(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年は、感染症や腫瘍マーカーなどで代表されるように、試料中にごく微量にしか存在しない成分を分析するニーズが高まっている。試料中に含まれる測定対象成分がごく微量であるいわゆる低濃度領域では、所望の反応に由来する蛍光強度が、蛍光計測のバックグラウンドに近いレベルになることが多い。このような低濃度領域では、反応由来の信号と計測のバックグラウンド信号の区別をつけることができず、これが高感度計測の実現を阻んでいる。
【0006】
高感度計測を目的とした単一分子ELISA法が非特許文献3に開示されている。該方法では、複数の抗体を微粒子に固定して、希釈した試料中の抗原を微粒子当たり一分子のみ該抗体に結合させ、微粒子を支持体上の穴に収集・固定した後、支持体上で標識を測定することによって、測定対象成分(抗原)を分析している。
【0007】
しかしながら、微粒子上に複数の抗体が固定されていることから、一微粒子あたり複数の抗原が結合してしまう可能性が否定できない。この状態を検出工程で判別することは困難であるので、抗原検出の分解能をさらに高めることはできない。また支持体上の穴に微粒子が入らない箇所があっても、検出工程では判別できないといわれている。これは、当該位置に抗原が存在するのか、抗原が存在しない計測のバックグラウンドに相当するのか、検出上は区別できないことを示している。
【0008】
本発明の目的は上記課題に鑑みて、試料に含まれる測定対象成分の分析において、ごく低濃度の領域であっても高感度な分析を実現する分析方法及び手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、測定対象成分とこれに特異的に反応する捕捉成分を反応させて、さらに測定対象成分が存在する場合に反応物が標識されるように構成させ、この標識された反応物を空間的に分離した位置に配置して、概標識反応物の標識を検出することによって、一分子の感度及び分解能で測定対象成分を分析することを特徴とする分析方法および分析装置に関する。
【0010】
究極的な高感度測定を達成するには、空間的に分離した所定位置に概標識反応物を一分子ずつ配置する構成、すなわち当該検出位置に捕捉成分を一分子ずつ配置させることが望ましい。しかし測定対象成分の測定には必須でない場合もありうる。低濃度領域では、測定対象成分の分子も多くは存在しない。このために、当該検出位置に複数の捕捉成分を配置する場合であっても、当該検出位置に複数の該標識反応物が存在する確率は高くないといえるので、実用上では大きな支障がない場合もある。
【0011】
概標識反応物の検出のためには、該標識反応物を空間的に分離した所定位置に配置する構成をとればよい。好ましくは、該標識反応物を空間的に規則的に整列させる、二次元的なマトリクス状に配置するなどの構成をとると良い。
【0012】
標識物としては、蛍光や発光などの光学的な標識ができると好ましい。標識物として微粒子を用いて、粒子に由来する光学標識を利用してもよいし、微粒子のサイズなどの物性パラメータを標識に利用してもよい。蛍光色素などを用いてもよい。すなわち、当該検出位置に概測定対象成分が存在するか否かを、標識物を検出することによって、計測のバックグラウンドやノイズ成分と区別して認識できればよい。
【0013】
試料に含まれる種々の夾雑成分や未反応の蛍光標識捕捉成分は、正確な計測を妨げる。
このため、予め反応系から除くことが好ましい。この目的のためには、微粒子として磁性粒子を用いると、洗浄操作が容易であり、実用的で簡便な測定システムを提供することができる。
【0014】
測定対象成分は、たんぱく質やホルモンなどもともと生体に含まれる成分でもよいし、ウィルスや薬物などであってもよい。測定対象成分を抗原とすると、特異的に反応する捕捉成分は抗体となる。逆に測定対象成分が抗体であるときは、特異的に反応する捕捉成分は抗原となる。
【0015】
第一の例として、測定対象成分を抗原とすると、抗原と特異的に反応する捕捉成分の抗体を支持体の空間的に分離した所定位置に配置する。測定対象成分の抗原は、支持体の所定位置に配置された第一の抗体と反応する。一方で、測定対象の抗原は標識した第二の抗体とも反応する。これにより支持体上の空間的に分離した位置に概標識反応物を一分子ずつ配置させて、所定位置の標識反応物の標識を検出することによって、一分子の感度及び分解能で測定対象成分を分析することができる。
【0016】
第二の例として、抗原と特異的に反応する捕捉成分の抗体を微粒子などの担体に固定して、最終的に支持体の空間的に分離した所定位置に微粒子を含む標識反応物を配置してもよい。すなわち、第一の抗体を微粒子などの担体に固定して、これと測定対象成分の抗原を反応させる。さらに微粒子をふくむ概反応物に、標識した第二の抗体を反応させる。微粒子をふくむ概標識反応物を支持体上の空間的に分離した位置に一分子ずつ配置させて、概標識反応物の標識を検出することによって、一分子の感度及び分解能で測定対象成分を分析することができる。第二の例では、概標識反応物の生成にいたるまで反応を液中で進行するよう構成できる。このため第一の例と比較すると、第二の例では高い反応効率が期待できて好ましい。微粒子は直径がマイクロメータあるいはナノメータのレベルが好適である。微粒子は磁性粒子であることは必須でないが、磁性粒子であれば取扱いが容易である。
【0017】
第三の例では、支持体に概標識反応物を配置せず、概標識反応物をフロー流路に導入して、概標識反応物を空間的に一分子ずつ分離して検出する。すなわち、第一の抗体を微粒子などの担体に固定して、これと測定対象成分の抗原を反応させる。さらに概反応物に、標識した第二の抗体を反応させる。概標識反応物をフロー流路上に導入して、概標識反応物を空間的に分離させて、概標識反応物を検出位置に一分子ずつ配置させることによって、一分子の感度及び分解能で測定対象成分を分析することができる。微粒子は直径がマイクロメータあるいはナノメータのレベルが好適である。微粒子は磁性粒子であることは必須でないが、磁性粒子であれば取扱いが容易である。
【0018】
第四の例として、支持体の所定位置に測定対象成分の抗原を直接配置してもよい。しかし、この場合の反応効率は高くないと想定されるので、ルーチン分析としては実用的でない。
【0019】
上述の例の反応プロセスでは、概標識反応物の生成にあたって、反応要素である抗原と第一抗体と標識第二抗体を順に反応させて生成させてもよいし、一部の要素を予め反応させた後に別の要素を反応させてもよいし、あるいは全ての要素を同時に反応させてもよい。
【0020】
さらに上述の例では、免疫分析方法のプロセスとしていわゆるサンドイッチ法をもとに概標識反応物の生成ステップを記した。しかし本発明の適用はサンドイッチ法に限らず、たとえば競合法にも適用できる。競合法により測定対象成分を分析する場合の反応要素は、抗原と抗体と標識抗原であることが多い。この場合には、抗原と標識抗原は競合して抗体と反応することになる。上述の第一の例から第四の例のすべての例において、競合法を採用する場合であってもサンドイッチ法を採用する場合と同様に、標識反応物を空間的に分離した位置に配置して、概標識反応物の標識を検出することによって、一分子の感度及び分解能で測定対象成分を分析することができる。
【0021】
検出にあたっては、空間的に分離されて配置する標識反応物を一分子ずつ計数すればよい。一分子の標識反応物の検出は、一分子の測定対象成分の存在を意味する。このため、標識反応物を一分子ずつ計数することは、測定対象成分の絶対数を計量することになり、非常に高感度な分析の実現が期待できる。従来の分析法の多くは、測定対象成分分子の絶対数でなく測定対象成分濃度を計測している。濃度計測は絶対数計測に比べると計測感度は劣るが、計測のための環境整備は容易といえる。本提案の分析法は絶対数計測だけでなく、濃度計測にも適用できることはいうまでもない。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、一分子の感度及び分解能で、高感度な免疫分析を実現することができる。
【0023】
また複数の測定対象成分を同時に分析することもできる。複数の測定対象成分それぞれと特異的に反応する複数の捕捉分子を準備して上述のように反応を生じさせて、複数種類の標識反応物を生成させればよい。
【0024】
検出にあたっては、複数種類の標識反応物を空間的に分離して配置させて、標識反応物を一分子ずつそれぞれ計数することによって、複数の測定対象成分を同時に高感度に分析することができる。測定対象成分ごとに異なる種類の標識物質を使用して分析してもよいし、支持体上の固定位置を測定対象成分ごとに区画化すれば、標識物質を共通にしてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するいくつかの実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0027】
本実施例のデバイスの構成及び解析方法を、
図1を用いて説明する。
【0028】
本実施例のデバイス構成は、
図1(a)に示されるように、支持基体101の上に接着パッド102が形成されており、接着パッド102上には微粒子103が固定されている。微粒子103は結合分子105を介して捕捉分子104が固定されている。
【0029】
支持基体101としては、石英等のガラス基板やシリコンウエハなどを用いることができる。接着パッド102としては、支持基体101と異なる材質であればよく、金属あるいは金属の酸化物を用いることができる。接着パッド102は支持基体101上に規則性を持って形成されていることが好ましい。
【0030】
接着パッド102の上に固定されている微粒子103は、接着パッド1つ当たり1個である。微粒子103には、捕捉分子104が結合分子105を介して一分子のみ固定されている。
【0031】
測定対象成分106の種類に依存して、捕捉分子104、結合分子105にはいろいろな組合せの分子群を用いることができる。あるいは、捕捉分子104として末端にアビジンを有する分子を用いることもできる。結合分子105には炭素数10程度以下のアルカン分子を用いることができ、化学結合を介して捕捉分子104に結合し、反対側の末端にはビオチンがついているものを用いることができる。その場合、微粒子103の表面にはアビジン、ストレプトアビジンなどが修飾されていることが望ましい。
【0032】
オペレータは上記のようなデバイスに対して、測定対象成分106を含んだ試料を接触させる。なお、試料には夾雑成分も含まれていることが一般的である。測定対象成分106は捕捉分子104によって捕捉される。捕捉分子104と測定対象成分106との結合は、通常の免疫反応により容易に成される。結果として、支持基体101上には、規則的な配置で、測定対象成分106が一分子ずつ固定されることになる。
【0033】
次に、
図1(b)に示すように、固定した測定対象成分106の存在数を求めるため、蛍光体標識付捕捉分子108を含んだ試薬を、測定対象成分106を固定した基板に接触させる。
【0034】
蛍光体標識には、Cy3やCy5などの通常の蛍光色素分子やZn−Seなどからなる半導体微粒子を用いることができる。識別すべき測定対象成分106の数が多い場合には、蛍光体標識として、蛍光体入り蛍光ビーズを用いることができる。例えば、2種類の蛍光体の含有量を各々10種のレベルとし、2種類の蛍光体の含有量のレベルを変えて混合することで、100種類の蛍光ビーズを作製することができ、蛍光体の数を3種類とすれば、1000種類の識別が可能なビーズセットを容易に作ることができる。例えば、ルミネックス社から2波長のレーザ光で励起することで100種類の識別ができる蛍光ビーズセットが市販されている。これらの蛍光ビーズの表面を化学修飾し、捕捉分子と結合させることで蛍光体標識付捕捉分子108を作製することができる。
【0035】
上記のように支持基体上に測定対象成分1−6および蛍光体標識付捕捉分子108を免疫反応で固定した後、デバイスを洗浄して、非特異吸着物や遊離の蛍光体標識付捕捉分子108を反応系から除外した後に蛍光検出を行う(
図1(c))。これによって、測定対象成分106の分析を行う。
【0036】
蛍光体標識にCy3やCy5などの通常の蛍光色素分子を一分子だけ付けた蛍光体標識付捕捉分子108の場合には、基板上の測定対象成分106を固定した箇所から、一分子蛍光が観察されることになる。この場合、蛍光が微弱であるため、EM−CCDなど高感度の蛍光検出機が必要となる。
【0037】
蛍光体として蛍光ビーズを用いた場合には、一分子蛍光よりも強い蛍光が発せられるため、通常のCCDでも十分検出できる。
【0038】
接着パッド102は支持基体101上に規則性高く、例えば格子状に形成されるため、蛍光画像においても、規則性を持った位置に蛍光の輝点が観測される。そのため、非特異的に蛍光体標識付捕捉分子108が支持基体101上に付着する状態であっても、蛍光画像の輝点位置の蛍光を計測することで、所望する測定対象成分の反応に由来する蛍光信号と、支持体への非特異的な吸着や蛍光計測ノイズに由来する蛍光信号を容易に識別することができる。この点は、微量な試料の解析、微弱な蛍光観察において、実際上、非常に有用な特徴である。
【0039】
蛍光体あるいは蛍光ビーズの識別には、回折格子を用いて発光スペクトルを分光してCCDの感光面に照射し、波長方向に分けた各画素の強度を調べることで、蛍光体あるいは蛍光ビーズの種類を識別できる。あるいは、反射特性に大きな波長依存性を持たせたダイクロイックミラーを用いて、反射光と透過光の比率を用いて、蛍光体あるいは蛍光ビーズの種類を識別することもできる。
【0040】
個々の輝点の識別を行った後、それらを集計することで、測定対象成分106の種類と輝点数、すなわち、存在量の情報を最終的に得ることができる。例えば、接着パッド102を1μmピッチで作製した場合、1mm角の中に10
6個の接着パッドが存在するので、最大総分子数10
6個の中で所定の種類の測定対象成分が何分子存在するかを調べることができる。
【実施例2】
【0041】
本実施例のデバイスの構成を、
図2を用いて説明する。
【0042】
支持基体201の上に接着パッド202が規則正しく、例えば
図2に示すように格子状に形成されている。接着パッド202と微粒子203は、線状分子205を介して化学結合あるいは化学的相互作用により結ばれている。線状分子205の末端の官能基206と、接着パッド202とは化学的相互作用により結合していることが好ましい。その際、官能基206は、支持基体201との相互作用が弱く、接着パッド202との相互作用が強いことが好ましい。
【0043】
このような観点から、支持基体201としては、石英ガラス、サファイア、シリコン基板などを用いることができる。
【0044】
また、接着パッド202には、金、チタン、ニッケル、アルミから選ばれる材料で構成することができる。
【0045】
官能基206には、支持基体201と接着パッド202との組合せを考えて選択せねばならないが、例えば、スルホヒドリル基、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基、アルデヒド基等を用いることができる。
【0046】
線状分子205は、微粒子203と接着パッド202を結ぶ役割を果たし、長さに大きな限定はないが、低分子の場合には炭素数にして3から20程度の直鎖状分子が好ましい。
【0047】
線状分子205の末端の官能基207は、微粒子203との接着性をもたらす。また、線状分子205として高分子を用いる場合には、複数の側鎖を有し、官能基206を有する側鎖と官能基207を持つ側鎖を併せ持つものを用いることができる。
【0048】
微粒子203としては、金属微粒子や半導体微粒子を用いることができる。例えば、金の微粒子として、直径5nm〜100nmのものが市販されており、活用することができる。
また、半導体微粒子としては、直径が10nm〜20nm程度のCdSe等の化合物半導体が市販されており、活用することができる。
【0049】
官能基207として用いることができる官能基は、微粒子の種類によって異なるが、例えば金微粒子を用いた場合にはスルホヒドリル基、アミノ基等が好ましい。半導体微粒子を用いる場合には、ストレプトアビジンで表面が修飾された微粒子が市販されており、官能基207としてビオチンを用いることができる。
【0050】
さらに、微粒子203として、ポリスチレンなどの高分子材料からなる微粒子を用いることもできる。高分子材料の場合には、微粒子の粒径を揃えることができ、粒径の大きさも数十nmから数μmまで幅広く選択することができる。また、高分子材料が有する官能基を足場に表面修飾を施すことで、微粒子表面に固定する捕捉分子204の固定反応のための官能基の導入量を均一にすることができるという点で好ましい。特に、捕捉分子204を一分子だけ微粒子表面に固定する場合、固定率の再現性が非常に高く、好ましい。
【0051】
捕捉分子204には、測定対象成分と特異的に反応する抗体を用いることができる。抗体の末端を官能基207と同様に予め修飾しておき、微粒子203と反応させておく。1つの微粒子203に固定する捕捉分子204は一分子であることが好ましく、接着パッド202の上には捕捉分子204が一分子だけ固定されることになる。
【0052】
簡便な蛍光検出で標識捕捉分子を識別する場合に、解析限界を考慮すると標識捕捉分子間が1μm程度離れていることが好ましい。したがって、微粒子203のサイズは1μm以下であることが適している。
【0053】
接着パッド202を支持基体201上に形成する方法としては、半導体で既に実用化されている薄膜プロセスを活用することができる。例えば、マスクを通した蒸着・スパッタリング、あるいは蒸着・スパッタリングにより薄膜を形成した後、ドライあるいはウエットエッチングにより製造することができる。規則正しく配置することは、薄膜プロセスを用いることで容易に実現できる。パッド間の間隔は任意に設定できるが、検出手段として光計測を行う場合、光検出の回折限界を考えると1μm以上が好ましい。
【0054】
接着パッド202を支持基体201上に形成した後、微粒子203と接着パッド202を結ぶ線状分子205を供給し、接着パッド202上に線状分子205を固定する。この際、支持基体201上での非特異的吸着を防止する目的で、線状分子205を供給する前に、支持基体201との接着力の強い材料を支持基体201上に反応させる方法が有効である。例えば、シランカップリング剤等が利用できる。次に、捕捉分子204を固定した微粒子203を基板上に供給して、微粒子203を接着パッド202上に固定させることにより、免疫分析用デバイスを完成する。
【0055】
なお、免疫分析用デバイスとしてすでに捕捉分子が固定されている状態のデバイスを供給して、当該デバイスに測定試料を接触させることで捕捉分子に測定対象物質を捕捉させるようにしても良い。また、他の方式として、支持基体上に接着パッドが規則的に配列された状態のものを供給して、当該デバイスに対し、接着パッドに固定される微粒子と測定対象物質を特異的に捕捉する捕捉分子を固定させる処理を行った上で、測定対象物質を含む試料液を該デバイスに接触させるようにしても良い。
【0056】
接着パッド202上に微粒子203を固定させる際、1つの接着パッド202に複数個の微粒子203が固定される可能性がある。複数個が固定されてしまうと、種類の違う測定対象成分の情報が重なり合ってしまい、正確な分析ができなくなってしまう。そのため、1つの接着パッド202には、1個の微粒子203を固定させねばならない。
【0057】
そこで、発明者らは、種々の条件での固定実験を繰り返し、鋭意検討した結果、接着パッド202の直径dが微粒子203の直径Dに比べて小さい、という条件が成り立てば、1つの接着パッド202に1個の微粒子203を固定できることを見出した。接着パッド202に比べて同等以上の大きさの微粒子203が固定されると、未反応の線状分子が固定された微粒子に覆い隠されてしまい、別の微粒子と反応できなくなってしまうものと説明される。
【0058】
さらに、鋭意検討を続けた結果、微粒子203がその表面に電荷を有する場合には、微粒子間に静電的な反発力が働くため、接着パッド202の直径dが微粒子203の直径Dに比べて大きい場合にも接着パッドあたりの固定微粒子数が1個になることが判明した。
【0059】
したがって、微粒子203の表面電荷が小さく静電反発力が弱い場合には、接着パッド202の直径dが微粒子203の直径Dに比べて小さいことが好ましく、微粒子203の表面電荷が大きく静電反発力が強い場合には、接着パッド202の直径dは必ずしも微粒子203の直径Dよりも小さくなくても良いことが明らかとなった。
【0060】
米国特許第6859570号公報において、光ファイバーをバンドル化した先端部の個々の光ファイバーに穴(微小容器)を設けて、測定対象の分子を捕獲するための抗体をつけた微粒子を個々の穴に入れて、穴ごとに光ファイバーで蛍光を検出する方法が開示されている。本発明では、微粒子を格子状に並べる場合でも、このような穴(微小容器)は必要ではなく、穴に微粒子を入れるとかえって十分な洗浄に時間を要するなどの問題を発生してしまう。したがって、本発明では、本実施例に記載したように、接着パッドを用いて支持基体上に格子状に並べて固定する方法が好ましい。
【実施例3】
【0061】
本実施例では、捕捉分子を一分子だけ固定した微粒子の製造方法の一例を、特に、微粒子1個につき一分子の捕捉分子を固定する方法を、
図3を用いて説明する。
【0062】
微粒子401の表面に捕捉分子404を捕捉するための結合サイト402を結合させておく。例えば、結合サイトとしてストレプトアビジンを用いることができ、市販のストレプトアビジンコート微粒子(インビトロジェン社製)を微粒子として用いることができる。捕捉分子404には予め、結合サイト403を修飾しておく。
【0063】
結合サイト403には微粒子401表面の結合サイト402と容易に結合するものを選択する。例えば、結合サイト402として前記のストレプトアビジンを用いた場合には結合サイト403としてビオチンを用いる。
【0064】
次に、微粒子401と捕捉分子404を反応させることで、捕捉分子404を微粒子401に結合させる。
【0065】
1個の微粒子401につき一分子の捕捉分子404を固定するには、単位体積中の捕捉分子404の分子数を微粒子401の個数よりも小さくすることが好ましい。微粒子401よりも捕捉分子404が過剰にあると微粒子401の1個当たりの捕捉分子数が一分子よりも多くなる可能性が高いからである。発明者らが検討した結果では、微粒子401の数を捕捉分子404の数よりも10倍多くして反応させると、凡そ90%の微粒子401には捕捉分子404は捕捉されず、約9%の微粒子401には捕捉分子404が一分子捕捉されていた。この結果は、ポアソン分布を仮定した場合の予測結果と良く一致している。
【0066】
上記のように捕捉分子404を捕捉した微粒子401のみを捕集すれば、捕集した微粒子401のうち90%以上は捕捉分子404を一分子のみ捕捉した微粒子401となる。
捕集方法としては、例えば、磁気微粒子407に捕捉分子404を結合させ、磁気微粒子と微粒子の複合体を磁石で捕集する方法が考えられる。
【0067】
この場合、捕捉分子404と特異的に反応して末端に結合サイト406が修飾された分子405を用意し、結合サイト406と結合する結合サイト408を予め、磁気微粒子407の表面にコートしておく。こうして作製した磁気微粒子407を含む試薬を、捕捉分子と結合した微粒子に混合させることで、磁気微粒子407を微粒子401に付けることができる。この方法により、一分子の捕捉分子404を捕捉した微粒子401を90%以上と高い割合で分離、収集することができる。
【0068】
収集した微粒子401を磁気微粒子407から単離するには、例えば、高温処理を用いることができる。
【0069】
こうして、単離した微粒子401は、一分子の捕捉分子404を固定した免疫分析用の試薬として完成する。
【実施例4】
【0070】
本実施例の分析方法を、分析対象の生体分子がタンパク質である場合を例にとり、
図4を用いて説明する。
【0071】
測定対象成分1204に特異的に結合する捕捉成分の捕捉分子(抗体)1202を、結合分子1203を介して磁気微粒子1201表面に固定する。磁気微粒子1201に特別な制約はないが、溶液中で測定対象成分と効率よく反応するために、分散性が高いことが好ましい。直径は100ミクロン以下、より好ましくは10ミクロン以下が好ましい。
【0072】
抗体付き微粒子と測定対象成分を含む試料を反応させることにより、測定対象成分1204が磁気微粒子1201上に捕捉される。
【0073】
次に、蛍光色素標識1207を施した捕捉成分の抗体を有する蛍光体標識付捕捉分子1205を含む試薬を反応させることで、磁気微粒子1201に捕捉された測定対象成分1204を蛍光標識して蛍光標識反応物を生成させる。
【0074】
試料に含まれる種々の夾雑成分や、未反応の蛍光標識捕捉成分は、計測の妨げとなるので、計測に先立って反応系から除くとよい。この目的のために、微粒子が磁性粒子であると洗浄操作が容易である。すなわち、支持基体1206表面に磁石を用いて、磁気微粒子1201を収集・固定し、磁気微粒子1201に結合していない夾雑物質や未反応の蛍光標識捕捉成分1205を洗浄操作により反応系から排除することができる。
【0075】
次に、支持基体1206の表面に光を照射することで、蛍光輝点を検出器で計数する。
蛍光輝点数は、測定対象成分1204の分子数に相関することから、輝点数を求めることで、測定対象成分1204の分子数あるいは濃度に関する情報を得ることができる。特に、磁気微粒子1201に抗体1202を一分子だけ固定した試薬を予め調製しておき、これを用いることで、測定対象成分1204を超高感度に分析することができる。
【実施例5】
【0076】
本発明の他の測定方法を、
図5Aおよび
図5Bを用いて説明する。
【0077】
測定対象成分1504に特異的に結合する捕捉成分である抗体1502を微粒子1501の表面に固定する。微粒子1501に特別な制約はないが、溶液中で測定対象成分と効率よく反応するために、分散性が高いことが好ましい。直径は100ミクロン以下、より好ましくは10ミクロン以下が好ましい。抗体付き微粒子を測定対象成分と溶液中で反応させることにより、測定対象成分1504が微粒子1501上に捕捉される。
【0078】
次に、蛍光色素標識1507を施した捕捉成分の抗体1505を反応させることで、微粒子1501に捕捉された測定対象成分1504を蛍光標識して蛍光標識反応物を生成させることができる。蛍光標識としては、蛍光色素や蛍光体入り蛍光ビーズを用いることができる。
【0079】
次に、この蛍光標識反応物1508を
図5Bに示す流路1509中に流し、励起光を照射して蛍光標識反応物からの蛍光を検出器1510で測定する。流路1509の直径を、微粒子1501の直径の2倍以下とすることで、同時に複数個の蛍光標識反応物の蛍光を測定することなく、一個ずつの蛍光標識反応物の蛍光を測定できるため、好ましい。
【実施例6】
【0080】
本実施例では、免疫分析用デバイスを用いた免疫分析装置の好ましい構成の一例について
図6を参照しながら説明する。
【0081】
本実施例において免疫分析デバイスは、蛍光標識捕捉分子をマトリクス状に配置できる構成、つまり、接着パッドをマトリクス状に配置した構造をとっている。
【0082】
本実施例の分析装置は、測定対象の試料溶液、磁性粒子を含む捕捉試薬、蛍光標識付捕捉試薬、及び洗浄液を供給する手段と、免疫反応を行うための温度調節手段と、磁性粒子の洗浄手段と、免疫分析用デバイスの洗浄手段と、免疫分析用デバイス基板に光を照射する手段と、蛍光標識付捕捉試薬に由来する蛍光を測定する発光検出手段、を備える。
【0083】
より具体的には、測定対象の試料溶液と磁性粒子を含む捕捉試薬を反応容器に分注して反応させて、その後に蛍光標識付捕捉試薬を加えてさらに反応を進行させる。反応容器は37℃に保温する。一定時間後に、反応容器の周囲に磁石を配置させて磁性粒子をふくむ反応産物を収集する。反応容器から反応溶液を排出したあとに洗浄液を加える動作を繰り返して、磁性粒子をふくむ反応物を洗浄する。この洗浄動作によって、試料由来の夾雑成分や遊離の蛍光標識付捕捉試薬が反応系から排除される。
【0084】
注入口714には送液ユニット705が接続されており、測定対象の試料溶液、磁性粒子を含む捕捉試薬、蛍光標識付捕捉試薬及び洗浄液は、送液ユニット705から供給される。上記の磁性粒子との反応により、磁性粒子を含む反応産物が生成された反応液は、再度分散された後に、免疫分析用デバイスに送液される。反応液に磁石ユニット716が作用することによって、磁性粒子が分析デバイス基板701上にマトリクス状に配置された接着パッド内に収集固定される。
【0085】
次に蛍光検出を行う。励起光源は、用いる蛍光体の種類によって適切なものを選択できる。例えば、蛍光ビーズに使う蛍光体として、Cy5、Cy5.5、Cy3を用いる場合には、励起光には532nm(YAGレーザ)、633nm(He−Neレーザ)の2種類で対応できる。YAGレーザ光源(波長532nm、出力20mW)707およびHe−Neレーザ光源(波長633nm、出力20mW)713から発振するレーザ光をダイクロイックミラー715によって、前記2つのレーザ光を同軸になるよう調整した後、ダイクロイックミラー709によって対物レンズ706に導き、免疫用の分析デバイス基板701上に照射される。
【0086】
励起光の照射により蛍光標識付分子から発せられる蛍光は、励起光と同軸光路を逆に進み、対物レンズ706で集められた後ダイクロイックミラー709を通過し、結像レンズ711により二次元のCCDカメラ712の感光面上に結像される。励起光の散乱光は光学フィルタ710によって除去される。
【0087】
分析が終了した後は、磁石ユニット716による磁性粒子の固定作用を解除することによって、試料液は流路704を通って排出口716に排出される。そのため磁石ユニット716は分析デバイス基板701に対して移動可能に設けられていることが望ましい。その後、免疫分析用デバイスの洗浄手段によって、免疫用の分析デバイス基板701が洗浄される。
【0088】
図7に、本実施例における免疫分析装置での測定結果の例を示す。
【0089】
未反応の免疫分析デバイスの蛍光を測定した二次元CCDカメラの画像751、反応後の免疫用の分析デバイスから計測された蛍光をそれぞれYAGレーザ、He−Neレーザで測定したCCDカメラの画像である測定結果752、753を示す。
【0090】
測定結果752は試料中のPSA(前立腺がんマーカ)を測定した結果であり、図中に便宜上濃色で表示した部位に蛍光標識捕捉分子を検出した、すなわち試料中のPSA分子を検出したことを意味する。この場合、CCDカメラ712は分析デバイスからの画像を取得すると、格子状マトリクス内に現われた輝点の数を計数し、輝点の数に基づいて測定試料中のPSAの濃度を算出する。
【0091】
同様に、測定結果753は試料中のPSAおよびAFP(肝臓がんマーカ)を同時測定した結果である。図中において、便宜上濃色で表示した部位にPSAに由来する蛍光標識捕捉分子を検出し、斜線で表示した部位にAFPに由来する蛍光標識捕捉分子を検出していることを示す。格子状マトリクスの1つの接着パッドに複数のマーカを捕捉可能な捕捉抗体を付着していることにより、同じ試料中のPSAおよびAFPの2成分を一度の処理で検出することができており、すなわち試料中のPSA分子とAFP分子を同時に検出可能であることがわかる。
【0092】
この場合において、CCDカメラ712は分析デバイスからの画像を取得すると、画像752において格子状マトリクス内に表れた輝点の数を計数し、輝点の数に基づいて試料液中に含まれるPSAおよびAFPの濃度を算出する。
【0093】
なお、本実施例では蛍光標識捕捉分子を格子状マトリクスに配置した分析デバイスを使用しているが、たとえば蛍光標識捕捉分子は一列もしくは円周上に並んだ構成であってもよい。要は、何らかの規則性を有する配置であって、未検出位置と検出位置とを識別可能であることが望ましい。