル保持部11aは、当該搬送が終わると前記吸着保持を解除して片面貼合パネルP11をフリーローラコンベア24に受け渡す。
【0062】
アライメントカメラ11bは、ストッパSに当接した片面貼合パネルP11をパネル保持部11aが保持し、上昇した状態で片面貼合パネルP11のアライメントマークや先端形状等を撮像する。アライメントカメラ11bによる撮像データは制御部40に送信され、この撮像データに基づき、パネル保持部11aが作動して搬送先のフリーローラコンベア24に対する片面貼合パネルP11のアライメントがなされる。つまり、片面貼合パネルP11は、フリーローラコンベア24に対する搬送方向、搬送方向と直交する方向、及び片面貼合パネルP11の垂直軸回りの旋回方向でのズレ分を加味した状態でフリーローラコンベア24に搬送される。
【0063】
第2集塵装置16は、第2貼合装置17の貼合位置である挟圧ロール23の、液晶パネルPの搬送方向上流側に配置されている。第2集塵装置16は、貼合位置に導入される前の片面貼合パネルP11の周辺の塵埃、特に下面側の塵埃を除去するため、静電気の除去及び集塵を行う。
【0064】
第2貼合装置17は、第2集塵装置16よりもパネル搬送下流側に設けられている。第2貼合装置17は、貼合位置に導入された片面貼合パネルP11の下面に対して、所定サイズにカットした貼合シートF5の貼合を行う。第2貼合装置17は、前記第1貼合装置13と同様の搬送装置22及び挟圧ロール23を備えている。
【0065】
挟圧ロール23の一対の貼合ローラ23a間の間隙内(第2貼合装置17の貼合位置)には、片面貼合パネルP11及び貼合シートF5が重なり合った状態で導入され、片面貼合パネルP11の下面に貼合シートF5が一体的に貼合される。以下、この貼合後のパネルを両面貼合パネルP12(光学部材貼合体)という。
【0066】
第2イオナイザー32は、光学シートFの搬送経路上に配置されている。第2イオナイザー32は、セパレータF3から分離した貼合シートF5の表面に軟X線を照射する。
【0067】
光学シートFの搬送経路上には、第2イオナイザー32から照射される軟X線を遮蔽するための第2カバー34が設けられている。第2カバー34は、第2イオナイザー32を概ね中心として、第2吸着装置20、第2貼合装置17の一部(分離部及び挟圧ロール23)、第2検査装置18等を覆うように設けられている。第2カバー34の形成材料としては、前記第1カバー33と同様の形成材料を用いることができる。
【0068】
第2検査装置18は、第2貼合装置17よりもパネル搬送下流側に設けられている。第2検査装置18は、両面貼合パネルP12において、片面貼合パネルP11に対する貼合シートF5の位置が適正か否か(位置ズレが公差範囲内にあるか否か)を検査する。第2検査装置18は、例えば両面貼合パネルP12のパネル搬送上流側及び下流側における貼合シートF5の端縁を撮像する一対のカメラ18a,18aを有する。各カメラ18aによる撮像データは制御部40に送信され、この撮像データに基づき貼合シートF5及び液晶パネルPの相対位置が適正か否かが判定される。前記相対位置が適正ではないと判定された両面貼合パネルP12は、不図示の払い出し手段によりシステム外に排出される。
【0069】
尚、本実施形態においてフィルム貼合システム1の各部を統括制御する電子制御装置としての制御部40は、コンピュータシステムを含んで構成されている。このコンピュータシステムは、CPU等の演算処理部と、メモリやハードディスク等の記憶部とを備える。本実施形態の制御部40は、コンピュータシステムの外部の装置との通信を実行可能なインターフェースを含む。制御部40には、入力信号を入力可能な入力装置が接続されていてもよい。上記の入力装置は、キーボード、マウス等の入力機器、あるいはコンピュータシステムの外部の装置からのデータを入力可能な通信装置等を含む。制御部40は、フィルム貼合システム1の各部の動作状況を示す液晶表示ディスプレイ等の表示装置を含んでいてもよいし、表示装置と接続されていてもよい。
【0070】
制御部40の記憶部には、コンピュータシステムを制御するオペレーティングシステム(OS)がインストールされている。制御部40の記憶部には、演算処理部にフィルム貼合システム1の各部を制御させることによって、フィルム貼合システム1の各部に光学シートFを精度よく搬送させるための処理を実行させるプログラムが記録されている。記憶部に記録されているプログラムを含む各種情報は、制御部40の演算処理部が読み取り可能である。制御部40は、フィルム貼合システム1の各部の制御に要する各種処理を実行するASIC等の論理回路を含んでいてもよい。
【0071】
記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などといった半導体メモリや、ハードディスク、CD−ROM読取り装置、ディスク型記憶媒体などといった外部記憶装置などを含む概念である。記憶部は、機能的には、第1吸着装置11、第1集塵装置12、第1貼合装置13、第1イオナイザー31、第1検査装置14、反転装置15、第2吸着装置20、第2集塵装置16、第2貼合装置17、第2イオナイザー32、第2検査装置18の動作の制御手順が記述されたプログラムソフトを記憶する記憶領域、その他各種の記憶領域が設定される。
【0072】
(除電処理)
次に、本発明の除電処理の一実施形態について
図8を用いて詳細に説明する。
図8は、除電処理中の第1イオナイザー31を示す図である。ここでは、第1イオナイザー31及び第2イオナイザー32のうち第1イオナイザー31を挙げて説明する。第2イオナイザー32の除電処理は第1イオナイザー31の除電処理と同様であるため、第2イオナイザー32についての説明は省略する。
【0073】
図8に示すように、第1イオナイザー31は、液晶パネルPの搬送経路とセパレータF3の搬送経路との間の空間に配置されている。第1イオナイザー31は、軟X線の射出面31aが貼合シートF5の貼合面(貼合シートF5が液晶パネルPと貼り合わされる面)と対向するように配置されている。第1イオナイザー31は、第1イオナイザーから射出される軟X線の光軸が挟圧ロール23を構成する一対の貼合ローラ23a間の間隙内を通るように配置されている。
【0074】
本実施形態においては、第1イオナイザー31が、ナイフエッジ22dの側からセパレータF3から分離した貼合シートF5の表面に軟X線を照射することにより、挟圧ロール23の表面に貼合シートF5を透過した軟X線が照射されるように構成されている。
【0075】
以下、本実施形態の除電処理による作用・効果について説明する。
【0076】
従来の構成では、送風装置及びコロナ放電式のイオナイザーが貼合シートの液晶パネルとの貼合面の側(貼合シートの上面側)に配置される場合、貼合シートの下面側に気流を十分に作用させることができないため、貼合シートの下面の静電気を除電することが困難となる。貼合シートの下面の静電気が帯電すると、貼合シートと液晶パネルとが挟圧ロールにより押圧されて貼り合わされる際に、貼合シートの下面とニップロールとの接触により、挟圧ロールの表面に静電気が帯電しやすくなる。そうすると、挟圧ロールの表面に塵埃等の異物が集積しやすくなる。そのため、挟圧ロールに集積した異物が貼合シートの表面に付着し、結果として光学部材貼合体の表面に異物が付着してしまう。
【0077】
これに対し、本実施形態では、軟X線を照射する第1イオナイザー31を用いている。第1イオナイザー31から射出された軟X線は、セパレータF3から分離した貼合シートF5を透過する。そのため、貼合シートF5の表面に帯電した静電気だけでなく貼合シートF5の裏面に帯電した静電気をも除電することができる。貼合シートF5の裏面の静電気を除電できるため、挟圧ロール23の表面に静電気が帯電することが抑制され、挟圧ロール23の表面に塵埃等の異物が集積しにくくなる。そのため、貼合シートF5の表面に異物が付着しにくくなる。したがって、貼合シートF5の表面に静電気が帯電することを抑制し、光学部材貼合体P12の表面に異物が付着することを抑制することができる。
【0078】
また、第1イオナイザー31が液晶パネルPの搬送経路とセパレータF3の搬送経路との間の空間に配置されているため、ナイフエッジ22dによってセパレータF3が分離された直後の貼合シートF5に軟X線が照射される。よって、セパレータF3が分離されることにより、貼合シートF5が帯電することにより生じる静電気を瞬時に除電することができる。
【0079】
また、第1イオナイザー31が、ナイフエッジ22dの側からセパレータF3から分離した貼合シートF5の表面に軟X線を照射することにより、挟圧ロール23の表面に貼合シートF5を透過した軟X線が照射されるように構成されている。そのため、貼合シートF5の表面に帯電した静電気を除電することに加え、挟圧ロール23と貼合シートF5との接触摩擦により、貼合シートF5が帯電することにより生じる静電気を副次的に除電することができる。よって、光学部材貼合体P12の表面に異物が付着することを確実に抑制することができる。
【0080】
尚、本実施形態では、挟圧ロール23を構成する下側の貼合ローラ23aの表面に貼合シートF5を透過した軟X線が照射されるように構成されているが、これに限らない。挟圧ロール23を構成する上側の貼合ローラ23aの表面に貼合シートF5を透過した軟X線が照射されるように構成されていてもよい。
【0081】
以上、添付図面を参照しながら本実施形態に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例】
【0082】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0083】
(サンプルの作製)
比較例及び実施例の検査対象用のサンプルとしては、セパレータから分離したチップ状の偏光フィルムを用いた。偏光フィルムは、PVA(ポリビニルアルコール)からなる偏光子フィルムの両面に、TAC(トリアセチルセルロース)フィルムからなる保護フィルムを積層したものを用いた。偏光フィルムは平面視矩形のものを用い、偏光フィルムのサイズは30cm角とした。
(比較例1)
比較例1はイオナイザーを使用していない。つまり、セパレータ剥離時にサンプルに生じる静電気の除電を行っていない。
(比較例2)
比較例2のイオナイザーとしては、コロナ放電式のイオナイザーを用いた。コロナ放電式のイオナイザーは、キーエンス社製のSJ−F035を用いた。イオナイザー(送風機)の風量は、2.5m/sとした。
(実施例)
実施例のイオナイザーとしては、軟X線式のイオナイザーを用いた。軟X線式のイオナイザーは、浜松エレクトロン社製のものを用いた。
【0084】
(セパレータ剥離時の帯電電圧の時間変化の評価)
比較例及び実施例のそれぞれについて、セパレータ剥離時の帯電電圧の時間変化を評価した。表面電位計を用いて、ピーク電圧、除電時間を測定した。表面電位計は、ION SYSTEM社製のMODEL775を用いた。除電時間は、サンプルが帯電し始めた状態(セパレータ剥離開始)からサンプルの帯電電圧が+100V(除電電圧)になるまでの時間とした。尚、比較例2及び実施例のそれぞれについて、イオナイザーは、サンプルの測定位置から斜め上方に30cm離れた位置に配置した。
【0085】
上記評価について、結果を
図9及び表1に示す。
図9は、比較例1、比較例2及び実施例についてセパレータ剥離時の帯電電圧の時間変化を示す図である。
図9において、横軸は時間(秒)である。縦軸はセパレータ剥離時の帯電電圧(kV)である。セパレータ剥離の開始時間は5秒とした。
尚、表中の「比較例1」の除電電圧の欄及び除電時間の欄においては、セパレータ剥離時にサンプルに生じる静電気の除電を行っていないため、「−」と表示している。
【0086】
【表1】
【0087】
評価の結果、実施例の軟X線式イオナイザーによれば、比較例2のコロナ放電式イオナイザーよりもピーク電圧を小さくすることができ、かつ、除電時間を短縮することができることが確認された。